JP2002111277A - 円偏波用電波反射減衰体の設計方法および評価方法、電波反射減衰体評価装置、電波反射減衰体ならびに構造物 - Google Patents

円偏波用電波反射減衰体の設計方法および評価方法、電波反射減衰体評価装置、電波反射減衰体ならびに構造物

Info

Publication number
JP2002111277A
JP2002111277A JP2001211641A JP2001211641A JP2002111277A JP 2002111277 A JP2002111277 A JP 2002111277A JP 2001211641 A JP2001211641 A JP 2001211641A JP 2001211641 A JP2001211641 A JP 2001211641A JP 2002111277 A JP2002111277 A JP 2002111277A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
radio wave
reflection
attenuator
circularly polarized
radio
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001211641A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3756791B2 (ja
Inventor
Hiroshi Kurihara
弘 栗原
Yoshito Hirai
義人 平井
Koji Takizawa
幸治 滝沢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2001211641A priority Critical patent/JP3756791B2/ja
Publication of JP2002111277A publication Critical patent/JP2002111277A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3756791B2 publication Critical patent/JP3756791B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Shielding Devices Or Components To Electric Or Magnetic Fields (AREA)
  • Aerials With Secondary Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 円偏波の電波の反射を抑制するための円偏波
用電波反射減衰体を、容易に且つ適切に実現できるよう
にする。 【解決手段】 円偏波用電波反射減衰体(電波吸収体3
0)の設計方法では、電界が入射面に垂直な電波(TE
波)に対する電波反射減衰体の複素反射係数と磁界が入
射面に垂直な電波(TM波)に対する電波反射減衰体の
複素反射係数との平均の絶対値が所望の値以下になるよ
うに、各複素反射係数を変化させるパラメータの値を決
定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば移動体通
信、衛星通信、レーダー等で用いられる円偏波の電波に
おける不要な反射を抑制するための円偏波用電波反射減
衰体の設計方法および評価方法、電波反射減衰体評価装
置、電波反射減衰体ならびに電波反射減衰体を含む構造
物に関する。
【0002】
【従来の技術】電波の不要な反射を抑制するものとして
電波吸収体が広く用いられている。電波吸収体は、所望
の周波数範囲、所望の入射角度範囲において所望の反射
減衰量が得られるように設計される。
【0003】従来、電波が電波吸収体に斜めに入射する
場合における電波吸収体の設計は、電界が入射面に垂直
な電波であるTE波の場合と、磁界が入射面に垂直な電
波であるTM波の場合とに分けて行われていた。このよ
うな電波吸収体の設計方法は、例えば、文献“清水 康
敬 他編、「最新 電磁波の吸収と遮蔽」、日経技術図
書、1999年”や、“橋本 修 著、「電波吸収体入
門」、森北出版、1997年”に示されている。
【0004】ところで、例えば特開平7−288393
号公報の段落0017に記載されているように、TE波
およびTM波の両直線偏波に対して良好な電波吸収特性
を有する電波吸収体は円偏波に対しても有効な電波吸収
特性を有することが知られている。そこで、従来は、円
偏波用の電波吸収体の設計は、TE波とTM波の両直線
偏波に対して良好な電波吸収特性を有するように設計さ
れていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、円偏波
に対して良好な電波吸収特性を有する電波吸収体を実現
するために、電波吸収体がTE波およびTM波の両直線
偏波に対して良好な電波吸収特性を有するようにする必
要はない。従って、従来における円偏波用の電波吸収体
の設計方法では、余分な条件が課せられていると言うこ
とができる。
【0006】また、円偏波用の電波吸収体の評価につい
ても、設計と同様のことが言える。すなわち、従来の円
偏波用の電波吸収体は、TE波とTM波の両直線偏波に
対して良好な電波吸収特性を有するか否かによって評価
されていた。しかしながら、円偏波に対して良好な電波
吸収特性を有する電波吸収体が、必ずしもTE波および
TM波の両直線偏波に対して良好な電波吸収特性を有す
る必要はない。従って、従来における円偏波用の電波吸
収体の評価方法では、余分な条件が課せられていると言
うことができる。
【0007】なお、特開平11−323770号公報に
は、形状がコイル状をしている微小炭素繊維からなる電
磁波吸収材料を含む難燃性電磁波吸収シートが示されて
いる。また、特開平11−323770号公報には、段
落0010において、「…さらに電磁波は、コイルによ
り直線偏波(水平、垂直)のほか円偏波(右回転、左回
転)を受け、さらに高導電性であるために反射、散乱な
どを受け急激に減衰する。」と記載されている。
【0008】しかしながら、特開平11−323770
号公報には、とりわけ円偏波に対して、電波吸収体が良
好な電波吸収特性を有するようにするための設計方法は
記載されていない。また、円偏波に対する電波吸収体の
電波吸収特性を評価した結果も記載されていない。
【0009】本発明はかかる問題点を鑑みてなされたも
ので、その第1の目的は、円偏波の電波の反射を抑制す
るための円偏波用電波反射減衰体を、容易に且つ適切に
実現できるようにした円偏波用電波反射減衰体の設計方
法を提供することにある。
【0010】また、本発明の第2の目的は、円偏波の電
波の反射を抑制するための円偏波用電波反射減衰体を、
容易に且つ適切に評価できるようにした円偏波用電波反
射減衰体の評価方法を提供することにある。
【0011】また、本発明の第3の目的は、円偏波の電
波に対して所望の反射減衰特性を有する電波反射減衰体
を容易に且つ適切に実現できるようにするために、電波
反射減衰体の円偏波に対する反射減衰特性を適切に評価
できるようにした電波反射減衰体評価装置を提供するこ
とにある。
【0012】また、本発明の第4の目的は、円偏波の電
波に対して所望の反射減衰特性を有し、容易に且つ適切
に実現できるようにした電波反射減衰体およびこの電波
反射減衰体を含む構造物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の円偏波用電波反
射減衰体の設計方法は、円偏波の電波に対して所望の反
射減衰特性を有する円偏波用電波反射減衰体を設計する
方法であって、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に
対する電波反射減衰体の複素反射係数と磁界が入射面に
垂直な電波(TM波)に対する電波反射減衰体の複素反
射係数との平均の絶対値が所望の値以下になるように、
各複素反射係数を変化させるパラメータの値を決定する
ものである。
【0014】本発明の円偏波用電波反射減衰体の設計方
法では、TE波とTM波の両直線偏波に対して良好な反
射減衰特性を有するように電波反射減衰体を設計するの
ではなく、TE波に対する複素反射係数とTM波に対す
る複素反射係数との平均の絶対値が所望の値以下になる
ように電波反射減衰体を設計する。
【0015】なお、本発明において、円偏波とは、完全
な円偏波のみでなく、概ね円偏波とみなせる楕円偏波も
含む。本発明において、概ね円偏波とみなせる楕円偏波
とは、軸比(楕円偏波率)が1.1以下の楕円偏波を言
う。
【0016】本発明の第1の円偏波用電波反射減衰体の
評価方法は、円偏波の電波の反射を抑制するための円偏
波用電波反射減衰体を評価する方法であって、電界が入
射面に垂直な電波(TE波)に対する電波反射減衰体の
複素反射係数と磁界が入射面に垂直な電波(TM波)に
対する電波反射減衰体の複素反射係数とをそれぞれ独立
に測定する手順と、円偏波に対する電波反射減衰体の複
素反射係数の絶対値として、測定された2つの複素反射
係数の平均の絶対値を求める手順と、求められた円偏波
に対する複素反射係数の絶対値を用いて電波反射減衰体
の評価を行う手順とを備えたものである。
【0017】本発明の第1の円偏波用電波反射減衰体の
評価方法では、TE波とTM波の両直線偏波に対して良
好な反射減衰特性を有するか否かによって電波反射減衰
体を評価するのではなく、円偏波に対する複素反射係数
の絶対値を用いて電波反射減衰体の評価を行う。
【0018】本発明の第2の円偏波用電波反射減衰体の
評価方法は、円偏波の電波の反射を抑制するための円偏
波用電波反射減衰体を評価する方法であって、電波反射
減衰体に対して円偏波の電波を放射し、電波反射減衰体
で反射されて、放射された電波とは逆旋となる円偏波の
電波を受信して、円偏波に対する電波反射減衰体の反射
減衰量を求める手順と、求められた反射減衰量を用いて
電波反射減衰体の評価を行う手順とを備えたものであ
る。
【0019】本発明の第2の円偏波用電波反射減衰体の
評価方法では、TE波とTM波の両直線偏波に対して良
好な反射減衰特性を有するか否かによって電波反射減衰
体を評価するのではなく、円偏波に対する反射減衰量を
用いて電波反射減衰体の評価を行う。
【0020】本発明の第1の電波反射減衰体評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であって、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に対
する電波反射減衰体の複素反射係数と磁界が入射面に垂
直な電波(TM波)に対する電波反射減衰体の複素反射
係数とをそれぞれ独立に測定する測定手段と、円偏波に
対する電波反射減衰体の複素反射係数の絶対値として、
測定手段によって測定された2つの複素反射係数の平均
の絶対値を求める演算手段とを備えたものである。
【0021】本発明の第1の電波反射減衰体評価装置で
は、測定手段によって、TE波に対する電波反射減衰体
の複素反射係数とTM波に対する電波反射減衰体の複素
反射係数とが独立に測定され、演算手段によって、円偏
波に対する電波反射減衰体の複素反射係数の絶対値とし
て、測定された2つの複素反射係数の平均の絶対値が求
められる。
【0022】本発明の第2の電波反射減衰体評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であって、電波反射減衰体に対して円偏波の電波を放
射する送信手段と、円偏波に対する電波反射減衰体の反
射減衰量を求めるために、電波反射減衰体で反射され
て、送信手段より放射された電波とは逆旋となる円偏波
の電波を受信する受信手段とを備えたものである。
【0023】本発明の第2の電波反射減衰体評価装置で
は、送信手段によって電波反射減衰体に対して円偏波の
電波が放射され、電波反射減衰体で反射されて、送信手
段より放射された電波とは逆旋となる円偏波の電波が受
信手段によって受信される。
【0024】本発明の第3の電波反射減衰体評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であって、内壁の少なくとも一部に電波吸収体が配置
された筐体を有する電波暗箱と、電波暗箱内に設けら
れ、評価対象の電波反射減衰体が設置される設置部と、
電波暗箱内に設置され、電波反射減衰体に対して円偏波
の電波を放射する送信手段と、電波暗箱内に設置され、
円偏波に対する電波反射減衰体の反射減衰量を求めるた
めに、電波反射減衰体で反射されて、送信手段より放射
された電波とは逆旋となる円偏波の電波を受信する受信
手段とを備えたものである。
【0025】本発明の第3の電波反射減衰体評価装置で
は、電波暗箱内の設置部に設置された電波反射減衰体に
対して、送信手段によって円偏波の電波が放射され、電
波反射減衰体で反射されて、送信手段より放射された電
波とは逆旋となる円偏波の電波が受信手段によって受信
される。
【0026】本発明の第3の電波反射減衰体評価装置に
おいて、電波暗箱は扉を有し、設置部は扉の内面に設け
られていてもよい。
【0027】また、本発明の第3の電波反射減衰体評価
装置において、設置部は評価対象の電波反射減衰体を着
脱自在に保持する保持部材を有していてもよい。
【0028】また、本発明の第3の電波反射減衰体評価
装置において、送信手段は送信アンテナを有し、受信手
段は受信アンテナを有し、電波反射減衰体評価装置は、
更に、電波暗箱内に設置され、送信アンテナおよび受信
アンテナを支持するアンテナ支持具を備えていてもよ
い。
【0029】本発明の第4の電波反射減衰体評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であって、内壁の少なくとも一部に電波吸収体が配置
された筐体を有する電波暗箱と、電波暗箱に設けられ、
電波暗箱外から電波暗箱内へ評価対象の電波反射減衰体
を挿入可能とする挿入部と、電波暗箱内に設置され、電
波反射減衰体に対して円偏波の電波を放射する送信手段
と、電波暗箱内に設置され、円偏波に対する電波反射減
衰体の反射減衰量を求めるために、電波反射減衰体で反
射されて、送信手段より放射された電波とは逆旋となる
円偏波の電波を受信する受信手段とを備えたものであ
る。
【0030】本発明の第4の電波反射減衰体評価装置で
は、挿入部より電波暗箱内に挿入された電波反射減衰体
に対して、送信手段によって円偏波の電波が放射され、
電波反射減衰体で反射されて、送信手段より放射された
電波とは逆旋となる円偏波の電波が受信手段によって受
信される。
【0031】本発明の第4の電波反射減衰体評価装置
は、更に、評価対象の電波反射減衰体が設置され、挿入
部より電波暗箱内へ挿入される可動台を備えていてもよ
い。
【0032】また、本発明の第4の電波反射減衰体評価
装置において、送信手段は送信アンテナを有し、受信手
段は受信アンテナを有し、電波反射減衰体評価装置は、
更に、電波暗箱内に設置され、送信アンテナおよび受信
アンテナを支持するアンテナ支持具を備えていてもよ
い。
【0033】本発明の第1の電波反射減衰体は、電波の
反射を抑制するためのものであって、40度の電波入射
角度において、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に
対する反射減衰量と磁界が入射面に垂直な電波(TM
波)に対する反射減衰量の一方は20dB未満であり、
円偏波に対する反射減衰量は20dB以上であるもので
ある。
【0034】本発明の第1の電波反射減衰体では、40
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量の一方は20dB以上とは
ならなくとも、円偏波に対する反射減衰量は20dB以
上となる。
【0035】本発明の第1の電波反射減衰体において、
0度〜40度の電波入射角度範囲内の全域において、円
偏波に対する反射減衰量は20dB以上であってもよ
い。
【0036】本発明の第2の電波反射減衰体は、電波の
反射を抑制するためのものであって、40度の電波入射
角度において、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に
対する反射減衰量と磁界が入射面に垂直な電波(TM
波)に対する反射減衰量は共に20dB未満であり、円
偏波に対する反射減衰量は20dB以上であるものであ
る。
【0037】本発明の第2の電波反射減衰体では、40
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量は共に20dB以上とはな
らなくとも、円偏波に対する反射減衰量は20dB以上
となる。
【0038】本発明の第2の電波反射減衰体において、
0度〜40度の電波入射角度範囲内の全域において、円
偏波に対する反射減衰量は20dB以上であってもよ
い。
【0039】本発明の第3の電波反射減衰体は、電波の
反射を抑制するためのものであって、50度の電波入射
角度において、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に
対する反射減衰量と磁界が入射面に垂直な電波(TM
波)に対する反射減衰量の一方は15dB未満であり、
円偏波に対する反射減衰量は15dB以上であるもので
ある。
【0040】本発明の第3の電波反射減衰体では、50
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量の一方は15dB以上とは
ならなくとも、円偏波に対する反射減衰量は15dB以
上となる。
【0041】本発明の第3の電波反射減衰体において、
0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域において、円
偏波に対する反射減衰量は15dB以上であってもよ
い。
【0042】本発明の第4の電波反射減衰体は、電波の
反射を抑制するためのものであって、50度の電波入射
角度において、電界が入射面に垂直な電波(TE波)に
対する反射減衰量と磁界が入射面に垂直な電波(TM
波)に対する反射減衰量は共に15dB未満であり、円
偏波に対する反射減衰量は15dB以上であるものであ
る。
【0043】本発明の第4の電波反射減衰体では、50
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量は共に15dB以上とはな
らなくとも、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上
となる。
【0044】本発明の第4の電波反射減衰体において、
0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域において、円
偏波に対する反射減衰量は15dB以上であってもよ
い。
【0045】本発明の構造物は、上記の各電波反射減衰
体のいずれかを含むものである。
【0046】なお、本発明において、電波反射減衰体
は、減衰させるべき電波の周波数または所定の周波数範
囲の周波数帯について、所望の反射減衰特性を有すれば
よい。減衰させるべき電波の周波数は、一点の周波数で
もよいし、複数点の周波数でもよい。また、周波数帯
は、一つの周波数帯であってもよいし、複数の周波数帯
であってもよい。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照
して、本出願において用いられる用語について説明す
る。図1は、電波反射減衰体1に入射した電波が、電波
反射減衰体1によって反射される様子を表している。入
射波2と反射波3とを含む面を入射面4と言う。電波反
射減衰体1の電波到来側の面における入射波2の入射点
で、その面に立てた法線を入射法線5と言う。入射法線
5と入射波2の進行方向とがなす角度を入射角度θi
言い、入射法線5と出射波3の進行方向とがなす角度を
反射角度θrという。反射減衰体1の電波到来側の面が
平面である場合には、入射角度θiと反射角度θrは等し
い。
【0048】また、電界が入射面に垂直な電波をTE波
と言い、磁界が入射面に垂直な電波をTM波と言う。図
1において、符号11はTE波の電界ベクトルを表し、
符号12はTM波の電界ベクトルを表している。これら
TE波およびTM波の電界ベクトルの大きさは、周波数
に依存し時間変化に伴って変化している。また、電界ベ
クトルが周波数に依存し時間変化に伴って回転している
電波を円偏波と言う。円偏波には、電界ベクトルが右回
転する右旋偏波13と、電界ベクトルが左回転する左旋
偏波14とがある。
【0049】[第1の実施の形態]次に、本発明の第1
の実施の形態に係る円偏波用電波反射減衰体の設計方法
および電波反射減衰体について説明する。
【0050】本実施の形態に係る設計方法は、円偏波の
電波に対して所望の反射減衰特性を有する円偏波用電波
反射減衰体を設計する方法であって、TE波に対する電
波反射減衰体の複素反射係数ΓTE *(*は複素数である
ことを表す。)とTM波に対する電波反射減衰体の複素
反射係数ΓTM *との平均の絶対値|(ΓTE *+ΓTM *)/
2|が所望の値A以下になるように、各複素反射係数Γ
TE *、ΓTM *を変化させるパラメータの値を決定するもの
である。複素反射係数ΓTE *、ΓTM *を変化させるパラメ
ータは、例えば電波反射減衰体が電波吸収体の場合に
は、電波吸収体を構成する1以上の層の電磁気的な定数
(複素比誘電率、複素比透磁率)や厚さ等である。
【0051】上記の|(ΓTE *+ΓTM *)/2|は、円偏
波に対する電波反射減衰体の複素反射係数ΓCP *の絶対
値となる。従って、本実施の形態に係る設計方法は、以
下の式(1)を満たすように、複素反射係数ΓTE *、Γ
TM *を変化させるパラメータの値を決定するものであ
る。
【0052】 |ΓCP *|=|(ΓTE *+ΓTM *)/2|≦ A …(1)
【0053】円偏波に対する電波反射減衰体の反射減衰
量Sは、−20log|ΓCP *|(単位はdB)と表され
る。従って、本実施の形態に係る設計方法は、以下の式
(2)を満たすように、複素反射係数ΓTE *、ΓTM *を変
化させるパラメータの値を決定すると言うこともでき
る。
【0054】 S=−20log|ΓCP *| =−20log|(ΓTE *+ΓTM *)/2|≧−20logA …(2)
【0055】本実施の形態に係る設計方法では、所望の
周波数範囲および所望の入射角度範囲において、上記式
(1)または式(2)を満たすように、複素反射係数Γ
TE *、ΓTM *を変化させるパラメータの値を決定する。
【0056】なお、本実施の形態において、円偏波と
は、完全な円偏波のみでなく、概ね円偏波とみなせる楕
円偏波も含む。本実施の形態において、概ね円偏波とみ
なせる楕円偏波とは、軸比(楕円偏波率)が1.1以下
の楕円偏波を言う。
【0057】また、電波反射減衰体は、電波の反射を抑
制するものであればよく、代表的な例としては電波吸収
体があるが、電波吸収体に限られるものではない。図2
ないし図4は、電波吸収体以外の電波反射減衰体の例を
示したものである。
【0058】図2は、位相調整型の電波反射減衰体21
を示している。この電波反射減衰体21は電波を反射す
る材料によって構成され、段差を有する2種類の反射面
21a,21bを有している。電波反射減衰体21に入
射した電波20は反射面21a,21bで反射される。
反射面21aで反射された電波と反射面21bで反射さ
れた電波との間には位相差が生じ、この位相差により、
2つの反射波が重なった後の電波が減衰される。
【0059】図3、図4は、それぞれ、電波散乱型の電
波反射減衰体22,23を示している。これらの電波反
射減衰体22,23は電波を反射する材料によって構成
されている。電波反射減衰体22は多角錘形状または楔
形状の反射面を有している。電波反射減衰体23は波形
の反射面を有している。電波反射減衰体22,23に入
射した電波20は反射面で反射、散乱され、反射波が減
衰される。
【0060】例えば図2ないし図4に示したような電波
反射減衰体であっても、TE波、TM波それぞれに対す
る電波反射減衰体の複素反射係数を計算することによ
り、円偏波に対する電波反射減衰体の複素反射係数の絶
対値を計算することができ、これにより、電波反射減衰
体の設計が可能になる。
【0061】ここまでは、円偏波の電波に対して所望の
反射減衰特性を有する円偏波用電波反射減衰体を設計す
る方法について説明してきたが、本実施の形態に係る設
計方法は、楕円偏波の電波に対して所望の反射減衰特性
を有する電波反射減衰体を設計する場合にも応用するこ
とができる。
【0062】以下、楕円偏波の電波に対して所望の反射
減衰特性を有する電波反射減衰体を設計する方法につい
て説明する。まず、図5に示したように、電波の入射面
と平行な方向をx方向とし、入射面と垂直な方向をy方
向とする。また、楕円偏波の入射電波のx方向の電界E
xの大きさの最大値をX=|Ex|とし、入射電波のy
方向の電界Eyの大きさの最大値をY=|Ey|とす
る。楕円偏波の電波に対して所望の反射減衰特性を有す
る電波反射減衰体を設計するには、以下の式(3)で表
されるように、楕円偏波に対する電波反射減衰体の複素
反射係数ΓEP *の絶対値が所望の値A以下になるよう
に、複素反射係数ΓTE *、ΓTM *を変化させるパラメータ
の値を決定すればよい。
【0063】 |ΓEP *|=|[{Y/(X+Y)}ΓTE * +{X/(X+Y)}ΓTM *)]|≦ A …(3)
【0064】楕円偏波に対する電波反射減衰体を設計す
る場合には、入射電波のx方向の電界の大きさの最大値
Xとy方向の電界の大きさの最大値Yとが異なるので、
電波反射減衰体に対して入射面を固定する必要がある。
すなわち、電波の到来方向と電波反射減衰体の設置位置
との関係を固定する必要がある。なお、電波反射減衰体
が、TE波、TM波の両直線偏波に対して良好な電波吸
収特性を有する電波吸収体の場合には、電波反射減衰体
の反射減衰特性は、電波の到来方向と電波反射減衰体の
設置位置との関係に依存しない。
【0065】以下、電波反射減衰体として電波吸収体を
用いる場合を例にとって、本実施の形態に係る設計方法
について更に詳しく説明する。
【0066】電波反射減衰体としての電波吸収体は、抵
抗体(導電体)によって裏打されていてもよい。抵抗体
(導電体)としては、金属板や、導電性メッシュや、透
光性もしくは透明性を有する抵抗膜等を用いることがで
きる。抵抗体(導電体)が、導電性メッシュや透光性も
しくは透明性を有する抵抗膜である場合には、それが電
波反射体として機能すべく、その面抵抗値が0Ω□〜5
0Ω□以下であることが好ましい。
【0067】また、電波吸収体は誘電体からなる層(以
下、誘電体層と言う。)を含んでいてもよい。誘電体層
としては、空気層や、有機材質や無機材質の誘電体の層
や、有機材質や無機材質の誘電体の発泡材からなる層
や、有機材質や無機材質の誘電体の基材に誘電損失体の
紛粒や誘電損失体の繊維を混合したものからなる層や、
有機材質や無機材質の誘電体の発泡材に誘電損失体の紛
粒や誘電損失体の繊維を混合したものからなる層等を用
いることができる。
【0068】次に、円偏波用電波反射減衰体としての電
波吸収体およびその設計方法の3つの実施例について説
明する。
【0069】[第1の実施例]第1の実施例は、抵抗体
(導電体)および1層の誘電体層からなる電波吸収体お
よびその設計方法の例である。
【0070】図6は、抵抗体(導電体)31および1層
の誘電体層32からなる電波吸収体30の構成およびそ
の電気的等価回路を示している。この電波吸収体30で
は、誘電体層32が電波到来側に配置される。この電波
吸収体30において、抵抗体(導電体)31を第1層と
し、誘電体層32を第2層とする。
【0071】また、自由空間(空気)の特性インピーダ
ンスをZ0とし、自由空間における電波の波長をλ0
し、電波吸収体30の表面への電波の入射角度をθと
し、第k層の複素比誘電率をεrk *とし、第k層の複素
比透磁率をμrk *とし、第k層の厚さをdkとし、第k層
の特性インピーダンスをZCk *とし、第k−1層の電波
到来側表面から見込んだインピーダンスをZink-1 *
し、第k層の伝搬定数をγk *(=j・(2π/λ0)√
(εrk *μrk *−sin2θ))とする。
【0072】第k層が抵抗体(導電体)以外の場合、す
なわち、本実施例においてk=2の場合には、第k層の
電波到来側表面から見込んだインピーダンスZink *は、
次の式(4)で表される。
【0073】 Zink *=ZCk *(Zink-1 *+ZCk *tanhγk *k)/(ZCk *+Zink-1 *tan hγk *k) …(4)
【0074】ここで、入射電波がTE波の場合には、Z
Ck *=Z0μrk */√(εrk *μrk *−sin2θ)であり、
入射電波がTM波の場合には、ZCk *=Z0√(μrk *ε
rk *−sin2θ)/εrk *である。
【0075】次に、第k層が抵抗体(導電体)の場合、
すなわち、本実施例においてk=1の場合には、第k層
の電波到来側表面から見込んだインピーダンスZ
ink *は、次の式(5)で表される。
【0076】 Zink *=Rk・Zink-1 */(Rk+Zink-1 *) …(5)
【0077】ここで、Rkは第k層の面抵抗値(単位は
Ω□)である。
【0078】以上の漸化式(4)、(5)より、電波吸
収体30の電波到来側表面から見込んだインピーダンス
inN *が求められる。なお、本実施例ではN=2であ
る。
【0079】上記インピーダンスZinN *より、TE波に
対する複素反射係数ΓTE *と、TM波に対する複素反射
係数ΓTM *は、以下の式によって求められる。
【0080】ΓTE *={ZinN *−(Z0/cosθ)}/
{ZinN *+(Z0/cosθ)}
【0081】ΓTM *=(ZinN *−Z0cosθ)/(Z
inN *+Z0cosθ)
【0082】また、円偏波に対する電波吸収体30の反
射減衰係数の絶対値|ΓCP *|は、以下の式によって求
められる。
【0083】|ΓCP *|=|(ΓTE *+ΓTM *)/2|
【0084】更に、円偏波に対する電波吸収体30の反
射減衰量S(単位はdB)は、以下の式によって求めら
れる。
【0085】S=−20log|ΓCP *|=−20log|
(ΓTE *+ΓTM *)/2|
【0086】ここで、例えば、円偏波に対する電波吸収
体30の反射減衰係数の絶対値|Γ CP *|、すなわち|
(ΓTE *+ΓTM *)/2|が0.1以下になるように設計
すれば、円偏波に対する電波吸収体30の反射減衰量S
は20dB以上となる。
【0087】なお、抵抗体(導電体)31が金属板である
場合、すなわちRk=0である場合には、Zink-1 *によ
らず、Zink *=0である。このことは、金属板が存在し
た場合には、この層より小さい番号の層、すなわち電波
進行方向の層についてインピーダンスの計算を行う必要
がないことを示している。
【0088】本実施例において抵抗体(導電体)31が金
属板である場合には、Zin1 *=0となるので、Z
in2 *は、以下の式のようになる。
【0089】Zin2 *=ZC2 *(Zin1 *+ZC2 *tanhγ
2 *2)/(ZC2 *+Zin1 *tanhγ2 *2)=ZC2 *
anhγ2 *2
【0090】次に、本実施例における電波吸収体30の
設計の一例と、設計された電波吸収体30について計算
によって求めた特性を示す。この設計では、周波数f=
5.8(GHz)、R1=0(Ω□)、εr2 *=1.9−
j・1.1(5.8GHzにおいて)、μr2 *=1−j
・0、d2=11(mm)とした。電波吸収体30に対
する電波の入射角度が0度〜70度の場合において、設
計された電波吸収体30について計算によって求めた特
性、すなわちTE波、TM波および円偏波のそれぞれに
ついての入射角度と反射減衰量との関係を図7に示す。
【0091】図7において、0度〜50度の入射角度範
囲に着目する。TE波の場合にはこの入射角度範囲内に
おいて15dB以上の反射減衰量を有しているが、TM
波の場合には入射角度が約36度以上になると反射減衰
量が15dB未満となっている。ところが、円偏波に対
しては、この入射角度範囲内において、15dB以上の
反射減衰量を有している。このことは、所望の入射角度
範囲で円偏波に対して15dB以上の反射減衰量を有す
る電波吸収体が、必ずしもTE波およびTM波の両直線
偏波に対して15dB以上の反射減衰量を有する必要が
ないことを示している。
【0092】図7に示した特性の電波吸収体は、50度
の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量と
TM波に対する反射減衰量の一方は15dB未満であ
り、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上である電
波反射減衰体となる。また、図7に示した特性の電波吸
収体では、0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域に
おいて、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上であ
る。
【0093】[第2の実施例]第2の実施例は、抵抗体
(導電体)および3層の誘電体層からなる電波吸収体お
よびその設計方法の例である。
【0094】図8は、抵抗体(導電体)41と、この抵
抗体(導電体)41側から順に配置された誘電体層4
2,43,44からなる電波吸収体40の構成およびそ
の電気的等価回路を示している。この電波吸収体40で
は、誘電体層44が電波到来側に配置される。この電波
吸収体40において、抵抗体(導電体)41を第1層と
し、誘電体層42を第2層とし、誘電体層43を第3層
とし、誘電体層44を第4層とする。
【0095】本実施例においても、第1層に対しては第
1の実施例で示した漸化式(5)を用い、第2層、第3
層、第4層に対しては第1の実施例で示した漸化式
(4)を用いることによって、円偏波用電波反射減衰体
としての電波吸収体40の設計が可能である。
【0096】次に、本実施例における電波吸収体40の
設計の一例と、設計された電波吸収体40について計算
によって求めた特性を示す。この設計では、周波数f=
5.8(GHz)、R1=0(Ω□)、εr2 *=1.9−
j・1.1(5.8GHzにおいて)、μr2 *=1−j
・0、d2=27(mm)、εr3 *=1.54−j・0.
32(5.8GHzにおいて)、μr3 *=1−j・0、
3=3.5(mm)、εr4 *=2.8−j・0.02
(5.8GHzにおいて)、μr4 *=1−j・0、d4
1(mm)とした。電波吸収体40に対する電波の入射
角度が0度〜70度の場合において、設計された電波吸
収体40について計算によって求めた特性、すなわちT
E波、TM波および円偏波のそれぞれについての入射角
度と反射減衰量との関係を図9に示す。
【0097】図9において、0度〜40度の入射角度範
囲に着目する。TM波の場合にはこの入射角度範囲内に
おいて20dB以上の反射減衰量を有しているが、TE
波の場合には入射角度が約38度以上になると反射減衰
量が20dB未満となっている。ところが、円偏波に対
しては、この入射角度範囲内において、20dB以上の
反射減衰量を有している。このことは、所望の入射角度
範囲で円偏波に対して20dB以上の反射減衰量を有す
る電波吸収体が、必ずしもTE波およびTM波の両直線
偏波に対して20dB以上の反射減衰量を有する必要が
ないことを示している。
【0098】図9に示した特性の電波吸収体は、40度
の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量と
TM波に対する反射減衰量の一方は20dB未満であ
り、円偏波に対する反射減衰量は20dB以上である電
波反射減衰体となる。また、図9に示した特性の電波吸
収体では、0度〜40度の電波入射角度範囲内の全域に
おいて、円偏波に対する反射減衰量は20dB以上であ
る。
【0099】また、図9において、0度〜50度の入射
角度範囲に着目する。TM波の場合にはこの入射角度範
囲内において15dB以上の反射減衰量を有している
が、TE波の場合には入射角度が約49度以上になると
反射減衰量が15dB未満となっている。ところが、円
偏波に対しては、この入射角度範囲内において、15d
B以上の反射減衰量を有している。このことは、所望の
入射角度範囲で円偏波に対して15dB以上の反射減衰
量を有する電波吸収体が、必ずしもTE波およびTM波
の両直線偏波に対して15dB以上の反射減衰量を有す
る必要がないことを示している。
【0100】図9に示した特性の電波吸収体は、50度
の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量と
TM波に対する反射減衰量の一方は15dB未満であ
り、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上である電
波反射減衰体となる。また、図9に示した特性の電波吸
収体では、0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域に
おいて、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上であ
る。
【0101】次に、図9に示した設計例の電波吸収体4
0について、入射角度が0度〜70度の場合において、
計算によって求めた複素反射係数の特性、すなわちTE
波、TM波および円偏波のそれぞれについての入射角度
と複素反射係数との関係を図10および図11に示す。
図10は入射角度と複素反射係数の実部との関係を示
し、図11は入射角度と複素反射係数の虚部との関係を
示している。
【0102】図10に示した複素反射係数の実部に着目
すると、TE波の場合には入射角度が大きくなるにつれ
て複素反射係数の実部は負側に大きくなり、TM波の場
合には入射角度が大きくなるにつれて複素反射係数の実
部は正側に大きくなっている。しかしながら、円偏波の
場合における複素反射係数の実部は、TE波の場合にお
ける複素反射係数の実部とTM波の場合における複素反
射係数の実部との平均となるために、入射角度が大きく
なっても入射角度0度における値を概ね維持している。
【0103】また、図11に示した複素反射係数の虚部
に着目すると、円偏波の場合における複素反射係数の虚
部は、TE波の場合における複素反射係数の虚部とTM
波の場合における複素反射係数の虚部との平均となるた
めに、その複素反射係数の虚部の絶対値は、TE波の場
合における複素反射係数の虚部の絶対値とTM波の場合
における複素反射係数の虚部の絶対値のうちの大きい方
の値よりも小さくなっている。
【0104】以上のことから分かるように、円偏波に対
して良好な反射減衰特性(電波吸収特性)を有する電波
吸収体を設計する場合には、TE波およびTM波の両直
線偏波に対して良好な反射減衰特性(電波吸収特性)を
有するように設計する必要はなく、TE波の場合におけ
る複素反射係数とTM波の場合における複素反射係数と
の平均値が、実部、虚部共に0に近づくように設計する
ことが必要である。
【0105】ところで、TE波、TM波および円偏波の
それぞれについて、電波吸収体の電波到来側表面から見
込んだインピーダンスが、ZinTE *、ZinTM *およびZ
inCP *とすると、(ZinTE *2 +(ZinTM *2 −2Z
inTE *・ZinTM *=0を満たす範囲においては、ZinCP *
=(ZinTE *+ZinTM * )/2が成り立っている。
【0106】次に、本実施例における電波吸収体40の
設計の他の例と、設計された電波吸収体40について計
算によって求めた特性を示す。この設計では、周波数f
=5.8(GHz)、R1=0(Ω□)、εr2 *=1.9
−j・1.1(5.8GHzにおいて)、μr2 *=1−
j・0、d2=27(mm)、εr3 *=1.54−j・
0.32(5.8GHzにおいて)、μr3 *=1−j・
0、d3=5(mm)、ε r4 *=2.8−j・0.02
(5.8GHzにおいて)、μr4 *=1−j・0、d 4
1(mm)とした。電波吸収体40に対する電波の入射
角度が0度〜70度の場合において、設計された電波吸
収体40について計算によって求めた特性、すなわちT
E波、TM波および円偏波のそれぞれについての入射角
度と反射減衰量との関係を図12に示す。
【0107】図12において、0度〜50度の入射角度
範囲に着目する。TM波の場合にはこの入射角度範囲内
において20dB以上の反射減衰量を有しているが、T
E波の場合には入射角度が約45度以上になると反射減
衰量が20dB未満となっている。ところが、円偏波に
対しては、この入射角度範囲内において、20dB以上
の反射減衰量を有している。このことは、所望の入射角
度範囲で円偏波に対して20dB以上の反射減衰量を有
する電波吸収体が、必ずしもTE波およびTM波の両直
線偏波に対して20dB以上の反射減衰量を有する必要
がないことを示している。
【0108】ところで、本実施の形態に係る円偏波用電
波吸収体の設計方法において、電波吸収体は磁性体から
なる層(以下、磁性体層と言う。)を含んでいてもよ
い。磁性体層では、複素比透磁率μr *が1−j・0では
なくなる。磁性体層としては、焼結フェライトからなる
層や、有機材質や無機材質の誘電体の基材に磁性体の紛
粒を混合したものからなる層や、有機材質や無機材質の
誘電体の発泡材に磁性体の紛粒を混合したものからなる
層等を用いることができる。また、磁性体層には、複素
比誘電率を調整すべく、誘電体の粉粒もしくは誘電損失
体の粉粒や誘電損失体の繊維を混合してもよい。
【0109】また、本実施例では、3層の誘電体層を有
する電波吸収体を示したが、より多くの層を含む電波吸
収体も、第1の実施例で示した漸化式を用いることによ
り設計可能である。また、電波吸収体は、誘電体層のみ
が積層されてなるものや、複数の磁性体層のみが積層さ
れてなるものに限らず、誘電体層および磁性体層が積層
されてなるものでもよい。
【0110】また、電波吸収体は、後述する第3の実施
例のように、抵抗体からなる層(膜)を含んでいてもよ
い。抵抗体(導電体)からなる層(膜)は、透光性もし
くは透明性を有する膜であってもよい。透光性を有する
膜としては、例えば、透明な誘電体(有機高分子、ガラ
ス等)の上に金属酸化物、金属窒化物または金属を蒸
着、スパッタリング、イオンプレーティング、塗布等の
方法によって形成された透明な膜を用いることができ
る。また、抵抗体(導電体)からなる層(膜)の面抵抗
値(単位はΩ□)は、周波数分散性もしくは周波数選択
性を有していてもよい。また、抵抗体(導電体)からな
る層(膜)の面抵抗値(単位はΩ□)は、異方性もしく
は偏波選択性を有していてもよい。
【0111】[第3の実施例]第3の実施例は、2層の
抵抗体(導電体)および3層の誘電体層からなる電波吸
収体およびその設計方法の例である。
【0112】図13は、順に配置された誘電体層51、
抵抗体(導電体)52、誘電体層53、抵抗体(導電
体)54および誘電体層55からなる電波吸収体50の
構成およびその電気的等価回路を示している。この電波
吸収体50では、誘電体層55が電波到来側に配置され
る。この電波吸収体50において、誘電体層51を第1
層とし、抵抗体(導電体)52を第2層とし、誘電体層
53を第3層とし、抵抗体(導電体)54を第4層と
し、誘電体層55を第5層とする。
【0113】本実施例においても、第1層、第3層、第
5層に対しては第1の実施例で示した漸化式(4)を用
い、第2層、第4層に対しては第1の実施例で示した漸
化式(5)を用いることによって、円偏波用電波反射減
衰体としての電波吸収体50の設計が可能である。
【0114】次に、本実施例における電波吸収体50の
設計の一例と、設計された電波吸収体50について計算
によって求めた特性を示す。この設計では、周波数f=
2.45(GHz)、R2=10(Ω□)、R4=405
(Ω□)、εr1 *=εr3 *=ε r5 *=2.7−j・0.0
3(2.45GHzにおいて)、μr1 *=μr3 *=μr5 *
=1−j・0、d1=1(mm)、d3=18.4(m
m)、d5=1(mm)とした。電波吸収体50に対す
る電波の入射角度が0度〜70度の場合において、設計
された電波吸収体50について計算によって求めた特
性、すなわちTE波、TM波および円偏波のそれぞれに
ついての入射角度と反射減衰量との関係を図14に示
す。
【0115】図14において、0度〜40度の入射角度
範囲に着目する。TE波、TM波の場合には共に入射角
度が約35度以上になると反射減衰量が20dB未満と
なっている。ところが、円偏波に対しては、この入射角
度範囲内において、20dB以上の反射減衰量を有して
いる。このことは、所望の入射角度範囲で円偏波に対し
て20dB以上の反射減衰量を有する電波吸収体が、必
ずしもTE波およびTM波の両直線偏波に対して20d
B以上の反射減衰量を有する必要がないことを示してい
る。
【0116】図14に示した特性の電波吸収体は、40
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量は共に20dB未満であ
り、円偏波に対する反射減衰量は20dB以上である電
波反射減衰体となる。また、図14に示した特性の電波
吸収体では、0度〜40度の電波入射角度範囲内の全域
において、円偏波に対する反射減衰量は20dB以上で
ある。
【0117】また、図14において、0度〜50度の入
射角度範囲に着目する。TE波、TM波の場合には共に
入射角度が約45度以上になると反射減衰量が15dB
未満となっている。ところが、円偏波に対しては、この
入射角度範囲内において、15dB以上の反射減衰量を
有している。このことは、所望の入射角度範囲で円偏波
に対して15dB以上の反射減衰量を有する電波吸収体
が、必ずしもTE波およびTM波の両直線偏波に対して
15dB以上の反射減衰量を有する必要がないことを示
している。
【0118】図14に示した特性の電波吸収体は、50
度の電波入射角度において、TE波に対する反射減衰量
とTM波に対する反射減衰量は共に15dB未満であ
り、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上である電
波反射減衰体となる。また、図14に示した特性の電波
吸収体では、0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域
において、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上で
ある。
【0119】電波吸収体50において、抵抗体(導電
体)と隣り合う層は、誘電体層であってもよいし、磁性
体層であってもよい。
【0120】また、電波吸収体50において、全ての層
を透明性もしくは透光性を有する層で構成してもよい。
この場合には、電波吸収体50も透明性もしくは透光性
を有することになる。
【0121】また、電波吸収体50において抵抗体(導
電体)52を金属板とした場合には、電波吸収体50
は、透明性もしくは透光性は有さないが、λ/4型構造
の電波吸収体となる。
【0122】また、電波吸収体50において、隣り合う
層間は、両面テープもしくは接着材によって接着されて
いてもよい。この場合には、両面テープもしくは接着材
による層の数分だけ、誘電体層の数が増える。
【0123】なお、電波反射減衰体としての電波吸収体
の形状は、平板形状であってもよいし、その他の形状で
あってもよい。その他の形状としては、多角錐形状、楔
形状または多波形状でもよいし、中空の多角錐形状、楔
形状または多波形状でもよいし、平板形状の部分の電波
到来方向に多角錐形状、楔形状または多波形状の部分が
追加された形状等でもよい。電波吸収体の形状を平板形
状以外の形状とする場合には、電波吸収体の各部分が空
間に占める比率を考慮して平面多層電波吸収体に近似す
ることによって、電波吸収体を設計することができる。
【0124】また、本実施の形態では、3つの実施例に
よって、3種類の構造の電波吸収体を示し、それらの設
計方法について説明したが、本実施の形態に係る円偏波
用電波吸収体の設計方法は、実施例で示した構造の電波
吸収体を設計する場合に限定されるわけではない。すな
わち、誘電体層(空気層も含む)、磁性体層(誘電体と
磁性体の混合された層を含む)、抵抗体(導電体)が、
如何ように積層された構造の電波吸収体であっても設計
可能である。
【0125】ここで、円偏波において、電波障害対策に
必要とされる20dBないし15dBの反射減衰量を有
する電波吸収体を実現しようとした場合について考え
る。0度〜20度程度の小さな入射角度においては、通
常、垂直入射において必要とされる反射減衰量を十分に
有していれば、20度までの入射角度においても、偏波
によらず必要とされる反射減衰量を実現できる。
【0126】しかしながら、20度以上の入射角度範囲
においては、TE波およびTM波に対する電波吸収特性
と円偏波に対する電波吸収特性が異なってくる。そこ
で、広い入射角度範囲において20dBないし15dB
の反射減衰量を有する円偏波用の電波吸収体を実現しよ
うとした場合には、40度および50度付近での複素反
射係数の制御が重要となる。
【0127】ただし、第2の実施例において示した複素
反射係数の入射角度に対する変化の様子から分かるよう
に、60度以上の大きな入射角度においては、電波吸収
体の複素反射係数の実部は、TE波の場合には負側に大
きくなり、TM波の場合には正側に大きくなっている。
また、円偏波に対する反射係数は、TE波に対する反射
係数とTM波に対する反射係数との平均となることか
ら、60度以上の大きな入射角度においては、円偏波に
対する電波吸収体の電波吸収特性は、TE波およびTM
波に対する電波吸収特性よりも優れた特性を有すること
は当然である。
【0128】以上説明したように、本実施の形態に係る
円偏波用電波反射減衰体の設計方法では、TE波とTM
波の両直線偏波に対して良好な反射減衰特性を有するよ
うに電波反射減衰体を設計するのではなく、TE波に対
する複素反射係数とTM波に対する複素反射係数との平
均の絶対値が所望の値以下になるように電波反射減衰体
を設計するようにしている。従って、本実施の形態によ
れば、円偏波の電波の反射を抑制するための円偏波用電
波反射減衰体を、容易に且つ適切に実現することが可能
になる。
【0129】ところで、本実施の形態に係る電波反射減
衰体には、以下の第1ないし第4の電波反射減衰体が含
まれる。
【0130】第1の電波反射減衰体は、図9に示した特
性の電波吸収体のように、40度の電波入射角度におい
て、TE波に対する反射減衰量とTM波に対する反射減
衰量の一方は20dB未満であり、円偏波に対する反射
減衰量は20dB以上であるものである。この第1の電
波反射減衰体において、0度〜40度の電波入射角度範
囲内の全域において、円偏波に対する反射減衰量は20
dB以上であってもよい。
【0131】第2の電波反射減衰体は、図14に示した
特性の電波吸収体のように、40度の電波入射角度にお
いて、TE波に対する反射減衰量とTM波に対する反射
減衰量は共に20dB未満であり、円偏波に対する反射
減衰量は20dB以上であるものである。この第2の電
波反射減衰体において、0度〜40度の電波入射角度範
囲内の全域において、円偏波に対する反射減衰量は20
dB以上であってもよい。
【0132】第3の電波反射減衰体は、図7に示した特
性の電波吸収体や図9に示した特性の電波吸収体のよう
に、50度の電波入射角度において、TE波に対する反
射減衰量とTM波に対する反射減衰量の一方は15dB
未満であり、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上
であるものである。この第3の電波反射減衰体におい
て、0度〜50度の電波入射角度範囲内の全域におい
て、円偏波に対する反射減衰量は15dB以上であって
もよい。
【0133】第4の電波反射減衰体は、図14に示した
特性の電波吸収体のように、50度の電波入射角度にお
いて、TE波に対する反射減衰量とTM波に対する反射
減衰量は共に15dB未満であり、円偏波に対する反射
減衰量は15dB以上であるものである。この第4の電
波反射減衰体において、0度〜50度の電波入射角度範
囲内の全域において、円偏波に対する反射減衰量は15
dB以上であってもよい。
【0134】このような本実施の形態に係る電波反射減
衰体によれば、TE波とTM波の両直線偏波に対しては
円偏波の電波に対する場合と同等の反射減衰特性を有す
る必要がないので、円偏波の電波に対して所望の反射減
衰特性を有する電波反射減衰体を、容易に且つ適切に実
現することが可能になる。
【0135】[第2の実施の形態]次に、本発明の第2
の実施の形態に係る円偏波用電波反射減衰体の評価方法
および電波反射減衰体評価装置について説明する。
【0136】本実施の形態に係る評価方法は、円偏波の
電波の反射を抑制するための円偏波用電波反射減衰体を
評価する方法であって、TE波に対する電波反射減衰体
の複素反射係数ΓTE *とTM波に対する電波反射減衰体
の複素反射係数ΓTM *とをそれぞれ独立に測定する手順
と、円偏波に対する電波反射減衰体の複素反射係数の絶
対値|ΓCP *|として、測定された2つの複素反射係数
の平均の絶対値|(ΓTE *+ΓTM *)/2|を求める手順
と、求められた円偏波に対する複素反射係数の絶対値を
用いて電波反射減衰体の評価を行う手順とを備えてい
る。
【0137】評価は、具体的には、第1の実施の形態で
説明した式(1)、またはこれと同等の式(2)を満足
するか否かを判断することによって行われる。
【0138】図15は、本実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。この評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であり、特に本実施の形態に係る評価方法を実現する
のに適した装置である。この評価装置は、電波反射減衰
体1に対して直線偏波の電波を放射する送信アンテナ6
1と、この送信アンテナ61より放射されて、電波反射
減衰体1で反射された直線偏波の電波を受信する受信す
る受信アンテナ62と、送信アンテナ61および受信ア
ンテナ62に接続されたネットワークアナライザー63
と、このネットワークアナライザー63に接続された制
御用コンピューター64とを備えている。
【0139】送信アンテナ61と受信アンテナ62は、
直線偏波用のアンテナであり、ダイポールアンテナ、ル
ープアンテナ、ホーンアンテナ、対数周期アンテナ、ア
レーアンテナ、バイコニカルアンテナ、八木・宇多アン
テナ等が用いられる。また、送信アンテナ61と受信ア
ンテナ62は、向きを変えることによって、TE波の送
受信とTM波の送受信とが可能になっている。
【0140】ネットワークアナライザー63は、送信ア
ンテナ61に与える信号と受信アンテナ62より得られ
る信号とに基づいて、電波反射減衰体1のインピーダン
ス等の特性を測定する。
【0141】制御用コンピューター64は、制御用のプ
ログラムを実行することにより、ネットワークアナライ
ザー63を制御すると共に、ネットワークアナライザー
63の測定結果を取得し、その取得した測定結果に基づ
いて、所望の演算等を行い、演算の基礎となる測定結果
や演算結果、それらをグラフ化した内容、および評価対
象となる電波反射減衰体1が所望の電波減衰特性を満足
しているかの判定結果等をディスプレイに表示したり、
制御用コンピューター64に接続されたプリンターにそ
れらの結果を出力できるようになっている。これによっ
て、測定者はそれらの結果を把握することが可能とな
る。
【0142】また、制御用コンピューター64は、前記
した結果を制御用コンピューター64に内蔵されたハー
ドディスク等の固定記録媒体や、磁気ディスク、光ディ
スク、光磁気ディスクおよび電子的メモリー等の取り外
し可能な記録媒体等に、電子データとして保存すること
が可能である。また、制御用コンピューター64は、ロ
ーカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワー
ク(WAN)等のネットワークによって接続された他の
コンピューターに前記した結果を転送することが可能で
ある。また、上述のようにして保存されたデータや転送
されたデータを用いて、追加の演算処理や複数の電波反
射減衰体の測定結果を集合的に演算処理することも可能
である。
【0143】上記した制御用コンピューター64の機能
は、ネットワークアナライザー63に内蔵されていれば
ネットワークアナライザー63のみで実行可能であり、
必要な機器がネットワークアナライザー63に接続され
ていれば、ネットワークアナライザー63およびそれに
接続された機器のみで実行可能である。
【0144】本実施の形態では特に、制御用コンピュー
ター64は、ネットワークアナライザー63の測定結果
に基づいて、TE波に対する電波反射減衰体1の複素反
射係数とTM波に対する電波反射減衰体1の複素反射係
数とを求め、更に、円偏波に対する電波反射減衰体1の
複素反射係数の絶対値として、測定された2つの複素反
射係数の平均の絶対値を求める。
【0145】送信アンテナ61、受信アンテナ62、ネ
ットワークアナライザー63および制御用コンピュータ
ー64は本発明における測定手段に対応し、制御用コン
ピューター64は本発明における演算手段に対応する。
【0146】なお、本実施の形態における評価対象とな
る電波反射減衰体1は、第1の実施の形態と同様に、電
波吸収体に限らず、例えば図2ないし図4に示したよう
な、電波吸収体以外の電波反射減衰体であってもよい。
本実施の形態では、どのような形態の電波反射減衰体1
であっても、TE波、TM波それぞれに対する複素反射
係数を独立に測定することにより、円偏波に対する複素
反射係数の絶対値を計算することができ、これにより、
電波反射減衰体1の評価が可能になる。
【0147】次に、本実施の形態に係る評価方法の妥当
性について検証した結果について説明する。ここでは、
第1の実施の形態における第2の実施例で示した構成の
電波吸収体40を試作し、その反射減衰特性(電波吸収
特性)を測定、評価した結果を示す。ただし、試作した
電波吸収体40における第3層の厚みd3は5mmとし
た。また、試作した電波吸収体40の材料定数、すなわ
ち複素比誘電率は、第2の実施例で示した値とは異なっ
ている。
【0148】電波吸収体40の反射減衰特性の測定は電
波暗室内で行った。また、円偏波に対する反射減衰特性
の測定の際には円偏波用のアンテナを用い、TE波およ
びTM波に対する反射減衰特性の測定の際には直線偏波
用のアンテナを用いた。
【0149】図16は、周波数範囲4GHz〜7GH
z、入射角度40度における、試作した電波吸収体40
の電波反射減衰特性、すなわち周波数と反射減衰量との
関係を示している。図16において、TE波、TM波お
よび円偏波に対する特性は測定によって得られたもので
ある。また、図16において、“計算値”とは、TE波
およびTM波の各複素反射係数の測定値より計算によっ
て求めた、円偏波に対する反射減衰量を表している。
【0150】すなわち、TE波およびTM波に対する各
複素反射係数の測定値を、それぞれΓmeasTE * およびΓ
measTM *で表すと、円偏波に対する反射減衰量の計算値
cal CP(単位はdB)は、以下の式で求められる。
【0151】 ScalCP=−20log|(ΓmeasTE *measTM *)/2|
【0152】また、円偏波に対する複素反射係数の実部
および虚部の計算値は、それぞれ以下の式におけるGお
よびBである。
【0153】(ΓmeasTE *measTM *)/2=G+jB
【0154】図16より、円偏波に対する測定値と計算
値は、それらの差の大きさが0dB〜3.3dB程度で
あり、概ね一致しているのが分かる。特に、測定誤差が
小さい、反射減衰量が30dB以下の領域においては、
測定値と計算値の差の大きさは0dB〜1.4dB程度
であり、測定値と計算値が良好に一致している。
【0155】この結果より、TE波に対する複素反射係
数をΓTE *とし、TM波に対する複素反射係数をΓTM *
し、円偏波に対する複素反射係数をΓCP *としたとき、
以下の等式が成り立っていることが分かる。
【0156】|ΓCP *|=|(ΓTE *TM *)/2|
【0157】図17は、周波数範囲4GHz〜7GH
z、入射角度40度における、試作した電波吸収体40
の複素反射係数の測定値および計算値を示している。図
17より、反射減衰量の場合と同様に、電波吸収体40
の複素反射係数においても測定値と計算値は概ね一致し
ていることが分かる。
【0158】図18は、周波数範囲4GHz〜7GH
z、入射角度0度(実際には1.7度)における、試作
した電波吸収体40の反射減衰量の測定値を示してい
る。図18より、垂直入射においては、直線偏波に対す
る反射減衰量と円偏波に対する反射減衰量は、それらの
差の大きさが0.2dB〜1.8dB程度であり、測定
誤差を有するものの、概ね一致していることが分かる。
【0159】以上説明したように、本実施の形態に係る
円偏波用電波反射減衰体の評価方法および電波反射減衰
体評価装置では、TE波とTM波の両直線偏波に対して
良好な反射減衰特性を有するか否かによって電波反射減
衰体を評価するのではなく、円偏波に対する複素反射係
数の絶対値を用いて電波反射減衰体の評価を行うように
している。従って、本実施の形態によれば、円偏波の電
波の反射を抑制するための円偏波用電波反射減衰体を、
容易に且つ適切に評価することが可能になる。
【0160】[第3の実施の形態]次に、本発明の第3
の実施の形態に係る円偏波用電波反射減衰体の評価方法
および電波反射減衰体評価装置について説明する。
【0161】本実施の形態に係る評価方法は、円偏波の
電波の反射を抑制するための円偏波用電波反射減衰体を
評価する方法であって、電波反射減衰体に対して円偏波
の電波を放射し、電波反射減衰体で反射されて、放射さ
れた電波とは逆旋となる円偏波の電波を受信して、円偏
波に対する電波反射減衰体の反射減衰量を求める手順
と、求められた反射減衰量を用いて電波反射減衰体の評
価を行う手順とを備えている。評価は、具体的には、求
められた反射減衰量が所望の値以上か否かを判断するこ
とによって行われる。本実施の形態では、特に、後述す
るように電波暗箱を用いて、簡便な評価を可能としてい
る。
【0162】図19は、本実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。この評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であり、特に本実施の形態に係る評価方法を実現する
のに適した装置である。
【0163】本実施の形態に係る評価装置70は、内壁
の少なくとも一部に不要反射抑制用の電波吸収体73が
配置された筐体72を有する電波暗箱71と、電波暗箱
71内に設けられ、評価対象の電波反射減衰体74が設
置される設置部75と、電波暗箱71内に設置され、電
波反射減衰体74に対して円偏波の電波を放射する送信
手段としての送信アンテナ76と、電波暗箱71内に設
置され、円偏波に対する電波反射減衰体74の反射減衰
量を求めるために、電波反射減衰体74で反射されて、
送信アンテナ76より放射された電波とは逆旋となる円
偏波の電波を受信する受信手段としての受信アンテナ7
7とを備えている。
【0164】筐体72は、金属板によって、直方体形状
に形成されている。筐体72のうち、直方体の1つの面
に対応する部分は扉72Aになっている。この扉72A
の内面に設置部75が設けられている。このように設置
部75を扉72Aの内面に設けることにより、電波反射
減衰体74の交換が容易になる。
【0165】設置部75に対向する筐体72の内面の近
傍には、アンテナ支持具170が設けられている。送信
アンテナ76および受信アンテナ77は、このアンテナ
支持具170に取り付けられている。アンテナ支持具1
70は、電波反射量が極めて小さい素材からなることが
好ましい。また、アンテナ支持具170は、アンテナ7
6,77を支持するための機械的強度を有する必要があ
る。また、アンテナ支持具170の電波反射量を低減す
べく、アンテナ支持具170に電波吸収体175を取り
付けてもよい。
【0166】設置部75から電波反射減衰体74を取り
外した状態では、送信アンテナ76および受信アンテナ
77は、扉72Aの内面である金属面に対向するように
なる。また、電波吸収体73は、扉72Aの内面を除
く、筐体72の内面に配置されている。
【0167】送信アンテナ76および受信アンテナ77
は、互いに逆旋の円偏波用のアンテナになっている。円
偏波用のアンテナとしては、ヘリカルアンテナ、スパイ
ラルアンテナ、円偏波用パッチアンテナ、円偏波用パラ
ボラアンテナ等を用いることができる。
【0168】また、送信アンテナ76は、同軸線ケーブ
ル171を介して、筐体72に取り付けられたコネクタ
172に着脱自在に接続されている。同様に、受信アン
テナ77は、同軸線ケーブル173を介して、筐体72
に取り付けられたコネクタ174に着脱自在に接続され
ている。そのため、送信アンテナ76および受信アンテ
ナ77は、取り外しが可能であり、周波数帯の異なるア
ンテナや偏波の異なるアンテナに変更することができる
ようになっている。コネクタ172,174には、それ
ぞれ同軸線ケーブル78,79が接続されている。
【0169】評価装置70を含む評価システムは、送信
アンテナ76および受信アンテナ77に、それぞれ同軸
線ケーブル171,173、コネクタ172,174お
よび同軸線ケーブル78,79を介して接続されたネッ
トワークアナライザー80と、このネットワークアナラ
イザー80に接続された制御用コンピューター81とを
備えている。ネットワークアナライザー80および制御
用コンピューター81の基本的な機能は、それぞれ第2
の実施の形態におけるネットワークアナライザー63お
よび制御用コンピューター64と同様である。
【0170】図20は、評価装置70を示す斜視図であ
る。図20に示したように、筐体72のうち、扉72A
に対向する面の部分、すなわち送信アンテナ76および
受信アンテナ77が取り付けられる部分72Bは、ビス
82またはボルト等によって、筐体72の他の部分に対
して着脱可能になっている。また、この送信アンテナ7
6および受信アンテナ77が取り付けられる部分72B
は扉としてもよい。この場合には、送信アンテナ76お
よび受信アンテナ77の設置および交換が容易になる。
【0171】図21は、扉72Aを示す説明図である。
図21において、(a)は扉72Aの上面図、(b)は
電波到来側から見た扉72Aの正面図、(c)は扉72
Aの側断面図、(d)は(a)に示した扉72Aの上面
図の一部を拡大して示した図である。図21に示したよ
うに、扉72Aの内面に設けられた設置部75は、評価
対象の電波反射減衰体74を着脱自在に保持する保持部
材83を有している。保持部材83は、矩形の電波反射
減衰体74の左右の各端部および下端部に対応する位置
に設けられている。従って、これらの保持部材83によ
って囲まれた部分に対して、上方より電波反射減衰体7
4を出し入れすることができるようになっている。電波
反射減衰体74は、左右の保持部材83によって案内さ
れて、設置部75に対して設置され、また、設置部75
より取り外されるようになっている。
【0172】図21中の(d)に示したように、保持部
材83は、例えば、扉72Aに対して両面テープ86に
よって接着され、更にビス84およびナット85によっ
て扉72Aに固定されている。
【0173】このように、電波反射減衰体74を着脱自
在に保持する保持部材83を設けることにより、電波反
射減衰体74の交換が容易になる。また、保持部材83
を扉72Aに設けた場合には、電波反射減衰体74の交
換がさらに容易になる。
【0174】保持部材83は、電波反射量が極めて小さ
い素材からなることが好ましい。また、保持部材83
は、電波反射減衰体74を保持するための機械的強度を
有する必要もある。保持部材83を構成する素材として
は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、
ABS樹脂、アクリル、テフロン(登録商標)、塩化ビ
ニール等の誘電体材料(有機高分子)を用いることがで
きる。
【0175】ただし、電波到来方向から見て、保持部材
83が電波暗箱71内の不要反射抑制用の電波吸収体7
3に隠れる場合には、保持部材83による反射波は存在
しないため、保持部材83は特に電波反射量が極めて小
さい素材からなる必要はない。
【0176】なお、図19ないし図21に示した電波暗
箱71は、扉72Aの外周部一円が筐体72の他の部分
に電気的に接続された場合には、電磁的遮蔽性能を有す
る。扉72Aを筐体72の他の部分に電気的に接続する
手段としては、フィンガーコンタクトや導電性メッシュ
等を用いることができる。
【0177】次に、評価装置70を含む評価システムの
作用について説明する。評価装置70では、電波暗箱7
1内の設置部75に設置された電波反射減衰体74に対
して、送信アンテナ76によって円偏波の電波が放射さ
れ、電波反射減衰体74で反射されて、送信アンテナ7
6より放射された電波とは逆旋となる円偏波の電波が受
信アンテナ77によって受信される。ネットワークアナ
ライザー80は、受信アンテナ77より得られる信号に
基づいて、電波反射減衰体74における電波反射量を測
定する。
【0178】また、本実施の形態では、電波反射減衰体
74の代りに、電波反射減衰体74と同面積の金属平面
を有する金属板を、その金属平面が電波反射減衰体74
の電波到来側表面と同位置となるように設置した状態
で、送信アンテナ76から電波を放射させ、金属板の金
属平面で反射された電波を受信アンテナ77によって受
信し、ネットワークアナライザー80によって、金属平
面における電波反射量も測定する。そして、制御用コン
ピューター81によって、金属平面における電波反射量
と電波反射減衰体74における電波反射量とを比較する
ことによって、電波反射減衰体74の反射減衰量を求
め、この反射減衰量が所望の値以上か否かを判断するこ
とによって、電波反射減衰体74の評価を行う。ただ
し、電波反射減衰体74が厚い場合等においては、電波
反射減衰体74と同じ厚さの金属板を用いる必要はな
く、電波反射減衰体74と同じ厚さとなるように厚さを
調整すべく、薄い金属板の電波到来側とは反対側の面に
発泡体等を設置してなる積層板を用いてもよい。
【0179】また、本実施の形態では、扉72Aの内面
である金属面を上記金属板の金属平面の代りに用いるこ
とも可能である。すなわち、設置部75から電波反射減
衰体74を取り外した状態で、送信アンテナ76から電
波を放射させ、扉72Aの内面である金属面で反射され
た電波を受信アンテナ77によって受信し、ネットワー
クアナライザー80によって、金属面における電波反射
量を測定することも可能である。この場合には、扉72
Aの内面である金属面の複素反射係数が、金属平面が電
波反射減衰体74の電波到来側表面と同位置となるよう
に設置された状態における金属平面の複素反射係数と等
しくなるように、制御用コンピューター81によって、
電波反射減衰体74の厚み分の位相補正演算を行うよう
にする。
【0180】ところで、図19に示したように、評価装
置70において、測定すべき電波は、送信アンテナ76
より放射され、途中で電波吸収体73によって反射され
ることなく電波反射減衰体74に達し、この電波反射減
衰体74によって反射され、途中で電波吸収体73によ
って反射されることなく受信アンテナ77に到達する電
波である。以下、この電波の経路を経路R1と言う。受
信アンテナ77に到達する電波には、経路R1を経由し
た電波の他に、例えば、図19に示したような経路R2
や経路R3を経由した電波もある。経路R2を経由した
電波は、送信アンテナ76より放射され、途中で1回、
電波吸収体73によって反射されてから電波反射減衰体
74に達し、この電波反射減衰体74によって反射さ
れ、途中で電波吸収体73によって反射されることなく
受信アンテナ77に到達した電波である。経路R3を経
由した電波は、送信アンテナ76より放射され、途中で
1回、電波吸収体73によって反射されてから電波反射
減衰体74に達し、この電波反射減衰体74によって反
射され、途中で1回、電波吸収体73によって反射され
てから受信アンテナ77に到達した電波である。
【0181】本実施の形態では、送信アンテナ76と受
信アンテナ77が互いに逆旋の円偏波用のアンテナにな
っていることから、経路R2や経路R3を経由した不要
な電波の影響を低減することができる。以下、これにつ
いて説明する。ここでは、例えば、送信アンテナ76は
右旋円偏波の電波を放射し、受信アンテナ77は左旋円
偏波の電波を受信するものとする。経路R1の場合に
は、送信アンテナ76より放射された右旋円偏波の電波
は、電波反射減衰体74によって反射されて左旋円偏波
の電波となり、受信アンテナ77によって受信される。
経路R2の場合には、受信アンテナ77に到達する電波
は、途中で1回、電波吸収体73によって反射されてい
ることから、右旋円偏波となっている。従って、経路R
2を経由した電波は、ほとんど受信アンテナ77によっ
て受信されない。また、経路R3の場合には、受信アン
テナ77に到達する電波は、途中で2回、電波吸収体7
3によって反射されていることから、左旋円偏波となっ
ている。従って、経路R2を経由した電波は、受信アン
テナ77によって受信されるが、途中で2回、電波吸収
体73によって電波吸収されていることから、経路R1
を経由した電波に比べて極めて低い受信(電界)レベル
となるために、測定結果に与える影響は少ない。
【0182】このように、本実施の形態に係る評価装置
70によれば、電波暗箱71内の不要反射が測定対象で
ある電波反射減衰体74の反射減衰特性の測定結果に与
える影響を低減することができる。しかしながら、評価
対象の電波反射減衰体74の反射減衰特性が極めて良好
であり、非常に低い受信(電界)レベルで電波反射減衰
体74の評価を行う場合や、金属面または評価対象の電
波反射減衰体74と、送信アンテナ76および受信アン
テナ77との間における多重反射による受信(電界)レ
ベルの誤差が大きい場合には、電波暗箱71内の不要反
射が、測定対象である電波反射減衰体74の反射減衰特
性の測定結果に与える誤差が大きくなる。このような場
合には、ネットワークアナライザー79のタイムドメイ
ン機能(タイムゲート処理)により、評価対象の電波反
射減衰体74および電波反射量の基準となる金属面から
の反射波のみを抽出することによって、タイムドメイン
機能を用いない場合よりも高精度な反射減衰特性の測定
および評価が可能となる。
【0183】ところで、評価される電波反射減衰体が、
0度〜X度(X:要求最大入射角度)の入射角度範囲に
おいて、要求反射減衰量AdB以上であるか否かを評価
する場合において、評価される電波反射減衰体の設計特
性が、0度〜X度の入射角度範囲において反射減衰量が
AdB以上であり、且つ入射角度X度における反射減衰
量CdBが、入射角度0度における反射減衰量BdBよ
りも大きい場合には、以下のような簡便な方法で電波反
射減衰体の評価を行うことが可能である。すなわち、上
記の場合には、垂直入射における電波反射減衰体の反射
減衰量を測定し、この反射減衰量が要求反射減衰量Ad
B以上であれば、0度〜X度の要求入射角度範囲におい
て、電波反射減衰体の反射減衰量が要求反射減衰量Ad
B以上であると推定することが可能である。ここで垂直
入射とは、厳密な垂直入射だけではなく、斜入射角度が
5度以下で、ほぼ垂直入射とみなせる場合も含む。
【0184】上記の簡便な評価方法を適用できる例とし
ては、例えば、図12に示した特性の電波吸収体におい
て、X=40、A=20dB(程度)とした場合があ
る。
【0185】このようなことから、電波反射減衰体の最
終製品では、要求される入射角度範囲における反射減衰
特性を測定すべきであるが、電波反射減衰体の中間製品
に対する中間検査等では、図19に示したような垂直入
射における電波反射減衰体の反射減衰量を測定する評価
装置の利用が有用である。ここで、中間製品とは、電波
反射減衰体としての構造は最終製品と同様もしくは最終
製品を模擬したものを言う。また、最終製品とは、電波
反射減衰体としての基本的構造は中間製品と同様である
が、設置または施工を行えるように設置手段または施工
手段を備えたものを言い、電波吸収パネル等を指す。
【0186】図22は、本実施の形態に係る評価装置7
0の他の構成例を示す説明図である。この例では、設置
部75に対向する筐体72の内面の近傍にアンテナ支持
具170が設けられている。このアンテナ支持具170
には、2組の送信アンテナおよび受信アンテナが設置さ
れている。送信アンテナ76Aと受信アンテナ77A
は、電波反射減衰体74に対して0度に近い所定の第1
の入射角度で電波を入射させ、且つ反射した電波を受信
する位置に配置されている。送信アンテナ76Bと受信
アンテナ77Bは、電波反射減衰体74に対して、第1
の入射角度よりも大きな所定の第2の入射角度で電波を
入射させ、且つ反射した電波を受信する位置に配置され
ている。アンテナ支持具170には電波吸収体175が
取り付けられていてもよい。
【0187】送信アンテナ76A,76Bは、同軸線ケ
ーブル171A,171Bを介して、筐体72に取り付
けられたコネクタ172A,172Bに着脱自在に接続
されている。同様に、受信アンテナ77A,77Bは、
同軸線ケーブル173A,173Bを介して、筐体72
に取り付けられたコネクタ174A,174Bに着脱自
在に接続されている。コネクタ172A,172B,1
74A,174Bには、それぞれ同軸線ケーブル78
A,78B,79A,79Bが接続されている。
【0188】送信アンテナ76A,76Bは、それぞれ
同軸線ケーブル171A,171B、コネクタ172
A,172B、および同軸線ケーブル78A,78Bを
介して信号線切換機87に接続されている。信号線切換
機87はネットワークアナライザー80に接続されてい
る。信号線切換機87は、送信アンテナ76A,76B
の一方を選択的にネットワークアナライザー80に接続
する。同様に、受信アンテナ77A,77Bは、それぞ
れ同軸線ケーブル173A,173B、コネクタ174
A,174B、および同軸線ケーブル79A,79Bを
介して信号線切換機88に接続されている。信号線切換
機88はネットワークアナライザー80に接続されてい
る。信号線切換機88は、信号線切換機87による送信
アンテナ76A,76Bの選択に対応させて、受信アン
テナ77A,77Bの一方を選択的にネットワークアナ
ライザー80に接続する。
【0189】また、図22に示した例では、筐体72に
おいて、アンテナ支持具170を介して送信アンテナ7
6A,76Bおよび受信アンテナ77A,77Bが取り
付けられる部分は、平板状ではなく、屋根形に形成され
ている。図22に示した評価装置70のその他の構成
は、図19に示した評価装置70と同様である。
【0190】図22に示した構成によれば、信号線切換
機87,88によって、使用する送信アンテナと受信ア
ンテナの組を切り換えることができ、電波暗箱71内に
おいても複数の入射角度に対して電波反射減衰体74の
反射減衰特性を測定することができる。
【0191】なお、本実施の形態において、図22に示
した例のように、電波暗箱71の形状は、直方体に限定
されない。また、電波暗箱71を構成する面は曲面であ
ってもよい。
【0192】図23ないし図25は、本実施の形態に係
る評価装置70の更に他の構成例を示す説明図である。
図23は、この例における評価装置70の斜視図であ
る。図24は、図23に示した評価装置70の側面に平
行な断面を示す断面図である。図25は、図23に示し
た評価装置70の正面に平行な断面を示す断面図であ
る。
【0193】この例では、評価装置70は、内壁の少な
くとも一部に不要反射抑制用の電波吸収体203が配置
された筐体202を有する電波暗箱201を備えてい
る。電波暗箱201は、正面、背面および両側面に配置
された4つの壁部211〜214と、天井部215と、
底部216とを有している。両側面に配置された壁部2
13,214は、それぞれ開口213A,214Aを有
している。開口213A,214Aは、壁部213,2
14の高さ方向の途中の位置から底部216にかけて形
成されている。開口213A,214Aは、電波暗箱2
01外から電波暗箱201内へ評価対象の電波反射減衰
体225を挿入可能とする。開口213A,214A
は、本発明における挿入部に対応する。
【0194】評価装置70は、更に、開口213A,2
14Aを貫通するように、底部216に配置された2本
のレール221と、このレール221に沿って移動する
可動台222とを備えている。可動台222は、レール
221上を走行するキャスター223を有している。可
動台222の上には、評価対象の電波反射減衰体225
が設置されるようになっている。また、レール221の
両端部には、可動台222の移動範囲を制限するための
ストッパー224が設けられている。電波反射減衰体2
25は、例えばパネル化された電波吸収体であってもよ
い。
【0195】可動台222は、評価対象の電波反射減衰
体225によって電波的に隠れる場合には金属によって
形成されていてもよい。可動台222が、電波の回折等
によって、評価に対して電波的な影響を与える場合に
は、図24および図25に示したように、可動台222
の脚部や構造的な支持部に電波吸収体226を取り付け
てもよい。
【0196】電波暗箱201内には、アーチ状のアンテ
ナ支持具230が設けられている。アンテナ支持具23
0は、天井部215に固定されている。アンテナ支持具
230は、電波反射量が極めて小さい素材からなること
が好ましい。また、アンテナ支持具230は、後述する
アンテナを支持するための機械的強度を有する必要があ
る。また、アンテナ支持具230の電波反射量を低減す
べく、図24に示したように、アンテナ支持具230に
電波吸収体239を取り付けてもよい。
【0197】アンテナ支持具230には、送信手段とし
ての4つの送信アンテナ231A〜231Dと、受信手
段としての4つの受信アンテナ241A〜241Dが取
り付けられている。
【0198】送信アンテナ231A〜231Dは円偏波
の電波を放射する。受信アンテナ241A〜241D
は、円偏波に対する電波反射減衰体225の反射減衰量
を求めるために、電波反射減衰体225で反射されて、
送信アンテナ231A〜231Dより放射された電波と
は逆旋となる円偏波の電波を受信する。
【0199】送信アンテナ231Aと受信アンテナ24
1Aは、電波反射減衰体225に対して0度に近い所定
の第1の入射角度で電波を入射させ、且つ反射した電波
を受信する位置に配置されている。送信アンテナ231
Bと受信アンテナ241Bは、電波反射減衰体225に
対して、第1の入射角度よりも大きな所定の第2の入射
角度で電波を入射させ、且つ反射した電波を受信する位
置に配置されている。送信アンテナ231Cと受信アン
テナ241Cは、電波反射減衰体225に対して、第2
の入射角度よりも大きな所定の第3の入射角度で電波を
入射させ、且つ反射した電波を受信する位置に配置され
ている。送信アンテナ231Dと受信アンテナ241D
は、電波反射減衰体225に対して、第3の入射角度よ
りも大きな所定の第4の入射角度で電波を入射させ、且
つ反射した電波を受信する位置に配置されている。
【0200】送信アンテナ231A〜231Dは、それ
ぞれ、同軸線ケーブル232A〜232Dと、筐体20
2に取り付けられたコネクタ233A〜233Dと、同
軸線ケーブル234A〜234Dとを介して、信号線切
換機235に接続されている。信号線切換機235は、
高周波用アンプ236を介して、ネットワークアナライ
ザー250に接続されている。信号線切換機235は、
送信アンテナ231A〜231Dのうちのいずれかを選
択的に高周波用アンプ236に接続する。
【0201】受信アンテナ241A〜241Dは、それ
ぞれ、同軸線ケーブル242A〜242Dと、筐体20
2に取り付けられたコネクタ243A〜243Dと、同
軸線ケーブル244A〜244Dとを介して、信号線切
換機245に接続されている。信号線切換機245はネ
ットワークアナライザー250に接続されている。信号
線切換機245は、信号線切換機235による送信アン
テナ231A〜231Dの選択に対応させて、受信アン
テナ241A〜241Dのうちのいずれかを選択的にネ
ットワークアナライザー250に接続する。
【0202】ネットワークアナライザー250は制御用
コンピューター251に接続されている。制御用コンピ
ューター251には、評価結果等の印刷に用いられるプ
リンタ252が接続されている。ネットワークアナライ
ザー250および制御用コンピューター251の基本的
な機能は、それぞれ第2の実施の形態におけるネットワ
ークアナライザー63および制御用コンピューター64
と同様である。また、高周波用アンプ236を、ネット
ワークアナライザー250と送信側の信号線切換機23
5との間に挿入することにより、ネットワークアナライ
ザ250からの出力を高周波用アンプ236で増幅し
て、送信アンテナ231A〜231Dに送出することが
可能になる。
【0203】図23ないし図25に示した例によれば、
信号線切換機235,245によって、使用する送信ア
ンテナと受信アンテナの組を切り換えることができ、電
波暗箱201内においても複数の入射角度に対して電波
反射減衰体225の反射減衰特性を測定することができ
る。
【0204】また、図23ないし図25に示した例で
は、電波暗箱201は開口213A,214Aを有して
いる。従って、この開口213A,214Aより、評価
対象の電波反射減衰体225を電波暗箱201内に挿入
することによって、電波反射減衰体225の反射減衰特
性の評価を行うことが可能になる。また、この例では、
図25に示したように、開口213A,214Aは、電
波暗箱201の両側面に設けられている。従って、電波
暗箱201の両側面から、評価対象の電波反射減衰体2
25を電波暗箱201内に挿入することができる。な
お、電波暗箱201に設けられる開口は、1つであって
もよい。
【0205】また、この例では、評価対象の電波反射減
衰体225を、可動台222に載せて、電波暗箱201
内に挿入するようにしている。従って、評価対象の電波
反射減衰体225の重量が大きい場合でも、電波反射減
衰体225を容易に電波暗箱201内に挿入することが
可能である。また、この例では、可動台222は、電波
暗箱201の底部216に配置されたレール221に沿
って移動する。従って、電波暗箱201内の的確な位置
に電波反射減衰体225を挿入することが可能である。
また、この例では、レール221の端部にストッパー2
24を設けている。従って、可動台222がレール22
1から落ちることを防止することができる。
【0206】また、開口213A,214Bが電波暗箱
201の両側面に設けられている場合には、電波暗箱2
01内を通過するように、可動台222を移動させるこ
とが可能になる。この場合、更に、可動台222を自走
および自動制御可能にすれば、電波反射減衰体225の
連続生産ラインにおける検査に好適となる。
【0207】筐体202の内壁、可動台222およびア
ンテナ支持具230に取り付けられる電波吸収体20
3,226,239は、マジックファスナー(登録商
標)や両面テープによって取り付けられるようにしても
よい。これにより、電波吸収体203,226,239
の脱着が可能となる。この場合には、電波吸収性能の異
なる電波吸収体との交換が容易になり、また電波暗箱2
01の移設等も容易に行うことが可能となる。
【0208】以上説明したように、本実施の形態に係る
円偏波用電波反射減衰体の評価方法および電波反射減衰
体評価装置では、TE波とTM波の両直線偏波に対して
良好な反射減衰特性を有するか否かによって電波反射減
衰体を評価するのではなく、円偏波に対する反射減衰量
を用いて電波反射減衰体の評価を行うようにしている。
従って、本実施の形態によれば、円偏波の電波の反射を
抑制するための円偏波用電波反射減衰体を、容易に且つ
適切に評価することが可能になる。また、これにより、
円偏波の電波に対して所望の反射減衰特性を有する電波
反射減衰体を容易に且つ適切に実現することが可能にな
る。
【0209】[第4の実施の形態]次に、本発明の第4
の実施の形態に係る円偏波用電波反射減衰体の評価方法
および電波反射減衰体評価装置について説明する。
【0210】本実施の形態に係る評価方法は、電波暗箱
を用いずに電波暗室を用いて電波反射減衰体の反射減衰
量の測定を行う点を除いて、第3の実施の形態に係る評
価方法と同様である。
【0211】図26は、本実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。この評価装置
は、電波の反射を抑制するための電波反射減衰体の円偏
波に対する反射減衰特性を評価するために用いられる装
置であり、特に本実施の形態に係る評価方法を実現する
のに適した装置である。
【0212】本実施の形態に係る評価装置は、電波暗室
90内に設置されたアーチ状のアンテナ支持具92を備
えている。電波暗室90の天井、壁および床には電波吸
収体91が設置されている。評価対象の電波反射減衰体
100は、例えば台99を介して、電波暗室90の床上
に配置されるようになっている。台99は、発泡スチロ
ール等の電波透過体に近い材料によって形成されてい
る。
【0213】本実施の形態に係る評価装置は、更に、ア
ンテナ支持具92に取り付けられ、電波反射減衰体10
0に対して円偏波の電波を放射する送信手段としての送
信アンテナ93と、アンテナ支持具92に取り付けら
れ、円偏波に対する電波反射減衰体100の反射減衰量
を求めるために、電波反射減衰体100で反射されて、
送信アンテナ93より放射された電波とは逆旋となる円
偏波の電波を受信する受信手段としての受信アンテナ9
4とを備えている。
【0214】送信アンテナ93と受信アンテナ94は、
アンテナ支持具92に対して移動可能に取り付けられて
いる。
【0215】評価装置を含む評価システムは、送信アン
テナ93および受信アンテナ94に、それぞれ同軸線ケ
ーブル95,96を介して接続されたネットワークアナ
ライザー97と、このネットワークアナライザー97に
接続された制御用コンピューター98とを備えている。
ネットワークアナライザー97および制御用コンピュー
ター98の基本的な機能は、それぞれ第2の実施の形態
におけるネットワークアナライザー63および制御用コ
ンピューター64と同様である。
【0216】次に、本実施の形態に係る評価装置を含む
評価システムの作用について説明する。この評価システ
ムでは、電波反射減衰体100に対して、送信アンテナ
93によって円偏波の電波が放射され、電波反射減衰体
100で反射されて、送信アンテナ93より放射された
電波とは逆旋となる円偏波の電波が受信アンテナ94に
よって受信される。ネットワークアナライザー97は、
受信アンテナ94より得られる信号に基づいて、電波反
射減衰体100における電波反射量を測定する。また、
本実施の形態では、電波反射減衰体100の代りに金属
板を設置した状態で、送信アンテナ93から電波を放射
させ、金属面で反射された電波を受信アンテナ94によ
って受信し、ネットワークアナライザー97によって金
属面における電波反射量も測定する。そして、制御用コ
ンピューター98によって、金属面における電波反射量
と電波反射減衰体100における電波反射量とを比較す
ることによって、電波反射減衰体100の反射減衰量を
求め、この反射減衰量が所望の値以上か否かを判断する
ことによって、電波反射減衰体100の評価を行う。
【0217】本実施の形態では、送信アンテナ93およ
び受信アンテナ94を移動させることにより、斜入射に
おける電波反射減衰体100の反射減衰特性を測定する
ことができる。
【0218】本実施の形態において、アンテナ支持具9
2は、電波透過体に近い材料で形成されていることが好
ましい。このアンテナ支持具92における電波の反射が
問題になる場合には、アンテナ支持具92にも電波吸収
体を取り付けることによって、アンテナ支持具92にお
ける電波の反射によって生じる測定誤差を低減すること
ができる。
【0219】また、本実施の形態において、アンテナ9
3,94の移動を自動制御化してもよい。これにより、
測定の効率化を図ることができる。
【0220】本実施の形態におけるその他の構成、作用
および効果は第3の実施の形態と同様である。
【0221】[第5の実施の形態]次に、本発明の第5
の実施の形態に係る電波反射減衰体評価装置について説
明する。
【0222】図27は、本実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。この評価装置
は、第4の実施の形態におけるアンテナ支持具92、送
信アンテナ93および受信アンテナ94の代りに、電波
暗室90内に設置されたアンテナ支持具101と、この
アンテナ支持具101に取り付けられた3組の送信アン
テナ93A〜93Cおよび受信アンテナ94A〜94C
を備えている。送信アンテナ93A〜93Cは円偏波の
電波を放射し、受信アンテナ94A〜94Cは送信アン
テナ93A〜93Cより放射された電波とは逆旋となる
円偏波の電波を受信する。
【0223】送信アンテナ93Aと受信アンテナ94A
は、電波反射減衰体100に対して0度に近い所定の第
1の入射角度で電波を入射させ、且つ反射した電波を受
信する位置に配置されている。送信アンテナ93Bと受
信アンテナ94Bは、電波反射減衰体100に対して、
第1の入射角度よりも大きな所定の第2の入射角度で電
波を入射させ、且つ反射した電波を受信する位置に配置
されている。送信アンテナ93Cと受信アンテナ94C
は、電波反射減衰体100に対して、第2の入射角度よ
りも大きな所定の第3の入射角度で電波を入射させ、且
つ反射した電波を受信する位置に配置されている。
【0224】送信アンテナ93A〜93Cは、それぞれ
同軸線ケーブルを介して信号線切換機102に接続され
ている。信号線切換機102はネットワークアナライザ
ー97に接続されている。信号線切換機102は、送信
アンテナ93A〜93Cのうちのいずれかを選択的にネ
ットワークアナライザー97に接続する。同様に、受信
アンテナ94A〜94Cは、それぞれ同軸線ケーブルを
介して信号線切換機103に接続されている。信号線切
換機103はネットワークアナライザー97に接続され
ている。信号線切換機103は、信号線切換機102に
よる送信アンテナ93A〜93Cの選択に対応させて、
受信アンテナ94A〜94Cのうちのいずれかを選択的
にネットワークアナライザー97に接続する。
【0225】本実施の形態では、使用する送信アンテナ
および受信アンテナを選択することにより、複数の入射
角度における電波反射減衰体100の反射減衰特性を測
定することができる。
【0226】本実施の形態において、アンテナ支持具1
01は、電波透過体に近い材料で形成されていることが
好ましい。このアンテナ支持具101における電波の反
射が問題になる場合には、アンテナ支持具101にも電
波吸収体を取り付けることによって、アンテナ支持具1
01における電波の反射によって生じる測定誤差を低減
することができる。
【0227】また、本実施の形態において、信号線切換
機102,103によるアンテナの選択を自動制御化し
てもよい。これにより、測定の効率化を図ることができ
る。
【0228】本実施の形態では、送信アンテナおよび受
信アンテナを3組設けたが、送信アンテナおよび受信ア
ンテナは、2組でもよいし、4組以上でもよい。
【0229】本実施の形態におけるその他の構成、作用
および効果は第4の実施の形態と同様である。
【0230】[第6の実施の形態]次に、本発明の第6
の実施の形態に係る構造物について説明する。本実施の
形態に係る構造物は、第1の実施の形態に係る電波反射
減衰体を含むものである。第1の実施の形態に係る電波
反射減衰体には、前述のように、第1ないし第4の電波
反射減衰体が含まれる。
【0231】本実施の形態に係る構造物は、例えば、電
波暗室、ビルあるいはその一部(外壁やオフィスルーム
の壁や窓等)、架橋、高架、電信柱、アンテナ支持柱、
ゲート、路面、トンネル、ガードレール、鉄道ホーム等
の建築物であってもよい。また、構造物は、飛行機、船
舶、自動車、鉄道車両等の輸送機であってもよい。ま
た、構造物は、コンピュータ、ディプレイ、ゲーム機、
アミューズメント機等の電子機器や、携帯電話等の携帯
型電子機器や、MRI(磁気共鳴画像)装置等の医療電
子機器や、電波暗箱等の電磁的評価装置や、アンテナ等
の電波送受信装置等であってもよい。
【0232】また、本実施の形態に係る構造物は、電波
反射減衰体を含まない状態で所定の機能を発揮する構造
物本体の少なくとも一部に電波反射減衰体が設置された
ものでもよい。この場合、構造物に対する電波反射減衰
体の設置形態、設置個所および設置面積は、特に限定さ
れず、構造物の特質や、電波反射減衰体を設置する目的
等に応じて適宜選択可能である。
【0233】また、本実施の形態に係る構造物は、電波
反射減衰体が構造物の一部を兼ねたものでもよい。この
場合も、構造物中における電波反射減衰体の設置形態、
設置個所および設置面積は、特に限定されず、構造物の
特質や、電波反射減衰体を設置する目的等に応じて適宜
選択可能である。
【0234】また、本実施の形態に係る構造物は、全体
が電波反射減衰体によって構成されたものでもよい。
【0235】本実施の形態に係る構造物の一例として
は、図19や図22に示した電波暗箱70において、電
波吸収体73として、第1の実施の形態に係る電波反射
減衰体としての電波吸収体を用いた構造の電波暗箱があ
る。また、本実施の形態に係る構造物の他の例として
は、図26や図27に示した電波暗室90において、電
波吸収体91として、第1の実施の形態に係る電波反射
減衰体としての電波吸収体を用いた構造の電波暗室があ
る。
【0236】以下、図28ないし図32を参照して、本
実施の形態に係る構造物のその他のいくつかの例につい
て説明する。
【0237】図28は、ビルの外壁等を本実施の形態に
係る構造物とした例を示す説明図である。図28には、
円偏波の電波を用いた航空機レーダシステムが示されて
いる。このような航空機レーダシステムにおいては、送
信用レーダアンテナ111から円偏波の電波113を送
信し、航空機116で反射されて、送信された電波11
3とは逆旋となる円偏波の電波114を、受信用レーダ
アンテナ112で受信して、航空機116の位置を探知
する。しかしながら、レーダの探索方向にビル115が
存在すると、送信用レーダアンテナ111から送信され
た電波113は、ビル115によって反射され、本来探
知すべき方向とは異なった方向を探知してしまい、その
異なった方向に航空機116が存在した場合には、あた
かも本来探知すべき方向に航空機116が存在している
ように見えてしまう。すなわち、本来探知すべき方向
に、航空機116の偽像116Pが見えてしまう。この
ようなレーダ偽像現象を解決する手段として、ビル11
5の外壁やガラス窓を電波反射減衰体によって構成する
方法が有用である。
【0238】このようなレーダ偽像現象は、ビルだけで
なく高架、電信柱等によっても起こり得る。また、船舶
レーダシステム等においては、架橋がレーダ偽像現象の
原因となり得る。また、自動車用の衝突防止レーダシス
テム等においては、トンネルの内壁やガードレールがレ
ーダ偽像現象の原因となり得、とりわけコーナー部にお
いてレーダ偽像現象が起こり得る。従って、これらのレ
ーダシステムにおいても、電波反射減衰体を含む本実施
の形態に係る構造物を用いることが有用となる。
【0239】図29は、オフィスルームの天井、床、壁
および窓を本実施の形態に係る構造物とした例を示す説
明図である。図29には、オフィスルームにおける無線
LANシステムが示されている。この無線LANシステ
ムでは、オフィスルーム121の天井等に設置された無
線LAN用アンテナ122とコンピュータ123等に設
置された無線LAN用アンテナ124とを用いて、電波
125によって通信を行うようになっている。このシス
テムにおいて、電波125が円偏波の電波である場合に
は、本来は、途中でオフィスルームの天井等で反射せず
にアンテナ122,124を行き来する電波125によ
って通信が行われる。しかしながら、アンテナ122,
124間で、オフィスルーム121内の天井、床、壁、
窓の面によって偶数回反射された電波126は、電波1
25と同旋の円偏波となるため、アンテナ122,12
4によって受信される。このような電波126による信
号は、本来の通信に用いられる信号よりも時間的に遅延
している。このような遅延した信号は、本来の通信に悪
影響を与え、データ通信速度の低下を引き起こす可能性
がある。このようなデータ通信速度の低下を防止する手
段として、オフィスルーム121内の天井、床、壁、窓
の面に電波反射減衰体を設置したり、オフィスルーム1
21内の天井、床、壁、窓の面を電波反射減衰体によっ
て構成する方法が有用である。
【0240】図30は、ゲート、路面、トンネル、アン
テナ支持柱および自動車を本実施の形態に係る構造物と
した例を示す説明図である。図30には、自動料金収受
システムが示されている。この自動料金収受システムで
は、路側の機器、例えばアンテナ130と、通信領域1
33内に存在する自動車131側の機器との間で、円偏
波の電波を用いた通信が行われるようになっている。こ
のシステムにおいて、本来は、途中で反射せずにアンテ
ナ130と自動車131側の機器とを行き来する電波1
36によって通信が行われる。しかしながら、アンテナ
130と通信領域133内の自動車131とが通信を行
っているときには、自動車131の屋根等とゲート屋根
134で合計2回反射された電波137によって、非通
信領域に存在する自動車132とアンテナ130との間
でも、誤った通信が行われてしまう可能性がある。課金
システムの処理方法に依存するが、このような誤った通
信によって、自動車132は二重に課金されるか、ある
いは課金されないという問題が発生する可能性がある。
このような問題を解決するためには、ゲート屋根134
の下部に電波反射減衰体を設置する方法が有用である。
また、自動車の屋根等に電波反射減衰体を設置すること
によってもこのような問題を解決可能である。
【0241】ここで、自動車131が存在しない場合に
おいても、路面とゲート屋根134で合計2回反射され
た電波によって、非通信領域に存在する自動車132と
アンテナ130との間で誤った通信が行われてしまう可
能性がある。このような場合には、自動車の屋根等に電
波反射減衰体を設置していても、問題は解決できない。
このような問題を解決するためには、路面に電波反射減
衰体を設置する方法が有用である。
【0242】また、アンテナ130より送信され、アン
テナ支持柱135等によって1回だけ反射された電波1
38は、自動車131が受信すべき電波とは逆旋となる
ため、自動車131によっては受信されない。しかしな
がら、アンテナ支持柱135等によって反射された電波
が、更に路面や自動車131やゲート屋根134等で反
射されることによって、誤った通信を引き起こす可能性
や通信品質(通信速度)を低下させる可能性がある。こ
のような問題を解決するためには、アンテナ支持柱13
5等にも電波反射減衰体を設置することが有用である。
【0243】図31は、電子機器、携帯型電子機器また
は医療電子機器を本実施の形態に係る構造物とした例を
示す説明図である。コンピューター等の電子機器141
は、筺体に囲まれ、その内部に電子基盤142,143
を有している。電子基盤142,143には高周波電流
が流れている。そのため、電子基盤142,143の信
号線のパターンによっては、その高周波電流によって電
子基盤142,143から円偏波の電波が放射される可
能性がある。この電波は、他の電子基盤142,143
の信号に悪影響を与えたり、筐体内面等によって反射さ
れることによって、自らの電子基盤142,143に悪
影響を与える可能性がある。このような問題を解決する
ためには、電子基盤142,143のLSI(大規模集
積回路)チップ等の上に電波反射減衰体を設置したり、
筐体内面に電波反射減衰体を設置することが有用であ
る。
【0244】このような問題は、コンピューターのみの
問題でなく、電子基盤を搭載するディスプレイ、ゲーム
機、アミューズメント機等の電子機器や、携帯電話等の
携帯型電子機器や、MRI(磁気共鳴画像)装置等の医
療電子機器でも起こり得る。液晶ディスプレイ等におい
ては、液晶パネルからの電波の放射も問題となる得る。
従って、これらの機器においても、電波反射減衰体を設
置することが有用となる。
【0245】図32は、アンテナを本実施の形態に係る
構造物とした例を示す説明図である。図32には、複数
の円偏波アンテナ素子152が配列された円偏波用のア
レーアンテナ151が示されている。このようなアレー
アンテナ151において、電波送受信方向とは反対の面
に電波反射減衰体を設置することにより、アンテナパタ
ーンにおけるフロントバック比を変更することができ
る。このように、アンテナのアンテナパターンの改善に
電波反射減衰体を用いることも可能である。
【0246】以上説明したように、本実施の形態に係る
構造物によれば、この構造物が含む電波反射減衰体にお
いて、TE波とTM波の両直線偏波に対しては円偏波の
電波に対する場合と同等の反射減衰特性を有する必要が
ないので、円偏波の電波に対して所望の反射減衰特性を
有する電波反射減衰体を容易に且つ適切に実現すること
が可能になる。その結果、本実施の形態によれば、円偏
波の電波に対して所望の反射減衰特性を有する電波反射
減衰体を含む構造物を容易に且つ適切に実現することが
可能になる。
【0247】なお、本発明は、上記各実施の形態に限定
されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態
において挙げた電波吸収体の構造や設計例は一例であ
り、これに限定されるものではない。
【0248】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の円
偏波用電波反射減衰体の設計方法によれば、TE波とT
M波の両直線偏波に対して良好な反射減衰特性を有する
ように電波反射減衰体を設計するのではなく、TE波に
対する複素反射係数とTM波に対する複素反射係数との
平均の絶対値が所望の値以下になるように電波反射減衰
体を設計するようにしたので、円偏波の電波の反射を抑
制するための円偏波用電波反射減衰体を、容易に且つ適
切に実現することが可能になるという効果を奏する。
【0249】また、請求項2記載の円偏波用電波反射減
衰体の評価方法によれば、TE波とTM波の両直線偏波
に対して良好な反射減衰特性を有するか否かによって電
波反射減衰体を評価するのではなく、円偏波に対する複
素反射係数の絶対値を用いて電波反射減衰体の評価を行
うようにしたので、円偏波の電波の反射を抑制するため
の円偏波用電波反射減衰体を、容易に且つ適切に評価す
ることが可能になるという効果を奏する。
【0250】また、請求項3記載の円偏波用電波反射減
衰体の評価方法によれば、TE波とTM波の両直線偏波
に対して良好な反射減衰特性を有するか否かによって電
波反射減衰体を評価するのではなく、円偏波に対する反
射減衰量を用いて電波反射減衰体の評価を行うようにし
たので、円偏波の電波の反射を抑制するための円偏波用
電波反射減衰体を、容易に且つ適切に評価することが可
能になるという効果を奏する。
【0251】また、請求項4記載の電波反射減衰体評価
装置によれば、測定手段によって、TE波に対する電波
反射減衰体の複素反射係数とTM波に対する電波反射減
衰体の複素反射係数とを独立に測定し、演算手段によっ
て、円偏波に対する電波反射減衰体の複素反射係数の絶
対値として、測定された2つの複素反射係数の平均の絶
対値を求めるようにしたので、電波反射減衰体の円偏波
に対する反射減衰特性を適切に評価することが可能にな
り、これにより、円偏波の電波に対して所望の反射減衰
特性を有する電波反射減衰体を容易に且つ適切に実現す
ることが可能になるという効果を奏する。
【0252】また、請求項5記載の電波反射減衰体評価
装置によれば、送信手段によって、電波反射減衰体に対
して円偏波の電波を放射し、受信手段によって、円偏波
に対する電波反射減衰体の反射減衰量を求めるために、
電波反射減衰体で反射されて、送信手段より放射された
電波とは逆旋となる円偏波の電波を受信するようにした
ので、電波反射減衰体の円偏波に対する反射減衰特性を
適切に評価することが可能になり、これにより、円偏波
の電波に対して所望の反射減衰特性を有する電波反射減
衰体を容易に且つ適切に実現することが可能になるとい
う効果を奏する。
【0253】また、請求項6ないし9のいずれかに記載
の電波反射減衰体評価装置によれば、電波暗箱内の設置
部に設置された電波反射減衰体に対して、送信手段によ
って円偏波の電波を放射し、電波反射減衰体で反射され
て、送信手段より放射された電波とは逆旋となる円偏波
の電波を受信手段によって受信するようにしたので、電
波反射減衰体の円偏波に対する反射減衰特性を適切に評
価することが可能になり、これにより、円偏波の電波に
対して所望の反射減衰特性を有する電波反射減衰体を容
易に且つ適切に実現することが可能になるという効果を
奏する。
【0254】また、請求項10ないし12のいずれかに
記載の電波反射減衰体評価装置によれば、電波暗箱内に
挿入された電波反射減衰体に対して、送信手段によって
円偏波の電波を放射し、電波反射減衰体で反射されて、
送信手段より放射された電波とは逆旋となる円偏波の電
波を受信手段によって受信するようにしたので、電波反
射減衰体の円偏波に対する反射減衰特性を適切に評価す
ることが可能になり、これにより、円偏波の電波に対し
て所望の反射減衰特性を有する電波反射減衰体を容易に
且つ適切に実現することが可能になるという効果を奏す
る。
【0255】また、請求項13ないし20のいずれかに
記載の電波反射減衰体によれば、TE波とTM波の両直
線偏波に対しては円偏波の電波に対する場合と同等の反
射減衰特性を有する必要がないので、円偏波の電波に対
して所望の反射減衰特性を有する電波反射減衰体を、容
易に且つ適切に実現することが可能になるという効果を
奏する。
【0256】また、請求項21記載の構造物によれば、
この構造体が含む電波反射減衰体において、TE波とT
M波の両直線偏波に対しては円偏波の電波に対する場合
と同等の反射減衰特性を有する必要がないので、円偏波
の電波に対して所望の反射減衰特性を有する電波反射減
衰体を容易に且つ適切に実現することが可能になり、そ
の結果、円偏波の電波に対して所望の反射減衰特性を有
する電波反射減衰体を含む構造物を容易に且つ適切に実
現することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本出願において用いられる用語について説明す
るための説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電波吸収体
以外の電波反射減衰体の例を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電波吸収体
以外の電波反射減衰体の例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電波吸収体
以外の電波反射減衰体の例を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態において楕円偏波の
電波に対して所望の反射減衰特性を有する電波反射減衰
体を設計する方法を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の第1の実施例にお
ける電波吸収体の構成およびその電気的等価回路を示す
説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の第1の実施例にお
いて設計された電波吸収体の特性を示す特性図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の第2の実施例にお
ける電波吸収体の構成およびその電気的等価回路を示す
説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第2の実施例にお
いて設計された電波吸収体の特性を示す特性図である。
【図10】図9に示した設計例の電波吸収体について入
射角度と複素反射係数の実部との関係を示す特性図であ
る。
【図11】図9に示した設計例の電波吸収体について入
射角度と複素反射係数の虚部との関係を示す特性図であ
る。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第2の実施例に
おいて設計された他の電波吸収体の特性を示す特性図で
ある。
【図13】本発明の第1の実施の形態の第3の実施例に
おける電波吸収体の構成およびその電気的等価回路を示
す説明図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態の第3の実施例に
おいて設計された電波吸収体の特性を示す特性図であ
る。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る評価方法の
妥当性について検証するために試作した電波吸収体の電
波反射減衰特性を示す特性図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態において試作した
電波吸収体の複素反射係数の測定値および計算値を示す
特性図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態において試作した
電波吸収体の反射減衰量の測定値を示す特性図である
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る評価装置を
示す斜視図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る評価装置に
おける電波暗箱の扉を示す説明図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る評価装置の
他の構成例を示す説明図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る評価装置の
更に他の構成例を示す説明図である。
【図24】図23に示した評価装置の側面に平行な断面
を示す断面図である。
【図25】図23に示した評価装置の正面に平行な断面
を示す断面図である。
【図26】本発明の第4の実施の形態に係る円偏波用電
波反射減衰体の評価方法および電波反射減衰体評価装置
を説明するための説明図である。
【図27】本発明の第5の実施の形態に係る電波反射減
衰体評価装置の構成を示す説明図である。
【図28】本発明の第6の実施の形態に係る構造物の例
を示す説明図である。
【図29】本発明の第6の実施の形態に係る構造物の例
を示す説明図である。
【図30】本発明の第6の実施の形態に係る構造物の例
を示す説明図である。
【図31】本発明の第6の実施の形態に係る構造物の例
を示す説明図である。
【図32】本発明の第6の実施の形態に係る構造物の例
を示す説明図である。
【符号の説明】
30…電波吸収体、31…抵抗体(導電体)、32…誘
電体層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝沢 幸治 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 5E321 AA42 GG11 5J020 BD02 EA02 EA03 EA07 EA10

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円偏波の電波に対して所望の反射減衰特
    性を有する円偏波用電波反射減衰体を設計する方法であ
    って、 電界が入射面に垂直な電波(TE波)に対する前記電波
    反射減衰体の複素反射係数と磁界が入射面に垂直な電波
    (TM波)に対する前記電波反射減衰体の複素反射係数
    との平均の絶対値が所望の値以下になるように、前記各
    複素反射係数を変化させるパラメータの値を決定するこ
    とを特徴とする円偏波用電波反射減衰体の設計方法。
  2. 【請求項2】 円偏波の電波の反射を抑制するための円
    偏波用電波反射減衰体を評価する方法であって、 電界が入射面に垂直な電波(TE波)に対する前記電波
    反射減衰体の複素反射係数と磁界が入射面に垂直な電波
    (TM波)に対する前記電波反射減衰体の複素反射係数
    とをそれぞれ独立に測定する手順と、 円偏波に対する前記電波反射減衰体の複素反射係数の絶
    対値として、測定された2つの複素反射係数の平均の絶
    対値を求める手順と、 求められた円偏波に対する複素反射係数の絶対値を用い
    て前記電波反射減衰体の評価を行う手順とを備えたこと
    を特徴とする円偏波用電波反射減衰体の評価方法。
  3. 【請求項3】 円偏波の電波の反射を抑制するための円
    偏波用電波反射減衰体を評価する方法であって、 前記電波反射減衰体に対して円偏波の電波を放射し、前
    記電波反射減衰体で反射されて、放射された電波とは逆
    旋となる円偏波の電波を受信して、円偏波に対する前記
    電波反射減衰体の反射減衰量を求める手順と、 求められた前記反射減衰量を用いて前記電波反射減衰体
    の評価を行う手順とを備えたことを特徴とする円偏波用
    電波反射減衰体の評価方法。
  4. 【請求項4】 電波の反射を抑制するための電波反射減
    衰体の円偏波に対する反射減衰特性を評価するために用
    いられる電波反射減衰体評価装置であって、 電界が入射面に垂直な電波(TE波)に対する前記電波
    反射減衰体の複素反射係数と磁界が入射面に垂直な電波
    (TM波)に対する前記電波反射減衰体の複素反射係数
    とをそれぞれ独立に測定する測定手段と、 円偏波に対する前記電波反射減衰体の複素反射係数の絶
    対値として、前記測定手段によって測定された2つの複
    素反射係数の平均の絶対値を求める演算手段とを備えた
    ことを特徴とする電波反射減衰体評価装置。
  5. 【請求項5】 電波の反射を抑制するための電波反射減
    衰体の円偏波に対する反射減衰特性を評価するために用
    いられる電波反射減衰体評価装置であって、 前記電波反射減衰体に対して円偏波の電波を放射する送
    信手段と、 円偏波に対する前記電波反射減衰体の反射減衰量を求め
    るために、前記電波反射減衰体で反射されて、前記送信
    手段より放射された電波とは逆旋となる円偏波の電波を
    受信する受信手段とを備えたことを特徴とする電波反射
    減衰体評価装置。
  6. 【請求項6】 電波の反射を抑制するための電波反射減
    衰体の円偏波に対する反射減衰特性を評価するために用
    いられる電波反射減衰体評価装置であって、 内壁の少なくとも一部に電波吸収体が配置された筐体を
    有する電波暗箱と、 前記電波暗箱内に設けられ、評価対象の電波反射減衰体
    が設置される設置部と、 前記電波暗箱内に設置され、前記電波反射減衰体に対し
    て円偏波の電波を放射する送信手段と、 前記電波暗箱内に設置され、円偏波に対する前記電波反
    射減衰体の反射減衰量を求めるために、前記電波反射減
    衰体で反射されて、前記送信手段より放射された電波と
    は逆旋となる円偏波の電波を受信する受信手段とを備え
    たことを特徴とする電波反射減衰体評価装置。
  7. 【請求項7】 前記電波暗箱は扉を有し、前記設置部は
    前記扉の内面に設けられていることを特徴とする請求項
    6記載の電波反射減衰体評価装置。
  8. 【請求項8】 前記設置部は前記評価対象の電波反射減
    衰体を着脱自在に保持する保持部材を有することを請求
    項6または7記載の電波反射減衰体評価装置。
  9. 【請求項9】 前記送信手段は送信アンテナを有し、前
    記受信手段は受信アンテナを有し、 更に、前記電波暗箱内に設置され、前記送信アンテナお
    よび受信アンテナを支持するアンテナ支持具を備えたこ
    とを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の電
    波反射減衰体評価装置。
  10. 【請求項10】 電波の反射を抑制するための電波反射
    減衰体の円偏波に対する反射減衰特性を評価するために
    用いられる電波反射減衰体評価装置であって、 内壁の少なくとも一部に電波吸収体が配置された筐体を
    有する電波暗箱と、 前記電波暗箱に設けられ、電波暗箱外から電波暗箱内へ
    評価対象の電波反射減衰体を挿入可能とする挿入部と、 前記電波暗箱内に設置され、前記電波反射減衰体に対し
    て円偏波の電波を放射する送信手段と、 前記電波暗箱内に設置され、円偏波に対する前記電波反
    射減衰体の反射減衰量を求めるために、前記電波反射減
    衰体で反射されて、前記送信手段より放射された電波と
    は逆旋となる円偏波の電波を受信する受信手段とを備え
    たことを特徴とする電波反射減衰体評価装置。
  11. 【請求項11】 更に、前記評価対象の電波反射減衰体
    が設置され、前記挿入部より前記電波暗箱内へ挿入され
    る可動台を備えたことを特徴とする請求項10記載の電
    波反射減衰体評価装置。
  12. 【請求項12】 前記送信手段は送信アンテナを有し、
    前記受信手段は受信アンテナを有し、 更に、前記電波暗箱内に設置され、前記送信アンテナお
    よび受信アンテナを支持するアンテナ支持具を備えたこ
    とを特徴とする請求項10または11記載の電波反射減
    衰体評価装置。
  13. 【請求項13】 電波の反射を抑制するための電波反射
    減衰体であって、40度の電波入射角度において、電界
    が入射面に垂直な電波(TE波)に対する反射減衰量と
    磁界が入射面に垂直な電波(TM波)に対する反射減衰
    量の一方は20dB未満であり、円偏波に対する反射減
    衰量は20dB以上であることを特徴とする電波反射減
    衰体。
  14. 【請求項14】 0度〜40度の電波入射角度範囲内の
    全域において、円偏波に対する反射減衰量は20dB以
    上であることを特徴とする請求項13記載の電波反射減
    衰体。
  15. 【請求項15】 電波の反射を抑制するための電波反射
    減衰体であって、40度の電波入射角度において、電界
    が入射面に垂直な電波(TE波)に対する反射減衰量と
    磁界が入射面に垂直な電波(TM波)に対する反射減衰
    量は共に20dB未満であり、円偏波に対する反射減衰
    量は20dB以上であることを特徴とする電波反射減衰
    体。
  16. 【請求項16】 0度〜40度の電波入射角度範囲内の
    全域において、円偏波に対する反射減衰量は20dB以
    上であることを特徴とする請求項15記載の電波反射減
    衰体。
  17. 【請求項17】 電波の反射を抑制するための電波反射
    減衰体であって、50度の電波入射角度において、電界
    が入射面に垂直な電波(TE波)に対する反射減衰量と
    磁界が入射面に垂直な電波(TM波)に対する反射減衰
    量の一方は15dB未満であり、円偏波に対する反射減
    衰量は15dB以上であることを特徴とする電波反射減
    衰体。
  18. 【請求項18】 0度〜50度の電波入射角度範囲内の
    全域において、円偏波に対する反射減衰量は15dB以
    上であることを特徴とする請求項17記載の電波反射減
    衰体。
  19. 【請求項19】 電波の反射を抑制するための電波反射
    減衰体であって、50度の電波入射角度において、電界
    が入射面に垂直な電波(TE波)に対する反射減衰量と
    磁界が入射面に垂直な電波(TM波)に対する反射減衰
    量は共に15dB未満であり、円偏波に対する反射減衰
    量は15dB以上であることを特徴とする電波反射減衰
    体。
  20. 【請求項20】 0度〜50度の電波入射角度範囲内の
    全域において、円偏波に対する反射減衰量は15dB以
    上であることを特徴とする請求項19記載の電波反射減
    衰体。
  21. 【請求項21】 請求項13ないし20のいずれかに記
    載の電波反射減衰体を含むことを特徴とする構造物。
JP2001211641A 2000-07-28 2001-07-12 円偏波用電波反射減衰体の設計方法、電波反射減衰体ならびに構造物 Expired - Lifetime JP3756791B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001211641A JP3756791B2 (ja) 2000-07-28 2001-07-12 円偏波用電波反射減衰体の設計方法、電波反射減衰体ならびに構造物

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000228116 2000-07-28
JP2000-228116 2000-07-28
JP2001211641A JP3756791B2 (ja) 2000-07-28 2001-07-12 円偏波用電波反射減衰体の設計方法、電波反射減衰体ならびに構造物

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005125588A Division JP4761188B2 (ja) 2000-07-28 2005-04-22 円偏波用電波反射減衰体の評価方法および電波反射減衰体評価装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002111277A true JP2002111277A (ja) 2002-04-12
JP3756791B2 JP3756791B2 (ja) 2006-03-15

Family

ID=26596872

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001211641A Expired - Lifetime JP3756791B2 (ja) 2000-07-28 2001-07-12 円偏波用電波反射減衰体の設計方法、電波反射減衰体ならびに構造物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3756791B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006135031A (ja) * 2004-11-04 2006-05-25 Central Glass Co Ltd 電磁波吸収板
JP2006133048A (ja) * 2004-11-05 2006-05-25 Fujita Corp 複素比誘電率測定装置及び複素比誘電率測定方法
JP2013009005A (ja) * 2012-09-26 2013-01-10 Nippon Light Metal Co Ltd 電波試験室
JPWO2011048941A1 (ja) * 2009-10-21 2013-03-07 三菱電機株式会社 アンテナ装置
JP2019128249A (ja) * 2018-01-24 2019-08-01 Tdk株式会社 電波反射箱

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03263904A (ja) * 1990-01-25 1991-11-25 Yoshiyuki Naito ブロック形磁性体を用いた電波吸収体
JPH07283578A (ja) * 1994-04-08 1995-10-27 Tdk Corp 電波吸収体
JPH07288393A (ja) * 1994-04-15 1995-10-31 Tdk Corp 電波吸収体
JP2002061130A (ja) * 2000-05-30 2002-02-28 Sekisui Jushi Co Ltd 不要電波抑制方法及び道路付帯設備

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03263904A (ja) * 1990-01-25 1991-11-25 Yoshiyuki Naito ブロック形磁性体を用いた電波吸収体
JPH07283578A (ja) * 1994-04-08 1995-10-27 Tdk Corp 電波吸収体
JPH07288393A (ja) * 1994-04-15 1995-10-31 Tdk Corp 電波吸収体
JP2002061130A (ja) * 2000-05-30 2002-02-28 Sekisui Jushi Co Ltd 不要電波抑制方法及び道路付帯設備

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006135031A (ja) * 2004-11-04 2006-05-25 Central Glass Co Ltd 電磁波吸収板
JP2006133048A (ja) * 2004-11-05 2006-05-25 Fujita Corp 複素比誘電率測定装置及び複素比誘電率測定方法
JPWO2011048941A1 (ja) * 2009-10-21 2013-03-07 三菱電機株式会社 アンテナ装置
US8766865B2 (en) 2009-10-21 2014-07-01 Mitsubishi Electric Corporation Antenna device
JP2013009005A (ja) * 2012-09-26 2013-01-10 Nippon Light Metal Co Ltd 電波試験室
JP2019128249A (ja) * 2018-01-24 2019-08-01 Tdk株式会社 電波反射箱
JP7062970B2 (ja) 2018-01-24 2022-05-09 Tdk株式会社 電波反射箱

Also Published As

Publication number Publication date
JP3756791B2 (ja) 2006-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2510880B2 (ja) 多層型電波吸収体及び該電波吸収体からなる電波暗室
Ranga et al. A low‐profile dual‐layer ultra‐wideband frequency selective surface reflector
JPH07288393A (ja) 電波吸収体
JP2008135485A (ja) 電波吸収体およびその製造方法
Culhaoglu et al. Mono-and bistatic scattering reduction by a metamaterial low reflection coating
Iqbal et al. A study of the EMC performance of a graded-impedance, microwave, rice-husk absorber
JP4761188B2 (ja) 円偏波用電波反射減衰体の評価方法および電波反射減衰体評価装置
Zuo et al. Miniaturized polarization insensitive metamaterial absorber applied on EMI suppression
KR101957798B1 (ko) 메타물질 흡수체
Chen et al. A wideband switchable absorber/reflector based on active frequency selective surface
JP3756791B2 (ja) 円偏波用電波反射減衰体の設計方法、電波反射減衰体ならびに構造物
Kedar et al. Parametric study of flat sandwich multilayer radome
Itou et al. A fundamental study of a thin λ/4 wave absorber using FSS technology
Khadka Evaluation of Radio Anechoic Chamber
Kunz et al. Lawrence livermore national laboratory electromagnetic measurement facility
JP2979898B2 (ja) 電波暗室
JP3192467B2 (ja) 電波反射体、電波暗室
CN218975798U (zh) 天线及车载雷达
GP Neto et al. Absorb/Transmit Broadband Type Frequency Selective Surface
JP2001119192A (ja) 電波無響箱
Bakshi et al. Measurements in an Anechoic Chamber for DRA Antennas, EMI and EMC
JP3265647B2 (ja) 電波暗室
JP2004349569A (ja) 電波吸収体
Chang et al. Broadband Microwave Absorber based on End-loading Folded-Dipole Array
JP2000059068A (ja) 透明電波吸収体およびその作製方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041001

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050222

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050422

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050726

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050921

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20051122

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20051222

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 3756791

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100106

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110106

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110106

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120106

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120106

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130106

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130106

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140106

Year of fee payment: 8

EXPY Cancellation because of completion of term