JP2002155041A - 芳香族アクリロニトリル誘導体の製法 - Google Patents

芳香族アクリロニトリル誘導体の製法

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(57)【要約】 【課題】 本発明は、温和な条件下、簡便な方法によっ
て芳香族カルボキシアルデヒド誘導体から、芳香族アク
リロニトリル誘導体(好ましくはトランス体)を製造す
ることが出来る、工業的に有利な芳香族アクリロニトリ
ル誘導体の製法を提供することを課題とする。 【解決手段】 本発明の課題は、塩基の存在下、20〜25
℃における比誘電率が10以下の有機溶媒中で、芳香族カ
ルボキシアルデヒド誘導体にアセトニトリルを反応させ
ることを特徴とする、芳香族アクリロニトリル誘導体の
製法によって解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族カルボキシ
アルデヒド誘導体から芳香族アクリロニトリル誘導体を
製造する方法に関する。芳香族アクリロニトリル誘導体
(その中でも特にトランス体)は、医薬や農薬等の合成
中間体として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】芳香族カルボキシアルデヒド誘導体から
芳香族アクリロニトリル誘導体を製造する方法として
は、塩基の存在下、芳香族カルボキシアルデヒド誘導体
にシアノメチルホスホン酸エステルを反応させて芳香族
アクリロニトリル誘導体を製造する方法が開示されてい
る(US 4282223、Synth.Commun.,16,1761(1986)、Synth
esis,1977,126)。しかしながら、この方法で使用する
シアノメチルホスホン酸エステルは高価で、且つ工業原
料として入手が困難な化合物であり、又、リン酸廃液処
理にコストがかかる等、工業的な製造法としては問題が
あった。また、J.Org.Chem.,44,4640(1979)には、粉末
の水酸化カリウムとアセトニトリルを混合して加熱還流
させた後に、芳香族カルボキシアルデヒド誘導体と反応
させることで、芳香族アクリロニトリル誘導体を製造す
る方法が記載されている。しかし、この方法では反応条
件が厳しいために、原料の芳香族カルボキシアルデヒド
誘導体の種類によっては重合物が多く生じてしまい、目
的物(特にトランス体)の収率が極めて低くなる等の問
題があった。一方、Tetrahedron Lett.,1975,3843に
は、塩基の存在下、芳香族カルボキシアルデヒド誘導体
にシアノ酢酸を反応させて芳香族シアノカルボン酸誘導
体を合成し、次いで、それを酸化銅と反応させることで
芳香族アクリロニトリル誘導体を製造する方法が開示さ
れている。しかし、この方法は、反応系が非常に複雑で
あると共に、反応後の後処理が煩雑であり、又、目的物
の収率が低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、即
ち、上記問題点を解決し、温和な条件下、簡便な方法に
よって芳香族カルボキシアルデヒド誘導体から、芳香族
アクリロニトリル誘導体(好ましくはトランス体)を製
造することが出来る、工業的に有利な芳香族アクリロニ
トリル誘導体の製法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、塩基の
存在下、20〜25℃における比誘電率が10以下の有機溶媒
中で、一般式(1)
【0005】
【化3】
【0006】(式中、Xは、炭素原子又は窒素原子を示
す。nは、0〜4の整数を示し、Rは、反応に関与しな
い基を示す。また、nが2以上の場合には、Rは互いに
結合して飽和又は不飽和の環を形成していても良い。)
で示される芳香族カルボキシアルデヒド誘導体にアセト
ニトリルを反応させることを特徴とする、一般式(2)
【0007】
【化4】
【0008】(式中、X、n及びRは前記と同義であ
る。)で示される芳香族アクリロニトリル誘導体の製法
によって解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の反応において使用する原
料の芳香族カルボキシアルデヒド誘導体は、前記の一般
式(1)で示される。その一般式(1)において、X
は、炭素原子又は窒素原子を示す。また、nは、0〜4
の整数であり、その際、芳香族環には、n個のR、(4-
n)個の水素原子及び1個のホルミル基が直接結合して
いる。Rは、反応に関与しない基であり、具体的には、
同一或いは異なっていても良く、ハロゲン原子;置換基
を有していても良い、アルキル基、シクロアルキル基、
アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオ
キシ基、アルコキシカルボニル基又はアミノ基;カルボ
キシル基、シアノ基を示す。なお、nが2以上の場合に
は、Rは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成して
いても良い。
【0010】前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0011】前記アルキル基としては、特に炭素数1〜
10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙
げられる。なお、これらの基は異性体を含む。
【0012】前記シクロアルキル基としては、特に炭素
数3〜7のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シク
ロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シ
クロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
【0013】前記アラルキル基としては、特に炭素数7
〜10のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル
基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチ
ル基が挙げられる。なお、これらの基は異性体を含む。
【0014】前記アリール基としては、特に炭素数6〜
14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ト
リル基、ナフチル基、アントラニル基が挙げられる。な
お、これらの基は異性体を含む。
【0015】前記アルコキシ基としては、特に炭素数1
〜10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ
基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ベンジル
オキシ基が挙げられる。なお、これらの基は異性体を含
む。
【0016】前記アリールオキシ基としては、特に炭素
数6〜14のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フ
ェノキシ基、トリルオキシ基が挙げられる。なお、これ
らの基は異性体を含む。
【0017】前記アルコキシカルボニル基としては、特
に炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基が好まし
く、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニ
ル基が挙げられる。なお、これらの基は異性体を含む。
【0018】前記のアルキル基、シクロアルキル基、ア
ラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキ
シ基、アルコキシカルボニル基又はアミノ基は置換基を
有していても良い。その置換基としては、炭素原子を介
して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒
素原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子の中から選
ばれる少なくとも一つが挙げられる。
【0019】前記炭素原子を介して出来る置換基として
は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアル
キル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基等の
アリール基;カルボキシル基;シアノ基が挙げられる。
【0020】前記酸素原子を介して出来る置換基として
は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、
ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基;フェ
ノキシ基等のアリールオキシ基が挙げられる。
【0021】前記窒素原子を介して出来る置換基として
は、例えば、ニトロ基、アミノ基が挙げられる。
【0022】前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0023】本発明の反応において使用する塩基として
は、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウ
ム、水素化カルシウム等の金属水素化物;リチウムアミ
ド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミ
ド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウ
ムビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド;ナ
トリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウ
ムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、マグネシウム
メトキシド、マグネシウムエトキシド等の金属アルコキ
シド;メチルリチウム、ブチルリチウム、t-ブチルリチ
ウム等のアルキルリチウム;水酸化リチウム、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属
水酸化物が挙げられるが、好ましくは金属水素化物、金
属アルコキシド、金属水酸化物、更に好ましくは金属ア
ルコキシド、金属水酸化物が使用される。
【0024】前記塩基の使用量は、原料の芳香族カルボ
キシアルデヒド誘導体に対して、好ましくは0.5〜3.0倍
モル、更に好ましくは0.8〜2.0倍モルである。
【0025】本発明の反応において使用するアセトニト
リルの使用量は、原料の芳香族カルボキシアルデヒド誘
導体に対して、好ましくは0.9〜50倍モル、更に好まし
くは1.0〜30倍モルである。
【0026】本発明の反応は、20〜25℃における比誘電
率が10以下の有機溶媒の存在下で行われる。前記の比誘
電率は、化学便覧、改訂4版(II)(丸善株式会社)や溶
剤ハンドブック、第1版(講談社サイエンティフフィッ
ク)に記載されている値である。使用される溶媒として
は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、塩
化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族系溶
媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、
ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒;メチラール、テト
ラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げ
られる。
【0027】前記有機溶媒の使用量は、原料の芳香族カ
ルボキシアルデヒド誘導体に対して、好ましくは0.5〜5
0重量倍、更に好ましくは1〜20重量倍である。これらの
有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良
い。
【0028】本発明の反応は、例えば、塩基の存在下、
20〜25℃における比誘電率が10以下の有機溶媒中で、芳
香族カルボキシアルデヒド誘導体にアセトニトリルを反
応させる等の方法によって、常圧下又は加圧下で行われ
る。その際の反応温度は、好ましくは30〜140℃、更に
好ましくは40〜120℃である。
【0029】なお、最終生成物である芳香族アクリロニ
トリル誘導体は、例えば、反応終了後、蒸留、再結晶、
カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によっ
て分離・精製される。
【0030】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではな
い。
【0031】実施例1 攪拌装置及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フ
ラスコに、アルゴン雰囲気下、2,6-ジメチルベンズアル
デヒド3.01g(22.4mmol)、アセトニトリル4.8ml(91.9mmo
l)、トルエン(25℃における比誘電率は2.38)24ml及びナ
トリウムメトキシド1.46g(27.0mmol)を加え、70℃で6時
間反応させた。次いで、氷浴中で冷却した後、攪拌しな
がら、トルエン100ml、1mol/l塩酸27.0ml(27.0mmol)の
順でゆるやかに加え、有機層と水層に分離した。有機層
を取り出し、飽和食塩水60mlで洗浄した後、無水硫酸マ
グネシウムで乾燥した。濾過後、有機層を減圧下で濃縮
し、濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充
填剤:Daisogel 1002W(ダイソー社製)、展開溶媒:ヘキ
サン→酢酸エチル/ヘキサン(=2/98(容量比)))で精製し
て、白色固体として純度99%(高速液体クロマトグラフ
ィーによる面積百分率)の(E)-2,6-ジメチルシンナモニ
トリル3.28gを得た(単離収率92%)。(E)-2,6-ジメチル
シンナモニトリルの物性値は、以下の通りであった。
【0032】融点;64〜65℃ 元素分析;炭素83.89%、水素7.32%、窒素8.91% (理論値(C11H11N);炭素84.04%、水素7.05%、窒素8.
91%) EI-MS(m/e);157(M)、CI-MS(m/e);158(M+1) IR(KBr法、cm-1);3700〜3300、3100〜2800、2221、162
2、1464、1384、966、7861 H-NMR(CDCl3、δ(ppm));2.20(6H,s)、5.38(1H,d,J=1
7.1Hz)、6.8〜7.0(2H,m)、7.0〜7.1(1H,m)、7.37(1H,d,
J=17.1Hz)
【0033】実施例2 攪拌装置及び温度計を備えた内容積50mlのガラス製フラ
スコに、アルゴン雰囲気下、2,6-ジメチルベンズアルデ
ヒド1.00g(7.45mmol)、アセトニトリル1.6ml(30.60mmo
l)、トルエン(25℃における比誘電率は2.38)8ml及びナ
トリウムメトキシド0.49g(9.03mmol)を加え、原料のア
ルデヒドが完全に消費されるまで、70℃で6時間反応さ
せた。次いで、氷浴中で冷却した後、攪拌しながら、ト
ルエン40ml、1mol/l塩酸9.10ml(9.10mmol)の順でゆるや
かに加え、有機層と水層に分離した。有機層を取り出
し、飽和食塩水20mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウ
ムで乾燥した。濾過後、有機層を高速液体クロマトグラ
フィー(内部標準法)により分析したところ、(E)-2,6-
ジメチルシンナモニトリルが1.09g(反応収率93%)生成
していた。
【0034】実施例3 実施例2において、有機溶媒のトルエンをテトラヒドロ
フラン(25℃における比誘電率は7.58)8ml、反応温度を6
0℃、反応時間を3時間に変えたこと以外は、実施例2と
同様に反応を行った。その結果、(E)-2,6-ジメチルシン
ナモニトリルが0.77g(反応収率66%)生成していた。
【0035】比較例1 実施例2において、有機溶媒のトルエンをt-ブチルアル
コール(25℃における比誘電率は12.5)8ml、反応温度を6
0℃、反応時間を2時間に変えたこと以外は、実施例2と
同様に反応を行った。その結果、(E)-2,6-ジメチルシン
ナモニトリルが0.47g(反応収率40%)生成していた。
【0036】比較例2 実施例2において、有機溶媒のトルエンをジメチルスル
ホキシド(25℃における比誘電率は48.9)8.0ml、反応温
度を60℃、反応時間を1時間に変えたこと以外は、実施
例2と同様に反応を行った。その結果、(E)-2,6-ジメチ
ルシンナモニトリルは生成していなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明により、温和な条件下、簡便な方
法によって芳香族カルボキシアルデヒド誘導体から、芳
香族アクリロニトリル誘導体(好ましくはトランス体)
を製造することが出来る、工業的に有利な芳香族アクリ
ロニトリル誘導体の製法を提供することが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島 秀好 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇部 興産株式会社宇部研究所内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC25 AC54 BA02 BA03 BA28 BA29 BA32 BA44 BC10 QN30 4H039 CA29 CA70 CG10

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩基の存在下、20〜25℃における比誘電率
    が10以下の有機溶媒中で、一般式(1) 【化1】 (式中、Xは、炭素原子又は窒素原子を示す。nは、0
    〜4の整数を示し、Rは、反応に関与しない基を示す。
    また、nが2以上の場合には、Rは互いに結合して飽和
    又は不飽和の環を形成していても良い。)で示される芳
    香族カルボキシアルデヒド誘導体にアセトニトリルを反
    応させることを特徴とする、一般式(2) 【化2】 (式中、X、n及びRは前記と同義である。)で示され
    る芳香族アクリロニトリル誘導体の製法。
  2. 【請求項2】40〜120℃で反応させる請求項1記載の芳
    香族アクリロニトリル誘導体の製法。
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