JP2002097994A - 内燃機関の吸入空気量検出装置 - Google Patents

内燃機関の吸入空気量検出装置

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JP2002097994A JP2000288786A JP2000288786A JP2002097994A JP 2002097994 A JP2002097994 A JP 2002097994A JP 2000288786 A JP2000288786 A JP 2000288786A JP 2000288786 A JP2000288786 A JP 2000288786A JP 2002097994 A JP2002097994 A JP 2002097994A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱式エアフロセンサの応答遅れを高精度に補
償することができる内燃機関の吸入空気量検出装置を提
供する。 【解決手段】 本発明の内燃機関の吸入空気量検出装置
は、熱式エアフローセンサ13を用いて内燃機関1の吸
入空気量を検出するもので、エアフローセンサ13の応
答遅れを、エアフローセンサ13において放熱される放
熱量に関する一次遅れ要素を用いて補償する応答遅れ補
償手段18を備え、応答遅れ補償手段18が、エアフロ
ーセンサ13を複数部位に分割し、各分割部位毎に放熱
量に関する一次遅れ要素を考慮し、これらを統合するこ
とによってエアフローセンサ13全体の応答遅れを補償
することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の吸入空
気量検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関では、最適な出力を得るため
や、排気ガスの浄化を効果的に行うことができるよう
に、吸入している空気量(吸入空気量)を検出してい
る。吸入空気量の検出には、吸気管負圧と吸入空気量と
の間の相関を利用してセンサによって検出した吸気管内
負圧から間接的に検出する方法と、エアフローセンサに
よって吸気量を直接的に検出する方法とがある。本発明
は、後者の方法を用いたエアフロセンサに関するもので
あり、特に熱式のエアフローセンサに関するものであ
る。
【0003】熱式エアフローセンサの出力には、センサ
の構造的な要因によって応答遅れが含まれる。内燃機関
が定常状態で運転されていれば、応答遅れによる影響は
ほとんどない。しかし、内燃機関が過渡状態にある場合
などは、この応答遅れを補償してやらなくてはならな
い。このような応答遅れを補償する装置としては、特開
平8-62012号公報に記載のものなどが知られている。上
記公報に記載の装置は、熱式エアフローセンサの出力に
対して、流量に関する一次遅れ処理を行った後、これを
リニアライズして吸入空気量とするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記公報に記
載の装置によっても、高い精度を得られない場合があ
り、より高い精度を得られるような更なる改善が望まれ
ていた。本発明の目的は、熱式エアフロセンサの応答遅
れを高精度に補償することができる内燃機関の吸入空気
量検出装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、熱式エアフローセンサを用いて内燃機関の吸入空気
量を検出する内燃機関の吸入空気量検出装置において、
エアフローセンサの応答遅れを、エアフローセンサにお
いて放熱される放熱量に関する一次遅れ要素を用いて補
償する応答遅れ補償手段を備えていることを特徴として
いる。
【0006】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、応答遅れ補償手段が、エアフローセン
サを複数部位に分割し、各分割部位毎に放熱量に関する
一次遅れ要素を考慮し、これらを統合することによって
エアフローセンサ全体の応答遅れを補償することを特徴
としている。
【0007】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の発明において、応答遅れ補償手段が、エアフローセン
サによって検出された吸入空気量の流速又は流量に基づ
いて、各分割部位毎の一次遅れモデルの時定数をそれぞ
れ決定することを特徴としている。
【0008】請求項4に記載の発明は、上述した請求項
3に記載の発明において、時定数が、エアフローセンサ
が配設される吸気通路に関する単位断面積あたりの流量
に基づいて決定されることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の吸入空気量検出装
置の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態
の吸入空気量検出装置を有する内燃機関を示す。
【0010】本実施形態の検出装置は、内燃機関である
エンジン1の吸入空気量を検出するものである。エンジ
ン1は、多気筒エンジンである。図1には、そのうちの
一つのシリンダ3のみが断面として示されている。エン
ジン1は、点火プラグ2によって各シリンダ3内の混合
気に対して点火を行うことによって駆動力を発生する。
エンジン1の燃焼に際して、外部から吸入した空気は吸
気通路4を通り、インジェクタ5から噴射された燃料と
混合され、混合気としてシリンダ3内に吸気される。シ
リンダ3の内部と吸気通路4との間は、吸気バルブ6に
よって開閉される。シリンダ3の内部で燃焼された混合
気は、排気ガスとして排気通路7に排気される。シリン
ダ3の内部と排気通路7との間は、排気バルブ8によっ
て開閉される。
【0011】吸気通路4上には、シリンダ3内に吸入さ
れる吸入空気量を調節するスロットルバルブ9が配設さ
れている。このスロットルバルブ9には、その開度(ス
ロットル開度TA)を検出するスロットルポジションセン
サ10が接続されている。また、吸気通路4上には、ア
イドル時(スロットルバルブ9の全閉時)にバイパス通
路11を介してシリンダ3に供給される吸入空気量を調
節するエアバイパスバルブ12も配されている。さら
に、吸気通路4上には、吸入空気量を検出するためのエ
アフローセンサ13が取り付けられている。
【0012】このエアフローセンサ13は、いわゆるホ
ットワイヤー式(熱式)のものである。本実施形態のエ
アフローセンサ13は、吸入空気の一部をバイパス流と
して検出部に流して、質量流量を直接計測する、いわゆ
る分流(バイパス)測定タイプのものである。エアフロ
ーセンサの拡大図を図2(a)に、その検出部の拡大斜視
図を図2(b)に示す。なお、本発明は、分流測定タイプ
のエアフローセンサだけでなく、吸気通路のほぼ中央に
ホットワイヤーを配置する主流測定タイプのエアフロー
センサにも適用できる。
【0013】図2(a)中に矢印で示されているのが、バ
イパス流の流れである。バイパス流は、エアフローセン
サ13の検出部13a近傍を流れる。検出部13aは、
図2(b)に示されるように、ボビン部13bとリード線
13cとサポート部13dとからなる。なお、本実施形
態のエアフローセンサ13は、サーミスタータイプの吸
気温検出部13eを有しており、吸入空気の温度を検出
することもできる。エアフローセンサ13は質量流量を
直接計測するので吸気温度に対する密度補正は必要ない
が、エンジン1の制御において吸気温度が必要になるた
め、ここで検出する。
【0014】また、エンジン1のクランクシャフト近傍
には、クランクシャフトの位置を検出するクランクポジ
ションセンサ14が取り付けられている。クランクポジ
ションセンサ14の出力からは、シリンダ3内のピスト
ン15の位置や、エンジン回転数NEを求めることもでき
る。また、エンジン1には、エンジン1のノッキングを
検出するノックセンサ16や冷却水温度を検出する水温
センサ17も取り付けられている。
【0015】排気通路7上には、排気浄化触媒19が配
置されている。なお、排気浄化触媒は、排気通路上に上
流下流方向に複数設けられる場合もある。また、多気筒
エンジンなどの場合、各シリンダ毎の排気管が一つにま
とめられる箇所よりも上流側に並列に複数設けられる場
合もある。本実施形態においては、各シリンダ3毎の排
気管が一つにまとめられらた箇所よりも下流側に一つの
排気浄化触媒19が配設されている。
【0016】上述した点火プラグ2、インジェクタ5、
スロットルポジションセンサ10、エアバイパスバルブ
12、エアフローセンサ13、クランクポジションセン
サ14、ノックセンサ16、水温センサ17やその他の
センサ類は、エンジン1を総合的に制御する電子制御ユ
ニット(ECU)18と接続されており、ECU18か
らの信号に基づいて制御され、あるいは、検出結果をE
CU18に対して送出している。排気通路7上に配設さ
れた排気浄化触媒19の温度を測定する触媒温度センサ
21、チャコールキャニスタ23によって捕集された燃
料タンク内での蒸発燃料を吸気通路4上にパージさせる
パージコントロールバルブ24もECU18に接続され
ている。
【0017】また、ECU18には、排気浄化触媒19
の上流側に取り付けられた上流側空燃比センサ25及び
排気浄化触媒19の下流側に取り付けられた下流側空燃
比センサ26も接続されている。なお、これらの空燃比
センサ25,26は、所定の温度(活性化温度)以上と
ならなければ正確な検出を行えないため、早期に活性化
温度に昇温されるように、ECU18から供給される電
力によって昇温される。
【0018】ECU18は、演算を行うCPUや演算結
果などの各種情報量を記憶するRAM、バッテリによっ
てその記憶内容が保持されるバックアップRAM、各制
御プログラムを格納したROM等を内部に有している。
ECU18は、エアフローセンサ13の応答遅れを補償
することも行っており、応答遅れ補償手段としても機能
する。
【0019】次に、上述した装置によって、エアフロー
センサ13の応答遅れを補償する制御について説明す
る。
【0020】まず、エアフローセンサ13の応答遅れの
概要について説明する。
【0021】上述したように、エンジン1の運転状態が
定常状態であれば、吸入空気量の値もほぼ一定であるた
め、応答遅れが問題となるようなことはほとんどない。
しかし、エンジン1の運転状態が過渡状態であるような
場合は、真の吸入空気量に対してエアフローセンサ13
の出力が遅れる。このような過渡状態であっても正確な
吸入空気量を得るため、スロットル開度TAとエンジン回
転数NE(必要であればバルブタイミングVT)を用いて吸
入空気量を推定している。
【0022】しかし、このような場合に、スロットル開
度TAやエンジン回転数NEから推定した吸入空気量とエア
フローセンサ13によって検出した吸入空気量との間に
応答速度のズレが生じていると、正確な制御を行えな
い。そこで、エアフローセンサ13の応答遅れを補償す
る必要が生じる。エアフローセンサ13の応答遅れを補
償するには、スロットル開度TAやエンジン回転数NEから
推定した応答遅れのない吸入空気量にエアフローセンサ
13の応答遅れ分を加味して、エアフローセンサ13に
よって検出した応答遅れのある吸入空気量に合わせる。
あるいは、これとは逆に、エアフローセンサ13の応答
遅れを補償するのに、エアフローセンサ13によって検
出した応答遅れのある吸入空気量からエアフローセンサ
13の応答遅れ分を取り去って、スロットル開度TAやエ
ンジン回転数NEから推定した応答遅れのない吸入空気量
に合わせることもある。
【0023】まず、スロットル開度TAやエンジン回転数
NEから推定した応答遅れのない吸入空気量に対してエア
フローセンサ13の応答遅れ分の遅れ処理して、エアフ
ローセンサ13によって検出した応答遅れのある吸入空
気量に合わせることによって、エアフローセンサ13の
応答遅れを補償する場合の概要を説明する。ここでは、
エアフローセンサ13の応答遅れを数学的なモデルとし
て扱い、一次遅れを考慮して応答遅れを補償する。ここ
に説明する場合を、便宜上、順モデルと言うこととす
る。
【0024】なお、これに対して、エアフローセンサ1
3によって検出した応答遅れのある吸入空気量に対して
エアフローセンサ13の応答遅れ分の進め処理して、ス
ロットル開度TAやエンジン回転数NEから推定した応答遅
れのない吸入空気量に合わせることによってエアフロー
センサ13の応答遅れを補償する場合を、逆モデルとい
うこととする。順モデル、逆モデルの何れを用いても、
エアフローセンサ13の応答遅れを補償することができ
る。
【0025】順モデルを利用する場合のスロットル開度
TAと演算される各種吸入空気量との関係を図3に示す。
まず、スロットル開度TAなどから、エアフローセンサ1
3の出力相当の信号を作り出す行程について説明する。
スロットル開度TAの変化に対して実際の吸入空気量は直
ぐに反応するわけではなく、実際の吸入空気量の変化
は、スロットル開度TAの変化に対して遅れた挙動を示
す。この挙動は、一次遅れ系の挙動を示すことが一般に
知られており、ここでは、この特性も利用している。ま
ず、スロットル開度TAやエンジン回転数NE(吸排気バル
ブ6,8などの開閉タイミングを可変制御できるような
場合など、必要であればバルブタイミングVT)に基づい
て、応答遅れのない吸入空気量KLTAを求める。なお、こ
のKLTAは大気圧補正後の値である。
【0026】エンジン1が定常運転時であれば、そのと
きの吸入空気量はスロットル開度TAとエンジン回転数NE
で決まるので、KLTAは定常時の吸入空気量とも言える。
スロットル開度TAとエンジン回転数NEをパラメータとし
て大気圧補正前の値をマップ化しておき、マップから得
られたこの値を大気圧で補正することによってKLTAが得
られる。大気圧はエアフィルタ近傍に設置された大気圧
センサなどによって検出された値を用いる。
【0027】上述したように、実際の吸入空気量はスロ
ットル開度TAに対して一次遅れ系の挙動をとる。そこ
で、KLTAに一次遅れ処理(なまし処理)を施して、実際
の吸入空気量を推定したKLCRTを算出する。さらに、こ
のKLCRTに対して上述した順モデルを用いて、応答遅れ
を含むエアフローセンサ13の出力を推定したKLCRT4を
算出する。KLCRT4は、スロットル開度TAとエンジン回転
数NEとから算出されたエアフローセンサ13出力相当値
である。
【0028】即ち、実際の吸入空気量(KLCRT相当)
は、スロットル開度TAに対して一次遅れ系の挙動を示
す。そして、この実際の吸入空気量(KLCRT相当)を検
出したエアフローセンサ13の出力(KLCRT4相当)は、
その構造的要因などによって、この実際の吸入空気量よ
りもさらに遅れたものとなる。ここでは、推定された実
際の吸入空気量(KLCRT)からエアフローセンサ13の
出力に相当する吸入空気量(KLCRT4)を推定する際に、
上述した順モデルを用いている。順モデルについては追
って詳述する。
【0029】一方、エアフローセンサ13の出力から
は、データ処理に適したようにスムージング化された吸
入空気量KLSMが生成される。KLSMはエアフローセンサ1
3の出力から生成されるので、当初からエアフローセン
サ13の応答遅れを含んでいる。KLCRT4とKLSMは何れも
応答遅れを持ったものとして揃えられている。ここで、
実際にエンジン1の制御には、以下に説明するKLFWD=KL
SM+(KLVLV-KLCRT)という値が、シリンダ3内に吸入され
る吸入空気量として用いられる。
【0030】即ち、応答遅れを含まないものとして生成
された吸入空気量であるKLCRTを元に、現在からバルブ
閉時までの時間Tを先読みした値KLVLVと、応答遅れを
含むものとして生成された吸入空気量であるKLCRT4の現
在の値との差(KLVLV-KLCRT)を求め、これを現在のKLSM
に対して加算することで、シリンダ3内に吸入される吸
入空気量KLFWDを得ている。このKLFWDという値は、応答
遅れを含んでいない。
【0031】なお、KLCRT4とKLSMとが完全に一致するよ
うであれば、KLVLVをそのまま予測値として用いればよ
いが、KLCRT4とKLSMとの間には平行的なズレが生じる場
合がある。KLCRT4とKLSMとの間に生じる平行的なズレの
原因としては、バイパス空気量誤差などが考えられる。
そこで、KLSMに対して(KLVLV-KLCRT)を加算することに
よって、このようなズレを相殺している。
【0032】上述したような制御を行うことによって、
定常状態時のみならず、過渡状態時にも吸入空気量を高
精度に求め、これに基づいてエンジン1の制御を最適な
状態とすることができる。次に、上述した制御における
順モデルの部分について詳しく説明する。本発明では、
このような順モデルを用いることによって、上述した制
御の精度を向上させている。
【0033】上述した順モデルでは、応答遅れを含まな
いものとして生成されたKLCRTから、エアフローセンサ
13の応答遅れ特性を考慮して、エアフローセンサ13
によって生じる応答遅れを含むものとしてKLCRT4を生成
している。そして、ここでは、KLCRTに対するKLCRT4の
応答遅れを処理する際に、KLCRT4がKLCRTに対して、エ
アフローセンサ13の放熱量に関する一次遅れ系の挙動
を示すものと取り扱っている。そして、この一次遅れ系
の時定数は、エアフローセンサ13の流量又は流速に基
づいて決定され、本実施形態では、具体的には流路の単
位面積あたりの流量に基づいて決定される。
【0034】本実施形態では、KLCRTに対するKLCRT4の
応答遅れを処理する際に、流量や流速の次元で処理する
のではなく、流量や流速から放熱量を算出し、この算出
した放熱量の次元で応答遅れの処理を行った後に流量に
リニアライズする。このため、より精度が向上する。そ
して、この放熱量の算出に際しては、エアフローセンサ
13を複数の部位に分割し、各分割部位毎に放熱量に関
する一次挙動モデルを考慮して吸入空気量を算出し、最
後にこれを統合することによってより精度を向上させて
いる。
【0035】本実施形態においては、エアフローセンサ
13をボビン部13bとサポート部13dに分割して処
理する。この算出上、リード線13cはサポート部13
dに含めて考える。なお、本実施形態においては、エア
フローセンサ13をボビン部13bとサポート部13d
に分割して処理するするが、分割の方法はこれに限られ
ず、二分割ではなく三分割とするなど種々の分割方法を
採ることができる。この分割時には、材質や放熱経路な
どを考慮して分割するのが好ましい。
【0036】この順モデルの制御を示したブロック線図
を図5に示す。図5に示されるチャートは、米国MathWo
rks社の開発ツールであるSimulink(登録商標)を用い
て作成されたものである。チャートの見方と共に、上述
した順モデルの制御を説明する。まず一次遅れ系の時定
数τの算出について説明する。ここでは、時定数τを次
式によって求めている。 τ=k・um…(I)
【0037】ここで、uは、エアフローセンサ13の検
出部における流路の単位断面積あたりの吸入空気の流量
である。エアフローセンサ13の検出部がバイパス流路
にあるなら、バイパス路についての単位断面積あたりの
吸入空気の流量となる。また、k,mは予め実験などを通
じて決定される定数であり、ボビン部13bとサポート
部13dとについてそれぞれ決定される。ボビン部13
bの定数をk1,m1とし、サポート部13dの定数をk2,m2
とする。また、ボビン部13bの時定数をτ1とし、サ
ポート部13dの時定数をτ2とする。ボビン部13b
とサポート部13dとでは、応答遅れの度合いが異なる
ので、これらを分離して時定数τをそれぞれ設定するこ
とによって精度を向上させている。
【0038】そして、各分割部位毎の時定数τは、エア
フローセンサ13によって検出された吸入空気量の流速
や流量に基づいて決定される。時定数τは、一次遅れ系
の遅れ度合いを示すものであり、ここでは、これを吸入
空気量の流速や流量に基づいて設定することで精度を向
上させている。特に、ここでは、流量でも流路の単位断
面積あたりの流量を用いている。図5左方下側には、エ
アフローセンサ13の出力電圧vgが入力される旨が示さ
れている(図5中A部)。吸入空気量を示す出力電圧vg
は、vg-uマップによって、上述した単位断面積あたりの
流量に変換される(図5中B部)。
【0039】単位断面積あたりの流量を用いるのは、エ
アフローセンサ13によって密度によらない質量流量を
得ることができるので、単位断面積あたりの流量を得や
すいからである。質量流量をQとし、流路の断面積をSと
すれば、単位断面積あたりの流量は次式によって得られ
る。 u=Q/S…(II)
【0040】そして、この単位断面積あたりの流量uを
用いて、ボビン部13bとサポート部13dとでそれぞ
れ時定数τが算出される(図5中C部)。各C部では、
u(2)*u(1)^u(3)という計算を行っているが、これは、左
方よりの値をu(i)として示しており、iは上から順に番
号振りされる。即ち、ボビン部13b側の図5中C部に
ついて説明すれば、u(1)は、vg-uマップから得た単位断
面積あたりの流量uであり、u(2)は定数k1、u(3)は定数m
1である。サポート部13dに関しても同様である。結
局、ここでは、(I)式を計算していることになり、ボビ
ン部13b及びサポート部13dそれぞれの時定数であ
る、τ1=k1・um1やτ2=k2・um2を算出しているということ
である。
【0041】一方、図5左方上側には、上述したKLCRT
に相当する、スロットル開度TAやエンジン回転数NE(必
要であればバルブタイミングVT)から算出された吸入空
気量Gが入力される旨が示されている(図5中D部)。
まず、このスロットル開度TAなどから応答遅れを含まな
いものとして推定された吸入空気量Gが、マップによっ
て、ボビン部13b及びサポート部13dそれぞれの完
全放熱量Wに変換される。完全放熱量Wとは、応答遅れを
含まない放熱量のことを指す。これに対して、応答放熱
量wとは、完全放熱量Wに応答遅れの影響を加味すること
で得られる応答遅れを含む放熱量を指す。
【0042】ボビン部13bの完全放熱量をW1、応答放
熱量をw1とし、サポート部13dの完全放熱量をW2、応
答放熱量をw2とする。ここでは、吸入空気量Gとボビン
部13bの完全放熱量W1との関係を示すマップと、吸入
空気量Gとサポート部13dの完全放熱量W2との関係を
示すマップが用いられる。エアフローセンサ13の検出
部を通る吸入空気による、ボビン部13bでの放熱量と
サポート部13dでの放熱量は異なるので、これを上述
した二つのマップを用いて分配する(図5中E部)。
【0043】そして、ボビン部13bとサポート部13
dとのそれぞれで、放熱量に基づいて応答遅れの処理を
行う。このように、応答遅れを流量や流速の次元で処理
するのではなく、流量や流速から算出した放熱量の次元
で応答遅れの処理を行うことによって、精度を向上させ
ることができる。エアフローセンサ13における応答遅
れは、主として検出部の熱収支の現象に起因して生じる
ものであるので、放熱量の次元で処理した方が実際の現
象に即しており、精度を向上させることができる。
【0044】次に、マップより得た完全放熱量Wに関し
て一次応答遅れの影響を与え、応答遅れを含む応答放熱
量wを得る。このとき、応答放熱量wは次式から得られ
る。 wi=Δt・(Wi-wi-1)/τ+wi-1…(III) なお、添え字iは今回値、添え字i-1は前回値を表す。Δ
tは算出の単位時間であり、前回値算出時と今回値算出
時との間の時間である。
【0045】図5中F部に示される1/zとは、前回値を
適用するという意味である。ボビン部13b側について
の図5中C部について説明すれば、図5中G部では、マ
ップより得られた完全放熱量W1の今回値W1iと応答放熱
量w1の前回値w1i-1とが各符号を付して演算されること
が示されており、即ち、W1i-w1i-1が演算されている。
次いで、図5中H部では、左方からの各値が各符号を付
して演算されることが示されており、具体的には、(W1i
-w1i-1)・Δt/τ1が演算されている。さらに、図中I部
でも、左方からの各値が各符号を付して演算され、(W1i
-w1i-1)・Δt/τ1+w1i-1が演算されている。即ち、図5
中のF部〜I部では、上述した式(III)の演算を行って
いる。サポート部13dに関しても同様である。
【0046】ボビン部13b及びサポート部13dのそ
れぞれに関して、式(III)の演算が行われ、一次遅れ処
理が行われたことになる。そして、算出されたボビン部
13b及びサポート部13dのそれぞれの応答放熱量w
1i,w2iを統合して、エアフローセンサ13全体での応答
放熱量w1を合成する。具体的には、図5中J部におい
て、両者の和w1i+w2iを求め、図5中K部において、こ
の和w1i+w2iと吸入空気量Glとの関係を示したマップか
ら、応答遅れを含んでいる吸入空気量Glを得ている。こ
れが、スロットル開度TAやエンジン回転数NEなどから応
答遅れを含むものとして算出されたKLCRT4に相当する。
【0047】このように、本実施形態では、放熱量の次
元で応答遅れ処理を行うことによって、エアフローセン
サ13の応答遅れ補償の精度を向上させている。さら
に、このとき、エアフローセンサ13からの放熱がその
部位毎によって異なるので、エアフローセンサ13を複
数の部位に分割し、各分割部位毎に応答遅れを補償して
て、最後にこれを統合することによって、補償の精度を
さらに向上させている。
【0048】また、ここでは、応答遅れを補償する際
に、放熱量に関する一次遅れ挙動として補償している
が、この一次遅れ系の時定数τを流量又は流速(ここで
は具体的には、単位断面積あたりの流量)に基づいて決
定するので、より一層精度を向上させることができる。
即ち、上述したKLCRT4の算出精度を向上させることがで
きる。
【0049】上述した実施形態は、順モデルを用いて、
スロットル開度TAなどから算出される吸入空気量(図3
のKLCRTに相当)から、エアフローセンサ13によって
検出される吸入空気量(図3のKLSMに相当)に相当する
吸入空気量(図3のKLCRT4に相当)を推定した。これと
は、逆に、逆モデルを用いて、エアフローセンサ13に
よって検出される吸入空気量(図3のKLSMに相当)か
ら、スロットル開度TAなどから算出される吸入空気量
(図3のKLCRTに相当)に相当する信号(図3には示さ
れていない)を推定することも考えられる。
【0050】次に、この逆モデルを用いた場合について
説明する。この場合の図5相当図を図6に示す。図6中
左方上側には、エアフローセンサ13の出力から得られ
る吸入空気量G2が入力される旨が示されている(図6中
L部)。この吸入空気量G2は、エアフローセンサ13の
出力から得たので、応答遅れを含んでいる。この吸入空
気量G2から、マップを用いて上述した応答放熱量wiを得
る(図6中M部)。順モデルにおける図5中K部と逆の
ことを行っていることになる。ただし、ここで得られる
応答放熱量wiは、ボビン部13bの応答放熱量w1iとサ
ポート部13dの応答放熱量w2iとが統合されたものが
得られるだけである。そこで、この統合されている応答
放熱量wiをボビン部13bの応答放熱量w1iとサポート
部13dの応答放熱量w2iとに分配することが必要とな
る。
【0051】ここでは、図6左方下側から、スロットル
開度TAから算出された吸入空気量G3(図3中のKLCRTに
相当)が入力される旨が示されており(図6中N部)、
これに基づいて、マップから配分割合が決定される(図
6中O部)。ボビン部13bへの配分割合をα、サポー
ト部13dへの配分割合をβ=(1-α)としてマップより
それぞれ得ている。これにより、ボビン部13bの応答
放熱量w1iは、w1i=wi・αで得られる(図6中P部)。サ
ポート部13dの応答放熱量w2iについても同様に、w2i
=wi・β=wi・(1-α)で得られる(図6中P部)。なお、こ
の分配割合が定常時と過渡時とで異なる場合、ここで用
いるマップも、それぞれ定常時用と過渡時用とを用意し
ておく。
【0052】また、図6中Q部においては、順モデルと
同様に、エアフローセンサ13の出力電圧に基づいて、
ボビン部13b及びサポート部13dそれぞれの時定数
τ12が求められている。これについては順モデルと
同様なので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0053】これ以降について、ボビン部13b側を例
にして説明する。ボビン部13bの応答放熱量w1iの変
化量をΔw1とすると、Δw1は、ボビン部13bの応答放
熱量の今回値w1iと前回値w1i-1との差、次式(IV)として
得られる。 Δw1=w1i-w1i-1…(IV) 即ち、図6中R部では、次式(V)を計算している。 Δw1/Δt・τ1…(V) 次いで、図6中S部では、次式(VI)を計算している。 w1i-1+Δw1/Δt・τ1…(VI)
【0054】ここで、順モデルにおいて説明した、式(I
II)を変形して完全放熱量Wiについて解くと、次式(VII)
となる。 Wi=wi-1+(wi-wi-1)/Δt・τ…(VII) 上述した式(VI)を式(IV),(V)を用いて書き直すと、w
1i-1+(w1i-w1i-1)/Δt・τとなり、式(VII)の右辺と等し
くなる。つまり、図6中S部では、ボビン部13b側の
完全放熱量W1iを算出している。サポート部13d側に
関しても同様に、完全放熱量W2iを算出している。
【0055】このようにして得られたボビン部13b側
の完全放熱量W1iから、応答遅れを含まない吸入空気量G
4をマップを用いて得る(図6中T部)。ここでは、順
モデルにおける図5中E部と逆のことを行っているだけ
である。即ち、マップから得られる吸入空気量G4bは、
全体の吸入空気量であり、全体の吸入空気量のうちのボ
ビン部13bの分担分というものではない。サポート部
13dについても同様であり、吸入空気量G4sが得られ
る。吸入空気量G4bはボビン部13b側の放熱量を考慮
して補償した吸入空気量であり、吸入空気量G4sはサポ
ート部13d側の放熱量を考慮して補償した吸入空気量
であり、このように逆モデルでは二つの値が得られる。
【0056】理想的には、この両者は一致するはずであ
るが、実際は必ずしも一致しない。そこで、最終的に
は、どちらか一方のみを採用するか、あるいは、両者を
平均化するなどして、補償後の吸入空気量G4を得る。こ
のように逆モデルを用いて得られる補償後の吸入空気量
は、エアフローセンサ13の出力から応答遅れの成分を
除去したものであるとも言え、スロットル開度TAなどか
ら得られる吸入空気量に対応するものである。
【0057】なお、上述した実施形態では、各時定数τ
をそれぞれ算出しているが、時定数τは、k,mが予め決
定される定数であるため、単位断面積あたりの流量uに
よって一義的に決定される。また、単位断面積あたりの
流量uは、エアフローセンサ13の出力電圧によって一
義的に決定される。このため、エアフローセンサ13の
出力電圧が決まれば、各時定数τは一義的に決定され
る。このため、エアフローセンサ13の出力電圧と時定
数τとのマップとして装置に実装することができる。即
ち、吸気流路の断面が異なるので検出装置が搭載される
内燃機関毎に整合を取るための実験を行う必要が必要な
く、エアフローセンサ13の出力電圧と時定数τとのマ
ップとして装置に実装することができる。
【0058】本発明は、上述した各実施形態に限定され
るものではない。例えば、上述した実施形態において
は、一次遅れの時定数を、単位断面積あたりの流量に基
づいて決定したが、単位断面積あたりではない流量に基
づいて決定されても良いし、流速に応じて決定されても
良い。また、上述したが、エアフローセンサ13の分割
は、上述した実施形態の分割方法に限られない。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、放熱量の次元で応答遅
れ処理を行い、その処理をエアフローセンサの各部位毎
に行なってから統合するので、精度よくエアフローセン
サの応答遅れを補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の検出装置の一実施形態を有する内燃機
関を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の検出装置の一実施形態における
エアフローセンサを示す斜視図であり、(b)はその検出
部の拡大斜視図である。
【図3】スロットル開度TAと吸入空気量の各種演算値と
の関係を示すグラフである。
【図4】図3のグラフの一部拡大図である。
【図5】本発明の検出装置による制御を示すチャート
(順モデル)である。
【図6】本発明の検出装置による制御を示すチャート
(逆モデル)である。
【符号の説明】
1…エンジン(内燃機関)、4…吸気通路、7…排気通
路、13…エアフローセンサ、18…ECU(応答遅れ
補償手段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 大介 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 古川 悟 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 3G084 BA04 DA04 EA08 FA00 FA01 FA02 FA08 FA10 FA20 FA38

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱式エアフローセンサを用いて内燃機関
    の吸入空気量を検出する内燃機関の吸入空気量検出装置
    において、 前記エアフローセンサの応答遅れを、前記エアフローセ
    ンサにおいて放熱される放熱量に関する一次遅れ要素を
    用いて補償する応答遅れ補償手段を備えていることをこ
    とを特徴とする内燃機関の吸入空気量検出装置。
  2. 【請求項2】 前記応答遅れ補償手段が、前記エアフロ
    ーセンサを複数部位に分割し、各分割部位毎に放熱量に
    関する一次遅れ要素を考慮し、これらを統合することに
    よって前記エアフローセンサ全体の応答遅れを補償する
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸入空気
    量検出装置。
  3. 【請求項3】 前記応答遅れ補償手段が、前記エアフロ
    ーセンサによって検出された吸入空気量の流速又は流量
    に基づいて、各分割部位毎の一次遅れモデルの時定数を
    それぞれ決定することを特徴とする請求項2に記載の内
    燃機関の吸入空気量検出装置。
  4. 【請求項4】 前記時定数が、前記エアフローセンサが
    配設される吸気通路に関する単位断面積あたりの流量に
    基づいて決定されることを特徴とする請求項3に記載の
    内燃機関の吸入空気量検出装置。
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