JP2002069810A - 組ひも組織のループ付きコード及びその製造方法 - Google Patents

組ひも組織のループ付きコード及びその製造方法

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  • Braiding, Manufacturing Of Bobbin-Net Or Lace, And Manufacturing Of Nets By Knotting (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 組ひも組織の特性を有効に利用したループ付
きコード及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 繊維集合体からなるコード本体1の端部
3を組ひも組織で構成する。この組ひも組織からなるコ
ード端部3に、折り返したコードの末端4を組ひも組織
内に貫通させるためのコード端挿入孔7a,7b,7c
を、該コード本体の長さ方向に沿う複数箇所に設け、該
挿入孔の複数に折り返したコードの末端4を順次通し
て、コード端部3を組ひも組織で把持させることにより
ループ部2を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、物上げ機の玉掛、
移動物の繋留、荷物の固定、ひも端の係止などの広範な
分野で多用されているループ(目玉)付きのコード(糸
その他各種素材の繊維状物を組み、撚り、編み、織りま
たは束ねて形成した細長いもの)及びそれを製造する方
法に関するものであり、更に具体的には、任意組織の繊
維集合体からなるコード本体の端部に組ひも組織からな
るループを付したコード及びその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】コードの一種であるロープ(索)は、端
部に環やループが設けられて、物上げ機の玉掛、移動物
の繋留、荷物の固定などの広範な分野で多用されてお
り、その索の端部には、用途に応じて金具が取り付けら
れ、あるいは被連結体との連結のためのループが形成さ
れている。このループの形成には、従来、アイスプライ
ス法(蛇口または目玉つなぎ)、クリップ止め法、圧縮
止め法、合金止め法、樹脂止め法など、用途に応じた種
々の手法が採用されている。
【0003】従来の一手法である上記アイスプライス法
は、ロープの端部の素線を解いて、撚り構造をなすロー
プ本体の素線の中に撚りに沿って差し込むことによりル
ープ(目玉)を形成する手法(所謂、巻差し法)で、加
工が容易であるが撚りの戻りで差し込んだ素線が抜け、
ループ強度が低下する欠点がある。巻差し法の強度上の
欠点を補うために、撚りを解いた素線を撚り構造をなす
ロープ本体に差込むに際し、撚りの方向と逆方向に素線
を差し込んでループを形成する手法(所謂、サツマ法)
が行われるが、この方法は難度が高く、作業に高度の熟
練を要する。
【0004】従来の手法のグリップ止め法や圧縮止め法
は、ロープ本体に沿って折り返したロープ端をロープの
太さに見合った湾曲部を有するU型ボルトや管状の圧着
用金具でロープ本体に締結してループを形成する手法
で、線材が金属である所謂ワイヤーロープには多用され
ているが、有機繊維や化学繊維を素材とするロープでは
U型ボルトや圧着用金具による締結部の強度低下を生ず
る欠点がある。
【0005】また、別の従来法である合金止め法、樹脂
止め法は、ロープの太さに見合った内径を有するソケッ
トにロープの末端を通し、ソケット内の素線の撚りを解
いてバラバラにした状態で、ソケット内に合金または樹
脂を注入し、これを固化させて締止する手法であり、ワ
イヤーロープには合金を用いる方法が多用され、有機繊
維や化学繊維を素材とするロープでは樹脂による固化部
が形成されているが、特にこれらの金属や樹脂の固化部
においては応力集中に伴う強度低下を生ずる欠点があ
る。
【0006】このように、従来のループ付きコードにお
いては、ループ部の形成に際して、ロープ交差位置を金
属等のクリップや圧縮管による締結、または樹脂等によ
る接着が行われており、この部分において張力の負荷時
に極端な応力集中を伴うことにより強力が低下し、ルー
プ部においてロープを構成する繊維の強度が十分に生か
されないという強度上の問題があり、また、ループ部形
成の作業の難度が高いことや、さらにはループの大きさ
やロープの両端のループ間距離の調節が容易でないと
か、重量が大きいなど、機能上の問題もあり、これらに
対処することの可能な手段が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の実情に鑑み、本
発明者らは、金具や接着部による応力集中のないループ
の形成について種々検討してきたが、組ひも組織のコー
ドが、それに張力が作用した際に該組ひも組織を構成す
る各繊維に組織の軸心に向かって締め付け力が発現され
る特性を有していることに着目し、組ひも組織からなる
コード端部の組織内に折り返したコード端を貫通させて
ループ部を形成し、張力の作用による締め付け力でその
ループが安定的に維持されるか否かを実験的に確かめた
ところ、少なくともコード端を複数箇所に順次通すこと
により、ループが安定的に維持されることを確認するこ
とができた。
【0008】本発明は、かかる知見に基づくものであ
り、したがって、本発明の基本的な技術的課題は、組ひ
も組織の特性を有効に利用したループ付きコード及びそ
の製造方法を提供することにある。本発明の他の技術的
課題は、ループ部における応力集中がなく、コードを構
成する繊維の強度が十分に生かされるようにした強靭な
ループ付きコード及びその製造方法を提供することにあ
る。本発明の他の課題は、構成が簡単でループ形成が容
易なループ付きコード及びその製造方法を提供すること
にある。本発明の他の課題は、ループの大きさやコード
の両端のループ間距離の調節が容易なループ付きコード
及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の組ひも組織のループ付きコードは、基本的に
は、任意組織の繊維集合体からなるコード本体の少なく
とも端部を組ひも組織で構成し、この組ひも組織からな
るコード端部に、折り返したコード端を組ひも組織内に
貫通させるためのコード端挿入孔を、該コード本体の長
さ方向に沿う複数箇所に設け、該挿入孔の複数に折り返
したコードの末端を順次通して、コード端部を組ひも組
織で把持させることによりループ部を構成したことを特
徴とするものである。上記ループ付きコードは、組ひも
組織からなるコード端部を、ゴム弾性を有する繊維また
はそれを混在させた繊維の集合体により構成し、あるい
は、コード本体の両端部にループ部を形成し、折り返し
たコード端をコード端挿入孔に通す深さを変更して、組
ひも組織でコード端部を把持させる位置を変えることに
より、ループ間距離を調整可能にすることができる。
【0010】また、上記課題を解決するための本発明の
ループ付きコードの製造方法は、任意組織の繊維集合体
からなるコード本体の端部を組ひも組織に製紐するに際
し、折り返したコード端を貫通させるためのコード端挿
入孔を形成する複数の挿入孔形成部片を、組ひも組織を
横断するように、該コード本体の長さ方向に間隔を置い
て順次組み込みながら製紐した後、コード端部を折り返
して、上記挿入孔形成部片の抜脱により組ひも組織内に
形成された複数のコード端挿入孔にコードの末端を順次
貫通させることにより、コード端部にループ部を形成す
ることを特徴とするものである。
【0011】上記構成を有するループ付きコードにおい
ては、組ひも組織に張力が作用した際に、組ひも組織を
構成するコード端挿入孔の周囲の各繊維に組織の軸心に
向かう締め付け力が作用するので、該挿入孔に貫通させ
たコード端がその締め付け力により強固に把持され、し
かも、コード端挿入孔を該コード本体の長さ方向に沿う
複数箇所に設けて、それらの挿入孔にコード末端を順次
挿通しているので、形成したループが極めて安定的に維
持される。また、組ひも組織は、繊維束が組織の内部か
ら組ひも表面に導出され、該表面で折り返して再び組織
の内側に向かうものであるから、組ひも表面に多数の繊
維束による凹凸が生じているが、この凹凸が上記締め付
け力によるコード端の把持をより安定化させることにな
る。更に、コードを構成する繊維にゴム弾性を有する繊
維、またはそれを混在させた繊維の集合体を用いること
により、該ゴム弾性により上記締め付け力を高め、ある
いは無張力時にもある程度の締め付け力を発生させ、ル
ープを安定的に維持させることができる。加えて、該ゴ
ム弾性によりコードに伸縮性が発現され、該コードによ
る被結合物双方の連繋を所要の張力のもとで行うことが
できる。
【0012】一方、上記締め付け力は、負荷される張力
が大きいほど大きくなり、除荷により低減するので、コ
ード端部への締め付け力がない状態のもとで、コード端
を挿入孔内において移動させることにより、ループの大
きさ等の微調節を容易に行うことができる。加えて、コ
ードの使用条件に合わせて、コード端の挿入孔への挿通
深さを変え、あるいは、余分に設けたコード端挿入孔の
うちで適当な位置にあるものを選択してコード端を挿通
することにより、コードの両端のループ間距離を変更す
ることができる。
【0013】このような本発明のループ付きコードで
は、ループ部の形成のためのコード交差位置の結合に際
して、圧縮管等による締結や樹脂による接合を施さない
ため、張力負荷時の極端な応力集中がなく、コードを構
成する繊維の強度を最大限に発揮させることができる。
しかも、ループ部とコード本体との接合部分において強
度の低下が無く、強靭で使用上の利便性の大きなループ
付きコードを得ることができる。また、本発明の方法に
よれば、上述したループ付きコードを簡単に製造するこ
とができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る組ひも組織の
ループ付きコードの実施例を示し、図2は本発明の主要
部であるループ部2の構成を拡大して示すもので、この
実施例のコードはコード本体1の両端側にループ部2を
有しているが、コード本体1の片側端のみにループ部2
を形成することもできる。このコード本体1は、その全
体を組ひも組織として製紐するのが望ましいが、それに
限らず、少なくともループ部2を形成するコード端部3
を組ひも組織で構成すればよく、該端部以外は、撚り構
造や他の手段で束状にまとめられた任意組織の繊維集合
体とし、その端部に連続性をもってループ部2を形成す
るための組ひも組織部分を形成することができる。
【0015】上記コード本体1及びループ部2より構成
されるループ付きコードの製作に使用する繊維の素材と
しては、高強度で強靭な繊維が望ましく、例えば、アラ
ミド繊維、ポリパラフエニレンベンゾビスオキサゾール
繊維(所謂、PBO繊維)、ポリウレタン弾性繊維等の
有機系繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機系繊維、金
属繊維、天然繊維等を、用途に応じて単独で、あるいは
それらの複数を混合して用いることができる。
【0016】この組ひも組織からなるコード本体1の端
部に連続してループ部2を形成するため、コード端部3
には、折り返したコードの末端4を貫通させるための複
数のコード端挿入孔7a,7b,7cを、該コード本体
1の長さ方向に沿って設けている。これらのコード端挿
入孔7a〜7cは、それを形成するための挿入孔形成部
片として、図3の実施例において示す孔形成ピン8等を
用いて形成することもできる。また、該コード端挿入孔
は、針や目打ち状の工具等を用いて手動で形成すること
もできるが、この場合、針や目打ちの挿入によって繊維
が損傷したり、コード端挿入孔がコードの軸心から片寄
らないようにすることが必要である。これらのコード端
挿入孔は、ほぼ等間隔で複数箇所に設けるが、必ずしも
等間隔である必要はない。そして、このコード端部にお
いては、組ひも組織内に設けた上記コード端挿入孔7
c,7b,7aに折り返したコード末端4をループ側か
ら順次通して、上記ループ部2を形成している。このル
ープ部2は、コードにより移動、係留、固定などを行う
各種の機器や連結用部品(図示しない)の繋合に供する
ものである。
【0017】上記コード端部3に形成するコード端挿入
孔の数は、コード末端4を挿通する数に合わせる必要は
なく、それよりも多くして、コード端挿入孔の数に余裕
を持たせておくことができる。また、ループ部2の形成
に用いるコード端部3の組ひも組織の長さは、少なくと
も、本来のループの形成に必要な長さと、その組ひも組
織にコード端を把持させるための所要数のコード端挿入
孔を設けるに要する長さとの和以上が必要である。
【0018】上記構成を有するループ付きコードにおい
ては、コード端部3に張力が作用した際に、各コード端
挿入孔7a〜7cの周囲における組ひも組織の各繊維
に、組織の軸心に向かう締め付け力が作用するので、該
挿入孔に貫通させたコード端4がその締め付け力により
強固に把持され、しかも、コード端挿入孔を該コード本
体1の長さ方向に沿う複数箇所に設けて、それらの挿入
孔にコード末端4を順次挿通しているので、形成したル
ープが極めて安定的に維持される。また、組ひも組織
は、各繊維束が組織の内部から組ひも表面に導出され、
該表面で折り返して再び組織の内側に向かうものである
から、組ひも表面に多数の繊維束折り返し部による凹凸
が生じているが、この凹凸も上記締め付け力によるコー
ド末端4の把持をより安定化させることになる。
【0019】コード端部のループ部2においては、該ル
ープ部2に負荷される張力が大きいほど組ひも組織によ
る大きな締め付け効果が現れ、組ひも組織を貫通するコ
ード端に対して大きな締め付け力が発生するため、特に
張力負荷時にコード端に対する大きな把持効果が得られ
る。一方、張力を除荷することにより、コード端の把持
力が減少するので、張力を除荷した状態で組ひも組織内
に貫通するコード端を移動させることにより、ループの
大きさを変え、あるいはコード全体の長さの微調節を行
うことが可能となる。また、コード端挿入孔を余分に設
けておき、コードの端部を折り返して組ひも組織内に貫
通させる位置を、該組ひも組織の軸方向に沿って変える
ことにより、広範にわたるコードの長さ調節が可能とな
る。
【0020】このように、上記ループ付きコードでは、
コード本体1の端部の組ひも組織内にコード端部を折り
返して貫通させた各結合箇所において、コード端部の締
め付け力がループ部形成のためのコード端部把持力とな
り、結果的には、それらの結合箇所における締め付け力
の総和がコード端部3の把持力となる。そして、この把
持力により、コードに引張力を作用させたときに、コー
ド本体1が引張破断に至るまでループを形成するコード
端部が組ひも組織のコード挿通孔から滑脱することな
く、ループ部2の形状が確保されることが望ましく、こ
のような条件を満たすには、後記する実験例(図6)に
よれば、結合箇所の数が増加するほど好結果が得られて
いるが、この結合箇所の数は、コードに使用する繊維の
種類や、コード端部の太さ、組ひも組織の種類、負荷さ
れる張力の大きさなど、コードの性状や使用条件に応じ
て適宜定められるものであり、実用的には2〜4箇所程
度で十分である場合が多い。なお、図1及び図2では3
箇所のコード端挿入孔に組ひも組織のコード端部3を挿
通した場合を示している。
【0021】また、上記ループ付きコードにおいては、
少なくともループを形成する組ひも組織のコード端部3
を、ゴム弾性を有するポリウレタン等からなる繊維また
はそれを混在させた繊維の集合体により構成することが
でき、これにより、上記締め付け力を高め、あるいは無
張力時にもある程度の締め付け力を発生させ、ループを
安定的に維持させることができる。加えて、該ゴム弾性
によりコードに伸縮性が発現され、該コードによる被結
合物双方の連繋を所要の張力のもとで行うことができ
る。
【0022】次に、図3ないし図5を参照し、上記ルー
プ付きコードを製造する方法の一例及びその装置につい
て説明する。上記のループ付きコードは、繊維集合体を
組ひも組織に製紐するに際し、コード本体1及びループ
部2を一体構造の繊維組織体として構成するものである
が、その一端又は両端に形成するコード端挿入孔の列
は、図3のA〜Cに示すような手順により得ることがで
きる。また、図4に上記コード端部を製紐する製紐装置
の概要を示す。
【0023】図3のAは、コード本体1を図4の製紐装
置(後述)に仕掛けてループ形成用のコード端部3の製
紐を開始する状態を示すもので、この状態では、コード
本体1を図4に示すように一対の把持ローラ12で把持
させて機枠10に懸垂させ、コード本体1の一方のコー
ド端部である未組織の各糸11の端を糸張力調整器15
を介して、製紐機構21のキャリア22のフック23に
所要の製紐用張力を与えた状態で係留している。
【0024】このような状態において、製紐機構21の
キャリア22を製紐のために必要な経路に沿って駆動
し、初めのコード端挿入孔7aを形成する位置まで所要
長の組ひも組織11aを製紐する。次に、図3のBに示
すように、コード端挿入孔7aの孔径に見合った太さの
孔形成ピン8を組ひも組織11aの組み口hの中央位置
に該組み口hを横断して当接するように配し、孔形成ピ
ン8を挟持した状態で、図3のCに示すように、第2の
コード端挿入孔7bの位置までの所要長の組ひも組織1
1aを製紐する。続いて、組ひも組織11aの組み口h
の中央位置へ、上記と同様に孔形成ピン8を配し、該孔
形成ピン8を挟持した状態で次のコード端挿入孔7cの
位置まで所要長の組ひも組織11aを製紐する。以下、
同様にして必要数の孔形成ピン8を組ひも組織11a内
に挟持させ、その後コードの折り返し部分を含めて、組
ひも組織のコード端部3をループ部2の形成に必要な長
さに製紐する。
【0025】次に、製紐した組ひも組織のコードの末端
(コード端部3の最終的組み口h)を、それが解けない
ように、例えば、糸または樹脂等の適当な手段によって
固結したうえで、未製紐の糸11をフック23より外
し、かつ把持ローラ12によるコード本体1の把持を解
放し、コード本体を製紐装置から取り外す。コード本体
1の反対側にもループ形成を必要とする場合には、上記
のコード本体の両端を反転させた状態にして、該コード
本体1を一対の把持ローラ12間に再び把持させて再懸
垂し、未製紐の各糸11の端をフック23に係留し、上
記したコード端挿入孔7a,7b,7cの形成のための
孔形成ピン8の挟持動作と製紐動作とを繰り返し、所要
数の孔形成ピン8の挟持と所要長の組ひも組織コード端
部3の形成を行った後、コードが製紐装置より外され
る。
【0026】コード端部3に所要数の孔形成ピンを組み
込んだ状態で製紐装置より外されたコードは、コードの
末端4より先の未製紐の各糸を切断し、孔形成ピン8を
抜いて、それらの跡に形成される複数のコード端挿入孔
7a〜7cに、折り返した組ひも組織のコードの末端4
をループ側のコード端挿入孔7cから順次挿通し、それ
によりループ部2を形成したうえで、使用状況に合わせ
たループ形状と長さにして製品化する。この製品化に際
して、上記により形成されたループ部2において組ひも
組織のコード端部3が折り返されて二重になった部分に
は、糸を巻き付けるなど、糸の並列部分への異物混入な
どを防止するための処置を適宜施すことができる。但
し、集中応力が生じないように配慮する必要がある。
【0027】図5のAは、上記コード端部3の組ひも組
織の製紐に際して、コード端挿入孔7a〜7cを形成す
るための挿入孔形成部片として、図3の実施例において
示した孔形成ピン8を用いた場合の製紐完了状態を示し
ている。この挿入孔形成部片としては、上記孔形成ピン
8ばかりでなく、同図のBに示すように、ピン本体部9
aと止栓部9bからなるもの、あるいはその他の任意構
造を有するものを用いることもできる。上記ピン本体部
9aは中空筒状にしたピン筒に頭部を付けたものであ
り、また止栓部9bは上記ピン筒に嵌入する栓部に頭部
を付けたもので、両頭部により挿入孔形成部片が組ひも
組織11aから離脱するのを防止すると同時に、ピン本
体部9aにより、後述のようにコードの末端4のコード
端挿入孔への挿入を容易にしている。
【0028】上記挿入孔形成部片の構成例について更に
具体的に説明すると、該挿入孔形成部片は、上記図3及
び図5Aの孔形成ピン8のように、単に組ひも組織にコ
ード端挿入孔を形成するだけのものとすることもできる
が、該挿入孔形成部片をコード端挿入孔の形成だけでな
く、組ひも組織11aからそれを抜き出すときに形成さ
れるコード端挿入孔7a〜7cに、折り返した組ひも組
織のコードの末端4の挿通を容易にするための機能を有
するものとして構成することができる。
【0029】即ち、上記図5のBに示す挿入孔形成部片
は、コードの末端4をコード端挿入孔7a〜7cへ順次
通すに際して、ピン本体部9aにおける中空筒状のピン
筒内にコードの末端4を挿入して一時的に保持させ、ピ
ン本体部9aを抜くときにその跡に形成されるコード端
挿入孔にコードの末端4を挿入できるようにしたもので
あるが、このコード端挿入孔へのコードの末端4の挿入
のためには、図5のBの構造例ばかりでなく、例えば、
挿入孔形成部片の端部を各種管状や鉗子状にして、コー
ドの末端4を把持して案内する機能を付加し、コード端
挿入孔へのコードの末端の通過を容易にすることができ
る。
【0030】上述した組ひも組織のコード端部3の製紐
に際し、各孔形成ピン8間の組ひも組織11aの長さ
は、ループ付きコードに張力が負荷された際に、これら
の組ひも組織11aが本来の組ひもとして機能し、コー
ド端挿入孔7a〜7cに挿通された組ひも組織のコード
端部に、締め付け力を及ぼすことの可能な長さである。
組ひも組織11aの長さが極端に短い場合は、コード端
挿入孔7a〜7cに挿通されたコード端部3に組ひも組
織として十分に機能せず、期待される締め付け力を得る
ことができない。組ひも組織11aの最小長さは、使用
する繊維の種類、コード端部3における組ひも組織の太
さ、製紐に採用する組ひも組織の種類等により異なる
が、該組ひも組織の太さの3倍以上が一応の目安とな
る。
【0031】また、コード端挿入孔7a〜7cの径は、
組ひも組織に製紐したコードの末端4が通過可能な最小
の径でよく、孔形成ピン8等の挿入孔形成部片の太さ
は、これに見合ったものが用いられる。
【0032】上記実施例においては、コード端挿入孔と
該挿入孔へのコード端部3の挿通箇所を一対一に対応さ
せているが、ループ付きコードに広範囲な長さにわたる
調節機能を持たせるには、上記挿通箇所の数を超える多
数の孔形成ピンを所要の間隔で形成して製紐し、所要位
置のコード端挿入孔のみに選択的にコード端部3を挿通
すれば良い。この際に使用されないコード端挿入孔につ
いては、孔形成ピンを抜き取った後、その部分に適度の
ローリング挙動を与えることにより、孔形成ピンにより
形成されたコード端挿入孔近傍の組ひも組織の組織を均
一化し、コード端挿入孔跡によりコードの機械的特性を
損なうのを避けることができる。
【0033】次に、図4の製紐装置の構成について具体
的に説明する。同図の製紐装置において、機枠10の下
部には、並設した多数のキャリア22を規則的に駆動す
ることによって糸11の製紐を行う製紐機構21が設置
され、上記キャリア22に、製紐される糸11の端を糸
張力調整器15を介して把持するフック23を設けてい
る。製紐機構21としては、糸を保持したキャリア22
が交差する波状の軌道に沿って導かれ、互いに反対方向
に走行することによって製紐動作を行う従来の製紐機構
や、例えば、特許第1,700,903号(特公平3−
64621号:不等断面立体織物の製織方法)として知
られているところの、キャリア22に選択的移動を与え
て製紐を行う製紐技術を用いることができる。
【0034】コード本体1は、上述したように、一対の
把持ローラ12に支持垂下され、その端部の糸11は糸
の引き出しと張力調整機能を備えた糸張力調整器15を
介して、キャリア22のフック23に連繋される。糸張
力調整器15は、製紐動作の進行に伴って各糸に過度の
張力が掛かることを防止できるように、製紐長さに応じ
て内部に貯留している補助糸を解舒する機構を備えてお
り、例えば、特開平4−308262号(繊維機械にお
ける糸条送り装置)等による装置を用いることができ
る。この糸張力調整器15を介してフック23に取り付
ける未組織の各糸11の長さは、ループの大きさやコー
ド端挿入孔の数、あるいは糸張力調整器15や製紐機構
21へのセッティング条件を考慮して定められる。
【0035】把持ローラ12に支持され垂下されたコー
ド本体1の上部は、複数のガイドローラ14,14によ
ってガイドし、先端に重錘13を取付けて垂下させ、そ
こに必要な長さのコード本体1が貯留される。また、製
紐機構21の製紐動作の進行に合わせて、コード本体1
を上方へ巻き上げるため、上記把持ローラ12には駆動
部25を設け、その回転によって把持ローラ12を回転
させ、コード本体1の巻き上げと同時に、糸張力調整器
15からの張力調整用糸の解舒を行わせる。
【0036】コード本体1と未製紐の各糸11との境界
として形成される組み口hの近傍には、孔形成ピン8を
組み口hの中央位置に挿入するピン送出装置26が設け
られている。このピン送出装置26は、コード端部3の
所要長の製紐と巻き上げに合わせて、製紐している組ひ
も組織の組み口hに孔形成ピン8の挿入を繰り返すもの
である。
【0037】
【実施例】以下に、実施例として、本発明に基づいて形
成したループ部の強度に関する実験例を比較例と共に示
すが、本発明はこれらの例によって限定的に解すべきで
はない。
【0038】〔実施例1〕100DのPBO繊維を8打
ちで製紐し、組ひも組織のコードを得た。見掛けの線径
は0.3mmで、重さは0.106g/mであった。こ
のコード自体の引張試験を行い、引張強度を求めた結
果、26.9kgfであった。このコード端部に2mm
間隔で形成したコード端挿入孔に、2〜8回の通し回数
でコードの末端を通し、径が10mmのループ部を形成
した。これらのループ部を3.5mmの治具に引っ掛
け、引張試験を行った結果を図6に示す。この引張試験
の結果、特に通し回数が8回の場合、コード端挿入孔へ
の通し部分における滑りはなく、通した箇所の破断で引
張強度は19.0kgfであり、強度発現率が70.6
%になった。
【0039】〔実施例2〕200Dのメタ系アラミド繊
維を16打ちで製紐し、組ひも組織のコードを得た。見
掛けの線径は1.0mmで、重さは0.416g/mで
あった。また、このコード自体の引張試験を行い、引張
強度を求めた結果、18.0kgfであった。このコー
ド端部に2mm間隔で形成したコード端挿入孔に4回の
通し回数でコードの末端を通し、径が10mmのループ
部を形成した。このループ部を3.5mmφの治具に引
っ掛け、引張試験を行った結果、コード端挿入孔への通
し部分における滑りはなく、通した箇所の破断で引張強
度は13.8kgfであり、強度発現率が76.7%に
なった。
【0040】〔比較例1〕実施例1の場合と同じコード
の端部を折り返して、その部分を端末金具でかしめて、
径が10mmのループ部を形成した。このループ部を
3.5mmφの治具に引っ掛け、引張試験を行った結
果、端末金具部分でのコード破断で、引張強度は13.
8kgfであり、強度発現率が51.3%になった。
【0041】〔比較例2〕実施例1の場合と同じコード
の端部を8の字結びとし、径が10mmのループ部を形
成した。このループ部を3.5mmφの治具に引っ掛
け、引張試験を行った結果、結び目でのコード破断で、
引張強度は10.0kgfであり、強度発現率が37.
2%になった。
【0042】〔比較例3〕実施例1の場合と同じコード
の端部を編み付け結びとし、径が10mmのループ部を
形成した。このループ部を3.5mmφの治具に引っ掛
け、引張試験を行った結果、結び目でのコード破断で、
引張強度は12.5kgfであり、強度発現率が46.
5%になった。
【0043】
【発明の効果】以上に詳述した本発明によれば、組ひも
組織の特性を有効に利用したループ付きコード及びその
製造方法を提供することができ、従来技術のようにルー
プ部における応力集中がなく、コードを構成する繊維の
強度が十分に生かされ、強度発現率が高い強靭なループ
部を形成することができ、また、構成が簡単でループ形
成が容易であるばかりでなく、ループの大きさやコード
の両端のループ間距離の調節も容易に行うことができ
る。更に、シンプルな構造でループ形成部分が嵩張ら
ず、他物への引っ掛かり部分もなく、軽量であり、金具
や特殊な工具を用いたりすることなくコード自体でルー
プを形成できる点でも有利なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るループ付きコードの実施例の側面
図である。
【図2】図1のループ付きコードの要部側面図である。
【図3】A〜Cは、上記ループ付きコードの端部の組ひ
も組織の製紐に際して複数のコード端挿入孔を形成する
態様を説明するための説明図である。
【図4】上記組ひも組織のループ付きコードを製造する
装置の正面図である。
【図5】A及びBは、上記コード端部の組ひも組織の製
紐に際して複数のコード端挿入孔を形成するための異な
る挿入孔形成部片の説明図である。
【図6】本発明のループ付きコードの強度についての実
験例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コード本体 2 ループ部 3 コード端部 4 コードの末端 7a〜7c コード端挿入孔 8 孔形成ピン 11 糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀 利 行 福井県坂井郡丸岡町下安田14−10 サカ セ・アドテック株式会社内 Fターム(参考) 3B153 AA26 CC01 CC11 CC23 CC27 CC29 CC42 CC43 CC51 EE02 EE23 FF11 FF17 FF41 GG01 GG40 4L046 AA03 AA24 AB01 BA06 BB03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】任意組織の繊維集合体からなるコード本体
    の少なくとも端部を組ひも組織で構成し、 この組ひも組織からなるコード端部に、折り返したコー
    ドの末端を組ひも組織内に貫通させるためのコード端挿
    入孔を、該コード本体の長さ方向に沿う複数箇所に設
    け、 該挿入孔の複数に折り返したコードの末端を順次通し
    て、コード端部を組ひも組織で把持させることによりル
    ープ部を構成した、ことを特徴とする組ひも組織のルー
    プ付きコード。
  2. 【請求項2】組ひも組織からなるコード端部を、ゴム弾
    性を有する繊維またはそれを混在させた繊維の集合体に
    より構成した、ことを特徴とする請求項1に記載の組ひ
    も組織のループ付きコード。
  3. 【請求項3】コード本体の両端部にループ部を形成し、
    折り返したコードの末端をコード端挿入孔に通す深さを
    変更して、組ひも組織でコード端部を把持させる位置を
    変えることによりループ間距離を調整可能にした、こと
    を特徴とする請求項1または2に記載の組ひも組織のル
    ープ付きコード。
  4. 【請求項4】任意組織の繊維集合体からなるコード本体
    の端部を組ひも組織に製紐するに際し、折り返したコー
    ドの末端を貫通させるためのコード端挿入孔を形成する
    複数の挿入孔形成部片を、組ひも組織を横断するよう
    に、該コード本体の長さ方向に間隔を置いて順次組み込
    みながら製紐した後、 コード端部を折り返して、上記挿入孔形成部片の抜脱に
    より組ひも組織内に形成された複数のコード端挿入孔に
    コード端を順次貫通させることにより、コード端部にル
    ープ部を形成する、ことを特徴とする組ひも組織のルー
    プ付きコードの製造方法。
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