JP2002155379A - 耐端面錆性に優れる表面処理鋼板 - Google Patents

耐端面錆性に優れる表面処理鋼板

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JP2002155379A
JP2002155379A JP2000348390A JP2000348390A JP2002155379A JP 2002155379 A JP2002155379 A JP 2002155379A JP 2000348390 A JP2000348390 A JP 2000348390A JP 2000348390 A JP2000348390 A JP 2000348390A JP 2002155379 A JP2002155379 A JP 2002155379A
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coating layer
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rust resistance
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JP2000348390A
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Shuji Okada
修二 岡田
Katsuhei Kikuchi
勝平 菊池
Shigeru Unno
茂 海野
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 板厚が厚い場合であっても、切断加工端面の
耐錆性に優れる表面処理鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.20%
以下、Mn:0.40%以下、P:0.04%以下、S:0.0050%
以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.0 〜10.0%を含有し、
残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の少なくと
も片面に、片面当たりのZn付着量5g/m以上の亜鉛
系めっき層を形成してなることを特徴とする耐端面錆性
に優れる表面処理鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主として屋内の
大気中で使用する、家電、事務機器に用いられる、亜鉛
系めっきを施した表面処理鋼板に関し、特に剪断加工機
によって切断した鋼板の切断端面における耐錆性(以
下、単に「耐端面錆性」と略記する)に優れる表面処理
鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系(Zn単独、Zn−Ni,Zn−
Fe,Zn−Al,Zn−Cr,Zn−Ni−Co,Z
n−Al−Crなど)めっきを施した表面処理鋼板は、
優れた耐食性を有していることから、家電、事務機器等
の製品の部材として広く使用されている。これらの製品
部材は、その生産工程で、鋼板の片面または両面に亜鉛
系めっきを施した表面処理鋼板に、上下一対の刃工具を
備えた剪断加工機により、剪断、打ち抜き(ブランキン
グ)、穴あけ(パンチング)、縁取り(トリミング)な
ど何らかの機械的切断加工を行い、切断によって得られ
た表面処理鋼板を、必要に応じて、所定の形状に成形し
て製造される。
【0003】従来、これらの表面処理鋼板は、製品部材
として一旦使用されると、ユーザーから粗大ゴミとして
廃棄されるか、解体してスクラップ化されるのが一般的
であった。報告によれば、一般家庭から排出される家電
製品のうち、その約半分は直接埋め立てされ、残りは破
砕処理されて金属分の回収が行われる場合があるもの
の、そのほとんどは廃棄されるのが実状である。一方、
とくに近年になって、地方自治体では、廃棄物処分場の
拡大が限界にきていることから、早急な廃棄物の減量化
対策が求められている。こうした背景から、廃棄物の減
量と有用な部品・素材の再商品化を図り、循環型経済社
会を実現していくため、平成13年4月1日には特定家
庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が施行される
予定である。この法律は、家電製品等の製造業者等及び
小売業者に新たな義務を課すことを基本とする、新しい
再商品化の仕組みを構築することを目的とするものであ
る。
【0004】さて、地球環境を保護するという観点から
考えると、製品部材を鉄資源として回収し再利用するよ
りも、その部材を部分的にでも原形を保ったまま回収し
て、製品の一部としてそのまま再利用する方が、より優
れているという意見が高まってきている。このような背
景から、最終製品の製造者自らが、販売した製品をその
まま、あるいはその一部の部材を回収し、製品の一部と
して再利用(リユース)するようになりつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
表面処理鋼板を使用して製造した各種の製品では、大気
環境で使用中に、その切断端面に徐々に赤錆が発生し
て、使用時の外観が悪化するばかりか、上述した再利用
には到底適するものではなかった。さらに、例えば、家
電製品の場合には、使用中の部材に端面錆が発生してい
ると、錆の欠落等による電気的な短絡の発生などのトラ
ブルも懸念されていた。
【0006】このような切断端面における錆(端面錆)
発生の問題は、特に、表面処理鋼板としてPCM(Pre-
coated Metal) 鋼板を採用した場合に、しばしば典型的
にみられた。ここに、PCM鋼板とは、製品加工メーカ
ーで通常行う塗装を、鋼板メーカーが母板の状態で予め
塗装を施したものをいい、例えば、亜鉛系めっきの上
に、りん酸塩処理あるいはクロメート処理等の化成処理
を行い、その上に、塩化ビニールあるいはポリエステル
などの樹脂を用いた塗装あるいはラミネートを施したも
のをいう。上記端面錆の発生は、PCM鋼板では塗装を
行った後で切断加工するため、この加工端面で地鉄が露
出し、しかもこの地鉄が露出した加工端面の多くは塗装
(ポストコート)を行わないために起こるものである。
したがって、このような端面錆の発生は、めっきのまま
の状態はもちろん、めっき後クロメート処理などの化成
処理を施した場合や、PCM鋼板のように鋼板面に被覆
を施した場合でも、鋼板端面が露出したときに、同様に
危惧されることであった。
【0007】このような状況から、めっき、めっき−化
成処理、またはめっき−化成処理−樹脂被覆処理などの
工程を経て製造された亜鉛系めっき表面処理鋼板を、切
断加工したままの状態で、すなわち切断加工後に端面塗
装など特別な防錆処理を行わない状態で、大気中で使用
する場合に、切断端面での錆が発生しない材料が開発さ
れれば、前述したような製品部材の再利用が可能とな
り、製品コストの低減も可能になると期待される。しか
しながら、従来から行われてきた、表面処理鋼板につい
ての研究は、例えば特開平2−156042号公報に開
示されるように、食塩水を腐食液としたモデル腐食試験
で評価されるとおり、殆どが、自動車向けなどの用途を
念頭にしたものであった。このため、これら技術が指向
した耐食性は、もっぱら平板における耐孔空き性、腐食
減量や塗装後の耐食性についてであり、上述したような
切断端面における下地鋼板の耐錆性については、あまり
関心が払われず、わずかに次に例示する報告に止まって
いる。
【0008】特公平5−48313号公報では、重量%
で、C:0.15%以下、酸可溶Al:0.005 〜0.10%、Cr:
1.5 〜20%に、Cu:0.8 %以下、P:0.15%以下、Ni:
10%以下の1種又は2種以上を含有する鋼板を母板とす
る亜鉛系めっき鋼板が開示されている。しかし、この技
術では、Cuを添加したものであるために鉄資源として回
収する場合に分離しにくい不都合があり、また、P添加
のため靱性の低下、Ni添加のためにコスト高を招くなど
の問題があった。また、特開平10−330883号公報では、
重量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.04%以下、Mn:0.
4 %以下、P:0.04%以下、S:0.015 %以下を含み、
かつこのMnとSは、Mn(wt%)×S(wt%)≦0.003 を
満足し、さらにSとPは、S(wt%)×P(wt%)≦0.
0003を満足する範囲で含有する鋼板を母板とする亜鉛系
めっき鋼板が開示されている。しかし、この鋼板は、必
ずしも十分な耐端面錆性を有しておらず、とくに板厚が
2.0 mmを超えて厚くなった場合には、ユーザーの耐端
面錆性への要求を満足するものではなかった。
【0009】そこで、本発明の目的は、亜鉛系めっきを
施した表面処理鋼板における、従来技術が抱えているこ
のような問題点に鑑み、製品部材の再利用を可能とし、
鉄資源として回収する場合でもCuのような分離困難な成
分を含まず、しかも板厚が1.6 mm以上、とりわけ2.0
mm超えの厚い場合でも良好な耐端面錆性を発揮する表
面処理鋼板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上掲の目的
を実現すべく、耐端面錆性に有効な鋼成分について研究
を重ねた。その結果、鋼中に含まれる不純物等の成分を
制限するとともに、所定量のCrを含有させることによ
り、比較的大きい板厚であっても、良好な耐端面錆性が
得られることを知見し、この発明を完成するに至った。
その要旨構成は以下のとおりである。
【0011】(1) 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.20
%以下、Mn:0.40%以下、P:0.04%以下、S:0.0050
%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.0 〜10.0%を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の少な
くとも片面に、片面当たりのZn付着量5g/m以上の
亜鉛系めっき層を形成してなることを特徴とする耐端面
錆性に優れる表面処理鋼板。
【0012】(2) 上記亜鉛系めっき層の表面に、無機被
膜層、あるいは該無機被膜層の表面にさらに有機被膜層
を形成してなることを特徴とする上記 (1)に記載の耐端
面錆性に優れる表面処理鋼板。
【0013】(3) 上記亜鉛系めっき層の表面に、無機有
機複合被膜層、あるいは該無機有機複合被膜層の表面に
さらに有機被膜層を形成してなることを特徴とする上記
(1)に記載の耐端面錆性に優れる表面処理鋼板。
【0014】(4) 最表面に位置する、無機被膜層、有機
被膜層または無機有機複合被膜層に、ポリエチレンワッ
クスを含有させてなることを特徴とする、上記 (2)また
は (3)に記載の耐端面錆性に優れる表面処理鋼板。
【0015】
【発明の実施の形態】発明者らは、大気中、とくに屋内
使用環境下における鋼板の腐食が、自動車の腐食などNa
Clの存在により発生する腐食とは異なり、大気中の水蒸
気が凝結して生成した凝結水の存在によって起こること
に鑑み、切断端面で凝結水が存在しても、良好な耐端面
錆性を発揮する鋼成分について調査、研究した。その結
果、不純物成分をはじめとする鋼成分の含有量を制限し
て、端面錆の発生起点(発錆点)を極力低減させるとと
もに、地鉄の耐食性を高めることにより、両者の複合効
果が発揮されて、耐端面錆性が格段に向上することを見
いだしたのである。
【0016】以下に、鋼成分および表面処理を限定した
理由を説明する。 C:0.10%以下 Cは、耐食性を低下させるほか、鋼中のCrと結合してク
ロム炭化物を形成し、耐食性に寄与する有効なCr量を減
少させる。このため、C含有量は0.10%以下に制限す
る。
【0017】Si:0.20%以下 Siは、製鋼における脱酸に有用な成分であるが、フェラ
イトを脆くし、表面処理性を劣化させる。このため、Si
量は上限を0.20%とする。
【0018】Mn:0.40%以下 Mnは、Siと同様に、製鋼上有用な成分であるが、あまり
多量に含むと、MnS、MnO等を形成して耐食性を劣化さ
せる。よって、Mn量は上限を0.40%とする。
【0019】P:0.04%以下 Pは、耐孔あき性や耐候性の点から有用な成分とされて
いるが、本発明における耐端面錆性の点からは、含有量
が少ない方が有効である。その理由は、凹凸のある破断
部で結露した際に、Pの一部が溶解し局部電池を形成
し、錆の起点となるからであると思われる。また、Pは
靱性を低下させる成分でもある。よって、P量は0.04%
以下に制限する。
【0020】S:0.0050%以下 Sは、端面錆発生の起点となり、耐端面錆性に有害な元
素であるので、0.0050%以下、好ましくは0.0005%以下
に制限する。
【0021】Al:0.01〜0.07% Alは、製鋼における脱酸、脱窒のために必要な成分であ
り、少なくとも0.01%は必要であるが、過多に含有する
と靱性の劣化を招くので上限は0.07%とする。
【0022】Cr:2.0 〜10.0% Crは、耐食性を高め、耐端面錆性を向上させるのに有用
な成分である。このような効果を発揮させるに必要なCr
量は2.0 %以上であるが、10.0%を超えるとめっき密着
性を確保できなくなる。このため、Cr含有量は2.0 〜1
0.0%とする。なお、本発明におけるCr量は高々10.0%
であり、ステンレス鋼中に含まれるCr量10.5%以上より
も少なくてすむ。このように、本発明で少量のCr含有量
にもかかわらず耐食性(耐端面錆性)が大幅に改善され
る機構は必ずしも明らかではないが、C、Mn、Pおよび
Sの含有量を一定値以下に制限したことと密接に関係し
ているものと考えている。すなわち、C、Mn、Pおよび
Sは析出物を形成して発錆点となって腐食を促進する有
害な成分であり、本発明のように、C、Mn、P、Sの含
有量を低値に制限することにより、これらの析出物も極
めて少量となり発錆点を抑制できる。さらに、Mn、P、
Sは鋼板表面に濃化してCr酸化物の形成を抑制するが、
本発明では表面濃化成分が少なくなり、Cr酸化物の形成
を容易にしている。このようなことから、10.0%以下の
比較的少量のCr量でも、鋼板の端面に、保護被膜として
のCr酸化膜が効果的に形成され、亜鉛の犠牲防食作用と
相まって、耐端面錆性が向上する。
【0023】表面処理 本発明の表面処理鋼板は、上述した成分の鋼板の表面の
少なくとも片面に、犠牲防食作用を有する亜鉛系めっき
を施すことにより、耐端面錆性をより一層向上させるこ
とができる。めっきの方法としては、溶融めっき、電気
めっき、蒸着めっき等いかなる方法でもよい。また、め
っき金属は、Zn単一系のほか、Zn−Ni、Zn−F
e、Zn−Al、Zn−Crなどの2元系、Zn−Fe
−Alの3元系などの多元合金、あるいはZn−SiO
、Zn−SiO−Co、Zn−SiO−Cr、Z
n−樹脂などの分散めっきなど亜鉛系のめっきであれば
いかなるものでもその効果が発揮される。めっきの付着
量は、片面あたり、Zn付着量に換算して、5g/m
以上必要である。付着量が5g/m未満では、切断端
面におけるZnによる犠牲防食作用が不十分である。な
お、付着量の上限は特に定める必要はないが、150 g/
を超えてもさらなる効果が期待できないので、150
g/mで十分である。
【0024】本発明の効果は、上記亜鉛系めっきのまま
でも得られるが、さらに、未塗装で使用する場合の平板
部の赤錆対策、塗装などの被覆処理を行って使用する場
合の平板部の耐食性向上、あるいは耐食性以外の耐指紋
性の付与などのために、亜鉛系めっきを行った後に、ク
ロメート処理などによる無機被膜、あるいはさらに有機
被膜を形成させること、また前記無機被膜に替えて無機
有機複合被膜を形成させることなどは、良好な耐端面錆
性とともに平板部の特性を付与する上で望ましい。本発
明鋼板の主たる用途となる家電、事務機器等の利用分野
においては、耐指紋性も重要な製品特性の一つであり、
上記クロメート処理は耐指紋性の向上にも有効な処理と
なる。
【0025】亜鉛系めっきの表面に形成させる無機被膜
層としては、クロメート被膜層、特に、Cr付着量を10
〜80mg/m(金属Cr換算)、シリカ付着量を50〜350
mg/mとするシリカ含有クロメート被膜層が望まし
い。というのは、クロメート被膜層中のCrが金属Cr
換算で10mg/m未満では、耐指紋性が悪く、また亜鉛
めっきの白錆発生の抑制も劣り、結果として端面部の犠
牲防食性効果を劣化させる方向に働く。一方金属Cr換
算で80mg/mを超えると6価Crの溶出量が多くな
り、製品加工メーカーにおけるアルカリ脱脂液を汚染さ
せることにもなり、また経済的にも不利になるからであ
る。さらに、シリカ含有量が50mg/m未満では耐指紋
性が悪く、亜鉛めっきの白錆発生の抑制が劣り、一方35
0 mg/mを超えると6価Crの溶出量が多くなり、製
品加工メーカーのアルカリ脱脂液を汚染することなどの
弊害があり、また経済的にも不利になるからである。亜
鉛系のめっき層の表面に形成させる無機被膜としては、
上記クロメート被膜のほか、Zn、Mg、Ca、Mn、
Alなどの金属リン酸塩被膜などの耐食性向上に効果の
ある無機被膜であれば特に限定はしない。
【0026】上記クロメート被膜層の上に、必要によっ
ては、さらに有機被膜層(樹脂層)を形成することも可
能である。樹脂層を形成することによって、さらに平坦
部の耐食性と耐指紋性を長期に安定化させることができ
る。樹脂層の付着量としては、0.1 〜3.0 g/mが好
ましい。0.1 g/m未満では樹脂層の効果が十分では
なく、3.0 g/mを超えて形成しても樹脂層の効果は
飽和し、経済的に不利となる。クロメート被膜層の上
に、塗装、または塩化ビニールやポリエチレン等の高分
子フイルムを接着して、PCM鋼板としてもよい。
【0027】亜鉛系めっき層の表面に形成させる無機有
機複合被膜としては、樹脂とシリカやシラン化合物から
なる被膜など、耐食性向上に効果のあるものであれば特
に限定しない。こうした無機有機複合被膜層の上に、無
機被膜層の場合と同様に、必要によっては、さらに有機
被膜層を形成することも可能である。また、本発明にお
いては、表面処理鋼板のプレス成形時の摺動性を向上さ
せるために、上述した各被膜層のうち最表面に位置す
る、無機被膜層、有機被膜層または無機有機複合被膜層
に、ポリエチレンワックスを等を添加してもよい。
【0028】上述した本発明に従う表面処理鋼板の耐端
面錆性は、鋼板板厚が1.6 mm以上、とくに2.0 mm超
えにおいて、その効果が顕著に発揮される。というの
は、板厚が前記の厚みよりも薄いときには、打ち抜きあ
るいは剪断による切断端面に回り込んだ、めっき層のZ
nによる犠牲防食作用によって、耐端面錆性が向上する
からである。このような効果は、鋼板板厚5.0 mmまで
は得ることができる。
【0029】
【実施例】表1に示す成分組成からなる各種板厚の鋼母
板に、種々の表面処理を施した。これらの表面処理層は
以下に示すような1層(亜鉛めっき層)〜3層よりなる
ものである。 (1) 電気亜鉛めっきによる片面当たり3〜20g/m
の亜鉛めっき層(実験 No.1〜7および No.21〜32) (2) 溶融亜鉛めっきによる片面当たり40〜150g/
の亜鉛めっき層(実験 No.8〜10) (3) 溶融亜鉛めっきによる60g/mの亜鉛めっき層
の表面に、Cr還元率(3価Cr/全Cr)40%のク
ロメート液を金属Cr換算で40mg/m塗布し、1
00〜300℃で焼き付けたクロメート層からなる無機
被膜層(実験 No.11) (4) 電気亜鉛めっきによる16g/mの亜鉛めっき層
の表面に、Cr還元率(3価Cr/全Cr)40%のク
ロメート液を金属Cr換算で40mg/m塗布し、1
00〜300℃で焼き付けたクロメート層からなる無機
被膜層、さらにその表面に、カルボキシル基を含むポリ
オレフィン樹脂と、エポキシ樹脂とを含む水分散液を塗
布し焼付けた樹脂層からなる有機被膜層(実験 No.12) (5) (4)における最表層の樹脂層からなる有機被膜層に
ポリエチレンワックスを含むもの(実験 No.13) (6) 電気亜鉛めっきによる16g/mの亜鉛めっき層
の表面に、Cr還元率(3価Cr/全Cr)40%で液
相シリカを含むクロメート液を金属Cr換算で40mg
/m塗布し、100〜300℃で焼き付けたクロメー
ト層からなる無機被膜層(実験 No.14) (7) 電気亜鉛めっきによる16g/mの亜鉛めっき層
の表面に、Cr還元率(3価Cr/全Cr)40%で液
相シリカを含むクロメート液を金属Cr換算で40mg
/m塗布し、100〜300℃で焼き付けたクロメー
ト層からなる無機被膜層、さらにその表面に、カルボキ
シル基を含むポリオレフィン樹脂と、エポキシ樹脂と、
コロイダルシリカとを含む水分散液を塗布し焼付けた樹
脂層からなる有機被膜層(実験 No.15) (8) 溶融亜鉛めっきによる60g/mの亜鉛めっき層
の表面に、Zn2+、Ni2+、Mn2+をそれぞれ1
g/l含有する化成処理液を用いた浸漬タイプのリン酸
亜鉛処理による無機被膜層(実験 No.16) (9) 電気亜鉛めっきによる16g/mの亜鉛めっき層
の表面に、リン酸亜鉛とコロイダルシリカとポリエチレ
ンワックスを含む水分散液を塗布し焼付けた被膜層(実
験 No.17) (10) 電気亜鉛めっきによる片面当たり16g/m
亜鉛めっき層の表面に、カルボキシル基を含むポリオレ
フィン樹脂と、エポキシ樹脂と、シランカップリング剤
と、コロイダルシリカとを含む水分散液を塗布し焼付け
た無機有機複合被膜層(実験 No.18) (11) 電気亜鉛めっきによる片面当たり16g/m
亜鉛めっき層の表面に、カルボキシル基を含むポリオレ
フィン樹脂と、エポキシ樹脂と、シランカップリング剤
と、コロイダルシリカとを含む水分散液を塗布し焼付け
た無機有機複合被膜層、さらにその表面に、カルボキシ
ル基を含むポリオレフィン樹脂と、エポキシ樹脂とを含
む水分散液を塗布し焼付けた樹脂層からなる有機被膜層
(実験 No.19) (12) 電気亜鉛めっきによる16g/mの亜鉛めっき
層の表面に、カルボキシル基を含むポリオレフィン樹脂
と、エポキシ樹脂と、シランカップリング剤と、コロイ
ダルシリカと、ポリエチレンワックスを含む水分散液を
塗布し焼付けた被膜層(実験 No.20) なお、亜鉛めっきを施さないもの(実験 No.33、34)も
製造した。
【0030】
【表1】
【0031】このようにして得られた表面処理鋼板を、
剪断機により切断(剪断条件は板厚に対する剪断部の長
さの割合:30〜60%とした)し、耐端面錆性を調査し
た。耐錆性の評価は、切断した供試サンプルを、一旦15
℃に保持した後、温度30℃、湿度85%の恒温恒湿試験機
に入れて結露を生じさせ、1日保管した。この処理を1
サイクルとして、赤錆発生率(=端面の赤錆面積/端面
の被検総面積)5%までのサイクル数を観察して、この
サイクル数が100 以上を◎、55〜99を○、10〜49を△、
9以下を×として評価する厳しい評価を行った。なお、
赤錆発生率はサイクル毎に、目視あるいは断面写真を画
像解析することにより求めるこどかできる。
【0032】また、一部の供試材については、耐指紋
性、摺動性についても調査した。耐指紋性は、白色ワセ
リンを薄く塗布し、その前後のハンターLab表色系
(JIS Z8730) SMカラーコンピュータSM3(スガ試験
機製) により、ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δ
b)1/2を計算し、ΔEが2.0 未満を◎、2.0 〜
3.0 を○、3.0 超〜5.0 を△、5.0 超を×として評価し
た。また、摺動性は、表面粗さがRa0.1 μm以下の平
坦な表面の工具を用い、幅20mmの試験片を法線方向
に9.8 N/mm (1kgf/mm ) の荷重Pをか
けながら、引き抜き速度20mm/sで試験片を引き抜
く時の引く抜き力Fを測定し、μ=F/2Pを計算し、
μが0.20未満を○、μが0.20〜0.30を△、0.30超えを×
として評価した。これらの評価結果を、母板No. 、板
厚、被膜層の組み合わせとともに表2、3に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】表2、3に示す結果から明らかなように、
本発明に従う表面処理鋼板は、板厚が大きいにもかかわ
らずすべて、サイクル数50以上の成績を示し、良好な
耐端面錆性を有していることがわかる。また、実験 No.
12〜15、17〜20の表面処理鋼板は、良好な耐端面錆性に
加えて耐指紋性にも優れており、ポリエチレンワックス
を最表層に含む No.13、17、20の表面処理鋼板は、耐端
面錆性に加えて摺動特性にも優れていることが示され
る。これに対し、比較例である、 No.21〜34はいずれも
耐端面錆性が劣っていた。また、 No.22、23では不めっ
き、 No.27では介在物欠陥が生じるという問題があっ
た。
【0036】上記実施例における、端面錆発生促進試験
は、実機の端面錆発生傾向と良好な相関があることを予
め確認して採用したものである。なお、従来の試験方法
は、実機における端面錆発生との関係を十分に考慮した
ものではなかった。発明者らが検討したところ、端面錆
発生促進試験方法としては、上記実施例で用いた条件が
最適であるが、使用する環境に合わせて変えることがで
きる。すなわち、試験片の冷却保持温度を10〜30℃の範
囲とし、恒温恒湿試験では温度25〜40℃、湿度75〜95%
の範囲とし、また、恒温恒湿試験機に保持する時間は前
記実施例での1日としてもよいが、20〜60分程度に短縮
してもよい。これは、結露が恒温恒湿試験機に入れて20
分以内に消失しこの間に錆発生が完了するからである。
このような条件での端面錆促進試験を行っても、本発明
はすべて優れた耐端面錆性を発揮するのはもちろんのこ
と、実際に事務機器内に強度部材として採用した時にも
優れた耐端面錆性を有しており、回収部材の再利用が可
能となる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
耐端面錆性に一層優れた表面処理鋼板を提供することが
可能となる。また、本発明によれば、Zn系めっき層を
有する状態、めっき層表面に無機被膜層を有する状態、
あるいはめっき層−無機被膜層−有機被膜層を有する状
態等のいずれの場合であっても、耐端面錆性が良好な表
面処理鋼板が得られる。また、めっき層表面に無機被膜
層を有する状態、あるいはめっき層−無機被膜層−有機
被膜層を有する状態の場合には、耐端面錆性に加えて耐
指紋性および/または摺動性にも優れた表面処理鋼板が
得られる。したがって、本発明によれば、切断加工後に
端面塗装などの特別な処理を行うことなく、耐端面錆性
を向上させ得るので、製品コストの大幅な低減が可能と
なる。また、製品部材の再利用が可能となり、地球環境
の保護に貢献するところ大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海野 茂 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 AE03 BB87X CA33 DA06 DB05 DC18 DC38 EA37 EB13 4K044 AA02 AB02 BA10 BA14 BA15 BA17 BA21 BB04 BB05 BC02 CA11 CA16 CA18 CA53

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.10%以下、 Si:0.20%以下、 Mn:0.40%以下、 P:0.04%以下、 S:0.0050%以下、 Al:0.01〜0.07%、 Cr:2.0 〜10.0% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼板
    の少なくとも片面に、片面当たりのZn付着量5g/m
    以上の亜鉛系めっき層を形成してなることを特徴とする
    耐端面錆性に優れる表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 上記亜鉛系めっき層の表面に、無機被膜
    層、あるいは該無機被膜層の表面にさらに有機被膜層を
    形成してなることを特徴とする請求項1に記載の耐端面
    錆性に優れる表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 上記亜鉛系めっき層の表面に、無機有機
    複合被膜層、あるいは該無機有機複合被膜層の表面にさ
    らに有機被膜層を形成してなることを特徴とする請求項
    1に記載の耐端面錆性に優れる表面処理鋼板。
  4. 【請求項4】 最表面に位置する、無機被膜層、有機被
    膜層または無機有機複合被膜層に、ポリエチレンワック
    スを含有させてなることを特徴とする、請求項2または
    3に記載の耐端面錆性に優れる表面処理鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010190320A (ja) * 2009-02-18 2010-09-02 Honda Motor Co Ltd 締結部材、及び、締結部材の表面処理方法

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