JP2002114151A - 階段を昇降する手押しカート - Google Patents

階段を昇降する手押しカート

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JP2002114151A
JP2002114151A JP2000306078A JP2000306078A JP2002114151A JP 2002114151 A JP2002114151 A JP 2002114151A JP 2000306078 A JP2000306078 A JP 2000306078A JP 2000306078 A JP2000306078 A JP 2000306078A JP 2002114151 A JP2002114151 A JP 2002114151A
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torque
cart
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Hisashi Nakamura
久 中村
Hiroyuki Suzuki
博之 鈴木
Tomohiro Honda
朋寛 本田
Yuko Matsuda
祐子 松田
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Toyoda Koki KK
Original Assignee
Toyoda Koki KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 操作しやすく、少ないエネルギで、滑らかに
階段を昇降するカートを実現する。 【解決手段】このカートは、放射状に広がるとともに放
射中心のまわりに一体回転可能な複数のアーム8と、各
アームの先端に取付けられた転動体6と、アーム群を回
転させるトルク発生部と、操作者が把持する把持部と、
把持部に加わる操作力の方向と大きさを検知する手段
と、制御部とを備える。制御部はトルク発生部を制御し
て、操作部に所定値以上の昇段方向の操作力が加えられ
ている間はアーム群を昇段方向に回転させ、操作部に昇
段方向の操作力が加えられていても前記所定値に満たな
い間はアーム群を回転させない。操作部に降段方向の操
作力が加えられて降段方向前側アームが下段に接地する
までの間はアーム群を降段方向に回転させる。降段方向
前側アームが下段に接地して降段方向後側アームが上段
から離脱したときの降段方向前側アームの接地角度が所
定値よりも小さいときにアーム群に逆方向トルクを与え
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、階段の昇段及び
/又は降段機能を持つ手押しカートに関する。ここでい
う手押しカートには、例えば、重量物の搬送カート、車
椅子、あるいは階段昇降に障害を持つ者の昇降を補助す
るカート等が含まれる。また「手押し」とは、操作者が
把持部を把持して押すか引くかしてカートを昇降させる
ことができるものをいい、操作者が後方から押すものに
限られず、前方から引くものを含む。この発明は、上記
の手押しカートのうち、放射状に広がるとともに放射中
心のまわりに一体回転可能な複数のアームと、各アーム
の先端に取付けられた転動体を有し、アームの放射中心
まわりの回転(転動体の公転)と転動体の回転中心まわ
りの回転(転動体の自転)の複合作用によって階段を滑
らかに昇降することができる手押しカートに関する。
【0002】
【従来の技術】 回転中心が固定された転動体を用いて
階段を昇降する場合、その回転中心が階段の段差に倣っ
て移動することから昇降ショックが大きい。そこで、放
射状に広がるとともに放射中心のまわりに一体回転可能
な複数のアームを設け、そのアームの先端に転動体を設
ける技術が知られている。この技術によると、上段ステ
ップと下段ステップの双方に各一個ずつの転動体が接地
した状態を得ることができ、あたかも2足歩行している
のと同様に、滑らかに階段を昇降することができる。現
時点では、アーム群の回転速度を一定に保って一定の速
度で昇段する台車、あるいは一定の速度で降段する台車
が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 台車で平地を移動す
る場合、台車に把持部を設け、操作者が把持部に操作力
を加えることで移動するカートが多用される。このカー
トは自然な感覚で操作することができ、すこぶる便利に
活用されている。階段を昇降するカートにも同様の操作
性が望まれているところ、従来の技術ではそれに対応す
ることができない。従来の技術では、昇降台車の昇降速
度に合わせて操作者が階段を昇降している。把持部に加
える操作力に従って階段を昇降するものをカートとい
い、予め決められた速度で階段を昇降するものを台車と
いうことにすれば、従来の技術は階段昇降台車のレベル
に留まっており、階段昇降カートは実現されていない。
【0004】また従来の技術では、アーム群が一定方向
に回転しつづけることで階段を昇段し続けるか、あるい
は降段し続ける。本発明者らが詳細に観測したところ、
上記の昇降方式ではカート重心の上下動に無駄があり、
無用にエネルギを消費して無用に昇降ショックを発生さ
せていることが判明した。
【0005】本発明の一つの目的は、操作しやすい階段
昇降カートを実現することである。本発明の他の一つの
目的は、より滑らかに(昇降ショックが小さい)、より
少ないエネルギで階段を昇降できるカートを実現するこ
とである。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用と効果】 本発明群
の一つの発明は、操作者の意図に沿って少ないエネルギ
で滑らかに階段を昇段する手押しカートに関する。この
カートは、放射状に広がるとともに放射中心のまわりに
一体回転可能な複数のアームと、各アームの先端に取付
けられた転動体と、アーム群にトルクを加えるトルク発
生部と、操作者が把持する把持部と、把持部に加わる操
作力の方向と大きさを検知する手段と、制御部とを備え
る。制御部はトルク発生部を制御して、操作部に所定値
以上の昇段方向の操作力が加えられている間はアーム群
を昇段方向に回転させ、操作部に昇段方向の操作力が加
えられていても前記所定値に満たない間はアーム群を回
転させないことを特徴とする。
【0007】例えば図4のJ6の状態では、3本のアー
ムの内、2本のアーム8a,8cが接地している。実際
にはアーム先端の転動体が接地しているのであるが、本
明細書では簡単のために、転動体を介してアーム先端が
接地している状態を「アーム先端が接地した、あるいは
アームが接地した」と表現する。複数のアームのうち2
本のアームの先端が接地している状態が安定状態であ
る。この状態から操作者が昇段方向の操作力を加える
と、転動体が自転してカート全体が平行移動する。状態
J6からJ22までの間は転動体が自転することから大
きな操作力は不要であり、またかけられない(転動体が
自転してしまう)。状態J22で昇段方向前側の転動体
6cが段差に当接すると、それ以上には平行移動できな
い。そこで操作者の自然な反応として昇段方向に強く引
く。この手押しカートでは、操作部に所定値以上の昇段
方向の操作力が加えられている間はアーム群を昇段方向
に回転させるので、状態J22から状態J26又はJ3
2まで、すなわち昇段方向前側のアーム(この場合8
b)先端の転動体6bが上段ステップに足をかけるまで
アーム8群を昇段方向(反時計回転方向)に回転させ
る。状態J26又はJ32で昇段方向前側アーム先端が
接地しても、昇段方向後側アーム(この場合8c)の転
動体6cが段差に当接しており、カートは平行移動でき
ない。操作者は自然と昇段方向に強い力をかけつづけ
る。この結果、アーム8群は昇段方向に回りつづける。
状態J30は、昇段方向後側アーム8c先端の転動体6
cが上段高さにまで上昇する直前の状態を示す。この状
態となるまで、昇段方向後側アーム8c先端の転動体6
cが段差にかかってカートは平行移動できず、操作者は
昇段方向に大きな力を加える。そこでこの状態となるま
でトルク発生部がアーム群を昇段方向に回転させ続け
る。この結果、昇段方向後側アーム先端の転動体が上段
の高さまで上昇する。すると、転動体が自転可能とな
り、カートは一段上昇して安定状態J6に復帰する。カ
ートが同一ステップ面上を平行移動する間は大きな操作
力は不必要であり、またかからない。発明の手押しカー
トでは、操作部に昇段方向の操作力が加えられていても
前記所定値に満たない間はアーム群を回転させないため
に、同一ステップ面上を平行移動する間はアーム群が回
転せず、転動体の自転によって平行移動する。
【0008】このカートによると、トルク発生部がアー
ム群を昇段に必要な最小限度だけ回転させることで昇段
する。すなわち、アーム群を昇段方向に連続的に回転さ
せつづけて昇段していくのではなく、アーム群の最小限
度の回転と転動体の自転を組合せて昇降していく。この
ために、本発明のカートは、昇段時に無用に上下動せ
ず、極めて滑らかに昇段する。また、昇段に要するエネ
ルギも最小ですむ。さらに、操作者の自然な操作に追従
して昇段することになり、極めて操作性が高い。
【0009】本発明群の他の一つの発明は、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を降段する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに一体回転可能な複数の
アームと、各アームの先端に取付けられた転動体と、ア
ーム群にトルクを加えるトルク発生部と、操作者が把持
する把持部と、把持部に加わる操作力の方向を検知する
手段と、制御部とを備える。制御部はトルク発生部を制
御して、操作部に降段方向の操作力が加えられて降段方
向前側アームが下段に接地するまでの間はアーム群を降
段方向に回転させ、降段方向前側アームが下段に接地し
たときのアーム接地角度が所定値よりも小さいとき、又
は、降段方向前側アームが下段に接地して降段方向後側
アームが上段から離脱したときの降段方向前側アームの
接地角度が所定値よりも小さいときにアーム群に逆方向
トルクを与えることを特徴とする。
【0010】このカートは、図3の状態J8に示すよう
に、降段方向前側のアーム(この場合8a)が回転可能
となったときにトルク発生部がアーム群を降段方向(時
計回転方向)に回転させ、状態J10またはJ16に示
すように、降段方向前側のアーム8a先端を下段に接地
させる。このカートでは接地時のアームの回転角度を指
標とし、これが所定値より大きい場合(状態J10は所
定値より大きい場合に相当する)には、降段方向の回転
を続ける。一方、前側アーム先端が下段に接地したとき
の接地角度が所定値よりも小さい場合(状態J16は所
定値より小さい場合に相当する)には、アーム群に加え
るトルク方向を逆転させる。状態J16以降にはトルク
方向が逆転して反時計回転方向(アーム全体とすると昇
段方向)に回転させようとするが、カート重量がかかっ
ているために実際には回転できず、状態J18に示す状
態、すなわち、降段方向後側のアーム(この場合8c)
が上段から離脱して反時計回転方向への回転が可能とな
ったときに反時計回転方向に回転させる。これに代え
て、降段方向前側アームが下段に接地して降段方向後側
アームが上段から離脱したとき(すなわち状態J18
と、図示はされていないが状態J10の直後の状態)の
降段方向前側アームの接地角度が所定値よりも小さいと
きにアーム群に与えるトルクを逆方向に反転させるよう
にすることもできる。状態J10の直後に降段方向前側
アームが下段に接地して降段方向後側アームが上段から
離脱したときには、アーム接地角が所定値よりも大き
く、アーム群は降段方向に回転しつづける。これに対し
て、状態J18では、降段方向前側アームが下段に接地
して降段方向後側アームが上段から離脱したときのアー
ム接地角度が所定値よりも小さく、J18以降にはトル
ク方向が逆転する。すなわち、矢印Cの方向に回転させ
る。上記の制御によると、降段方向前側アーム先端が下
段に接地したときから2輪接地の安定状態に至るまでの
間、より少ない回転角で済み、しかもカートに掛かる重
力がアーム群を回転させる方向に回転させることから、
少ないエネルギで滑らかに降段する。実際、段差が高い
階段の場合には、降段方向の回転を続けて降段する。段
差が低い階段の場合には、降段方向の回転と逆方向の回
転を間欠的に繰り返しながら降段する。このカートでは
回転方向が適切に切換えられ、より少ないエネルギでよ
り滑らかに降段する回転方向が選ばれる。
【0011】上記した手押しカートの場合、さらにアー
ムの回転角速度検知手段を備え、検知された回転角速度
がゼロであることから降段方向前側アームの接地タイミ
ングを判別することが好ましい。この方式によると、接
地時点を検知するための特別なセンサを用いる必要がな
い。また、アームの先端高さを検知するセンサを用いて
検知されたアームの先端高さから降段方向後側アームの
離脱タイミングを判別することもできる。この技術によ
ると、トルク逆転タイミングを確実に検知ができる。
【0012】本発明群の他の一つの発明も、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を降段する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに重力によって一体回転
可能な複数のアームと、各アームの先端に取付けられた
転動体と、アーム群にトルクを加えるトルク発生部と、
操作者が把持する把持部と、制御部とを備える。制御部
はトルク発生部を制御して、重力がアーム群に与える回
転方向と反対方向のトルクを加えることを特徴とする。
アーム群に加わるトルクは、アーム群ないしはカートに
加わる重力に起因するトルクと、トルク発生部に起因す
るトルクを合計したものであり、アーム群は合計トルク
に従って回転する。
【0013】この発明の手押しカートは、重力に従って
アーム群が降段方向に回転して落下ないし降段する際
に、トルク発生部が、重力によって回転しようとするア
ームにその回転方向と反対方向のトルクを加えることか
ら、重力によってアームが回転する速度が緩められ、滑
らかに降段してよく。
【0014】本発明群の他の一つの発明も、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を降段する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに重力によって一体回転
可能な複数のアームと、各アームの先端に取付けられた
転動体と、アーム群にトルクを加えるトルク発生部と、
操作者が把持する把持部と、アーム群に加わっている負
荷状態を検知する手段と、制御部とを備える。制御部は
負荷状態検知手段の検知状態に基づいてトルク発生部を
制御して、特定の状態変化が検知されたときにアーム群
に加えるトルク方向を反転させることを特徴とする。こ
の場合も、アーム群に加わるトルクは、アーム群ないし
はカートに加わる重力に起因するトルクと、トルク発生
部に起因するトルクを合計したものであり、アーム群は
合計トルクに従って回転する。
【0015】この発明の手押しカートは、重力に従って
アーム群が降段方向に回転して落下ないし降段する際
に、アーム群に加わっている負荷状態を検知し、特定の
状態変化が検知されたときにアーム群に加えるトルク方
向を反転させることから、アームの自由な回転を確実に
低速化することができ、滑らかに降段してよく。
【0016】アーム群に加わっている負荷状態を検知す
る手段は、アーム先端に加えられる接地力がアームに与
える力の方向を検知するものであることが好ましい。こ
の場合、アームに掛かっている力の方向を的確に検知
し、アームの自由な回転を確実に低速化することができ
る。
【0017】本発明群の他の一つの発明も、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を降段する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに重力によって一体回転
可能な複数のアームと、各アームの先端に取付けられた
転動体と、アーム群にトルクを加えるトルク発生部と、
操作者が把持する把持部と、アーム群の回転姿勢を検知
する手段と、制御部とを備える。制御部は回転姿勢検知
手段の検知状態に基づいてトルク発生部を制御して、特
定の状態変化が検知されたときにアーム群に加えるトル
ク方向を反転させることを特徴とする。この場合も、ア
ーム群に加わるトルクは、アーム群ないしはカートに加
わる重力に起因するトルクと、トルク発生部に起因する
トルクを合計したものであり、アーム群は合計トルクに
従って回転する。
【0018】この発明の手押しカートは、重力に従って
アーム群が降段方向に回転して落下ないし降段する際
に、アーム群の回転姿勢を検知し、特定の状態変化が検
知されたときにアーム群に加えるトルク方向を反転させ
ることから、アームの自由な回転を確実に低速化するこ
とができ、滑らかに降段してよく。
【0019】本発明群の他の一つの発明も、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を降段する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに重力によって一体回転
可能な複数のアームと、各アームの先端に取付けられた
転動体と、アーム群にトルクを加えるトルク発生部と、
操作者が把持する把持部と、把持部に加わる操作力の方
向を検知する手段と、制御部とを備える。制御部はトル
ク発生部を制御して、把持部に昇段方向の操作力が加え
られて降段方向後側アームの1輪接地状態が検知されて
いる間はアーム群に昇段方向のトルクを加え、把持部に
昇段方向の操作力が加えられて降段方向前側アームの1
輪接地状態が検知されている間は、前側アームの接地角
度が所定値よりも大きいときに昇段方向のトルクを加
え、前側アームの接地角度が所定値よりも小さい場合に
降段方向のトルクを加える。ここでも、アーム群に加わ
るトルクは、アーム群ないしはカートに加わる重力に起
因するトルクと、トルク発生部に起因するトルクを合計
したものであり、アーム群は合計トルクに従って回転す
る。
【0020】このカートによると、重力に従ってアーム
群が降段方向に回転して落下ないし降段する際に操作者
が自然と加える操作力を利用してトルク発生部が制御さ
れるために、重力によって回転しようとするアームにそ
の回転方向と反対方向のトルクを加えることができ、重
力に起因してアームが回転する速度が緩められ、滑らか
に降段してよく
【0021】上記した一連の降段カートが操作力検知手
段を備え、操作力検知手段が検知する操作力の大きさに
応じてアーム群に加えるトルクの大きさを制御すること
が好ましい。この場合のトルクとは、アーム群を回転さ
せるトルクであってもよいし、アーム群の自由な回転を
低速化する為のトルクであってもよい。この場合、操作
者の意図に沿ったトルクが加えられ、操作者は自然な感
覚で降段させることができる。
【0022】本発明群の他の一つの発明は、操作者の意
図に沿って少ないエネルギで滑らかに階段を昇降する手
押しカートに関する。この手押しカートは、放射状に広
がるとともに放射中心のまわりに一体回転可能な複数の
アームと、各アームの先端に取付けられた転動体と、ア
ーム群にトルクを加えるトルク発生部と、操作者が把持
する把持部と、把持部に加わる操作力の大きさを検知す
る手段と、制御部とを備える。制御部はトルク発生部
に、手押しカートの平行移動が許容される間にかけられ
る操作力以上の操作力が操作部に加えられている間は重
力に抗してアーム群を回転させるに充分なトルクを発生
させ、手押しカートの平行移動が許容される間にかけら
れる操作力が操作部に加えられている間は重力に抗して
アーム群を回転させるに満たないトルクを発生させる。
【0023】このカートは、平行移動が可能な間はアー
ム群が回転せず、2本のアームが接地した2輪接地状態
を維持しながら転動体が自転して平行移動する。昇段方
向前側アームが段差に当接してカートの平行移動が禁止
されると、操作者は自然と強く引く。すると接地してい
る一方のアームが重力に抗して持ち上げられて昇段す
る。昇段完了すれば2輪接地状態で安定する。カートが
平行移動しているうちに降段方向前側のアームが段差か
ら離脱すると、重力に抗してアーム群を回転させるに満
たないトルクしか掛かっていなくてもアーム群が回転を
始める。あるいは重力によって回転しようとするアーム
群にトルク発生装置が制動力を加える。このようにし
て、このカートは階段を滑らかに昇降する。
【0024】
【発明の実施の形態】 最初に、実施例で説明する手押
しカートの主要な特徴を列記する。 (形態1)モータとアーム群の間にウォームギヤ機構が
介在しており、そのウォームギヤ機構によってアーム群
が重力によって回転することが禁じられている。そして
そのモータに通電されないかぎりアーム群は回転しな
い。 (形態2)請求項1の昇段技術と請求項2の降段技術を
併せ持つ昇降カート。 (形態3)請求項1の昇段技術と請求項5の降段技術を
併せ持つ昇降カート。 (形態4)請求項1の昇段技術と請求項6の降段技術を
併せ持つ昇降カート。 (形態5)請求項1の昇段技術と請求項8の降段技術を
併せ持つ昇降カート。 (形態6)請求項1の昇段技術と請求項9の降段技術を
併せ持つ昇降カート。 (形態7)各アームの回転方向前側と後側に歪みゲージ
を持ち、この歪みゲージの出力状態からアームに加わっ
ている負荷状態を検知する。 (形態8)各アームが回転面内で微小角傾動自在であ
り、その微小角内の傾動方向からアームに加わっている
負荷状態を検知する。 (形態9)降段方向後側アームの1輪接地状態と、降段
方向前側アームの1輪接地状態が、形態7または8の検
知状態の変化から検知される。 (形態10) 各アームの先端に測距センサを持ち、こ
の測距センサ群で検知される地面までの高さの組合せで
回転姿勢を検知する。 (形態11) 各アームの先端に測距センサを持ち、こ
の測距センサで検知される地面までの高さによって接地
状態か否かを検知する。
【0025】
【発明の実施例】(第1実施例) 以下に説明する第1
実施例は、モータとアーム群の間にウォームギヤ機構が
介在しており、そのウォームギヤ機構によってアーム群
が重力によって回転することが禁じられている。そして
モータに通電されないかぎりアーム群は回転しない(形
態1)。昇段時には請求項1の手押しカートとなり、降
段時には請求項2の手押しカートとなって(形態2)、
階段を自在に昇降する。第1実施例の手押しカート2
(以下、単にカート2という)は、図1と2に示すよう
に、放射状に広がるとともに放射中心10のまわりに一
体回転可能な複数(具体的は3本)のアーム8と、各ア
ーム8の先端に取付けられた転動体6と、アーム群にト
ルクを加えるトルク発生部(具体的にはバッテリで駆動
されるモータ)12と、操作者が把持する把持部5と、
把持部5に加わる操作力の方向と大きさを検知する手段
4と、制御部13と、バッテリ15と、ウォームギヤ式
減速機11を備えており、把持部5を把持して操作する
者の意図に沿ってトルク発生部12によってアーム8群
を回転させて階段を昇降する。なお、前記構成部材はフ
レーム14に組み付けられている。またフレーム14に
は積載物を積載することができる。
【0026】モータ12の回転軸はウォームギヤ式減速
機11の入力軸に接続されている。ウォームギヤ式減速
機11の出力軸10の両端にはそれぞれ3本のアーム8
群が固定されている。アーム8群は放射状に等間隔(1
20度)で広がっている。それぞれのアーム8の先端に
は転動体(具体的には車輪)6が自転可能に支持されて
いる。車輪6群は、ウォームギヤ式減速機11の出力軸
10のまわりに公転することができ、かつ自身の回転中
心のまわりに自転することができる。なお転動体6はキ
ャタピラ式の無限軌道であってもよい。
【0027】アーム8群のフレーム14に対する回転角
αを検知する回転角検知センサ(図1では図示省略、図
13に参照番号16で示される)がフレーム14に取付
けられている。回転角検知センサ16はアーム8群のフ
レーム14に対する回転角αと回転方向に応じた電気信
号を発生させる。検知された回転角αの大小は電気信号
の絶対値の大小で示され、回転方向は電気信号の正負で
示される。図1に示されるように、把持部5は操作者が
操作して操作し易い形状である。把持部5には操作力検
知センサ4が取付けられている。操作力検知センサ4
は、操作者が把持部5に加える操作力の方向と大きさに
応じた電気信号を発生する。操作力の大小は電気信号の
絶対値の大小で示され、操作力の方向は電気信号の正負
で示される。
【0028】図13に示されるように、回転角検知セン
サ16はA/Dコンバータ18を介して制御部13に接
続されている。制御部13は回転角検知センサ16から
の電気信号によって、アーム8群の回転角(フレーム1
4に対する回転角αと、鉛直線に対するアーム回転角
θ)を演算し、単位時間あたりの回転角変化を演算する
ことで回転角速度を演算する。操作力検知センサ4は、
A/Dコンバータ17を介して制御部13に接続されて
おり、操作者が把持部5に加える操作力の方向と大きさ
を示す電気信号が制御部13に入力される。制御部13
は、さらにモータ12に接続されている。制御部13は
モータ12に発生させるトルクの大きさを演算するため
に、2種類のマップ38を備えている。本実施例の制御
部13は、操作力検知センサ4から得られる操作力の方
向と、回転角検知センサ16から得られるアーム回転角
θと、その回転角速度と、直前処理で採用したマップか
ら、今回処理時に用いるマップを選択する。そして、選
択されたマップと、操作力検知センサ4で検知された操
作力に従って、モータ12に発生させるトルクを決定す
る。そして、モータ駆動回路50を制御してモータ12
のトルクを制御する。正確にモータトルクを制御するた
めに、フィードバック制御を行なう。フィードバック制
御のために、モータ電流を検知する電流センサ52の検
知値が制御部13に入力される。
【0029】後記するように、制御部13はトルク発生
部(モータ)12を制御し、操作部5に所定値以上の昇
段方向の操作力が加えられている間はアーム8群を昇段
方向に回転させ、操作部5に昇段方向の操作力が加えら
れていても所定値に満たない間はアーム8群を回転させ
ない。また、操作部5に降段方向の操作力が加えられて
降段方向前側アームが下段に接地するまでの間はアーム
8群を降段方向に回転させ、降段方向前側アームが下段
に接地して降段方向後側アームが上段から離脱したとき
の降段方向前側アームの接地角度が所定値よりも小さい
ときにアーム群8に逆方向のトルクを与える。
【0030】図5は操作力検知センサ4で検知される操
作力(横軸)基づいてモータトルクを決定するために利
用される2種類のマップを示す。図6はマップの選択論
理表を示し、図7は実際に生じる選択状態の変化を示し
ている。図8から12は、制御部13で実行される処理
手順を示し、図13は制御部13で実行される処理をブ
ロック図で示している。図5に示すように、2種類のマ
ップはいずれも、操作力に基づいてモータトルクを決定
する。順回転マップ(A)では、押す方向(降段方向)
への操作力に対応してモータ12に順回転方向(図3の
時計回転方向であり、降段方向)のトルクを発生させ
る。逆回転マップ(B)では、押す方向(降段方向)へ
の操作力に対応してモータ12に逆回転方向(図3の反
時計回転方向であり、昇段方向)のトルクを発生させ
る。引く方向(昇段方向)への操作力が加えられれば、
どちらのマップが使用されていても、モータ12に逆回
転方向(図3の反時計回転方向であり、昇段方向)のト
ルクを発生させる。操作力が小さい範囲では、操作力に
対するモータトルクの比例係数が小さく、小さなモータ
トルクが求められる。操作力が大きくなると、比例係数
が大きな値に切換えられるために大きなモータトルクが
求められる。モータトルクの絶対値がMT以下の場合、
カート2の重力の抗してアーム8群を回転させるには不
十分である。一方、ウォームギヤ式減速機11の摩擦力
に抗してアーム8群を回転させるには充分であり、カー
ト2の重心位置を下げる方向にアーム8群を回転させる
には十分である。すなわち、モータトルクの絶対値がM
T以下の場合、2輪接地しているアームの一方を持ち上
げることはできないが、一輪接地状態のアーム群を回転
させて2輪接地させることはできる。モータトルクの絶
対値がMT以上であれば、カート2の重力の抗してアー
ム8群を回転させることができる。すなわち2輪接地し
ているアームの一方を持ち上げて1輪接地状態に変化さ
せることができる。
【0031】カート2のメインスイッチがオンされたと
きに、図8のメインルーチンが実行され始める。メイン
ルーチンでは最初に初期設定を行う(ステップS80
2)。ステップS802では、各種タイマをゼロにリセ
ットしたり、後述するステップS52(図12)で用い
る定数の設定等を行う。メインルーチンの実行開始時に
は逆回転マップ(図5(B))が選択される。図8に示
すように、メインルーチンは、100μ秒ごとに図9に
示す100μ秒割込ルーチンを実行させ(図8のステッ
プS808)、500μ秒ごとに図10に示す500μ
秒割込ルーチンを実行させ(図8のステップS81
4)、10000μ秒ごとに図11に示す10000μ
秒割込ルーチンを実行させる(図8のステップS82
0)。ステップS810、816、822は各タイマを
リセットする処理であり、各割込ルーチンが各時間間隔
で実行される。
【0032】図9の100μ秒割込ルーチンでは、操作
力センサ4の出力から操作力を求める(S902、S9
04)。また、モータ駆動電流を制御する(ステップS
906、S908)。但し、モータ12に発生させるト
ルクは、図10の500μ秒割込ルーチンで決定され
る。500μ秒ごとにモータトルクを決定し、100μ
秒ごとにモータ電流を制御してモータトルクを決定され
たトルクに調整する。
【0033】図10の500μ秒割込ルーチンでは、直
前5回の操作力を平均して平均操作力を求め(ステップ
S12)、高周波変動分を除去し(ステップS14のロ
ーパスフィルタ処理:実際には制御部13のソフト処理
によってフィルタリングされる。このフィルタリング処
理によって、演算された操作力から操作者の手ぶれ等に
起因する微小な変動を除去することができる)、図6の
マップ選択論理表にしたがって使用するマップを選択し
(ステップS16)、選択されたマップに従ってモータ
トルクを演算し(ステップS18)、ステップS16で
選択したマップ種類を記憶して次回のマップ選択に備え
(ステップS20)、ステップS18で演算されたモー
タトルクにリミッタ制御を加えてモータ電流値を一定の
上限下限範囲内に収める(ステップS22)。ステップ
S18でのモータトルク演算工程では、ステップS12
で演算された平均操作力によってモータトルクが演算さ
れる。図5の横軸に示される操作力は瞬時の操作力でな
く、平均操作力が採用される。また、ステップS22
で、モータ電流値を一定の範囲内に収めるために、モー
タの暴走等が防止される。
【0034】図11の10000μ秒割込ルーチンで
は、回転角検知センサ16の出力からフレーム14に対
するアーム8群の回転角αを演算し(ステップS30、
S32)、回転角速度を演算し(ステップS34)、フ
レーム14の傾斜角βがまだ演算されていなければフレ
ーム傾斜角を演算し(ステップS42)、フレーム傾斜
角βがすでに演算されていれば、検知された回転角αか
ら傾斜角βを減じることによってアーム8群の鉛直線に
対するアーム回転角θを演算する。ステップS40で
は、演算されたアーム回転角θが120度以上240度
未満であれば、それから120度を減じてアーム回転角
θの値を0度以上120度未満とする。このことは、図
3の状態J10に示す車輪6bを持つアーム8bのアー
ム回転角θが120度以上240度未満であれば、後続
するアーム(この場合車輪6cを持つアーム8c)の鉛
直線から時計回転方向に計った回転角度を演算すること
に相当する。演算されたアーム回転角θが240度以上
360度未満であれば、それから240度を減じて0度
以上120度未満とする。このことは、アーム回転角θ
が240度以上360度未満であれば、2本後の後続す
るアーム(この場合車輪6aを持つアーム8a)の鉛直
線から時計回転方向に計った回転角度を演算することに
相当する。図11のステップS40によって、鉛直線か
ら時計回転方向に探したときに最初に見つかるアームま
での角度θが算出される。
【0035】図12のフレーム傾斜角演算ルーチンで
は、フレーム14に対するアーム8群の回転角αがゼロ
でなく、一定時間以上に回転角速度がゼロである場合、
すなわち、フレーム14に対してアーム8群が所定角α
回転し、その回転角αで変化しない場合を検知して、そ
のときの角度αをフレーム傾斜角βとする(ステップS
54)。図3の場合、状態J4ではフレーム14に対す
るアーム8群の回転角αがゼロであり、状態J4以降で
αがゼロでなくなり、状態J6で回転角速度がゼロとな
る。ステップS54では、状態J6でのフレーム14に
対するアーム8群の回転角αをもってフレーム傾斜角β
とする。
【0036】図13は、上記の処理手順によって実行さ
れる各種処理を、制御部13によって実行される処理単
位によってブロック表示した図である。操作力演算処理
22は図9のステップS904、平均操作力演算処理2
4は図10のステップS12、LPF処理26はステッ
プS14、回転角α演算処理28は図11のステップS
32、フレーム傾斜角β演算処理32は図12のステッ
プS54、アーム回転角θ演算処理30は図11のステ
ップS38、マップ選択処理36は図10のステップS
16、モータトルク演算処理40はステップS18、使
用マップ記憶処理34はステップS20、電流リミッタ
処理42はステップS22、PI制御処理は図9のステ
ップS906、PWM演算処理46はステップS908
に対応する。
【0037】マップ記憶手段38には、図5(A)の順
回転マップと(B)の逆回転マップが記憶されている。
電流リミッタ処理42では、モータ12に加える電流指
令値にリミッタを設ける処理を実行する。モータ12に
加える電流値が所定範囲内に収まるように上限と下限を
設けるのである。電流指令リミッタ処理42で演算され
た電流指令値は電流指令値と実際の電流値の偏差に比例
して修正する要素と、偏差の積分値に基づいて修正する
要素を併せ持つPI制御処理44(その処理内容が枠4
4a内に図式化されている)に与えられ、実際にモータ
12に加えられる電流値が電流指令値に一致するように
制御される。PWM演算処理46は、モータ電流を電流
指令値に調整するために必要なモータ駆動回路50の導
通時間と非導通時間の比を演算し、ゲート信号制御処理
48が、その時間比に応じてモータ駆動回路50の各ト
ランジスタのゲートに加えるゲート信号を制御する。モ
ータ駆動回路50に挿入されている4つのスイッチング
トランジスタのうちのいずれの2個を導通させるかによ
って、モータ12の回転方向を制御し、導通時間と非導
通時間の比を制御することで、モータ12に加える電流
値を制御してモータ12に発生させるトルクを制御す
る。
【0038】モータ12はモータに加えられる電流値と
モータに発生するトルクが比例する特性をもち、電流セ
ンサ52でモータ電流が検知される。検知されたモータ
電流から高周波ノイズが除去され(LPF19)、A/
Dコンバータ20でデジタル値に変換された後、PI制
御処理部44に入力されて電流指令値と電流実際値の偏
差を求めるために使われる。このようにして制御される
モータトルクは、図10のステップS18または図13
のブロック40で演算されたトルクに等しい。
【0039】本実施例のカート2の作動の様子を説明す
る。最初に、図3を参照しながら、操作者がカート2に
降段方向(矢印F方向であり、押し方向に対応する)に
操作力をかけたために、カート2が降段する場合を説明
する。図3では、カート2を略的に表記している。カー
ト2の状態は、図3において左から右に変化する。状態
J2は、カート2が未使用である状態を示す。カート2
は使用されない間2輪接地している(接地している2輪
を6a、6cとする)。この場合、接地していない車輪
6bのアーム8bは鉛直方向を向く。また、フレーム1
4も鉛直方向に伸びている。この場合のフレーム14に
対するアーム8群の回転角αはゼロである。
【0040】カート2が使用され始めると、前記した図
8から図12の処理が実行され始める。状態J4は、メ
インスイッチをONさせた後、操作者が把持部5を把持
してカート2のフレーム14を角度βだけ傾けた状態に
対応する。前記したように、モータ12とアーム8群の
間にはウォームギヤ式減速機11が介在しており、モー
タ12にトルクが生じない限り、アーム8群にカート重
量に起因するトルクが作用してもアーム8群はフレーム
14に対して回転しない。状態J4では、フレーム14
が角度βだけ傾くのに追従してアーム8群の全体が同じ
角度だけ傾く。この結果、車輪6cのみが接地している
状態となる。この接地状態を、以下では一輪接地状態と
いう。状態J2からJ4までの間、図11のステップS
32で演算されるフレーム14に対するアーム8群の回
転角αはゼロであり、ステップS34で演算される回転
角速度もゼロである。状態J2からJ4までの間、アー
ム8群はフレーム14に対して回転しないからである。
【0041】図3の状態J4の一輪接地状態で、操作者
がカート2に降段方向(押方向)の操作力を加えると、
カート2の使用開始時には逆回転マップが選択されてい
るために、図10のステップS16では図6のマップ選
択論理表のB欄に従って順回転マップ(図5(A))を
選択する。押操作力を加え始めたときには、操作力が
「押」であり、アーム回転角θ(実際にはまだθが演算
されておらず、αで代用される)がゼロ度以上60度未
満であり、回転角速度はゼロで静止しており、前回(こ
の場合使用開始時)の使用マップは逆回転であったこと
からB欄であることが分かり、その結果、今回使用する
マップとして順回転マップが選択されるのである。
【0042】図10のステップS16で順回転マップが
選択されると、ステップS18では図5(A)に従って
順回転方向(降段方向、時計回転方向)のモータトルク
が演算され、図9のステップS908でモータ12に順
回転方向(図3の矢印N方向、時計回転方向、降段方
向)のトルクが発生する。図3の状態J4では、接地し
た車輪6cが転動するために、操作者は大きな操作力を
加えることはできない。従ってモータ12に発生するト
ルクも小さい。しかしながら、この場合、カート2自体
の重量(フレーム14に積載物が積載されている場合は
その重量も加算される。以下、単にカート重量という)
によってアーム8群を順回転方向に回そうとするトルク
が加わっている。このために、モータ12に順回転方向
の小さなトルクが生じるだけでアーム8群は順回転方向
に回転する。アーム8群が順方向に回転を始めると、図
6のマップ選択論理表でC欄に切り換わり、以後は順回
転マップが選択されてモータ12は順方向に回転しつづ
け、ついに、状態J6で車輪6aが接地する。車輪6a
が接地すると、モータ12に加えられているトルクは小
さく、それ以上にはアーム8群を順方向に回転させるこ
とができない。そこで、状態J6で安定する。
【0043】制御部13は、状態J2からJ6までの
間、フレーム14に対するアーム8群の回転角αを検知
し続ける。状態J2からJ4までの間、フレーム14に
対してアーム8群は回転しないために、検知されるアー
ム回転角αはゼロである。そこで、図12のステップS
50がYESとなり、ステップS52とS54がスキッ
プされる。ステップS54がスキップされるために、フ
レーム傾斜角βはセットされない。図3の状態J4から
J6までの間は、フレーム14に対してアーム8群が回
転することから、図12のステップS50はNOとな
る。状態J6で安定するに至るまでの間は、回転角速度
がゼロでなく、ステップS52がNOとなり、ステップ
S54がスキップされる。状態J6で安定すると、回転
角速度がゼロとなり、ステップS52がYESとなる。
このとき、そのときのフレーム14に対するアーム8群
の回転角αがフレーム14の傾斜角βとして記憶される
(図12のステップS54)。ステップS54で記憶さ
れるフレーム傾斜角βは、図3の状態J4とJ6でのフ
レーム14の傾斜角に等しい。以上の処理が、図12の
傾斜角演算ルーチンで実行される。
【0044】前記したように、アーム8群の回転角αは
フレーム14に対する角度として検知される。図3の状
態J6でのフレーム傾斜角βが検知されると、それ以後
は、フレーム14に対する回転角αから、鉛直線に対す
るアーム回転角θを演算することができる。図12のス
テップS54の実行以降は、鉛直線に対するアーム回転
角θが演算される。この処理が図11のステップS38
で実行される。実際には、時計回転方向に正のアーム回
転角θが演算される。以後用語の意味を分かりやすくす
るために、回転角検知センサ16で検知されるフレーム
14に対する角度を検知角αといい、フレーム14の傾
斜角をフレーム傾斜角βといい、鉛直線に対するアーム
回転角をアーム回転角θという。この場合、図3の状態
J8に示すように、θ=α―βの関係にあり、時計回転
方向(順方向)に正とされる。
【0045】最初に図3の状態J6の2輪接地状態にな
ったとき、アーム回転角θはゼロであり(接地していな
いアーム8bは鉛直方向を向く)、回転角速度はゼロで
あり、操作力は押方向である。その時点では図6のマッ
プ選択論理表のC欄に該当しており、順回転マップを使
用している。このために、状態J6となったときに、図
6の選択論理表のC欄からA欄に切換えられ、状態J6
になった後で最初に図10のステップS16が実行され
る場合には逆回転マップを選択する。このために、状態
J6の直後にモータ12は逆回転方向のトルクを発生す
る。しかしながら状態J6での操作力が小さく、モータ
トルクも小さく、2輪接地している車輪の一方を持ち上
げるほどのトルクではないために、2輪接地状態が維持
される。図10のステップS20では、逆回転方向マッ
プを用いたことを記憶する。500μ秒後には、ここで
記憶されたマップを前回使用したマップとしてそのとき
使用するマップを選択する。500μ秒後には図6のA
欄からB欄となり、図10のステップS16では順回転
マップが選択され、そのための電流が加えられるが(図
9のステップS908)、やはりモータトルクは小さ
く、2輪接地している車輪の一方を持ち上げるほどのト
ルクではないために、2輪接地状態が維持される。
【0046】状態J6に示されるように、カートが水平
面に2輪接地している間は、図6のAB欄間で交互に切
り替えられ、500μ秒毎にアーム8群に加えられるト
ルクの方向が正逆に反転するが、いずれも、2輪接地し
ている車輪の一方を持ち上げるほどのトルクではないた
めに、2輪接地状態が維持される。カート2は、2輪接
地している転動体が自転することで平行移動する。
【0047】図3の状態J8は、降段方向前側の車輪が
上段を踏み外した直後の状態を示す。図6B欄に該当し
て図5(A)の順回転マップを使用しているうちに踏み
外すと、アーム8群がモータ12のトルクによって順方
向(降段方向、矢印N方向)に回転し始める。これ以降
は、図6C欄に切り換わり、順方向に回転を続ける。図
6A欄に該当して図5(B)の逆回転マップを使用して
いるうちに上段を踏み外すと、逆方向には回転できない
ために、500μ秒後に図6B欄の状態となり、そのと
きに順回転方向のトルクが加えられてアーム8群は順方
向に回転し始める。それ以降は図6C欄に切り換わり、
順方向に回転を続ける。図6C欄は、図3の状態J16
に示すように、上段を踏み外した車輪6aが下段に接地
して回転角速度がゼロになるまで続く。モータ12は、
車輪6aが下段に接地するまでアーム8群を降段方向に
回転させつづける。
【0048】階段によっては、図3の状態J10に示す
ように、大きい段差(h1)の場合と、状態J16に示
すように小さい段差(h2)の場合がある。ここでいう
大きい段差の場合とは、降段方向前側のアーム8bの回
転角が鉛直線から60度以上回転して先行するアーム8
aの車輪6aが下段に接地する場合をいう。この場合、
下段に接地したアーム8aは接地点から見て鉛直線より
も降段方向に傾いている。この場合、カート重量はアー
ム8群を順方向(降段方向)に回転させる向きに作用す
る。小さい段差の場合とは、降段方向前側のアーム8b
の回転角が60度未満のあいだに先行するアーム8aの
車輪6aが下段に接地する場合をいう。この場合、下段
に接地したアーム8aは接地点から見て鉛直線よりも昇
段方向に傾いている。この場合、カート重量はアーム8
群を逆方向(昇段方向、反時計回転方向)に回転させる
向きに作用する。
【0049】最初に大きい段差(h1)の場合を説明す
る。この場合には、アーム8群の回転角θが60度を超
えたときに、図6のC欄からE欄に切り換わる。状態J
10となったときには、E欄に切り換わっている。この
ために、状態J10以降もモータ12は順方向(時計回
転方向)回転を続け、図3の状態J12を経て状態J1
4に至るまで順方向(時計回転方向、降段方向)に回転
しつづける。この回転方向は重力がアーム8群を回転さ
せる方向に等しく、モータ12は小さなトルクでアーム
8群を順方向に回転させる。状態J14で2輪接地して
安定したときに、図6のA欄に戻る。前記したように、
モータトルクは小さく、2輪接地状態が維持される。2
輪接地状態では、500μ秒ごとに、図6のA欄とB欄
が交互に切り換わりながら2輪接地状態を維持する。以
上の状態変化が、図7の降段(1)の欄に整理されてい
る。図3の状態J14は状態J6に等しい。すなわち、
カート2は、状態J6から平行移動して状態J8とな
り、モータ12がアーム8群を降段方向に回転させて状
態J14となり、一段降りた状態で状態J6に復帰す
る。操作者がさらに降段方向の操作力を加えつづける
と、上記動作が繰り返され、カート2は滑らかに階段を
降段していく。
【0050】次に小さい段差(h2)を降段する場合を
説明する。前述したように、図3の状態J8は、降段方
向前側の車輪6aが接地しなくなった一輪接地状態であ
る。先に説明したのと同様にして、これ以降はモータ1
2がアーム8群を順方向に回転させる。すなわち、図6
Cの欄が持続する。図6Cの欄は、上段からはなれた車
輪6aが下段に接地して回転角速度がゼロになる(図3
の状態J16の状態)まで続く。モータ12は、車輪6
aが下段に接地するまでアーム8群を順方向に回転させ
つづける。小さい段差(h2)の場合、アーム8群が6
0度回転しないうちに、車輪6aが下段に接地する。こ
のために、車輪6aが下段に接地したときに、図6Cの
欄からAの欄に切り換わる。この場合、カート重量によ
ってアーム8群が回転できないために図6Bの欄に切り
換わる。切り換わっても、カート重量によってアーム8
群が回転できないために、再度切り換わる。結局2輪接
地した状態を維持する。この間500μ秒ごとに、図6
A欄とB欄が交互に切り換わる。図3の状態J16に示
すように、降段方向前側のアームが下段に接地して降段
方向後側のアームが上段に接地した2輪接地状態では、
カート重量によっていずれの方向にもアームが回転でき
ないために、操作者が加える降段方向の操作力で2輪6
a、6cが自転してカート2は平行移動する。この間、
図6A欄とB欄が500μ秒毎に切換えられ、アーム8
群に小さなトルクが正逆方向に交互に加えられる。
【0051】状態J18で降段方向後側の車輪6cが上
段から外れたときに、逆回転方向のトルクがモータ12
に加えられていると、アーム8群がそのトルクで逆回転
方向に回転する。順回転方向のトルクがモータ12に加
えられている間に、状態J18で車輪6cが上段から外
れた場合、モータトルクはカート重量に起因するトルク
よりも小さいために、アーム8群は順方向に回転できな
い。このために、図6A欄に切り換わり、以降はモータ
12に逆回転方向のトルクが加えられ、逆方向のトルク
によってアーム8群が逆回転方向(反時計回転方向)に
回転する。すなわち図6A欄から図6D欄に切り換わ
る。
【0052】図6D欄に切り換わってアーム8群が逆方
向に回転すると、図3の状態J20に示すように、降段
方向後側の車輪6cが接地する。このとき、アーム8群
の回転角速度がゼロとなり、図6D欄からB欄に切り換
わる。状態J20で2輪接地すると、降段方向の操作力
は小さいためにモータ12はどちらにも回転できず、図
6A欄とB欄が500μ秒ごとに交互に切換えられる。
状態J20は状態J6に等しい。すなわち、カートは、
状態J6から平行移動して状態J8となり、モータ12
がアーム8群を降段方向に回転させて状態J16とな
り、その後は降段方向後側のアームが上段から離脱する
まで平行移動し、離脱したとき以降はアーム8群を逆方
向(反時計回転方向)に回転させて状態J4(J20)
に復帰する。この間にカート2は1段降段している。操
作者がさらに降段方向の操作力を加えつづけると、上記
動作が繰り返されてカート2は滑らかに階段を降段して
いく。上記の作動中のマップ切換え順が、図7の降段
(2)欄に整理されている。
【0053】前述したように、大きい段差の階段でも、
小さい段差の階段でも、降段方向前側の車輪が上段から
はなれてアーム8群が小さなトルクで降段方向に回転で
きるようになると、アーム8群は降段方向に回転して上
段から離れた車輪が下段に接地するまで降段方向に回転
させる。この間は、カート2の重力は上段に接地してい
る車輪6cで支えられ、2足歩行する人が下段に着地す
るまで上段で体重を支えるようにして滑らかに降段する
のと同様に、カート2は滑らかに降段する。降段方向前
側の車輪が下段に接地した以降は、大きな段差の階段の
場合には降段方向の回転を続けて2輪接地状態とし、小
さな段差の階段の場合には逆方向にアーム8群を回転さ
せて2輪接地状態とする。
【0054】明らかに、本実施例のカートは、放射状に
広がるとともに放射中心10のまわりに一体回転可能な
複数のアーム8と、各アームの先端に取付けられた転動
体6と、アーム群にトルクを加えるトルク発生部12
と、操作者が把持する把持部5と、把持部に加わる操作
力の方向を検知する手段4と、制御部13とを備えてい
る。そして、把持部5を把持して操作する者の意図に沿
ってトルク発生部12によってアーム8群を回転させて
降段する。制御部13はトルク発生部12を制御し、操
作部5に降段方向(F方向)の操作力が加えられて降段
方向前側アームが下段に接地するまでの間(すなわち車
輪6aが下段に接地するまでの間)はアーム8群を降段
方向(N方向)に回転させ、降段方向前側アームが下段
に接地したときの接地角度が所定値(この場合60度)
よりも大きい(状態J10は、アーム接地角が60度以
上)ときには、同一方向(N方向)に回転させ、降段方
向前側アームが下段に接地して降段方向後側アームが上
段から離脱したときの降段方向前側アームの接地角度が
所定値(同じく60度)よりも小さい(状態J18がこ
のときに相当する)ときにアーム群に逆方向のトルクを
与える。これに代えて、降段方向前側アームが下段に接
地したときのアーム接地角度が所定値よりも小さいとき
に、すなわち、状態J16以降に、逆回転トルクをかけ
つづけるようにしても良い。
【0055】降段方向前側車輪の1輪接地後の回転方向
を上記にように切換えると、カート2の重心が下がりな
がら2輪接地の状態に移行する。このことは、逆に回転
させて2輪接地させる場合と対比すれば明らかで、図3
の状態J10からアーム8群を反時計回転方向に回転さ
せて2輪接地させる為には一旦カート2の重心を持ち上
げなければならない。あるいは、状態J16からアーム
8群を時計回転方向に回転させて2輪接地させるために
も、一旦カート2の重心を持ち上げなければならない。
この場合、モータ12に大きなトルクが必要とされ、ま
た、カート2が階段を滑らかに降段することができな
い。本実施例では、アームの接地角度を指標とし、それ
以後の回転方向を決めるために、重心を持ち上げること
なく2輪接地させることができる方向に回転させること
ができ、モータ12に要求されるトルクは小さな値でよ
く、カート2は滑らかに降段する。
【0056】上記実施例のカートは明らかに、アームの
回転角速度検知手段を備えており、回転角速度がゼロで
あることから、接地タイミングを判別して接地角度を検
知する。
【0057】このカート2は昇段することもできる。こ
れを次に説明する。昇段する場合には、操作者は把持部
5に昇段方向(引き方向であり図4の左向き)の操作力
を加える。この場合、図5(A)と(B)から明らか
に、いずれのマップを用いていても、昇段方向の操作力
が加えられればアーム8群に逆方向(反時計回転方向で
あり昇段方向でもある)のトルクが加えられる。
【0058】図5のマップから明らかに、操作力が大き
いほどモータトルクも大きくなる。このマップでは、カ
ート2が2輪接地して平行移動しているときの操作力で
は2輪接地している車輪の一方を持ち上げる程のモータ
トルクにならないのに対し、カート2の並行移動が禁止
された状態で操作者が強くカート2を引くと、2輪接地
している車輪の一方を持ち上げる程大きなモータトルク
に調整される。図4の状態J6は先に説明した図3の状
態J6に等しい。ここで、操作者が昇段方向に操作力を
加えると、カート2は平行移動する。平行移動するため
に、操作者は大きな操作力を加えられない。小さな操作
力でカート2は平行移動する。
【0059】状態J22は、昇段方向前側の車輪6cが
段差に当接して平行移動が禁止された状態を示す。この
場合、昇段を希望する操作者は自然と強くカート2を引
く。この場合、当然のことながらカート2自体を重力に
抗して持ち上げるほどの力ではなく、それ以前にカート
2のモータ12が昇段駆動を開始する。状態J22で操
作者がカート2を強く引くと(平地を平行移動させるに
要する力よりは強い。しかし、カート2自体を引き上げ
るほどの力は要しない)、モータ12がアーム8群を逆
方向(昇段方向)に回転させる。状態J24がその途中
を示している。状態J26とJ32は、モータ12が逆
方向にアーム8群を回転させて昇段方向前側の車輪6b
が上段に接地した状態を示す。状態J26は階段の段差
が大きく、状態J32は階段の段差が小さい場合を示
す。状態J26とJ32ではカート2が平行移動でき
ず、操作者は強い操作力をかけ続ける。このために、ア
ーム8群は昇段方向に回転しつづける。状態J28は昇
段方向後側の車輪6cが段差を外れる直前の状態を示
し、段差を外れるまでカート2の平行移動が禁止される
ために強い操作力がかけ続けられてアーム8群は昇段方
向に回転しつづける。昇段方向後側の車輪6cが段差を
外れると、カート2の平行移動が許容され、操作力が小
さくなり、モータ12のトルクがアーム8群を回転させ
るには不十分となり、2輪接地状態で平行移動を続け
る。この状態で一段昇段して状態J6に復帰する。この
場合の状態変化が図7の昇段欄に整理されており、平行
移動とアーム8群の昇段方向の回転を組合せて一段を昇
段する。
【0060】制御部13はトルク発生部12を制御し
て、操作部5に所定値以上の昇段方向の操作力(平行移
動が規制されたときにはじめて可能な値に設定されてい
る)が加えられている間はアーム8群を昇段方向に回転
させ、操作部に昇段方向の操作力が加えられていても前
記所定値に満たない間(すなわち、平行移動できる間に
等しい)はアーム群を回転させない。このカートは、階
段の段差に沿って、平行移動とアーム群の回転を組合せ
て滑らかに昇段していく。
【0061】(第2実施例) 以下、本発明を具現化し
た第2実施例を説明する。第1実施例と同じ部材には同
じ参照符号を付し、重複する説明を省略する。図14
は、近接スイッチを利用してアーム28の負荷状態を検
知する構成を示す。この場合のアーム28群は、前述し
た第1実施例の場合とは異なり、アーム28群が完全に
は固定されていない。図14に良く示されるように、各
アーム28は、支持部34を中心に微小範囲で傾動(矢
印32方向)可能に固定されている。それぞれのアーム
28の傾動範囲の両側には、近接スイッチ群30が設け
られている。即ち、車輪Iのアームの傾動範囲の両側に
は近接スイッチI、Iが設けられ、車輪IIのアーム
の傾動範囲の両側には近接スイッチII、IIが設けら
れ、車輪IIIのアームの傾動範囲の両側には近接スイッ
チIII、IIIが設けられている。アーム28が傾動許
容範囲の略中心にあるとき、アーム28の一対の近接ス
イッチは共にOFF状態となる。アーム28が一方に傾
動すると、接近したほうの近接スイッチの出力状態がO
Nに変化する。近接スイッチ群30は制御部13に接続
されている。
【0062】また第2実施例の場合、アーム28群とモ
ータ12の間にウォームギヤ機構が用いられていない。
またモータ12はロック機構を有しない。そこでアーム
28群は重力によって回転することができる。さらに、
第2実施例の場合、アームの回転角検知センサもない。
【0063】第2実施例の制御部13は、図19に示す
ように、操作力検知センサ4からの信号と、近接スイッ
チI、I、II、II、III、IIIからの信号に
基づいてマップを選択する。そして、そのマップを利用
してモータトルクを演算して、モータ12を制御する。
アーム28群は、重力によるトルクとモータ12による
トルクを合計したトルクによって回転させられる。
【0064】第2実施例のカート25のシステム構成
(図19)を第1実施例のシステム構成(図13)と比
較すると、図13のシステムではアーム回転角θがマッ
プ選択処理36で利用されるのに対し、図19のシステ
ムでは近接スイッチI、I、II、II、III、I
IIの出力状態の組合せを判定処理128してマップ選
択に利用する点で相違する。残部は同様である。
【0065】図17(A)(B)は2種類のマップを示
し、図5のマップと比較すると、逆回転マップのモータ
トルク方向が逆になっている。図8のメインルーチンは
第2実施例についても基本的に同様であり、図示省略さ
れている。但し、ステップS818からS822がな
く、従って、100μ秒割込ルーチンと500μ秒割込
ルーチンしか実行させない。図11と図12に示した回
転角に関係するルーチンは実行されない。図9の100
μ秒割込ルーチンは第2実施例でも変更がないのに対
し、図10の500μ秒割込ルーチンは図18に変更さ
れる。図18の500μ秒割込ルーチンでは、平均操作
力を求め(ステップS52)、高周波ノイズを除去し
(ステップS54)、近接スイッチ群30の出力状態の
組合せを判定し(ステップS56)、その判定結果によ
ってマップを選択し(ステップS58)、モータトルク
を演算し(ステップS60)、電流リミッタ制御をする
(ステップS62)。
【0066】最初に、図15を参照して、操作者が第2
実施例のカート25を降段方向に押しながら、大きな段
差(h1)の階段を降段する場合を説明する。状態J2
2は、図示されないメインスイッチをONさせ、操作者
が把持部5を把持して車輪6I、6IIを自転させて水平
面を降段方向に移動させている状態である。このとき、
カート25の重量を、車輪6Iと車輪6IIを有するアー
ム28群が支えている。この場合、車輪6Iを有するア
ーム28は近接スイッチI側に傾動し(図15、16
中において、近接スイッチであることを示す符号「3
0」は省略されている)、車輪6IIを有するアーム28
は近接スイッチ30II側に傾動している。その結果、
近接スイッチ30Iと近接スイッチ30IIがON状
態となっている。その他の近接スイッチ30群はOFF
状態である。この場合、順回転マップが選択される。
【0067】状態J24は降段方向前側の車輪6Iが上
段からはずれ、降段方向後側車輪6IIのみが接地してい
る一輪接地状態である。本実施例のカート25ではアー
ム28群が重力で回転する。このために、状態J24で
はカート25が落下しようとする。そこで、反射的に、
操作者はカート25の落下を抑えようとして、把持部5
を矢印L方向(即ち昇段方向)に引く。その結果、操作
力検知センサ4は矢印L方向の引き操作力を検知する。
車輪6I、6IIの2輪が接地しているJ22の状態か
ら、降段方向前側の車輪6Iが上段からはずれて降段方
向後側車輪6IIのみが接地している状態J24に変化す
るとき、近接スイッチ群30の出力状態は、図15に記
載のように変化する。操作力が引き方向であり、近接ス
イッチ群30の出力状態が図15の状態J22に記載の
状態からJ24に記載の状態に変化するとき、制御部1
3は図17(A)の順回転マップを用いてモータ12の
トルクを決定する。この場合、操作力が引き方向である
ことから、モータ12は逆回転(反時計回転方向であ
り、昇段方向でもある)のトルクを与える。このトルク
の大きさは、カート重量がアーム28群を降段(時計回
転)方向に回転させるトルクよりも小さい。図中、黒色
の矢印はモータトルクの方向を示し、ハッチ付きの矢印
はアームの回転方向を示す。アーム28群はカート重量
によって降段方向に回転する。しかしながら、モータ1
2が昇段方向のトルクを加えていることから、それが制
動力となり、アーム28群は制動力を受けずにカート重
量によって降段方向に回転する場合に比較して低速でゆ
っくりと降段方向に回転する。この結果、カート25は
ゆっくりと滑らかに下段に降段し、降段ショックが小さ
い。
【0068】状態J26は、車輪6Iが下段に接地し、
上段と下段に跨って二輪接地している状態である。この
とき、カート25の重量を、車輪6Iと車輪6IIを有す
るアーム28群が支え始める。階段の段差が大きいの
で、車輪6Iを有するアーム28は近接スイッチI
に傾動している。また、車輪6IIを有するアーム28は
近接スイッチII側に傾動している。その結果、近接ス
イッチIとIIがON状態となっている。制御部13
は、状態J24に示す「近接スイッチIIのみがONで
ある状態」から状態J26に示す「近接スイッチI
IIがONである状態」に変化したときには、図14の
順回転マップを使用しつづける。
【0069】状態J26で降段方向前側の車輪6Iが下
段に接地したあと、順回転マップが利用される。このと
き、条件によって操作力の方向が異なってくる。状態J
24からJ26までの間のアーム28群の降段方向の回
転速度が速すぎると操作者が感じると操作者は引き方向
の操作力を加える。一方、遅すぎると感じれば押し方向
の操作力を加える。図17(A)の順回転マップを使用
していることから、引けばモータ12は逆方向(反時計
回転方向)のトルクを与え、押せば順回転(時計回転方
向)のトルクを与える。いずれの場合にも、モータ12
のトルクはカート重量がアーム28群を順方向に回転さ
れるトルクよりも小さく、アーム28群は順方向に回り
つづける。状態J26以降、カート25は平行移動可能
であり、大きな操作力は加えられないからである。ま
た、状態J26の図から明らかに、降段方向前側のアー
ム28は接地点から前方に傾いた姿勢で接地しており、
その接地反力がアーム28群を時計回転方向に回転させ
る側に働くのである。操作者がその回転速度が速すぎる
と感じて引き方向の操作力を加えれば重力に起因する時
計回転方向の回転速度が減速され、遅すぎると感じて押
し方向の操作力を加えればその時計回転方向の回転速度
が増速される。
【0070】状態J26から重量に起因してアーム28
群が順方向(時計回転方向、降段方向)に回転すると、
上段に接地していた車輪が上段から離れる。このとき、
近接スイッチ群30の出力状態は、「近接スイッチI
とIIがONである状態」から「近接スイッチIのみ
がONである状態」に変化する。制御部13は、上記の
状態変化から、上段に接地していた車輪が上段から離れ
たタイミングを検知する。段差の高い階段を降段する場
合には、降段方向前側の車輪が接地し(状態J26)、
次いで上段に接地していた車輪が上段から離れたとき
(状態J26の直後)以降も順回転マップを使いつづけ
る。
【0071】状態J28は、操作者が重力に起因するア
ーム28群の降段方向への回転速度が速すぎると感じて
引き方向の操作力を加えた場合を示し、モータ12は逆
方向(反時計回転方向)のトルクを加える。それでもカ
ート重量によってアーム28群は降段方向に回転しつづ
ける。但し、モータ12のトルクによってアーム群28
の降段方向の回転速度は低下される。
【0072】アーム28群が時計回転方向に回転しつづ
けると、状態J30に示すように、2輪接地状態とな
る。この場合、モータ12によって制動されながら接地
するために、接地ショックは小さい。状態J30の状態
は、一段降段したことを除いて状態J22に等しい。そ
れ以降、状態J22から右向きに説明した動作が可能で
ある。操作者がカート25を矢印P方向に移動させなが
ら、段差の大きい階段を更に降段する場合は、上記手順
を繰返す。このようにして、降段ショックが小さな状態
で滑らかに階段を降段させることができる。
【0073】次に、段差の小さな階段を降段する場合を
図16を参照して説明する。状態J32とJ34は、前
述した状態J22と24と同様な状態である。状態J3
6は降段方向前側の車輪6Iが接地して、アーム28が
上下の階段に跨っている二輪接地状態である。このと
き、カート重量を車輪6Iと車輪6IIを有するアーム2
8群が支えている。ただし、階段の段差が小さいので、
車輪6Iを有するアーム28は近接スイッチI側に傾
動している。その結果、状態J36では「近接スイッチ
とIIがON状態」となる。
【0074】図15の状態J26と図16のJ36を比
較すると明らかに、段差の大きな階段を降段する場合に
は、降段方向前側の車輪が接地したときに、「近接スイ
ッチIとIIがONである状態」に変化するのに対
し、段差の小さな階段を降段する場合には、「近接スイ
ッチIとIIがONである状態」に変化する。制御部
13は、いずれの変化が生じたかによって、段差が高い
か低いかを判別する。
【0075】ここで言う段差が高いとは、降段方向前側
のアーム28の接地角が接地点から前方に傾いている場
合(第1実施例の場合の接地角が60度以上の場合に相
当する)をいう。段差が低い場合とは、降段方向前側の
アーム28の接地角が接地点から後方に傾いている場合
(第1実施例の場合の接地角が60度未満の場合に相当
する)をいう。前者の場合、カート重力がアーム28群
を時計回転方向に回転させ、後者の場合、カート重力が
アーム28群を反時計回転方向に回転させる。第2の実
施例では、重力がアーム28群を回転させる方向を、ア
ーム28にかかる負荷状態を検知する近接スイッチ群3
0の出力状態から判別するのである。
【0076】第2実施例の場合、状態J26とJ36に
示すように、近接スイッチの出力状態の変化から、段差
の高低が検知されるが、下段に接地した状態では、段差
の高低情報にかかわらず、一様に、順回転マップを使い
つづける。
【0077】状態J36では操作者が降段方向にカート
を押す。カート25はこの操作力によって平行移動し、
大きな操作力はかからない。モータ12には順方向のト
ルクが生じるがその力は小さい。カート重量に起因する
トルクがモータトルクよりも大きい。したがって車輪6
IIが上段に接地した状態を維持しながらカート25は平
行移動する。
【0078】状態J38は、上段に接地していた車輪6
IIが上段から外れた状態を示す。この場合、近接スイッ
チの出力状態は、「近接スイッチIとIIがONであ
る状態」から「近接スイッチIのみがONである状
態」に変化する。この状態変化から、制御部は、段差の
低い上段に接地していた車輪が上段から外れたことを検
知する。
【0079】第2実施例のカート25では、「近接スイ
ッチIとIIがONである状態」を検知して低い階段
にまたがって2輪接地したことを判別し、次いで、「近
接スイッチIのみがONである状態」に変化して上段
に接地していた車輪が上段から外れたことを検知する
と、そのとき以降、図12の逆回転マップを用いる。あ
るいは、単純に「近接スイッチIのみがONである状
態」である間、逆回転マップを用いるようにしてもよ
い。図15の状態J28では、「近接スイッチIのみ
がON」であり、「近接スイッチIのみがON」では
ない。「近接スイッチIのみがON」である状態は、
段差の低い階段を降段する最中に、降段方向前側の車輪
が下段に接地し、降段方向後側車輪が上段から離れ、そ
の上段から離れた車輪が下段に接地するまでの間しか生
じないからである。
【0080】段差の低い階段を降段する最中に、降段方
向前側の車輪が下段に接地し、降段方向後側車輪が上段
から離れて下段に接地するまでの間、カート重量はアー
ム28群を反時計回転方向(アーム群の全体を見ると昇
段方向に相当する)に回転させる。この場合、操作者は
接地ショックを和らげようとして自然に引操作する。図
17(B)の逆回転マップが使用されていると、操作者
が引操作をしている間、モータ12に順方向(時計回転
方向)のトルクが与えられる。モータトルクの方向は重
力がアーム28群を回転させる方向と逆方向である。こ
の結果、カート重量がアーム28群を逆方向に回転させ
る作用がモータの順方向のトルクによって制動され、ア
ーム28群がゆっくりと逆方向回転し、図16の状態J
40に示す2輪接地状態となる。このとき、「近接スイ
ッチIのみがONである状態」から「近接スイッチI
とIIがONである状態」に変化する。制御部13
は、このときに順回転マップに戻す。これによって、一
段降段した状態で初期状態J32に復帰する。操作者が
カート25を矢印P方向に移動させながら、小さい段差
の階段を更に降段する場合は、上記手順を繰返す。
【0081】このようにして、操作者は重力の作用を受
けるカート25を自然な感覚で操作しながら滑らかに降
段させることができる。アーム28群は重力によって急
激に回転しようとするところをモータ12によって制動
されてゆっくり回転する。このために、カート25は、
接地ショックが小さな状態で滑らかに降段する。
【0082】段差の大きな階段を昇段させるとき(状態
J30から状態J22にする場合)は、順回転マップが
使用される。カート25を昇段させる場合、操作者は自
然に比較的に大きな力で引き方向に操作する。このため
に、大きなモータトルクが、逆方向(状態J28、J2
4の矢印Cに示される昇段方向)に働く。このときのモ
ータトルクは、カート重力に打ち勝ってアーム28群を
回転させられる大きさである。このために、第1実施例
の場合と同じ現象が生じ、カート25はモータトルクに
よって昇段方向前側アーム28が上段に接地するまで回
転し、さらにモータが昇段方向後側車輪を持ち上げる。
昇段方向後側車輪が持ち上がられてカートが平行移動可
能となると、モータトルクは小さくされ、カート25は
平行移動する。
【0083】段差の低い階段を昇段させるとき(状態J
40から状態J32にする場合)、順回転マップが使用
される。先に説明した動作によって、カート25はモー
タトルクによって昇段する。
【0084】(第3実施例) 以下、本発明を具現化し
た第3実施例を説明する。第1実施例、第2実施例と同
じ部材には同じ参照符号を付し、重複する説明を省略す
る。第3実施例の手押しカート35は、歪ゲージを利用
してアームにかかる負荷状態を検知する。このカート3
5は、第2実施例のカート25の場合とは異なり、図2
0に示されるように、アーム38群が放射中心に対して
固定されている。第1実施例の回転角検知センサ16、
第2実施例の近接スイッチ群30に代って、アーム38
群の回転方向の両側面に歪ゲージ40が2個1組として
それぞれ取付けられている。アーム38に負荷がかけら
れていないとき、アーム38の一対の歪ゲージ40群は
共にフリー状態である。歪ゲージ40群はアーム38へ
の負荷のかかり方によって、圧縮・引張状態を検知し、
検知結果に応じた電気信号を発生させる。歪ゲージ40
群は制御部13に接続されている。制御部13は、歪ゲ
ージ40群の圧縮・引張・フリー状態の組み合わせから
アーム38への負荷のかかり方を判別する。歪ゲージ4
0群と制御部13で、アーム38の負荷状態が検知され
る。
【0085】第3実施例のカート35は、第2実施例の
カート25と同様に、モータとアームの間にウォームギ
ヤ機構を用いていない。またモータにはロック機構がな
い。従ってアーム38群に重力が作用すると、その重力
がアーム群を回転させる。
【0086】第3実施例のカート35の制御部13は、
歪ゲージ40群の出力状態から、モータトルクを決める
マップを選択する。そして、選択されたマップを利用し
てモータトルクを演算してモータを制御する。第3実施
例のカート35のシステム構成は、第2実施例のカート
25の場合とほぼ同様なので説明を省略する。
【0087】図21と22に示す歪ゲージ40群の出力
状態において、圧縮状態をONとし、フリーと引張状態
とOFFとすると、図21と22に示す歪ゲージ40群
の出力状態の変化は、図15と16に示した近接スイッ
チ30群の出力状態の変化に等しい。第3実施例の制御
手順では、歪ゲージ40群で検知される圧縮状態をON
とし、その他の状態をOFFとし、その上で第2実施例
で用いた制御手順を用いる。上記の読み替えを除いて、
制御手順そのものは同じであり、同じ作用効果が得られ
る。即ち、第3手順と同様にして、階段をスムースに昇
降する。
【0088】(第4実施例) 第4実施例の手押しカー
とは、図23に示すように、アーム先端に測距センサを
持つ。測距センサは鉛直下方に接地面までの距離を検知
する。アームの長さをl(エル)、車輪半径をdとする
と、2輪接地の状態では、接地しているアームの2つの
測距センサが車輪半径dを検知する。残りの1つのセン
サは、d+1.5l(エル)の距離を検知する。1輪接
地状態では、1個のセンサのみが距離dを検知する。
【0089】測距センサで測定される距離の組み合わせ
から、アーム群の回転姿勢が判別される。2個のセンサ
が距離dを検知していれば2輪接地していることが判別
され、1個のセンサのみが距離dを検知していれば1輪
接地していることが判別される。
【0090】図24は、測距センサで検知される距離の
組合せに基づいてマップを選択する論理表と、その選択
によって得られる作用の様子を示している。図24から
明らかに、概ねすべての条件で、図17(A)の順回転
マップを用いる。但し、状態J58に示すように、1輪
接地状態となったときに、その接地したアームよりも1
本後行するアームの接地面までの距離yがさらに後行す
るアームの接地面までの距離xよりも大きいときにの
み、次に2輪接地状態が判別されるまで図17(B)の
逆回転マップを用いる。状態J58では、車輪Iが接地
したときに、1本後行するアームIIIの接地面までの距
離yがさらに後行するアームIIの接地面までの距離xよ
りも大きいので、次に2輪接地状態が判別される状態J
59とまで、逆回転マップを用いるのである。これに対
して、状態J53に示されるように、車輪Iが接地した
ときに、1本後行するアームIIIの接地面までの距離y
がさらに後行するアームIIの接地面までの距離xよりも
小さい時には、順回転マップを使いつづける。
【0091】このことは、段差の小さな階段を降段して
いる間に降段方向前側の車輪が接地して降段方向後側の
車輪が上段から離脱したときにのみ、順回転(時計回転
方向)のモータトルクを作用させることを意味する。図
24において、白抜き矢印は重力がアーム群を回転させ
る方向を示し、黒色矢印はモータトルクの方向を示す。
上記のロジックは、重力がアーム群を回転させる方向と
逆方向にモータトルクを作用させることに相当する。そ
のことによって、アーム群は重力によって自由に回転し
てしまう場合よりも減速されて回転することことにな
る。
【0092】第2〜3実施例のカートは、放射状に広が
るとともに放射中心のまわりに重力によって一体回転可
能な複数のアーム28、38と、各アームの先端に取付
けられた転動体6と、アーム群にトルクを加えるトルク
発生部12と、操作者が把持する把持部5と、アームに
加わっている負荷状態を検知する手段30、40と、制
御部13を備え、把持部5を把持して操作する者の意図
に沿って降段する。制御部13は負荷状態検知手段(近
接スイッチ30群、歪みゲージ40群)の検知状態の変
化に基づいてトルク発生部12を制御して、特定の状態
変化(図16の状態J36からJ38の変化、あるい
は、図22の状態J56からJ58の変化)が検知され
たときに、アーム群に加えるトルク方向を反転させる。
第4実施例のカートの場合、アーム群の回転姿勢を検知
する手段(測距センサ群)を備え、制御部は回転姿勢検
知手段の検知状態の変化に基づいてトルク発生部を制御
し、特定の状態変化(図24の状態J57からJ58へ
の変化)が検知されたときにアーム群に加えるトルク方
向を反転させる。
【0093】上記の制御によると、降段方向前側車輪が
下段に接地し、降段方向後側車輪が上段からはずれたと
きに、高い段差の階段の場合と低い段差の階段の場合と
では重力がアーム群を回転させる方向が相違するのに対
応して、重力に起因する回転を制動するようにモータが
利用され、カートは接地ショックが緩和されながら滑ら
かに降段していく。
【0094】モータトルクとアーム群の回転は直接には
連動せず、重力が影響する。モータがトルクを発生させ
ても、アーム群が回転しないことがある。ここではモー
タがアーム群にトルクを加える手段として用いられてい
る。第2〜4実施例のカートの制御部はトルク発生部を
制御し、重力がアーム群に与える回転方向と反対方向の
トルクを加えるのである。
【0095】第2〜4実施例の手押しカートの場合、降
段時にアーム群が時降段方向に回転するのに抗して操作
者が把持部に昇段方向の操作力を加える場合、降段方向
後側アームの1輪接地状態が検知されている間はアーム
群に昇段方向のトルクを加え、把持部に昇段方向の操作
力が加えられて降段方向前側アームの1輪接地状態が検
知されている間は、前側アームの接地角度が所定値より
も大きいときに昇段方向のトルクを加え、前側アームの
接地角度が所定値よりも小さいときに降段方向のトルク
を加える。このトルク制御によって、カートは無理・無
駄のない回転を緩やかに続けながら滑らかに静かに降段
する。
【0096】近接スイッチ30群、あるいは、歪みゲー
ジ群40は、アーム先端に加えられる接地力がアームに
与える力の方向を検知して、アームに加わっている負荷
状態を検知するものであり、これを利用することで回転
角を検知する必要を無くすことができる。
【0097】第4実施例の測距センサを利用すること
で、車両の回転姿勢が検知できる。このために、検知さ
れたアーム先端高さから、降段方向後側アームの上段か
らの離脱タイミングを判別することができる。従って、
測距センサを第1実施例のカートに利用可能なことが明
らかである。この場合、アームの先端高さ検知手段を備
え、検知されたアーム先端高さから降段方向後側アーム
の上段からの離脱タイミングを判別し、そのときの降段
方向前側アームの接地角度が所定値よりも小さいときに
アーム群に逆方向トルクを与える。
【0098】本実施例の把持部5には、操作力検知セン
サ4が2個取り付けられているが、その数は2個に限ら
れない。本実施例では、電流指令リミッタを有するの
で、所定値以上の電流がモータ12に流されない。従っ
てモータを過大電流から守るとともに、カートを防ぐこ
とができる。上記に示した実施例はあくまで発明の一実
施例を例示したものにすぎず、特許請求の範囲に記載の
中で、様々な態様で実施できる。発明の範囲は実施例に
限られるものでない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のカートの側面視を模式的に示し
た図である。
【図2】 第1実施例のカートの主要部の正面視を模式
的に示した図である。
【図3】 第1実施例のカートの降段過程を模式的に示
した図である。
【図4】 第1実施例のカートの昇段過程を模式的に示
した図である。
【図5】 第1実施例の順回転マップと逆回転マップを
示した図である。
【図6】 第1実施例のマップ先端論理を示した図であ
る。
【図7】 第1実施例のカートのマップ選択順の一例を
示した図である。
【図8】 第1実施例のメインルーチンの処理手順図で
ある。
【図9】 第1実施例の100μ秒割込メインルーチン
の処理手順図である。
【図10】 第1実施例の500μ秒割込メインルーチ
ンの処理手順図である。
【図11】 第1実施例の10000μ秒割込メインル
ーチンの処理手順図である。
【図12】 第1実施例のフレーム傾斜角演算ルーチン
の処理手順図である。
【図13】 第1実施例のシステム構成を示すブロック
図である。
【図14】 第2実施例のアーム群を側面から模式的に
示した図である。
【図15】 第2実施例のカートが段差が大きい階段を
降段する過程を模式的に示した図である。
【図16】 第2実施例のカートが段差が小さい階段を
降段する過程を模式的に示した図である。
【図17】 第2〜4実施例の順回転と逆回転マップを
示した図である。
【図18】 第2実施例の500μ秒割込メインルーチ
ンの処理手順図である。
【図19】 第2実施例のシステム構成を示すブロック
図である。
【図20】 第3実施例のアーム群を側面から模式的に
示した図である。
【図21】 第3実施例のカートが段差が大きい階段を
降段する過程を模式的に示した図である。
【図22】 第3実施例のカートが段差が小さい階段を
降段する過程を模式的に示した図である。
【図23】 第4実施例のアーム群を側面から模式的に
示した図である。
【図24】 第4実施例のカートが階段を降段する過程
を模式的に示した図である。
【符号の説明】
2、25、35:カート 4 :操作力検知センサ 5 :把持部 6 :車輪 8、28、38:アーム 12 :トルク発生装置、トルク発生部、モー
タ 13 :制御装置 30 :近接スイッチ 40 :歪ゲージ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 朋寛 愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工 機株式会社内 (72)発明者 松田 祐子 愛知県刈谷市朝日町1丁目1番地 豊田工 機株式会社内 Fターム(参考) 3D050 AA01 BB02 EE01 EE06 EE11 KK04 KK06 KK14

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに一体回転可能な複数のアームと、各アームの先端に
    取付けられた転動体と、アーム群にトルクを加えるトル
    ク発生部と、操作者が把持する把持部と、把持部に加わ
    る操作力の方向と大きさを検知する手段と、制御部とを
    備え、把持部を把持して操作する者の意図に沿ってトル
    ク発生部によってアーム群を回転させて昇段する手押し
    カートであり、 前記制御部は前記トルク発生部を制御して、操作部に所
    定値以上の昇段方向の操作力が加えられている間はアー
    ム群を昇段方向に回転させ、操作部に昇段方向の操作力
    が加えられていても前記所定値に満たない間はアーム群
    を回転させないことを特徴とする手押しカート。
  2. 【請求項2】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに一体回転可能な複数のアームと、各アームの先端に
    取付けられた転動体と、アーム群にトルクを加えるトル
    ク発生部と、操作者が把持する把持部と、把持部に加わ
    る操作力の方向を検知する手段と、制御部とを備え、把
    持部を把持して操作する者の意図に沿ってトルク発生部
    によってアーム群を回転させて降段する手押しカートで
    あり、 前記制御部は前記トルク発生部を制御して、操作部に降
    段方向の操作力が加えられて降段方向前側アームが下段
    に接地するまでの間はアーム群を降段方向に回転させ、
    降段方向前側アームが下段に接地したときのアーム接地
    角度が所定値よりも小さいとき、又は、降段方向前側ア
    ームが下段に接地して降段方向後側アームが上段から離
    脱したときの降段方向前側アームの接地角度が所定値よ
    りも小さいときにアーム群に逆方向トルクを与えること
    を特徴とする手押しカート。
  3. 【請求項3】 請求項2の手押しカートにおいて、さら
    にアームの回転角速度検知手段を備え、回転角速度がゼ
    ロであることから降段方向前側アームの接地タイミング
    を判別することを特徴とする手押しカート。
  4. 【請求項4】 請求項2の手押しカートにおいて、さら
    にアームの先端高さ検知手段を備え、検知されたアーム
    先端高さから降段方向後側アームの上段からの離脱タイ
    ミングを判別することを特徴とする手押しカート。
  5. 【請求項5】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに重力によって一体回転可能な複数のアームと、各ア
    ームの先端に取付けられた転動体と、アーム群にトルク
    を加えるトルク発生部と、操作者が把持する把持部と、
    制御部とを備え、把持部を把持して操作する者の意図に
    沿って降段する手押しカートであり、 前記制御部は前記トルク発生部を制御して、重力がアー
    ム群に与える回転方向と反対方向のトルクを加えること
    を特徴とする手押しカート。
  6. 【請求項6】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに重力によって一体回転可能な複数のアームと、各ア
    ームの先端に取付けられた転動体と、アーム群にトルク
    を加えるトルク発生部と、操作者が把持する把持部と、
    アーム群に加わっている負荷状態を検知する手段と、制
    御部とを備え、把持部を把持して操作する者の意図に沿
    って降段する手押しカートであり、 前記制御部は前記負荷状態検知手段の検知状態に基づい
    て前記トルク発生部を制御して、特定の状態変化が検知
    されたときにアーム群に加えるトルク方向を反転させる
    ことを特徴とする手押しカート。
  7. 【請求項7】 請求項6の手押しカートにおいて、前記
    負荷状態検知手段は、アーム先端に加えられる接地力が
    アームに与える力の方向を検知することを特徴とする手
    押しカート。
  8. 【請求項8】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに重力によって一体回転可能な複数のアームと、各ア
    ームの先端に取付けられた転動体と、アーム群にトルク
    を加えるトルク発生部と、操作者が把持する把持部と、
    アーム群の回転姿勢を検知する手段と、制御部とを備
    え、把持部を把持して操作する者の意図に沿って降段す
    る手押しカートであり、 前記制御部は前記回転姿勢検知手段の検知状態に基づい
    て前記トルク発生部を制御して、特定の状態変化が検知
    されたときにアーム群に加えるトルク方向を反転させる
    ことを特徴とする手押しカート。
  9. 【請求項9】 放射状に広がるとともに放射中心のまわ
    りに重力によって一体回転可能な複数のアームと、各ア
    ームの先端に取付けられた転動体と、アーム群にトルク
    を加えるトルク発生部と、操作者が把持する把持部と、
    把持部に加わる操作力の方向を検知する手段と、制御部
    とを備え、把持部を把持して操作する者の意図に沿って
    降段する手押しカートであり、 前記制御部は前記トルク発生部を制御して、把持部に昇
    段方向の操作力が加えられて降段方向後側アームの1輪
    接地状態が検知されている間はアーム群に昇段方向のト
    ルクを加え、把持部に昇段方向の操作力が加えられて降
    段方向前側アームの1輪接地状態が検知されている間
    は、前側アームの接地角度が所定値よりも大きいときに
    昇段方向のトルクを加え、前側アームの接地角度が所定
    値よりも小さいときに降段方向のトルクを加える手押し
    カート。
  10. 【請求項10】 請求項2から9のいずれかに記載の手
    押しカートにおいて、さらに操作力検知手段を備え、前
    記制御部は前記操作力検知手段で検知される操作力の大
    きさに応じて、アーム群に加えるトルクの大きさを制御
    することを特徴とする手押しカート。
  11. 【請求項11】 放射状に広がるとともに放射中心のま
    わりに一体回転可能な複数のアームと、各アームの先端
    に取付けられた転動体と、アーム群にトルクを加えるト
    ルク発生部と、操作者が把持する把持部と、把持部に加
    わる操作力の大きさを検知する手段と、制御部とを備
    え、把持部を把持して操作する者の意図に沿ってトルク
    発生部によってアーム群を回転させて昇降する手押しカ
    ートであり、 前記制御部は前記トルク発生部に、手押しカートの平行
    移動が許容される間にかけられる操作力以上の操作力が
    操作部に加えられている間は重力に抗してアーム群を回
    転させるに充分なトルクを発生させ、手押しカートの平
    行移動が許容される間にかけられる操作力が操作部に加
    えられている間は重力に抗してアーム群を回転させるに
    満たないトルクを発生させることを特徴とする手押しカ
    ート。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020162563A1 (ja) * 2019-02-08 2020-08-13 本田技研工業株式会社 移動体
JP2020128158A (ja) * 2019-02-08 2020-08-27 本田技研工業株式会社 移動体
CN115447655A (zh) * 2022-09-21 2022-12-09 清华大学天津高端装备研究院洛阳先进制造产业研发基地 一种爬楼梯购物车及其爬楼梯方法
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