JP2002178048A - 樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶体の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶体の製造方法

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JP2002178048A JP2000377319A JP2000377319A JP2002178048A JP 2002178048 A JP2002178048 A JP 2002178048A JP 2000377319 A JP2000377319 A JP 2000377319A JP 2000377319 A JP2000377319 A JP 2000377319A JP 2002178048 A JP2002178048 A JP 2002178048A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境に優しく、かつ耐食性等の缶特性に優れ
た樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶体を高速で製造
する。 【解決手段】アルミニウム板1の両面に熱可塑性ポリエ
ステル系樹脂2,3を被覆して形成した樹脂被覆アルミ
ニウム板4に滑剤を塗布する。この樹脂被覆アルミニウ
ム板4を絞り加工してカップ体5を形成する。カップ体
5を、パンチ10とリングダイ27,28,29により
1ストロークで、かつドライ状態で、しごき加工を行っ
てシームレス缶体60を高速で連続製缶する。その際パ
ンチ内10に冷却用液体を循環させてパンチ10の表面
温度を35〜100℃の範囲内の適宜温度に保つ。連続
製缶前にパンチ10内に35〜70℃の範囲内の適宜温
度(B℃)に保った加温用液体を循環しておき、連続製
缶を開始する直前ないし直後にパンチ内を循環する液体
を、15〜70℃の範囲で、かつ前記B℃以下の適宜温
度の冷却用液体に切り替えて、しごき加工を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂被覆アルミニ
ウム・シームレス缶の製造方法に関し、更に詳しくは冷
却ー潤滑液すなわちクーラントを用いることなくドライ
状態で、樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶体を高速
で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂被覆シームレス缶として、金属板好
ましくはティンフリースチール板の両面に、熱可塑性ポ
リエステル系樹脂被膜を形成した樹脂被覆ティンフリー
スチール板を、絞り加工、曲げ・延伸再絞りーしごき加
工して製造されたものが広く実用化されている。加工を
ドライ状態で行う、すなわちクーラントを使用せずに行
うために、環境に優しいというメリットがあり、更に耐
食性等の缶特性に優れているためである(例えば特開平
7−275961号公報参照)。
【0003】上記の方法は、金属板がスチール板の場合
は商業的に成功しているが、金属板がアルミニウム(本
明細書においては、缶用アルミニウム合金を含めてアル
ミニウムとよぶ)よりなるの場合には、高速での生産に
未だ充分に成功していない。特に比較的缶高が大きい通
称500ml缶(高さが約167mm)の場合は、適用
が困難であった。アルミニウムは、スチールに比べて、
強度、r値および限界絞り比等の機械的特性が劣るた
め、大きな曲げ延伸を含む再絞りーしごき加工の際に破
胴を起こし易いこと等のためと思われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、環境に優し
く、かつ耐食性等の缶特性に優れた樹脂被覆アルミニウ
ム・シームレス缶を高速で製造する方法を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の樹脂被覆アルミ
ニウム・シームレス缶体の製造方法は、アルミニウム板
の両面に熱可塑性ポリエステル系樹脂を被覆してなる樹
脂被覆アルミニウム板に滑剤を塗布した後、樹脂被覆ア
ルミニウム板を絞り加工してカップ体を形成し、カップ
体を、パンチとリングダイの協同により1ストローク
で、かつドライ状態で、しごき加工を行ってシームレス
缶体を高速で連続製缶する方法であって、パンチ内に冷
却用液体を貫流してパンチの表面温度を35〜100℃
の範囲内の適宜温度(A℃)に保って、しごき加工を行
うことを特徴とする(請求項1)。
【0006】本明細書において、アルミニウム板は、通
常コイルから巻解かれた帯状のアルミニウム板、すなわ
ちアルミニウム・ストリップをいう。熱可塑性ポリエス
テル系樹脂とは、熱可塑性ポリエステル共重合体樹脂、
ポリエステルを主成分とするブレンド樹脂等を含む。被
覆される樹脂、すなわち被膜は、単層でもよく、或いは
組成の異なる複数の層よりなるものでもよい。
【0007】カップ体を形成する絞り加工の際に、軽い
しごき加工が付加されてもよい。しごき加工は、再絞り
ーしごき加工、および再絞り加工を行わない純粋のしご
き加工のみの場合を含む。再絞りーしごき加工における
「再絞り」は、特開平7−275961号公報に記載さ
れるような所謂「曲げ・薄肉化延伸再絞り」ではない、
通常のDI缶製造に採用される「再絞り」をいう。リン
グダイは、通常複数個設けられる。「ドライ状態」と
は、冷却潤滑液の噴射の無い状態をいう。
【0008】シームレス缶体は両面が、熱可塑性ポリエ
ステル系樹脂で被覆されているので、缶詰用缶となった
後でも、耐食性に優れている。基材がアルミニウム板で
あるので、内容物がビールであってもビールの風味が損
なわれるおそれが少ない。滑剤を塗布された樹脂被覆ア
ルミニウム板より形成されたカップ体を、パンチ内に冷
却用液体を貫流してパンチの表面温度を35〜100℃
の範囲内の適宜温度(A℃)に保って、しごき加工を行
う。しごき加工中に冷却用液体を貫流するのは、高速で
の加工中に、加工熱や摩擦熱でパンチや、缶体の温度が
過度に上昇するのを抑えるためである。再絞り加工を行
う場合でも、再絞りダイの加工コーナでの、苛酷な曲げ
薄肉化延伸が行われないので、強度および伸び率が小さ
いアルミニウム板を素板としても破胴することなく、通
称500ml缶のような、比較的缶高/直径比が大きい
シームレス缶体を高速で製造することができる。
【0009】パンチの表面温度が35℃より低い場合
は、熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜及び滑剤の流動性
が悪いためと思われるが、パンチと成形中のシームレス
缶体間の動摩擦係数が大きくなり、ストリッパーでのパ
ンチの抜き取りが困難になる。そのため、シームレス缶
体の開口端部の端面とその近傍部(アルミニウム合金よ
りなるため、強度が比較的小さい)が座屈して抜け不能
(ロールバック)となって、装置の停止を起こし易くな
る。パンチの表面温度が100℃より高い場合は、アル
ミニウム板を被覆する熱可塑性ポリエステル系樹脂の温
度が、当該樹脂のガラス転位点(Tg)より遙かに高く
なるため、樹脂が軟化して、パンチおよびリングダイと
凝着し易くなり、しごき加工のシームレス缶体間の動摩
擦係数が大きくなって、缶体外面に縦傷が入ったり、破
胴やロールバックが生じて、装置の停止を起こし易くな
る。
【0010】ドライ状態で、シームレス缶体を形成する
ので、冷却潤滑液(クーラント)を使用しない故、環境
に優しい。後工程で滑剤を揮発、除去した後に、シーム
レス缶体の外面に印刷を施すことができるため、滑剤の
膜によってインキが弾かれることなく、満足な外面印刷
が可能である。1ストロークで、しごき加工を行った後
パンチを抜き出して、シームレス缶体を形成する。その
ため成形機がトランスファープレスのような多工程方式
でない故、プレス内搬送装置や金型数が少なくて済む。
よって設備費が低く、工数が少ないため、全体として低
コストである。
【0011】請求項2に係わる発明は、請求項1記載の
樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶体の製造方法にお
いて、連続製缶前にパンチ内に35〜70℃の範囲内の
適宜温度(B℃)に保った加温用液体を貫流しておき、
連続製缶を開始する直前ないし直後にパンチを貫流する
液体を、15〜70℃の範囲で、かつ前記B℃以下の適
宜温度(C℃)の冷却用液体に切り替えて、しごき加工
を行うものである。適宜温度(C℃)とは、連続製缶
中、パンチの表面温度を35〜100℃の範囲内の適宜
温度(A℃)に保つことができる温度である。
【0012】パンチが比較的低温(例えば約20℃)の
状態で、クーラントを噴射することなく、高速でしごき
加工を開始すると、パンチと、成形中のシームレス缶体
表面の樹脂被膜間の動摩擦係数が大きいため(低温のた
め滑剤が有効に働かない)と考えられるが、連続製缶の
第1缶目のしごき加工でロールバックが発生してしま
い、装置が停止して以後の加工が不可能になる。連続製
缶の開始前にパンチ内に35〜70℃の範囲内の適宜温
度(B℃)に保った加温用液体を貫流(すなわち循環)
しておき、連続製缶を開始する直前ないし直後にパンチ
を貫流する液体を、15〜70℃の範囲で、かつ前記B
℃以下の適宜温度(C℃)の冷却用液体に切り替えて、
しごき加工を行うことによって、このトラブルは防止で
きる。
【0013】加温用液体の温度が35℃より低いと、連
続製缶開始時のパンチの表面温度が35℃より低いた
め、ロールバック等のトラブルが生じて好ましくない。
一方70℃より高いと、缶体の成形による発熱のため、
連続製缶を開始する直前ないし直後に加温用液体を冷却
用液体に切り替えても、冷却が間に合わず、パンチ表面
温度が100℃を越えてしまい、ロールバック等が発生
して連続製缶ができなくなる。
【0014】請求項1,2記載の樹脂被覆アルミニウム
・シームレス缶体の製造方法の場合、生産性の点から、
連続製缶速度、すなわちしごき加工速度が、100スト
ローク/分以上であることが好ましい(請求項3)。
【0015】
【発明の実施の形態】図1の4は、アルミニウム板1の
両面を熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜2、3で被覆さ
れた樹脂被覆アルミニウム板を示す。熱可塑性ポリエス
テル系樹脂被膜2、3は、コイル(図示されない)から
巻解かれ、進行する帯状のアルミニウム板1の両面に、
押出しラミネート法、または無延伸キャストフィルム・
ラミネート法により熱接着後急冷された、非晶質で無延
伸のものが好ましい。無延伸で非晶質の熱可塑性ポリエ
ステル系樹脂被膜は、展伸性と密着性に優れており、缶
高/直径比が大きい苛酷なしごき加工の際にも、基材で
あるアルミニウム板の薄肉化に伴う延びや収縮変形に対
して、剥離や亀裂等の損傷を生ずることなく追従するこ
とができる。内面側熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜2
は、図1では組成の異なる2層、すなわち外層2aおよ
び内層2bよりなるが、1層または3層以上よりなって
いてもよい。外面側熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜3
も、図1では組成の異なる2層、すなわち外層3aおよ
び内層3bよりなるが、1層または3層以上よりなって
いてもよい。ポリエステル系樹脂被膜2,3が多層より
なる場合は、通常共押出し法によって形成される。なお
熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜2または3は、場合に
よっては、延伸フィルムを熱接着、又は接着剤層を介し
て接着されたものでもよい。
【0016】アルミニウム板1としては、硬質の缶用ア
ルミニウム合金(例えばH19材)が好ましく用いられ
る。アルミニウム板1の両面は、洗浄後化成処理等の表
面処理されているのが好ましいが、表面処理を施されな
いものでもよい。但し後者の場合は、表面が完全に清浄
化される必要がある。アルミニウム板1の厚さは、通常
約0.15〜0.40mmである。
【0017】熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ポリエチ
レンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを
主成分とする共重合体またはブレンド等であって、融点
が約200〜260℃のものが好ましく用いられる。ポ
リエステル系樹脂被膜2、3の厚さは、通常約5〜40
μmである。
【0018】ポリエステル系樹脂被膜2,3の表面に滑
剤が常法により、例えばロール・コートにより塗布され
る。滑剤としては、食品衛生上問題がなく、200℃程
度の加熱で容易に揮発除去できるもの、例えばグラマー
・ワックス、流動パラフィン、合成パラフィン、白色ワ
セリン、パーム油、各種天然ワックス、ポリエチレンワ
ックス等が好ましく用いられる。塗布量は、通常約0.
1〜200mg/m2(片面)である。
【0019】滑剤を被覆された樹脂被覆アルミニウム板
4より、カッピング・プレス(例えば特開平7−299
534号公報の図3,4に示されるような)で、打抜
き、絞り加工法により、図2に示されような絞りカップ
体5が高速で形成される。絞り比は、通常1.2〜2.
0である。
【0020】絞りカップ体5をドライ状態で、かつ1ス
トロークで、再絞りーしごき加工、底部加工を行った後
パンチより抜き出して、シームレス缶体60(図6参
照)を製造する方法は、クーラント(冷却潤滑液)を用
いずに、冷却を、パンチやしごきリングダイ等の各工具
を内部冷却することによって行い、潤滑を滑剤で行う点
以外は、通常のDI缶製造の場合と装置や方法等はほぼ
同様である。
【0021】図3、図4、図5は、本発明の方法をを実
施するための横置き型再絞りーしごき加工装置6の説明
用図面である。図3は装置6の上流側部分を示し、図4
は装置6の下流側部分を示す。図5に示すように、パン
チ10は主として支持筒13とスリーブ14(超硬合金
製)よりなっている。パンチ10は、パンチポスト11
に着設され、中央を缶ストリッピング用のエア吹き出し
孔12が貫通している。スリーブ14の、少なくとも成
形後のシームレス缶体60の内面と接触する部分の表面
には、多数の点状凹部、線状の周状凹部またはクロスハ
ッチ状凹部(例えば特開平7−300124号公報に記
載のような)が形成されていることが好ましい。パンチ
10のシームレス缶体60よりの抜き出し(ストリッピ
ング)を容易にするためである。
【0022】支持筒13に水平方向に延びる第1の水貫
流導孔15が形成されている。水貫流導孔15の先端部
は、支持筒13とスリーブ14の間に設けられたスパイ
ラル状の水貫流導孔16に接続している。水貫流導孔1
6の最終端部16aは、支持筒13に形成された水平方
向に延びる第2の水貫流導孔(図示されない)に接続す
る。パンチ10の、成形されるシームレス缶体60の比
較的厚肉の開口端部62と接触すべき部分10aの直径
は、パンチ主部10bの直径より若干小さく定められて
いる。パンチ10の端部には短円筒形の孔部17とリン
グ状部18が形成されている。リング状部18の外面
は、断面が高さ方向中央付近において稍凹んだ下細の傾
斜面18aとなっている。孔部17の周面17aと傾斜面
18aは、曲率部18bを介して接続する。
【0023】図3、図4において、20は皺押え具であ
って、内部に円筒形状の水貫流導孔22が設けられてい
る。22aは水の入口部であり、入口部22aの近傍に出
口部(図示されない)が設けられている。皺押え具20
は、押圧装置(図示されない)によって、そのフランジ
部21が弾性圧下に下流側に向かって押圧されている。
保持体25に、再絞りリングダイ26,第1のしごきリ
ングダイ27、第2のしごきリングダイ28,および第
3のしごきリングダイ29等が着設されている。なおし
ごき加工が、純粋のしごき加工のみの場合は、再絞りリ
ングダイ26の代わりに、しごきリングダイ(図示され
ない)が設けられる。
【0024】再絞りリングダイ26、第1のしごきリン
グダイ27、第2のしごきリングダイ28,および第3
のしごきリングダイ29を包囲してそれぞれ、水貫流導
孔31,32,33および34が設けられている。31
a,32a,33aおよび34aはそれぞれ、水貫流導孔3
1,32,33および34の入口部である。図示されな
いが、各入口部31a,32a,33aおよび34aの近傍
に、水の出口部が設けられている。再絞りリングダイ2
6の作用コーナ26bの曲率半径は、樹脂被覆アルミニ
ウム板4の板厚tの2.9倍、すなわち2.9xtより
大きい。
【0025】40は、複数のフィンガー41,リングば
ね42,およびOリング43を備える、公知のストリッ
パー装置である。リングばね42による円周方向内方に
向かう押圧のため複数のフィンガー41により形成され
る内径が、パンチ10の外径より若干小さくなるように
定められている。そのため、パンチ10および底部成形
前のシームレス缶体60が通過する時、フィンガー41
の先端部は、パンチ10および底部成形前のシームレス
缶体60を弾性的に押圧する。
【0026】底部形成装置50は、ドーミングダイ5
1、ホールドダウンリング52および内向きフランジ部
53aを有する固定リテーナ53を備えている。ホール
ドダウンリング52は、複数のシャフト54を介して常
時弾性圧で上流側に向かって押圧されていり。そのため
パンチ10が固定リテーナ53に入出する前後は、ホー
ルドダウンリング52の自由端面は内向きフランジ部5
3aの内面と接触している。ホールドダウンリング52
には、環状の水貫流導孔55が設けられている。55a
は水貫流導孔55の入口部であり、入口部55aを有す
るシャフト54の隣のシャフト(図示されない)に出口
部(図示されない)が設けられている。
【0027】ドーミングダイ51の表面51aは曲面状
をしており、パンチ10のリング状部18の内径より僅
かに小さい外径の円筒形の筒部51bに接続している。
ホールドダウンリング52の成形面52aは、パンチ1
0のリング状部18の傾斜面18aに相似の形状をして
いる。
【0028】再絞りーしごき加工装置6により、シーム
レス缶体60は次のようにして、100ストローク/分
以上、例えば400ストローク/分の高速で製造され
る。連続製缶(しごき加工)開始前に、パンチ10の水
貫流導孔16に35〜70℃の範囲内の適宜温度(B
℃)に保った加温用水を循環させておく。皺押え具2
0、再絞りリングダイ26、第1のしごきリングダイ2
7、第2のしごきリングダイ28、第3のしごきリング
ダイ29及び ホールドダウンリング52の、それぞれ
の水貫流導孔22、31、32、33、34及び55に
も加温用水(好ましくは約15〜70℃の間の適当温
度)を循環させておく。
【0029】連続製缶開始直前ないし直後に、ポンチ1
0内を循環する加温用水を、15〜70℃の範囲で、か
つ前記B℃以下の適宜温度(C℃)の冷却用水に切り替
え、成形中冷却用水を水貫流導孔16に循環させて、成
形時のパンチの表面温度を、35〜100℃の範囲内の
適宜温度(A℃)に保つ。
【0030】同時に、皺押え具20、再絞りリングダイ
26、第1のしごきリングダイ27、第2のしごきリン
グダイ28、第3のしごきリングダイ29及びホールド
ダウンリング52の各水貫流導孔22、31、32、3
3、34及び55内を循環する加温用水を、15〜70
℃の範囲の適宜温度の冷却用水に切り替え、成形中冷却
用水を各貫流導孔22、31、32、33、34及び5
5に循環させて、成形時の皺押え具20、再絞りリング
ダイ26、第1のしごきリングダイ27、第2のしごき
リングダイ28、第3のしごきリングダイ29及び ホ
ールドダウンリング52の表面温度を、20〜100℃
の範囲内の適宜温度に保つ。
【0031】なお、成形時のパンチの表面温度を、35
℃とポリエステル系樹脂被膜2,3の樹脂のガラス転移
点(Tg:約70〜80℃)以下の範囲内の適宜温度に
保つことが、形成されたシームレス缶体60の、ロール
バック防止に加え、外面擦り傷防止の点から好ましい
(表1実験例5参照)。パンチの表面温度がガラス転移
点(Tg)を越えると、樹脂被膜2,3が軟化するため
と思われる。なおパンチ10とダイ26,27,28,
29の表面温度を適宜の一定温度に保つことにより、連
続製缶中の各缶の平均高さを一定にすることができる。
【0032】図3に最も良く示すように、絞りカップ体
5を再絞りリングダイ26上に載置し、皺押え具20を
下流方向に移動して、絞りカップ体5の底部5bの周縁
部を再しぼりリングダイ26と皺押え具20との間で弾
性圧下に押圧した状態で、パンチ10を下流方向(矢印
方向)に移動して、再絞り加工、および3回のしごき加
工を行う。しごき加工によって、絞りカップ体5は、胴
壁部5aが薄肉化され、かつ高さが高くなる。底部5b
の厚さは実質的に同じである。しごき加工後、パンチ1
0はストリッパー装置40を通過し、次いで図4に示す
ように、底部形成装置50と協同して底部加工を行って
シームレス缶体60(図6参照)の底部61を形成す
る。
【0033】パンチ10の先端部が、シームレス缶体6
0と共に固定リテーナ53内に入ると、底部加工前のシ
ームレス缶体60の底部と胴部間の曲率部(絞りカップ
体5の曲率部5cに対応する)は、パンチ10のリング
状部18の傾斜面18aとホールドダウンリング52の
成形面52aの間で弾性圧下に押圧されながら下流方向
に移動して、半径方向斜め下方に向かう外壁部61aが
形成される。同時にシームレス缶体60の底部は、ドー
ミングダイ51に押圧されて、接地部61b、ほぼ垂直
に立ち上がる内壁部61cおよびドーム部61dが形成
される(図6参照)。
【0034】次いでパンチ10を復帰させると、シーム
レス缶体60の端面64がストリッパー装置40のフィ
ンガー41と係合して、シームレス缶体60からパンチ
10が引き抜かれる。図6に示すように、シームレス缶
体60の開口端部62は、薄肉の胴部主部63に比べて
稍厚肉になっており、かつ端面64は耳の発生等のため
不規則な凹凸形状をなしている。上記の凹凸形状をなす
端面64近傍を1点鎖線65に沿って規定の高さにトリ
ムして、平坦な端面にする。トリムは通常使用される内
刃と外刃を有するトリマー等によって行われる。
【0035】トリミング後、シームレス缶体60を約2
00℃に加熱して、滑剤を揮発、除去した後、外面に印
刷を施し、次いで印刷膜を乾燥する。その後、開口端部
62にネックイン部67およびフランジ部68を形成し
て、図7に示すような、ネックイン部67およびフラン
ジ部68を有するシームレス缶100が作製される。
【0036】
【実施例】実験例1:表面を燐酸クロメート処理され
た、厚さ0.300mm、表面粗さ(Ra)0.35μ
mのアルミニウム合金板1(A3004 H19)の両
面に、厚さ16μmのポリエステル系樹脂フィルムを押
出し熱接着した後、直ちに急冷して、非晶質の内面側ポ
リエステル系樹脂被膜2および外面側ポリエステル系樹
脂被膜3を有する樹脂被覆アルミニウム板4を作製し
た。
【0037】内面側ポリエステル系樹脂被膜2は、外層
2aが厚さ3μmのエチレンテレフタレート/エチレン
イソフタレート共重合体(モル比;95:5)、内層2
bが厚さ13μmのエチレンテレフタレート/エチレン
イソフタレート共重合体(モル比;85:15)の2層
よりなるものであった。外面側ポリエステル系樹脂被膜
3の層構成も、内面側ポリエステル系樹脂被膜2と同様
であった。これ等樹脂被膜2、3を形成するポリエステ
ル系樹脂の融点は約230℃、ガラス転移点(Tg)は
約72℃であった。
【0038】この樹脂被覆アルミニウム板4の両面に、
グラマー・ワックス(融点約62℃)を各約40mg/
2の量(片面当たり)を塗布した。塗布後、絞り成形
機(図示されない)により直径156.5mmの円形ブ
ランクに打抜き、絞り比1.72で絞り加工して、胴壁
部5aの平均高さが45mm、内径が91mm、曲率部
5cの内面側曲率半径が6mmの絞りカップ体5を形成
した。絞りカップ体5の底部5bの厚さは、樹脂被覆ア
ルミニウム板4の厚さと同じく、0.332mmであっ
た。
【0039】パンチ10のスリーブ14の、開口端部6
2に対応する部分10aの外径は65.94mm、パン
チ主部10bの外径は66.05mmであった。スリー
ブ14の少なくとも成形中に樹脂被覆アルミニウム板4
と接触する部分には、表面直径約0.3mm、深さ約3
μmの多数の点状凹部(半球面状の)が約1mmのピッ
チで形成されていた。皺押え具20の外径は90.80
mm、内径は60.30mmであった。再絞り比は1.
38,第1のしごきリングダイ27、第2のしごきリン
グダイ28,および第3のしごきリングダイ29による
しごき率は、何れも30%であった。
【0040】連続製缶(しごき加工)開始前に、各水貫
流導孔16、20、31、32、33、34および55
に55℃の加温用水を循環させて、パンチ10、皺押え
具20、再絞りリングダイ26,第1のしごきリングダ
イ27、第2のしごきリングダイ28,第3のしごきリ
ングダイ29およびホールドダウンリング52の温度を
ほぼ53℃にした。連続製缶(しごき加工)を開始する
直前に、加温用水を40℃の冷却用水に切り替えて冷却
用水を循環させて、連続製缶(しごき加工)中、パンチ
10、皺押え具20、再絞りリング26および第1のし
ごきリングダイ27、第2のしごきリングダイ28およ
び第3のしごきリングダイ29、およびホールドダウン
リング52を冷却した。
【0041】上記の条件で、表1の実験例1に示すよう
に、毎分120缶、すなわち120ストローク/分のパ
ンチ速度で、トリム後の高さが168.35mm、胴部
主部63の内径が65.85mm、胴部主部63の平均
肉厚が0.118mm、開口端部62の肉厚が0.17
3mmのシームレス缶体60(500ml缶用)を約2
00缶連続作製したが、破胴、被膜の傷付き、被膜剥が
れ、およびストリッピング不能(ロールバック)等のト
ラブルは起こらなかった。表1におけるパンチ表面温度
は、最終缶の成形後、次のストロークでパンチ10を下
死点で停止させて、表面温度計で測定した。缶温は、最
終缶の胴部の中央部を放射温度計で測定した。実験例1
〜7の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】実験例2:パンチ速度を160ストローク
/分とした点以外は、実験例1と同様にしてシームレス
缶体60を作製した。この場合のパンチ表面温度および
缶温は、表1に示すように、実験例1の場合より稍高い
が、実験例1の場合と同様に異常なくシームレス缶体6
0を作製できた。
【0044】実験例3:パンチ速度を200ストローク
/分とした点以外は、実験例1と同様にしてシームレス
缶体60を作製した。この場合のパンチ表面温度および
缶温は、表1に示すように、実験例2の場合より稍高い
が、実験例1の場合と同様に異常なくシームレス缶体6
0を作製できた。
【0045】実験例4:パンチ冷却用水の温度を20℃
とした点以外は、実験例3と同様にしてシームレス缶体
60を作製した。この場合のパンチ表面温度および缶温
は、表1に示すように、実験例3の場合より稍低いが、
実験例1の場合と同様に異常なくシームレス缶体60を
作製できた。
【0046】実験例5:パンチ冷却用水温度を70℃と
した点以外は、実験例4と同様にしてシームレス缶体6
0を作製した。この場合のパンチ表面温度および缶温
は、表1に示すように、実験例3の場合より可成り高い
が、実験例1の場合と同様に異常なくシームレス缶体6
0を作製できた。但し缶体60の胴部外面に僅かな擦り
傷が発生した。
【0047】実験例6:連続製缶(しごき加工)前の加
温用水の温度をB℃以下の30℃にして、かつ加温用水
をそのまま冷却用水として循環させた点以外は、実験例
3と同様にしてしごき加工を開始した所、1缶目でスト
リップ(パンチ10の抜き出し)が不能になり、装置が
停止した。低温のためパンチ10とシームレス缶体60
の内面樹脂層2aとの摩擦係数が大きくなり、ストリッ
パー装置40のフィンガー41と係合する開口端部62
の端面64とその近傍部(アルミニウム合金よりなるた
め、強度が比較的小さい)が座屈したためである。
【0048】実験例7:連続製缶(しごき加工)開始前
に、パンチ10に55℃の加温用水を循環し、パンチ表
面温度を53℃に保った状態で加温用水の循環を止め、
その直後冷却水を循環しなかった点以外は、実験例3と
同様にして再絞りーしごき加工を行った所、パンチ表面
温度が上昇して、約100缶目でロールバックして装置
が停止した。なおこの場合のパンチ表面温度は、ロール
バックする筈である約10缶前のタイミングで、人為的
にパンチ10を停止して測定した。缶温も、その時作製
された缶について測定した。この場合は、パンチ10を
冷却しないので、作製する缶数と共にパンチ10の温度
が加工発熱により上昇する。この温度が内面樹脂層2a
のガラス転移点(Tg:約72℃)を遙かに越えると、
内面樹脂層2aの軟化が激しくなり、同時にパンチ10
との摩擦係数も大きくなるため、ロールバックが起こる
ものと思われる。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、環境に優しく、かつ耐
食性等の缶特性に優れた樹脂被覆アルミニウム・シーム
レス缶を高速で連続的に安定して製造することができる
という効果を奏する。また比較的缶高/直径比が大きい
樹脂被覆アルミニウム・シームレス缶を高速で製造する
ことができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられる、熱可塑性ポリ
エステル系樹脂被覆アルミニウム板の例の縦断面図であ
る。
【図2】図1の熱可塑性ポリエステル系樹脂被覆アルミ
ニウム板から形成された絞りカップ体の例の縦断面図で
ある。
【図3】図2の絞りカップ体から、シームレス缶体を形
成する再絞りーしごき加工装置の例の説明用縦断面図の
上流側部分を示す。
【図4】図2の絞りカップ体から、シームレス缶体を形
成する再絞りーしごき加工装置の例の説明用縦断面図の
下流側部分を示す。
【図5】図3、図4の装置に用いられるパンチの例の、
一部切断縦断面図である。
【図6】図3、図4の装置によって製造されたシームレ
ス缶体の例の縦断面図である。
【図7】図6のシームレス缶体より形成されたシームレ
ス缶の例の正面図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板 2 内面側熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜 3 外面側熱可塑性ポリエステル系樹脂被膜 4 樹脂被覆アルミニウム板 5 カップ体 6 再絞りーしごき加工装置(樹脂被膜アルミニ
ウム・シームレス缶体を形成する装置) 10 パンチ 16 パンチの水貫流導孔 22 水貫流導孔 31 水貫流導孔 32 水貫流導孔 33 水貫流導孔 34 水貫流導孔 55 水貫流導孔 26 再絞りリングダイ 27 第1のしごきリングダイ 28 第2のしごきリングダイ 29 第3のしごきリングダイ 60 樹脂被膜アルミニウム・シームレス缶体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B21D 51/26 B21D 51/26 X B32B 15/08 104 B32B 15/08 104A B65D 1/12 B65D 1/12 Z (72)発明者 坂本 進 広島県豊田郡本郷町本郷4601 Fターム(参考) 3E033 AA07 BA09 BA17 BB08 CA14 CA20 DA08 DD05 EA10 FA10 GA02 4F100 AB10A AK41B AK41C BA03 BA06 BA10B BA10C DA01 GB16 JB02 JB16B JB16C JL02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム板の両面に熱可塑性ポリエス
    テル系樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム板に滑
    剤を塗布した後、樹脂被覆アルミニウム板を絞り加工し
    てカップ体を形成し、カップ体を、パンチとリングダイ
    の協同により1ストロークで、かつドライ状態で、しご
    き加工を行ってシームレス缶体を高速で連続製缶する方
    法であって、パンチ内に冷却用液体を貫流してパンチの
    表面温度を35〜100℃の範囲内の適宜温度(A℃)
    に保って、しごき加工を行うことを特徴とする樹脂被覆
    アルミニウム・シームレス缶体の製造方法。
  2. 【請求項2】連続製缶前にパンチ内に35〜70℃の範
    囲内の適宜温度(B℃)に保った加温用液体を貫流して
    おき、連続製缶を開始する直前ないし直後にパンチを貫
    流する液体を、15〜70℃の範囲で、かつ前記B℃以
    下の適宜温度(C℃)の冷却用液体に切り替えて、しご
    き加工を行う請求項1記載の樹脂被覆アルミニウム・シ
    ームレス缶体の製造方法。
  3. 【請求項3】連続製缶速度が、100ストローク/分以
    上である請求項1,2記載の樹脂被覆アルミニウム・シ
    ームレス缶体の製造方法。
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