JP2002147201A - 回転流体機械 - Google Patents

回転流体機械

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JP2002147201A
JP2002147201A JP2001264360A JP2001264360A JP2002147201A JP 2002147201 A JP2002147201 A JP 2002147201A JP 2001264360 A JP2001264360 A JP 2001264360A JP 2001264360 A JP2001264360 A JP 2001264360A JP 2002147201 A JP2002147201 A JP 2002147201A
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vane
rotor
chamber
peripheral surface
pressure
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JP2001264360A
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English (en)
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Tsuneo Endo
恒雄 遠藤
Haruhiko Komatsu
晴彦 小松
Tatsushi Sano
竜史 佐野
Kensuke Honma
健介 本間
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベーンおよびピストンを備えた回転流体機械
において、ウオータハンマー現象の発生を確実に防止す
る。 【解決手段】 ロータ31に放射状に配置した複数のシ
リンダ部材39にピストン41を摺動自在に嵌合させる
とともに、ピストン41と協働する複数のベーン42を
放射状に配置し、隣接する一対のベーン42間にベーン
室54を区画する。シリンダ部材39およびベーン室5
4から気相作動媒体を排出する排気行程の終了時から、
気相作動媒体の供給を開始する吸気行程の開始時までの
期間、シリンダ部材39およびベーン室54の容積が変
化しないようにピストン41およびベーン42の半径方
向の移動を停止させ、これによりシリンダ部材39およ
びベーン室54に閉じ込められた液相作動媒体によるウ
オータハンマー現象の発生を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膨張機あるいは圧
縮機として使用可能な回転流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】特開昭59−41602号公報には二重
マルチベーン式回転流体機械が記載されている。このも
のは、楕円形の外側カムリングと楕円形の内側カムリン
グとの間に円形のベーン支持リングを配置し、このベー
ン支持リングに半径方向に摺動自在に支持した複数のベ
ーンの外端および内端を、それぞれ外側のカムリングの
内周面および内側のカムリングの外周面に当接させたも
のである。従って、外側カムリングおよび内側カムリン
グに対してベーン支持リングが相対回転すると、外側カ
ムリングおよびベーン支持リング間でベーンにより区画
された複数のベーン室の容積が拡大・縮小して膨張機あ
るいは圧縮機として機能し、また内側カムリングおよび
ベーン支持リング間でベーンにより区画された複数のベ
ーン室の容積が拡大・縮小して膨張機あるいは圧縮機と
して機能するようになっている。
【0003】この二重マルチベーン式回転流体機械で
は、外側および内側の回転流体機械をそれぞれ独立した
膨張機として使用したり、外側および内側の回転流体機
械をそれぞれ独立した圧縮機として使用したり、外側お
よび内側の回転流体機械の一方および他方をそれぞれ膨
張機および圧縮機として使用したりすることができる。
【0004】また特開昭60−206990号公報には
膨張機あるいは圧縮機として使用可能なベーン式回転流
体機械が記載されている。このものは、同心に配置した
円形の外側カムリングと円形の内側カムリングとの間に
円形の中間シリンダを偏心させて配置し、この中間シリ
ンダに半径方向に摺動自在に支持した複数のベーンの外
端および内端を、それぞれ外側のカムリングの内周面お
よび内側のカムリングの外周面に当接させたものであ
る。従って、外側カムリングおよび内側カムリングに対
して中間シリンダが相対回転すると、外側カムリングお
よび中間シリンダ間でベーンにより区画された複数のベ
ーン室の容積が拡大・縮小して膨張機あるいは圧縮機と
して機能し、また内側カムリングおよび中間シリンダ間
でベーンにより区画された複数のベーン室の容積が拡大
・縮小して膨張機あるいは圧縮機として機能するように
なっている。
【0005】このベーン式回転流体機械では、外側およ
び内側の回転流体機械をそれぞれ独立した膨張機として
使用したり、外側および内側の回転流体機械をそれぞれ
独立した圧縮機として使用したりできるほか、外側およ
び内側の回転流体機械の一方を通過した作動媒体を他方
を通過させることにより、外側および内側の回転流体機
械を直列に接続して2段膨張機あるいは2段圧縮機とし
て作動させることができる。
【0006】また特開2000−320543号公報に
開示された回転流体機械はベーンおよびピストンを複合
したベーンピストンユニットを備えており、ロータに半
径方向に設けられたシリンダに摺動自在に嵌合するピス
トンが、環状溝とローラとで構成された動力変換装置を
介して気相作動媒体の圧力エネルギーとロータの回転エ
ネルギーとを相互に変換し、かつロータに半径方向摺動
自在に支持されたベーンが気相作動媒体の圧力エネルギ
ーとロータの回転エネルギーとを相互に変換するように
なっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かかるベーン式流体機
械において、隣接する一対のベーン間に区画されるベー
ン室の容積は排気行程において減少し、吸気行程におい
て増加するが、排気ポートおよび吸気ポート間の作動媒
体の吹き抜けを防止するためには、ベーン室が排気ポー
トおよび吸気ポートに同時に連通する期間をなくすこと
が望ましい。この場合、ベーン室および排気ポート間が
非連通状態となる排気行程の終了時から、ベーン室およ
び吸気ポート間が連通状態となる吸気行程の開始時まで
の期間に、該ベーン室の容積が増減すると次のような不
具合が発生する。
【0008】即ち、前記期間にベーン室の容積が変化す
ると、非圧縮性流体である潤滑用の水やオイルがベーン
室に閉じ込められたような場合に、いわゆるウオータハ
ンマー現象が起きて振動や騒音が発生したり、大きな荷
重が作用して耐久性が低下したりする可能性がある。ま
た膨張機では高圧ポートである吸気ポートがベーン室に
連通した瞬間に、そのベーン室を区画する一対のベーン
のうちの排気ポート側のベーンの突出量が大きいと、排
気ポート側のベーンに吸気ポートから吸入された高圧の
作動媒体の圧力が作用してしまい、ロータが逆回転した
り、ロータを逆回転させるトルクが発生したりする可能
性がある。
【0009】またピストンを備えた回転流体機械の冷間
始動時等に、シリンダに供給された気相作動媒体が冷却
されて液化する場合がある。この状態で、シリンダに気
相作動媒体を供給・排出する回転バルブの気相作動媒体
排出口が閉じてから気相作動媒体供給口が開くまでの期
間にピストンがシリンダ内を移動すると、シリンダ内に
閉じ込められた液相作動媒体が非圧縮性流体であること
から、いわゆるウオータハンマー現象が発生して振動や
騒音の原因となる可能性がある。
【0010】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもの
で、回転流体機械の作動室内に閉じ込められた液相作動
媒体によるウオータハンマー現象の発生を防止すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項1に記載された発明によれば、ロータチャン
バと、ロータチャンバの内部に回転自在に収容されたロ
ータと、ロータに半径方向に移動自在に支持された作動
部材と、ロータの回転に伴う作動部材の移動により容積
が変化する作動室とを備え、ロータの回転に応じて作動
室に供給・排出される気相作動媒体の圧力エネルギーお
よびロータの回転エネルギー間のエネルギー変換を行う
回転流体機械において、作動室から気相作動媒体を排出
する排気行程の終了時から、作動室に気相作動媒体を供
給する吸気行程の開始時までの期間、作動室の容積が略
一定値となるように作動部材の半径方向の移動を略停止
させることを特徴とする回転流体機械が提案される。
【0012】上記構成によれば、作動室から気相作動媒
体を排出する排気行程の終了時から、作動室に気相作動
媒体を供給する吸気行程の開始時までの期間、作動室の
容積が略一定値となるように作動部材の半径方向の移動
を略停止させるので、密閉された作動室に非圧縮性の液
相作動媒体が閉じ込められてもウオータハンマー現象の
発生が防止され、回転流体機械の振動、騒音、耐久性低
下を防止することができる。
【0013】また請求項2に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、前記作動部材がロータに放射
方向に出没自在に支持されてロータチャンバの内周面に
摺接する複数のベーンであり、前記作動室が隣接する2
個のベーン、ロータの外周面およびロータチャンバの内
周面によって区画される複数のベーン室であり、ベーン
室および排気ポート間が非連通状態となる排気行程終了
時から、ベーン室および吸気ポート間が連通状態となる
吸気行程開始時までの期間、ベーン室の容積が略一定値
となるようにロータチャンバの形状を設定したことを特
徴とする回転流体機械が提案される。
【0014】上記構成によれば、ロータチャンバの形状
の設定により排気行程終了時から吸気行程開始時までの
期間にベーン室の容積が略一定値となるため、排気ポー
トおよび吸気ポート間のベーン室に非圧縮性の液相作動
媒体が閉じ込められてもウオータハンマー現象の発生が
防止され、ベーン式回転流体機械の振動、騒音、耐久性
低下を防止することができる。しかもベーン式回転流体
機械が膨張器として機能する場合には、高圧ポートであ
る吸気ポートがベーン室に連通した瞬間に、その圧力が
前記ベーン室を区画する一対のベーンに均等に作用する
ので、ロータが逆回転したり、ロータを逆回転させるト
ルクが発生したりするのを防止することができる。
【0015】尚、実施例のシリンダ部材39およびベー
ン室54は本発明の作動室に対応し、実施例のピストン
41およびベーン42は本発明の作動部材に対応し、実
施例の第1、第2導入孔群107,108は本発明の吸
気ポートに対応し、実施例の第1、第2導出孔群11
0,111は本発明の排気ポートに対応する。
【0016】
【発明の実施の形態】図1において、内燃機関1の廃熱
回収装置2は、内燃機関1の廃熱、例えば排気ガスを熱
源として、高圧状態の液体、例えば水から温度上昇を図
られた高圧状態の蒸気、つまり高温高圧蒸気を発生する
蒸発器3と、その高温高圧蒸気の膨張によって出力を発
生する膨張機4と、その膨張機4から排出される、前記
膨張後の温度および圧力が降下した蒸気、つまり降温降
圧蒸気を液化する凝縮器5と、凝縮器5からの液体、例
えば水を蒸発器3に加圧供給する供給ポンプ6とを有す
る。
【0017】膨張機4は特殊な構造を有するもので、次
のように構成される。
【0018】図2〜図5において、ケーシング7は金属
製第1、第2半体8,9より構成される。両半体8,9
は、略楕円形の凹部10を有する主体11と、それら主
体11と一体の円形フランジ12とよりなり、両円形フ
ランジ12を金属ガスケット13を介し重ね合せること
によって略楕円形のロータチャンバ14が形成される。
また第1半体8の主体11外面は、シェル形部材15の
深い鉢形をなす主体16により覆われており、その主体
16と一体の円形フランジ17が第1半体8の円形フラ
ンジ12にガスケット18を介して重ね合せられ、3つ
の円形フランジ12,12,17は、それらの円周方向
複数箇所においてボルト19によって締結される。これ
により、シェル形部材15および第1半体8の両主体1
1,16間には中継チャンバ20が形成される。
【0019】両半体8,9の主体11は、それらの外面
に外方へ突出する中空軸受筒21,22を有し、それら
中空軸受筒21,22に、ロータチャンバ14を貫通す
る中空の出力軸23の大径部24が軸受メタル(または
樹脂製軸受)25を介して回転可能に支持される。これ
により出力軸23の軸線Lは略楕円形をなすロータチャ
ンバ14における長径と短径との交点を通る。また出力
軸23の小径部26は、第2半体9の中空軸受筒22に
存する孔部27から外部に突出して伝動軸28とスプラ
イン結合29を介して連結される。小径部26および孔
部27間は2つのシールリング30によりシールされ
る。
【0020】ロータチャンバ14内に円形のロータ31
が収容され、その中心の軸取付孔32と出力軸23の大
径部24とが嵌合関係にあって、両者31,24間には
かみ合い結合部33が設けられている。これによりロー
タ31の回転軸線は出力軸23の軸線Lと合致するの
で、その回転軸線の符号として「L」を共用する。
【0021】ロータ31に、その回転軸線Lを中心に軸
取付孔32から放射状に延びる複数、この実施例では1
2個のスロット状空間34が円周上等間隔に形成されて
いる。各空間34は、円周方向幅が狭く、且つロータ3
1の両端面35および外周面36に一連に開口するよう
に、両端面35に直交する仮想平面内において略U字形
をなす。
【0022】各スロット状空間34内に、同一構造の第
1〜第12ベーンピストンユニットU1〜U12が、次
のように放射方向に往復動自在に装着される。略U字形
の空間34において、その内周側を区画する部分37に
段付孔38が形成され、その段付孔38に、セラミック
(またはカーボン)よりなる段付形シリンダ部材39が
嵌入される。シリンダ部材39の小径部a端面は出力軸
23の大径部24外周面に当接し、その小径孔bが大径
部24外周面に開口する通孔cに連通する。またシリン
ダ部材39の外側に、その部材39と同軸上に位置する
ようにガイド筒40が配置される。そのガイド筒40の
外端部は、ロータ31の外周面36に存する空間34の
開口部に係止され、また内端部は段付孔38の大径孔d
に嵌入されてシリンダ部材39に当接する。またガイド
筒40は、その外端部から内端部近傍まで相対向して延
びる一対の長溝eを有し、両長溝eは空間34に面す
る。シリンダ部材39の大径シリンダ孔f内にセラミッ
クよりなるピストン41が摺動自在に嵌合され、そのピ
ストン41の先端部側は常時ガイド筒40内に位置す
る。
【0023】図2および図6に示すように、ロータ31
の回転軸線Lを含む仮想平面A内におけるロータチャン
バ14の断面Bは、直径gを相互に対向させた一対の半
円形断面部B1と、両半円形断面部B1の両直径gの一
方の対向端相互および他方の対向端相互をそれぞれ結ん
で形成される四角形断面部B2とよりなり、略競技用ト
ラック形をなす。図6において、実線示の部分が長径を
含む最大断面を示し、一方、一部を2点鎖線で示した部
分が短径を含む最小断面を示す。ロータ31は、図6に
点線で示したように、ロータチャンバ14の短径を含む
最小断面よりも若干小さな断面Dを有する。
【0024】図2および図7〜図10に明示するよう
に、ベーン42は略U字板形(馬蹄形)をなすベーン本
体43と、そのベーン本体43に装着された略U字板形
をなすシール部材44と、ベーンスプリング58とより
構成される。
【0025】ベーン本体43は、ロータチャンバ14の
半円形断面部B1による内周面45に対応した半円弧状
部46と、四角形断面部B2による対向内端面47に対
応した一対の平行部48とを有する。各平行部48の端
部側にコ字形の切欠き49と、それらの底面に開口する
四角形の盲孔50と、各切欠き49よりも、さらに端部
側に在って外方へ突出する短軸51とが設けられる。ま
た半円弧状部46および両平行部48の外周部分に、外
方に向って開口するU字溝52が一連に形成され、その
U字溝52の両端部は両切欠き49にそれぞれ連通す
る。さらに半円弧状部46の両平面部分にそれぞれ欠円
形断面の一対の突条53が設けられている。両突条53
は、それらによる仮想円柱の軸線L1が、両平行部48
間の間隔を2等分し、且つ半円弧状部46を周方向に2
等分する直線に一致するように配置されている。また両
突条53の内端部は両平行部48間の空間に僅か突出し
ている。
【0026】シール部材44は、例えばPTFEより構
成されたもので、ロータチャンバ14の半円形断面部B
1による内周面45を摺動する半円弧状部55と、四角
形断面部B2による対向内端面47を摺動する一対の平
行部56とを有する。また半円弧状部55の内周面側に
一対の弾性爪57が、内方へ反るように設けられてい
る。
【0027】ベーン本体43のU字溝52にシール部材
44が装着され、また各盲孔50にベーンスプリング5
8が嵌め込まれ、さらに各短軸51にボールベアリング
構造のローラ59が取付けられる。各ベーン42はロー
タ31の各スロット状空間34に摺動自在に収められて
おり、その際、ベーン本体43の両突条53はガイド筒
40内に、また両突条53の両側部分はガイド筒40の
両長溝e内にそれぞれ位置し、これにより両突条53の
内端面がピストン41の外端面と当接することができ
る。両ローラ59は第1、第2半体8,9の対向内端面
47に形成された非円形の環状溝60にそれぞれ転動自
在に係合される。これら環状溝60およびロータチャン
バ14間の距離はそれらの全周に亘り一定である。また
ピストン41の前進運動をベーン42を介してローラ5
9と環状溝60との係合によりロータ31の回転運動に
変換する。
【0028】このローラ59と環状溝60との協働で、
図5に明示するように、ベーン本体43の半円弧状部4
6における半円弧状先端面61はロータチャンバ14の
内周面45から、また両平行部48はロータチャンバ1
4の対向内端面47からそれぞれ常時離間し、これによ
りフリクションロスの軽減が図られている。そして、2
条一対で構成されている環状溝60により軌道を規制さ
れるため、左右の軌道誤差によりローラ59を介してベ
ーン42は軸方向に微小変位角の回転を生じ、ロータチ
ャンバ14の内周面45との接触圧力を増大させる。こ
のとき、略U字板形(馬蹄形)をなすベーン本体43で
は、方形(長方形)ベーンに比べてケーシング7との接
触部の径方向長さが短いので、その変位量を大幅に小さ
くできる。また図2に明示するように、シール部材44
において、その両平行部56は各ベーンスプリング58
の弾発力によりロータチャンバ14の対向内端面47に
密着し、特に両平行部56の端部とベーン42間を通し
ての環状溝60へのシール作用を行う。また半円弧状部
55は、両弾性爪57がベーン本体43およびロータチ
ャンバ14内の内周面45間で押圧されることによっ
て、その内周面45に密着する。即ち、方形(長方形)
ベーンに対し略U字板形のベーン42の方が変曲点を持
たないので、密着が良好となる。方形ベーンは角部があ
り、シール性維持は困難となる。これによりベーン42
およびロータチャンバ14間のシール性が良好となる。
さらに熱膨張にともない、ベーン42とロータチャンバ
14は変形する。このとき方形ベーンに対し略U字形の
ベーン42は、より均一に相似形を持って変形するた
め、ベーン42とロータチャンバ14とのクリアランス
のバラツキが少なく、シール性も良好に維持可能とな
る。
【0029】ベーン本体43とロータチャンバ14の内
周面45との間のシール作用は、シール部材44自体の
ばね力と、シール部材44自体に作用する遠心力と、高
圧側のロータチャンバ14からベーン本体43のU字溝
52に浸入した蒸気がシール部材44を押し上げる蒸気
圧とにより発生する。このように、前記シール作用は、
ロータ31の回転数に応じてベーン本体43に作用する
過度の遠心力の影響を受けないので、シール面圧はベー
ン本体43に加わる遠心力に依存せず、常に良好なシー
ル性と低フリクション性とを両立させることができる。
【0030】以上のように、ロータ31に放射状に支持
した12枚のベーン42と、ロータチャンバ14の内周
面45と、ロータ31の外周面36とによって、ロータ
31の回転に伴って容積が変化する12個のベーン室5
4(図4参照)が区画される。
【0031】図2および図3において、出力軸23の大
径部24は第2半体9の軸受メタル25に支持された厚
肉部分62と、その厚肉部分62から延びて第1半体8
の軸受メタル25に支持された薄肉部分63とを有す
る。その薄肉部分63内にセラミック(または金属)よ
りなる中空軸64が、出力軸23と一体に回転し得るよ
うに嵌着される。その中空軸64の内側に固定軸65が
配置され、その固定軸65は、ロータ31の軸線方向厚
さ内に収まるように中空軸64に嵌合された大径中実部
66と、出力軸23の厚肉部分62に存する孔部67に
2つのシールリング68を介して嵌合された小径中実部
69と、大径中実部66から延びて中空軸64内に嵌合
された薄肉の中空部70とよりなる。その中空部70の
端部外周面と第1半体8の中空軸受筒21内周面との間
にシールリング71が介在される。
【0032】シェル形部材15の主体16において、そ
の中心部内面に、出力軸23と同軸上に在る中空筒体7
2の端壁73がシールリング74を介して取付けられ
る。その端壁73の外周部から内方へ延びる短い外筒部
75の内端側は第1半体8の中空軸受筒21に連結筒7
6を介して連結される。端壁73に、それを貫通するよ
うに小径で、且つ長い内管部77が設けられ、その内管
部77の内端側は、そこから突出する短い中空接続管7
8と共に固定軸65の大径中実部66に存する段付孔h
に嵌着される。内管部77の外端部分はシェル形部材1
5の孔部79から外方へ突出し、その外端部分から内管
部77内に挿通された第1の高温高圧蒸気用導入管80
の内端側が中空接続管78内に嵌着される。内管部77
の外端部分にはキャップ部材81が螺着され、そのキャ
ップ部材81によって、導入管80を保持するホルダ筒
82のフランジ83が内管部77の外端面にシールリン
グ84を介して圧着される。
【0033】図2〜図4および図11に示すように、固
定軸65の大径中実部66に、第1〜第12ベーンピス
トンユニットU1〜U12のシリンダ部材39に、中空
軸64および出力軸23に一連に形成された複数、この
実施例では12個の通孔cを介して高温高圧蒸気を供給
し、またシリンダ部材39から膨張後の第1の降温降圧
蒸気を通孔cを介して排出する回転バルブVが次のよう
に設けられている。
【0034】図11には膨張機4の各シリンダ部材39
に所定のタイミングで蒸気を供給・排出する回転バルブ
Vの構造が示される。大径中実部66内において、中空
接続管78に連通する空間85から互に反対方向に延び
る第1、第2孔部86,87が形成され、第1、第2孔
部86,87は大径中実部66の外周面に開口する第
1、第2凹部88,89の底面に開口する。第1、第2
凹部88,89に、供給口90,91を有するカーボン
製第1、第2シールブロック92,93が装着され、そ
れらの外周面は中空軸64内周面に摺擦する。第1、第
2孔部86,87内には同軸上に在る短い第1、第2供
給管94,95が遊挿され、第1、第2供給管94,9
5の先端側外周面に嵌合した第1、第2シール筒96,
97のテーパ外周面i,jが第1、第2シールブロック
92,93の供給口90,91よりも内側に在ってそれ
に連なるテーパ孔k,m内周面に嵌合する。また大径中
実部66に、第1、第2供給管94,95を囲繞する第
1、第2環状凹部n,oと、それに隣接する第1、第2
盲孔状凹部p,qとが第1、第2シールブロック92,
93に臨むように形成され、第1、第2環状凹部n,o
には一端側を第1、第2シール筒96,97外周面に嵌
着した第1、第2ベローズ状弾性体98,99が、また
第1、第2盲孔状凹部p,qには第1、第2コイルスプ
リング100,101がそれぞれ収められ、第1、第2
ベローズ状弾性体98,99および第1、第2コイルス
プリング100,101の弾発力で第1、第2シールブ
ロック92,93を中空軸64内周面に押圧する。
【0035】また大径中実部66において、第1コイル
スプリング100および第2ベローズ状弾性体99間な
らび第2コイルスプリング101および第1ベローズ状
弾性体98間に、常時2つの通孔cに連通する第1、第
2凹状排出部102,103と、それら排出部102,
103から導入管80と平行に延びて固定軸65の中空
部r内に開口する第1、第2排出孔104,105とが
形成されている。
【0036】これら第1シールブロック92と第2シー
ルブロック93といったように、同種部材であって、
「第1」の文字を付されたものと「第2」の文字を付さ
れたものとは、固定軸65の軸線に関して点対称の関係
にある。
【0037】固定軸65の中空部r内および中空筒体7
2の外筒部75内は第1の降温降圧蒸気の通路sであ
り、その通路sは、外筒部75の周壁を貫通する複数の
通孔tを介して中継チャンバ20に連通する。
【0038】図2および図5に示すように、第1半体8
の主体11外周部において、ロータチャンバ14の短径
の両端部近傍に、半径方向に並ぶ複数の導入孔106よ
りなる第1、第2導入孔群107,108が形成され、
中継チャンバ20内の第1の降温降圧蒸気がそれら導入
孔群107,108を経てロータチャンバ14内に導入
される。また第2半体9の主体11外周部において、ロ
ータチャンバ14の長径の一端部と第2導入孔群108
との間に、半径方向および周方向に並ぶ複数の導出孔1
09よりなる第1導出孔群110が形成され、また長径
の他端部と第1導入孔群107との間に、半径方向およ
び周方向に並ぶ複数の導出孔109よりなる第2導出孔
群111が形成される。これら第1、第2導出孔群11
0,111からは、相隣る両ベーン42間での膨張によ
り、さらに温度および圧力が降下した第2の降温降圧蒸
気が外部に排出される。
【0039】出力軸23等は水により潤滑されるように
なっており、その潤滑水路は次のように構成される。即
ち、図2および図3に示すように第2半体9の中空軸受
筒22に形成された給水孔112に給水管113が接続
される。給水孔112は、第2半体9側の軸受メタル2
5が臨むハウジング114に、またそのハウジング11
4は出力軸23の厚肉部分62に形成された通水孔u
に、さらにその通水孔uは中空軸64の外周面母線方向
に延びる複数の通水溝v(図11も参照)に、さらにま
た各通水溝vは第2半体8側の軸受メタル25が臨むハ
ウジング115にそれぞれ連通する。また出力軸23の
厚肉部分62内端面に、通水孔uと、中空軸64および
固定軸65の大径中実部66間の摺動部分とを連通する
環状凹部wが設けられている。
【0040】これにより、各軸受メタル25および出力
軸23間ならびに中空軸64および固定軸65間が水に
より潤滑され、また両軸受メタル25および出力軸23
間の間隙からロータチャンバ14内に進入した水によっ
て、ケーシング7と、シール部材44および各ローラ5
9との間の潤滑が行われる。
【0041】図4において、ロータ31の回転軸線Lに
関して点対称の関係にある第1および第7ベーンピスト
ンユニットU1,U7は同様の動作を行う。これは、点
対称の関係にある第2、第8ベーンピストンユニットU
2,U8等についても同じである。
【0042】例えば、図11も参照して、第1供給管9
4の軸線がロータチャンバ14の短径位置Eよりも図4
において反時計方向側に僅かずれており、また第1ベー
ンピストンユニットU1が前記短径位置Eに在って、そ
の大径シリンダ孔fには高温高圧蒸気は供給されておら
ず、したがってピストン41およびベーン42は後退位
置に在るとする。
【0043】この状態からロータ31を僅かに、図4反
時計方向に回転させると、第1シールブロック92の供
給口90と通孔cとが連通して導入管80からの高温高
圧蒸気が小径孔bを通じて大径シリンダ孔fに導入され
る。これによりピストン41が前進し、その前進運動は
ベーン42がロータチャンバ14の長径位置F側へ摺動
することによって、ベーン42を介して該ベーン42と
一体のローラ59と環状溝60との係合によりロータ3
1の回転運動に変換される。通孔cが供給口90からず
れると、高温高圧蒸気は大径シリンダ孔f内で膨張して
ピストン41をなおも前進させ、これによりロータ31
の回転が続行される。この高温高圧蒸気の膨張は第1ベ
ーンピストンユニットU1がロータチャンバ14の長径
位置Fに至ると終了する。その後は、ロータ31の回転
に伴い大径シリンダ孔f内の第1の降温降圧蒸気は、ベ
ーン42によりピストン41が後退させられることによ
って、小径孔b、通孔c、第1凹状排出部102、第1
排出孔104、通路s(図3参照)および各通孔tを経
て中継チャンバ20に排出され、次いで図2および図5
に示すように、第1導入孔群107を通じてロータチャ
ンバ14内に導入され、相隣る両ベーン42間でさらに
膨張してロータ31を回転させ、その後第2の降温降圧
蒸気が第1導出孔群110より外部に排出される。
【0044】このように、高温高圧蒸気の膨張によりピ
ストン41を作動させてベーン42を介しロータ31を
回転させ、また高温高圧蒸気の圧力降下による降温降圧
蒸気の膨張によりベーン42を介しロータ31を回転さ
せることによって出力軸23より出力が得られる。
【0045】図12(A)には本実施例の環状溝60の
形状が示され、図12(B)には従来例の環状溝60の
形状が示される。従来例の環状溝60は楕円形状である
のに対し、本実施例の環状溝60は4つの頂点を丸めた
菱形状とされる。その結果、従来例ではロータチャンバ
14の内周面45とロータ31の外周面36とのクリア
ランスが位相0°のP1点および位相180°のP2点
において最小値になり、その前後で最小値から漸増して
いる。一方、本実施例ではロータチャンバ14の内周面
45とロータの31の外周面36とのクリアランスがP
1点およびP2点を基準とする±16°の範囲において
一定の最小値に保持され、その前後で最小値から漸増し
ている。つまり、前記±16°の範囲においてロータチ
ャンバ14の内周面45および環状溝60は軸線Lを中
心とする部分円弧を構成している。
【0046】回転バルブVは、位相0°のP1点および
位相180°のP2点を基準とする−16°の位置で通
孔cおよび第1、第2凹状排出部102,103の連通
が遮断して蒸気の排出が終了し、位相0°のP1点およ
び位相180°のP2点を基準とする+16°の位置で
供給口90,91および通孔cが連通して蒸気の供給が
開始される。従って、P1点およびP2点を基準とする
±16°の範囲においてシリンダ部材39の内部空間が
密閉されることになる。シリンダ部材39の内部空間が
密閉された状態でピストン41が移動した場合、シリン
ダ部材39内に圧縮性の蒸気が存在していれば問題がな
いが、非圧縮性の水が存在していればウオータハンマー
現象が発生することになる。シリンダ部材39に供給さ
れるのは高温高圧蒸気であるが、膨張機4の冷間始動時
等にシリンダ部材39に供給された高温高圧蒸気が冷却
されて液化すると、シリンダ部材39内に水が滞留して
ウオータハンマー現象を起こす可能性がある。
【0047】しかしながら本実施例では、シリンダ部材
39の内部空間が密閉される領域、つまりP1点および
P2点を基準とする±16°の範囲で環状溝60は軸線
Lを中心とする部分円弧を成しているため、ピストン4
1がシリンダ部材39に対して移動しないようにしてウ
オータハンマー現象の発生を確実に防止することができ
る。
【0048】図13(A)には本実施例の吸気・排気タ
イミングが示され、図13(B)には従来例の吸気・排
気タイミングが示される。尚、上記何れの場合にも、ロ
ータ31には12枚のベーン42が等間隔で支持されて
おり、従って隣接する一対のベーン42が成す中心角は
30°となる。図13(B)に示す従来例は、一対のベ
ーン42により区画されたベーン室54と第1、第2導
出孔群110,111の導出孔109との連通が遮断さ
れるときのベーン42の位相(排気終了位相)が、P1
点およびP2点を基準として−24°に設定され、ベー
ン室54が第1、第2導入孔群107,108の導入孔
106と連通するときのベーン42の位相(吸気開始位
相)が、P1点およびP2点を基準として+4°に設定
されている。従って、ベーン室54と低圧の導出孔10
9との連通が遮断された瞬間に、ベーン室54は既に高
圧の導入孔106に連通しているために蒸気が導入され
る。このとき、−24°の排気終了位相と+4°の吸気
開始位相が非対称であるため、ベーン室54を区画する
一対のベーン42のうち、回転方向遅れ側のベーン42
の突出量が回転方向進み側のベーン42の突出量よりも
大きくなり、回転方向遅れ側のベーン42により大きな
蒸気圧が作用してロータ31の回転方向と逆方向のトル
クが作用してしまう。その結果、始動時にロータ31の
逆回転現象が発生したり、運転中にトルク変動による振
動が発生したりする可能性がある。
【0049】また図13(B)に示す従来例は、排気終
了位相と吸気開始位相との位相差が28°であってベー
ン間角度の30°よりも小さいため、ベーン室54が高
圧の導入孔106および低圧の導出口109に同時に連
通する期間が存在し、この期間に導入孔106から導出
口109への蒸気の吹き抜けが僅かに発生する。この蒸
気の吹き抜けを回避するにはベーン室54が高圧の導入
孔106および低圧の導出口109に同時に連通する期
間を無くすことが必要であり、そのために例えば吸気開
始位相を+4°から+6°に増加させると、ベーン室5
4と低圧の導出孔109との連通が遮断され、かつベー
ン室54が高圧の導入孔106に連通する瞬間にベーン
室54の容積が一時的に減少することになる。これは排
気終了位相と吸気開始位相とが前後非対称であることに
起因している。このようにして密閉されたベーン室54
の容積が減少すると、蒸気が液化した水や潤滑用の水が
前記ベーン室54に閉じ込められている場合に、ウオー
タハンマー現象が発生して振動、騒音、耐久性の低下等
の原因となる可能性がある。
【0050】それに対して、図13(A)に示す本実施
例は、排気終了位相および吸気開始位相がそれぞれ−1
5°および+15°に設定されており、かつ位相が−1
6°〜+16°の区間でロータチャンバ14内周面45
およびロータ31外周面36間のクリアランスが一定に
設定されている。従って、高圧の導入孔106からベー
ン室54に蒸気が供給されたとき、ベーン室54を区画
する一対のベーン42のうち、回転方向遅れ側のベーン
42の突出量および回転方向進み側のベーン42の突出
量が共に前記クリアランスと等しくなり、ロータ31の
回転方向と逆方向のトルクが作用するのを防止してロー
タ31の逆回転現象やトルク変動の発生を回避すること
ができる。しかもベーン室54と低圧の導出孔109と
の連通が遮断され、かつベーン室54が高圧の導入孔1
06に連通する瞬間に、一定のクリアランスを有するベ
ーン室54は容積が変化しないため、ベーン室54に水
が閉じ込められていてもウオータハンマー現象が発生す
る虞がなくなり、振動、騒音、耐久性の低下等を確実に
防止することができる。
【0051】ところで、蒸気の圧力エネルギーを機械エ
ネルギーに効率的に変換するには、導入孔106からベ
ーン室54に吸入された蒸気が導出孔109から排出さ
れるまでの膨張比を大きくすることが必要であり、その
ためには吸気開始位相をできるだけ早めることが望まし
い。しかしながら、本実施例の吸気開始位相は+15°
であって従来例の吸気開始位相の+4°よりも遅れてい
るので、膨張比を大きく確保する上では不利である。そ
こで、本実施例では吸気行程初期における蒸気の吸入体
積が小さくなるようなロータチャンバ14の内周面45
の形状(つまり環状溝60の形状)を採用し、従来例と
同等の膨張比を確保している。
【0052】図14から明らかなように、楕円状の環状
溝60を備えた従来例は、吸気開始位相が+4°であっ
て膨張比は約20であるが、上述した逆回転現象やウオ
ータハンマー現象を防止すべく環状溝60の形状を変え
ずに吸気開始位相を+4°から+15°まで遅らせる
と、膨張比は20から7まで低下してしまう(破線参
照)。しかしながら、本実施例の4つの頂点を丸めた菱
形状の環状溝60を採用することにより、吸気開始位相
を+15°まで遅らせても20を越える膨張比を確保す
ることができる(実線参照)。
【0053】さて、膨張機4の運転中に環状溝60に係
合して転動する12個のローラ59にはピストン圧力荷
重、遠心力荷重およびベーン押下荷重の3種類の荷重が
作用する。ピストン圧力荷重は、ローラ59に接続され
たピストン41が蒸気圧で半径方向外側に押し出される
荷重であり、その大きさはシリンダ部材39に供給され
てピストン41を押圧する蒸気の圧力や量に依存し、そ
の方向は正方向(半径方向外向き)である。遠心力荷重
は、ローラ59を一体に備えたベーンピストンユニット
U1〜U12が遠心力で半径方向外側に押し出される荷
重であり、その大きさはベーンピストンユニットU1〜
U12の質量、半径方向位置および角速度に依存し、そ
の方向は正方向(半径方向外向き)である。ベーン押下
荷重は、ローラ59に接続されたベーン42の外周面が
ベーン室54の蒸気圧で押し戻される荷重であり、その
大きさはベーン室54に供給されてベーン42の外周面
を押圧する蒸気の圧力や量に依存し、その方向は負方向
(半径方向内向き)である。これら3種類の荷重はロー
タ31の半回転を周期として刻々変化し、その総和であ
るトータル荷重の反作用が環状溝60からローラ59に
繰り返し作用し、ローラ59の耐久性に影響を与えるこ
とになる。
【0054】図15には本実施例の前記各荷重およびト
ータル荷重の変化が示され、また図16には従来例の前
記各荷重およびトータル荷重の変化が示される。図15
および図16の何れの場合にも、ピストン圧力荷重は位
相が40°未満の領域、つまりシリンダ部材39に蒸気
が供給される領域でフラットなピーク値をとり、そこか
ら次第に減少する。遠心力荷重は位相が90°近傍の領
域、つまりベーンピストンユニットU1〜U12が半径
方向外側に最も移動する領域でピーク値をとり、その前
後で減少する。ベーン押下荷重は位相が0°に近い領域
と180°に近い領域、つまりベーン室54が導入口1
06に連通する領域で負のフラットなピーク値をとり、
その他の領域では小さい負値をとる。
【0055】図15および図16を比較すると明らかな
ように、本実施例のトータル荷重は従来例に比べて変動
幅が小さく、かつピーク部分が0°〜15°の領域と、
90°近傍の領域とに分散されて全体的に滑らかになっ
ているため、ローラ59の疲労寿命を延長して耐久性を
高めることができる。具体的には、本実施例のピストン
圧力荷重は0°〜40°の領域でピーク部分を持ち、遠
心力荷重は90°の近傍でピーク部分を持っており、両
ピーク部分の位相を完全にずらし、かつ両ピーク値を略
等しくしたことにより、全体的に滑らかで変動幅が小さ
い荷重変化特性を得ている。またベーン押下荷重は0°
〜15°で負のピーク領域となるが、ピストン圧力荷重
の正のピーク領域(0°〜40°)が、前記ベーン押下
荷重の負のピーク領域(0°〜15°)と、遠心力荷重
のボトム領域(40°近傍)とに重なることで、0°〜
40°の領域におけるトータルのピーク値の低減に寄与
している。
【0056】以上説明した実施例以外にも、ピストン4
1の前進運動をロータ31の回転運動に変換する構成と
して、ベーン42を介さず、ピストン41の前進運動を
直接ローラ59で受け、環状溝60との係合で回転運動
に変換することもできる。またベーン42もローラ59
と環状溝60との協働により、前述の如くロータチャン
バ14の内周面45および対向内端面47から略一定間
隔で常時離間していればよく、ピストン41とローラ5
9、およびベーン42とローラ59との各々が各別に環
状溝60と協働しても良い。
【0057】前記膨張機4を圧縮機として使用する場合
には、出力軸23によりロータ31を図4時計方向に回
転させて、ベーン42により、流体としての外気を第
1、第2導出孔群110,111からロータチャンバ1
4内に吸込み、このようにして得られた低圧縮空気を第
1、第2導入孔群107,108から中継チャンバ2
0、各通孔t、通路s、第1、第2排出孔104,10
5、第1、第2凹状排出部102,103、通孔cを経
て大径シリンダ孔fに供給し、またベーン42によりピ
ストン41を作動させて低圧空気を高圧空気に変換し、
その高圧空気を通孔c、供給口90,91、および第
1、第2供給管94,95を経て導入管80に導入する
ものである。
【0058】以上説明した膨張機4では、シリンダ部材
39およびピストン41から構成される第1エネルギー
変換手段と、ベーン42から構成される第2エネルギー
変換手段とが共通のロータ31に設けられており、直列
に接続された第1、第2エネルギー変換手段の協働によ
り高温高圧蒸気のエネルギーを機械エネルギーとして出
力軸23に取り出すようになっている。従って、第1エ
ネルギー変換手段が出力する機械エネルギーと第2エネ
ルギー変換手段が出力する機械エネルギーとをロータ3
1を介して自動的に統合することができ、ギヤ等の動力
伝達手段を有する特別のエネルギー統合手段が不要とな
る。
【0059】第1エネルギー変換手段は作動流体のシー
ルが容易でリークが発生し難いシリンダ39およびピス
トン41の組み合わせからなるため、高温高圧蒸気のシ
ール性を高めてリークによる効率低下を最小限に抑える
ことができる。一方、第2エネルギー変換手段はロータ
31に放射方向移動自在に支持したベーン42からなる
ため、ベーン42に加わる蒸気圧が直接ロータ31の回
転運動に変換され、往復運動を回転運動に変換するため
の特別の変換機構が不要になって構造が簡略化される。
しかも低圧で大流量の蒸気を効果的に機械エネルギーに
変換し得る第2エネルギー変換手段を第1エネルギー変
換手段の外周を囲むように配置したので、膨張機4全体
の寸法をコンパクト化することができる。
【0060】シリンダ39およびピストン41よりなる
第1エネルギー変換手段は高温高圧蒸気を作動流体とし
た場合に圧力エネルギーおよび機械エネルギー間の変換
効率が高く、またベーン42よりなる第2エネルギー変
換手段は比較的に低温低圧の蒸気を作動流体とした場合
でも圧力エネルギーおよび機械エネルギー間の変換効率
が高いという特性を有している。従って、第1、第2エ
ネルギー変換手段を直列に接続し、先ず高温高圧蒸気を
第1エネルギー変換手段を通過させて機械エネルギーに
変換し、その結果として圧力の低下した第1の降温降圧
蒸気を第2エネルギー変換手段を通過させて再度機械エ
ネルギーに変換することにより、当初の高温高圧蒸気に
含まれるエネルギーを余すところ無く有効に機械エネル
ギーに変換することができる。
【0061】尚、本実施例の膨張機4を圧縮機として使
用する場合でも、外部からの機械エネルギーでロータ3
1を回転させてロータチャンバ14に吸入した空気を、
比較的に低温低圧の作動流体でも有効に作動する第2エ
ネルギー変換手段で圧縮して昇温させ、その圧縮・昇温
した空気を、比較的に高温高圧の作動流体により有効に
作動する第1エネルギー変換手段で更に圧縮して昇温さ
せることにより、機械エネルギーを圧縮空気の圧力エネ
ルギー(熱エネルギー)に効率的に変換することができ
る。而して、シリンダ39およびピストン41よりなる
第1エネルギー変換手段とベーン42よりなる第2エネ
ルギー変換手段とを組み合わせたことにより、両者の特
長を兼ね備えた高性能な回転流体機械を得ることができ
る。
【0062】またロータ31の回転軸線L(つまり出力
軸23の回転軸線L)がロータチャンバ14の中心に一
致しており、かつ図4および図5でロータ31を上下左
右に90°ずつ4分割したとき、回転軸線Lに対して点
対称な右上の四半部と左下の四半部とで圧力エネルギー
から機械エネルギーへの変換が行われるため、ロータ3
1に偏荷重が加わるのを防止して振動の発生を抑えるこ
とができる。即ち、作動流体の圧力エネルギーを機械エ
ネルギーに変換する部分、あるいは機械エネルギーを作
動流体の圧力エネルギーに変換する部分が、ロータ31
の回転軸線Lを中心として180°ずれた2個所に配置
されるので、ロータ31に加わる荷重が偶力となってス
ムーズな回転が可能になり、しかも吸気タイミングおよ
び排気タイミングの効率化を図ることができる。
【0063】而して、本実施例では内燃機関1の排気ガ
スの熱エネルギーで水を加熱して高温高圧蒸気を発生す
る蒸発器3と、蒸発器3から供給された高温高圧蒸気を
一定トルクの軸出力に変換する膨張機4と、膨張機4が
排出した降温降圧蒸気を液化する凝縮器5と、凝縮器5
で液化された水を蒸発器3に供給する供給ポンプ6とか
ら構成されるランキンサイクルにおいて、その膨張機4
として容積型のものを採用している。この容積型の膨張
機4は、タービンのような非容積型の膨張機に比べて、
低速から高速までの広い回転数領域において高い効率で
エネルギー回収を行うことが可能であるばかりか、内燃
機関1の回転数の増減に伴う排気ガスの熱エネルギーの
変化(排気ガスの温度変化や流量変化)に対する追従性
や応答性にも優れている。しかも膨張機4を、シリンダ
部材39およびピストン41から構成される第1エネル
ギー変換手段と、ベーン42から構成される第2エネル
ギー変換手段とを直列に接続して半径方向内外に配置し
た二重膨張型としたので、膨張機4を小型軽量化してス
ペース効率の向上を図りながらランキンサイクルによる
熱エネルギーの回収効率を更に向上させることができ
る。
【0064】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
【0065】例えば、実施例では回転流体機械として膨
張機4を例示したが、本発明は圧縮機としても適用する
ことができる。
【0066】また実施例では気相作動媒体および液相作
動媒体として蒸気および水を用いているが、他の適宜の
作動媒体を用いることができる。
【0067】また実施例の膨張機4では、先ず第1エネ
ルギー変換手段であるシリンダ部材39およびピストン
41に高温高圧蒸気を供給した後に、それが降温降圧し
た第1の降温降圧蒸気を第2エネルギー変換手段である
ベーン42に供給しているが、例えば、図2で示す第1
エネルギー変換手段からの第1の降温降圧蒸気を排出す
る通孔tと、中継チャンバ20とを連通または非連通と
し、更に中継チャンバ20にシェル型部材16を介して
第2エネルギー変換手段に独立して蒸気を個別に供給可
能とする手段を構成することにより、第1、第2エネル
ギー変換手段にそれぞれ温度および圧力の異なる蒸気を
個別に供給しても良い。更に、第1、第2エネルギー変
換手段のそれぞれ温度および圧力の異なる蒸気を個別に
供給すると共に、第1エネルギー変換手段を通過して降
温降圧した蒸気を更に第2エネルギー変換手段に供給し
ても良い。
【0068】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明
によれば、作動室から気相作動媒体を排出する排気行程
の終了時から、作動室に気相作動媒体を供給する吸気行
程の開始時までの期間、作動室の容積が略一定値となる
ように作動部材の半径方向の移動を略停止させるので、
密閉された作動室に非圧縮性の液相作動媒体が閉じ込め
られてもウオータハンマー現象の発生が防止され、回転
流体機械の振動、騒音、耐久性低下を防止することがで
きる。
【0069】また請求項2に記載された発明によれば、
ロータチャンバの形状の設定により排気行程終了時から
吸気行程開始時までの期間にベーン室の容積が略一定値
となるため、排気ポートおよび吸気ポート間のベーン室
に非圧縮性の液相作動媒体が閉じ込められてもウオータ
ハンマー現象の発生が防止され、ベーン式回転流体機械
の振動、騒音、耐久性低下を防止することができる。し
かもベーン式回転流体機械が膨張器として機能する場合
には、高圧ポートである吸気ポートがベーン室に連通し
た瞬間に、その圧力が前記ベーン室を区画する一対のベ
ーンに均等に作用するので、ロータが逆回転したり、ロ
ータを逆回転させるトルクが発生したりするのを防止す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関の廃熱回収装置の概略図
【図2】図5の2−2線断面図に相当する膨張機の縦断
面図
【図3】図2の回転軸線周りの拡大断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】要部を拡大した図2の5−5線断面図
【図6】ロータチャンバおよびロータの断面形状を示す
説明図
【図7】ベーン本体の正面図
【図8】ベーン本体の側面図
【図9】図7の9−9線断面図
【図10】シール部材の正面図
【図11】図4の回転軸線周りの拡大図
【図12】ケーシングの環状溝の形状を示す図
【図13】ロータチャンバの内周面の形状および吸気・
排気のタイミングを示す図
【図14】吸気開始角度と膨張比との関係を示すグラフ
【図15】本発明のローラの位相と荷重との関係を示す
グラフ
【図16】従来技術のローラの位相と荷重との関係を示
すグラフ
【符号の説明】
14 ロータチャンバ 31 ロータ 36 外周面 39 シリンダ部材(作動室) 41 ピストン(作動部材) 42 ベーン(作動部材) 45 内周面 54 ベーン室(作動室) 107 第1導入孔群(吸気ポート) 108 第2導入孔群(吸気ポート) 110 第1導出孔群(排気ポート) 111 第2導出孔群(排気ポート)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F04C 29/10 311 F04C 29/10 311R F04B 29/00 (72)発明者 佐野 竜史 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 本間 健介 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3H029 AA05 AA09 AA17 AB01 AB08 BB21 BB47 BB52 CC03 CC05 CC06 CC09 CC19 CC24 CC25 CC72 CC80 3H040 AA10 BB05 BB11 CC10 CC20 CC22 DD01 DD07 DD13 DD18 DD22 DD23 DD26 DD27 3H076 AA10 AA13 AA16 BB01 BB28 BB32 CC28 CC31 CC46 CC92 CC93 CC94 CC95

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロータチャンバ(14)と、 ロータチャンバ(14)の内部に回転自在に収容された
    ロータ(31)と、 ロータ(31)に半径方向に移動自在に支持された作動
    部材(41,42)と、 ロータ(31)の回転に伴う作動部材(41,42)の
    移動により容積が変化する作動室(39,54)と、を
    備え、 ロータ(31)の回転に応じて作動室(39,54)に
    供給・排出される気相作動媒体の圧力エネルギーおよび
    ロータ(31)の回転エネルギー間のエネルギー変換を
    行う回転流体機械において、 作動室(39,54)から気相作動媒体を排出する排気
    行程の終了時から、作動室(39,54)に気相作動媒
    体を供給する吸気行程の開始時までの期間、作動室(3
    9,54)の容積が略一定値となるように作動部材(4
    1,42)の半径方向の移動を略停止させることを特徴
    とする回転流体機械。
  2. 【請求項2】 前記作動部材がロータ(31)に放射方
    向に出没自在に支持されてロータチャンバ(14)の内
    周面(45)に摺接する複数のベーン(42)であり、 前記作動室が隣接する2個のベーン(42)、ロータ
    (31)の外周面(36)およびロータチャンバ(1
    4)の内周面(45)によって区画される複数のベーン
    室(54)であり、 ベーン室(54)および排気ポート(110,111)
    間が非連通状態となる排気行程終了時から、ベーン室
    (54)および吸気ポート(107,108)間が連通
    状態となる吸気行程開始時までの期間、ベーン室(5
    4)の容積が略一定値となるようにロータチャンバ(1
    4)の形状を設定したことを特徴とする、請求項1に記
    載の回転流体機械。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007224853A (ja) * 2006-02-24 2007-09-06 Matsushita Electric Ind Co Ltd 冷凍サイクル装置及び膨張機
WO2017007195A1 (ko) * 2015-07-09 2017-01-12 김고비 자유 회전식 유체 기계

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