JP2002103122A - 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法

Info

Publication number
JP2002103122A
JP2002103122A JP2000300802A JP2000300802A JP2002103122A JP 2002103122 A JP2002103122 A JP 2002103122A JP 2000300802 A JP2000300802 A JP 2000300802A JP 2000300802 A JP2000300802 A JP 2000300802A JP 2002103122 A JP2002103122 A JP 2002103122A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
film
small
metal
base material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000300802A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuyuki Yamada
保之 山田
Taichi Aoki
太一 青木
Yusuke Tanaka
裕介 田中
Natsuki Ichinomiya
夏樹 一宮
Hiroshi Hayazaki
浩 早▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
MMC Kobelco Tool Co Ltd
Original Assignee
MMC Kobelco Tool Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by MMC Kobelco Tool Co Ltd filed Critical MMC Kobelco Tool Co Ltd
Priority to JP2000300802A priority Critical patent/JP2002103122A/ja
Publication of JP2002103122A publication Critical patent/JP2002103122A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材表面に金属イオンボンバードメントを施
さなくても密着性良く(Al,Ti)(C,N)皮膜を
形成して、その優れた耐酸化性および耐摩耗性を発揮さ
せる硬質皮膜被覆工具及びその製造方法を提供する。 【解決手投】 小径軸物工具を基材とし、基板表面に、
Ti金属層、Ti(Nw1-w)で示される化学組成から
なる硬質皮膜、AlzTi1-zで示される化学組成からな
る金属層、(AlxTi1-x)(Ny1-y)で示される化
学組成からなる硬質皮膜が、基板表面側から上記順序で
形成されるように操業する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性に優れた硬
質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法に関し、詳細
には高速度鋼製の小径ドリルや小径エンドミルなどの小
径軸物工具であって(Al,Ti)(N,C)膜が密着
性良く被覆された硬質皮膜被覆工具とその製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から高速度鋼製工具においてTiN
やTiCなどの硬質皮膜を形成することで耐摩耗性の向
上が図られている。上記硬質皮膜について比較すると、
TiNはTiCに比べて耐熱性が良好であり、切削時の
加工熱や摩擦熱による工具すくい面のクレーター摩耗も
抑制される。一方TiCはTiNより硬度が高く、被削
材と接するフランク摩耗に対しては高い耐久性を示す。
しかしながら、耐酸化性に優れたTiNにおいても酸化
開始温度は約600℃程度であり、また高い硬度を有す
るTiCであってもそのビッカース硬さは2300程度
である。
【0003】そこで特公平5−67705号公報には、
TiNやTiCの耐酸化性や硬度の向上を目的としてT
iの一部をAlに置換した複合窒化物皮膜が開示されて
おり、酸化開始温度は約800℃、ビッカース硬さは約
3000という特性を示す硬質皮膜が開発されている。
【0004】しかしながら、これらの皮膜はTiNに比
べて内部応力が2倍ほど高く、耐摩耗性を改善する目的
で厚膜化するにつれて内部応力も増大し、その内部応力
がクラックの発生や皮膜剥離の原因となっている。この
問題を解決するために皮膜と基材との界面にTiの金属
層を0.5μm以下の厚みで形成する方法(特開平4−
128362号公報)やAlTiの金属層を5nm以上
500nm以下の厚みで形成した工具(特開平7−31
0173号公報)、TiNの層を形成した工具(特許第
2540905号,特許第2580330号,特許第2
560541号)が開発されている。
【0005】ところで、基材表面に上記の硬質皮膜のコ
ーティングを行う場合、硬質皮膜の密着力を高めること
を目的として、コーティング炉内において蒸着前にTi
やAl金属などの真空アーク放電等を利用した金属イオ
ンのボンバードメントを行い、基材表面を清浄化するこ
とが一般的である。具体的には、図1に示す装置(1は
真空槽,2は排気口,3は反応ガス導入口,4は基体,
5はヒータ,6はTiカソード,7はトリガー,8はア
ーク直流電源,9はバイアス電源を夫々示す)等を使用
し、カソードでアーク放電を行い、発生させた金属イオ
ンにより蒸着前にスパッタクリーニングする方法等が知
られている。また特公平6−74497号公報には、金
属イオンボンバードメントを施した後、溶融蒸着法によ
り硬質皮膜を形成する方法が示されている。
【0006】上記金属イオンボンバードメントは、基材
表面の洗浄効果が大きいので硬質皮膜を密着性良く形成
することができる。但し、低いバイアス電圧で金属イオ
ンボンバードメントを行っても、十分なクリーニング効
果が得られず膜の密着力が不十分となることから、従来
方法では基板に印加するバイアス電圧が−1000〜−
1300Vに設定されていたり、また特公平6−744
97号公報に示されている方法ではバイアス電圧を−6
00〜−1000Vとして金属イオンボンバードメント
を行っている。即ち金属イオンボンバードメントのクリ
ーニング効果は、−600〜−1300Vの高電圧に設
定することで得られるものであるが、高電圧を印加する
ことによりイオン衝撃が起こり易く金属基材の温度が上
昇しやすい。この為、比較的大型の工具に適用する場合
には問題とならないが、高速度鋼製小径ドリルや小径エ
ンドミルなどの小径軸物工具に適用した場合には、工具
の熱容量が小さいため、特に先端部が短時間で焼戻し温
度(550℃前後)に加熱され、工具基材の硬度低下が
起こり、切削性能が低下するという問題を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、基材表面に金属イオンボ
ンバードメントを施さなくても密着性良く(Al,T
i)(C,N)皮膜を形成して、その優れた耐酸化性お
よび耐摩耗性を発揮させる硬質皮膜被覆工具及びその製
造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明に係る耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具と
は、小径軸物工具を基材とし、第1層として基材表面に
Ti金属層が5〜500nmの厚みで形成され、該第1
層の上には第2層として、 Ti(Nw1-w) 但し、0.6≦w≦1.0 で示される化学組成からなる硬質皮膜が0.5〜20μ
mの厚みで形成され、上記第2層の上には第3層とし
て、 AlzTi1-z 但し、0.05≦z≦0.75 で示される化学組成からなる金属層が5〜500nmの
厚みで形成され、上記第3層の上には第4層として、 (AlxTi1-x)(Ny1-y) 但し、0.05≦x≦0.75 0.6≦y≦1 で示される化学組成からなる硬質皮膜が0.5〜20μ
mの厚みで形成されてなることを要旨とするものであ
り、特に前記基材の外径が5mm以下である高速度鋼製
ドリルの皮膜とした場合に効果的である。
【0009】また、本発明の硬質皮膜被覆小径軸物工具
を製造するにあたっては、金属イオンを用いるアークイ
オンプレーティングにより−20〜−400Vの印加電
圧で第1層及び/又は第3層を形成することが望まし
く、更には基材表面に第1層を形成する前に、アルゴン
ガス等の気体のグロー放電によるイオンボンバードを行
い基材表面を清浄化することが推奨される。
【0010】
【発明の実施の形態】図2は種々の外径及び長さを有し
形状の異なる高速度鋼製ドリルを用いて、アークイオン
プレーティング装置内で下記の条件により金属イオンボ
ンバードメントを行ったときの、ドリル先端部の温度の
経時変化を測定した結果を示すグラフである。尚、測定
は2色式赤外放射型表面温度計を用い、300〜800
℃の温度範囲で行った。 [金属イオンボンバード条件] 到達真空度 :4×10-3Pa アーク蒸発源 :φ60mmAlターゲット1個およびφ60mmTiター ゲット1個(対向させて同時使用) アーク電流 :Alターゲット 150A,Tiターゲット 100A バイアス電位 :−600V ターゲット〜ドリル間距離:100mm ドリル自転速度:1rpm
【0011】図2のグラフから、外径5mm以下のドリ
ルを対象として金属イオンボンバードメントを行う場合
には、基材温度を550℃以下に制御することが困難な
ことが分かる。
【0012】そこで本発明者らは、金属イオンボンバー
トメントにより密着力を高めることのできない小径工具
の基材表面に、耐酸化性および耐摩耗性に優れた(A
l,Ti)(C,N)皮膜を密着力よく形成する方法に
ついて鋭意研究を重ねた。その結果、基材と(Al,T
i)(N,C)皮膜の間に、基材側からTi金属層、T
i(N,C)層、AlTi金属層を介在させれば、密着
力が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させ
た。
【0013】従来技術においても基材にTi(N,C)
層を生成し、その上に(Al,Ti)(N,C)を形成
する方法は提案されているが、本発明では基材とTi
(N,C)層間にTi金属中間層を形成し、更にTi
(N,C)層と(Al,Ti)(N,C)層の間にAl
Ti金属中間層を形成することで皮膜の密着力を従来よ
りも大幅に向上させることに成功したものである。
【0014】尚、Ti金属層を基材とTi(N,C)層
間に形成することで、皮膜の密着力が向上した理由は、
Ti金属中間層が母材とTi(N,C)間の界面に発
生する応力を緩和し、基材とTi(N,C)膜に相互
拡散を起こし密着力を高め、さらにTi金属層がTi
(N,C)膜の生成核になるためであると考えられる。
【0015】またAlTi金属層の効果についても同様
に、Ti(N,C)層と(Al,Ti)(N,C)層
間の応力を緩和し、隣接する層同士の相互拡散による
密着力を向上させ、(Al,Ti)(N,C)膜の生
成核として働くからであると考えられる。
【0016】これらの金属中間層を形成するにあたって
はアークイオンプレーティングを採用すればよいが、小
径工具に適用する場合には、印加電圧を−20〜−40
0Vとすることが必要である。熱容量の小さい小径工具
の場合には、印加電圧が−400Vを超えるとイオン衝
撃により、先端部の温度が500℃以上に上昇して高速
度鋼母材が硬度低下を起こすことがあり、また−20V
未満のバイアス電位ではイオンプレーティング時の電気
的吸引効果が小さく、金属中間層自体の密着力が劣るか
らである。
【0017】図3のグラフは、JIS規格SKH51相
当の高速度鋼(ビッカース硬度850)であって表面を
鏡面研磨した外径3mm×長さ70mmの円柱状基材を
アークイオンプレーティング装置内に設置し、その基材
に種々のバイアス電圧を印加して、図2と同様の条件で
アーク放電により金属をイオン化した際の先端部の温度
変化を測定した結果である。バイアス電位が−500V
および−1300Vの場合には、基材先端の温度が急激
に上昇するのに対し、−400V以下の印加電圧では、
基材先端部の温度上昇が緩やかで、高速度鋼の焼戻し温
度である550℃以下に制御できることが分かる。
【0018】尚、小径工具であっても基材にTi金属中
間層を形成する前に気体イオンのボンバードメントによ
るスパッタクリーニングを行えば基材表面の清浄度が増
し、さらに密着力を高めることができ望ましい。上記ボ
ンバードメントに用いる気体としアルゴン,ヘリウム,
窒素等の不活性ガスが好ましい。
【0019】以下に各金属中間層、Ti(N,C)、
(Al,Ti)(N,C)の組成範囲の限定理由につい
て述べる。
【0020】第2層であるTi(N,C)層の組成はT
i(Nw1-w):(0.6≦w≦1)とすることが必要
である。これは、w<0.6になると皮膜の靱性が低下
し、応力緩和層としての機能が低下するためである。な
お、wの下限値が0.8以上であると靱性が高まるので
好ましく、wを1としてTiNとするのが最も望まし
い。
【0021】第3層であるAlTi金属層の組成はAl
zTi1-zにおいて0.05≦z≦0.75とすることが
必要である。zの値を0.05以上とするのは、z<
0.05ではAlの含有量が少なすぎて、第4層の(A
xTi1-x)(Ny1-y)硬質皮膜との間で十分な密着
性が得られないからである。一方、zの値が0.75を
超えると中間層と皮膜界面で一部x>0.75である
(AlxTi1-x)(Ny1 -y)が生成する。(Alx
1-x)(Ny1-y)皮膜はxの値が小さい場合には立
方晶の結晶構造をもち、大きい場合には六方晶となるの
であり、皮膜形成方法により立方晶が六方晶に変化する
xの値は異なるが、アークイオンプレーティング法を採
用することによりxが比較的大きい値まで立方晶を維持
できるが、それでもx>0.75となると六方晶に変化
する。六方晶の(Al,Ti)(N,C)は皮膜硬さが
低下し十分な耐摩耗性が得られず、しかも異なる結晶構
造からなる炭・窒化物が界面に形成されることになり、
密着力は低下するのでxは0.75以下とすることが必
要である。
【0022】なおzの下限値としては0.25が好まし
く、0.56以上であることがより望ましい。またzの
上限値としては0.7が好ましく、0.65以下である
ことがより望ましい。
【0023】表面に被覆する第4層の(AlxTi1-x
(Ny1-y)皮膜の金属組成は0.05≦x≦0.75
の範囲とすることが必要である。これはx<0.05で
は皮膜の耐酸化性が十分でなく、またx>0.75では
結晶構造が六方晶となり皮膜硬度が低下するため、十分
な耐摩耗性が得られないからである。
【0024】なお、耐酸化性と皮膜硬度を兼ね備える上
で、xの下限値としては0.50が望ましく、0.56
以上であることがより望ましい。またxの上限値として
は0.70が好ましく、0.65以下であることがより
望ましい。
【0025】また(AlxTi1-x)(Ny1-y)のyの
値は、0.6以上1以下とすることが必要である。これ
は、y<0.6になると皮膜の耐酸化性が低下するから
であり、yの値は0.8以上であると耐酸化性が一層向
上してより好ましい。
【0026】次に各層の厚みの限定理由について述べ
る。
【0027】本発明におけるTiおよびAlTi金属中
間層の厚みは5nm以上500nm以下とすることが必
要である。これは5nm未満では金属中間層を形成した
効果が十分にあらわれず、一方500nmを超すと衝撃
力により金属中間層にクラックが入って硬質皮膜の剥離
を起こすことがあり望ましくないからである。
【0028】なお、TiまたはAlTiのいずれであっ
ても金属中間層の厚みの下限は10nmが好ましく、2
0nmがより望ましい。金属中間層の厚みの上限は30
0nmが好ましく、150nm以下がより望ましい。
【0029】第2層のTi(N,C)膜の厚さに関して
は、0.5μm以上20μm以下であることが必要であ
る。これは、薄すぎる場合には耐摩耗性が不足し、かつ
応力緩和層として機能せず、一方厚すぎる場合には、衝
撃力によって皮膜にクラックが入り、皮膜本来の特性が
得られないためである。なお、工具基材本来の切れ刃の
特性を生かし且つ優れた耐摩耗性と応力緩和性を得るに
は、皮膜の厚さを0.8μm以上とすることが好まし
く、1μm以上がより望ましい。一方上限については1
2μmが好ましく、8μm以下がより望ましい。
【0030】第4層である(Al,Ti)(N,C)膜
の厚さに関しては、0.5μm以上20μm以下である
ことが必要である。これは薄すぎる場合は耐摩耗性が不
足し、一方厚すぎる場合には衝撃力によって皮膜にクラ
ックが入り、皮膜本来の特性が得られないためである。
なお、工具基材本来の切れ刃の特性を生かし且つ優れた
耐摩耗性を得るには、硬質皮膜の厚さを0.8μm以上
とすることが好ましく、1μm以上がより望ましい。一
方、上限については12μmが好ましく、8μm以下が
より望ましい。
【0031】本発明において第1層及び第3層の金属中
間層を形成する場合は、カソードを蒸発源とするアーク
放電によりイオン化させたAlおよびTiの金属成分を
真空中で被覆することによって得ることができ、この場
合、目的とする皮膜組成と同一金属組成のターゲットを
使用すれば、カソード物質の組成のずれを生じることが
ないので、安定した組成の皮膜が得られやすい。このと
き、基材にバイアス電位を印加すると、皮膜の密着性を
一段と高めることができるので好ましい。また、第2層
及び第4層の金属炭・窒化物を形成する場合は、カソー
ドを蒸発源とするアーク放電によりイオン化させたAl
およびTiの金属成分をN2雰囲気および/またはCH4
雰囲気等の窒化および/もしくは炭化雰囲気中でイオン
プレーティングすることによって得ることができ、この
場合、目的とする皮膜組成と同一金属組成のターゲット
を使用すれば、カソード物質の組成のずれを生じること
がないので、安定した組成の皮膜が得られやすい。また
基板にバイアス電位を印加すると、皮膜の密着性を一段
と高めることができるので好ましい。尚、金属炭・窒化
物を形成する場合のイオンプレーティング時のガス圧も
特に限定されないが、好ましいのは0.1〜150Pa
程度であり、この条件では結晶性で緻密な耐摩耗性の一
段と優れた硬質皮膜が得られやすい。
【0032】本発明は、図2に示す様に、金属イオンボ
ンバードメントによるスパッタクリーニングで温度上昇
を起こし易い、直径が5mm以下の軸物工具に好適であ
り、また直径が6mm以上であっても長いものは先端部
の温度が上昇し易いので、金属イオンボンバードに代え
て本発明に係る硬質皮膜を形成することが望ましい。
【0033】次に本発明の実施例を示すが、本発明はも
とより下記実施例によって制限を受けるものではなく、
前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実
施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明
の技術的範囲に含まれる。
【0034】
【実施例】実施例1 皮膜の密着性を調べることを目的として、JIS規格S
KH51相当の高速度鋼(ビッカース硬度850)を用
い、表面を鏡面研磨した外径3mm×長さ90mmの円
柱状の基材をアーク放電方式イオンプレーティング装置
に装入し、表1に示す種々の層構造を有する硬質皮膜N
o.1〜20を形成した。金属層は400℃に加熱した
後、真空中でTi単独またはTi及びAlからなるカソ
ードを蒸発させると共に、且つその基材に0〜−600
Vの種々の電位を印加して金属イオンによるイオンプレ
ーティングを行った。
【0035】また第2層[Ti(N,C)層]及び第4
層[(Al,Ti)(N,C)層]は、カソードを蒸発
させると共に、反応ガスとしてN2ガスまたはN2/CH
4混合ガスを導入し、0.93Paの雰囲気とし、且つ
その基材に−150Vの電位を印加して形成した。
【0036】尚、No.2は、金属イオンによるイオン
プレーティングに先立ち、反応ガスとしてArガスを導
入し、9.3Paの雰囲気とし、且つその基材に−40
0Vの電圧を印加してArガスのグロー放電を起こし、
金属イオンボンバードメントによる基材のスパッタクリ
ーニングを行った。
【0037】皮膜の組成は電子プルーブX線マイクロア
ナリシスおよびオージェ電子分光法により求め、金属中
間層の厚みは透過型電子顕微鏡による断面像並びに高分
解能走査型電子顕微鏡により求めた。また金属中間層の
組成は透過型電子顕微鏡内でのエネルギー分散X線分析
法並びに基材に金属中間層のみ形成した試作部材のオー
ジェ電子分光法により求めた。なお、本実施例で得られ
た皮膜の結晶構造をX線回折で調べたところ、すべてT
iNと同じ回折パターンを示し、立方晶であった。これ
らの試作部材のコーティング被覆部先端から10mmの
位置を、先端径0.2mmの円錐型ダイヤモンド圧子を
用い、加重速度100N/min、引掻速度10mm/
minによりスクラッチ試験に供し、密着力を測定し
た。結果は表1に示す。
【0038】また先端より1mmの断面で外周より0.
5mmの位置での硬さをビッカース硬さ計により10k
gの荷重を用いて測定した。得られた結果は表1に併記
する。
【0039】
【表1】
【0040】No.1,2は本発明例であり、スクラッ
チ試験による臨界荷重が高く、密着性に優れ、ビッカー
ス硬さも高い値を示している。
【0041】No.3〜5は従来例であって、No.3
は基材に直接(Al,Ti)Nを形成したもの、No.
4は中間層としてTiNのみを形成したもの、No.5
は中間層としてAlTi金属層を形成したものである。
【0042】またNo.6〜20は比較例であって、N
o.6,7はそれぞれTi金属中間層生成時のバイアス
電圧が低い場合と高い場合の比較例、No.8,9はそ
れぞれAlTi金属中間層生成時のバイアス電圧が低い
場合と高い場合の比較例、No.10はTi(N,C)
層の組成でCが多い場合の比較例、No.11,12は
それぞれAlTi金属中間層のAl量が少ない場合と多
い場合の比較例、No.13,14はそれぞれ(Al,
Ti)(N,C)層のAl量が少ない場合と多い場合の
比較例、No.15,16はTi金属中間層が薄すぎる
場合の比較例、No.17はTi金属中間層が厚すぎる
場合の比較例、No.18はTi(N,C)層が薄すぎ
る場合の比較例、No.19,20はそれぞれAlTi
金属中間層が薄すぎる場合と厚すぎる場合の比較例であ
る。
【0043】従来例及び比較例のいずれもスクラッチ試
験において皮膜が基材から剥離する臨界荷重の値が乏し
く密着性が不十分であることが分かる。また比較例N
o.7,9では金属中間層形成時のバイアス電圧が高す
ぎるため、高速度鋼基材が温度上昇し、大幅な高度低下
が見られている。
【0044】これに対して、本発明例である実施例N
o.1,2は高い臨界荷重値を示し、皮膜の密着性が非
常に優れており、基材硬さの低下は生じていない。
【0045】実施例2 JIS規格SKH51相当の高速度鋼を用いて、外径
1.5mm×長さ48mmのストレートドリルを作製
し、このドリルを基材とし、実施例1と同様にして表2
に示す層構造の硬質皮膜を形成した。得られた硬質皮膜
被覆ドリル各3本を用いて、下記条件の切削試験を行
い、寿命までの穴明け数を測定した。得られた結果の平
均値を表2に示す。 (切削条件) 被削材 :S50C 穴深さ :5mm、貫通穴 切削速度:28m/min 送り :0.03mm/rev 切削油 :エマルション
【0046】
【表2】
【0047】No.1,2は本発明例であり、(Al,
Ti)(N,C)膜が高い密着力で被覆されているの
で、優れた耐摩耗性を示している。
【0048】No.3〜5は従来例であり、本発明例に
比べ膜の密着力が劣るため穴あけ個数が少ない。
【0049】No.7,9は高いバイアス電圧にてTi
あるいはAlTi金属中間層が生成された比較例であ
り、基材が硬度低下を起こし、良好な耐摩耗性が得られ
ていない。またその他の比較例No.6,8,10〜1
7は、(Al,Ti)(N,C)膜の密着力が乏しいた
め本発明例に対し耐摩耗性が劣っている。
【0050】実施例3 JIS規格SKH55相当の高速度鋼を用いて、外径2
mmの2枚刃エンドミルを作製し、このエンドミルを基
材として実施例1と同じ方法で表3に示すような層構造
の硬質皮膜を形成した。得られた硬質皮膜被覆エンドミ
ルをそれぞれ3本用いて下記に示す切削条件にて切削試
験を行い、切損までの切削長を測定した。 (切削条件) 被削材 :S50C(硬さHB220) 切削方法:溝加工、深さ0.5mm×幅2mm 切削速度:42m/min 送り :120mm/min 切削油 :エマルション 得られた結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】No.1,2は本発明例であり、(Al,
Ti)(N,C)膜の高い密着力により優れた切削特性
が発揮されている。
【0053】No.3〜5は従来例であり、本発明例N
o.1,2に比べて切削長が短く、耐摩耗性に劣ってい
る。
【0054】No.7,9は金属中間層形成時のバイア
ス電圧が高すぎる比較例であり、基材温度が高くなり過
ぎ、硬度が低下したため切削ができなかった。またその
他の比較例No.6,8,10〜17は本発明例と比べ
て膜の密着力が乏しいため本発明ほどの切削特性は得ら
れなかった。
【0055】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されているの
で、高印加電圧で金属イオンボンバートメントを施さな
くても、密着性良く(Al,Ti)(N,C)皮膜を形
成することができ、非常に優れた耐酸化性および耐摩耗
性を発揮する硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方
法を提供できることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属イオンボンバートメントの装置構成を示す
概略説明図である。
【図2】種々の形状の工具に金属イオンボンバートメン
トを施した場合の温度変化を示すグラフである。
【図3】印加電圧を変化させて金属イオンボンバートメ
ント(または金属イオンプレーティング)を施した場合
の温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 真空槽 2 排気口 3 反応ガス導入口 4 基体 5 ヒータ 6 Tiカソード 7 トリガー 8 アーク直流電源 9 バイアス電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 裕介 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツール株式会社 内 (72)発明者 一宮 夏樹 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツール株式会社 内 (72)発明者 早▲崎▼ 浩 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツール株式会社 内 Fターム(参考) 3C037 CC02 CC04 CC08 3C046 FF10 FF13 FF16 FF18 FF21 FF25 4K029 AA02 AA21 BA17 BA21 BA23 BA54 BB02 BC02 BD05 CA06 DD06 EA01 FA04 FA05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 小径軸物工具を基材とし、 第1層として基材表面にTi金属層が5〜500nmの
    厚みで形成され、 該第1層の上には第2層として、 Ti(Nw1-w) 但し、0.6≦w≦1.0 で示される化学組成からなる硬質皮膜が0.5〜20μ
    mの厚みで形成され、 上記第2層の上には第3層として、 AlzTi1-z 但し、0.05≦z≦0.75 で示される化学組成からなる金属層が5〜500nmの
    厚みで形成され、 上記第3層の上には第4層として、 (AlxTi1-x)(Ny1-y) 但し、0.05≦x≦0.75 0.6≦y≦1 で示される化学組成からなる硬質皮膜が0.5〜20μ
    mの厚みで形成されてなることを特徴とする耐摩耗性に
    優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具。
  2. 【請求項2】 前記基材の外径が5mm以下である請求
    項1に記載の硬質皮膜被覆小径軸物工具。
  3. 【請求項3】 前記基材が高速度鋼製ドリルである請求
    項1または2に記載の硬質皮膜被覆小径軸物工具。
  4. 【請求項4】 金属イオンを用いるアークイオンプレー
    ティングにより−20〜−400Vの印加電圧で第1層
    及び/又は第3層を形成する請求項1〜3のいずれかに
    記載の硬質皮膜被覆小径軸物工具の製造方法。
  5. 【請求項5】 基材表面に第1層を形成する前に、気体
    のグロー放電によるイオンボンバードを行い基材表面を
    清浄化することを特徴とする請求項4に記載の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 グロー放電に用いる前記気体がアルゴン
    ガスである請求項5に記載の製造方法。
JP2000300802A 2000-09-29 2000-09-29 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法 Pending JP2002103122A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000300802A JP2002103122A (ja) 2000-09-29 2000-09-29 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000300802A JP2002103122A (ja) 2000-09-29 2000-09-29 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002103122A true JP2002103122A (ja) 2002-04-09

Family

ID=18782427

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000300802A Pending JP2002103122A (ja) 2000-09-29 2000-09-29 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002103122A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009047867A1 (ja) * 2007-10-12 2009-04-16 Hitachi Tool Engineering, Ltd. 硬質皮膜被覆部材、及びその製造方法
EP2072636A2 (en) 2007-12-21 2009-06-24 Sandvik Intellectual Property AB Method of making a coated cutting tool, and cutting tools thereof
US8124222B2 (en) * 2007-12-21 2012-02-28 Sandvik Intellectual Property Ab Coated cutting tool and method of making a coated cutting tool
CN104493433A (zh) * 2014-11-21 2015-04-08 青岛麦特瑞欧新材料技术有限公司 一种高精度纯钛棒材的制备方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009047867A1 (ja) * 2007-10-12 2009-04-16 Hitachi Tool Engineering, Ltd. 硬質皮膜被覆部材、及びその製造方法
US8304098B2 (en) 2007-10-12 2012-11-06 Hitachi Tool Engineering, Ltd. Hard-coated member, and its production method
JP5246165B2 (ja) * 2007-10-12 2013-07-24 日立ツール株式会社 硬質皮膜被覆部材の製造方法
EP2072636A2 (en) 2007-12-21 2009-06-24 Sandvik Intellectual Property AB Method of making a coated cutting tool, and cutting tools thereof
US8124222B2 (en) * 2007-12-21 2012-02-28 Sandvik Intellectual Property Ab Coated cutting tool and method of making a coated cutting tool
CN104493433A (zh) * 2014-11-21 2015-04-08 青岛麦特瑞欧新材料技术有限公司 一种高精度纯钛棒材的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2793772B2 (ja) 密着性に優れた硬質皮膜被覆工具および硬質皮膜被覆部材
CN108883481B (zh) 包覆切削工具
Barshilia et al. Deposition of TiAlN coatings using reactive bipolar-pulsed direct current unbalanced magnetron sputtering
CN102091923B (zh) 多层涂覆切削工具
JP4205546B2 (ja) 耐摩耗性、耐熱性および基材との密着性に優れた積層皮膜の製造方法
JP2793696B2 (ja) 耐摩耗性皮膜
US20060219325A1 (en) Method for producing alpha-alumina layer-formed member and surface treatment
KR101860292B1 (ko) 피복 공구 제조 방법
SE529161C2 (sv) Skärverktyg med kompositbeläggning för finbearbetning av härdade stål
JP2001316800A (ja) 非晶質炭素被覆部材
US20110067996A1 (en) Pvd method for depositing a coating onto a body and coated bodies made thereof
EP3067438A1 (en) Method for forming intermediate layer formed between substrate and dlc film, method for forming dlc film, and intermediate layer formed between substrate and dlc film
JP5373781B2 (ja) 多層金属酸化物被覆を有する工具とその被覆工具の製造方法
JP2006307318A (ja) αアルミナ層形成部材の製法および表面処理法
JP5234357B2 (ja) 潤滑性に優れる耐摩耗性工具部材
JP2012228735A (ja) 耐摩耗性に優れる被覆工具およびその製造方法
JP2002103122A (ja) 耐摩耗性に優れた硬質皮膜被覆小径軸物工具及びその製造方法
JP2580330B2 (ja) 耐摩耗性皮膜
JP2004124246A (ja) 耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜およびその製造方法、並びに耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具
JPH10130821A (ja) 耐摩耗性に優れた硬質膜被覆高速度鋼製小径軸物工具およびその製造方法
EP3075474A1 (en) Hard lubricating coating film and hard lubricating coating film-covered tool
JP3045184B2 (ja) 耐摩耗性硬質皮膜及びその形成方法と、耐摩耗性硬質皮膜被覆工具
JP2020109210A (ja) 硬質皮膜の成膜方法
JP2004230515A (ja) 高機能加工用工具
JP5229826B2 (ja) 被膜、切削工具および被膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050308

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050428

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20051018