JP2002174242A - 流体軸受装置への潤滑剤充填方法 - Google Patents

流体軸受装置への潤滑剤充填方法

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JP2002174242A
JP2002174242A JP2000375057A JP2000375057A JP2002174242A JP 2002174242 A JP2002174242 A JP 2002174242A JP 2000375057 A JP2000375057 A JP 2000375057A JP 2000375057 A JP2000375057 A JP 2000375057A JP 2002174242 A JP2002174242 A JP 2002174242A
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fluid bearing
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shaft
thrust
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Kazuhiro Kamimura
和宏 上村
Katsuhiko Tanaka
克彦 田中
Ikunori Sakatani
郁紀 坂谷
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 流体軸受装置内部に気泡が残留しにくく、し
かも作業性,量産性に優れた流体軸受装置への潤滑剤充
填方法を提供する。 【解決手段】 まず、大気下において、流体軸受すきま
及びその近傍の空間の一部に潤滑剤を注入する。そし
て、潤滑剤が注入された流体軸受装置を真空下に保持し
て、真空下において前記流体軸受すきま全体に表面張力
の作用によって前記潤滑剤を充填させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報機器,音響・
映像機器,事務機等に使用される流体軸受装置、特に、
磁気ディスク装置(以降はHDDと記す),光ディスク
装置等に最適な流体軸受装置への潤滑剤の充填方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】上記のような用途に使用される流体軸受
装置としては、例えば、図1に示すようなHDD用スピ
ンドルモータがある。ベース11に立設した円筒部11
aの内側に、円筒体状のスリーブ12が内挿されてい
て、これらは一体的に固着されている。このスリーブ1
2には軸13が回転自在に挿通されていて、この軸13
の上端には、逆カップ状のハブ14が一体的に取り付け
られており、軸13の下端には、円板状のスラストプレ
ート15が止めねじ20により固着されている。
【0003】このスラストプレート15の両平面は、ス
ラスト流体軸受Sのスラスト受面15s,15sとされ
ている。そして、上側のスラスト受面15sには相手部
材であるスリーブ12の下端面がスラスト流体軸受Sの
流体軸受すきまを介して対向し、このスリーブ12の下
端面がスラスト流体軸受Sのスラスト軸受面12sとさ
れている。
【0004】また、スラストプレート15の下方には、
相手部材であるカウンタープレート16が配置され、ベ
ース11に固定されている。このカウンタープレート1
6の上面が、スラストプレート15の下側のスラスト受
面15sにスラスト流体軸受Sの流体軸受すきまを介し
て対向して、スラスト流体軸受Sのスラスト軸受面16
sとされている。
【0005】そして、上記スラスト受面15s,15s
とスラスト軸受面12s,16sとの少なくとも一方
に、ヘリングボーン状又はスパイラル状の動圧発生用溝
(図示せず)を備えて、スラスト流体軸受Sが構成され
ている。一方、軸13の外周面には、上下に間隔をおい
て一対のラジアル受面13r,13rが形成されてい
る。また、スリーブ12の内周面には、ラジアル受面1
3r,13rにラジアル流体軸受Rの流体軸受すきまを
介して対向してラジアル軸受面12r,12rが形成さ
れている。そして、ラジアル受面13r,13rとラジ
アル軸受面12r,12rとの少なくとも一方に、ヘリ
ングボーン状又はスパイラル状の動圧発生用溝17,1
7を備えて、ラジアル流体軸受R,Rが構成されてい
る。
【0006】さらに、スピンドルモータのトルクを小さ
くするために、上下2つのラジアル流体軸受R,Rに挟
まれたスリーブ12の内周面(軸13の外周面でもよい
し、あるいはスリーブ12の内周面と軸13の外周面と
の双方でもよい)には、ラジアル流体軸受Rの軸受すき
まに向かってすきまが狭くなるテーパ状の周溝からなる
逃げ溝21を設けている。
【0007】そして、円筒部11aの外周面にはステー
タ18が固定され、ハブ14の内周面下側に固定されて
いるロータ磁石19とギャップを介して周面対向して駆
動モータMを形成しており、この駆動モータMにより軸
13とハブ14とが一体的に回転駆動されるようになっ
ている。軸13が回転すると、スラスト流体軸受S及び
ラジアル流体軸受Rの各動圧発生用溝のポンピング作用
により、各流体軸受S,Rの流体軸受すきまに充填され
た微量の潤滑剤に動圧が発生して、軸13はスリーブ1
2の内周面及びカウンタープレート16の上面と非接触
となり支承される。
【0008】このようなスピンドルモータへの潤滑剤の
充填方法は、以下の通りであった。すなわち、スピンド
ルモータを組み立てた後、カウンタープレート16の中
央に設けられた貫通穴26からスピンドルモータの内部
に、大気下で適量の潤滑剤を注入する。そうすると、ス
ラスト流体軸受Sの流体軸受すきまの一部の空間に位置
する潤滑剤や、スラスト流体軸受Sの流体軸受すきまの
近傍に位置する潤滑剤が、表面張力の作用により、該流
体軸受すきま内に引き込まれて徐々に広がってゆき、各
流体軸受S,Rの流体軸受すきま全体が潤滑剤で満たさ
れる、というものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】近年、HDDは記録密
度の向上が求められていて、情報を記録するためのトラ
ックの幅が狭くなっているため、回転精度の高い流体軸
受の採用が検討されている。さらに、ノート型パソコン
のような携帯機器に搭載されるHDDにおいては、薄型
化が求められているとともに、低消費電力で可搬性能に
優れた流体軸受装置が求められている。
【0010】そこで、上記のようなスピンドルモータに
おいては、運搬等により装置が揺動されても軸受部が接
触して損傷しないように(可搬性能を高めるために)、
モーメント負荷に対する耐力(以降はモーメント耐力と
記す)を高くしたり、また、消費電力を抑えるために、
ラジアル流体軸受Rの流体軸受すきまよりもすきまの大
きい逃げ溝21を、2つのラジアル流体軸受R,Rの間
に設けて、軸受スパンを大きくするとともに、逃げ溝2
1における潤滑剤の流体摩擦を小さくするようにしてい
る。
【0011】しかしながら、このような逃げ溝21を有
していると、上記のような方法でスピンドルモータに潤
滑剤を充填する際に、以下のような問題が生じるおそれ
があった。すなわち、潤滑剤の充填が大気下で行われる
ので、潤滑剤が各流体軸受すきまに充填される際に、逃
げ溝21内に気泡が巻き込まれやすい。逃げ溝21内に
気泡が残留すると、流体軸受の回転が不安定となり(回
転中の回転非同期成分の振れであるNRROが大きくな
る)、例えば、スピンドルモータの回転中に、残留した
気泡がラジアル流体軸受の流体軸受すきま内を回転数の
約半分の速度(平均流速)で旋回すると、わずかながら
径方向の振れ回りが生じることとなる。
【0012】このような問題点を解決するためには、上
記のような潤滑剤の充填を大気下ではなく真空下で行う
ことが効果的である。つまり、潤滑剤の充填と同時に脱
気を行うのである。しかしながら、潤滑剤の充填を真空
下で行うためには複雑な設備が必要であり、スピンドル
モータのコストアップの要因となる。また、作業性が悪
いので量産性が損なわれるという問題点も有している。
【0013】そこで本発明は、上記のような従来技術が
有する問題点を解決し、流体軸受装置内部に気泡が残留
しにくく、しかも作業性,量産性に優れた流体軸受装置
への潤滑剤充填方法を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明の流体軸受装置への潤滑剤充填方法は、軸と、該軸に
流体軸受すきまを介して対向する相手部材と、を備えた
流体軸受装置へ潤滑剤を充填する方法において、前記流
体軸受すきま及びその近傍の空間の一部に潤滑剤を大気
下で注入し、注入直後から前記潤滑剤が前記流体軸受す
きま全体に充填されるまでの期間のうち少なくとも一部
の期間は、前記流体軸受装置を真空下に保持することを
特徴とする。
【0015】このような構成であれば、流体軸受装置へ
の潤滑剤の注入を大気下で行っても、前記流体軸受すき
まを始めとして流体軸受装置の内部に気泡が残留しにく
い。したがって、該方法により潤滑剤を充填した流体軸
受装置は、回転中に不安定振動が生じるおそれが小さ
い。また、本発明に係る流体軸受装置への潤滑剤充填方
法は、流体軸受装置への潤滑剤の注入を真空下ではなく
大気下で行うので、潤滑剤の注入に複雑な設備を必要と
せず低コストである。また、作業性,量産性も優れてい
る。
【0016】前記流体軸受装置を保持する圧力は、大気
圧より低い圧力であればよいが、流体軸受装置の内部に
気泡が残留することをより確実に防止するためには、
0.03MPa以下がより好ましく、0.02MPa以
下がさらに好ましい。また、流体軸受装置を真空下に保
持する期間は、前記潤滑剤の注入直後から前記潤滑剤が
前記流体軸受すきま全体に充填されるまでの期間のうち
少なくとも一部の期間であればよいが、流体軸受装置の
内部に気泡が残留することをより確実に防止するために
は、前記潤滑剤の注入直後から前記潤滑剤が前記流体軸
受すきま全体に充填されるまでの期間全体であることが
より好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に係る流体軸受装置への潤
滑剤充填方法の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に
説明する。図1は、HDD用スピンドルモータの縦断面
図である。まず、スピンドルモータの構造を説明する。
なお、以下の説明における上,下等の方向を示す用語
は、特に断りがない限り、説明の便宜上、図1における
それぞれの方向を意味するものである。
【0018】このスピンドルモータは、ハブ14が固着
された軸13と、ベース11の円筒部11aに取り付け
られたスリーブ12とから構成されている。軸13はス
リーブ12に回転自在に挿通されていて、軸13とスリ
ーブ12との間にはラジアル流体軸受Rが介装されてい
る。また、軸13の一端にはスラストプレート15が備
えられていて、スラストプレート15の両平面と、これ
に対向するスリーブ12及びカウンタープレート16と
の間に、スラスト流体軸受Sが設けられている。なお、
スリーブ12及びカウンタープレート16が本発明の構
成要件たる相手部材に相当する。
【0019】ベース11の円筒部11aの外周面にはス
テータ18が固定されていて、ハブ14の内周面に固定
されたロータ磁石19とギャップを介して周面対向して
駆動モータMを形成している。そして、駆動モータMに
よりハブ14と軸13とを一体的に回転駆動させると、
スラスト流体軸受S及びラジアル流体軸受Rにより、軸
13がスリーブ12及びカウンタープレート16に対し
て回転自在に支承されるようになっている。
【0020】次に、上記のようなスピンドルモータの構
造を、さらに詳細に説明する。ベース11の中央部に立
設されている円筒部11aの内側に、フランジ付円筒体
状のスリーブ12が内挿されていて、前記フランジ12
fにより一体的に固着されている。このことによりスリ
ーブ12の外周面と円筒部11aの内周面との間に、環
状すきまである潤滑剤溜まり22が形成されている。こ
の潤滑剤溜まり22の構造については、後にさらに詳述
する。
【0021】スリーブ12には中空状の軸13が回転自
在に挿通されていて、軸13の内周面には雌ねじ13f
が形成されている。なお、軸13は中実軸でもよい。ま
た、軸13の材質は、硬さが高くて耐食性に優れた材料
であれば特に限定されるものではないが、例えばマルテ
ンサイト系のステンレス鋼やオーステナイト系ステンレ
ス鋼に、熱処理を施して表面を硬化させたものあるいは
メッキやダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜によ
る表面処理を行って表面を硬化させたものがあげられ
る。
【0022】この軸13の上端部13aは他部より小径
となっていて、この小径な上端部13aを浅い逆カップ
状のハブ14の中央部に設けられた穴に圧入することに
より、軸13とハブ14とが一体に固着されている。そ
して、小径な上端部13aと大径な他部との境目に形成
される前記大径な他部の上端面13bにハブ14の下面
が当接されるから、軸13とハブ14とは十分な耐衝撃
性を確保するに足る強度で固着される。
【0023】また、スリーブ12の下端より突出した軸
13の下端には、円板状のスラストプレート15が固定
されている。このスラストプレート15は、軸13の内
周面に設けられた雌ねじ13fに螺合した止めねじ20
により固着されていて、軸13とスラストプレート15
とは十分な耐衝撃性を確保するに足る強度(抜け荷重)
で固着されている。
【0024】このとき、中空状の軸13はその内径より
大径な凹状部である接合部30を下端面に有し、また、
止めねじ20は頭部20aと雄ねじを有する先端部20
cとの間に円柱状の円柱部20bを有していて、これら
接合部30及び円柱部20bは、スラストプレート15
の中央部に設けられた止めねじ20を挿入するための穴
15bとほぼ同径となっている。
【0025】円柱部20bが穴15bと凹状の接合部3
0とに嵌合されることによりスラストプレート15が軸
13に取り付けられているので、接合部30の内周面が
止めねじ20の円柱部20bを介してスラストプレート
15を軸13に対して同軸に案内する案内面として作用
して、スラストプレート15は軸13に50μm以下の
同軸度で取り付けられる。
【0026】また、軸13の下端面にスラストプレート
15の上面が当接された形態で、スラストプレート15
が軸13に取り付けられているので、スラストプレート
15の厚さが薄くてもスラストプレート15の端面の振
れが小さい。なお、スラストプレート15を軸13に取
り付ける方法としては、ねじ止めの他、圧入,接着,溶
接等の慣用の固着方法が採用可能である。あるいは、軸
とスラストプレートとが一体的に形成された部材を用い
てもよい。
【0027】ただし、スラストプレート15をねじ止め
により取り付けると十分な締結強度が確保され、圧入に
より取り付ける場合とは異なり、スラストプレート15
にヤング率の低い銅合金等の材料を使用できる。なお、
止めねじ20の頭部20aの形状としては、図示の平頭
形に限定されることはなく、丸小ねじのような丸頭形や
皿小ねじのような皿頭形など適宜変更してもよい。
【0028】そして、スラストプレート15の下側の平
面は、ベース11の中央部に取り付けたカウンタープレ
ート16の上面と対向している。また、スラストプレー
ト15の上側の平面は、スリーブ12の下端面と対向し
ている。なお、カウンタープレート16は、ベース11
と一体に形成されていてもよい。カウンタープレート1
6の上面の中央部(軸13の真下の位置)には、止めね
じ20の頭部20aを収納する凹部16aが設けられて
いる。そうすれば、止めねじ20をスラストプレート1
5に没入した形態で取り付ける必要がなく、スラストプ
レート15の加工が容易となる。
【0029】なお、スラストプレート15を固定する止
めねじ20を頭部20aが没入した形態で取り付けた
り、スラストプレート15を軸13に圧入して固着する
などした場合は、凹部16aは設ける必要はない。スラ
ストプレート15の上下の両平面はスラスト受面15
s,15sとされる。そして、上側のスラスト受面15
sにスラスト流体軸受Sの流体軸受すきまを介して対向
するスリーブ12の下端面と、下側のスラスト受面15
sにスラスト流体軸受Sの流体軸受すきまを介して対向
するカウンタープレート16の上面とが、それぞれスラ
スト軸受面12s及び16sとされて、相対するスラス
ト受面15s,15s及びスラスト軸受面12s,16
sのうち少なくとも一方に、例えばヘリングボーン状の
動圧発生用溝(図示せず)を備えてスラスト流体軸受S
を構成している。
【0030】特に、スラスト受面15s又はスラスト軸
受面16sに設けるヘリングボーン状の動圧発生用溝
を、溝頂部から外周側の溝長さが溝頂部から内周側の溝
長さよりも短い径方向外向きのわずかな非対称溝パター
ンとすることが好ましい。そうすれば、回転駆動により
発生するポンピング作用が、溝頂部から外周側の方が内
周側よりも小さくなるので、潤滑剤が中心部から外周部
に向かって送り出されるようになる。
【0031】なお、この動圧発生用溝をスラストプレー
ト15の両平面(スラスト受面15s,15s)に設け
る加工方法は特に限定されるものではなく、塑性加工,
切削加工,エッチング加工等があげられる。塑性加工で
あるコイニング加工は、プレス等を用いて金型をスラス
トプレート15に押圧することにより前記動圧発生用溝
を刻印する方法であるので、エッチング加工と比較する
と量産性に優れていて低コストである。
【0032】特に、スラストプレート15に硬さの低い
銅合金を用いた場合は、コイニング加工による塑性加工
が容易であるので、量産性に優れるという利点がある。
なお、スリーブ12やカウンタープレート16は、強度
が必要なため硬さが高い方が好ましい。ここで、カウン
タープレート16のベース11への固着方法について説
明する。カウンタープレート16は、ベース11の中央
部に設けた穴にすきまばめ又は軽圧入されていて、カウ
ンタープレート16の外周部がベース11の円筒部11
aの下部に、複数の止めねじ31によってねじ止めされ
ている。
【0033】このカウンタープレート16は外周部に段
差を有していて、外周部は他部より厚さが薄くなってい
る。すなわち、図1から分かるように、カウンタープレ
ート16は、上面側の外径寸法が大きく下面側の外径寸
法が小さい2段構造の板状部材であって、カウンタープ
レート16の縦断面形状は略凸字状となっている。カウ
ンタープレート16が上記のような構造を有しているこ
とから、カウンタープレート16をベース11に取り付
けた際には、ベース11の中央部に設けた前記穴の内周
面とカウンタープレート16の下面側の外径寸法が小さ
い部分の外周面とから環状溝28が形成される。止めね
じ31はこの環状溝28の部分に取り付けられていて、
止めねじ31の頭部は環状溝28内に収納されている。
なお、このような環状溝28は、カウンタープレート1
6の全周にわたって設けてもよいが、一部分に設けても
よい。
【0034】このように、ベース11とカウンタープレ
ート16とをねじ止め31により固着したので、加締め
による固着のようにベース11及びカウンタープレート
16に荷重が加えられることがなく、ベース11及びカ
ウンタープレート16に変形が生じることがない。した
がって、カウンタープレート16の上面に形成されるス
ラスト軸受面16sが変形して、スラスト軸受面16s
の平面度が低下するという問題が生じることがない。
【0035】また、カウンタープレート16の上面の一
部が、ベース11の中央部に設けた前記穴の底面と当接
していることから、カウンタープレート16は該穴にお
いて水平且つ安定した姿勢で配置される。なお、止めね
じ31の代わりにピンを使用してもよい。また、止めね
じ31を使用する代わりに環状溝28に接着剤を充填す
ることにより、ベース11とカウンタープレート16と
を固着してもよい。あるいは、止めねじ31でベース1
1とカウンタープレート16とを固着した上、環状溝2
8に接着剤を充填して固着を強化してもよい。止めねじ
31と接着剤とを併用すれば、止めねじ31の周囲が接
着剤により覆われるので、外部からの振動や衝撃等によ
って止めねじ31が緩むことが防止される。
【0036】また、環状溝28に接着剤を充填すると、
ベース11とカウンタープレート16との接合部分のす
きまに接着剤が浸透していき、ベース11とカウンター
プレート16との固着が強化されるとともに、前記接合
部分が封止される。前記接合部分のすきまが接着剤によ
り密封されると、スピンドルモータの回転中に前記接合
部分から、スピンドルモータの内部に充填された潤滑剤
が流出するおそれが小さくなる。なお、接着剤を充填し
た後に70〜100℃に加熱して接着剤を完全に硬化さ
せることにより、固着強度の確保を図ることが好まし
い。
【0037】接着剤の種類は特に限定されるものではな
く、エポキシ系の接着剤、嫌気性の接着剤、紫外線硬化
型の接着剤、あるいはこれらのうちの複数を併用したタ
イプの接着剤であってもよい。また、十分な固着強度を
得ることができ、前記接合部分を封止してスピンドルモ
ータの内部に充填された潤滑剤が流出することを防止で
きれば、接着剤の代わりに封止材を用いてもよい。
【0038】一方、軸13の外周面には、軸方向に間隔
をおいて上下に一対のラジアル受面13r,13rが形
成されるとともに、このラジアル受面13r,13rに
ラジアル流体軸受Rの流体軸受すきまを介して対向する
ラジアル軸受面12r,12rが、スリーブ12の内周
面に形成されている。そして、ラジアル軸受面12r,
12rに、略くの字状のヘリングボーン状の動圧発生用
溝17,17を備えて、ラジアル流体軸受R,Rが構成
されている。
【0039】ただし、動圧発生用溝17,17は、ラジ
アル受面13r,13rに設けてもよいし、ラジアル受
面13r,13rとラジアル軸受面12r,12rとの
双方に設けてもよい。なお、この動圧発生用溝17を設
ける加工方法は特に限定されるものではなく、スラスト
プレート15の両平面に設けた動圧発生用溝の場合と同
様の慣用の方法が採用される。
【0040】ラジアル軸受面12r、すなわちスリーブ
12の内周面に動圧発生用溝17を加工すると、量産性
に優れたボール転造等の塑性加工あるいはバイトによる
切削加工により動圧発生用溝17を加工できるので、好
ましい。ボール転造は、軸の外周にはめ合わせた中空状
の外筒に複数個の鋼球を保持させた転造治具を、スリー
ブに押し込むことによって加工する方法である。
【0041】すなわち、スリーブ12を旋盤上で切削加
工した後、旋盤の主軸をゆっくり正逆回転させながら転
造治具をスリーブ12に押し込んで相対移動させること
により内周面にヘリングボーン状(略くの字状)の溝加
工を行い、その後に溝周辺の盛り上がり部分を除去する
仕上げ切削やボール通しなどの仕上げ加工を必要に応じ
て行う。もちろん旋盤上でなく、転造装置を用いて転造
治具を左右に正逆回転させながら固定されたスリーブ1
2に押し込み、ヘリングボーン状の溝を転造加工しても
よい。
【0042】2つの動圧発生用溝17,17のうち外気
側に位置する方は、溝長さが外気側より内側の方が僅か
に短い内向き非対称溝パターン(非対称ヘリングボーン
状の動圧発生用溝)となっていて、このことは以下の理
由により好ましい。すなわち、軸13の回転に伴って外
気側から内側へ向かって潤滑剤を押し込む圧力が働くの
で(ポンプイン)、ラジアル流体軸受Rの流体軸受すき
ま内の潤滑剤が、軸13の回転に伴う遠心力によって外
部に飛散することが防止される。
【0043】このことをさらに詳細に説明する。動圧発
生用溝17は、軸13の円周方向に沿って所定の間隔で
並べられた複数の略くの字状の溝で構成されている。2
カ所に設けられた動圧発生用溝17,17のうち、外気
側に位置する動圧発生用溝17(図1においては上側の
動圧発生用溝17)を、そのパターンが軸方向に非対称
な形状とする。そして、他方の動圧発生用溝17(図1
においては下側の動圧発生用溝17)のパターンを、軸
方向に対称な形状とする。
【0044】すなわち、外気側に位置する動圧発生用溝
17においては、略くの字状の溝の軸方向の幅のうち屈
曲部から外気側の端部までの幅を、屈曲部から内側の端
部までの幅より大とする。なお、本実施形態において
は、外気側とは、軸13において、スピンドルモータの
外気に向いている側(図1においては上方)、すなわ
ち、スラスト流体軸受Sが設けられている側とは反対側
を意味するものである。また、内側とは、外気側とは反
対側、すなわち、スラスト流体軸受Sが設けられている
側を意味するものである。
【0045】また、回転中にスラスト流体軸受S及びラ
ジアル流体軸受Rの流体軸受すきま内の潤滑剤へ気泡が
巻き込まれることを少なくするためには、スラスト流体
軸受S及びラジアル流体軸受Rに設ける動圧発生用溝
は、溝角度(回転方向に対してなす角度)を30°以
下、好ましくは25°以下とし、溝の本数を10本以
上、好ましくは12本以上とすることが望ましい。
【0046】特に、ラジアル流体軸受Rに設けるヘリン
グボーン状の動圧発生用溝17の軸受幅(動圧発生用溝
17の軸方向の幅)が軸径よりも小さい場合には、溝角
度を25°以下とし、溝の本数を12本以上、好ましく
は16本以上とすることが望ましい。潤滑剤に気泡が巻
き込まれると、回転中の不安定振動の原因となり回転精
度が劣化しやすい。
【0047】また、上下2つのラジアル流体軸受R,R
に挟まれたスリーブ12の内周面(軸13の外周面でも
よいし、あるいはスリーブ12の内周面と軸13の外周
面との双方でもよい)には、ラジアル流体軸受Rの軸受
すきまに向かってすきまが狭くなるテーパ状の周溝から
なる逃げ溝21を設けている。このことにより、スピン
ドルモータを薄型化した場合でも、ラジアル流体軸受
R,Rの作用点間距離である軸受スパンを大きく取るこ
とができるので、該スピンドルモータはモーメント耐力
に優れる。また、逃げ溝21は、ラジアル流体軸受Rの
軸受すきまよりもすきまが大きいので、潤滑剤の流体摩
擦が小さくなる。よって、該スピンドルモータは、軸受
トルクが小さく低消費電力である。
【0048】なお、駆動モータMを構成するロータ磁石
19及びステータ18の軸方向位置を若干ずらし、軸方
向の吸引力が作用するようにして、スリーブ12の下端
面側で負荷を主に分担するようにし、さらに、スラスト
プレート15の下面側のスラスト受面15sの有効面積
を、上面側のスラスト受面15sの有効面積よりも小さ
く設計することにより(軸受有効径を小さく設計す
る)、反負荷側の軸受トルクを削減するようにしてもよ
い。そうすれば、スピンドルモータの消費電力を少なく
することができる。
【0049】次に、前述の潤滑剤溜まり22の構造につ
いて説明する。スリーブ12の外周面と円筒部11aの
内周面との間には環状すきまが介在していて、該環状す
きまが潤滑剤溜まり22を形成している。潤滑剤溜まり
22の内面を形成するスリーブ12の外周面はテーパ面
24とされていて、これにより潤滑剤溜まり22は下方
のスラスト流体軸受Sに向かってすきまが徐々に狭くな
っている。
【0050】もっとも、テーパ面24は必ずしもスリー
ブ12の外周面に形成するとは限らず、円筒部11aの
内周面に形成してもよく、あるいはスリーブ12の外周
面と円筒部11aの内周面との双方に形成してもよい。
また、潤滑剤溜まり22の下端には、スラストプレート
15の外周面15aとそれに対向する部材である円筒部
11aの内周面との間に形成される円環状のすきまに向
かって開口している潤滑剤供給路25が設けられてい
る。
【0051】そして、スラスト流体軸受Sの流体軸受す
きまに近接して連通する潤滑剤供給路25の開口部は、
スラスト流体軸受Sの流体軸受すきまとほぼ等しいか、
又は僅かに大きくなっていて、表面張力に基づく毛管現
象により潤滑剤が潤滑剤供給路25からスラスト流体軸
受Sの流体軸受すきまに導入されやすいようになってい
る。
【0052】本実施形態においては、環状すきまからな
る潤滑剤溜まり22の下部の全体が潤滑剤供給路25を
形成している(すなわち、潤滑剤供給路25が環状すき
ま状である)が、潤滑剤溜まり22の下部のうち一カ所
にスリット状の潤滑剤供給路25を設けてもよいし(つ
まり、その他の部分は、スリーブ12の外周面と円筒部
11aの内周面とが接触していて閉口している)、複数
箇所にスリット状の潤滑剤供給路25を設けてもよい。
【0053】また、本実施形態においては、スリーブ1
2の外周面の全てをテーパ面24として、潤滑剤溜り2
2のテーパ面24の一部を潤滑剤供給路25とし、スラ
ストプレート15の外周面15aと円筒部11aの内周
面との間に形成される円環状のすきまに、テーパ面24
を直接連通させている。しかし、スリーブ12の外周面
のうち上部をテーパ面24とし、下部は円筒部11aの
内周面と平行な面として、この平行面により形成される
環状のすきまが潤滑剤供給路25を構成するような構造
としてもよい。
【0054】このような潤滑剤溜まり22の上部には、
外気と連通する通気路23が開口している。通気路23
は、潤滑剤溜まり22の上部から水平に伸び、途中で上
方に屈曲してスリーブ12の上端面に開口している。す
なわち、通気路23は、円筒部11aのスリーブ12と
のはめあい面に軸方向のスリットを形成するようにして
設けられている。もちろん、潤滑剤溜まり22の最上部
から垂直に伸び、スリーブ12の上端面に開口するよう
に設けてもよい。
【0055】次に、スリーブ12の内周面の上端(外気
側)部分の構造について、詳細に説明する。図1から分
かるように、スリーブ12の内周面の上端(外気側)の
角の部分は、面取りされている。このことにより、軸1
3の外周面とスリーブ12の内周面との間に形成される
すきまのうち最も上端(外気側)の部分は、上方(外気
側)に向かって徐々にすきまが広くなるテーパ状形状と
なっている。このとき、該テーパ状形状のなす角度、す
なわち、この面取り部分の傾斜面12aと軸13の外周
面とのなす角度をαとする。
【0056】そして、前記テーパ状形状のなす角度α
は、スリーブ12の外周面(すなわちテーパ面24)と
円筒部11aの内周面とのなす角度(以降は、テーパ面
24の傾斜角と記す)より大となっている。このような
構成であれば、表面張力はすきまの狭い方に強く作用す
るから、前記面取り部分のテーパ状形状のすきまよりも
潤滑剤溜まり22の方に潤滑剤が強く吸引されることと
なり、前記面取り部分に位置する潤滑剤の液面を低くで
きて、前記面取り部分の下方に維持できる。
【0057】さらに、潤滑剤溜まり22の容積を、軸1
3の外周面とスリーブ12の内周面との間に形成される
すきまのうち最も上端の部分のテーパ状形状となってい
る部分(すなわち、前記面取り部分の傾斜面12aと、
軸13の外周面のうち傾斜面12aに対向する部分と、
で囲まれる部分)の容積よりも大きくすれば、余分な潤
滑剤は潤滑剤溜まり22に保持されることとなる。
【0058】したがって、潤滑剤の注入量に過不足があ
っても、潤滑剤が外部に飛散したり、長期間の使用にお
いて流体軸受すきま内の潤滑剤が枯渇したりするおそれ
が小さくなり、よって、スピンドルモータの長期信頼性
が優れている。上記のような効果が十分に発現するため
には、テーパ面24の傾斜角は0°以上且つ45°未
満、前記テーパ状形状のなす角度αは45°以上とする
ことが好ましい。特に、テーパ面24の傾斜角を10°
以下とすると、前記効果がより十分に発現される。ま
た、潤滑剤溜まり22に余分な潤滑剤を表面張力により
吸引保持するためには、実用上、前記テーパ状形状のな
す角度αをテーパ面24の傾斜角よりも15°以上大と
することが好ましい。
【0059】また、決められた装置高さのなかで2個の
ラジアル流体軸受R,R間の距離である軸受スパンを広
くしようとすると、軸13の外周面とスリーブ12の内
周面との間に形成されるすきまのうちのテーパ状形状と
されている部分の長さ、すなわち、前記面取り部分の傾
斜面12aの軸方向の幅は、より小さくする必要があ
る。
【0060】一方、潤滑剤溜まり22に余剰の潤滑剤を
なるべく多く保持する必要があるので、テーパ状形状の
なす角度αを45°以上、傾斜面12aの軸方向の幅を
1mm以下、好ましくは0.5mm以下とすることが望
ましい。さらに、長期信頼性を高めるためには、潤滑剤
溜まり22に保持できる潤滑剤の量を十分確保する必要
があるので、テーパ面24の軸方向の幅は、傾斜面12
aの軸方向の幅の2倍以上とすることが好ましい。
【0061】また、前記面取り部分のテーパ状形状のす
きまのうち最も広い部分のすきまの広さ(径方向の幅)
は、潤滑剤溜まり22の最も広い部分のすきまの広さ
(径方向の幅)より大となっていて、前記面取り部分に
位置する潤滑剤の液面と、潤滑剤溜まり22に保持され
ている潤滑剤の液面とが、表面張力が釣り合う位置とな
っている。このことから、前記面取り部分に位置する潤
滑剤の液面を前記面取り部分の下方に維持できて、回転
に伴って前記面取り部分から外部に潤滑剤が飛散するこ
とが防止される。
【0062】なお、本実施形態においては、傾斜面12
aをスリーブ12の内周面に設けているが(すなわち、
前記面取り部分をスリーブ12の内周面に設けてい
る)、軸13の外周面に設けてもよく、あるいはスリー
ブ12の内周面と軸13の外周面との双方に設けてもよ
い。傾斜面12aを軸13の外周面に設ける場合には、
スリーブ12の内周面に対向する部分のうち最も外気側
の部分に設ける。
【0063】また、スリーブ12の前記面取り部分の傾
斜面12aと、軸13の外周面のうち傾斜面と12a対
向する部分とに、撥油剤(潤滑剤をはじく性質を有する
もの)を塗布する等の撥油処理を施すと、撥油処理を施
した部分に潤滑剤がはじかれて、スピンドルモータの静
止時及び回転時に潤滑剤が該部分(前記面取り部分等)
を越えて外部に漏出することを、より効果的に防止する
ことができる。
【0064】次に、当該スピンドルモータへの潤滑剤の
充填方法について説明する。まず、スピンドルモータ全
体を組み立てた後に、大気下において、カウンタープレ
ート16の中心に設けた厚み方向の通し穴からなる貫通
穴26から、ディスペンサ等を使用して潤滑剤を注入す
る。なお、スピンドルモータに潤滑剤を注入した後は、
貫通穴26にボールや円筒部材等(図示せず)を圧入す
ることにより、該貫通穴26を密封してもよい。そうす
れば、異物等がスピンドルモータ内に侵入することが防
止される。
【0065】そして、圧入したボールの外部衝撃による
脱落やボール圧入部のすきまからの油もれを防止するた
めに、ボールの圧入後にカウンタープレート16の下面
にシート部材や粘着シール部材等を接着してもよい。た
だし、この貫通穴26は、流体軸受の性能上は必ずしも
密封する必要はないので、潤滑剤注入口として使用した
後は空気抜きのために使用してもよい。
【0066】また、スピンドルモータへの潤滑剤の注入
は、スピンドルモータの組み立て途中に通気路23や中
空状の軸13が有する穴(軸13を軸方向に貫通する
穴)から行ってもよく、この場合は貫通穴26は設ける
必要はない。ただし、中空状の軸13が有する穴から行
う場合は、止めねじ20にも、該止めねじ20を軸方向
に貫通する穴を設けておく必要がある。
【0067】次に、潤滑剤を注入したスピンドルモータ
を、真空槽内に移す等の手段により真空下に保持し、脱
気を行う。注入された潤滑剤のうち、スラスト流体軸受
Sの流体軸受すきまの一部の空間に位置する潤滑剤や、
スラスト流体軸受Sの流体軸受すきまの近傍に位置する
潤滑剤は、表面張力の作用によってすきまの狭い方に引
き込まれて、スラスト流体軸受Sの流体軸受すきま内を
満たし、続いて、ラジアル流体軸受Rの流体軸受すきま
や逃げ溝21内に広がってゆく。
【0068】本実施形態においては、注入された潤滑剤
が各流体軸受すきま全体に充填されるまでの期間は、ス
ピンドルモータが真空下に保持されているので、潤滑剤
が各流体軸受すきまに充填される際に、各流体軸受すき
まや逃げ溝21内に気泡が巻き込まれて残留することが
ほとんどない。よって、このような方法により潤滑剤を
充填したスピンドルモータは、回転中に不安定振動が生
じにくい。
【0069】通常の場合は、潤滑剤が注入されてから各
流体軸受すきま全体に充填されるまでに、数分から数十
分の時間を要するので、この間にスピンドルモータを真
空下に保持すれば、真空下で潤滑剤を注入した場合と同
様の脱気効果が得られる。このとき、スピンドルモータ
を高温に保ちながら真空下に保持すると、潤滑剤の粘度
が低下して、潤滑剤が各流体軸受すきま内を広がってゆ
く速度を高めることができるので、潤滑剤が注入されて
から各流体軸受すきま全体に充填されるまでの期間を短
縮することができる。
【0070】また、スピンドルモータへの潤滑剤の注入
は、貫通穴26を通じて外部から行うので、潤滑剤の注
入操作が大変容易である。さらに、潤滑剤の注入は大気
下で行うので、真空下で潤滑剤の注入を行う場合のよう
な複雑な設備を必要とせず低コストである。さらにま
た、真空下における工程は、単にスピンドルモータを真
空下に保持するだけでよいので、作業性,量産性も優れ
ている。
【0071】スピンドルモータを保持する圧力は、大気
圧より低い圧力であればよいが、気泡の残留をより確実
に防止するためには、0.03MPa以下がより好まし
く、0.02MPa以下がさらに好ましい。また、スピ
ンドルモータを真空下に保持する期間は、潤滑剤の注入
直後から潤滑剤が各流体軸受すきま全体に充填されるま
での期間のうち少なくとも一部の期間であればよいが、
気泡の残留をより確実に防止するためには、本実施形態
のように潤滑剤の注入直後から潤滑剤が各流体軸受すき
ま全体に充填されるまでの期間全体であることがより好
ましい。
【0072】本実施形態においては、スピンドルモータ
全体を組み立てた後に潤滑剤を注入したが、スピンドル
モータのうち一部を組み立てた段階で潤滑剤を注入し、
その後にスピンドルモータを最後まで組み立てて完成さ
せる方法を採用してもよい。例えば、スピンドルモータ
のうち流体軸受部分(軸13,スリーブ12,カウンタ
ープレート16,ベース11からなる部分)のみを組み
立てた段階で潤滑剤を注入し、その後に軸13の上端に
ハブ14を取り付けてスピンドルモータを完成させても
よい。この場合には、潤滑剤を注入した後に真空下で保
持し、その後にスピンドルモータを完成させてもよい
し、スピンドルモータを最後まで組み立てて完成させた
後に真空下で保持してもよい。
【0073】また、スピンドルモータの完成後や使用前
に、所定の回転数で短時間(少なくとも1分間以上)回
転させるエージングを行うと、動圧発生用溝の自己排出
機能により、残留する気泡の除去がより確実となり好ま
しい。このように注入された潤滑剤は、表面張力の作用
によりスラスト流体軸受S及びラジアル流体軸受Rの各
流体軸受すきまを満たすとともに、余分な潤滑剤は潤滑
剤供給路25を経て潤滑剤溜まり22に溜まって、表面
張力に基づく毛管現象によりテーパ面24に保持され
る。したがって、潤滑剤の注入量が過剰であっても、余
分な潤滑剤が潤滑剤溜まり22に貯蔵されるので問題な
い。また、運搬時や取り扱い時にスピンドルモータが倒
置されたとしても、潤滑剤溜まり22内の潤滑剤が外部
に流出することはない。
【0074】また、潤滑剤溜まり22のすきまの大きさ
が、テーパ面24により下方の潤滑剤供給路25に向か
って狭くなっているため、外部衝撃で飛散した潤滑剤
も、外部に流出しない限りは潤滑剤溜まり22のすきま
の狭い潤滑剤供給路25の方に自然に集められる。そし
て、潤滑剤溜まり22の上部(すきまの広い方)に集ま
った気泡は、通気路23を通って外部に排出される。
【0075】駆動モータMにより、被回転体である図示
しない磁気ディスクを外周部に搭載するハブ14と軸1
3とを一体的に回転駆動させると、スラスト流体軸受S
及びラジアル流体軸受Rの各動圧発生用溝のポンピング
作用により、各流体軸受S,Rの流体軸受すきまに充填
されている潤滑剤に動圧が発生して、軸13はスリーブ
12及びカウンタープレート16と非接触となり支承さ
れる。なお、前記磁気ディスクはクランプ部材でねじ止
めされているので、十分な耐衝撃性を確保するに足る強
度で固着されている。
【0076】運転が長期に及んで、流体軸受すきまに保
持されている潤滑剤が次第に蒸発したり飛散したりして
不足してくると、潤滑剤溜まり22内に表面張力に基づ
く毛管現象で保持されている潤滑剤が、その不足分に応
じてテーパ面24に案内されつつすきまの狭い方に吸引
され、各流体軸受すきま内に潤滑剤が満たされるまで補
給される。すなわち、各流体軸受すきま内の潤滑剤の減
少に伴い、潤滑剤供給路25を経由してすきまの狭い流
体軸受すきまに毛管現象で吸引され、潤滑剤溜まり22
のテーパ面24の表面張力が釣り合う位置で安定する。
こうして、潤滑剤の減少分だけ自動的に潤滑剤が補給さ
れる。
【0077】このように本実施形態のスピンドルモータ
は、潤滑剤溜まり22の環状すきまがテーパ状であるか
ら、潤滑剤は表面張力によりすきまの狭い方に吸引さ
れ、一方、組み立て時に巻き込んだ残留気泡は、すきま
の広い方に分離され排出される。したがって、各流体軸
受すきまには気泡のない潤滑剤が自動的に確実に補給さ
れて、常時潤滑剤で満たされた状態となり、長期にわた
り使用しても信頼性が高く耐久性に優れている。
【0078】また、潤滑剤の注入量に過不足があったと
しても、潤滑剤が外部に飛散したり、長期間の使用にお
いて各流体軸受すきま内の潤滑剤が枯渇したりするおそ
れが小さい。なお、本実施形態は本発明の一例を示した
ものであって、本発明は本実施形態に限定されるもので
はない。
【0079】例えば、本発明の潤滑剤充填方法は、逃げ
溝21を有する流体軸受装置のみに適用され得るもので
はなく、逃げ溝21を有していない流体軸受装置にも適
用可能である。すなわち、スラスト流体軸受S,ラジア
ル流体軸受Rの流体軸受すきまや、スリーブ12の内周
面の上端の前記面取り部分に気泡が残留することも、同
様に防止する効果を有する。
【0080】また、スピンドルモータは、スリーブ固定
−軸回転タイプでもよいし、軸固定−スリーブ回転タイ
プでもよい。さらに、軸13に設けるスラストプレート
15の位置は、軸端に限らず軸端近傍でもよいし、軸の
中央部やその近傍であってもよい。さらにまた、流体軸
受の構造,通気路23,潤滑剤溜まり22,潤滑剤供給
路25の構造、動圧発生用溝のパターン、スピンドルモ
ータの細部の構造等に関しては、本実施形態に限定され
るものではなく、本発明の目的を達成できるならば、必
要に応じて適宜変更することが可能である。
【0081】例えば、潤滑剤溜まり22を構成するテー
パ面24は、潤滑剤溜まり22が流体軸受すきまに向か
って徐々にすきまが狭くなる形状となるならば、種々の
曲面であってもよい。また、動圧発生用溝はヘリングボ
ーン状やスパイラル状に限定されるものではなく、動圧
流体軸受として機能すれば、どのような溝パターンでも
よい。また、該溝の加工方法は、材質や必要精度に応じ
て、化学エッチング,電解エッチング,塑性加工,切削
加工,レーザ加工,イオンビーム加工,ショットブラス
ト等を適用することができる。
【0082】さらに、軸13,スリーブ12等のスピン
ドルモータを構成する部材の材質は、特に限定されるも
のではなく、スピンドルモータを構成する部材に通常使
用される金属(ステンレス鋼,銅合金,アルミ合金
等),焼結金属,焼結含油金属,プラスチック,セラミ
ック等の材料であれば問題なく使用できる。すなわち、
ステンレス鋼同士や銅合金同士の組み合わせでもよく、
鉄と銅合金,鉄とアルミ合金といった異種金属の組み合
わせでもよく、さらに、金属とプラスチック等の組み合
わせでもよい。もちろん、メッキやDLC膜(ダイヤモ
ンドライクカーボンコーティング)のような表面処理を
必要に応じて流体軸受面に施して、起動停止時の摺動性
を向上させてもよい。
【0083】なお、スリーブ12及びスラストプレート
15を硬さの異なる銅合金同士、例えばスリーブ12に
硬さの高いベリリウム銅やアルミ青銅を、スラストプレ
ート15に鉛青銅やリン青銅を用いた組み合わせとする
と、摺動性と切削加工性とを満足させることができる。
この場合、硬さの低い鉛青銅やリン青銅の流体軸受面に
動庄発生用溝を設けた方が、相手部材を傷つけにくいの
で好ましい。
【0084】さらに、本実施形態においては、流体軸受
装置としてスピンドルモータを例示して説明したが、本
発明は他の種々の流体軸受装置に対して適用することが
できる。
【0085】
【発明の効果】以上のように、本発明の流体軸受装置へ
の潤滑剤充填方法は、潤滑剤が流体軸受すきま内に充填
される際に気泡が巻き込まれにくく、しかも作業性,量
産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る流体軸受装置への潤滑剤充填方法
を説明するスピンドルモータの縦断面図である。
【符号の説明】
12 スリーブ 13 軸 15 スラストプレート 16 カウンタープレート R ラジアル流体軸受 S スラスト流体軸受
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂谷 郁紀 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J011 AA04 AA06 BA02 CA02 JA02 KA04 MA21

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸と、該軸に流体軸受すきまを介して対
    向する相手部材と、を備えた流体軸受装置へ潤滑剤を充
    填する方法において、 前記流体軸受すきま及びその近傍の空間の一部に潤滑剤
    を大気下で注入し、注入直後から前記潤滑剤が前記流体
    軸受すきま全体に充填されるまでの期間のうち少なくと
    も一部の期間は、前記流体軸受装置を真空下に保持する
    ことを特徴とする流体軸受装置への潤滑剤充填方法。
JP2000375057A 2000-12-08 2000-12-08 流体軸受装置への潤滑剤充填方法 Pending JP2002174242A (ja)

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