JP2002067323A - インクジェット記録ヘッドの駆動方法及びインクジェット記録ヘッド - Google Patents

インクジェット記録ヘッドの駆動方法及びインクジェット記録ヘッド

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JP2002067323A
JP2002067323A JP2000264353A JP2000264353A JP2002067323A JP 2002067323 A JP2002067323 A JP 2002067323A JP 2000264353 A JP2000264353 A JP 2000264353A JP 2000264353 A JP2000264353 A JP 2000264353A JP 2002067323 A JP2002067323 A JP 2002067323A
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foaming
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ink
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JP2000264353A
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Yoshimasa Okamura
好真 岡村
Katsuhiko Shinjo
克彦 新庄
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Canon Inc
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14016Structure of bubble jet print heads
    • B41J2002/14169Bubble vented to the ambience

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 発熱抵抗体などの溶解、酸化等をなくし、長
寿命化させる。発泡エネルギーを大きくし、十分な吐出
量及び吐出速度を確保する。発泡開始時刻のばらつきを
小さくして、安定した発泡を行なう。 【解決手段】 第1駆動パルス信号およびこの第1駆動
パルス信号に続く第2駆動パルス信号を印加して発熱抵
抗体を駆動するとともに、第1駆動パルス信号による平
均発熱量よりも第2駆動パルス信号による気泡発生時点
までの平均発熱量が大きくなるように発熱抵抗体を駆動
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクに熱エネル
ギーを作用させてこれにより発生する気泡の生成に基づ
いてインクを吐出するインクジェット記録ヘッドの駆動
方法及びそれに用いるインクジェット記録ヘッドに関す
る。
【0002】
【従来の技術】インクを加熱して気泡を生成させ、この
気泡の生成に基づいてインクを吐出し、吐出させたイン
クを記録媒体上に付着させて画像形成を行うインクジェ
ット記録方式は、高速記録が可能であり、また比較的記
録品位も高く、低騒音であるという利点を有している。
このインクジェット記録方式は、カラー画像記録が比較
的容易であって、普通紙等にも記録でき、装置の小型化
も容易であり、さらに、記録ヘッドにおける吐出口を高
密度に配設することができるので、高解像度、高品位の
画像を高速で記録することができるといった多くの優れ
た利点を有している。この方法を用いた記録装置は、複
写機、プリンタ、ファクシミリ等における情報出力手段
として用いることができる。
【0003】このようなインクジェット記録方式の記録
ヘッドは、一般的に、インクを吐出するためのインク吐
出口(ノズル)と、これに連通しインクが満たされたイ
ンク路と、このインク路中に設けられて熱エネルギーを
発生する為の電気熱変換素子(発熱抵抗体)を具備して
いる。発熱抵抗体は、薄膜抵抗体よりなるのが一般的で
あり、これに電極配線を介してパルス的に通電(駆動パ
ルスの印加)がなされることによって熱エネルギーを発
生する。
【0004】熱エネルギーを発熱体近傍のインクに注入
して過熱液層を形成する際に、発熱抵抗体表面(インク
加熱面)の状態がインクの焦げや傷等により部分的に変
化したり、インク中に不純物や気体が混入している場
合、発泡核が加熱早期に発生し、過熱液層への熱の流入
を阻害し、発熱抵抗体の表面内でのインクの発泡開始時
刻にばらつきが生じる。このような発泡開始時刻のばら
つきは、気泡の持つ発泡エネルギーのばらつきとなり、
吐出量や吐出速度の変化を生じさせ、画像品位が劣化す
る原因となる。
【0005】吐出量、吐出速度等のインク滴の吐出特性
に関して、再現性の良いインクジェット記録ヘッドを提
供するためには、発泡開始時刻のばらつきを小さくする
ことが必要である。この為には、発泡時刻t=t0での
温度上昇率T(t0)を大きくすることが重要である。
図17を用いてその理由を説明する。
【0006】インクの発泡確率はインク中の温度分布に
依存するが、インク中で最も高温の部分の温度Tが、過
熱限界付近の温度帯T1<T<T2を低温側から高温側
へ推移しているときに、インクの発泡確率は0から1に
変化する。図17は、最も高温となる発熱抵抗体表面に
接するインクの温度Tの変化を示している。発泡時刻t
=t0の温度上昇率をT'(t0)とすると(T'は温度
Tの時間微分)、発泡時刻のばらつきΔtは、 によって与えられる。
【0007】従って、発泡開始時刻のばらつきΔtを小
さくするには、発泡時刻t=t0での温度上昇率T'
(t0)を大きくすればよいことになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】発泡開始時刻のばらつ
きΔtを小さくする為には、発熱抵抗体表面の近傍のイ
ンクの温度を、インクと加熱手段の表面との界面におい
て発泡核が生じる前に均一核生成(homogeneous nuc1ea
tion)温度まで急激に加熱する急速加熱が有効であるこ
とが知られている(A. Asai et al., "Bubble Generati
on Mechanism inthe Bubble Jet Recording Process",
Journal of Imaging Technology, Vol. 14,pp120-124,1
988)。
【0009】このような急速加熱を行う場合、発熱抵抗
体を駆動する駆動パルスの印加時間を短くすればする程
(これに対応して駆動電圧は大きくする)、十分にイン
クに熱量が与えることができず、発泡核が気泡に成長で
きる過熱状態にあるインク(過熱液層)の厚みが薄くな
る。急速加熱における均一核生成を始めた過熱液層が必
要とする大きな気化潜熱は主として発熱抵抗体側から供
給されるが、過熱液層の外側は低温のインクであり、薄
い過熱液層の場合は、薄い過熱液層から温度差のある低
温インク側に流出する熱量が多くなってしまい、本来必
要とする気化潜熱が過熱液層に与えられない。その結
果、加熱時間を短くしていくと、発泡エネルギーが減少
し、十分な吐出速度を得ることができなくなることが報
告されている(A. Asai "Bubble Dynamics in Boiling
Under High Heat Flux Pulse Heating", J. Heat Tran
sfer , Vol. 113, pp973-979,1991、三谷等「超高速加
熱時における核沸騰とインク吐出特性」、Japan Hardco
py,1996,A-40)。
【0010】これにより、発一性(ノズルからインク滴
を吐出させた後、一定時間インク吐出を行うことがなか
った場合に、そのノズルから次の1滴目のインクを吐出
させるとき、インクの増粘により、安定した吐出を行え
ず、印字が乱れてしまうといった不都合を起こす事があ
り、この現象を発一性と呼ぶ)が悪化し、最悪の場合に
は不吐となる可能性が出てくる。また、従来問題となら
なかった記録ヘッド毎の薄膜抵抗体の抵抗ばらつきや薄
膜抵抗体上に形成した保護層の膜厚ばらつきが、記録ヘ
ッドの過熱液層の厚みばらつきとして現れ、記録ヘッド
間の吐出量、吐出速度等にばらつきが生じる。同様に、
発泡を繰り返す間に薄膜抵抗体の抵抗変化が起こる場合
には、同一の記録ヘッドで吐出特性が変化することにな
る。
【0011】以上のように、薄い過熱液層の場合は、発
泡エネルギーが小さいために、記録ヘッドの吐出特性が
不安定且つ不均一となり、画像品位が劣化する。
【0012】上述した熱作用部では、消費電力を低下さ
せ、入力信号に対する応答性を高めるために、薄膜抵抗
体から発生する熱をできるだけ効率よく、かつ速やかに
インクに作用させることが望まれている。この為、薄膜
抵抗体が直接インクに接触している、すなわち保護層の
ない構成が、特開昭55−126462号公報にて開示
されている。しかしながら、この従来技術は、熱効率で
は保護層を設ける構成に勝っているが、薄膜抵抗体がキ
ャビテーションエロージョンや温度の上昇、下降に曝さ
れるだけでなく、接触するインク中のイオンにより、電
流がインク中に流れ、その結果生じる電気化学反応にて
ヒータが腐食、溶解し、耐久性、寿命が低下する問題を
有している。
【0013】また、特開昭64−38245号公報に
は、気泡の発生に必要なエネルギーを供給する駆動パス
ルを複数のパルスに分割し、コモン電極に一定の電位を
与えつつ、セレクト電極にコモン電極に対して正または
負となる電位を与えて駆動する方法が記載されている。
【0014】しかしながらこの方法では、バブル発生の
ための駆動パルスを印加しない間にもコモン電極に常に
電位を印加しているので、上記電気化学反応による腐
食、溶解の問題は解消されない。
【0015】本発明は、上記従来技術の有する問題点に
鑑みなされたものであり、その目的は、 ・インクと発熱抵抗体及び発熱抵抗体に接続された電極
との電気化学反応を防ぎ、発熱抵抗体及び発熱抵抗体と
接続した電極の溶解、酸化等をなくし、長寿命化させる
こと、 ・発泡エネルギーを大きくし、十分な吐出量及び吐出速
度を確保すること、 ・発泡開始時刻のばらつきを小さくして、安定した発泡
を行なうこと、 ・消費電力を低下し、入力信号に対する応答性が高く、
安定したインク吐出を行うことが可能なインクジェット
記録ヘッドの駆動方法及びそれに用いるインクジェット
記録ヘッドを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明の一形態では、熱エネルギーを発生する発熱抵抗体
と、該発熱抵抗体の両端に電気信号を印加する電極とを
有し、前記発熱抵抗体の熱エネルギーを利用してインク
に気泡を発生させてインクを吐出するインクジェット記
録ヘッドの駆動方法において、第1駆動パルス信号およ
びこの第1駆動パルス信号に続く第2駆動パルス信号を
前記電極に印加して前記発熱抵抗体を駆動するととも
に、前記第1駆動パルス信号による平均発熱量よりも第
2駆動パルス信号による気泡発生時点までの平均発熱量
が大きくなるように前記発熱抵抗体を駆動することを特
徴としている。
【0017】この発明では、第1駆動パルス信号による
平均発熱量よりも第2駆動パルス信号による気泡発生時
点までの平均発熱量が大きくしているので、第1駆動パ
ルス信号での発泡が回避され、第2駆動パルス信号によ
って確実に急速加熱を行うことが可能となり、さらに発
泡エネルギーを大きくし、十分な吐出量及び吐出速度を
確保することができる。また、第1駆動パルス信号と第
2駆動パルス信号との極性を異ならせているので、発熱
抵抗体、発熱抵抗体に接続される電極を電気化学反応に
よる溶解、酸化などから保護することが可能になる。
【0018】また、この発明の他の形態では、第1駆動
パルス信号を印加せずに第2駆動パルス信号のみを印加
したときにおいて、第2駆動パルス信号の印加時間を変
化させたときの印加開始から発泡までの発泡所要時間に
関して、発泡エネルギーが大きな減少をするか否かの境
界を示す所定の発泡所要時間をtsとし、前記第1駆動
パルス信号を印加した後に前記第2駆動パルス信号を印
加したときにおける前記第2駆動パルス信号を印加開始
してから気泡発生時点までの時間をδtとしたとき、 δt<ts を満足するように前記発熱抵抗体を駆動するようにして
おり、これによりこの発明では、単一の駆動パルス信号
による急速加熱の場合に比べ、発泡開始時刻のばらつき
を小さくし、発泡安定性を図ることができる。
【0019】また、この発明の他の形態では、第1駆動
パルス信号を印加せずに第2駆動パルス信号のみを印加
したときにおいて、第2駆動パルス信号の印加時間を変
化させたときの印加開始から発泡までの発泡所要時間に
関して、発泡エネルギーが大きな減少をするか否かの境
界を示す所定の発泡所要時間をtsとし、この発泡所要
時間tsの終了時点における前記発熱抵抗体の温度上昇
率をT’(ts)とし、さらに、前記第1駆動パルス信
号を印加した後に前記第2駆動パルス信号を印加したと
きにおける前記第2駆動パルス信号による発泡時点にお
ける前記発熱抵抗体の温度上昇率をT’(δt)とした
とき、 T’(δt)>T’(ts) を満足するように前記発熱抵抗体を駆動するようにして
おり、これによりこの発明では、単一の駆動パルス信号
による急速加熱の場合に比べ、発泡開始時刻のばらつき
を小さくし、発泡安定性を図ることができる。
【0020】また、この発明の他の形態では、第1駆動
パルス信号による発泡エネルギーへの寄与分が第2駆動
パルス信号による発泡エネルギーへの寄与分より大きく
なるように前記発熱抵抗体を駆動しており、これにより
この発明では、単一の駆動パルス信号による急速加熱に
て問題となった発一性の低下、過熱液層の厚みばらつき
に伴う吐出速度、吐出量の不安定性を低減できる。
【0021】また、この発明の他の形態では、第1駆動
パルス信号を印加せずに第2駆動パルス信号のみを印加
したときにおいて、第2駆動パルス信号の印加時間を変
化させたときの印加開始から発泡までの発泡所要時間に
関して、発泡エネルギーが大きな減少をするか否かの境
界を示す所定の発泡所要時間をtsとし、この発泡所要
時間tsの終了時点における前記発熱抵抗体の発熱量を
Q(ts)とした場合には、前記第1駆動パルス信号を
印加した後に前記第2駆動パルス信号を印加したときに
おける前記第2駆動パルス信号による気泡発生時点の前
記発熱抵抗体の発熱量を、前記Q(ts)以上としたこ
とを特徴としており、これによりこの発明では、単一の
駆動パルス信号による急速加熱の場合に比べ、発泡開始
時刻のばらつきを小さくし、発泡安定性を図ることがで
きる。なお、ある時刻における発熱量とは、その時刻に
おける単位時間あたりのエネルギー発生量を意味するこ
とにする。
【0022】また、この発明の他の形態では、前記第1
駆動パルス信号が複数のパルスからなり、この第1駆動
パルス信号と第2駆動パルス信号を含めた複数のパルス
のうち、少なくとも1つのパルスの極性が他の極性と異
なることを特徴とする。
【0023】さらにこの発明の他の形態では、上述した
各駆動方法により駆動されるインクジェット記録ヘッド
を提供する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を添付図面
にしたがって詳細に説明する。
【0025】まず、本発明の概要について説明する。
【0026】本発明においては、例えば、図7に示すよ
うに、インクに熱エネルギーを蓄えるための第1駆動パ
ルス信号(第1駆動信号と略す)と、この第1駆動信号
に続いて発生されて発泡を行うための第2駆動パルス信
号(第2駆動信号)との2種類の駆動信号を電気熱変換
素子(発熱抵抗体)に印加することにより、インクを吐
出することを前提としている。
【0027】図1は従来の単一駆動信号を印加する場合
における駆動信号のパルス幅tgと発泡エネルギーEと
の関係を示すものである。図1の場合は、駆動信号のパ
ルス幅tgを、駆動信号を印加開始してから発泡開始す
る時点までの経過時間と一致させている。すなわちこの
場合は、駆動パルス信号の印加終了時点で発泡開始され
るものとしている。
【0028】従来の単一駆動信号により気泡を形成する
場合、図1のグラフに示すように、駆動信号のパルス幅
を短くしていくと(駆動電圧はこれに対応して上げ
る)、パルス幅(すなわち単一駆動信号の印加開始から
発泡開始するまでの発泡所要時間)が所定の値tsにな
ったとき(tg=ts)を境に発泡エネルギー(泡の持
つエネルギー)が急激に減少し、これに伴い吐出速度も
同様に減少する。これは、極端な急速加熱によっては、
気泡が成長するのに必要な気化潜熱が過熱液層に十分に
与えられないことによる。
【0029】本発明の駆動方法は、急速加熱の領域で十
分な発泡エネルギーを確保することを目的としており、
第1駆動信号による加熱によって、均一核生成を始める
のに必要とする気化潜熱を蓄えた過熱液層を形成して十
分な過熱液層の厚みを確保し、この後に第2駆動信号に
よる急速加熱を行い、発泡の安定化をはかるものであ
る。さらに、第1駆動信号の極性と第2駆動信号との極
性を異ならせることにより、発熱抵抗体および該発熱抵
抗体に電気信号を印加する電極を電気化学反応による溶
解、酸化等から保護する。
【0030】なお、発一性を改善する為には、本発明の
第1駆動信号の印加を行う前に、従来の予備加熱を行う
ことが可能である。
【0031】第2駆動信号によって発泡が安定化された
急速加熱を行う為に、第2駆動信号による発熱抵抗体の
平均発熱量が、第1駆動信号による平均発熱量より大き
くする。これにより、第1駆動信号での発泡を回避し、
確実に第2駆動信号にて急速加熱を行うことが可能とな
る。この概念は、以下の式(2)で表わされる。
【0032】
【数1】 (2)
【0033】ただし、上式において、第1駆動信号の印
加時間をt1、第2駆動信号の印加時間を(t2−t
1)、第2駆動信号の印加開始から発泡開始するまでの
発泡所要時間(発泡時間ともいう)をδt、これら第1
および第2駆動信号による発熱抵抗体の発熱量をQ
(t)とし、t2 t1 ≧ δt である。
【0034】また、本発明の駆動方法によれば、第1駆
動信号によって予めインク及び発熱抵抗体表面が加熱さ
れているので、第2駆動信号の印加開始から発泡開始す
るまでの発泡所要時間δtは、単一駆動信号により急速
加熱を開始する場合(図1)における発泡エネルギーが
大きな減少をするか否かの境界を示す所定の発泡所要時
間tsよりも小さく(δt<ts)なる。
【0035】第2駆動信号による発泡時刻での温度上昇
率T'(δt)は、先の式(1)を用いて説明したよう
に、急速加熱時の発泡時刻ばらつきを抑えるためには、
従来の単一駆動信号による発泡時刻での温度上昇率T'
(ts)と同等もしくはそれ以上とする必要がある。な
お、「T'」は温度Tの時間微分とする。これによって、
第2駆動信号による発泡時刻(t=δt)での発熱抵抗
体の発熱量は、単一駆動信号でのt=tsでの発熱抵抗
体の発熱量以上にすることとなる。
【0036】従来の駆動電圧のパルス幅は2〜10μs
ecであった。急速加熱では、駆動信号に対する応答性
が高く薄膜抵抗体から発生する熱を効率良く且つ速やか
にインクに作用する記録ヘッドを用いるのが好ましい。
このような記録ヘッドの一例としては、前述した特開昭
55−126462号に開示された、薄膜抵抗体の発熱
部分がインクに直接接触する、すなわち保護層の無い構
成の記録ヘッドがある。薄膜抵抗体の材料は、キャビテ
ーションエロージョンや、接触するインクによる電気化
学反応による腐蝕、繰り返し発熱、酸化等に耐性のある
材料であることが必要である。このような材料として
は、主要構成元素の1つとしてTa,Ir,Ru,Pt
等の元素を含む合金が好ましく、さらに好ましいのは、
これら元素のうち少なくとも一種と、A1,Ti,V,
Cr,Ga,Zr,Nb,Hf,Taのうちの少なくと
も一種を含む合金である。また、薄膜抵抗体の抵抗値を
上昇させるためには、上記の合金に、C,N,O,Si
等を添加しても良い。
【0037】発泡安定化をはかる為には、第2駆動信号
の駆動パルスの印加時間をなるべく短くすることが好ま
しい。このことは、第2駆動信号による発泡エネルギー
への付与分が第1駆動信号による付与分に比べ、相対的
に小さくなる方向にあることに相当する。そして、第1
駆動信号による発泡エネルギー付与分が第2駆動信号に
よるものよりも大きくなったほうが発泡エネルギーの制
御の点で好ましい。すなわちこのためには、第1駆動信
号と第2駆動信号とにより形成された気泡の発泡エネル
ギーに対する少なくとも第1駆動信号を印加せずに第2
駆動信号のみによって形成された気泡の発泡エネルギー
の割合が50%以下、別言すれば第1駆動信号による発
泡エネルギー寄与分が50%以上となる駆動条件を満た
すことが重要である。
【0038】発泡エネルギーへの第2駆動信号による急
速加熱による付与分を低減することにより、急速加熱に
て問題となった発一性の低下、過熱液層の厚みばらつき
に伴う吐出速度、吐出量の不安定性を低減できる。第1
駆動信号による発泡エネルギーの寄与分はなるべく大き
いほうが好ましく、50%以上であれば、急速加熱によ
る発泡エネルギーの減少を、半分以下に抑えることがで
きる。インク液滴の運動エネルギーは発泡エネルギーに
比例し、インク液滴の運動エネルギーは吐出速度の2乗
に比例することから、発泡エネルギーの減少を半分以下
に抑えられれば、吐出速度の減少分は、最大でも30%
とすることが可能となる。
【0039】さらに好ましくは、第1駆動信号による発
泡エネルギーの寄与分が70%以上であり、この場合
は、発泡エネルギー低減に伴う吐出速度の減少を20%
以下に抑えられる。
【0040】つぎに、図2に示す記録ヘッドを例にと
り、本発明の駆動方法を図3〜図6を用いて詳細に説明
する。
【0041】図2に記録ヘッドのインク路付近の断面図
を示す。ベース基板1上に薄膜抵抗体層3(ヒータ、発
熱抵抗体)が備えられている。基板1に隔壁(不図示)
や天板7が設けられることによって、共通液室13、イ
ンク路11、インク吐出口8が形成される。薄膜抵抗体
層3に選択電極5、共通電極4より駆動信号を印加する
ことにより、薄膜抵抗体層3上に気泡を形成してインク
16をインク吐出口8から吐出する。ここでは、薄膜抵
抗体層3の材料としてTa、共通電極4及び選択電極5
の材料としてAuを用いた。Taは温度による抵抗変化
が大きいため、これを利用してヒータの抵抗を測定する
ことによりヒータ温度を直接計測することができる。発
熱抵抗体の寸法は100μm×200μmとした。ベー
ス基板1は、シリコン基板に熱酸化膜を2.7μm成膜
したものを用いており、これにインク路11及び吐出口
8を形成する為のガラス製の溝付き天板7を接合し、記
録ヘッドが構成される。
【0042】尚、薄膜抵抗体層3の抵抗変化からヒータ
温度を直接計測するのでなければ、薄膜抵抗体層3や電
極4,5に、SiO2等からなる保護層や、耐キャビテ
ーション層を、設けるようにしてもよく、さらには、薄
膜抵抗体からの熱がインクに効率良く伝導するように厚
み等を設計してあれば、その設計を採用してもよい。
【0043】使用したインクの配合成分は、以下の通り
である。
【0044】 黒色染料 3.0重量% ジエチレングリコール 15.0重量% N−メチル−2−ピロリドン 5.0重量% イオン交換水 77.0重量% この水系インクの発泡温度Tgは約300℃であった。
【0045】図3に、第1及び第2駆動信号のパルス電
圧値およびこれら駆動信号によるヒータの発熱量と、時
間との関係を示す。
【0046】t=0からt=t1の時間に、ヒータの発
熱量Q(t)がQ1となり(実線参照)かつパルス電圧
V(t)=−V1(破線参照)である第1駆動信号をヒ
ータに与える。
【0047】また、t=t1からt=t2の時間に、ヒ
ータの発熱量Q(t)がQ2となり(実線参照)かつパ
ルス電圧V(t)=V2(破線参照)である第2駆動信
号をヒータに与える。
【0048】この第1及び第2駆動信号による発熱量Q
(t)は、Q1<Q2であり、先の式(2)を満足して
いる。
【0049】また、この場合、|V1|<|V2|であ
り、これら第1および第2駆動信号の極性は逆になって
いる。
【0050】図4に、従来の単一矩形パルス駆動による
発熱量Q(t)=Q3と時間との関係(実線参照)を、
上記の比較例として示す。この場合のパルス電圧V
(t)=V3(破線参照)である。
【0051】ここで、Ray1eighの理論(Phi1os. Mag. 3
4, pp94-98.1917)によれば、気泡の最大半径は気泡が
崩壊するまでの時間τに比例し、発泡エネルギーが気泡
の最大体積に略比例するとしている。したがって、発泡
エネルギーは気泡寿命τの3乗に比例していると見なせ
る。したがって、ヒータに駆動信号を与え、形成された
気泡の寿命τ、及び寿命τの時間ばらつき△τを測定す
ることにより、発泡エネルギーの大きさ及び安定性を相
対的に評価することができる。
【0052】図5は、図3に示した本発明に係る第1お
よび第2駆動信号を与えた時の発熱抵抗体表面温度の時
間変化(実線)と、図4に示した単一パルス駆動信号を
与えた時の発熱抵抗体表面温度Tの時間変化(破線)と
を示したものである。図5において、Tambはインク
の初期温度、Tpは第1駆動信号によるヒータの最終表
面温度、Tgは発泡温度である。
【0053】図6は、図3に示した本発明に係る第1お
よび第2駆動信号を与えた時の気泡の寿命τの発泡時間
への依存性(実線)と、図4に示した単一パルス駆動信
号を与えた時の気泡の寿命τの発泡時刻への依存性(破
線)とを示したものである。図6においては、発泡時間
として、図3に示した本発明に係る駆動方法の場合は図
5の発泡時間δtを、図4に示した単一パルス駆動方法
の場合は図5の発泡時間tgを用いた。
【0054】図3に示す本発明の駆動方法では、図5に
示すように、発熱抵抗体の表面温度は、t=t1までは
緩やかに上昇し、その後第2駆動信号を印加したt=t
1時点から急激に上昇している。
【0055】つぎに、発泡エネルギーに関し、τ、Δτ
を用いて説明する。
【0056】まず、図4に示した単一パルス駆動信号を
与えた時の、発泡エネルギーが大きな減少をするか否か
の境界を示す所定の発泡所要時間tsを求める。
【0057】図4のパルス電圧V3は、パルス幅t3で
気泡が発生する最低電圧の1.1倍(k値)となるよう
に設定した。インクの初期温度Tambは23℃であ
る。図4の単一矩形パルス駆動では、図6の破線あるい
は白丸で示すように、気泡寿命τは、tg>1.8μs
ecでは寿命が長く十分な発泡エネルギーを確保できて
いるが、tg<1.8μsecでは低下している。した
がって、この場合、使用したインクのts=1.8μs
ecである。
【0058】この時(tg=ts)のヒータの発熱量Q
3は550MW/m2であり(図4)、発泡時刻tg=
tsの温度上昇率は6×107℃/secであった。ま
た、単一パルス駆動信号の印加終了時点(t=t3)で
の発熱抵抗体の表面温度は360〜370℃であった。
tg=1μsecのときの気泡寿命τは、図6に示すよ
うに、15.6μsecであり、この時の駆動周波数1
00Hzで10秒間に1000回の寿命τを測定し、寿
命時間ばらつき△τと平均寿命|τ|との比(△τ/|
τ|)を調べた。この結果、tg=1μsecの時の△
τ/|τ|はtg=1.8μsecの時の△τ/|τ|
と比べ、2分の1以下となっていた。
【0059】これにより、単一矩形パルス駆動では、パ
ルス幅を短くすると、発泡開始時刻のばらつきは減少す
るが、発泡エネルギーも減少していることがわかる。
【0060】つぎに、第1および第2駆動信号を印加す
る図3の駆動方法において、第1駆動信号はt1=10
μsecとし、t=t1でのヒータの表面温度Tpが約
150℃となるように駆動電圧V1及び発熱量Q1を設
定した。インクの初期温度Tambは23℃である。第
1駆動信号の電圧V2は、パルス幅t2で気泡が発生す
る最低の電圧の1.1倍(k値)となるように設定し
た。発泡時刻での温度上昇率が約6×107℃/sec
となる発泡時間δt1(=δt)は1.2〜1.3μs
ecである。δt1=1μsecの時の気泡の寿命を測
定したところ、20μsecであり(図6の白三角)、
単一パルス駆動方式の場合の15.6μsecよりも永
くなっている。また、この時の寿命ばらつきを測定した
ところ、単一パルス駆動方式の場合のtg=tsの場合
よりも小さくなっていた。
【0061】本発明の駆動方法を用いることで、発泡エ
ネルギーを単一矩形パルス駆動方式の場合のtg=ts
のときと略等しくでき、且つ寿命時間ばらつきΔτを小
さくすることができた。
【0062】また、第1駆動信号を印加せずに第2駆動
信号のみで駆動した場合のtg=1μsecの時の発泡
エネルギー(15.6)3と、δt1=1μsecの発
泡エネルギー203の比は、それぞれの気泡の寿命の3
乗にて計算でき、第2駆動信号の発泡エネルギーへの付
与は47%となり、発泡エネルギーの略半分以上を第1
駆動信号により制御できたことがわかった。
【0063】次に、第1および第2駆動信号を印加する
図3の駆動方法において、t1=5μsecとし、t=
t1でのヒータの表面温度Tpを約180℃になるよう
にV1及びQ1を設定した。駆動電圧V2は、パルス幅
t2で気泡が発生する最低の電圧の1.25倍(k値)
となるように設定した。インクの初期温度Tambは2
3℃である。
【0064】この駆動条件で、第2駆動信号の駆動電圧
V2を変化させた時の発泡時間δt2(=δt)と気泡
寿命τとの関係を図6の白四角にて示す。発泡時刻での
温度上昇率が約6×107℃/secとなる発泡時間δ
t2は約1.2μsecであり、この時の発熱量Q2は
700MW/m2であった。したがって、δt2<1.
2μsecにて急速加熱を行えばよいことが判る。
【0065】図6によれば、δt2≦1.1μsecの
領域での気泡の寿命τは、図4に示した単一パルス駆動
方式の場合のtg≦1.1μsecの領域での気泡寿命
τ(破線)と比べて十分に大きい。また、第1駆動信号
を印加せずに第2駆動信号のみで形成された発泡エネル
ギーと、第1及び第2駆動信号による発泡エネルギーの
比は、それぞれの気泡寿命の3乗にて計算すると、1.
1μsec以下の発泡時間の領域で、第2駆動信号の発
泡エネルギーへの付与は45%以下となっている。これ
により、発泡エネルギーの略半分以上を第1駆動信号に
より制御できたことが判った。さらに、この場合の気泡
寿命は、単一矩形パルス駆動方式におけるtg=1.8
μsecのときの気泡の寿命と比べても長く、本発明の
駆動方法により十分な発泡エネルギーを確保することが
可能であることが判った。
【0066】また、δt2=1.1μsecでの寿命時
間ばらつき△τは、図4に示した単一パルス駆動方式の
場合のtg=1.8μsecのときの寿命時間ばらつき
に比べて小さくなっていた。この第1駆動信号の条件
で、第2駆動信号の発熱量Q2を、Q2<Q3とした
時、δt2<1.8μsecで気泡は発生せず、気泡寿
命のばらつきも低減することはできなかった。
【0067】このように本発明の駆動方法によれば、第
1駆動信号による加熱にて均一核生成を始めるのに必要
とする気化潜熱を蓄えた過熱液層を形成し、これにより
十分な過熱液層の厚みを確保し、この後に第2駆動信号
による急速加熱を行い、発泡安定性を確保しつつ、発泡
エネルギーを増大させることが可能である。
【0068】つぎに、図7〜図12に、本発明の第1お
よび第2駆動信号の各種信号波形のの例を示す。
【0069】図7においては、図3に示した信号波形と
同様であり、第1駆動信号の駆動電圧Vは−V1であ
り、パルス幅はW1である。また、第2駆動信号の駆動
電圧Vは+V2であり、パルス幅はW2である。|V1
|<|V2|とし、W2<W1とする。
【0070】図8においては、第1駆動信号としてパル
ス周期Tp,パルス幅Wpのn個のパルスを印加し、第
2駆動信号としてパルス幅WMの1個のパルスを印加す
る。n個の第1駆動信号と第2駆動信号には、正負逆電
位V3,V4を印加する。この場合、|V3|=|V4
|である。また、パルスを印加していない期間(図中点
線の部分)の電位は0、もしくは電気化学反応が起こら
ない程度の電位をかけておいてもよい。また、V3とV
4のどちらを正電位としてもよい。なお、第1駆動信号
の駆動周波数は十分に大きくとり、数MHz程度に設定
することが必要である。
【0071】なお、図8の駆動信号波形の場合は、n個
の第1駆動信号と第2駆動信号とを逆極性にしている
が、n個の第1駆動信号と第2駆動信号とを含めた(n
+1)個のパルスのうち、少なくとも1つのパルスの極
性を他の極性と異なるせるようにすればよい。
【0072】図9および図10は、その例を示すもので
ある。
【0073】図9においては、n個のパルスをもつ第1
駆動信号のうちのいくつかを、他のパルスと間欠的に逆
極性にしている。
【0074】図10においては、n個のパルスをもつ第
1駆動信号のうちのいくつかを、他のパルスと連続的に
逆極性にしている。
【0075】図11は、第1駆動信号のn個のパルスの
各間隔を徐々に大きくなる波形を示している。第1駆動
信号としては、パルス幅W11の複数個のパルスを印加
し、第2駆動信号としては、パルス幅W12のパルスを
印加している。第1駆動信号、第2駆動信号の駆動電圧
をそれぞれV11,V12とし、V11とV12は正負
逆電位である。なお、V11とV12の電圧の絶対値が
同じである場合は、パルスを印加していない間(図中点
線の部分)の電位は0であるが、電気化学反応が起こら
ない程度の電位をかけておいてもよい。
【0076】図12は、階段形状の波形をもつ第1駆動
信号を採用しており、ここでは3つの階段からなってい
る。第1駆動信号の3つの階段状波形は、夫々パルス幅
W21、駆動電圧V21、パルス幅W22、駆動電圧V
22、パルス幅W23、駆動電圧V23である。第2駆
動信号は、パルス幅W24、駆動電圧V24のパルスで
ある。V21,V22,V23は同極性で、V24を逆
極性を印加しているが、少なくとも一つの電位が逆極性
であればよい。
【0077】つぎに、本発明は気泡連通吐出方式におい
ても有効な手法となる。気泡連通吐出方式とは、吐出の
ためにインクを加熱することにより生成される膜沸騰に
よる気泡を、吐出口近傍で外気に触れさせて吐出を行う
インクジェット記録方式であり、特開平2−11283
2号、特開平2−112833号、特開平2−1128
34号、特開平2−114472号等に提案されてい
る。この気泡連通吐出方式によれば、気泡を形成してい
るガスが吐出されるインク液滴と共に噴出することがな
いので、スプラッシュやミスト等の発生を低減し、記録
媒体上での地汚れや装置内の汚れを防ぐことが出来る。
また、気泡連通吐出方式では、気泡が生成される部位よ
り吐出口側にあるインクは原理的に全てインク液滴とな
って吐出されるという基本的な作用をもっている。この
為、吐出インク量は、吐出口から気泡生成部位までの距
離等によって、すなわち記録ヘッドの構造によって定め
ることができる。この結果、気泡連通吐出方式によれ
ば、インク温度の変化等の影響をそれほど受けずに吐出
量の安定した吐出を行うことが可能となる。
【0078】図13および図14を参照して気泡連通吐
出方式についてさらに説明する。図13および図14
は、気泡連通吐出方式を適用して好適な記録ヘッドにつ
いてそれぞれ異なるタイプを示すものである。しかしな
がら、本発明はこれらの構成に限定されないことは勿論
である。
【0079】図13に示すインク路構成では、基板(不
図示)上に薄膜抵抗体3が設けられ、この基板に隔壁や
天板が設けられることによって、共通液室13、インク
路11およびインク吐出口8が形成される。4,5は、
それぞれ、薄膜低抗体3にパルス状の電気信号を印加す
るための共通電極、選択電極である。14は保護層であ
る。電極4,5へのパルス状の駆動信号の印加に応じ
て、電極4,5間の薄膜抵抗体3は、蒸気膜を生じる急
激な温度上昇を短時間のうちに発生し(約300℃)、
これにより気泡6が集成される。この気泡6は成長し、
やがて吐出口8における基板側の端部Aで大気と連通
(接触)する。そして、この連通後、安定した吐出イン
ク滴(破線15)が形成される。
【0080】このインク滴の吐出において、気泡6がそ
の成長過程でインク路11を完全に遮断しない(インク
路11内のインクが吐出口8から突出したインクと連続
している)ので、後続の吐出に対するリフィルが速やか
に行われること、300℃以上の比較的高温となった気
泡の熱も外気に放出されること等によって大きな蓄熱の
問題(蓄熱によるインク粘性低下や気泡形成の不安定
化)も生ぜず、各薄膜抵抗体の駆動デューティを高くす
ることができる。
【0081】図14の記録ヘッドでは、共通液室13を
不図示としているが、インク路11を屈曲した形状とし
ており、屈曲部下の基板面に薄膜抵抗体3を具えてい
る。吐出口8は、吐出方向に進むにつれてその断面積が
減少される形状となっており、薄膜抵抗体3に対向する
ようにその開口が設けられている。この吐出口8はオリ
フィスプレート10に形成される。
【0082】図14においても、図13の構成と同様、
蒸気膜(約300℃)を生じさせて気泡6を生成する。
この気泡の生成により、オリフィスプレート10の厚み
部分のインクを吐出方向に押しやり、その部分のインク
を希薄にする。その後、気泡6は、吐出口8の外気側周
縁A1から内部側の吐出口近傍領域A2の範囲で大気と
連通する。この時、気泡6の成長はインク路を遮断しな
いもので、吐出方向へ向かう必要のないインクをインク
路11内のインクと連続した連続体として残すことがで
き、インク滴15の吐出量の安定化および吐出速度の安
定化を実現することができる。
【0083】このような気泡連通吐出方式によれば、吐
出口近傍への気泡成長を急激にしかも確実に行うことが
できるので、上記した非遮断状態のインク路によるリフ
ィル性も手伝って、高安定の高速記録を達成できる。ま
た、気泡と大気とを連通させることによって、気泡の消
泡過程が無くなり、キャビテーションによる薄膜抵抗体
や基板の損傷を防止することもできる。
【0084】このようなインク吐出に伴う気泡と大気と
の連通は基本的に薄膜抵抗体3の配設位置を吐出口8に
近づけることによって実現できる。ここで、上述したス
プラッシュ等の抑制や吐出量の安定化を確実なものとす
る条件であって、図13および図14に示す記録ヘッド
に適用されて好ましい条件を以下に挙げる。
【0085】第1条件は、気泡の内圧が外気圧より低い
条件で気泡を外気と連通させることである。すなわち、
気泡の内圧が外気圧より低い条件で気泡を外気と連通さ
せることによって、気泡の内圧が外気圧より高い条件で
連通させる場合に生じていたスプラッシュ等の吐出口近
傍におけるインク飛散を低減でき、また上記2つの圧力
が等しい場合よりも、吐出時の不安定なインクをインク
路内に引き込む力がわずかではあるが働くため、より一
層安定したインク吐出と不要インクの飛散防止を図るこ
とができる。
【0086】また、気泡の吐出口側端部における移動速
度の1次微分値が負となる条件で気泡と外気とを連通さ
せるという第2条件、吐出エネルギー発生手段の吐出口
側端部から気泡の吐出口側端部までの距離Laと吐出エ
ネルギー発生手段の吐出口とは反対側の端部から気泡の
吐出口とは反対側の端部までの距離LbとがLa/Lb
≧1を満足する第3条件の何れか、もしくはその両方の
条件を満足して気泡と外気を連通させることがより好ま
しい。
【0087】以上説明した気泡連通吐出方式では、記録
ヘッドの薄膜抵抗体と吐出口との間のインク路長が、気
泡連通をし易くするため他の方式の記録ヘッドに比べる
と短く設定されることが、特徴的構成の一つである。し
かしながら、本発明の駆動方法を用いれば、上述したよ
うに気泡のエネルギーを増すことができるため、気泡連
通吐出方式においても、薄膜抵抗体と吐出口との間のイ
ンク路長が比較的長くても確実な連通を行うことができ
る。
【0088】(実施例)つぎに、本発明の実施例を説明
する。
【0089】(実施例1)本実施例1で用いたインクジ
ェット記録ヘッドでは、薄膜抵抗体と薄膜抵抗体の両端
に電気信号を印加する電極の一部とがインクに直接接触
している。
【0090】図15に、薄膜抵抗体及びこれに隣接する
電極に保護層が設けられていないインクジェット記録ヘ
ッドの模式図を示す。図15(a)は記録ヘッドの主要
部を吐出口側から見た模式的部分正面図、図15(b)
は図15(a)の一点鎖線X−Xに沿った模式的部分断
面図、図15(c)は薄膜抵抗体及び薄膜抵抗体の両端
の電極近傍を示す平面的断面図である。
【0091】図15に示したインクジェット記録ヘッド
において、下部層2は必要に応じて設けられ、ベース基
板1側へ逃げる熱の量を調整し、かつ熱作用部9で発生
する熱を効率良くインクに伝達する機能を有する。共通
電極4及び個別電極5は熱作用部9で発熱させるため
に、薄膜抵抗体層3に通電するためのものである。な
お、電極4,5の熱発生部9から離れた部分には必要に
応じて保護層(不図示)が形成されていてもよい。この
場合には高温に曝されることがないため、製造工程が簡
単であり化学的に安定な有機材料、例えばポリイミドを
用いて保護層を形成することができる。
【0092】本発明におけるインクジェット記録ヘッド
の構成としては、図15に示した例に限定されない。例
えば、インクの吐出口8及びインク路の構成も、図15
に示したように、熱作用部9上ヘインクが供給される方
向と吐出口8から飛翔するインクの吐出方向がほぼ同一
なものに限定されず、図16(a)及び図16(b)の
例に見られるように、インクが供給される方向とインク
の吐出方向がほぼ直角である構成なども採用することが
できる。なお、図16において、10は吐出口を設けた
適宜な厚みのオリフィスプレートであり、12はこのオ
リフィスプレート10を支持する支持壁である。他の構
成要素は、図15と同一符号を付している。
【0093】吐出口、インク路及び熱作用部から成る記
録液の吐出構造単位は、図15、図16に示されるよう
に複数個配置しても良く、例えば、記録媒体の記録幅の
全てにわたって配列されている構成も挙げることができ
る。このような構成の場合には記録ヘッドの面積が大き
くなるため保護層も大きくしなければならないが、上記
図15、図16に示す構成では、保護層がないので、保
護層の欠陥など保護層に関する問題を考慮する必要はな
い。
【0094】次に、薄膜抵抗体層3及び熱作用部近傍9
の電極4,5が保護層を持たないインクジェット記録ヘ
ッドの作製方法を説明する。
【0095】基板として、シリコンウエハを用い、この
シリコンウエハを熱酸化処理して、厚さ2.7μmの二
酸化シリコン膜を設けたものを使用した。この二酸化シ
リコン膜上にスパッタ法により形成した800Åの厚さ
のTa−Irの薄膜抵抗体が設けてある。Ta−Irの
スパッタ条件は以下の通りである。使用したターゲット
はTaターゲット上にIrシートを載せたものを用い
た。スパッタリング条件は以下の通りである。
【0096】 ターゲット面積比 Ta:Ir=68:32 高周波電力 500W 基板温度 50℃ 成膜時間 10分 ガス(Ar)圧力 0.4Pa
【0097】配線電極は、スパッタ法にて形成した厚さ
0.6μmのAuを用いている。薄膜抵抗体、配線電極
はフォトリソグラフィ技術及びエッチングによりパター
ニングされ、熱作用部の寸法は22μm×120μm、
熱作用部のピッチは70μmとし、48個の熱作用部が
一列に並べて形成されてある。この基板に、図15に示
した吐出口8及びガラス製の溝付き天板7を接合し、記
録ヘッドが構成される。この記録ヘッドの熱作用部の抵
抗は165Ωであった。
【0098】上記インクジェット記録ヘッドを用いて、
以下のような評価試験を行った。
【0099】(A)電極の損傷の程度を評価する吐出試
験 まず、記録ヘッドのインク路に、 水 77.0重量% ジエチレングリコール 15.0重量% 黒色染料 3.0重量% N−メチル−2−ピロリドン 5.0重量% 導電率 4.7ms/cm の成分と特性を有するインクを供給した。
【0100】外部電源から様々の駆動パルスが印加され
るように、1×107回インクを吐出し、その後電極の
状態を観察した。
【0101】(B)記録品位 記録ヘッドを公知の構成のインクジェット記録装置に装
着し、上記吐出試験と同様の条件による駆動を行ってキ
ャラクタなどの記録を行い、記録された記録媒体に対し
て目視での評価を行った(初期、A4版100枚記録
後、及び1000枚記録後)。
【0102】また、共通電極4を接地し、選択電極5に
図7に示した駆動信号波形を印加し、V1=−7V,W
1=5μsec、ヒータ発熱量Q1=110MW/
2,V2=19V,W2=0.8μsec、ヒータ発
熱量Q2=830MW/m2とした。
【0103】このような駆動信号を用いて、上記評価
(A)、(B)を行ったところつぎのような結果が得ら
れた。
【0104】(A)吐出試験 1×107回記録液滴を吐出しても、インクとの電気化
学反応による薄膜抵抗体及び薄膜抵抗体と接続した電極
の溶解、酸化等はほとんど見られなかった。
【0105】(B)記録品位 1000枚記録後も、ほぼ良好な記録が得られた。
【0106】(実施例2)本実施例2では、実施例1の
インクジェット記録ヘッドを用い、下記の駆動条件によ
り薄膜抵抗体を駆動し、実施例1と同様の評価を行っ
た。
【0107】すなわち、共通電極4を接地し、選択電極
5に図9に示した駆動信号波形を印加し、V3=19
V,V4=−19V,WP=0.4μsec,TP=
0.5μsec,n=5,WM=0.8μsecとし
た。
【0108】このような駆動信号を用いて、上記評価
(A)、(B)を行ったところつぎのような結果が得ら
れた。
【0109】(A)吐出試験 1×107回記録液滴を吐出しても、インクとの電気化
学反応による薄膜抵抗体及び薄膜抵抗体と接続した電極
の溶解、酸化等はほとんど見られなかった。
【0110】(B)記録品位 1000枚記録後も、極めて良好な記録が得られた。
【0111】(実施例3)本実施例3では、実施例1の
インクジェット記録ヘッドを用い、下記の駆動条件によ
り薄膜抵抗体を駆動し、前記と同様の評価を行った。
【0112】共通電極4を接地し、選択電極5に図11
に示した駆動信号波形を印加し、第1駆動信号はV11
=19V、パルス幅W11=0.4μsecのパルスを
4回印加し、パルスとパルスの間の休止時間を0.2,
0.3,0.5,1.0μsecとし、第2駆動信号は
V12=一19V,W12=0.8μsecとした。
【0113】このような駆動信号を用いて、上記評価
(A)、(B)を行ったところつぎのような結果が得ら
れた。
【0114】(A)吐出試験 1×107回記録液滴を吐出しても、インクとの電気化
学反応による薄膜抵抗体及び薄膜抵抗体と接続した電極
の溶解、酸化等はほとんど見られなかった。
【0115】(B)記録品位 1000枚記録後も、極めて良好な記録が得られた。
【0116】(実施例4)本実施例4では、実施例1の
インクジェット記録ヘッドを用い、下記の駆動条件によ
り薄膜抵抗体を駆動し、前記と同様の評価を行った。
【0117】共通電極4を接地し、選択電極5に図12
に示した駆動信号波形を印加し、第1駆動信号はV21
=16V、パルス幅W21=0.5μsec、ヒータ発
熱量Q21=590MW/m2,V22=12V,W2
2=1.0μsec、ヒータ発熱量Q22=330MW
/m2,V23=7V,W23=2.0μsec、ヒー
タ発熱量=Q23=110MW/m2とし、第2駆動信
号はV24=−19V,W12=0.8μsec、ヒー
タ発熱量Q24=830MW/m2とした。
【0118】このような駆動信号を用いて、上記評価
(A)、(B)を行ったところつぎのような結果が得ら
れた。
【0119】(A)吐出試験 1×107回記録液滴を吐出しても、インクとの電気化
学反応による薄膜抵抗体及び薄膜抵抗体と接続した電極
の溶解、酸化等はほとんど見られなかった。
【0120】(B)記録品位 1000枚記録後も、極めて良好な記録が得られた。
【0121】(比較例)本比較例では、実施例1のイン
クジェット記録ヘッドを用い、下記の単一の駆動パルス
を用いた駆動条件により駆動し、上記と同様の評価を行
った。
【0122】共通電極4を接地し、選択電極5に予備加
熱のない単一の駆動パルスを印加し、駆動電圧が19
V、パルス幅を1.0μsec、ヒータ発熱量Q3=8
30MW/m2とした。
【0123】このような駆動信号を用いて、上記評価
(A)、(B)を行ったところつぎのような結果が得ら
れた。
【0124】(A)吐出試験 4×103回程度から不吐出が観測され、熱ストレスに
より薄膜抵抗体が断裂した。さらに記録ヘッドを観察し
たところ、電気化学反応により電極が数μm後退してい
た。
【0125】(B)記録品位 1枚目から不吐出やかすれが見られた。
【0126】(その他)なお、本発明は、特にインクジ
ェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために
利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段
(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エ
ネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録
ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすもので
ある。かかる方式によれば記録の高密度化,高精細化が
達成できるからである。
【0127】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書,同第4740
796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,
コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特
に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持
されているシートや液路に対応して配置されている電気
熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急
速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加
することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せ
しめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結
果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)
内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成
長,収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐
出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信
号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が
行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐
出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信
号としては、米国特許第4463359号明細書,同第
4345262号明細書に記載されているようなものが
適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する
発明の米国特許第4313124号明細書に記載されて
いる条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことが
できる。
【0128】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変換体
の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に
熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示す
る米国特許第4558333号明細書,米国特許第44
59600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるも
のである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通
するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示
する特開昭59−123670号公報や熱エネルギの圧
力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示す
る特開昭59−138461号公報に基いた構成として
も本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの
形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録
を確実に効率よく行うことができるようになるからであ
る。
【0129】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の
最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのよう
な記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによっ
てその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の
記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0130】加えて、上例のようなシリアルタイプのも
のでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装
置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や
装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチ
ップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一
体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの
記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0131】また、本発明の記録装置の構成として、記
録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加す
ることは本発明の効果を一層安定できるので、好ましい
ものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに
対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或
は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或
はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を挙げるこ
とができる。
【0132】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば単色のインクに対応して1個の
みが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数
のインクに対応して複数個数設けられるものであっても
よい。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては
黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘ
ッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるか
いずれでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色
によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備
えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0133】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェ
ット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲
内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあ
るように温度制御するものが一般的であるから、使用記
録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよ
い。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状
態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せし
めることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発
を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化す
るインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの
記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状イ
ンクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では
すでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与
によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も
本発明は適用可能である。このような場合のインクは、
特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−7
1260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部
または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態
で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても
よい。本発明においては、上述した各インクに対して最
も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するもので
ある。
【0134】さらに加えて、本発明インクジェット記録
装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の
画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組
合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシ
ミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0135】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、発
熱抵抗体及び発熱抵抗体の両端に電気信号を印加する電
極上での電気化学反応が抑制されるので、記録ヘッドの
寿命を長くすることができる。また、発泡エネルギーを
大きくすることができる。また、インク中で生成される
気泡を安定に形成でき、発泡エネルギーのばらつきを低
減することができる。これによりインクの吐出再現性の
良いインクジェット記録ヘッドを提供することが可能と
なり、さらに、従来では使用できなかった比較的高粘度
のインクを使用することも可能となり、インク設計の自
由度が増大し、より高品位の画像を得ることができる。
さらに本発明の駆動方法を用いたインクジェット記録ヘ
ッドにおいては、発熱抵抗体の上層の保護層をなくす、
あるいは薄くすることができることから、記録ヘッド作
製工程が簡素化され、熱効率、応答性、信頼性に優れた
記録ヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の単一駆動信号による駆動方式での発泡時
間と発泡エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図2】インクジェット記録ヘッドの要部断面図であ
る。
【図3】本発明に用いられる駆動信号波形の第1の例を
示す図である。
【図4】単一駆動信号の信号波形を示す図である。
【図5】本発明の駆動信号を与えたときと、従来の単一
駆動信号を与えたときの発熱抵抗体表面温度の時間変化
を示す図である。
【図6】本発明の駆動信号を与えたときと、従来の単一
駆動信号を与えたときの発泡時間と気泡寿命との関係を
示す図である。
【図7】本発明に用いられる駆動信号波形の第1の例を
示す図である。
【図8】本発明に用いられる駆動信号波形の第2の例を
示す図である。
【図9】本発明に用いられる駆動信号波形の第3の例を
示す図である。
【図10】本発明に用いられる駆動信号波形の第4の例
を示す図である。
【図11】本発明に用いられる駆動信号波形の第5の例
を示す図である。
【図12】本発明に用いられる駆動信号波形の第6の例
を示す図である。
【図13】気泡連通吐出方式のインクジェット記録ヘッ
ドの一例を示す部断面図である。
【図14】気泡連通吐出方式のインクジェット記録ヘッ
ドの他例を示す部断面図である。
【図15】保護層のないインクジェット記録ヘッドの一
例を示す部断面図である。
【図16】保護層のないインクジェット記録ヘッドの他
例を示す部断面図である。
【図17】インク加熱のための発熱抵抗体表面に接する
インク温度の変化を示す線図である。
【符号の説明】
1 ベース基板 2 下部層 3 薄膜抵抗体層 4 共通電極 5 選択電極 6 気泡 7 溝付天板 8 吐出口 9 熱作用部 10 オリフィスプレート 11 インク路 12 支持壁 13 共通液室 14 保護層 15 吐出インク滴 16 インク

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱エネルギーを発生する発熱抵抗体と、
    該発熱抵抗体の両端に電気信号を印加する電極とを有
    し、前記発熱抵抗体の熱エネルギーを利用してインクに
    気泡を発生させてインクを吐出するインクジェット記録
    ヘッドの駆動方法において、 第1駆動パルス信号およびこの第1駆動パルス信号に続
    く第2駆動パルス信号を前記電極に印加して前記発熱抵
    抗体を駆動するとともに、 前記第1駆動パルス信号による平均発熱量よりも第2駆
    動パルス信号による気泡発生時点までの平均発熱量が大
    きくなるように前記発熱抵抗体を駆動することを特徴と
    するインクジェット記録ヘッドの駆動方法。
  2. 【請求項2】 第1駆動パルス信号を印加せずに第2駆
    動パルス信号のみを印加したときにおいて、第2駆動パ
    ルス信号の印加時間を変化させたときの印加開始から発
    泡までの発泡所要時間に関して、発泡エネルギーが大き
    な減少をするか否かの境界を示す所定の発泡所要時間を
    tsとし、 前記第1駆動パルス信号を印加した後に前記第2駆動パ
    ルス信号を印加したときにおける前記第2駆動パルス信
    号を印加開始してから気泡発生時点までの時間をδtと
    したとき、 δt<ts を満足するように前記発熱抵抗体を駆動することを特徴
    とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの駆
    動方法。
  3. 【請求項3】 第1駆動パルス信号を印加せずに第2駆
    動パルス信号のみを印加したときにおいて、第2駆動パ
    ルス信号の印加時間を変化させたときの印加開始から発
    泡までの発泡所要時間に関して、発泡エネルギーが大き
    な減少をするか否かの境界を示す所定の発泡所要時間を
    tsとし、この発泡所要時間tsの終了時点における前
    記発熱抵抗体の温度上昇率をT'(ts)とし、 前記第1駆動パルス信号を印加した後に前記第2駆動パ
    ルス信号を印加したときにおける前記第2駆動パルス信
    号による発泡時点における前記発熱抵抗体の温度上昇率
    をT'(δt)としたとき、 T'(δt)>T'(ts) (T'は温度Tの時間微
    分) を満足するように前記発熱抵抗体を駆動することを特徴
    とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの駆
    動方法。
  4. 【請求項4】 第1駆動パルス信号による発泡エネルギ
    ーへの寄与分が第2駆動パルス信号による発泡エネルギ
    ーへの寄与分より大きくなるように前記発熱抵抗体を駆
    動することを特徴とする請求項1に記載のインクジェッ
    ト記録ヘッドの駆動方法。
  5. 【請求項5】 第1駆動パルス信号を印加せずに第2駆
    動パルス信号のみを印加したときにおいて、第2駆動パ
    ルス信号の印加時間を変化させたときの印加開始から発
    泡までの発泡所要時間に関して、発泡エネルギーが大き
    な減少をするか否かの境界を示す所定の発泡所要時間を
    tsとし、この発泡所要時間tsの終了時点における前
    記発熱抵抗体の発熱量をQ(ts)としたとき、 前記第1駆動パルス信号を印加した後に前記第2駆動パ
    ルス信号を印加したときにおける前記第2駆動パルス信
    号による気泡発生時点の前記発熱抵抗体の発熱量を、前
    記Q(ts)以上としたことを特徴とする請求項1に記
    載のインクジェット記録の駆動方法。
  6. 【請求項6】 前記第1駆動パルス信号が複数のパルス
    からなり、この第1駆動パルス信号と第2駆動パルス信
    号を含めた複数のパルスのうち、少なくとも1つのパル
    スの極性が他の極性と異なることを特徴とする請求項1
    に記載のインクジェット記録ヘッドの駆動方法。
  7. 【請求項7】 熱エネルギーを発生する発熱抵抗体と、
    該発熱抵抗体の両端に電気信号を印加する電極とを有
    し、前記発熱抵抗体の熱エネルギーを利用してインクに
    気泡を発生させてインクを吐出するインクジェット記録
    ヘッドにおいて、 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の駆動方法によ
    り駆動されることを特徴とするインクジェット記録ヘッ
    ド。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008238401A (ja) * 2007-03-23 2008-10-09 Canon Inc 液体吐出ヘッド及び液体吐出方法
JP2010504228A (ja) * 2006-10-09 2010-02-12 シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド 大型安定蒸気気泡のためのmems気泡発生器

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