JP2002121683A - 酸化チタン膜の製造方法、酸化チタン膜および太陽電池 - Google Patents

酸化チタン膜の製造方法、酸化チタン膜および太陽電池

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JP2002121683A
JP2002121683A JP2000312393A JP2000312393A JP2002121683A JP 2002121683 A JP2002121683 A JP 2002121683A JP 2000312393 A JP2000312393 A JP 2000312393A JP 2000312393 A JP2000312393 A JP 2000312393A JP 2002121683 A JP2002121683 A JP 2002121683A
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oxide film
electrode
solar cell
surface roughness
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Tsutomu Miyamoto
勉 宮本
Yuji Fujimori
裕司 藤森
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光電変換効率に優れる酸化チタン膜、酸化チタ
ン膜の製造方法および太陽電池を提供すること。 【解決手段】本発明の太陽電池1は、いわゆる乾式太陽
電池と呼ばれるものであり、基板2と、基板2の上面に
設置された第1の電極3と、第1の電極3の上面に設置
された酸化チタン膜4と、酸化チタン膜4の上面に設置
された第2の電極5とで構成され、第1の電極3と酸化
チタン膜4との界面には、ショットキー障壁が形成され
ている。酸化チタン膜4は、主として酸化チタンで構成
される。酸化チタン膜4の受光面における表面粗さRa
は、酸化チタン膜4の製造に用いた酸化チタン粉末の平
均粒径より大きい。酸化チタン膜4の受光面における表
面粗さRaは、1〜10μmであるのが好ましい。酸化
チタン膜4の空孔率は、10〜50であるのが好まし
い。このような太陽電池1は、半導体4への光の入射角
が90°および52°での光電変換効率を、それぞれ、
90およびR52としたとき、R52/R90が0.8以上で
あるのが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化チタン膜の製
造方法、酸化チタン膜および太陽電池に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、環境にやさしい電源として、
シリコンを用いた太陽電池が注目を集めている。シリコ
ンを用いた太陽電池の中には、人工衛星等に用いられる
単結晶シリコン型の太陽電池もあるが、実用的なものと
しては、特に多結晶シリコンを用いた太陽電池や、アモ
ルファスシリコンを用いた太陽電池が、産業用や家庭用
として実用化が始まっている。
【0003】しかしながら、これらのシリコンを用いた
太陽電池は、いずれもCVD(化学的気相成長)法等の
真空プロセスを用いるため、製造コストが高く、また、
これらのプロセスにおいて、多大な熱量や電気を使うた
め、製造に必要なエネルギーと太陽電池が生み出すエネ
ルギーとのバランスが非常に悪く、必ずしも省エネルギ
ーな電源とは言えなかった。
【0004】これに対し、いわゆる“湿式太陽電池”、
“第4世代の光電池”などと呼ばれる新型の太陽電池が
提案されている。
【0005】図9は、湿式太陽電池100の構成および
原理を示す模式図である。湿式太陽電池100は、二酸
化チタン(TiO2)よりなる電極110と、金属材料
よりなる電極120と、これらの電極110、120の
間に電解質溶液130を用いるものである。
【0006】このような湿式太陽電池100の反応原理
としては、次のようなものである。まず、電極110
に、例えば、太陽光等の光が照射されると、電極110
内で電子と正孔が発生する。
【0007】次に、電極110は、電子を外部回路14
0を介して、対極の電極120に引き渡す。一方、電極
110に残った正孔は、ヨウ素イオンを酸化して、I-
をI3 -に変える。
【0008】このI3 -は、電解質溶液130中を拡散
し、電極120の表面に達すると、再び電子を受け取
る。このサイクルが両電極110、120間に形成さ
れ、電池となる。
【0009】この湿式太陽電池100は、材料が安価で
あることと、製造に際して、例えば真空プロセス等の大
掛かりな設備を必要としないことから低コストの太陽電
池として多くの期待を集めている。
【0010】しかしながら、この湿式太陽電池100に
おいては、二酸化チタン(TiO2)のバンドギャップ
が大きいため、太陽光等の光のうち、主として紫外線の
みしか発電に寄与せず、光電変換効率が低く、十分な性
能が得られていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光電
変換効率に優れる酸化チタン膜および太陽電池を提供す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(32)の本発明により達成される。
【0013】(1) 酸化チタン粉末を主とする材料を
成形して膜状体を形成する工程と、前記膜状体の表面の
少なくとも一部に、表面粗さRaが前記酸化チタン粉末
の平均粒径より大きくなるように粗面化処理を施す工程
とを有することを特徴とする酸化チタン膜の製造方法。
【0014】(2) 前記粗面化処理は、ブラスト処理
である上記(1)に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0015】(3) 前記膜状体は、塗布法により形成
されるものである上記(1)または(2)に記載の酸化
チタン膜の製造方法。
【0016】(4) 表面に微小な凹凸を有する基材
に、酸化チタン粉末を主とする材料を被覆して、酸化チ
タン膜を得る酸化チタン膜の製造方法であって、前記酸
化チタン膜の表面の少なくとも一部における表面粗さR
aが、前記酸化チタン粉末の平均粒径より大きいことを
特徴とする酸化チタン膜の製造方法。
【0017】(5) 前記基材の前記材料により被覆さ
れる部位における表面粗さRaが0.01〜100μm
である上記(4)に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0018】(6) 前記基材の表面粗さRaは、前記
酸化チタン粉末の平均粒径より大きい上記(4)または
(5)に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0019】(7) 前記基材の表面粗さRaをh[μ
m]、前記酸化チタン粉末の平均粒径をd[μm]とし
たとき、h/d>5の関係を満足する上記(4)ないし
(6)のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0020】(8) 前記基材は、電極である上記
(4)ないし(7)のいずれかに記載の酸化チタン膜の
製造方法。
【0021】(9) 前記酸化チタン膜の平均厚さは、
0.1〜300μmである上記(1)ないし(8)のい
ずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0022】(10) 前記酸化チタン膜の表面粗さR
aをH[μm]、前記酸化チタン粉末の平均粒径をd
[μm]としたとき、H/d>5の関係を満足する上記
(1)ないし(9)のいずれかに記載の酸化チタン膜の
製造方法。
【0023】(11) 前記酸化チタン粉末の平均粒径
は、0.001〜10μmである上記(1)ないし(1
0)のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0024】(12) 前記酸化チタン粉末は、主とし
て二酸化チタンで構成される上記(1)ないし(11)
のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0025】(13) 前記材料は、ルチル型の二酸化
チタンを含む上記(1)ないし(12)のいずれかに記
載の酸化チタン膜の製造方法。
【0026】(14) 前記材料は、アナターゼ型の二
酸化チタンを含むものである上記(1)ないし(13)
のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0027】(15) 前記酸化チタン膜の表面の少な
くとも一部における表面粗さRaが0.01〜100μ
mである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の
酸化チタン膜の製造方法。
【0028】(16) 上記(1)ないし(15)のい
ずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする
酸化チタン膜。
【0029】(17) 酸化チタン粉末を主とする材料
を用いて製造された酸化チタン膜であって、表面の少な
くとも一部における表面粗さRaが、前記酸化チタン粉
末の平均粒径より大きいことを特徴とする酸化チタン
膜。
【0030】(18) 表面の少なくとも一部における
表面粗さRaが0.01〜100μmである上記(1
6)または(17)に記載の酸化チタン膜。
【0031】(19) 酸化チタン膜の表面粗さRaを
H[μm]、前記酸化チタン粉末の平均粒径をd[μ
m]としたとき、H/d>5の関係を満足する上記(1
7)または(18)に記載の酸化チタン膜。
【0032】(20) 酸化チタンを主とする材料を用
いて製造された酸化チタン膜であって、表面の少なくと
も一部における表面粗さRaが0.3〜100μmであ
ることを特徴とする酸化チタン膜。
【0033】(21) 平均厚さが0.1〜300μm
である上記(16)ないし(20)のいずれかに記載の
酸化チタン膜。
【0034】(22) ルチル型の二酸化チタンを含む
上記(16)ないし(21)のいずれかに記載の酸化チ
タン膜。
【0035】(23) アナターゼ型の二酸化チタンを
含む上記(16)ないし(22)のいずれかに記載の酸
化チタン膜。
【0036】(24) 多孔質である上記(16)ない
し(23)のいずれかに記載の酸化チタン膜。
【0037】(25) 空孔率が5〜90%である上記
(16)ないし(24)のいずれかに記載の酸化チタン
膜。
【0038】(26) 電極間に、上記(16)ないし
(25)のいずれかに記載の酸化チタン膜を有すること
を特徴とする太陽電池。
【0039】(27) 前記電極の少なくとも一方は、
実質的に透明であり、該透明な電極側から光を入射させ
て使用する上記(26)に記載の太陽電池。
【0040】(28) 上記(16)ないし(25)の
いずれかに記載の酸化チタン膜と、前記酸化チタン膜を
介して配置される一対の電極と、前記電極および前記酸
化チタン膜を支持する基板とを有することを特徴とする
太陽電池。
【0041】(29) 前記基板、および、少なくとも
前記基板側の電極は、実質的に透明であり、該透明な基
板側から光を入射させて使用する上記(28)に記載の
太陽電池。
【0042】(30) 整流特性を有する上記(26)
ないし(29)のいずれかに記載の太陽電池。
【0043】(31) 前記整流特性は、前記酸化チタ
ン膜と前記電極の少なくとも一方との界面に形成された
ショットキー障壁により得られている上記(30)に記
載の太陽電池。
【0044】(32) 前記酸化チタン膜への光の入射
角が90°での光電変換効率をR90とし、光の入射角が
52°での光電変換効率をR52としたとき、R52/R90
が0.8以上である上記(26)ないし(31)のいず
れかに記載の太陽電池。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の太陽電池を添付図
面に示す好適な実施形態について詳細に説明する。
【0046】図1は、本発明の太陽電池(光電池)の実
施形態を示す斜視図である。図2は、本発明の太陽電池
の実施形態を示す断面図である。図3は、本発明の酸化
チタン膜と第2の電極の界面付近の断面を示す拡大図、
図4は、本発明の酸化チタン膜の受光面付近の断面図で
ある。
【0047】図1および図2に示す太陽電池1は、電解
質溶液を必要としない、いわゆる乾式太陽電池と呼ばれ
るものであり、基板2と、基板2の上面に設置された第
1の電極3と、第1の電極3の上面に設置された酸化チ
タン膜4と、酸化チタン膜4の上面に設置された第2の
電極5とで構成されている。すなわち、本実施形態の太
陽電池1では、酸化チタン膜4が第1の電極3と第2の
電極5とで挟持されている。以下、各構成要素について
説明する。
【0048】基板2は、第1の電極3、酸化チタン膜4
および第2の電極5を支持するためのものであり、平板
状の部材で構成されている。
【0049】この基板2は、例えば、各種ガラス材料、
各種セラミックス材料、各種プラスチック材料、ポリカ
ーボネート(PC)のような樹脂材料、または、アルミ
ニウムのような金属材料等で構成されている。
【0050】基板2の厚さとしては、特に限定されない
が、例えば、0.1〜1.5mm程度であるのが好まし
く、0.8〜1.2mm程度であるのがより好ましい。
なお、基板2は、必要に応じて、省略することもでき
る。
【0051】基板2の上面には、層状(平板状)の第1
の電極3が設置されている。この第1の電極3は、酸化
チタン膜4内で発生した電子または正孔を捕捉し、外部
回路6へ伝達する機能を有するものである。
【0052】第1の電極3の厚さとしては、特に限定さ
れないが、例えば、0.001〜0.5mm程度である
のが好ましく、0.05〜0.3mm程度であるのがよ
り好ましい。
【0053】第1の電極3および後述する第2の電極5
の構成材料としては、それぞれ、例えば、インジウムテ
ィンオキサイド(ITO)、フッ素ドープした酸化錫
(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化錫(SnO
2)のような金属酸化物、アルミニウム、ニッケル、ク
ロム、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタ
ルのような金属またはこれらの合金等を用いることがで
きる。
【0054】第1の電極3の上面には、主として酸化チ
タンで構成される膜状(層状)の酸化チタン膜4が半導
体として設置されている。
【0055】酸化チタン膜4に光が照射されると、酸化
チタン膜4内で電子が励起され、電子と正孔を発生す
る。
【0056】この酸化チタン膜4は、図3および図4に
示すように、複数の孔41を有する多孔質であるのが好
ましい。なお、酸化チタン膜4の詳細については、後述
する。
【0057】酸化チタン膜4の上面には、層状(平板
状)の第2の電極5が形成されている。この第2の電極
5は、酸化チタン膜4内で発生した電子または正孔を捕
捉し、外部回路6へ伝達する機能を有するものである。
【0058】本実施形態の太陽電池1では、図1等に示
すように、第2の電極5側から、例えば、太陽光等の光
(以下、単に「光」と言う。)を入射させて(照射し
て)使用するものである。このため、第2の電極5は、
好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半
透明)とされる。これにより、光を酸化チタン膜4の受
光面に効率よく到達させることができる。
【0059】第2の電極5の厚さとしては、特に限定さ
れないが、例えば、0.001〜0.5mm程度である
のが好ましく、0.05〜0.3mm程度であるのがよ
り好ましい。
【0060】なお、第2の電極5は、図示の構成のよう
なものに限定されず、例えば、複数の櫛歯を有する形状
のもの等であってもよい。この場合、光は、複数の櫛歯
同士の間を通過して、直接、酸化チタン膜4の受光面に
到達するので、第2の電極5は、実質的に透明な材料で
構成されていなくてもよい。これにより、第2の電極5
の構成材料の選択の幅の拡大を図ることができる。
【0061】また、第2の電極5としては、このような
櫛歯状の電極と、ITO、FTO等からなる透明な電極
とを組み合わせて(例えば、積層等して)用いることも
できる。
【0062】ところで、金属と半導体を接触させると、
これらの界面には、金属の仕事関数と半導体の仕事関数
との差に相当する高さのショットキー障壁が形成され、
整流作用が生じる。
【0063】本実施形態では、第2の電極5と、半導体
である酸化チタン膜4とが接触して配置され、第2の電
極5の仕事関数が、酸化チタン膜4の仕事関数より大き
く設定されている。このため、第2の電極5と酸化チタ
ン膜4との界面に、ショットキー障壁が形成され、整流
作用が生じている。すなわち、このような太陽電池1
は、整流特性を有している。
【0064】この様子を等価回路で表すと、図5に示す
ようなダイオード7を有する電流の循環回路が形成され
ている。
【0065】このとき、酸化チタン膜4に、例えば、そ
の価電子帯と伝導帯の間隔(バンドギャップ)よりも大
きいエネルギーを持つ光を入射させると、酸化チタン膜
4内で電子が励起され、電子と正孔とが発生する。ま
た、ショットキー障壁には、界面電位により電場が存在
している。このため、これらの電子と正孔とは、界面の
電場により引き分けられ、電位差(光起電力)が生じ
る。
【0066】そして、第1の電極3と第2の電極5と
を、外部回路6で接続すれば、光励起電流が得られ、太
陽電池となる。
【0067】なお、酸化チタン膜4に光が照射される
と、酸化チタン膜4の内部では、電子および正孔が同時
に発生するが、以下の説明では、便宜上、「電子が発生
する」と記載する。
【0068】また、第2の電極5は、図3に示すよう
に、酸化チタン膜4が多孔質である場合には、その孔4
1内に入り込んで形成されているのが好ましい。これに
より、ショットキー障壁の表面積(形成領域)が増大す
る。このため、第2の電極5と酸化チタン膜4の界面に
おける電子の受け渡しが、より円滑かつ確実に行なわれ
る。
【0069】なお、ショットキー障壁は、第2の電極5
と酸化チタン膜4の界面ではなく、第1の電極3と酸化
チタン膜4の界面に形成されるようにしてもよく、第1
の電極3と酸化チタン膜4の界面および第2の電極5と
酸化チタン膜4の界面の双方に形成されるようにしても
よい。
【0070】さて、本発明の酸化チタン膜4は、主とし
て酸化チタンで構成される。酸化チタンとしては、例え
ば、二酸化チタン、一酸化チタン、三酸化二チタン等の
うちの、1種または2種以上を組み合わせて用いること
ができるが、この中でも、酸化チタンとしては、主とし
て二酸化チタンで構成されるものが好ましい。二酸化チ
タンは、光に対する感受性が高く、より容易かつ確実に
電子が励起される。このため、酸化チタンとして、主と
して二酸化チタンを用いた酸化チタン膜4は、より確実
に電子を発生することができる。
【0071】さらに、酸化チタン膜4は、二酸化チタン
として、結晶構造がアナターゼ型の二酸化チタン、結晶
構造がルチル型の二酸化チタンのうち、少なくとも一方
を含むものであるのが好ましく、ルチル型の二酸化チタ
ンと、アナターゼ型の二酸化チタンとを含むものである
のがより好ましい。
【0072】ルチル型の二酸化チタンは、そのバンドギ
ャップが比較的小さく(低く)、より高波長側の紫外光
を利用することが可能であることから、ルチル型の二酸
化チタンを含む酸化チタン膜4では、光の利用効率に優
れるという利点を有する。
【0073】また、ルチル型の二酸化チタンは、その結
晶構造が比較的安定している。このため、ルチル型の二
酸化チタンを含む酸化チタン膜4では、過酷な環境下に
曝された場合でも、経年変化(劣化)が少なく、安定し
た性能が長期間継続して得られるという利点を有する。
【0074】一方、アナターゼ型の二酸化チタンは、そ
の結晶構造が比較的不安定であることに起因して、電子
を発生し易い。
【0075】酸化チタン膜4が、ルチル型の二酸化チタ
ンと、アナターゼ型の二酸化チタンとを含む場合、これ
らの利点を併有することができる。
【0076】酸化チタン膜4は、粉末状の酸化チタン
(酸化チタン粉末8)で構成されている。酸化チタン膜
4が酸化チタン粉末8で構成されることにより、酸化チ
タン膜4は、多孔質のものになり易い。
【0077】本発明の酸化チタン膜4は、図3に示すよ
うに、受光面における表面粗さが比較的大きく、以下に
述べる条件[1]、[2]のうち少なくとも一方を満足
するものである。
【0078】[1]酸化チタン膜4の受光面の表面粗さ
Raは、酸化チタン粉末8の平均粒径より大きい。特
に、酸化チタン膜4の受光面の表面粗さRaをH[μ
m]、酸化チタン粉末8の平均粒径をd[μm]とした
とき、H/d>5の関係を満足するのが好ましく、H/
d>10の関係を満足するのがより好ましい。
【0079】[2]酸化チタン膜4の受光面の表面粗さ
Raは、0.01〜100μmである。特に、0.3〜
100μmであるのが好ましく、1〜10μmであるの
がより好ましい。
【0080】酸化チタン膜4が、条件[1]または
[2]を満足することにより、酸化チタン膜4の表面積
は、表面が平滑な半導体の表面積と比較して、大幅に増
大する。このため、酸化チタン膜4における光の照射面
積が増大する。これにより、本発明の酸化チタン膜4を
半導体として用いた太陽電池1は、表面が平滑な半導体
を用いた太陽電池と比較して、光電変換効率に優れ、大
電流を生じることが可能なものとなる。特に、酸化チタ
ン膜4が条件[1]および[2]を満足するとき、この
ような効果は、さらに顕著なものとなる。
【0081】また、前述したように、本発明の酸化チタ
ン膜4は、多孔質であるのが好ましいが、この多孔質の
度合を表す指標としては、例えば、酸化チタン膜4の空
孔率(気孔率)等がある。以下、空孔率について説明す
る。
【0082】酸化チタン膜4の空孔率としては、特に限
定されないが、例えば、5〜90%程度であるのが好ま
しく、20〜70%程度であるのがより好ましく、30
〜50%程度であるのがさらに好ましい。図4は、酸化
チタン膜4の受光面付近に、光が入射している状態を模
式的に示している。なお、図4では、基板2および第1
の電極3は、省略されている。図4に示すように、酸化
チタン膜4の空孔率を前記の範囲内とすると、光(図4
中の矢印)は、酸化チタン膜4の表面から、さらに内部
まで侵入し、孔41内で多重反射される。このため、光
は、より広い範囲で、酸化チタン膜4に接触することに
なる。これにより、酸化チタン膜4は、より確実に電子
を発生することができる。
【0083】また、この場合、酸化チタン膜4の表面積
は、緻密質の半導体の表面積と比較して、大幅に増大す
る。このため、酸化チタン膜4における光の照射面積が
増大する。これにより、本発明の酸化チタン膜4を半導
体として用いた太陽電池1では、緻密質の半導体を用い
た太陽電池と比較して、大電流が生じることになる。
【0084】また、酸化チタン膜4の厚さ(膜厚)は、
特に限定されないが、例えば、0.1〜300μm程度
であるのが好ましく、0.5〜100μm程度であるの
がより好ましく、1〜25μm程度であるのがさらに好
ましい。酸化チタン膜4の厚さが前記の下限値未満の場
合、その空孔率等によっては、酸化チタン膜4に入射し
た光の透過が著しく、光の利用効率が低下することがあ
る。一方、酸化チタン膜4の厚さを前記の上限値を越え
て厚くしても、それ以上、光の利用効率の増大が見込め
ない。
【0085】また、酸化チタン膜4は、そのバンドギャ
ップが3.1eV以下程度であるのが好ましく、1.9
〜2.7eV程度であるのがより好ましい。バンドギャ
ップが前記の範囲内の酸化チタン膜4では、可視光領域
(通常、400〜750nm程度)の広い範囲の波長の
光を利用することができる。よって、このような酸化チ
タン膜4では、光の利用効率が向上し、より確実に電子
を発生することができる。
【0086】ところで、通常、アナターゼ型の二酸化チ
タンそのもののバンドギャップは、3.2eV程度、ル
チル型の二酸化チタンそのもののバンドギャップは、
3.0eV程度である。したがって、酸化チタン膜4の
バンドギャップを前記の範囲内とするためには、何らか
の方法で各固有のバンドギャップを小さく(狭く)する
必要がある。すなわち、酸化チタン膜4を構成する二酸
化チタンには、バンドギャップを小さくするバンドギャ
ップ低減処理が施されているのが好ましい。
【0087】このバンドギャップ低減処理の方法として
は、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン結晶構
造中に酸素欠陥を形成する方法(以下、この方法を「酸
素欠陥形成法」と言う。)、二酸化チタン結晶構造中の
チタン原子の一部をチタン原子と異なる金属原子で置換
する方法(以下、この方法を「原子置換法」と言う。)
等が挙げられる。以下、これらの方法について詳述す
る。
【0088】 酸素欠陥形成法 酸素欠陥形成法としては、特に限定されないが、例え
ば、酸化チタン膜の製造過程および/または製造後に、
二酸化チタンに対して、水素雰囲気中で熱処理を施す方
法、真空(例えば10-5〜10-6Torr)下で熱処理
を施す方法、低温プラズマ処理を施す方法等が挙げられ
る。この中でも、酸素欠陥形成法としては、二酸化チタ
ンに対して、水素雰囲気中で熱処理を施す方法が好まし
い。
【0089】これにより、二酸化チタン結晶構造中から
酸素が離脱する。このとき、1個の酸素原子が離脱する
ごとに2個の電子が結晶構造中に残存する。すなわち、
かかる二酸化チタンを主として構成される酸化チタン膜
4は、いわゆるn型半導体となる。
【0090】なお、このような酸素欠陥形成法は、酸化
チタン膜4の製造に用いられる酸化チタン粉末等に、予
め施しておいてもよい。
【0091】 原子置換法 原子置換法としては、例えば、酸化チタン膜4の製造に
用いられる材料中に、例えば前記の金属原子あるいはそ
の酸化物からなる無機増感剤を添加し、かかる無機増感
剤が添加された材料を膜状に形成して膜状体とし、この
膜状体を焼成(焼結)する方法、酸化チタンを主とする
材料を膜状に形成した膜状体に対して前記の金属原子を
イオン化したものを注入する(打ち込む)方法等が挙げ
られる。この中でも、原子置換法としては、無機増感剤
が添加された膜状体を焼成する方法がより好ましい。
【0092】これにより、無機増感剤を構成する金属原
子の一部は、二酸化チタン結晶構造の格子の位置に、チ
タン原子の一部と置換する形で存在するようになる。
【0093】なお、このような原子置換法は、膜状体に
代わり、酸化チタン粉末等に対して施すようにしてもよ
い。
【0094】このような酸化チタン膜4を用いた太陽電
池1では、酸化チタン膜4への光の入射角が90°での
光電変換効率をR90とし、光の入射角が52°での光電
変換効率をR52としたとき、R52/R90が0.80以上
程度となるような特性を有しているのが好ましく、0.
85以上程度であるのがより好ましい。このような条件
を満たすということは、酸化チタン膜4が光に対する指
向性が低い、すなわち、等方性を有するということであ
る。したがって、このような太陽電池1は、太陽の日照
時間のほぼ全域に渡って、より効率良く発電することが
できる。
【0095】次に、このような太陽電池1の製造方法の
第1実施形態について説明する。まず、例えば石英ガラ
ス等で構成された基板2を用意する。この基板2には、
厚さが均一で、たわみのないものが好適に用いられる。
【0096】<1> まず、第1の電極3を基板2の上
面に形成する。 第1の電極3は、例えば白金等で構成される第1の電極
3の材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、印刷
法等を用いることにより、形成することができる。
【0097】<2> 次に、酸化チタン膜4を第1の電
極3の上面に形成する。 酸化チタン膜4は、酸化チタンを主とする材料(以下、
「酸化チタン膜材料」と言う。)を、例えば、ディッピ
ング、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、ス
プレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法、溶射法等
の方法により膜状(厚膜および薄膜)に形成することが
できる。この中でも、酸化チタン膜4の形成方法として
は、各種塗布法によるものが好ましい。
【0098】このような塗布法によれば、その操作は、
極めて簡単であり、かつ、大掛かりな装置も必要としな
いので、酸化チタン膜4および太陽電池1の製造コスト
の削減、製造時間の短縮に有利である。また、塗布法に
よれば、例えばマスキング等を用いることにより、所望
のパターン形状の酸化チタン膜4を容易に得ることがで
きる。
【0099】以下に、酸化チタン膜4の塗布法による成
形方法について説明する。なお、以下の説明では、バン
ドギャップ低減処理の方法(酸素欠陥形成法および原子
置換法)の相違により区別して説明するが、同様の事項
については、後に説明するものでは省略する。さらに、
酸素欠陥形成法については、酸化チタン粉末に対して施
す場合と、酸化チタン膜材料を膜状に形成して得られる
膜状体に対して施す場合とに分けて説明する。
【0100】<2A:酸素欠陥形成法を用いる場合(酸
化チタン粉末に対して施す場合)> [酸化チタン粉末の調製]
【0101】(A0) ルチル型の二酸化チタン粉末と
アナターゼ型の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(ア
ナターゼ型の二酸化チタン粉末またはルチル型の二酸化
チタン粉末のみの場合も含む)にて、配合し混合してお
く。
【0102】ルチル型の二酸化チタンとアナターゼ型の
二酸化チタンとの両方を含む場合においては、これらの
ルチル型の二酸化チタン粉末の平均粒径とアナターゼ型
の二酸化チタン粉末の平均粒径とは、それぞれ異なって
いてもよいし、同じであってもよい。
【0103】また、酸化チタン粉末全体としての平均粒
径は、特に限定されないが、例えば、0.001〜10
μm程度であるのが好ましく、0.01nm〜10μm
程度であるのが好ましく、0.01〜0.1μm程度で
あるのがより好ましい。酸化チタン粉末の平均粒径を前
記の範囲内とすることにより、酸化チタン粉末の後述す
る塗布液(酸化チタン膜材料)中での均一性が向上す
る。また、このように酸化チタン粉末の平均粒径を小さ
くすることにより、得られる酸化チタン膜4の受光面
は、光の照射面積をより大きくすることができる。
【0104】(A1) 次に、前記配合された酸化チタ
ン粉末に、酸素欠陥形成法による熱処理を施す。このと
きの熱処理条件としては、水素雰囲気中で、好ましくは
温度800〜1200℃程度で、0.2〜3時間程度、
より好ましくは温度900〜1200℃程度で、0.5
〜1時間程度とされる。
【0105】このとき、酸化チタン粉末がアナターゼ型
の二酸化チタン粉末を含有している場合、前記の熱処理
温度、熱処理時間によっては、アナターゼ型の二酸化チ
タンは、その結晶構造の一部または全部がルチル型へ転
移することがある。
【0106】なお、酸素欠陥形成法は、前記工程(A
0)前に、ルチル型の二酸化チタン粉末および/または
アナターゼ型の二酸化チタン粉末に対して施し、かかる
二酸化チタン粉末を配合して、酸化チタン粉末を調製す
るようにしてもよい。この場合、本工程(A1)は、省
略することができる。
【0107】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製] (A2) まず、前記工程で調製した酸化チタン粉末を
適当量の水(例えば、蒸留水、超純水、イオン交換水、
RO水等)に懸濁する。
【0108】(A3) 次に、かかる懸濁液に、例えば
硝酸等の安定化剤を添加し、メノウ製(またはアルミナ
製)の乳鉢内で十分に混練する。
【0109】(A4) 次いで、かかる懸濁液に、前記
の水を加えてさらに混練する。このとき、前記安定化剤
と水との配合比は、体積比で好ましくは10:90〜4
0:60程度、より好ましくは15:85〜30:70
程度とし、かかる懸濁液の粘度を、例えば0.2〜30
cps程度とする。
【0110】(A5) その後、かかる懸濁液に、例え
ば、最終濃度が0.01〜5wt%程度となるように界
面活性剤を添加して混練する。これにより、塗布液(酸
化チタン膜材料)を調製する。
【0111】なお、界面活性剤としては、カチオン性、
アニオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであって
もよいが、好ましくは非イオン性のものが用いられる。
【0112】また、安定化剤としては、硝酸に代わり、
酢酸やアセチルアセトンのような酸化チタンの表面修飾
試薬を用いることもできる。
【0113】また、塗布液(酸化チタン膜材料)中に
は、必要に応じて、例えばポリエチレングリコールのよ
うなバインダー、可塑剤、酸化防止剤等の各種添加物を
添加してもよい。
【0114】[酸化チタン膜4の形成] (A6) 第1の電極3の上面に、塗布法(例えば、デ
ィッピング等)により、塗布液を塗布して、膜状体(塗
膜)を形成する。また、本発明では、この塗布の操作を
複数回行って積層してもよい。
【0115】次いで、この膜状体に対して、必要に応じ
て、例えば、温度250〜500℃程度で0.5〜3時
間程度、熱処理(例えば、焼成等)して酸化チタン膜4
を得る。これにより、単に接触するのに止まっていた酸
化チタン粉末同士は、その接触部位に拡散が生じ、酸化
チタン粉末同士がある程度固着(固定)するようにな
る。
【0116】本工程(A6)では、少なくとも、第1の
電極3の上面に、塗布液を塗布した後に、膜状体の表面
(第2の電極5と接触する側の面)に対して、粗面化処
理を施す。この粗面化処理は、例えば、塗布液の塗布
後、塗布・乾燥後、熱処理後等に行うことができる。ま
た、2回以上の粗面化処理を施してもよい。
【0117】この粗面化処理により、得られる酸化チタ
ン膜4の表面は、前述した条件[1]、[2]のうち少
なくとも一方を満足するものとなる。
【0118】粗面化処理の方法としては、例えば、ショ
ットブラスト、サンドブラスト等のブラスト処理、やす
り、砥石等による研削処理、研磨処理、放電加工、化学
エッチング等が挙げられる。
【0119】<2B:酸素欠陥形成法を用いる場合(膜
状体に対して施す場合)> [酸化チタン粉末の調製]
【0120】前記工程(A0)と同様の工程を行う。な
お、前記工程(A1)は、省略される。
【0121】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製]前
記工程(A2)〜(A5)と同様の工程を行う。
【0122】[酸化チタン膜4の形成] (B6) 前記工程(A6)と同様にして、第1の電極
3の上面に膜状体(塗膜)を形成した後、膜状体に対し
て酸素欠陥形成法による熱処理を施す。この熱処理条件
としては、水素雰囲気中で、好ましくは温度800〜1
200℃程度で、0.2〜3時間程度、より好ましくは
温度900〜1200℃程度で、0.5〜1時間程度と
される。
【0123】また、本工程(B6)では、前記工程(A
6)で説明したような粗面化処理を施す。この粗面化処
理は、酸素欠陥形成法による熱処理を行う前に施すもの
であっても、酸素欠陥形成法による熱処理を行った後に
施すものであってもよい。
【0124】なお、前記工程(A6)の熱処理(例え
ば、焼成等)は、この酸素欠陥形成法による熱処理で兼
用することもできる。
【0125】また、この場合、基板2および第1の電極
3は、膜状体ごと酸素欠陥形成法による熱処理が施され
るため、基板2および第1の電極3の構成材料は、かか
る熱処理に耐え得るものであるのが好ましい。 <2C:原子置換法を用いる場合> [酸化チタン粉末の調製]
【0126】(C0) ルチル型の二酸化チタン粉末と
アナターゼ型の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(ア
ナターゼ型の二酸化チタン粉末またはルチル型の二酸化
チタン粉末のみの場合も含む)にて、配合し混合してお
く。なお、前記工程(A1)は、省略される。
【0127】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製]前
記工程(A2)〜(A4)と同様の工程を行う。
【0128】(C5) 前記工程(A5)と同様の工程
において、懸濁液中に、無機増感剤を添加して混練す
る。これにより、塗布液(酸化チタン膜材料)を調製す
る。
【0129】この無機増感剤としては、特に限定されな
いが、例えば、クロム、バナジウム、ニッケル、鉄、マ
ンガン、銅、亜鉛、ニオブ、またはこれらの酸化物等が
挙げられ、これらのうちの、1種または2種以上を組合
わせて用いることができる。
【0130】また、無機増感剤の含有量としては、特に
限定されないが、例えば、酸化チタン粉末1gに対し
て、0.1〜2.5μmol程度であるのが好ましく、
0.5〜2.0μmol程度であるのがより好ましい。
【0131】なお、酸化チタン粉末がアナターゼ型の二
酸化チタン粉末を含有し、アナターゼ型の二酸化チタン
の結晶構造がルチル型へ転移するのを防止したい場合に
は、焼結助剤を添加するようにする。
【0132】焼結助剤としては、融点が900℃以下の
金属酸化物であるのが好ましい。この金属酸化物として
は、特に限定されないが、例えば、三酸化モリブデン、
三酸化二ビスマス、酸化鉛、酸化パラジウム、三酸化二
アンチモン、二酸化テルル、三酸化二タリウム等が挙げ
られ、これらのうちの、1種または2種以上を組合わせ
て用いることができる。
【0133】この場合、焼結助剤と酸化チタン粉末との
配合比としては、特に限定されないが、例えば、体積比
で1:99〜40:60程度であるのが好ましく、5:
95〜20:80程度であるのがより好ましい。
【0134】これにより、膜状体を、900℃以下の温
度で焼成(焼結)できるので、二酸化チタンの結晶構造
がアナターゼ型からルチル型へ転移するのをより確実に
防止(抑制)することができる。
【0135】[酸化チタン膜4の形成] (C6) 前記工程(A6)と同様にして、第1の電極
3の上面に膜状体(塗膜)を形成した後、膜状体を、例
えば、大気、窒素ガス、または各種不活性ガス、真空、
減圧状態(例えば、10-1〜10-6Torr)のような
非酸化性雰囲気中で焼成(焼結)する。これにより、二
酸化チタン結晶構造中のチタン原子の一部が無機増感剤
を構成する金属原子の一部と置換された酸化チタン膜4
を得る。このときの焼成条件としては、例えば、次のよ
うにすることができる。
【0136】 酸化チタン粉末がアナターゼ型の二酸
化チタン粉末を含有しない場合、もしくは、二酸化チタ
ンの結晶構造がアナターゼ型からルチル型へ転移するこ
とを想定している場合、好ましくは温度1000〜12
00℃程度で0.5〜10時間程度とされる。
【0137】 二酸化チタンの結晶構造がアナターゼ
型からルチル型へ転移することを想定していない(防止
したい)場合、好ましくは温度900℃以下程度で1〜
26時間程度とされる。
【0138】また、本工程(C6)では、前記工程(A
6)で説明したような粗面化処理を施す。この粗面化処
理は、原子置換法による焼成を行う前に施すものであっ
ても、原子置換法による焼成を行った後に施すものであ
ってもよい。
【0139】なお、この場合、前記工程(A6)の熱処
理(例えば、焼成等)は、この原子置換法による焼成で
兼用することもできる。
【0140】また、このような原子置換法は、酸化チタ
ン粉末の調製前に、ルチル型の二酸化チタン粉末および
/またはアナターゼ型の二酸化チタン粉末に施すように
してもよいし、酸化チタン粉末の調製後に、かかる酸化
チタン粉末に施すようにしてもよい。これらの場合、本
工程(C6)の工程は、省略することができる。以上の
ような工程を経て、酸化チタン膜4が製造される。
【0141】ここで、総括すると、ルチル型の二酸化
チタンそのもののバンドギャップは、アナターゼ型の二
酸化チタンそのもののバンドギャップより小さい。ル
チル型の二酸化チタンおよびアナターゼ型の二酸化チタ
ンは、双方ともにバンドギャップ低減処理を施すことに
より、各固有のバンドギャップが小さくなる。というこ
とが言える。
【0142】したがって、これらのことを考慮して、本
発明の酸化チタン膜4では、バンドギャップ低減処理が
施されていないルチル型の二酸化チタン粉末、バンドギ
ャップ低減処理が施されているルチル型の二酸化チタン
粉末、バンドギャップ低減処理が施されていないアナタ
ーゼ型の二酸化チタン粉末、および、バンドギャップ低
減処理が施されているアナターゼ型の二酸化チタン粉末
の4種の二酸化チタン粉末の配合比や、バンドギャップ
低減処理の方法を適宜選択することにより、前述したよ
うなバンドギャップを得るようにする。
【0143】<3> 次に、酸化チタン膜4の上面に、
第2の電極5を形成する。 第2の電極5は、例えばITO等で構成される第2の電
極5の材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、印
刷法を用いることにより、形成することができる。以上
のような工程を経て、太陽電池1が製造される。
【0144】なお、このような太陽電池1では、第1の
電極3、酸化チタン膜4および第2の電極5は、例え
ば、太陽電池ユニットとして製造した後、この太陽電池
ユニットを、基板2の上に装着するようにしてもよい。
【0145】次に、前述した構成の太陽電池1の製造方
法の第2実施形態について説明する。以下、本実施形態
の太陽電池1の製造方法について、前述した第1実施形
態の太陽電池1の製造方法との相違点を中心に説明し、
同様の事項については、その説明を省略する。
【0146】図6は、第1の電極の上面に設けられた酸
化チタン膜の断面を示す拡大図である。
【0147】本実施形態の製造方法では、酸化チタン膜
4の被覆に先立ち、第1の電極3の上面を微小な凹凸を
有するものとしておく。これにより、前述したような方
法を用いて、第1の電極3上に酸化チタン膜材料を被覆
し、膜状体を形成した場合、図6に示すように、この膜
状体に対して粗面化処理を施すことなく、直接、前述し
たような表面粗さRaを有する酸化チタン膜1を得るこ
とができる。
【0148】第1の電極3の上面の表面粗さRaは、例
えば、0.01〜100μmであるのが好ましく、0.
1〜10μmであるのがより好ましく、1〜10μmで
あるのがさらに好ましい。第1の電極3の上面の表面粗
さRaがこのような範囲の値であると、得られる酸化チ
タン膜4の受光面における表面粗さが大きくなる。その
結果、酸化チタン膜4の受光面における光の照射面積が
増大し、この酸化チタン膜4は、光電変換効率に優れた
ものとなる。
【0149】また、第1の電極3の上面の表面粗さRa
は、酸化チタン粉末8の平均粒径より大きいのが好まし
い。特に、第1の電極3の上面の表面粗さRaをh[μ
m]、酸化チタン粉末8の平均粒径をd[μm]とした
とき、h/d>5の関係を満足するのが好ましく、h/
d>10の関係を満足するのがより好ましい。第1の電
極3の上面の表面粗さRaがこのような条件を満足する
ことにより、得られる酸化チタン膜4の受光面における
表面粗さが大きくなる。その結果、酸化チタン膜4の受
光面における光の照射面積が増大し、この酸化チタン膜
4は、光電変換効率に優れたものとなる。
【0150】第1の電極3の上面に微小な凹凸を形成す
る方法は、特に限定されないが、例えば、ショットブラ
スト、サンドブラスト等のブラスト処理、やすり、砥石
等による研削処理、研磨処理、放電加工、化学エッチン
グ等が挙げられる。また、第1の電極3が被覆される基
板2を、その上面(第1の電極3と接触する側の面)に
凹凸を有するものとしておくことにより、第1の電極3
の上面に機械加工等を施すことなく、第1の電極3をそ
の表面に微小な凹凸を有するものとすることもできる。
【0151】なお、酸化チタン膜4の上面の凹凸パター
ンは、第1の電極3の上面の凹凸パターンが増幅された
もの、第1の電極3の上面の凹凸パターンとほぼ同様の
もの、第1の電極3の上面の凹凸パターンが緩和された
もののいずれであってもよい。
【0152】また、酸化チタン膜4の上面の凹凸パター
ンは、第1の電極3の上面の凹凸パターンとの間の相関
性が乏しいものや相関性が認められないものであっても
よい。
【0153】次に、本発明の太陽電池の他の実施形態に
ついて説明する。図7は、本発明の太陽電池の他の実施
形態を示す斜視図、図8は、本発明の太陽電池の他の実
施形態を示す断面図である。
【0154】以下、図7および図8に示す太陽電池1に
ついて説明するが、前記と同様の事項については、その
説明を省略する。
【0155】本実施形態の太陽電池1は、基板2および
第1の電極3側(図7および図8中下側)から光を入射
させて使用するものである。
【0156】したがって、本実施形態の太陽電池1で
は、酸化チタン膜4の受光面は、第1の電極3と接触す
る側の面である。このため、本実施形態においては、酸
化チタン膜4の第1の電極3と接触する側の面が、前述
した条件[1]、[2]のうち少なくとも一方を満足す
る。
【0157】このような条件を満足する酸化チタン膜4
は、例えば、酸化チタン膜4の被覆に先立ち、第1の電
極3の上面が凹凸を有するものとしておくことにより、
製造することができる。これにより、酸化チタン膜4の
被覆時に、この凹凸が酸化チタン膜4に転写される。そ
の結果、酸化チタン膜4は、第1の電極3と接触する側
の面の表面粗さRaが前述した条件を満足するものとな
る。
【0158】第1の電極3の上面の表面粗さRaは、例
えば、0.01〜100μmであるのが好ましく、0.
1〜10μmであるのがより好ましく、1〜10μmで
あるのがさらに好ましい。
【0159】また、第1の電極3の上面の表面粗さRa
は、酸化チタン粉末8の平均粒径より大きいのが好まし
い。特に、第1の電極3の上面の表面粗さRaをh[μ
m]、酸化チタン粉末8の平均粒径をd[μm]とした
とき、h/d>5の関係を満足するのが好ましく、h/
d>10の関係を満足するのがより好ましい。
【0160】また、基板2および第1の電極3側(図7
および図8中下側)から光を入射させて使用するため、
基板2および第1の電極3は、好ましくは実質的に透明
(無色透明、着色透明または半透明)とされる。これに
より、光を酸化チタン膜4の受光面に効率よく到達させ
ることができる。
【0161】なお、第1の電極3は、図示の構成のよう
なものに限定されず、例えば、複数の櫛歯を有する形状
のもの等であってもよい。この場合、光は、複数の櫛歯
同士の間を通過して、直接、酸化チタン膜4の受光面に
到達するので、第1の電極3は、実質的に透明な材料で
構成されていなくてもよい。これにより、第1の電極3
の構成材料の選択の幅の拡大を図ることができる。
【0162】また、第1の電極3としては、このような
櫛歯状の電極と、ITO、FTO等からなる透明な電極
とを組み合わせて(例えば、積層等して)用いることも
できる。
【0163】このような構成とすることによっても、前
記の実施形態と同様の効果が得られる。
【0164】以上、本発明の酸化チタン膜の製造方法、
酸化チタン膜および太陽電池を図示の各実施形態に基づ
いて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0165】例えば、太陽電池を構成する各部は、同様
の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することが
できる。
【0166】また、本発明の太陽電池では、電極と酸化
チタン膜との間に中間層を有していてもよい。この場
合、例えば中間層に半導体を用いて、すなわち、電極間
に2つの半導体を設置してPN接合による整流特性を太
陽電池に持たせることもできる。
【0167】また、本発明は、酸化チタン膜の受光面全
体が前述の条件を満足するものに限らず、酸化チタン膜
の表面の少なくとも一部が前述の条件を満足するもので
あればよい。
【0168】また、本発明の酸化チタン膜は、粉末状の
酸化チタンを用いて製造されたものに限定されない。
【0169】また、本発明の酸化チタン膜の用途は、特
に限定されず、例えば、半導体電極、光触媒等にも適用
できる。
【0170】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0171】(実施例1)次のようにして、図1等に示
す太陽電池を製造した。
【0172】まず、寸法:縦100mm×横130mm
×厚さ1.0mmの石英ガラス基板を用意した。次に、
この石英ガラス基板を85℃の洗浄液(硫酸と過酸化水
素水との混合液)に浸漬して洗浄を行い、その表面を清
浄化した。
【0173】−1− この石英ガラス基板の上面に、蒸
着法により、寸法:縦100mm×横130mm×厚さ
0.1mmの白金電極(第1の電極)を形成した。
【0174】−2− 次に、形成した白金電極の上面
に、寸法:縦100mm×横100mm×厚さ約1μm
の酸化チタン膜を形成した。これは、次のようにして行
った。
【0175】[酸化チタン粉末の調製]ルチル型の二酸
化チタン粉末(平均粒径40nm)と、アナターゼ型の
二酸化チタン粉末(平均粒径40nm)とを用意し、こ
れらを混合し、酸化チタン粉末とした。なお、ルチル型
の二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末
との配合比は、重量比で60:40とした。
【0176】次に、かかる酸化チタン粉末に、水素雰囲
気中で、1000℃で0.5時間、熱処理を行うことに
より、酸素欠陥形成法を施した。
【0177】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製]ま
ず、調製した酸化チタン粉末50gを、蒸留水100m
Lに懸濁した。
【0178】次に、かかる懸濁液に硝酸(安定化剤)5
0mLを添加し、メノウ製の乳鉢内で十分に混練した。
【0179】次いで、かかる懸濁液に蒸留水100mL
を加えてさらに混練した。この蒸留水の添加により、硝
酸と水との配合比が、最終的に20:80(体積比)と
なるようにした。なお、このとき、懸濁液の粘度は、5
cpsであった。
【0180】次いで、かかる懸濁液に、非イオン性の界
面活性剤(ICN Biomedical社製、「Triton-X 100」)を
最終濃度が3wt%になるように添加して混練した。こ
れにより、塗布液(酸化チタン膜材料)を調製した。
【0181】[酸化チタン膜の形成]白金電極の上面
に、ディッピング(塗布法)により膜状体(塗膜)を形
成した。膜状体を乾燥させた後、この膜状体に対してブ
ラスト処理を行い、さらに温度300℃で2時間、焼成
(熱処理)を行うことにより酸化チタン膜を得た。
【0182】ブラスト処理は、真球ガラス#300を
2.5kg/cm2のブラスト圧で、3cm離れた位置
から吹き付けることにより行った。
【0183】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが5μmであった。
【0184】−3− この酸化チタン膜の上面に、蒸着
法により、寸法:縦100mm×横100mm×厚さ
0.1mmのITO電極(第2の電極)を形成した。
【0185】(実施例2)酸化チタン粉末の平均粒径を
20nmとし、ブラスト圧を2.5kg/cm2とした
以外は、前記実施例1と同様にして太陽電池を製造し
た。
【0186】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
45%、受光面の表面粗さRaが10μmであった。
【0187】(実施例3)酸化チタン粉末の平均粒径を
100nmとし、ブラスト圧を3.0kg/cm 2とし
た以外は、前記実施例1と同様にして太陽電池を製造し
た。
【0188】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
30%、受光面の表面粗さRaが10μmであった。
【0189】(実施例4)膜状体に対する粗面化処理を
以下のような条件で行った以外は、前記実施例1と同様
にして太陽電池を製造した。
【0190】[酸化チタン膜の形成]白金電極の上面
に、ディッピング(塗布法)により膜状体(塗膜)を形
成した後、この膜状体に、温度300℃で2時間、焼成
(熱処理)を行った。その後、この熱処理を施した膜状
体に対してブラスト処理(粗面化処理)を施すことによ
り、酸化チタン膜を得た。
【0191】ブラスト処理は、真球ガラス#300を
2.5kg/cm2のブラスト圧で、3cm離れた位置
から吹き付けることにより行った。
【0192】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが2μmであった。
【0193】(実施例5)酸化チタン粉末に代わり、膜
状体に対して酸素欠陥形成法を施すこと以外は、前記実
施例1と同様にして太陽電池を製造した。
【0194】なお、膜状体に対して酸素欠陥形成法を施
すため、酸化チタン粉末への酸素欠陥形成法による熱処
理は省略した。
【0195】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調整]前
記実施例1と同様にして塗布液(酸化チタン膜材料)を
調整した。
【0196】[酸化チタン膜の形成]白金電極の上面
に、ディッピング(塗布法)により膜状体(塗膜)を形
成した。膜状体を乾燥させた後、この膜状体に対してブ
ラスト処理を行い、さらに水素雰囲気中で、1000℃
で0.5時間、熱処理(酸素欠陥形成法)を行うことに
より酸化チタン膜を得た。
【0197】ブラスト処理は、真球ガラス#300を
2.5kg/cm2のブラスト圧で、3cm離れた位置
から吹き付けることにより行った。
【0198】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが2μmであった。
【0199】(実施例6)酸化チタン粉末として、ルチ
ル型の二酸化チタン粉末(平均粒径40nm)を用いた
以外は、前記実施例5と同様にして、太陽電池を製造し
た。
【0200】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが2μmであった。
【0201】(実施例7)酸化チタン粉末として、アナ
ターゼ型の二酸化チタン粉末(平均粒径40nm)を用
いた以外は、前記実施例5と同様にして、太陽電池を製
造した。
【0202】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが2μmであった。
【0203】(実施例8)酸素欠陥形成法に代わり、原
子置換法を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にし
て太陽電池を製造した。
【0204】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製]前
記実施例1と同様にして塗布液(酸化チタン膜材料)を
調製した。この塗布液に三酸化二クロム(無機増感剤)
と三酸化モリブデン(焼結助剤)とを混合した。なお、
三酸化二クロムおよび三酸化モリブデンの含有量または
配合比は、以下の通りである。
【0205】<三酸化二クロム> 酸化チタン粉末1
gに対して、0.9μmol <三酸化モリブデン> 酸化チタン粉末:三酸化モリブ
デン=90:10(体積比)
【0206】[酸化チタン膜の形成]前記実施例1と同
様にして膜状体を形成した。膜状体を乾燥させた後、こ
の膜状体に対してブラスト処理を行い、さらに、大気中
で、800℃で3時間、焼成することにより酸化チタン
膜を得た。
【0207】ブラスト処理は、真球ガラス#300を
2.5kg/cm2のブラスト圧で、3cm離れた位置
から吹き付けることにより行った。
【0208】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが2μmであった。
【0209】(実施例9)次のようにして、図1等に示
す太陽電池を製造した。
【0210】まず、寸法:縦100mm×横130mm
×厚さ1.0mmの石英ガラス基板を用意した。次に、
この石英ガラス基板に対し、ブラスト処理を施し、その
表面粗さRaを10μmとした。
【0211】−1− この石英ガラス基板の上面(ブラ
スト処理を施した側の面)に、蒸着法により、寸法:縦
100mm×横130mm×厚さ1μmの白金電極(第
1の電極)を形成した。
【0212】その後、この白金電極に対してブラスト処
理を施し、その外表面(酸化チタン膜と接触する側の
面)に微小な凹凸を設けた。ブラスト処理後の白金電極
の外表面の表面粗さRaは、10μmであった。
【0213】−2− 次に、ブラスト処理を施した白金
電極の上面に、寸法:縦100mm×横100mm×厚
さ約2μmの酸化チタン膜を形成した。これは、次のよ
うにして行った。
【0214】[酸化チタン粉末の調製]ルチル型の二酸
化チタン粉末(平均粒径40nm)と、アナターゼ型の
二酸化チタン粉末(平均粒径40nm)とを用意し、こ
れらを混合し、酸化チタン粉末とした。なお、ルチル型
の二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末
との配合比は、重量比で60:40とした。
【0215】次に、かかる酸化チタン粉末に、水素雰囲
気中で、1000℃で0.5時間、熱処理を行うことに
より、酸素欠陥形成法を施した。
【0216】[塗布液(酸化チタン膜材料)の調製]ま
ず、調製した酸化チタン粉末50gを、蒸留水100m
Lに懸濁した。
【0217】次に、かかる懸濁液に硝酸(安定化剤)5
0mLを添加し、メノウ製の乳鉢内で十分に混練した。
【0218】次いで、かかる懸濁液に蒸留水100mL
を加えてさらに混練した。この蒸留水の添加により、硝
酸と水との配合比が、最終的に20:80(体積比)と
なるようにした。なお、このとき、懸濁液の粘度は、5
cpsであった。
【0219】次いで、かかる懸濁液に、非イオン性の界
面活性剤(ICN Biomedical社製、「Triton-X 100」)を
最終濃度が3wt%になるように添加して混練した。こ
れにより、塗布液(酸化チタン膜材料)を調製した。
【0220】[酸化チタン膜の形成]白金電極の上面
に、ディッピング(塗布法)により膜状体(塗膜)を形
成した。この膜状体を乾燥させた後、温度300℃で2
時間、焼成(熱処理)を行うことにより酸化チタン膜を
得た。
【0221】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが10μmであった。
【0222】−3− この酸化チタン膜の上面に、蒸着
法により、寸法:縦100mm×横100mm×厚さ
0.1mmのITO電極(第2の電極)を形成した。
【0223】(比較例)白金電極の上面に形成した膜状
体に対してブラスト処理を施さなかった以外は、前記実
施例3と同様にして太陽電池を製造した。
【0224】なお、得られた酸化チタン膜は、空孔率が
40%、受光面の表面粗さRaが10μmであった。
【0225】(実験)実施例1〜9および比較例の太陽
電池における酸化チタン膜のバンドギャップを、それぞ
れ、バンドギャップ測定装置を用いて周知の方法により
測定した。
【0226】(評価)実施例1〜9および比較例におい
て製造した太陽電池に、それぞれ、人工太陽灯の光を照
射し、このときの光電変換効率を測定した。なお、酸化
チタン膜への光の入射角度は、90°と52°に設定
し、光の入射角度が90°のときの光電変換効率をR90
とし、52°のときの光電変換効率をR52とした。これ
らの実験および評価の結果を表1に示す。
【0227】
【表1】
【0228】表1に示す結果から、本発明の太陽電池
(実施例1〜9)は、いずれも、光電変換効率に優れる
ものであった。これに対し、比較例の太陽電池は、光電
変換効率に劣るものであった。
【0229】また、本発明の太陽電池(実施例1〜9)
は、いずれも、R52/R90が0.80以上であり、この
ことは、本発明の太陽電池が、光に対する指向性がより
低いことを示すものであった。
【0230】なお、図7等に示す構成の太陽電池を、前
記実施例1〜9と同様にして製造したが、このような太
陽電池も、バンドギャップが小さく、光電変換効率が優
れ、光に対する指向性が低いものであった。
【0231】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、高
い光電変換効率を有する酸化チタン膜が得られる。
【0232】また、塗布法で酸化チタン膜を形成するこ
とにより、酸化チタン膜、太陽電池の製造コストの削
減、製造時間の短縮にも寄与する。
【0233】また、高い光電変換効率を有する酸化チタ
ン膜が得られるため、太陽電池の小型化にも寄与する。
【0234】また、材料として用いる酸化チタン粉末の
平均粒径、酸化チタン膜の表面粗さRaを適宜選択する
ことにより、光電変換効率をさらに向上させることがで
きる。
【0235】このようなことから、本発明の酸化チタン
膜は、太陽電池をはじめとするあらゆるものに利用で
き、実用に耐え得る性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の実施形態を示す斜視図であ
る。
【図2】本発明の太陽電池の実施形態を示す断面図であ
る。
【図3】本発明の酸化チタン膜と第2の電極の界面付近
の断面を示す拡大図である。
【図4】本発明の酸化チタン膜の受光面付近の断面図で
ある。
【図5】図1に示す太陽電池回路の等価回路を表す図で
ある。
【図6】第1の電極の上面に設けられた本発明の酸化チ
タン膜の断面を示す拡大図である。
【図7】本発明の太陽電池の他の実施形態を示す斜視図
である。
【図8】本発明の太陽電池の他の実施形態を示す断面図
である。
【図9】湿式太陽電池の構成および原理を示す模式図で
ある。
【符号の説明】
1 太陽電池 2 基板 3 第1の電極 4 酸化チタン膜 41 孔 5 第2の電極 6 外部回路 7 ダイオード 8 酸化チタン粉末 100 湿式太陽電池 110 電極 120 電極 130 電解質溶液 140 外部回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G047 CB08 CC03 CD02 CD07 4K044 AA01 AA06 AB02 BA12 BC14 CA53 CA62 5F051 AA20 CB13 CB29 CB30 DA05 FA04

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化チタン粉末を主とする材料を成形し
    て膜状体を形成する工程と、 前記膜状体の表面の少なくとも一部に、表面粗さRaが
    前記酸化チタン粉末の平均粒径より大きくなるように粗
    面化処理を施す工程とを有することを特徴とする酸化チ
    タン膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記粗面化処理は、ブラスト処理である
    請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記膜状体は、塗布法により形成される
    ものである請求項1または2に記載の酸化チタン膜の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 表面に微小な凹凸を有する基材に、酸化
    チタン粉末を主とする材料を被覆して、酸化チタン膜を
    得る酸化チタン膜の製造方法であって、 前記酸化チタン膜の表面の少なくとも一部における表面
    粗さRaが、前記酸化チタン粉末の平均粒径より大きい
    ことを特徴とする酸化チタン膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記基材の前記材料により被覆される部
    位における表面粗さRaが0.01〜100μmである
    請求項4に記載の酸化チタン膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基材の表面粗さRaは、前記酸化チ
    タン粉末の平均粒径より大きい請求項4または5に記載
    の酸化チタン膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記基材の表面粗さRaをh[μm]、
    前記酸化チタン粉末の平均粒径をd[μm]としたと
    き、h/d>5の関係を満足する請求項4ないし6のい
    ずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記基材は、電極である請求項4ないし
    7のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記酸化チタン膜の平均厚さは、0.1
    〜300μmである請求項1ないし8のいずれかに記載
    の酸化チタン膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記酸化チタン膜の表面粗さRaをH
    [μm]、前記酸化チタン粉末の平均粒径をd[μm]
    としたとき、H/d>5の関係を満足する請求項1ない
    し9のいずれかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記酸化チタン粉末の平均粒径は、
    0.001〜10μmである請求項1ないし10のいず
    れかに記載の酸化チタン膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記酸化チタン粉末は、主として二酸
    化チタンで構成される請求項1ないし11のいずれかに
    記載の酸化チタン膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記材料は、ルチル型の二酸化チタン
    を含む請求項1ないし12のいずれかに記載の酸化チタ
    ン膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記材料は、アナターゼ型の二酸化チ
    タンを含むものである請求項1ないし13のいずれかに
    記載の酸化チタン膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記酸化チタン膜の表面の少なくとも
    一部における表面粗さRaが0.01〜100μmであ
    る請求項1ないし14のいずれかに記載の酸化チタン膜
    の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項1ないし15のいずれかに記載
    の方法により製造されたことを特徴とする酸化チタン
    膜。
  17. 【請求項17】 酸化チタン粉末を主とする材料を用い
    て製造された酸化チタン膜であって、 表面の少なくとも一部における表面粗さRaが、前記酸
    化チタン粉末の平均粒径より大きいことを特徴とする酸
    化チタン膜。
  18. 【請求項18】 表面の少なくとも一部における表面粗
    さRaが0.01〜100μmである請求項16または
    17に記載の酸化チタン膜。
  19. 【請求項19】 酸化チタン膜の表面粗さRaをH[μ
    m]、前記酸化チタン粉末の平均粒径をd[μm]とし
    たとき、H/d>5の関係を満足する請求項17または
    18に記載の酸化チタン膜。
  20. 【請求項20】 酸化チタンを主とする材料を用いて製
    造された酸化チタン膜であって、 表面の少なくとも一部における表面粗さRaが0.3〜
    100μmであることを特徴とする酸化チタン膜。
  21. 【請求項21】 平均厚さが0.1〜300μmである
    請求項16ないし20のいずれかに記載の酸化チタン
    膜。
  22. 【請求項22】 ルチル型の二酸化チタンを含む請求項
    16ないし21のいずれかに記載の酸化チタン膜。
  23. 【請求項23】 アナターゼ型の二酸化チタンを含む請
    求項16ないし22のいずれかに記載の酸化チタン膜。
  24. 【請求項24】 多孔質である請求項16ないし23の
    いずれかに記載の酸化チタン膜。
  25. 【請求項25】 空孔率が5〜90%である請求項16
    ないし24のいずれかに記載の酸化チタン膜。
  26. 【請求項26】 電極間に、請求項16ないし25のい
    ずれかに記載の酸化チタン膜を有することを特徴とする
    太陽電池。
  27. 【請求項27】 前記電極の少なくとも一方は、実質的
    に透明であり、該透明な電極側から光を入射させて使用
    する請求項26に記載の太陽電池。
  28. 【請求項28】 請求項16ないし25のいずれかに記
    載の酸化チタン膜と、 前記酸化チタン膜を介して配置される一対の電極と、 前記電極および前記酸化チタン膜を支持する基板とを有
    することを特徴とする太陽電池。
  29. 【請求項29】 前記基板、および、少なくとも前記基
    板側の電極は、実質的に透明であり、該透明な基板側か
    ら光を入射させて使用する請求項28に記載の太陽電
    池。
  30. 【請求項30】 整流特性を有する請求項26ないし2
    9のいずれかに記載の太陽電池。
  31. 【請求項31】 前記整流特性は、前記酸化チタン膜と
    前記電極の少なくとも一方との界面に形成されたショッ
    トキー障壁により得られている請求項30に記載の太陽
    電池。
  32. 【請求項32】 前記酸化チタン膜への光の入射角が9
    0°での光電変換効率をR90とし、光の入射角が52°
    での光電変換効率をR52としたとき、R52/R90が0.
    8以上である請求項26ないし31のいずれかに記載の
    太陽電池。
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