JP2002105581A - ディスクブレーキ用ロータ - Google Patents

ディスクブレーキ用ロータ

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JP2002105581A JP2000300278A JP2000300278A JP2002105581A JP 2002105581 A JP2002105581 A JP 2002105581A JP 2000300278 A JP2000300278 A JP 2000300278A JP 2000300278 A JP2000300278 A JP 2000300278A JP 2002105581 A JP2002105581 A JP 2002105581A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ディスクブレーキ用ロータに関
し、耐ヒートクラック性を損なうことなくNi添加量を
低減してコストを低減できるようにする。 【解決手段】 重量比率で、C:2.8〜3.8%,S
i:1.8〜3.4%,Mn:0.5〜1.0%,S:
0.02〜0.10%,Cr:0.1〜1.5%,M
o:0.1〜1.0%,Cu:0.1〜1.2%,N
i:0.1〜1.2%,Ce:0.01〜0.05%を
それぞれ含むように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車両に
用いて好適の、ディスクブレーキ用ロータに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両に用いられるブレーキ装置
では、車両の運動エネルギを摩擦により熱エネルギに変
換しこれを大気に放散することで、車両を減速又は停止
させるようになっている。上述のようなブレーキ装置と
しては、ドラムブレーキとディスクブレーキとに大別す
ることができるが、ディスクブレーキの方がドラムブレ
ーキに対して放熱性に優れており、また、片効きしにく
いなどの安定した性質を有している。
【0003】このため、小型車(乗用車・小型トラッ
ク)においては従来から広くディスクブレーキが普及し
ているが、大型車(大・中型トラック)においては、コ
ストや耐久性の点から高速車両以外では現在でもドラム
ブレーキが主流となっている。しかし、今後は大型車の
高性能化が進み、大型車にもディスクブレーキの採用が
進むことが予想される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般的に、小型車用デ
ィスクロータでは、高熱伝導率を有する材料が用いられ
ているが、このような材料は高CE値(CE:カーボン
当量=C+Si/3)であり、大型車には強度的に十分
とはいえない。このため、小型車用ディスクロータの材
質をそのまま大型車に適用することはできない。
【0005】また、大型車用では、小型車よりもはるか
に大きい熱負荷が加わること、さらには高強度というこ
とも耐久性にとっては重要であり、このような観点から
も小型車と同様の材質のロータ材を用いることはできな
い。ところで、ディスクブレーキに要求される特性とし
ては、耐ヒートクラック性,耐摩耗性,鳴き,耐食性等
があり、大型車用のディスクロータ(又は、単にロータ
という)の材質としてはこれらの諸性質に総合的に優れ
ている片状黒鉛鋳鉄が従来より用いられている。最近で
は高温強度向上のためにNi(ニッケル),Cr(クロ
ム),Mo(モリブデン)を添加したNCM(低合金片
状黒鉛鋳鉄)が使用されているものの、Niは高価な材
料であるため、このような従来のロータは製造コストが
高いという課題があった。
【0006】また、近年最も重要視されている特性が耐
ヒートクラック性であり、この耐ヒートクラック性に優
れた材料の開発が要求されている。ヒートクラックは、
制動時のロータ表面のヒートスポット部に生じる局所的
な温度勾配による熱疲労により発生する亀裂(クラッ
ク)であり、その後ロータ表面と下面(ロータ裏面)と
に生じる温度勾配による熱疲労により進展する。したが
って、材質的には高熱伝導率,低熱膨張係数,高温特性
(高温強度,クリープ特性)に優れた材料が耐ヒートク
ラック性向上には重要な要素であると考えることができ
る。
【0007】ここで、耐ヒートクラック性を向上させる
には低合金片状黒鉛鋳鉄のNi添加量を増加させればよ
いが、上述したようにNi材は高価であり、Ni添加量
を増やすとさらなるコスト上昇を招くという課題があ
る。ところで、特公昭63−39656号公報及び特公
平8−32944号公報にはディスクロータに関する技
術が開示されている。このうち、特公昭63−3965
6号公報には、耐ヒートクラック性に優れた高強度のデ
ィスクロータ材が提案されている。
【0008】この技術では、熱伝導率が高い片状黒鉛鋳
鉄をベースにマトリックスを強化し、材料を高強度化す
ることで耐ヒートクラック性の向上を図っている。合金
元素としてはNi,Mo,V,Ceが添加されている。
ここで、Niはマトリックスをベイナイト化する目的で
添加されており、添加量は2.0〜4.0%である。ま
た、Moの添加量が1.0〜3.0%であるのも同様の
理由による。Ceはチル化によるマトリックスの脆化を
防止する目的で、また、Vはマトリックス強化の目的で
添加されている。
【0009】しかしながら、上述の技術ではNi添加量
が2.0〜4.0%と高く、コストが大幅に上昇してし
まい、上記の課題を解決することはできない。一方、特
公平8−32944号公報の技術では、ディスクロータ
材をより高熱伝導率にして、耐ヒートクラック性の向上
を図っている。具体的には、Cを3.5〜3.7%と高
い値に設定し、これによる強度低下をMo,V,Ceを
添加することにより補っている。Niは添加していない
が、これはNiが極端に熱伝導率を下げるためであると
考えられる。
【0010】しかしながら、Cの添加量を高めると熱伝
導率を高くでき発生熱応力を低減することができるもの
の、黒鉛晶出量の増加を招き、必ずしも耐ヒートクラッ
ク性を向上させることはできないという課題がある。本
発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、Ni
添加量を低減しながら耐ヒートクラック性に優れた、デ
ィスクブレーキ用ロータを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】このため、本発明のディ
スクブレーキ用ロータは、重量比率で、C:2.8〜
3.8%,Si:1.8〜3.4%,Mn:0.5〜
1.0%,S:0.02〜0.10%,Cr:0.1〜
1.5%,Mo:0.1〜1.0%,Cu:0.1〜
1.2%,Ni:0.1〜1.2%,Ce:0.01〜
0.05%をそれぞれ含んで構成されていることを特徴
としている。
【0012】ここで、C(炭素)及びSi(シリコン)
は、鋳鉄で黒鉛を晶出させるのに重要な元素であり、こ
れらの元素の影響は、炭素当量CE=C+Si/3を用
いて総合的に考える必要がある。CE値は、耐ヒートク
ラック性に影響を与える黒鉛数,黒鉛面積率及び熱伝導
率を変化させる因子であり、また、材料の強度も大きく
変化させるので、これらのバランスを考慮し添加量を選
定しなければならない。これらの点を考慮して添加量は
C:2.8〜3.8%,Si:1.8〜3.4%とし
た。
【0013】Mn(マンガン)は、脱酸,脱硫作用を有
しており、またパーライト化を促進する元素である。し
かし、過度の添加はチル化を招くので、添加量は0.5
〜1.0%とした。S(硫黄)は、P(リン)と同様に
不純物として存在し、炭化物生成促進傾向と黒鉛化傾向
との両作用を有している。Sは希土類元素Ceと化学量
論的に反応し、黒鉛晶出の下地となる。これによりチル
化の低減、黒鉛の微細化、強度の向上等の効果がある。
しかし多量添加すると粒界に析出して耐酸化性及び耐食
性を低下させるので、添加量は0.02〜0.10%と
した。
【0014】Cr(クロム)は、フェライトの析出を抑
え、パーライトの析出を助長且つ促進するので機械的性
質を向上させる。しかし、1.5%以上添加するとチル
化を招くので、添加量は0.1〜1.5%とした。Mo
(モリブデン)は、Crと同様にパーライトを緻密化
し、機械的性質を向上させる。しかし、1.0%以上添
加するとマトリックスがベイナイト化するので、添加量
は0.1〜1.0%とした。
【0015】Cu(銅)は、パーライト安定元素であ
り、また弱い黒鉛化促進元素であるが、Cu自体では機
械的性質の向上は小さいので、Cr及びMoの炭化物生
成促進元素と組み合わせて用いる。添加量は0.1〜
1.2%とした。Ni(ニッケル)は、熱伝導率を低下
させ、ディスクロータにおいては発生熱応力を大きくし
てしまうが、一方で黒鉛化促進元素であり、材料組織中
の黒鉛を微細化させ黒鉛数を増やし、クラックの進展を
遅らせる作用がある。しかし、Niを1.2%以上添加
するとマトリックスがベイナイト化し、またコストも上
昇してしまうので、添加量は0.1〜1.2%とした。
なお、さらに好ましくはNiの添加量は0.5〜0.6
%である。
【0016】Ce(セリウム)はSと化合物を作り、こ
れが黒鉛晶出核となり黒鉛化を促進し、黒鉛を微細化す
る。また、Ce添加をCr,Moと併用するとパーライ
トがより緻密化し、機械的性質が向上する。しかし、多
量添加は逆にチル化を促進してしまうので、添加量は、
0.01〜0.05%とした。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の一実
施形態にかかるディスクブレーキ用ロータについて説明
する。 (1)供試材の化学成分と諸性質 本実施形態のディスクブレーキ用ロータの化学成分(組
成)を、比較のために試作したロータの化学成分ととも
に図1に示す。図1に示すNo1〜No5,FC25
0,現行材の各供試材は、いずれも片状黒鉛鋳鉄であっ
て、このうち現行材は従来の大型車用ディスクロータに
使用されているもので、耐ヒートクラック性に優れてい
るもののNi添加量が多く比較的コストが高い。また、
FC250はJISで定められた一般的な材料である。
また、これらの各供試材は、図1に示す成分以外の残部
は、不可避不純物を含むFe(鉄)である。
【0018】No1〜No5の各供試材は、現行材に対
してNi及びCeの添加量をパラメータとして変化させ
た片状黒鉛鋳鉄であって、このうちNo5が本発明のデ
ィスクロータである。なお、図1では、No1〜No5
の供試材において、Ni,Ce以外の成分にもばらつき
が見られるが、これは実際に試作したロータの分析値を
記載したためであり、Ni,Ce以外の成分の添加量は
各供試材とも実質同一である。
【0019】図2は各供試材の熱的性質及び常温ヤング
率を示す図であり、熱伝導率はFC250材が最も高
く、Ni添加及びCe接種により熱伝導率が低下するこ
とがわかる。熱膨張率係数及び常温ヤング率は各試料と
もほぼ同じである。図3は高温強度特性を示す図であ
り、Ceを接種した供試材(No1,No3,No5)
は他の材料よりも強度が高いことを示している。 (2)耐ヒートクラック性の試験方法 次に、各供試材の耐ヒートクラック性について説明す
る。ここで、耐ヒートクラック性について定義すると、
耐ヒートクラック性に優れているとは、ヒートクラック
の発生,進展によりディスクロータが破損するまでの寿
命(以下、ヒートクラック寿命という)が長いことをい
う。また、ヒートクラック寿命は、クラック発生に要す
るサイクル数+進展に要するサイクル数(進展寿命)で
定義される。
【0020】この試験には、実際に試作した各供試材の
ロータを車両に搭載してヒートクラックを発生させる実
機ダイナモ試験と、テストピース(TP)を用いてこの
実機ダイナモ試験をシミュレートした台上試験(ヒート
クラックシミュレーション試験)とがあり、これらの試
験を両方行なった。図4(a)〜(c)はヒートクラッ
クシミュレーション試験を説明するための図である。こ
の試験に用いた試験機はファレックス磨耗試験機を改造
したものであり、図4(a)に示すように、回転円盤3
にはリング状のパッド2が取り付けられている。また、
ディスクロータ(以下、ロータともいう)1は固定され
ており、回転円盤3をモータ4により回転させて、制動
を行なうようになっている。
【0021】また、ロータ1にはリンク機構5を介して
おもり6が取り付けられている。図示するようにリンク
機構5にはシリンダ機構7が接続されており、このシリ
ンダ機構7を作動させることでロータ1に荷重を加える
ことができるようになっている。また、図4(a)に示
すように、ロータ1には冷却用エアが供給可能に構成さ
れている。ここで、図4(b)に示すように、各供試材
のロータ1の側面にはエア供給切り欠き1aが形成され
ており、さらに、図4(c)に示すように、ロータ1の
内部にはエア供給溝1bが形成されている。そして、試
験時には、このエア供給切り欠き1aからエア供給溝1
bに冷却エアを供給することで、ロータ下面(裏面)が
冷却されるようになっている。
【0022】これは、実際の車両においてもロータ1に
は冷却用のエアが供給されるように構成されているから
であり、実際の使用状況に極力近付けるためである。な
お、図4(c)に示すように、ロータ1の摺動面(表
面)及び下面(裏面)には温度センサとしての熱電対8
が設けられている。試験条件は、面圧:5.6MPa,
回転数:3000rpm,温度:表面50〜500℃,
下面50〜260℃,最大温度差:Δ240℃である。
このうち最も重要なパラメータは表面温度であり、表面
温度が上記の値となるように、他の条件が設定されてい
る。
【0023】また、熱サイクル条件について説明する
と、ロータ1の表面を50℃から500℃(下面260
℃)まで摺動加熱し(約40秒)、その後ロータ1をエ
ア冷却してロータ表面を50℃まで冷却する(約120
秒)。そして、これを1サイクルとしてカウントする。 (3)シミュレーション試験及びダイナモ試験結果 図5はヒートシミュレーション試験における各材料の平
均ヒートクラック長さと熱サイクル数との関係を示す。
ここで、平均ヒートクラック長は以下のようにして求め
る。まず、各供試材の表面において、所定の大きさの観
察面(例えば1mm×1mm)を無作為に抽出する。そ
して、この観察面で観察できたクラックのうち、長い順
に5本のクラックを選びその平均値を算出する。さら
に、観察面を複数箇所(例えば5個所)に設定し、各観
察面での平均値をさらに平均化して平均ヒートクラック
長さを算出するのである。
【0024】ここで、図5中の直線は近似値であるが、
この直線の傾きは単位熱サイクル当たりのヒートクラッ
クの伸長量を示していることになるので、以下、この傾
きを進展速度と定義する。また、各供試材の進展速度を
図6に示す。そして、この結果から、現行材の進展速度
はFC250の1/4.1倍であることが確認できた。
また、No5の供試材は、Niの添加量が現行品である
現行材の半分以下であるにもかかわらず、現行材とほぼ
同等の進展速度であることが確認できた。
【0025】また、図示はしないが、実機ダイナモ試験
結果から現行材のFC250に対するヒートクラック寿
命は4.4倍であり、上記ヒートシミュレーション試験
の進展速度の比と対応していることが確認できた。以上
の結果から、耐ヒートクラック性はクラック発生までの
サイクル数の影響はなく、進展寿命で評価することがで
きることがわかる。
【0026】図7はNo5及び現行材の実機ダイナモ試
験における最大ヒートクラック長さと熱サイクルとの関
係を示す図であるが、この実機ダイナモ試験の結果から
も、No5の供試材は、現行材と同等の耐ヒートクラッ
ク性を有していることがわかる。 (4)シミュレーション試験による各材料の進展速度と
諸性質及びミクロ組織との相関 図1〜図3及び図6から、ヒートクラックの進展速度は
材料の引っ張り強度,ヤング率,熱伝導率及び熱膨張率
とは、ほとんど相関がないことがわかる。
【0027】そこで、ヒートクラックの進展速度が材料
組織中のどの性質と相関関係があるのかを調べた。図8
(a)〜(f)はCE値一定の条件下でマトリックス硬
度,黒鉛面積率,黒鉛間距離,供晶セル数,黒鉛長さ及
び黒鉛数とヒートクラックの進展速度との相関を調べた
結果を示す図である。これらの結果から、進展速度は黒
鉛数と最も強い相関があることがわかった〔図8(f)
参照〕。
【0028】この場合、進展速度(y)は、組織中の黒
鉛数(x)をパラメータとして下式で近似することがで
きる。 y=a/x2 +b(a,bはともに定数) したがって、基本的に黒鉛数が多いほどヒートクラック
の進展速度が低下して、耐ヒートクラック性が向上する
ことがわかる。 (5)黒鉛数とNi及びCeとの関係 図9(a)は各供試材の進展速度と黒鉛数との関係を詳
細に示す図であり、図8(f)と実質同じ図である。こ
の図から、No5の材料は、現行材に対して黒鉛数が僅
かに少ないものの、耐ヒートクラック性については現行
材とほぼ同等であることがわかる。
【0029】これは、Ce接種の有無に関係がある。図
9(b)は黒鉛数とNi及びCeとの関係を示すもので
あるが、この図から、Ni及びCeは黒鉛数を増加さ
せ、クラックの進展速度を低下させる作用があることが
わかる。なお、図9(b)では、FC250材は試験条
件が他の供試材と異なるためFC250材のデータは省
略する。つまり、単に黒鉛数を増加させるのであればN
i添加量を増大すれば良いが、Niは高価であるためコ
ストが上昇する。これに対して、Ceを接種するとNi
添加量を増やさなくても黒鉛数を増大させることができ
るのである。
【0030】これは、CeとSとが結合して黒鉛晶出核
となり黒鉛化を促進し、黒鉛を微細化するためである。
また、Ce接種をCr,Moと併用するとパーライトが
より緻密化して強度も向上するのである。ただし、図1
0に示すように、Ceの接種過多はチル化を招くため、
Ceの接種量(添加量)は0.01〜0.05%とす
る。
【0031】上述のように、本発明の一実施形態にかか
るディスクブレーキ用ロータによれば、Ce接種を行な
うことでNi添加量を低減しながら耐ヒートクラック性
を損なうことなく低コストなディスクロータを製作する
ことができる利点がある。
【0032】これは、Ce接種を行なうことで、材料組
織中の黒鉛が微細化し、黒鉛数が増加する(Ni添加と
同様の効果がある)からである。黒鉛晶出量(黒鉛面積
率)が同等であれば、黒鉛が微細に分布している方がク
ラックの進展速度が遅くなり、この結果、耐ヒートクラ
ック性が向上するのである。また、Ce接種を行なうこ
とで、パーライトが緻密化され、マトリックスが硬くな
り強度も向上するという利点がある。
【0033】なお、本発明のディスクブレーキ用ロータ
は、片状黒鉛鋳鉄の組織における黒鉛数が多いほどク
ラック進展速度が低下する(即ち、耐ヒートクラック性
が向上する)、Ce接種により黒鉛数を増大させるこ
とができ、この分だけNiの添加量を低減させることが
できる、という知見に基づいてなされたものである。し
たがって、本発明のディスクブレーキ用ロータは、上述
の実施形態中の重量比率(No5の供試材の重量比率)
に限定されるものでない。ここで、本発明のディスクブ
レーキ用ロータとしては、上述した特性を考慮して、少
なくとも重量比率で、C:2.8〜3.8%,Si:
1.8〜3.4%,Mn:0.5〜1.0%,S:0.
02〜0.10%,Cr:0.1〜1.5%,Mo:
0.1〜1.0%,Cu:0.1〜1.2%,Ni:
0.1〜1.2%,Ce:0.01〜0.05%をそれ
ぞれ含んで構成されていればいればよい。
【0034】ここで、C(炭素)及びSi(シリコン)
は、鋳鉄で黒鉛を晶出させるのに重要な元素であり、こ
れらの元素の影響は、炭素当量CEを用いて総合的に考
える必要がある。CE値は、耐ヒートクラック性に影響
を与える黒鉛数,黒鉛面積率及び熱伝導率を変化させる
因子であり、また、材料の強度も大きく変化させるの
で、これらのバランスを考慮し添加量を選定しなければ
ならない。これらの点を考慮して添加量はC:2.8〜
3.8%,Si:1.8〜3.4%とした。
【0035】Mn(マンガン)は、脱酸,脱硫作用を有
しており、またパーライト化を促進する元素である。し
かし、過度の添加はチル化を招くので、添加量は0.5
〜1.0%とした。S(硫黄)は、P(リン)と同様に
不純物として存在し、炭化物生成促進傾向と黒鉛化傾向
との両作用を有している。Sは希土類元素Ceと化学量
論的に反応し、黒鉛晶出の下地となる。これによりチル
化の低減、黒鉛の微細化、強度の向上等の効果がある。
しかし、多量添加すると粒界に析出して耐酸化性及び耐
食性を低下させるので、添加量は0.02〜0.10%
とした。
【0036】Cr(クロム)は、フェライトの析出を抑
え、パーライトの析出を助長且つ促進するので機械的性
質を向上させる。しかし、1.5%以上添加するとチル
化を招くので、添加量は0.1〜1.5%とした。Mo
(モリブデン)は、Crと同様にパーライトを緻密化
し、機械的性質を向上させる。しかし、1.0%以上添
加するとマトリックスがベイナイト化するので、添加量
は0.1〜1.0%とした。
【0037】Cu(銅)は、パーライト安定元素であ
り、また弱い黒鉛化促進元素であるが、Cu自体では機
械的性質の向上は小さいので、Cr及びMoの炭化物生
成促進元素と組み合わせて用いる。添加量は0.1〜
1.2%とした。Ni(ニッケル)は、熱伝導率を低下
させ、ディスクロータにおいては発生熱応力を大きくし
てしまうが、一方で黒鉛化促進元素であり、材料組織中
の黒鉛を微細化させ黒鉛数を増やし、クラックの進展を
遅らせる作用がある。しかし、Niを1.2%以上添加
するとマトリックスがベイナイト化し、またコストも上
昇してしまうので、添加量は0.1〜1.2%とした。
なお、好ましくはNiの添加量は0.5〜0.6%であ
り、この場合には、耐ヒートクラック性を維持しながら
コストを極力低減できる。
【0038】Ce(セリウム)はSと化合物を作り、こ
れが黒鉛晶出核となり黒鉛化を促進し、黒鉛を微細化す
る。また、Ce添加をCr,Moと併用するとパーライ
トがより緻密化し、機械的性質が向上する。しかし、図
10に示すように、多量添加は逆にチル化を促進してし
まうので、添加量は0.01〜0.05%とした。
【0039】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のディスク
ブレーキ用ロータによれば、Ni添加量を低減する代わ
りにCe接種を行なうことで耐ヒートクラック性を損な
うことなく低コストなロータを提供することができる利
点がある。また、Ce接種を行なうことで、パーライト
が緻密化され、マトリックスが硬くなり強度も向上する
という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータの化学成分を他の供試材とともに示す図であ
る。
【図2】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータの熱的性質や常温ヤング率を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータの高温強度特性を示す図である。
【図4】(a)〜(c)はいずれも本発明の一実施形態
にかかるディスクブレーキ用ロータのヒートシミュレー
ション試験を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータのシミュレーション試験の結果を示す図であ
る。
【図6】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータの進展速度を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるディスクブレーキ
用ロータの実機ダイナモ試験にの結果を示す図である。
【図8】(a)〜(f)はいずれも本発明の一実施形態
にかかるディスクブレーキ用ロータのヒートクラック進
展速度との相関因子を調べた結果を示す図である。
【図9】(a)は本発明の一実施形態にかかるディスク
ブレーキ用ロータの進展速度と黒鉛数との関係を詳細に
示す図、(b)は同じく黒鉛数とNi及びCeとの関係
を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかるディスクブレー
キ用ロータのCe接種量とチル深さとの関係を説明する
ための図である。
【符号の説明】
1 ディスクロータ(ロータ) 2 パッド
フロントページの続き (72)発明者 高木 正己 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 松井 利治 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 原 洋夫 福島県二本松市高田100番地 三菱自動車 テクノメタル株式会社内 (72)発明者 木村 隆茂 福島県二本松市高田100番地 三菱自動車 テクノメタル株式会社内 Fターム(参考) 3J058 BA31 EA02 EA05 EA17 FA01

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比率で、C:2.8〜3.8%,S
    i:1.8〜3.4%,Mn:0.5〜1.0%,S:
    0.02〜0.10%,Cr:0.1〜1.5%,M
    o:0.1〜1.0%,Cu:0.1〜1.2%,N
    i:0.1〜1.2%,Ce:0.01〜0.05%を
    それぞれ含んで構成されていることを特徴とする、ディ
    スクブレーキ用ロータ。
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