JP2002095966A - Coシフト反応用触媒 - Google Patents

Coシフト反応用触媒

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Abstract

(57)【要約】 【課題】平衡論的にCOからH2への転換が有利となる低温
域において特に高いCOシフト反応活性を示す実用的な触
媒とする。 【解決手段】チタニア、シリカ及びジルコニアから選ば
れる少なくとも一種の酸化物がルチル型チタニア粉末中
に結合材として介在してなる担体と、主としてルチル型
チタニアに担持された貴金属とより構成した。ルチル型
チタニアに貴金属を担持した触媒はCOシフト反応活性が
高く、チタニア、シリカ及びジルコニアから選ばれる少
なくとも一種の酸化物を結合材としてハニカム触媒化あ
るいはペレット触媒化することで、COシフト反応活性の
低下が抑制される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一酸化炭素(CO)
と水蒸気( H2O)から水素(H2)を生成するCOシフト反
応を行う触媒に関し、詳しくは空間速度が大きい条件下
でかつ水蒸気量が少なくても活性が高く、燃料電池及び
内燃機関の排ガス浄化などに利用できるCOシフト反応用
触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】アンモニアの合成、都市ガスなどにおけ
るCOの除去、あるいはメタノール合成、オキソ合成にお
けるCO/H2比の調整などに、COシフト反応が応用されて
いる。また近年では、内部改質型燃料電池の燃料改質シ
ステムにおけるCOの除去などにも用いられている。この
COシフト反応は、[化1]式に示すようにCOと H2Oから
H2を生成する反応であり、水性ガスシフト反応とも称さ
れている。
【0003】
【化1】
【0004】COシフト反応を促進させる触媒としては、
例えば1960年代に Girdler社や duPont社からCu−Zn系
触媒が発表され、現在まで主として工場におけるプラン
ト用などに幅広く利用されている。また、W.Hongli et
al, China-Jpn.-U.S. Symp.Hetero. Catal. Relat. Ene
rgy Probl.,B09C,213(1982)には、アナターゼ型チタニ
アよりなる担体にPtを担持した触媒を 500℃付近で還元
処理した触媒が、さらに高いCOシフト反応活性を示すこ
とが報告されている。
【0005】またγ-Al2O3にPt,Rh,Pdなどの貴金属を担
持した触媒もCOシフト反応活性を有することが知られて
いる。そしてγ-Al2O3にCuを担持した触媒は、γ-Al2O3
にPt,Rh,Pdなどの貴金属を担持した触媒よりもCOシフト
反応活性が高いことも報告されている。
【0006】ところで、自動車などの移動体に搭載する
内部改質型燃料電池の燃料改質システム、あるいは自動
車排ガス中のCOをH2に改質し、そのH2を用いて触媒上に
吸蔵されたNOx を還元する排ガス浄化システムなどに用
いられるCOシフト反応用触媒としては、触媒反応器の大
きさに制約があるため、空間速度の大きな反応条件下で
も高い活性を示すことが必要となる。
【0007】ところが従来のCu−Zn系触媒では、空間速
度が大きな反応条件下では活性が低いという不具合があ
る。そのため内部改質型燃料電池の燃料改質システム、
あるいは自動車排ガス浄化システムなどのように空間速
度が大きな反応条件下では、COをH2に効率よく転換する
ことが困難となる。
【0008】また[化1]式の反応は平衡反応であり、
反応温度が高いほど左矢印方向の反応が主流となって、
COからH2への転換に不利となる。したがってCu−Zn系触
媒では、空間速度の大きな反応条件での活性を補うこと
を目的とし、いくら反応温度を挙げても、COをH2に効率
よく転換することはできない。
【0009】さらに、COシフト反応用触媒を内部改質型
燃料電池の燃料改質システム、あるいは自動車排ガス浄
化システムなどに用いた場合には、使用条件によって一
時的に反応場が高温雰囲気となる場合があるため、その
場合には、Cu−Zn系触媒の活性種であるCu、あるいはγ
-Al2O3にCuを担持した触媒のCuが容易に粒成長して活性
が低下するという問題もあり、COをH2に効率よく転換す
ることが一層困難となる。
【0010】さらにCOシフト反応用触媒を内部改良型電
池の燃料改質システムに用いる場合は、[化1]式の反
応から H2Oの濃度が高いほどH2を生成する反応が進行し
やすいので、Cu−Zn系触媒などでは一般に H2O/CO比が
2以上となる条件下で用いられる。
【0011】しかし、自動車のように限られた環境でこ
の反応を行うためには、多量の水を保存する水タンク及
び大きな蒸発器などが必要となるため、装置が大きくな
るという不具合がある。さらに水蒸気を供給するために
は、水を蒸発させるための多量のエネルギーを必要と
し、システム全体としてのエネルギー効率を低下させる
ことになる。したがって、できるだけ少量の水蒸気で反
応させることが望まれるものの、従来のCOシフト反応用
触媒では H2O/CO比を低下させると活性が低下し、平衡
値以下のH2しか得られなくなる。
【0012】そこで卑金属より活性が高く、高温雰囲気
で安定であると予想される貴金属を用いることが想起さ
れる。しかしながら上記したように、γ-Al2O3にPt,Rh,
Pdなどの貴金属を担持した触媒はγ-Al2O3にCuを担持し
た触媒よりも活性が低い。またアナターゼ型チタニアよ
りなる担体にPtを担持した触媒では、Ptと担体との間で
強い相互作用(SMSI: strong metal support interacti
on)が生じることが知られている。そのため通常の使用
条件に含まれる 200℃〜 400℃で反応ガスに曝される
と、SMSIによってPtを担体成分の一部が覆うようにな
り、活性点の減少により活性が著しく低下するという不
具合がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情に鑑みてなされたものであり、平衡論的にCOからH2
の転換が有利となる低温域において特に高いCOシフト反
応活性を示す実用的な触媒とすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の一つのCOシフト反応用触媒の特徴は、チタニア、シ
リカ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種の酸化
物がルチル型チタニア粉末中に結合材として介在してな
る担体と、主としてルチル型チタニアに担持された貴金
属とよりなることにある。
【0015】またもう一つの本発明のCOシフト反応用触
媒の特徴は、チタニア、シリカ及びジルコニアから選ば
れる少なくとも一種の酸化物がルチル型チタニア粉末中
に結合材として介在してなる担体と、主としてルチル型
チタニアに担持された貴金属とよりなるコート層が耐熱
性基材表面に被覆形成されてなることにある。
【0016】上記二つの触媒において、チタニア、シリ
カ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種の酸化物
は、ルチル型チタニア 100重量部に対して5〜25重量部
含まれていることが望ましく、チタニア、シリカ、及び
ジルコニアから選ばれる少なくとも一種の酸化物が占め
る表面積(その酸化物のみの比表面積と酸化物の含有量
から計算される)がルチル型チタニアが占める表面積
(ルチル型チタニアの比表面積と含有量から計算され
る)の40%以下であることが望ましい。貴金属は白金を
主成分とすることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】COシフト反応では、触媒表面に吸
着したCOと H2Oとが反応すると言われている(Langmuir
-Hinshelwood機構)。したがって触媒表面に多くのCOと
H2Oが吸着するようにすれば、両者が反応する確率が高
まりCOシフト反応活性が向上すると考えられる。
【0018】そこで本発明の触媒では、主としてルチル
型チタニアに貴金属を担持している。ルチル型チタニア
は親水性が高く、水蒸気( H2O)の吸着性が高い。また
担持されている貴金属には、COが吸着しやすい。したが
って、表面に吸着した多量のH2OとCOの存在によってCO
シフト反応活性が向上する。さらに[化1]式の左側の
成分量が多くなれば、平衡論的には[化1]式の右矢印
方向への反応が進行しやすくなる。これにより特に低温
域におけるCOシフト反応活性が向上し、空間速度が大き
な反応条件下でも効率よくCOがH2に転換される。したが
って触媒反応器を小型化することができ、内部改質型燃
料電池の燃料改質システム、あるいは自動車排ガス中の
COをH2に改質してNOx を還元するシステムなどに用いる
ことが可能となる。
【0019】そして担持されている貴金属は、Cuなどの
卑金属に比べて高温雰囲気下で比較的安定であり、粒成
長が抑制されるので、上記作用を長期間持続させること
ができる。
【0020】またルチル型チタニアを担体とする触媒で
は、 200℃付近で還元処理してもアナターゼ型チタニア
を担体とした触媒のように貴金属が担体で覆われるよう
な不具合が生じにくい。このようになる原因は不明であ
るが、ルチル型とアナターゼ型とでは結晶構造が異な
り、ルチル型チタニアに貴金属を担持した触媒ではSMSI
が生じにくくなるためと考えられる。
【0021】ルチル型チタニアは、結晶粒子径が20nm以
下、あるいは比表面積が60m2/g以上のものを用いるこ
とが特に望ましい。このようなルチル型チタニアでは、
反応が生じる界面がきわめて多く、親水性がきわめて高
い超親水性であり、吸着するH2O量がさらに増大するた
め、COシフト反応活性がさらに向上する。
【0022】ところで実用的な触媒とする場合には、触
媒成分と水性ガスとの接触面積を充分に大きくする必要
があり、従来の触媒構造として広く用いられているペレ
ット形状に形成したり、ハニカム形状の基材表面に触媒
成分をコートしたりして用いることが望ましい。そのた
めには、触媒成分どうしを結合するバインダ(結合材)
の使用が不可欠である。バインダを使用せずに、ルチル
型チタニアを高温で焼結させてペレット形状にする方法
も挙げられるが、その場合は、ルチル型チタニアの比表
面積が大きく低下(通常、数m2/g)するため、COシフ
ト反応活性が低下してしまう。
【0023】ところが本発明者らのさらなる研究によれ
ば、バインダとして一般に用いられている酸化物ゾルの
種類によっては、上記した触媒のCOシフト反応活性が低
下する場合があることが明らかとなったのである。
【0024】例えばルチル型チタニア粉末とアルミナゾ
ルからスラリーを調製し、それをハニカム基材にコート
して焼成したものにPtを担持した触媒では、ルチル型チ
タニアにPtを同量担持した粉末触媒に比べてCOシフト反
応活性が著しく低くなる。この理由は、アルミナゾルか
ら形成されたアルミナはルチル型チタニアに比べて比表
面積がきわめて大きいために、Ptの大部分がアルミナに
担持されてしまうからと考えられている。
【0025】また予めPtが担持されたルチル型チタニア
粉末とアルミナゾルからスラリーを調製し、それをハニ
カム基材にコートして焼成してなる触媒であっても、ル
チル型チタニアにPtを同量担持した粉末触媒に比べてCO
シフト反応活性が低下することが明らかとなった。この
理由はまだ不明であるが、比表面積の大きなアルミナが
ルチル型チタニアの表面を覆ってその親水性を低下させ
るためと推測されている。
【0026】そこで本発明では、結合材としてチタニ
ア、シリカ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種
の酸化物を含んでいる。これらの酸化物は、貴金属を担
持したルチル型チタニアと共存してもそのCOシフト反応
活性に悪影響がない。またルチル型チタニアと共存した
状態で貴金属を担持しても、貴金属の大部分はルチル型
チタニアに担持されるためCOシフト反応活性に悪影響が
ない。この理由は、チタニア、シリカ及びジルコニアは
それぞれ比表面積がルチル型チタニアより小さく、ルチ
ル型チタニア表面との親和性が低いためと考えられる。
【0027】しかしながらチタニア、シリカ及びジルコ
ニアから選ばれる少なくとも一種の酸化物は、COシフト
反応活性に効果を与えるものではなく、その含有量は少
ないほど好ましい。すなわちこの酸化物は、ルチル型チ
タニア 100重量部に対して5〜25重量部含まれているこ
とが望ましい。また、この酸化物が占める表面積は、ル
チル型チタニアが占める表面積の40%以下であることが
望ましい。この酸化物の含有量が5重量部より少ないと
結合材としての機能に不足し、クラックや剥離が生じる
ようになる。また25重量部を超えて含有すると、ルチル
型チタニアの含有量が相対的に減少する結果、COシフト
反応活性が低下するようになる。
【0028】なおチタニア、シリカ及びジルコニアから
選ばれる少なくとも一種の酸化物は、酸化物ゾル、水酸
化物、酢酸塩など、焼成によって酸化物となる酸化物前
駆体としてルチル型チタニア粉末又は予め貴金属が担持
されたルチル型チタニア粉末と混合され、それを焼成す
ることによって形成される。
【0029】主としてルチル型チタニアに担持される貴
金属としては、Pt,Pd,Rh,Ir,Ruなどが例示される。
中でもCOの吸着性が高いPtが特に望ましい。また貴金属
の担持量は、担体に対して 0.1〜20重量%とすることが
できる。貴金属の担持量がこの範囲より少ないとCOシフ
ト反応活性がほとんど得られず、この範囲より多く担持
しても効果が飽和するとともに高コストとなる。
【0030】本発明のCOシフト反応用触媒を調製するに
は、例えばルチル型チタニア粉末とチタニア、シリカ及
びジルコニアから選ばれる少なくとも一種を含む酸化物
前駆体と水を適量混合し、スラリーを調製する。そして
金属箔あるいはセラミックスから形成されたハニカム基
材にスラリーをコートし、乾燥・焼成してチタニア、シ
リカ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種の酸化
物がルチル型チタニア粉末中に結合材として介在してな
る担体コート層を形成する。その後定法によって貴金属
を担持する。この場合、貴金属はルチル型チタニアに優
先的に担持され、チタニア、シリカ及びジルコニアから
選ばれる少なくとも一種の酸化物には僅かしか担持され
ない。これによりCOシフト反応活性の高い本発明のCOシ
フト反応用触媒が調製される。
【0031】また、予めルチル型チタニア粉末に貴金属
を担持して触媒粉末を調製し、この触媒粉末に酸化物前
駆体と水を適量混合し、スラリーを調製する。そして金
属箔あるいはセラミックスから形成されたハニカム基材
にスラリーをコートし、乾燥・焼成してチタニア、シリ
カ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種の酸化物
が貴金属を担持したルチル型チタニア粉末中に結合材と
して介在してなる触媒層を形成して、本発明のCOシフト
反応用触媒を調製することもできる。この場合、チタニ
ア、シリカ及びジルコニアから選ばれる少なくとも一種
の酸化物が貴金属を担持したルチル型チタニア表面を覆
うような不具合が生じないと考えられ、COシフト反応活
性の高いCOシフト反応用触媒となる。
【0032】また、ルチル型チタニア粉末と酸化物前駆
体との混合物からペレットを形成し、それに貴金属を担
持したペレット触媒としてもよいし、予め貴金属が担持
されたルチル型チタニア粉末と酸化物前駆体との混合物
からペレット触媒を形成することもできる。
【0033】そして本発明のCOシフト反応用触媒は、そ
の高い反応活性により生成するH2を利用して、内部改質
型燃料電池の燃料改質システム、あるいは自動車排ガス
浄化システムなどに用いることができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を具体
的に説明する。
【0035】(実施例1)ルチル型チタニア粉末 102g
と、チタニアとしての固形分が10重量%のチタニアゾル
180g(TiO2:18g)と、イオン交換水 140gをこの比
率で磁製ボールミルに投入し、粉砕してスラリーを調製
した。
【0036】次にコーディエライト製のハニカム基材
(0.12L,400セル)に上記スラリー中に浸漬し、引き
上げて余分なスラリーを吸引して除去した後、 120℃で
1時間乾燥し 500℃で1時間焼成してコート層を形成し
た。コート層は、ハニカム基材1L当たり 120g形成し
た。
【0037】その後、所定濃度のジニトロジアンミン白
金硝酸溶液の所定量をコート層に含浸させ、 300℃で3
時間焼成してコート層にPtを担持した。Ptの担持量はハ
ニカム基材1L当たり2gである。
【0038】(実施例2)ルチル型チタニア粉末 108g
と、シリカとしての固形分が40重量%のシリカゾル30g
(SiO2:12g)と、イオン交換水 140gとからなるスラ
リーを実施例1と同様にして調製した。このスラリーを
用いたこと以外は実施例1と同様にして本実施例の触媒
を調製した。
【0039】(実施例3)ルチル型チタニア粉末 108g
と、ジルコニアとしての固形分が30重量%のジルコニア
ゾル40g(ZrO2:12g)と、イオン交換水 140gとから
なるスラリーを実施例1と同様にして調製した。このス
ラリーを用いたこと以外は実施例1と同様にして本実施
例の触媒を調製した。
【0040】(実施例4)コート層の形成量をハニカム
基材1L当たり 240gとしたこと、及びPtの担持量をハ
ニカム基材1L当たり12gとしたこと以外は実施例1と
同様にして、本実施例の触媒を調製した。
【0041】(比較例1)ルチル型チタニア粉末 108g
と、ベーマイト( AlO(OH))14gと、イオン交換水 140
gとからなるスラリーを実施例1と同様にして調製し
た。このスラリーを用いたこと以外は実施例1と同様に
して本比較例の触媒を調製した。
【0042】(比較例2)ルチル型チタニア粉末 108g
と、セリアとしての固形分が15重量%のセリアゾル80g
(CeO2:12g)と、イオン交換水 140gとからなるスラ
リーを実施例1と同様にして調製した。このスラリーを
用いたこと以外は実施例1と同様にして本比較例の触媒
を調製した。
【0043】(比較例3)コート層の形成量をハニカム
基材1L当たり 240gとしたこと、及びPtの担持量をハ
ニカム基材1L当たり12gとしたこと以外は比較例1と
同様にして、本比較例の触媒を調製した。
【0044】(実施例5)ルチル型チタニア粉末 116g
と、チタニアとしての固形分が10重量%のチタニアゾル
40g(TiO2:4g)と、イオン交換水 140gとからなる
スラリーを実施例1と同様にして調製した。そしてこの
スラリーを用いたこと、コート層の形成量をハニカム基
材1L当たり 240gとしたこと、及びPtの担持量をハニ
カム基材1L当たり12gとしたこと以外は実施例1と同
様にして本実施例の触媒を調製した。
【0045】(実施例6)ルチル型チタニア粉末90g
と、チタニアとしての固形分が10重量%のチタニアゾル
300g(TiO2:30g)と、イオン交換水 140gとからな
るスラリーを実施例1と同様にして調製した。そしてこ
のスラリーを用いたこと、コート層の形成量をハニカム
基材1L当たり 240gとしたこと、及びPtの担持量をハ
ニカム基材1L当たり12gとしたこと以外は実施例1と
同様にして本実施例の触媒を調製した。
【0046】(従来例1)ルチル型チタニア粉末に代え
て、市販のCu−Zn系触媒(東洋CCI社製)を同量用い
たこと以外は比較例1と同様にしてスラリーを調製し
た。このスラリーを用いたこと以外は実施例1と同様に
してコート層を形成し、本従来例の触媒を調製した。
【0047】<試験・評価>実施例1〜6と比較例1〜
3の触媒の構成を表1にまとめて示す。なお表1には、
コート層におけるルチル型チタニア 100重量部に対する
ルチル型チタニア以外の酸化物の重量部も示している。
【0048】
【表1】
【0049】上記した各触媒を常圧固定床流通型反応装
置にそれぞれ装着し、CO(4.5%)-H2(33.6%)-CO2(8.5%)-H
2O(28.4%)-N2(残部)からなるモデルガスを空間速度約
3,800h-1で供給しながら、2℃/分の降温速度で 350℃
から 150℃まで降温した。そのときの触媒出ガス中のCO
濃度をガスクトマトグラフ法によって測定し、CO転化率
を算出した。結果を図1〜図3に示す。
【0050】図1には、実施例1〜3と比較例1〜2の
触媒の結果を示している。いずれの触媒も、温度の上昇
とともにCO転化率が向上しているが、ある温度以上では
CO転化率が低下している。これは、温度が高くなると平
衡論的にCOの転化が制約されるようになるためである。
【0051】図1より、実施例1〜3の触媒は比較例1
〜2の触媒より高いCO転化率を示していることがわか
る。つまり結合材としてチタニア、シリカ、ジルコニア
のいずれかが共存する触媒は、アルミナ又はセリアが共
存する触媒に比べてCOシフト反応活性が高いことが明ら
かである。なお比較例1〜2の触媒がCOシフト反応活性
が低い理由は、アルミナ又はセリアがルチル型チタニア
の親水性を低下させたためか、あるいはアルミナ又はセ
リアにPtが担持されてルチル型チタニアに担持されたPt
量が少なくなったためと推測される。
【0052】図2には、実施例4,比較例3及び従来例
1の触媒の結果を示している。ルチル型チタニアを用い
ているにも関わらずアルミナが共存している比較例3の
触媒は、従来広く用いられている従来例1の触媒に比べ
てもCOシフト反応活性が低いのに対し、アルミナに代え
てチタニアが共存する実施例4の触媒は従来例1に比べ
てCOシフト反応活性が高いことが明らかである。
【0053】また図3には、実施例4〜6及び従来例1
の触媒の結果を示している。図3より、実施例6の触媒
は実施例4の触媒よりCOシフト反応活性が低く、従来例
1とほぼ同等のCOシフト反応活性を示している。したが
って結合材としてのチタニア量は、ルチル型チタニアの
100重量部に対して33重量部未満であることが望まし
く、請求項3に記載したようにルチル型チタニア 100重
量部に対して25重量部以下とすれば従来例1の触媒より
高いCOシフト反応活性を示すと考えられる。
【0054】また実施例5の触媒では、上記の試験中に
ハニカム基材からコート層が剥離する現象が多く観察さ
れ、コート層の付着量が大幅に減少したためにCOシフト
反応活性が大きく低下した。したがって結合材としての
チタニア量は、ルチル型チタニアの 100重量部に対して
3.4重量部を超えることが望ましく、請求項3に記載し
たようにルチル型チタニア 100重量部に対して5重量部
以上とすればコート層の剥離が防止されると考えられ
る。
【0055】
【発明の効果】すなわち本発明のCOシフト反応用触媒に
よれば、平衡論的に高効率のCOからH2への転換が可能な
低温域においてCOシフト反応活性がきわめて高く、空間
速度が高い反応条件下でも高効率でCOをH2に転換するこ
とができる。また高温雰囲気に曝されても活性種の粒成
長を抑制することができる。そしてペレット触媒あるい
はハニカム触媒として、内部改質型燃料電池の燃料改質
システムにおけるCOの除去、あるいは内燃機関の排ガス
中のCOをH2に転換しそのH2を用いて触媒上に吸蔵したNO
x を還元する排ガス浄化システムなどに実用として用い
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例の触媒における温度とCO転化
率の関係を示すグラフである。
【図2】実施例、比較例及び従来例の触媒における温度
とCO転化率の関係を示すグラフである。
【図3】実施例及び従来例の触媒における温度とCO転化
率の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平林 武史 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 4G040 EB32 4G069 AA03 AA08 BA02A BA02B BA04A BA04B BA05A BA05B BC32A BC33A BC69A BC75A BC75B CC26 DA06 EA02Y EA18 EB18Y EC02Y EC22X ED02 FA02 FA03 FB13 FB23 FB78 FC08 4G140 EB32 EB34 4H060 AA04 BB12 FF02 GG02 GG08 5H027 AA02 BA01 BA17

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタニア、シリカ及びジルコニアから選
    ばれる少なくとも一種の酸化物がルチル型チタニア粉末
    中に結合材として介在してなる担体と、主として該ルチ
    ル型チタニアに担持された貴金属とよりなることを特徴
    とするCOシフト反応用触媒。
  2. 【請求項2】 チタニア、シリカ及びジルコニアから選
    ばれる少なくとも一種の酸化物がルチル型チタニア粉末
    中に結合材として介在してなる担体と、主として該ルチ
    ル型チタニアに担持された貴金属とよりなるコート層が
    耐熱性基材表面に被覆形成されてなることを特徴とする
    COシフト反応用触媒。
  3. 【請求項3】 チタニア、シリカ及びジルコニアから選
    ばれる少なくとも一種の酸化物は、前記ルチル型チタニ
    ア 100重量部に対して5〜25重量部含まれていることを
    特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCOシフト反応
    用触媒。
  4. 【請求項4】 前記貴金属は白金を主成分とすることを
    特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCOシフト反応
    用触媒。
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