JP2002068733A - 結晶性マイクロポーラスマテリアルの製造方法およびその装置 - Google Patents

結晶性マイクロポーラスマテリアルの製造方法およびその装置

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JP2002068733A
JP2002068733A JP2000253801A JP2000253801A JP2002068733A JP 2002068733 A JP2002068733 A JP 2002068733A JP 2000253801 A JP2000253801 A JP 2000253801A JP 2000253801 A JP2000253801 A JP 2000253801A JP 2002068733 A JP2002068733 A JP 2002068733A
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microporous material
crystalline microporous
zeolite
superheated steam
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Tomoharu Oku
智治 奥
Hideaki Tsuneki
英昭 常木
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶化時に前駆体からの水溶性成分の溶出が
なく、簡便に、ゼオライトなどの結晶性マイクロポーラ
スマテリアルを合成する方法およびそのための装置を提
供する。 【解決手段】 不揮発性の構造指向剤成分を含む固体状
の結晶性マイクロポーラスマテリアル前駆体を過熱水蒸
気と接触させる。使用する過熱水蒸気の圧力が0.2〜
4.0MPaであり、かつ、温度が沸点(ケルビン温
度)の1.002〜1.2倍であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶性マイクロポ
ーラスマテリアルを製造する方法およびそれに用いる装
置に関する。ここでいう結晶性マイクロポーラスマテリ
アルとは、分子のオーダーの均一な径の細孔を持つ結晶
体であり、ゼオライトタイプとアルミノフォスフェート
タイプがある。アルミノフォスフェートタイプとして
は、アルミノフォスフェート(ALP0)、メタロアル
ミノフォスフェート(MAPO)、シリコアルミノフォ
スフェート(SAPO)が知られている。また、ここで
いうゼオライトとは、ゼオライト結晶骨格を構成する金
属原子(以下T原子と呼ぶことがある)を中心として4
個の酸素原子を頂点に配位したTO4四面体が3次元的
に結合することによって、均質なミクロ(あるいはメ
ソ)細孔を持ったケイ酸化合物の総称である。T原子が
ケイ素のみからなるシリカライトや、アルミノシリケー
ト、鉄シリケートなどのメタロシリケートの総称であ
り、様々な化学プロセスにおいて使用される有用なマテ
リアルである。
【0002】
【従来の技術】従来、ゼオライトに代表される結晶性マ
イクロポーラスマテリアルを合成する場合には、いわゆ
る水熱合成法が知られている。この方法は、例えばシリ
カ源、アルミニウム源、アルカリ金属およびテンプレー
ト剤としてアミンなどの有機化合物を含有する水性スラ
リーを使用するため、収率が低い点や長い結晶化時間が
必要な点、さらには多量の排水が発生する点で問題があ
る。
【0003】また、合成されるゼオライトは一般に粉体
であり、単独での成型性が悪いため、成型体を得るため
には多量の無機バインダーを使用する必要がある。無機
バインダーの使用は、成型体中のゼオライト含有率が低
くなる点や、使用用途に悪影響を及ぼさない無機バイン
ダーの使用に限定される点などで問題がある。このた
め、本発明者らは特願平11−172760において、
バインダーレスゼオライト成型体を製造する方法を提案
している。すなわち、あらかじめ成型したシリカにテト
ラアルキルアンモニウム成分とアルカリ金属成分を含浸
担持した前駆体を、飽和水蒸気と接触させることによっ
てバインダーレスゼオライト成型体を得ている。この方
法により、MFI型、MEL型、BEA型、MTW型、
RUT型等の様々なゼオライト成型体を合成できるた
め、極めて優れた結晶化方法である。この方法を工業的
に実施する場合には、例えば、生産性向上のためには結
晶化容器をできるだけ小さくする必要がある。このた
め、前駆体を充填した結晶化容器に飽和蒸気圧の高圧ス
チームを流通させる方法が好適であるが、簡便で効率的
に実施する製造方法およびそのために用いる設備は知ら
れていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、結晶
化時に前駆体からの水溶性成分の溶出がなく、簡便に、
ゼオライトなどの結晶性マイクロポーラスマテリアルを
合成する方法およびそのための装置を提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、結晶化時
に水蒸気を使用する結晶性マイクロポーラスマテリアル
の合成方法について鋭意検討した結果、不揮発性の構造
指向剤成分を含む固体状の結晶性マイクロポーラスマテ
リアル前駆体を、特定条件の過熱水蒸気と接触させるこ
とにより、簡便に結晶性マイクロポーラスマテリアルが
合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は不揮発性の構造指向剤
成分を含む固体状の結晶性マイクロポーラスマテリアル
前駆体と、特定条件の過熱水蒸気を接触させることを特
徴とする結晶性マイクロポーラスマテリアルの製造方法
に関する。
【0007】好ましくは、本発明は、該結晶性マイクロ
ポーラスマテリアル前駆体がシリカ成分と不揮発性の構
造指向剤成分を含む固体状のゼオライト前駆体であるこ
とを特徴とするゼオライトの製造方法である。
【0008】本発明は、前駆体中にアルカリ金属成分
と、ホウ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ガリウ
ム、インジウムからなる群から選ばれる一以上の金属成
分が含まれることが好ましい。
【0009】本発明の他の発明は、結晶性マイクロポー
ラスマテリアル前駆体に過熱水蒸気を接触させて結晶性
マイクロポーラスマテリアルを製造する際に用いる装置
であって、過熱水蒸気発生ユニットと、結晶化ユニット
と、かつ、圧力制御ユニットとを備えることを特徴とす
る結晶性マイクロポーラスマテリアルの製造装置に関す
る。
【0010】
【発明の実施形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】本発明に使用される結晶性マイクロポーラ
スマテリアル前駆体は、生成物である結晶性マイクロポ
ーラスマテリアルを構成する成分と不揮発性の構造指向
剤成分とを含む固体であれば特に制限されない。また本
発明に使用されるゼオライト前駆体は、シリカ成分と不
揮発性の構造指向剤成分とを含む固体であり、下記式 (1): Si(SDA)xMyQz 但し、式中、SDAは不揮発性の構造指向剤成分、好ま
しくはテトラアルキルアンモニウム成分を表し、Mはア
ルカリ金属、Qはゼオライト結晶骨格に組み込まれるこ
とによってT原子となる金属成分を表し、xは0.00
1〜1、yは0〜1、好ましくは0.0001〜1、z
は0〜0.5、好ましくは0.0001〜0.3の範囲
を表す、で表されるものである。
【0012】前駆体中のシリカ成分と不揮発性の構造指
向剤成分の存在比(Siを1としてモル比で表して)
は、特に制限されるものではないが、通常、0.001
〜1の範囲である。不揮発性の構造指向剤成分の存在比
が多すぎる場合には高価な構造指向剤成分を多量に使用
するためコストが高くなる。また、少なすぎると前駆体
が結晶化せず、ゼオライトが得られなくなるからであ
る。
【0013】前駆体中にはアルキル金属成分が含まれる
ことが好ましい。アルカリ金属の含有量は特に制限され
るものではなく、前記前駆体中に含まれなくても良い
が、通常、前駆体中のシリカとの原子比(Siを1とし
て)であらわして、0.0001〜1の範囲である。ア
ルキル金属成分が共存すると、結晶化速度が速くなる場
合がある。また、あらかじめ成型された前駆体を使用し
て、バインダーレスゼオライト成型体を製造する場合に
は、アルカリ金属の添加により得られる成型体の機械的
強度が向上する場合がある。
【0014】前駆体中に、ホウ素、アルミニウム、チタ
ン、鉄、亜鉛、ガリウム、インジウムからなる群から選
ばれる一以上の金属成分が含まれる場合には、これらの
金属成分がT原子となったゼオライト(結晶性メタロシ
リケート)が得られる。これら金属成分の含有量は、特
に制限されるものではないが、前駆体中のシリカとの原
子比(Siを1として)であらわして、通常、0.00
01〜0.5、好ましくは0.0003〜0.3の範囲
である。一方、これらの金属元素を含まない前駆体から
は、SiのみのT原子からなるゼオライト(結晶性シリ
カライト)が得られる。前記不揮発性の構造指向剤成分
としては、いわゆる水熱合成反応において使用される様
々な構造指向剤のうち、不揮発性のものであれば、特に
限定されないが、テトラアルキルアンモニウムイオンを
含む化合物であることが好ましい。具体的には、テトラ
メチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テト
ラn−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアン
モニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、テトラn−
ペンチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウ
ム、トリエチルn−プロピルアンモニウム、トリn−プ
ロピルメチルアンモニウム、トリn−ブチルメチルアン
モニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、ジベンジル
ジメチルアンモニウムなどのハロゲン化物、水酸化物な
どを例示することができる。テトラメチルアンモニウ
ム、テトラエチルアンモニウム、テトラn−プロピルア
ンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、トリエチ
ルメチルアンモニウムイオンを含有する化合物を用いる
ことが好ましく、通常はそれらの水酸化物が用いられ
る。構造指向剤成分の種類によって、ゼオライトの結晶
系を制御することができる。前記アルカリ金属成分とし
てはリチウム、ナトリウム、カリウムなどを例示するこ
とができ、それらの水酸化物やハロゲン化物、あるいは
シリカ成分、アルミン酸塩などのT原子となる金属化合
物中のアルカリ金属成分を用いることもできる。
【0015】ケイ素以外のT原子となる前記金属成分
は、オキソ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、水酸
化物、酸化物など形態で使用することができる。水溶液
の形で使用することが好ましいが、特に制限されるもの
ではない。
【0016】前記シリカ成分としては、特に制限される
ものではなく、一般的に水熱合成時に使用されるシリカ
源を使用することができ、コロイダルシリカ、無定型シ
リカ、珪酸ナトリウム、カオリン、カネマイト、アルミ
ノシリケートゲルなどを例示できる。また、シリカビー
ズなどのあらかじめ成型されたシリカ成型体をシリカ源
として使用することもできる。前記シリカ成型体として
は、特に制限されるものではなく、市販品を用いても良
い。シリカ成型体としては、比表面積が比較的大きなも
のが好適に用いられ、BET法による窒素吸着測定から
求めた比表面積が、通常、5〜800m2/g、好まし
くは20〜600m2/gの範囲であることが望まし
い。比表面積が小さすぎると結晶化に長時間かかり、ま
た結晶化度が低くなる場合があるからである。また、前
記シリカ成型体は、水銀圧入法により求めた細孔径が、
例えば4nm以上の細孔を有し、該細孔に基づく表面積
は5〜800m2/g、好ましくは20〜600m2/g
の範囲であり、該細孔に基づく細孔容積は0.1〜1.
5ml/g、好ましくは0.2〜1.3ml/gの範囲
である。
【0017】前記前駆体の調製方法は特に制限されるも
のではない。あらかじめ、シリカ源や前記構造指向剤成
分などの前駆体組成物を含有する水性スラリーを調製
し、これを蒸発乾固することによって得られるドライゲ
ルを使用することができる。ドライゲルは、粉体、成型
体のいかなる形態でも使用することができる。あるい
は、あらかじめ成型された前記シリカ成型体上に、前記
構造指向剤成分などの前駆体を構成する成分を担持した
ものを前駆体として使用することもできる。この場合、
シリカ成型体はゼオライトのシリカ源として使用され
る。
【0018】本発明で使用されるゼオライト前駆体の形
状は、固体状であれば特に制限されない。粒子径100
μm以下の粉体でも使用することができるが、所望によ
り、球状、シリンダー型、リング型、ハニカム状などの
形状に成型されたものを使用することができる。この場
合には、前駆体の形状が保持されたバインダーレスゼオ
ライト成型体が得られる。粉末状の前駆体を調製した後
に成型した物を使用しても良いが、あらかじめ任意の形
状に成型されたシリカ成型体を使用することが、簡便の
ため好ましい。あらかじめ成型されたシリカをゼオライ
トのシリカ源として使用するため、シリカ成型体の形状
や機械的強度、さらには比表面積、マクロ細孔構造など
の物性が、得られるバインダーレスゼオライト成型体の
物性と相関関係がある。すなわち、常法によりシリカ成
型体の物性を制御することによって、得られるバインダ
ーレスゼオライト成型体の物性を容易に制御することが
できる点で好ましい。
【0019】前記シリカ成型体を使用する場合には、前
記構造指向剤成分など、前駆体中に含まれる原料物質を
担持する方法は、特に限定されるものではない。シリカ
成型体内に前記原料物質を均質に担持することが望まし
いため、通常、前記原料物質の水溶液をシリカ成型体に
含浸した後、乾燥する方法が望ましい。一例を挙げれ
ば、所定量の各成分を均一な水溶液とし、シリカ成型体
の吸水量に見合う水溶液量となるように調製して含浸す
る。このとき、各成分は同時に担持しても良いし、各成
分毎あるいは均一な混合溶液を数回に分割して担持して
も良い。分割して担持する場合には、担持する順番は生
成物に何ら影響を与えない。
【0020】本発明の方法で製造することができる結晶
性マイクロポーラスマテリアルの結晶系は、特に制限さ
れるものではない。例えば、国際ゼオライト学会のフレ
ームワークトポロジーコードで、MFI型、MEL型、
MFI/MEL複合体、BEA型、MTW型、RUT
型、MOR型、MWW型、TON型、AEL型、AFI
型、VFI型などが挙げられる。なかでもゼオライトが
好ましく、MFI型、MEL型、MFI/MEL複合
体、BEA型、MTW型、RUT型などがさらに好まし
い。
【0021】本発明の方法で言う過熱水蒸気とは、特定
圧力における沸点以上の温度を有する水蒸気を意味す
る。すなわち、特定温度において飽和水蒸気圧以下の分
圧を有する水蒸気であり、このため乾燥水蒸気と言われ
ることがある。所望により、飽和水蒸気を窒素などの不
活性ガスで希釈することによって水蒸気分圧を下げた混
合気体を過熱水蒸気として使用することができる。
【0022】具体的には、次のような条件の過熱水蒸気
が使用される。
【0023】本発明の方法で使用される過熱水蒸気の温
度は、特に制限されるものではないが、通常、393〜
523K、好ましくは、400〜507K、さらに好ま
しくは、410〜490Kの範囲である。この時の水蒸
気分圧は、この温度範囲にある特定温度での飽和水蒸気
圧の相対圧で0.4〜0.98、好ましくは0.4〜
0.95、さらに好ましくは0.45〜0.9の範囲で
ある。
【0024】より具体的には次のような条件が採用され
る。水蒸気の分圧が0.2〜4.0MPa、好ましく
は、水蒸気の分圧が0.25〜3.0MPa、さらに好
ましくは0.3〜2.0MPaの範囲であり、かつ、温
度がその圧力条件におけるケルビン温度で表した沸点の
1.002〜1.2倍、好ましくは1.01〜1.18
倍、さらに好ましくは、1.02〜1.16倍の範囲で
あることを特徴とする。
【0025】前記過熱水蒸気と前記前駆体の接触時間
は、通常、2〜1000時間、好ましくは2〜300時
間の範囲である。結晶化時間が短すぎると結晶化度が低
下し、長すぎると他の鉱物との混晶になる場合がある。
【0026】本発明の結晶化装置は、 1)過熱水蒸気発生ユニット、 2)結晶化ユニット、および 3)圧力制御ユニット を備えていることを特徴とする。過熱水蒸気発生ユニッ
トは、前記条件の過熱水蒸気を発生する装置であれば特
に制限されるものではなく、他の蒸気発生設備から分岐
したスチームラインや専用のボイラー設備で発生させた
高圧の飽和水蒸気を、外部加熱装置により前記温度範囲
に過熱する方法や、高圧水蒸気を前記条件範囲内になる
ように降圧する方法、あるいは飽和水蒸気を窒素ガスな
どの不活性ガスで希釈する方法などによって過熱水蒸気
を発生させることができる。こうして発生させた過熱水
蒸気は、結晶化ユニットに供給される。過熱水蒸気の流
量は、分岐したスチームラインを使用する場合には、例
えばラインに設置した流量調節バルブを使用することに
より、また専用のボイラー設備を使用する場合にはボイ
ラーへの水の供給速度を制御する等の方法により調整す
ることができるが、特に制限されるものではない。結晶
化ユニットは前記結晶性マイクロポーラスマテリアル前
駆体を過熱水蒸気雰囲気に保つことができれば特に限定
されるものではない。例えば、前駆体を充填容器内に充
填し、プラグフローで過熱水蒸気を連続的に供給しても
良いし、ラジアルフローで過熱水蒸気と連続的に接触さ
せる装置を使用することもできる。結晶化ユニット内の
圧力を、前記条件に保つために、圧力制御ユニットを設
置する。例えば、結晶化ユニット出口部分に、減圧弁な
どの圧力調整弁を設置することにより、所望の圧力に調
製する方法が例示できるが、特に制限されるものではな
い。
【0027】次に、結晶化プロセスの概要例を説明する
が、本発明の趣旨を越えない限り、本発明はこれにより
限定されるものではない。
【0028】結晶化プロセスの一例を図2に示す。例え
ばボイラー1で発生させた飽和水蒸気を熱交換器2で飽
和水蒸気温度(ケルビン温度)の1.02〜1.16倍
程度まで過熱する。このときの過熱水蒸気の水蒸気分圧
はボイラー1で発生させた飽和水蒸気の圧力と同一であ
る。圧力コントロールバルブ4で系内の圧力を制御しな
がら流量調節バルブ5を使用して過熱水蒸気の流量を制
御し、前駆体充填容器3に連続的に供給する。この場合
には、系内の圧力はボイラー1で発生する飽和水蒸気と
ほぼ同一に制御される。過熱水蒸気の流量は、特に制限
されるものではないが、通常、GHSV(hr-1)が1
〜10000、好ましくは、2〜5000、さらには、
5〜3000が好ましい。所定の時間結晶化させた後、
常圧まで降圧し、乾燥される。
【0029】
【実施例】以下の実施例により、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例により限定されるもの
ではない。 (実施例1)硝酸アルミニウム9水和物118gを蒸留
水に溶解させて全量を420mlとした。120℃で1
昼夜乾燥させたシリカビーズ(富士シリシア化学社製
「キャリアクトQ−50」、10〜20メッシュ)30
0gに、前記水溶液を室温で1時間含浸させ、引き続い
て100℃湯浴上で乾燥させた。これを空気気流下55
0℃で3時間焼成して、シリカビーズ上に酸化アルミニ
ウムとして担持した。冷却後、97%純度の水酸化ナト
リウムペレット26gと40質量%濃度の水酸化テトラ
プロピルアンモニウム(TPAOHと略記する)水溶液
128gを混合し、蒸留水に溶解させて全量を420m
lとした。この溶液をAとする。先にアルミナを担持し
たシリカを溶液Aに1時間含浸させ、引き続いて100
℃湯浴上で乾燥させ、さらに80℃オーブンで窒素気流
下5時間乾燥させた。得られた前駆体の組成比は、Si
1Al0.0625Na0.125TPA0.05であった。
【0030】引き続いて、図3に示した装置を使用し
て、前駆体をゼオライトに結晶化した。前駆体100m
l(約70g)を、内径20mmφ長さ400mmのス
テンレス製結晶化反応管5に充填した。イオン交換水を
タンク1からポンプ2を介して0.5ml/minの流
量(GHSV=370hr-1)で、180℃に過熱した
オイルバス10中の蒸発器3へイオン交換水を供給して
過熱水蒸気を連続的に発生させた。このとき、圧力コン
トロールバルブ9で装置内の圧力を0.7MPaに設定
した。結晶化反応管5へは、気液セパレータ4を介して
乾燥状態の過熱水蒸気を上向き流で供給した。前駆体と
接触した後の過熱水蒸気は、オイルバス出口部で凝縮す
る液滴の逆流を防止するために設置した気液セパレータ
6をへて、冷却器7で室温付近の水に凝縮させ、圧力コ
ントロールバルブ9をへて、系外へ排出した。この条件
で8時間結晶化させた後、常圧まで降圧し、窒素気流中
で室温まで冷却した。これを生成物Aとする。
【0031】生成物Aの形状は、原料として用いたシリ
カビーズの外観を保持して10〜20メッシュサイズの
ビーズであった。生成物Aを粉砕した後に粉末X線回折
測定した結果、図4に示すとおり、MFI型アルミノシ
リケートであった。 (実施例2)前駆体の組成を、Si1Na0.0333TPA
0.0333に変更した以外は、実施例1と同様にして、結晶
化を行なった。生成物の形状は、原料として用いたシリ
カビーズの外観を保持して10〜20メッシュサイズの
ビーズであった。また、粉末X線回折測定の結果、図1
と本質的に同じであり、MFI型シリカライトであっ
た。 (実施例3)35重量%濃度の水酸化テトラエチルアン
モニウム水溶液(TEAと略記する)420gにアルミ
ン酸ナトリウム15.9gを溶解させた。120℃で1
昼夜乾燥させたシリカビーズ(富士シリシア化学製「キ
ャリアクトQ−30」,10〜20メッシュ)300g
を、前記の水溶液全量に1時間含浸させた後、80℃で
乾燥させて、シリカビーズ上にTEAとアルミン酸ナト
リウムとを担持した。こうして得られた前駆体の組成比
は、Si1TEA0.20Na0.043Al0.033であった。
【0032】オイルバス温度を170℃、圧力を0.6
4MPa、結晶化時間20時間に変更した以外は、実施
例1と同様にして実験を行なった。これを生成物Bとす
る。
【0033】生成物Bの形状は、原料として用いたシリ
カビーズの外観を保持して10〜20メッシュサイズの
ビーズであった。生成物の粉末X線回折測定の結果、図
5に示すとおり、BEA型アルミノシリケートであっ
た。 (実施例4)アルミン酸ナトリウム8.2gを蒸留水に
溶解させて420mlとした。120℃で1昼夜乾燥さ
せたシリカビーズ(富士シリシア化学製「キャリアクト
Q−10」,10〜20メッシュ)300gを、前記の
水溶液全量に1時間含浸させた後、80℃湯浴上で乾燥
させてシリカビーズ上にアルミン酸ナトリウムを担持し
た。さらに120℃で1昼夜乾燥させた後、40重量%
濃度の水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAと略記
する)水溶液324gと97%水酸化ナトリウムペレッ
ト12.9gを蒸留水でうすめて420mlとした水溶
液中に、前記のアルミン酸ナトリウム担持シリカビーズ
全量を1時間含浸させた。引き続いて80℃湯浴上で乾
燥させて、シリカビーズ上にアルミン酸ナトリウムとT
BAおよび水酸化ナトリウムを担持した。こうして得ら
れた前駆体の組成比は、Si1TBA0.100Na0.0825
0.020であった。
【0034】オイルバス温度を170℃、圧力を0.6
4MPa、結晶化時間30時間に変更した以外は、実施
例1と同様にして実験を行なった。生成物の形状は、原
料として用いたシリカビーズの外観を保持して10〜2
0メッシュサイズのビーズであった。また、生成物の粉
末X線回折測定の結果、MEL型アルミノシリケートで
あった。
【0035】
【発明の効果】本発明の方法により、結晶化時に前駆体
から水溶性成分が溶出することがないので、均質なゼオ
ライトなどの結晶性マイクロポーラスマテリアルが簡便
に製造できる。また、本発明の結晶化装置により、バイ
ンダーレスゼオライト成型体を効率的に製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る結晶性マイクロポーラスマテリ
アル結晶化装置の構成図
【図2】 本発明に係る結晶性マイクロポーラスマテリ
アル結晶化装置を例示する概略説明図 1.ボイラー 2.熱交換器 3.前駆体充填容器 4.圧力コントロールバルブ 5.流量調節バルブ
【図3】 実施例1〜4.に使用した結晶化装置図 1.イオン交換水タンク 2.フィードポンプ 3.蒸発器 4,6.気液セパレータ 5.結晶化反応管 7.冷却器 8.圧力ゲージ 9.圧力コントロールバルブ 10.ヒーター付オイルバス
【図4】 生成物AのCuKαX線回折図(2θ=5〜
40°)を示す。
【図5】 生成物BのCuKαX線回折図(2θ=5〜
40°)を示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不揮発性の構造指向剤成分を含む固体状
    の結晶性マイクロポーラスマテリアル前駆体と、過熱水
    蒸気を接触させることを特徴とする結晶性マイクロポー
    ラスマテリアルの製造方法。
  2. 【請求項2】 該結晶性マイクロポーラスマテリアル前
    駆体が、シリカ成分と不揮発性の構造指向剤成分とを含
    む固体状のゼオライト前駆体であることを特徴とする請
    求項1に記載のゼオライトの製造方法。
  3. 【請求項3】 該ゼオライト前駆体中にアルカリ金属成
    分と、ホウ素、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、ガリ
    ウム、インジウムからなる群から選ばれる一以上の金属
    成分が含まれることを特徴とする請求項2に記載のゼオ
    ライトの製造方法。
  4. 【請求項4】 該構造指向剤が、テトラアルキルアンモ
    ニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    に記載の結晶性マイクロポーラスマテリアルの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 結晶性マイクロポーラスマテリアル前駆
    体に過熱水蒸気を接触させて結晶性マイクロポーラスマ
    テリアルを製造する際に用いる装置であって、過熱水蒸
    気発生ユニットと、結晶化ユニットと、かつ、圧力制御
    ユニットとを備えることを特徴とする結晶性マイクロポ
    ーラスマテリアルの製造装置。
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