JP2002115799A - 防液堤の断熱構造 - Google Patents

防液堤の断熱構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 断熱効果が高く、かつ、断熱構造を薄くする
ことができ、耐火性及び耐久性に優れた防液堤の断熱構
造を提供する。 【課題手段】 液体貯槽(ガスタンクT)の周囲に構築
されている基礎部(基礎コンクリート部11)及び壁体
部12から構成されている防液堤10の断熱構造におい
て、不燃性材料と所定強度を有する断熱性材料とを含む
パネル材20を前記基礎部の上面、及び/又は、前記壁
体部の内側表面に貼設したことを特徴とする防液堤の断
熱構造とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体貯槽の周囲に
構築されている防液堤の断熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス
(LPG)等の可燃性液化ガス(以下、「液化ガス」と
いう)を貯溜する地上式低温液化ガスタンク(以下、
「ガスタンク」という)においては、不可抗力により貯
溜されている液化ガスが漏洩した場合に備えて、当該液
化ガスが無制限に拡散することを防止するために、ガス
タンクの周囲に防液堤が構築されている。
【0003】この防液堤の基礎部の表面部には、万一、
ガスタンク内から液化ガスが漏洩した場合に、当該液化
ガスへの入熱を防ぐことにより、漏洩した液化ガスの蒸
発速度を緩和させ、二次災害を防止するために、熱伝導
率が小さいことに着目して軽量モルタルを主原料とする
断熱材(以下、「軽量モルタル系断熱材」という)から
なる断熱層が設置されている。この断熱層の厚さは、で
きるだけ防液堤の容積を減少させないため、60mm程
度とすることが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この軽量モル
タル系断熱材は、施工後5年〜8年程度で劣化が始ま
り、表面部のひび割れ、部分的な剥がれ及び剥離が発生
してしまい、また、比重が0.2〜0.5と軽量である
ため、剥離した軽量モルタル系断熱材が飛散してしまう
ため、長期間にわたって断熱性能を確保することが困難
であり、断熱性能を維持するための維持補修に要する作
業及び費用が必要となるという問題点を有していた。
【0005】なお、前記と同様の問題を解決するため
に、図3に示すように、ガスタンクT’の周囲に構築さ
れた防液堤10’の内部に浮蓋30を設けた技術が存在
している(特開昭60−101400号公報参照)。こ
の浮蓋30は、軽量断熱材と浮力材(所要の浮力と剛性
とを賦与するための浮力箱)を組み合わせたものであ
り、液化ガスが漏洩した場合には、当該浮蓋30を浮泛
させることにより、入熱を防ぐことを意図したものであ
る。しかし、この技術において、液化ガスが漏洩した際
には、浮蓋30に浮力が不均一に作用することが多く、
一方、浮蓋30は軽量であるため、液面31に対して当
該浮蓋30を平衡状態に保つことは難しいため、断熱効
果が発揮されにくいという不都合がある。
【0006】本発明は、前記の問題点を解決するために
なされたものであり、断熱効果が高く、かつ、断熱構造
を薄くすることができ、耐火性及び耐久性に優れた防液
堤の断熱構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明の防液堤の断熱構造(以下、「断熱構造」と
いう場合がある)は、液体貯槽の周囲に構築されている
基礎部及び壁体部から構成されている防液堤の断熱構造
において、不燃性材料と所定強度を有する断熱性材料と
を含むパネル材を、前記基礎部の上面及び/又は前記壁
体部の内側表面に貼設したことを特徴としている。ま
た、前記基礎部の上面及び/又は前記壁体部の内側表面
と前記パネル材との間に間隔材を介設するとともに、前
記間隔材と前記パネル材との間に充填材を充填するもの
であってもよく、さらに、前記充填材は軽量モルタル又
はセメントモルタルであることが施工性等から好ましい
ものである。
【0008】ここで、防液堤に貼設するためのパネル材
に要求される性能として、断熱性が優れていること(熱
伝導率が小さいこと)、耐火性を有していること、及
び、耐食性などの耐久性が優れていることが必要とされ
る。また、防液堤は、漏洩した液体を貯溜して、当該液
体が防液堤を越流することがないように、貯溜可能な液
体の容積を多く確保することが要求されるために、パネ
ル材の厚さは薄いほど望ましい(一般的には、60mm
以下が望ましい)。このような要求を満たすために、前
記パネル材は、ガラス繊維を混入したウレタンフォーム
を使用することにより強度と断熱性を確保し、その表面
に不燃性のフレキシブル板を設けることにより耐火性を
確保する構造とすることが好ましい。また、前記パネル
材は、少なくとも、防液堤の基礎部に設ける必要があ
り、必要に応じて、壁体部内側の垂直面の一部又は全部
に設けるものである。
【0009】従って、本発明によれば、前記パネル材を
防液堤の基礎部等の内側表面に貼設することにより、容
易に、断熱性、耐火性及び耐久性に優れた断熱構造とす
ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態につ
いて、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各
実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同
一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】[地上式低温液化ガス貯溜施設]まず、本
発明の防液堤の断熱構造について説明する前に、LPG
やLNG等を貯溜する地上式低温液化ガス貯溜施設Sに
ついて説明する。図1(a)に示すように、地上式低温
液化ガス貯溜施設Sは、円筒形状であるガスタンクT
(液体貯槽)と、その周囲を囲繞する防液堤10から形
成されている。この防液堤10は、地盤上に水平態に構
築されている基礎コンクリート部11(基礎部)と、当
該基礎コンクリート部11上に垂直に立設している所定
高さを有する壁体部12から形成されており、基礎コン
クリート部11の中央にガスタンクTが配設されてい
る。そして、基礎コンクリート部11のガスタンクTの
設置面以外の部位における上面部、及び、壁体部12の
略中間高さより下方の部位における内側表面部にはパネ
ル材20が貼設されている。
【0012】[パネル材]パネル材20は、硬質発泡ウ
レタンを使用し、ガラス繊維を混入したウレタンフォー
ム21((比重0.4、曲げ強度30(N/mm2)、
熱伝導率0.05(kcal/m・h・℃))の表面に不燃性
のフレキシブル板22[(JIS A 5430)認定
品、不燃(通)第1001号]を接着して一体化した構
造であり、以下に示す優れた特長を有している。
【0013】(1)硬質発泡ウレタンを使用しているた
め、極めて断熱性に優れている。また、耐薬品性および
耐水性(耐食性)に優れ、屋外や水中で使用した場合で
あっても長期間にわたって耐久性を保持することができ
る。 (2)軽量の断熱材である硬質発泡ウレタンをガラス繊
維で強化した材料を使用していることから、非常に軽量
であるとともに、縦、横の方向に関係なく所定強度を有
している。また、パネル材20が反って変形すること
や、表面がささくれ立つことがなく、長期間にわたって
一定品質を保持可能である。 (3)穿孔、切削、接着、塗装などの各作業を容易に行
うことができ、施工性に優れている。
【0014】前記パネル材20は、ガラス繊維を混入し
たウレタンフォームを所定形状に成形し(本実施形態で
は1000mm×2000mm×10mm)、表面に
(1000mm×2000mm×3mm)のフレキシブ
ル枚22を接着剤により接着して、両者を均一に圧着さ
せることにより一体化した構造となっている。ここで、
パネル材20の厚さを13mm程度としたのは、当該パ
ネル材20が反ることを防止するため及び防液堤10の
容積を確保するためである。なお、接着剤としては、エ
ポキシ樹脂及びウレタンプレポリマーが作業性や接着強
度の点で最適であるが、その他の接着剤として、酢酸ビ
ニル樹脂系、アクリル樹脂系、ゴム系の接着剤を使用す
ることができる。また、このパネル材20は、工場にお
いて製造して、現場に搬入すると品質面及び施工性の観
点から好適である。
【0015】[防液堤の断熱構造の第1実施形態]本発
明の防液堤10の断熱構造は、防液堤10を構成する基
礎コンクリート部11のガスタンクTの設置面以外の部
位における上面部、及び、壁体部12の略中間高さより
下方の部位における内側表面部にパネル材20を貼設す
ることにより構成されている。
【0016】パネル材20を貼設する方法は種々存在し
ているが、図1(b)に示すように、第1実施形態で
は、基礎コンクリート部11及び壁体部12に、パネル
材20のフレキシブル板22を上側にした状態で、エポ
キシ樹脂等の接着剤13を使用して直接的に貼着する構
造としており、最も、断熱性能を発揮させることができ
る構造となっている。なお、隣接するパネル材20の相
互間は、所定の幅(10mm程度)で間隔をあけて継目
部25を設ける。この継目部25には、パネル材20の
フレキシブル板22の下面高さ程度までバックアップ材
26を充填した後、当該バックアップ材の上部にシリコ
ンシーリング27を充填する。バックアップ材26の材
質は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタンな
どの樹脂材料のいずれかから選択して使用することが好
適である。このように、継目部25をバックアップ材2
6及びシリコンシーリング27により形成することで、
当該継目部25の止水性が確保される。
【0017】本発明の作用は以下の通りである。 (1)従来方法であるコンクリート又はモルタルの熱伝
導率(1.3〜2.0kcal/m・h・℃)と比較して、
パネル材20の熱伝導率(0.05kcal/m・h・℃)
が極めて小さいため、漏洩した液体の蒸発速度を効果的
に緩和することができ、良好な断熱構造とすることがで
きる。なお、前記熱伝導率は、熱絶縁材の熱抵抗及び熱
伝導率の測定方法[(JIS A 1412−2−19
99)熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法、第2
部:熱流計法(HFM法)]により計測した値である。 (2)パネル材20を構成するフレキシブル板22は耐
火性を有しており、また、パネル材20は防錆に優れて
おり、風雨に対しても強いため、長期間使用しても剥離
したり、表面の材料が飛散すること等がなく、良好な断
熱構造とすることができる。 (3)パネル材20の比重は0.71と非常に軽いため
作業性に優れており、また、その厚さを薄くできるた
め、防液堤10内の貯液量がほとんど減少しない。
(4)パネル材20の強度は40(N/mm2)と大き
いため、上部に荷重を載荷することが可能な断熱構造と
することができる。 (5)パネル材20に使用した不燃性材料の耐久性は、
これまでの実績で約35年以上を有しているため、従来
の断熱材と比較して非常に安価なサイクルコストとする
ことができる。 (6)パネル材20は工場製作が可能であるため、品質
の均一性を担保できる。 (7)パネル材を貼設20するだけで施工を行うことが
でき、容易かつ迅速に施工を行うことができるため、普
通作業員が施工を行うことが可能である。また、施工時
において、施工項目毎に作業状況を目視により確認でき
るため、品質管理を容易に行うことができる。
【0018】[防液堤の断熱構造の第2実施形態]続い
て、基礎部の上面及び/又は壁体部の内側表面とパネル
材との間に間隔材を介設するとともに、当該間隔材とパ
ネル材との間に充填材を充填したことを特徴とする防液
堤の断熱構造の実施形態について説明する。図2に示す
ように、本発明の第2実施形態は、防液堤10’の基礎
コンクリート部11及び壁体部12の表面部に、断熱材
14が既設している場合の改修としての断熱構造であ
る。
【0019】前記のように、断熱材14は、その一部が
劣化して飛散した状態で基礎コンクリート部11及び壁
体部12の表面に不均一に残存しており、その厚さが一
様でないことから、この既設面の凹凸を平滑な面に形成
するために、充填材を使用する。充填材としては、軽量
モルタル又はセメントモルタルが使用可能であるが、断
熱効果を考慮すると軽量モルタルが好ましいことから、
第2実施形態では、軽量モルタル15を打設している。
軽量モルタル15としては、エアモルタル(軽量気泡セ
メントモルタル)などを使用するとよい。その後、軽量
モルタル15の仕上げ面にパネル材20を貼設する。さ
らに、パネル材20と基礎コンクリート部11及び壁体
部12との間に、所定の間隔で、間隔材28を介設させ
る。間隔材28の材質としては、防錆性に優れたステン
レスアンカーなどが好適である。図2では、間隔材28
としてステンレスアンカーをパネル材20の上面から基
礎コンクリート部11及び壁体部12に所定間隔で打ち
込むことにより、パネル材20を固定した断熱構造を示
している。さらに、隣接するパネル材20との間に、所
定の幅で継目部25を設け、当該継目部25に、パネル
材20のフレキシブル板22の下面高さ程度までバック
アップ材26を充填した後、当該バックアップ材26の
上部にシリコンシーリング27を充填することにより、
止水性を確保する。
【0020】なお、第2実施形態では、充填材としての
軽量モルタル15を打設後に、その表面にパネル材20
を貼設し、当該パネル材20の上面から間隔材28を打
ち込み固定する場合について説明した。しかし、本発明
は、別段これに限られることなく、例えば、断熱材14
の既設面上に間隔材を設置し、その上からパネル材20
を設置して固定することで、既設面とパネル材20との
間に中空部を形成し、当該中空部に充填材を充填するこ
とにより構築してもよい。
【0021】このように構成されている第2実施形態に
おける本発明の防液堤10’の断熱構造によれば、第1
実施形態と同様の作用効果を奏する他に、既設の断熱材
14が施工されている防液堤10’においても、基礎コ
ンクリート部11の上面及び/又は壁体部12の内側表
面に、間隔材28及び高さ調整などのための充填材を設
けることで、パネル材20を貼設できるため、好適な断
熱構造に改良することができる。
【0022】以上、本発明について、好適な実施形態に
ついての二例を説明したが、本発明は当該実施形態に限
られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更
が可能である。特に、パネル材を構成する材料は前記構
成材料に限定されるものでなく、パネル材の厚さは、当
該パネル材が反らないことや防液堤内の容積に応じて適
切に定めることができ、その他、パネル材に要求される
断熱性能や強度についても、適切に選択することが必要
となる。また、本発明の防液堤の断熱構造は、可燃性液
化ガスを貯溜するための貯槽の周囲における防液堤に最
適であるが、液体貯槽に貯溜する液体は、液化ガスに限
られることはないことは言うまでもない。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、従来の軽量モルタルを
使用した断熱構造と比較して、(1)パネル材の熱伝導
率が極めて小さいため、液体貯槽に貯溜されている液体
が漏洩しても液体の蒸発速度の緩和効果を大きくするこ
とができる、(2)液体の漏洩箇所が偏在した場合であ
っても、従来の浮蓋を使用した方法と比較して安定した
断熱効果を有する、(3)パネル材の厚さ薄いため、防
液堤内の容積が減ずる度合いを少なくすることができ
る、(4)耐火性を有しており、また、風化しにくい断
熱構造とすることができる、(5)パネル材を工場製作
することにより、品質の均一化を容易に図ることができ
る、(6)パネル材の比重が小さいため、作業性に優
れ、施工及び品質管理が容易である、(7)耐久性に優
れ、サイクルコストが安価である、という優れた効果を
奏する防液堤の断熱構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の防液堤の断熱構造を使用し
た低温液化ガス貯溜施設を示す側断面図であり、(b)
は本発明の防液堤の断熱構造の第1実施形態を示す拡大
図である。
【図2】本発明の防液堤の断熱構造の第2実施形態を示
す拡大図である。
【図3】従来の液化ガスタンクの断熱構造を示す側断面
図である。
【符号の説明】
S 地上式低温液化ガス貯溜施設 T ガスタンク(液体貯槽) 10,10’ 防液堤 11 基礎コンクリート部(基礎部) 12 壁体部 13 接着剤 14 断熱材 15 充填材(軽量モルタル) 20 パネル材 21 ウレタンフォーム 22 フレキシブル板 25 継目部 26 バックアップ材 27 シリコンシーリング 28 間隔材(ステンレスアンカー)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体貯槽の周囲に構築されている基礎部
    及び壁体部から構成されている防液堤の断熱構造におい
    て、 不燃性材料と所定強度を有する断熱性材料とを含むパネ
    ル材を、前記基礎部の上面及び/又は前記壁体部の内側
    表面に貼設したことを特徴とする防液堤の断熱構造。
  2. 【請求項2】 前記基礎部の上面及び/又は前記壁体部
    の内側表面と前記パネル材との間に間隔材を介設すると
    ともに、 前記間隔材と前記パネル材との間に充填材を充填したこ
    とを特徴とする請求項1に記載の防液堤の断熱構造。
  3. 【請求項3】 前記充填材は軽量モルタル又はセメント
    モルタルであることを特徴とする請求項2に記載の防液
    堤の断熱構造。
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