JP2002113577A - 低温変態溶材を用いた溶接施工方法および鋼構造物 - Google Patents

低温変態溶材を用いた溶接施工方法および鋼構造物

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JP2002113577A
JP2002113577A JP2000306287A JP2000306287A JP2002113577A JP 2002113577 A JP2002113577 A JP 2002113577A JP 2000306287 A JP2000306287 A JP 2000306287A JP 2000306287 A JP2000306287 A JP 2000306287A JP 2002113577 A JP2002113577 A JP 2002113577A
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stress
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Noriyoshi Tominaga
知徳 冨永
Tadashi Kasuya
正 糟谷
Koji Honma
宏二 本間
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各種鋼構造物橋梁、クレーンガーダーなど、
活荷重により疲労を生じる鋼構造物において、低温変態
溶材により溶接施工する場合に、高張力鋼以外の鋼材に
適用した場合にも十分な疲労強度が得られる簡易な溶接
施工方法と、この溶接施工法で得られる鋼構造物を提供
する。 【解決手段】 溶接部位を有する鋼構造物において、通
常の溶接ビードの上から低温変態溶材による付加ビード
を形成する際に、予め、その部位が引張応力状態にある
ように、外力をその部位に付与することによって高い疲
労強度を実現する、低温変態溶材を用いた溶接施工方法
と、その溶接施工方法で得られる鋼構造物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接部位を有する
鋼構造物、例えば各種橋梁、クレーンガーダーなど、繰
り返し活荷重により疲労を生じ易い溶接部位を有する鋼
構造物において適用される溶接施工法と、この溶接施工
法によって得られる高い疲労強度を持つ鋼構造物に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、例えば橋梁、クレーンガーダ
ーなど、活荷重により疲労を生じる溶接部位を有する鋼
構造物においては、溶接部に疲労亀裂が発生することが
知られている。この疲労亀裂は、鋼構造物全体の信頼性
に重大な影響を与えるため、その疲労特性を向上させる
ために種々な努力がなされてきた。溶接部に疲労亀裂が
発生しやすい理由としては、溶接部には応力集中部が存
在していること、引張の残留応力が生じていることなど
が挙げられる。
【0003】したがって、これらの原因を取り除くこと
が高疲労強度の溶接部を実現するために有効であり、例
えばTIG溶接により化粧溶接を施して応力集中を減ら
す方法、ピーニングを用いて疲労が発生する部位に圧縮
残留応力を導入し、同時に応力集中を減らす方法などが
試みられてきた。しかし、これらの方法は構造物作製コ
ストを直接に大きく増大させることになる。またその作
業性にも大きな困難がある。
【0004】最近になり、溶接金属の変態膨張を利用し
て残留応力を低減させ、これにより疲労強度を向上させ
る手法が注目されている。例えば「溶接学会全国大会講
演概要」第61集520頁で、溶接金属の変態膨張を利
用し、角まわし溶接継手の疲労強度向上に関する報告が
ある。この報告によれば、オーステナイトからマルテン
サイトに変態を開始する温度(Ms点)を低くすること
により、変態に伴う膨張が変態後の熱収縮より大きくな
り、結果として圧縮応力の残留が導入され高疲労度溶接
継手が得られるとしている。
【0005】ここでは、角まわし溶接継手の主板(平
板)を予熱し、付加物(縦板)を室温のままにして溶接
し、疲労強度向上を確認している。しかしこの溶接継手
は、実施工の観点からすると予熱を行わなければならな
い、しかも縦板は室温のままにするなど、施工コストお
よび実用性の点からも問題がある。Ms点が低くなれば
残留応力が低減される傾向にあることは既存知見であ
り、疲労強度が残留応力に影響を受ける傾向にあること
も容易に推察されることである。しかし、実施工適用可
能な簡便な施工方法を用いて作製できる高疲労強度溶接
継手はいまだ確立されていない。
【0006】上記報告にある施工方法は、残留応力低減
という技術を用いているものの、採用された施工方法は
実用的ではなく、実施工に適したものとは言い難い。一
方で、ピーニングやTIG溶接による化粧溶接が施され
た従来の溶接継手は、それ自体溶接構造物の施工コスト
を増大させる要因となる。簡便な施工で溶接部に圧縮応
力を導入し、それを用いて高疲労強度を達成できる溶接
継手が確立されれば、溶接構造物の信頼性向上の観点か
らその効果は絶大なものとなる。
【0007】このような、低温変態溶材を用いる溶接継
手として、本願出願人は特願平11−100548号の
発明で、“オーステナイトからマルテンサイトに変態を
開始する温度が350℃以下170℃以上となる溶接金
属が形成される高疲労強度溶接継手”を提案している。
この発明の中には、例えば図7(a)〜図7(d)に示
すように、疲労荷重を受ける構造部材と、面外ガセット
やカバープレート、あるいは面内ガセット、スカラップ
などを角まわしで溶接する際に、応力が集中する溶接止
端部に対して低温変態溶材による溶接金属を付加ビード
として形成した溶接継手が開示されている。
【0008】このように、応力が集中する溶接止端部に
対して低温変態溶材による溶接金属を付加ビードを形成
した溶接継手は、疲労強度を向上させるものとして評価
できるものである。しかし、現在実績のある低温変態溶
材は300℃前後でマルテンサイト変態し、この変態に
よる膨張後も200℃程度の降熱があるために、その体
積収縮が構造物に一様に起きるため、膨張による体積膨
張の効果をキャンセルしてしまうことがある。そのた
め、鋼材の弾性歪みによる体積膨張のプールを大きくす
るために、引張強度が60kg以上の高張力鋼を対象と
してしか効果の大きい使い方ができないことがあった。
予熱を偏って与えて局部的な「そり」を与えることによ
って積極的に圧縮歪みを入れる方法もあるが、これは実
施工の面では煩雑であり実用に乏しい。また、既存の鋼
構造物の多くは低強度鋼で形成されているため、そのよ
うな構造物の補修に適用するのは困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶接部位を
有する各種の鋼構造物、橋梁、クレーンガーダーなど、
特に活荷重により疲労を生じる溶接部位を有する鋼構造
物において、応力が集中する溶接止端部に低温変態溶材
使用による付加ビードを形成する場合に適用するもので
あり、引張強度が60kg、50kgの比較的低強度の
鋼に適用した場合にも十分な疲労強度が得られる簡易な
溶接施工方法と、この溶接施工方法で得られる鋼構造物
を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するためになされたもので、その要旨は次の通りであ
る。 (1) 繰り返し荷重が作用する、疲労強度が問題とな
る溶接部位を有する既存および新設の鋼構造物におい
て、通常の溶接ビードの上から低温変態溶材による付加
ビードを形成することによって高い疲労強度を実現する
ことを特徴とする低温変態溶材を用いた溶接施工方法。 (2) 前記(1)において、繰り返し荷重が作用す
る、疲労強度が問題となる溶接部位を有する既存および
新設の鋼構造物において、低温変態溶材による付加ビー
ドを形成する際に、予め、その部位が引張応力状態にあ
るように、外力をその部位に付与することによって高い
疲労強度を実現することを特徴とする低温変態溶材を用
いた溶接施工方法。 (3) 前記(2)において、外力を付与する手段が、
対象構造物の自重、活荷重、プレストレス、外部からの
強制加力の少なくとも1種であることを特徴とする低温
変態溶材を用いた溶接施工方法。 (4) 前記(1)または(2)において、低温変態溶
材を用いた溶接施工方法を適用されて構築されたことに
よって高い疲労強度を持つことを特徴とする鋼構造物。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、溶接部位を有する各種
の鋼構造物、特に橋梁、クレーンガーダーなど、特に活
荷重により疲労を生じやすい溶接部位を有する鋼構造物
を対象とし、溶接部に本ビードを形成した後に応力集中
部である溶接止端部に対して低温変態溶材(本発明でい
う低温変態溶材とは、“普通の鋼材よりも低い温度でマ
ルテンサイト変態を生じることによって体積膨張を起こ
す溶材であって、その体積膨張によってビード周辺に圧
縮力を与えるもの”である。以下「低温変態溶材」とい
う。)による付加ビードを形成する溶接施工方法であ
る。
【0012】また本発明は、付加ビード施工時に、付加
ビード領域に引張応力がかかるように外力を付与する簡
易な施工方法であり、付加ビード施工時に付加ビード形
成領域に引張応力を与えておくことによって、例えば引
張強度が40kg,50kgの比較的低強度の鋼におい
ても、使用時に施工部に作用する引張応力を大幅に軽減
し、圧縮状態を作り出し易くするものである。この施工
方法は、新設および既設の鋼構造物に容易に適用可能で
ある。なお、本発明でいう「付加ビード」とは、通常の
溶接ビード(以下「本ビード」という。)を形成後、そ
の疲労強度を強化するために、その本ビードに対して、
その上から一部を重ねて形成する低温変態溶材による溶
接ビードを意味する。この付加ビードは、疲労強度が問
題になる応力集中部にある本ビードの止端部を、これに
よって覆ってしまうように形成される。
【0013】外力は、使用状態での最大荷重領域に相当
する主荷重方向と同じ方向になるように付与することが
有効であり、常時使用状態での最大荷重がかったときで
も、付加ビードによって与えられる圧縮荷重と合わせ
て、特に、常にその止端部が圧縮状態にあるのに十分な
外力であることが有効である。外力付与手段としては、
対象構造物の自重(死荷重)、活荷重、プレストレス、
強制加力などがあり、1種または複数種を組み合わせて
用いることもできる。本発明は、既設の鋼構造物の補修
または改修時の溶接施工、新設の鋼構造物の溶接施工、
既設の鋼構造物の溶接部位の補強施工に拘らず容易に適
用可能なものであり、実施工が非常に簡単でありコスト
面の負担も少ない溶接施工ができる。
【0014】本発明者等は、“オーステナイトからマル
テンサイトに変態を開始する温度を低くすることによ
り、変態に伴う膨張を変態後の熱収縮より大きくすれば
圧縮応力の残留が導入され高疲労度溶接継手が得られ
る”という上記の既知見に基づき、低温変態溶材を付加
ビード形成に用いることについて実験を行い、以下の知
見を得た。
【0015】(1) 低温変態溶材を用いて溶接した場
合には、溶接した部分は溶けた瞬間に無応力となり、そ
の後、圧縮力が体積膨張により入り、その後、降熱によ
り体積収縮で圧縮力がリリースされるというプロセスを
たどり、最終的にはある程度の圧縮状態となる。このと
き、その部材そのものが予め無応力であったとすると、
その後に繰り返し荷重を受けるとき、平均応力が初期圧
縮応力以上の引張荷重を受けてしまうこともあり得、そ
の場合は引張が一時的にも大きく生じてしまうため、亀
裂の制御は不可能になる。
【0016】一方、予めその部材に引張応力を与えた状
態で付加ビードを溶接すれば、その後、最大の引張応力
を受けたときの荷重状態までの応力変動が予め与えた応
力分小さくなるために、その最大荷重作用時にも付加ビ
ード近傍を圧縮状態に保ち易くなるわけである。また、
付加ビートの体積膨張によって与えられる圧縮荷重は、
付加ビード近傍の鋼材の反力量に応じて大きくなるが、
その圧縮応力のプールが鋼材の圧縮降伏応力までの範囲
で取れるものとすると、その初期状態を引張の状態から
スタートさせることによって、その降伏応力が見掛け
上、上がったのと同じことになる。その効果からも、圧
縮応力が効率的に導入される。
【0017】(2) 既設や架設途中の橋梁やクレーン
ガーダーなどに施工を行うとき、既に死荷重がかかって
いるために、これを利用することができる。施工順とし
ては、ベント等の上で死荷重を預けているときでなく、
しっかりと死荷重を受けた状態で付加ビートを置けば、
まずは死荷重分を利用することができる。 (3) 前項の延長で、例えば既設や新設の橋梁やクレ
ーンガーダーなどでトラックを橋梁上に並べたり、クレ
ーンで重量物を吊ったりして活荷重最大時までの負荷を
かけた状態で付加ビード施工ができる。例えばその施工
時が最大活荷重時であれば、施工部に引張応力が入る可
能性はまず無くなる。圧縮時に局部的にはかなり大きな
圧縮荷重が入ることになるが、いずれにしろ活荷重時に
は地震時などに比べると許容応力の関係から設計的に
1.5倍以上の余裕があるため、設計的にはまず安全で
ある。
【0018】(4)新設で、塗装前に工場で付加ビード
を形成するときなど死荷重も活荷重も利用できないよう
な場合には、例えばPC鋼棒やジャッキなどで局部的に
引張荷重を与えた上で付加ビード施工を行えば、同様な
効果が得られる。本発明は、上記の知見をベースとして
なされたものである。
【0019】以下に、図1(a)、(b)、(c)、図
2(a)、(b)、(c)に基づいて従来の施工方法と
本発明の施工方法の作用について比較説明する。ここで
は、主桁1のウエブ面1aと面外ガセット2の端面部を
当接して溶接する橋梁部材(鋼材)Aを対象として、通
常の溶材による角まわし溶接の本ビードwに対して、そ
の溶接止端部の外側に低温変態溶材による付加ビードw
αを形成する場合を概念的に図示した。図中3は溶接ト
ーチである。図1、図2では、主桁1に対する面外ガセ
ット2は便宜的に1個溶接した例で示したが、実際には
主桁1の長さ方向に所定間隔で多数配置される。
【0020】図1(a)は、従来の無応力状態での溶接
施工例を示す正面概念説明図、図1(aa)は、図1
(a)の側面概念説明図である。図1(b)図は、付加
ビード施工の場合の荷重Wと経過時間tの関係を示す説
明図であり、ここでは、設計で想定の最大活荷重Wmax
と付加ビード未施工時t 0 、付加ビード施工時t1 、使
用状態の活荷重最大時t2 の活荷重変化を示している。
ここで△Wは引張応力方向への荷重振幅で、△W=Wma
x である。図1(c)図は、引張側と圧縮側に生じる応
力σと歪みεとの関係を概念的に示す説明図であり、こ
こでは、図1(b)図のt0 に対応する点A、t1 に対
応するB、t2 に対応するC間での△Wによる活荷重変
動、付加ビードによる付与圧縮力を示している。
【0021】従来の低温変態溶材による付加ビード形成
時は、図1(a)に示すように、無応力状態で溶接を行
っており、この場合、低温変態による膨張を溶融した溶
接金属まわりの部材A部で反力として受けて圧縮力とし
プールされるσyが限界である。ここからMs変態終了
後から降熱による収縮による応力緩和σt分が減り、最
終的には、常温でσy−σtの応力(圧縮応力)σが止
端部に残ることになる。
【0022】一方、図2(a)は、本発明での溶接施工
例を示す正面概念説明図で、図2(b)図は、付加ビー
ド施工の場合の荷重Wと経過時間tの関係を示す。ここ
では、設計で想定の最大活荷重Wmax と付加ビード未施
工時t0 、付加ビード施工時t1 、使用状態の活荷重最
大時t2 の活荷重変化を示している。ここで、Waは付
加ビード施工時に付与する外力、△W′は引張応力方向
への荷重振幅であり、△W′=△W−Wa<Wmax であ
る。
【0023】図2(c)図は、引張側と圧縮側に生じる
応力σと歪みεとの関係を概念的に示す説明図であり、
ここでは、図2(b)図のt0 に対応する点A、t1
対応するB、t2 に対応するC間での△W′による活荷
重変動、付加ビードによる付与圧縮力を示している。付
加ビード形成時に、予め部材Aを支持台4a、4bで2
点支持して、死荷重、あるいは死荷重+活荷重、プレス
トレス、強制加力などの少なくとも1種による外力Wa
を付与して部材Aに引張応力を与えておけば、その分、
圧縮応力のプール分が大きくなる。すなわち、溶接時に
与える引張応力σpとすると、最終的な常温の無負荷状
態で止端部に残る応力(圧縮応力)σは、 σy+σp−σt>σy−σt となる。
【0024】付加ビードwα形成領域の局部の状態を示
すと、図3(a)に示すように、ガセットの本ビードw
の止端部に形成された付加ビートwαが変態膨張し、そ
れに対して回りの鋼材が、反力(弾性歪み量)が小さい
と圧縮歪みが十分に入らないので、この反力、すなわち
止端部周辺の鋼材をなるべく降伏させないようにするこ
とが有効になる。上記の関係を応力状態図である図3
(b)、図3(c)に示す。図1(a)に示した、従来
のような無応力状態で付加ビード形成の場合では、溶接
前の部材の平均応力状態が0であり、低温変態によって
付与され得る最大の「応力量」は図3(b)に示すよう
にσyである。
【0025】一方、図2(a)に示した本発明のよう
に、予め引張応力を受けた状態で付加ビード形成の場合
は、図3(c)に示すように圧縮降伏までに最大2σy
の「応力量」を受け得ることになる。本発明では、付加
ビード形成の際に、付加ビード形成領域に引張応力σp
がかるように外力を加え付加ビード形成するものである
が、引張応力σpを与える外力は、基本的には部材断
面、活荷重、死荷重、低温変態溶材により付与される圧
縮力、鋼材の降伏強度に応じて設定するが、目安として
は最大活荷重相当の外力を付与するものである。
【0026】この外力を付与には、部材単位の溶接施工
の場合には、例えば図4(a)に示すように、付加ビー
ドwα形成部を有する部材Aを支持台(支点)4a、4
b上に載置し、この支持台間で、例えば架台(図示省
略)に配置したジャッキ5で押圧したり、図4(b)に
示すように、支持台(支点)4a、4b間において、部
材1A上に重量物6を載置するなどの簡易な強制加力手
段を用いることができる。他の強制加力手段としては、
ワイヤをかけて引張るなどの手段(通称「テンドン」)
がある。また、例えば橋梁の場合で、部材Aが橋桁とし
てあるときの部分補修の際に付加ビードα形成の際に
は、図4(c)に示すように、その橋梁を走行・通過す
るトラック7や貨車などの車両を外力付与手段として桁
上に留めることによって利用することができる。
【0027】なお、上記のような外力付与手段を使えな
い場合には、図4(d)に示すように、PC鋼棒8など
のプレストレス機構で、あるいはジャッキなどを用いて
局部的に引張荷重を与えた上で付加ビードwαを形成す
ることもできる。また、クレーンガーダーの場合には、
クレーンで実際に運搬する物品を吊って外力を付与する
ことができる。
【0028】本発明で使用する低温変態溶材として適性
のあるものとして、例えば本出願人による特願平11−
100548号の請求項1、請求項7〜12に記載した
ような、成分組成の溶接金属を形成する低温変態溶材が
ある。ここで記載されているものは、基本的にはオース
テナイトからマルテンサイトに変態を開始する温度が3
50℃以下、150℃以上の溶接金属が形成される低温
変態溶材であり、C、Ni、CrおよびMoをそれぞれ
の成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーター
Paの範囲が、0.85以上1.30以下である溶接金
属が形成される低温変態溶材である。 Pa=C+Ni/12+Cr/24+Mo/19
【0029】より具体的には、以下のような成分組成を
有する溶接金属を生成される低温変態溶材である。ここ
では成分範囲の規定理由については説明を省略する。こ
の低温変態溶材はNi系とCr系に大別される。 [Ni系] .質量%で、 C :0.01〜0.2%、 Si:0.1〜0.5%、 Mn:0.01〜1.5%、 P :0.03%以下、 S :0.02%以下、 Ni:8〜12% を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる溶接金
属が形成される低温変態溶材。
【0030】.前記において、質量%で、 Ti:0.01〜0.4%、 Nb:0.1〜0.4% V :0.1〜1.0% の1種または2種以上をさらに含有する溶接金属が形成
される低温変態溶材。 .前記において、質量%で、 Cu:0.05〜0.4%、 Cr:0.1〜3.0%、 Mo:0.1〜3.0%、 Co:0.1〜2.0% の1種または2種以上をさらに含有する溶接金属が形成
される低温変態溶材。
【0031】[Cr系の低温変態溶材] .質量%で、 C :0.001〜0.05%、 Si:0.1〜0.7%、 Mn:0.4〜2.5%、 P :0.03%以下、 S :0.02%以下、 Ni:4〜8%、 Cr:8〜15%、 N :0.001:0.05% を含有して残部が鉄および不可避不純物であり、C+N
が0.001〜0.06%である溶接金属が形成される
低温変態溶材。
【0032】.前記において、質量%で、 Mo:0.1〜2.0%、 Ti:0.005〜0.3%、 Nb:0.005〜0.3%、 V :0.05〜0.5% の1種または2種以上をさらに含有する溶接金属が形成
される低温変態溶材。などである。
【0033】室温状態で残留させる圧縮応力は、溶接対
象の鋼材条件、溶接部に対する荷重条件、要求される強
度条件、溶接条件などに応じて、上記〜の低温変態
溶材(溶融金属)、〜の低温変態溶材(溶接金属)
の中から選択する。本発明で用いる低温変態溶材は、上
記特願平11−100548号の発明に記載するものに
限定されるものではない。
【0034】
【実施例1】以下に、本発明の実施例を示す。この実施
例は、基本的には図5に示すように、主桁1の下部に、
その長さ方向に多数の面外ガセット2を当接し、通常の
溶材を用いて隅肉溶接で全周溶接して本ビートwを形成
した橋梁部材Aにおいて、応力集中の大きい面外ガセッ
ト2の角まわし溶接領域において、低温変態溶材(溶接
棒)で付加ビートwαを形成する際に、部材Aを、支持
台4a、4bで2点支持した状態でジャッキ5により下
方に外力(荷重Wa)を付与して、部材Aに引張応力を
与えた状態で付加ビードwαを形成した後、ジャッキ5
による繰り返し荷重を付与して溶接部での疲労強度を評
価する実験を行った。
【0035】なお、ここでの橋梁部材Aとは実験用に作
成されたものであり、実際に使用される橋梁部材とは別
異のものである。実験条件と溶接部での残留応力、疲労
強度の評価結果について、図1(a)に示したような従
来の無応力状態での付加ビードwα形成の場合と比較し
て示す。なお疲労強度評価は、得られた部材Aについて
疲労荷重を付加することによって行い、残留応力は図6
に示すように、付加ビートwαの外側近傍に、溶接後歪
み計を貼り付け疲労載荷後に切り出すことによって測定
した。
【0036】[実験条件] (共通) 主桁(I形鋼) 材質:規格 SM400A 常温降伏強度:235N/mm2 (規格) ガセット(厚鋼板) 材質:規格 SM400A 常温降伏強度:235N/mm2 (規格)
【0037】本ビード 通常溶材(溶接棒) 材質:規格 YM26(40kg、50kg鋼用) 常温降伏強度(溶接金属):460N/mm2 (規格) ビード幅:6mm 溶接方法:隅肉溶接 付加ビード 低温変態溶材による溶接金属 材質:成分組成、特性は表1に示す 常温降伏強度:735N/mm2 ビード幅:7mm 溶接方法:隅肉溶接 付与残留応力(最終部材無応力時):220MPa
【0038】(本発明) 外力付与条件: 外力:412kN 部材最大引張応力:150MPa(付加ビードの外側近
傍部)
【0039】
【表1】
【0040】付加ビードを形成する際に、外力を付与し
て部材に引張応力を与える本発明の溶接施工によって得
られた部材では、付加ビードを表1のいずれの溶接金属
で形成しても溶接部では亀裂の発生は認められず、疲労
強度はJSSCのC等級以上の範囲にあることが判っ
た。これに対して、付加ビードを形成する際に、部材A
を無応力状態とする従来の溶接施工によって得られた部
材では、付加ビードを表1のA〜Hのいずれの低温変態
溶材(溶接金属)で形成しても、溶接部で亀裂を発生し
ているものがいくつか認められ、疲労強度はJSSCの
E等級〜C等級を示した。
【0041】上記の実施例は、橋梁部材を想定した疲労
荷重を受ける構造部材に面外ガセットを溶接する場合の
ものであるが、本発明は上記したように、基本的には各
種の鋼構造物、例えば疲労荷重を受ける構造部材のカバ
ープレート、あるいは面内ガセット、スカラップなどを
角まわしで溶接する溶接継手において、本ビード端部に
付加ビードを形成する場合に広く適用できるものであ
る。また本発明において、用いる外力付与構造および外
力付与条件、溶接条件等は、適用する鋼構造物、適用部
位、荷重条件などに応じて変更されるものである。
【0042】
【発明の効果】本発明においては、付加ビード施工時
に、付加ビード施工部に外力を付与して引張応力を与え
ておくことによって、使用時に施工部に作用する引張応
力を大幅に軽減し、施工部における疲労強度を向上させ
ることができる。本発明は、既設の鋼構造物の補修また
は改修時の溶接施工、新設の鋼構造物の溶接施工、既設
の鋼構造物の溶接部位の補強施工に拘らず容易に適用可
能なものであり、実施工が非常に簡単でありコスト面の
負担も少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)図は、橋梁部材で無応力状態で低温変態
溶材による付加ビードを形成する従来の橋梁部材例を示
す側面概念説明図、(aa)図は(a)図の部材の断面
概念説明図、(b)図は、(a)図の状態(無応力状
態)で付加ビードを形成する場合の活荷重変動Wと時間
tとの関係を示す説明図、(c)図は、(a)図の状態
(引張応力付与状態)で付加ビードを形成した場合の鋼
材の応力状態概念説明図。
【図2】(a)図は、本発明で橋梁部材で引張応力付与
状態で低温変態溶材による付加ビードを形成する橋梁部
材例を示す側面概念説明図、(aa)図は、(a)図の
部材の断面概念説明図、(b)図は、(a)図の状態
(無応力状態)で付加ビードを形成する場合の活荷重変
動Wと時間tとの関係を示す説明図、(c)図は、
(a)図の状態(引張応力付与状態)で付加ビードを形
成した場合の鋼材の応力状態概念説明図。
【図3】(a)図は、低温変態溶材による付加ビードを
形成した場合の形成領域での反力、圧縮力の作用状態例
を示す概念説明図、(b)図は、無応力状態で低温変態
溶材による付加ビードを形成した場合の応力状態説明
図、(c)図は、引張応力付与状態で低温変態溶材によ
る付加ビードを形成した場合の応力状態説明図。
【図4】本発明での外力付与手段例を示す側面概念説明
図で、(a)図はジャッキによる場合、(b)図は重量
物による場合、(c)図はトラック等による場合、
(d)図はPC鋼棒によるプレストレス付与による場合
を示す。
【図5】(a)図は、本発明の実施例で実験に供した部
材と、その寸法、支持点等の側面概念説明図、(b)図
は(a)図の部材の断面概念説明図。
【図6】本発明の実施例での引張応力の付与領域を示す
部分平面概念説明図。
【図7】従来の鋼構造部材での低温変態溶材による付加
ビード形成例を示す立体概念説明図で、(a)図は面外
ガセットの場合、(b)図はカバープレートの場合、
(c)図は面内ガセットの場合、(d)図はスカラップ
の場合を、それぞれ示している。
【符号の説明】
A :橋梁部材 1 :主桁 1a:ウエブ面 2 :横桁(ガセット) 3 :溶接トーチ 4a、4b:支持台 5 :ジャッキ 6 :重量物 7 :トラック 8 :プレストレス付与機構 w :通常の溶材による本ビード wα:低温変態溶材による付加ビード Wa:付与外力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本間 宏二 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 Fターム(参考) 4E081 YB02 YX05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繰り返し荷重が作用する、疲労強度が問
    題となる溶接部位を有する既存および新設の鋼構造物に
    おいて、通常の溶接ビードの上から低温変態溶材による
    付加ビードを形成することによって高い疲労強度を実現
    することを特徴とする低温変態溶材を用いた溶接施工方
    法。
  2. 【請求項2】 繰り返し荷重が作用する、疲労強度が問
    題となる溶接部位を有する既存および新設の鋼構造物に
    おいて、低温変態溶材による付加ビードを形成する際
    に、予め、その部位が引張応力状態にあるように、外力
    をその部位に付与することによって高い疲労強度を実現
    することを特徴とする請求項1に記載の低温変態溶材を
    用いた溶接施工方法。
  3. 【請求項3】 外力を付与する手段が、対象構造物の自
    重、活荷重、プレストレス、外部からの強制加力の少な
    くとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の低
    温変態溶材を用いた溶接施工方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の低温変態溶材
    を用いた溶接施工方法を適用されて構築されたことによ
    って高い疲労強度を持つことを特徴とする鋼構造物。
JP2000306287A 2000-10-05 2000-10-05 低温変態溶材を用いた溶接施工方法および鋼構造物 Withdrawn JP2002113577A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003103393A (ja) * 2001-09-27 2003-04-08 Nippon Steel Corp 疲労強度に優れた溶接継手の製造方法
WO2013069484A1 (ja) 2011-11-09 2013-05-16 国立大学法人大阪大学 溶接方法および溶接継手

Cited By (3)

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JP2003103393A (ja) * 2001-09-27 2003-04-08 Nippon Steel Corp 疲労強度に優れた溶接継手の製造方法
WO2013069484A1 (ja) 2011-11-09 2013-05-16 国立大学法人大阪大学 溶接方法および溶接継手
JP2013099764A (ja) * 2011-11-09 2013-05-23 Osaka Univ 溶接方法および溶接継手

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