JP2002102896A - 有機性汚泥の嫌気性消化法とその装置 - Google Patents

有機性汚泥の嫌気性消化法とその装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストで効率的に液化・分解して高い液化
率が得られ、汚泥の分離性や脱水性の改善できる有機性
汚泥の嫌気性消化法とその装置を提供する。 【解決手段】 有機性汚泥を、嫌気性消化するに際し、
該有機性汚泥10を生物学的液化工程11で液化し、次
いで、物理化学的及び/又は機械的液化工程12で液化
処理した後、嫌気性消化14、15することとしたもの
であり、前記有機性汚泥の液化処理は、前記生物学的液
化工程と物理化学的及び/又は機械的液化工程の間を循
環させて行うことができ、前記液化処理した有機性汚泥
は、固液分離13して、液状物16を嫌気性消化し、分
離した固形物の一部18を生物学的液化工程に循環する
と共に、他の一部19を系外に排出するのがよく、前記
嫌気性消化は、液化処理液16を酸醗酵工程14に導入
した後、メタン醗酵工程15に導入して行うことができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機性汚泥の嫌気
性消化に係り、特に、下水等の有機性排水の処理場から
発生する汚泥や、食品残さ、家畜糞尿等の有機汚泥から
メタンを回収をする嫌気性消化法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術を、図4を用いて説明する。図
4は、下水処理場で行われている汚泥処理システムの一
例であり、初沈汚泥1と余剰汚泥2は、濃縮槽3で濃度
4〜5%に濃縮された後、消化槽4に送られ、嫌気性微
生物の働きにより、炭酸ガスとメタンガスを主成分とす
るバイオガス7に分解される。消化後の汚泥は、汚泥貯
槽5に導入され、ベルトプレス等の脱水機6で脱水さ
れ、脱離液8は曝気槽に送られ、脱水ケーキ9は廃棄処
分されていた。嫌気性消化は、汚泥や家畜糞尿等の濃厚
な有機性汚泥を低コストで処理する方法として適用され
ており、生成するメタンは、エネルギー源としての利用
価値が高い。しかし、有機性汚泥の種類によっては分解
率が低く、回収できるメタンも少ない場合がある。その
ため、従来は酵素や液化能力の高い高温微生物等を利用
した生物学的液化処理や、熱やオゾン、酸、アルカリ剤
等を使った物理化学的液化処理、ボールミルやホモジナ
イザー等を使った機械的液化処理により有機性汚泥を液
化し、メタン回収率を上げることが検討されている。
【0003】有機性汚泥からメタン回収率を上げる手段
として、前述のような生物学的液化処理や物理化学的/
機械的液化処理を、単独、複数あるいは同時に行うこと
で、有機性汚泥の液化率を上げることが検討されてきた
が、汚泥の液化率が低かったり、液化に要するコストの
割にメタンの回収率が低いなど、いずれも実用化には至
っていない。特に、下水処理の場合、性状の異なる初沈
汚泥と、余剰汚泥が発生するため、単独の液化方法で
は、高い液化率が得られない場合があった。一方、図4
の従来法では、消化槽の滞留時間が20〜30日程度要
することから、広い設置スペースが必要であり、維持管
理の面でも問題があった。また、消化汚泥は脱水性が悪
く、脱水用のポリマを多量に使用することから、経済性
の面でも問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解決し、有機性汚泥を、その分解特性にあ
った方法で液化することで、低コストで効率的に液化・
分解して高い液化率が得られ、有用なメタンガスを得る
ことができ、また、設置ペースの低減や汚泥の分離性や
脱水性を改善し、汚泥脱水用のポリマ代を大幅に低減す
ることができる有機性汚泥の嫌気性消化法とその装置を
提供することを課題とする。なお、本発明で液化率と
は、下記式数1に示すように、固形物由来のCODc
r.濃度と液化処理により増加した溶解性CODcr.
濃度の比率として定義した。また、「溶解性」とは、孔
径1.0μmのろ紙のろ液の分析値を示す。
【数1】
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、有機性汚泥を、嫌気性消化するに際
し、該有機性汚泥を生物学的液化工程で液化し、次い
で、物理化学的及び/又は機械的液化工程で液化処理し
た後、嫌気性消化することを特徴とする有機性汚泥の嫌
気性消化法としたものである。前記嫌気性消化法におい
て、有機性汚泥の液化処理は、前記生物学的液化工程と
物理化学的及び/又は機械的液化工程の間を循環させて
行うことができ、前記液化処理した有機性汚泥は、固液
分離して、液状物を嫌気性消化し、分離した固形物の一
部を生物学的液化工程に循環すると共に、他の一部を系
外に排出するのがよく、また、前記嫌気性消化は、液化
処理液を酸醗酵工程に導入した後、メタン醗酵工程に導
入して行うことができる。また、本発明では、有機性汚
泥を嫌気性消化する処理装置において、該有機性汚泥を
生物学的に液化処理する処理槽と、該処理液をさらに液
化処理する物理化学的及び/又は機械的液化処理装置
と、該液化処理後の処理液を固液分離する固液分離装置
と、該固液分離後の分離液を嫌気性消化する消化装置
と、前記固液分離後の固形物の一部を、前記生物学的液
化処理槽に循環する経路とを有する有機性汚泥の嫌気性
消化処理装置としたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】下水汚泥等の有機性汚泥には、様
々な物質が混在している。下水処理により発生する初沈
汚泥と余剰汚泥の場合、汚泥に含まれる個々の有機成分
の比率は大きく異なり、初沈汚泥は、主にトイレットペ
ーパーに由来するセルロース分が多いのに対して、余剰
汚泥は、微生物に由来する蛋白質を多く含んでいる。そ
のため、初沈汚泥と余剰汚泥に対して有効な液化方法
は、それぞれ異なる。すなわち、初沈汚泥に含まれるセ
ルロース分は、熱やアルカリには安定であるのに対し
て、余剰汚泥は、蛋白質が主成分であるため熱やアルカ
リにより容易に液化される。また、微生物による分解性
も異なり、嫌気性消化による消化率は、初沈汚泥が70
%程度であるのに対して、余剰汚泥は30〜40%程度
であり、初沈汚泥の方が微生物による分解を受け易いと
いう特徴がある。
【0007】本発明では、前述のような分解特性の違い
を考慮して、有機性汚泥を効率的かつ経済的に液化する
ことを可能とするものである。また、循環処理は、物理
化学的/機械的処理により液化しないまでも、生物分解
しやすくなった汚泥を再度、生物学的液化処理に循環す
ることで、より高い液化率を得ることができる。有機性
汚泥中の固形物の液化やその低分子化には、様々な種類
の微生物が関与しており、有機性汚泥の主要な構成成分
である炭水化物は、単糖類や低級脂肪酸に、蛋白質はペ
プチドやアミノ酸、脂肪酸に、脂肪は脂肪酸やグリセリ
ンに分解される。本発明における生物学的液化工程で
は、固形物の液化とそれら液化物の低分子化を目的とし
たものである。生物学的液化工程の運転条件としては、
滞留時間は0.5日〜10日、好ましくは2日〜6日程
度、温度条件は25℃〜80℃、好ましは35℃〜70
℃程度、pHは4.5〜10.0、好ましくは5.5〜
8.0程度で運転すると良い。
【0008】前述の運転条件は、対象とする有機性汚泥
の性状により最適値に設定すれば良く、例えば温度条件
としては、炭水化物主体の有機性汚泥の場合は、35℃
程度の中温温度域で液化が進行しやすく、蛋白質主体の
有機性汚泥の場合は、50℃〜65℃の高温温度域で液
化が進行しやすくなる。一方、前述の条件以外にも、窒
素やりん、各種の微量金属も、生物学的液化の効果を大
きく左右する。特に、窒素は微生物細胞の合成に不可欠
であり、有機物に対する窒素の比率(有機物/窒素)が
低い場合、生物学的液化効果は低下し、特に投入する有
機物濃度が高い場合には、その影響は顕著になる。その
ため、対象とする有機性汚泥の窒素含有率が低い場合に
は、し尿や余剰汚泥などを添加して、窒素含有率を調整
すると良い。ちなみに、有機物:窒素=10〜20:1
の範囲にするのが良い。
【0009】物理化学的/機械的液化工程は、生物学的
液化処理では液化しにくい、有機性固形物の液化を促進
するために行うものである。有機性汚泥のメタン醗酵で
は、固形物の微細化や液化が全体の反応を律速している
ことから、それらを物理化学的及び/又は機械的液化作
用により微細化・液化することにより、メタン醗酵の高
速化と効率化を促進できる。なお、本発明で使用できる
物理化学的液化処理は、熱、オゾン、酸又はアルカリ剤
を用いた公知の処理方法を単独で、又は併用して用いる
ことができ、また、機械的液化処理としては、ボールミ
ルやホモジナイザー、超音波処理等の公知の処理方法を
用いることができる。本発明では、液化した有機性汚泥
を分解性の低い固形物と分解性の高い液状物に分けるこ
とにより、UASB法などの高速メタン醗酵法の適用が
可能となり、設置面積の大幅な低減が可能となる。ま
た、固液分離した物理化学的/機械的液化処理後の分離
濃縮汚泥の一部を、生物学的液化処理工程に循環するこ
とで、該分離濃縮汚泥の生物学的液化工程での液化効率
を上げることが可能となる。系外に排出する汚泥量は、
生物学的液化工程の汚泥濃度が一定になるように、非液
化汚泥量分を引抜くと良い。
【0010】固液分離後の分離水のSS濃度は、UAS
Bリアクタ等に高濃度のSSが流入すると処理が不安定
となるため、同リアクタに導入する分離液あるいは酸醗
酵液のSS濃度は、3000mg/L以下、好ましくは
1000mg/L以下にすると良い。また、前記物理化
学的液化処理の熱処理の場合、主に余剰汚泥や生物学的
液化処理工程で増殖した微生物の液化に有効であると共
に、液化した有機性汚泥の固液分離性が改善できるた
め、簡易な固液分離装置により固形物と液化物を分離す
ることが可能となる。また、熱処理後の固形物は、脱水
性に優れることから、脱水用のポリマ代を大幅に低減す
ることが可能となる。
【0011】熱処理後の分離液は、UASB法や各種の
ろ材を使った固定床式でメタン醗酵すると、メタン菌を
高濃度で維持できるため、高速・高負荷処理が可能とな
り、従来法に比べて、大幅に省スペース化を図ることが
できる。また、固液分離後の分離液を、UASBリアク
タ等に導入する前に、該分離液を酸醗酵処理すること
は、熱処理等の物理化学的/機械的液化処理で液化した
有機成分中の、炭水化物や蛋白質などを酢酸などの揮発
性脂肪酸に変えるので、UASBリアクタ等によるメタ
ン醗酵の処理性能の安定化につながるものである。ま
た、酸醗酵では炭酸ガスが生成されるため、後段のメタ
ン醗酵においてバイオガス中のメタン濃度が高くなり、
バイオガスを燃料電池等に適用する場合、有利となる。
さらに、酸醗酵工程にメタン醗酵工程の処理水を循環す
ると、処理水による希釈効果により、嫌気性微生物によ
る各種代謝産物による阻害効果を低減できると共に、物
理化学的/機械的液化処理で死滅した酸醗酵菌などの嫌
気性微生物の植種源にもなるため、効率的に酸醗酵を進
行することができる。
【0012】次に、本発明を図面を用いて詳細に説明す
る。図1〜3は、本発明による有機性汚泥の嫌気性消化
法を実施するための概略工程図である。図1において、
有機性汚泥10は、生物学的液化工程11に導入され、
微生物の作用により液化処理される。その後、物理化学
的/機械的液化工程12に導入され、生物学的液化工程
11で残存した汚泥分及び生物学的液化工程11で増殖
した微生物が液化される。物理化学的/機械的液化処理
としては、熱処理が有効である。熱処理は、主に蛋白質
の液化に効果的であると共に、汚泥の脱水性や固液分離
性が良くなるため、ポリマ注入率の低下や固液分離の簡
易化が可能となる。熱処理の条件としては、180℃、
30分など、従来から検討されてきた条件で良い。
【0013】熱処理後の液化汚泥は、固液分離工程13
に送られ、ここで汚泥と分離液16に分けられ、分離液
16は、酸醗酵工程14へ、汚泥の一部は、生物学的液
化槽11に循環18し、他の一部19は、系外に排出さ
れる。酸醗酵工程14では、生物学的液化工程11や物
理化学的/機械的液化工程12で液化した有機物が、酢
酸等の低分子有機酸に転換される。このため、メタン醗
酵工程15でUASB等の高速高負荷リアクタを適用す
る場合には、安定した運転が可能となる。なお、熱処理
などの物理化学的/機械的液化処理12により、汚泥の
微生物が死滅してしまう場合は、酸醗酵工程14での反
応が進まないこともあるため、メタン醗酵工程15の処
理水21を酸醗酵工程14に循環すると良い。
【0014】図2は、本発明の他の実施態様であり、初
沈汚泥や余剰汚泥のように性状の異なる汚泥を処理する
場合、生物的に分解性の高い初沈汚泥(有機性汚泥1、
22)は、生物学的液化工程11に導入して液化処理
し、余剰汚泥のように熱処理で液化しやすい有機性汚泥
2(23)は、物理化学的/機械的液化工程12で直接
液化処理することも効果的である。図3は、液化処理し
た有機性汚泥を固液分離し、分離した固形物の一部を、
生物学的液化工程11に循環する方式において、分離汚
泥を物理化学的/機械的液化工程12とは異なる物理化
学的/機械的液化処理一2(24)により、再度液化処
理する例である。ここで適用する物理化学的/機械的液
化処理としては、ボールミルやホモジナイザー、超音波
処理等の破砕処理が有効であり、固液分離後の残存汚泥
を微細化することを特徴とする方式が有効である。
【0015】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明
する。 実施例1 下水初沈汚泥と余剰汚泥を用いて、熱処理(物理化学的
処理)とボールミル処理(機械的処理)による汚泥の液
化率とメタン転換率を比較した。表1は、実験に使用し
た初沈汚泥と余剰汚泥の性状及び実験条件であり、表2
は、実験結果である。表2より、液化処理としては、ボ
ールミル処理より熱処理の方が液化率が高く有効であ
り、汚泥としては、初沈汚泥より余剰汚泥の方が液化し
易かった。メタン転換率は、余剰汚泥に比べて初沈汚泥
の方が約2倍高かったが、初沈汚泥の場合、液化処理に
よるメタン転換率の増加はほとんど認められず、いずれ
も0.7程度であった。余剰汚泥のボールミル処理汚泥
の液化率は30%であったが、そのメタン転換率は液化
処理を行わない無処理汚泥と同じであった。それに対し
て、熱処理汚泥のメタン転換率は0.47であり、約
1.5倍に増加した。このように、汚泥の種類により液
化処理の効果が異なるため、対象とする汚泥性状に合っ
た液化処理を選択することが重要である。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】実施例2 下水初沈汚泥を用いて、本発明による汚泥の液化効果を
汚泥性状の違いについて実験した。実験は、表3の4系
列であり、実験−1は、初沈汚泥を生物学的液化槽で液
化した後、熱処理を行うと共に、熱処理後の分離汚泥を
生物学的液化槽に循環する方式である。実験−2は、前
述の方式において、熱処理後の分離汚泥を循環しない方
式である。また、実験−3は、生物学的液化処理のみ行
う方式であり、実験−4は、熱処理のみ行う方式であ
り、この実験−3と−4は比較のためのものである。実
験には、表1と同じ性状の汚泥を用いた。生物学的液化
処理の実験は、有効容量10Lの密閉槽を用い、滞留時
間5日、温度35℃の条件で連続実験を行った。熱処理
は、有効容量2.5Lの攪拌付き熱分解リアクタを用い
て、温度180℃で30分間処理した。
【0019】なお、生物学的液化処理に熱処理を組込ん
だ本発明の実験−1では、生物学的液化処理後に該処理
液を回分的に熱処理して、分離汚泥を生物学的液化槽に
循環した。汚泥の脱水性は、小型ベルトプレス機により
脱水し、含水率を測定した。実験結果を同じく表3に示
す。表3より、各処理方式で得られた液化率は、実験−
1>実験−2>実験−3>実験−4>の順であり、循環
処理を行った実験−1の液化率が最も高かった。なお、
余剰汚泥を熱処理単独で液化処理した場合の液化率は、
49%と高いのに対して、初沈汚泥の場合は18%と低
かった。これは、前述のように初沈汚泥に含まれるセル
ロース分が、熱に対して安定であるためである。
【0020】脱水ケーキの含水率は、実験−3>実験−
2>実験−1>実験−4>の順で高かった。実験−1や
実験−2の場合、生物学的液化処理や循環処理により、
初沈汚泥中のセルロース分が分解(粗繊維分の低下)す
るため、実験−4の熱処理単独に比べて、若干含水率が
低下するものと考えられる。これに対して、生物学的液
化処理のみ行った実験−3は、他の方式に比べて10ポ
イント以上、含水率が高かった。また、汚泥の沈降性も
熱処理を行った実験−1、実験−2、実験−4の方式が
良好であった。以上の結果を総合的に判断すると、初沈
汚泥のように物理化学的/機械的に液化しにくい汚泥
も、実験−1あるいは実験−2の方式で処理することに
より、5日程度の滞留時間で高い液化率が得られ、固液
分離性の向上や汚泥脱水用のポリマ代を大幅に低減する
ことができる。
【0021】
【表3】
【0022】実施例3 実施例2と同じ条件と方法で下水余剰汚泥を用いて、本
発明による汚泥の液化効果の実験をした。実験には、表
1と同じ性状の余剰汚泥を用いた。実験結果を表4に示
す。表4より、各処理方式で得られる液化率は、実験−
1>実験−2>実験−4>実験−3>の順であり、循環
処理を行った実験−1の液化率が最も高かった。脱水ケ
ーキの含水率は、熱処理を行った実験−4と本発明の実
験−1、実験−2は、約70%であったのに対して、実
験−3では85%と高く、ポリマ注入率も約2倍であっ
た。生物学的液化処理と物理化学的/機械的液化処理と
して熱処理を組込んだ本発明により、それぞれの長所短
所を補いながら汚泥を高効率に液化すると共に、液化後
の汚泥脱水性や沈降分離性も大幅に改善することが可能
となる。
【0023】
【表4】
【0024】実施例4 次に、本発明によるメタン醗酵実験の実施例について記
す。表1の初沈汚泥と余剰汚泥を、1:1の割合で混合
(以下混合汚泥)し、前述の実験−1の方式で液化した
後、重力分離により分離液を得た。この分離液を、滞留
時間1日の条件で酸醗酵した後、CODcr.濃度が約
5000mg/Lになるように希釈して,UASBリア
クタに通水し、35℃でメタン醗酵を行った。一方、従
来法として、混合汚泥を温度35℃、滞留時間20日の
条件で嫌気性消化した実験系を設けた。実験結果を表5
に示す。表5より、本発明は、従来法に比べてメタンガ
ス発生量が26ポイント増え、滞留時間や汚泥脱水用ポ
リマ注入率は、従来法に比べて、それぞれ約70ポイン
ト低下し、省スペース化や経済性の面でも優れていた。
【0025】
【表5】
【0026】実施例5 下水初沈汚泥と余剰汚泥を用いて、超音波処理による汚
泥の液化率とメタン転換率を比較した。実験に使用した
初沈汚泥と余剰汚泥は、表1に示すとおりの性状のもの
である。また、実験条件は次のとおりである。 超音波処理;汚泥1kg−SS当りのエネルギー:3k
wh/kg−SS、 周波数:20kHz、照射時間:60秒、 メタン醗酵実験;下水汚泥の中温消化汚泥を種汚泥とし
て、35℃で20日間の回分実験を行い、発生したメタ
ンガス量を測定、 表6に実験結果を示す。
【0027】
【表6】 表6より超音波による液化率は、初沈汚泥;5%−VS
Sに対して、余剰汚泥;30%−VSSであり、余剰汚
泥の方が液化し易かった。一方、超音波によるメタン転
換率は、初沈汚泥はほとんど同じであったのに対して、
余剰汚泥では1.5倍に増加した。超音波処理では、主
に汚泥中の細菌が液化される。その場合、細胞壁などの
分解しにくい成分が、ボールミル処理などの他の機械的
液化処理より、さらに微細化されるため、メタン転換率
が高くなるものと考えられる。また、超音波処理は、機
械的破砕作用と共に酸化作用があることも知られてお
り、微細化した細菌などの汚泥成分が酸化作用を受け、
質的にも変化するため、分解率が高くなるものと考えら
れる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、有機性汚泥である初沈
汚泥と余剰汚泥を、その分解特性にあった方法で液化し
ており、低コストで効率的に液化・分解して高い液化率
が得られると共に、設置スペースの低減や汚泥の分離性
や脱水性を改善し、汚泥脱水用のポリマ(凝集剤)代を
大幅に低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機性汚泥の嫌気性消化法を実施する
ための一例を示す概略工程図。
【図2】本発明の有機性汚泥の嫌気性消化法を実施する
ための他の例を示す概略工程図。
【図3】本発明の有機性汚泥の嫌気性消化法を実施する
ための別の例を示す概略工程図。
【図4】従来の有機性汚泥の嫌気性消化法の一例を示す
概略工程図。
【符号の説明】
10:有機性汚泥、11:生物学的液化工程、12:物
理化学的/機械的液化工程、13:固液分離工程、1
4:酸醗酵工程、15:メタン醗酵工程、16:分離
液、17:処理水、18:汚泥循環、19:廃棄汚泥、
20:バイオガス、21:処理水循環、22:有機性汚
泥1、23:有機性汚泥2、24:物理化学的/機械的
液化処理−2
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 11/18 C02F 11/18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機性汚泥を嫌気性消化するに際し、該
    有機性汚泥を生物学的液化工程で液化し、次いで、物理
    化学的及び/又は機械的液化工程で液化処理した後、嫌
    気性消化することを特徴とする有機性汚泥の嫌気性消化
    法。
  2. 【請求項2】 前記有機性汚泥の液化処理は、前記生物
    学的液化工程と物理化学的及び/又は機械的液化工程の
    間を循環させて行うことを特徴とする請求項1記載の有
    機性汚泥の嫌気性消化法。
  3. 【請求項3】 前記液化処理した有機性汚泥は、固液分
    離して、液状物を嫌気性消化し、分離した固形物の一部
    を生物学的液化工程に循環すると共に、他の一部を系外
    に排出することを特徴とする請求項1又は2記載の有機
    性汚泥の嫌気性消化法。
  4. 【請求項4】 前記嫌気性消化は、液化処理液を酸醗酵
    工程に導入した後、メタン醗酵工程に導入して行うこと
    を特徴とする請求項1、2又は3記載の有機性汚泥の嫌
    気性消化法。
  5. 【請求項5】 有機性汚泥を嫌気性消化する処理装置に
    おいて、該有機性汚泥を生物学的に液化処理する処理槽
    と、該処理液をさらに液化処理する物理化学的及び/又
    は機械的液化処理装置と、該液化処理後の処理液を固液
    分離する固液分離装置と、該固液分離後の分離液を嫌気
    性消化する消化装置と、前記固液分離後の固形物の一部
    を前記生物学的液化処理槽に循環する経路とを有するこ
    とを特徴とする有機性汚泥の嫌気性消化処理装置。
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JP2005125202A (ja) * 2003-10-22 2005-05-19 Sumitomo Heavy Ind Ltd 有機性廃水の処理装置
WO2023173951A1 (zh) * 2022-03-16 2023-09-21 上海市政工程设计研究总院(集团)有限公司 消化系统、处理污泥的消化系统及混合液的处理方法

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