JP2002061642A - 流体軸受装置 - Google Patents

流体軸受装置

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JP2002061642A
JP2002061642A JP2001038933A JP2001038933A JP2002061642A JP 2002061642 A JP2002061642 A JP 2002061642A JP 2001038933 A JP2001038933 A JP 2001038933A JP 2001038933 A JP2001038933 A JP 2001038933A JP 2002061642 A JP2002061642 A JP 2002061642A
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JP
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sleeve
thrust
bearing
fluid bearing
lubricant
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Application number
JP2001038933A
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English (en)
Inventor
Katsuhiko Tanaka
克彦 田中
Ikunori Sakatani
郁紀 坂谷
Yukio Higuchi
幸雄 樋口
Takenobu Otsubo
丈信 大坪
Shigeyuki Ochiai
成行 落合
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 起動停止耐久性及び量産性に優れた流体軸受
装置を提供する。 【解決手段】 一端にスラストプレート15を有する軸
13と、該軸13にラジアル流体軸受Rの流体軸受すき
まを介して対向するスリーブ12と、スラストプレート
15の一方の平面15sにスラスト流体軸受Sの流体軸
受すきまを介して対向するカウンタープレート16と、
を備えた流体軸受装置において、スラストプレート15
とスリーブ12とを、異なる組成の銅合金で構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報機器,音響・
映像機器,事務機用の流体軸受装置に係り、特に、ノー
ト型パソコン等に使用される磁気ディスク装置(HD
D),ファンモータ等に最適な流体軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の流体軸受装置としては、
例えば、HDD用スピンドルモータがある。その構造
を、図3を参照しながら説明する。このものは、ベース
101に立設した円筒部101aにスリーブ102が固
着されており、そのスリーブ102に軸103が回転自
在に挿通されている。この軸103の上端には逆カップ
状のハブ104が一体的に取り付けられていて、軸10
3とスリーブ102との間には動圧流体軸受部が介在し
ている。
【0003】すなわち、軸103の下端には円板状のス
ラストプレート105が圧入によって固着されていて、
スラストプレート105の両平面がスラスト流体軸受S
のスラスト受面105sとされている。そして、上面側
のスラスト受面105sには一方の相手部材であるスリ
ーブ102の下端面が対向し、このスリーブ102の下
端面がスラスト流体軸受Sのスラスト軸受面102sと
されている。
【0004】また、スラストプレート105の下方に
は、他方の相手部材であるカウンタープレート106が
配置され、ベース101に固定されている。このカウン
タープレート106の上面がスラストプレート105の
下面側のスラスト受面105sに対向して、スラスト流
体軸受Sのスラスト軸受面106sとされている。上記
スラスト受面105s,105sとスラスト軸受面10
2s,106sとの少なくとも一方に、図示されないヘ
リングボーン状又はスパイラル状の動圧発生用の溝を備
えてスラスト流体軸受Sが構成されている。
【0005】さらに、軸103の外周面には、上下に間
隔をおいて一対のラジアル受面103rが形成されてい
る。また、このラジアル受面103rに対向させて、ス
リーブ102の内周面にラジアル軸受面102rが形成
されている。そして、ラジアル受面103rとラジアル
軸受面102rとの少なくとも一方に、例えばヘリング
ボーン状の動圧発生用の溝107を備えて、ラジアル流
体軸受Rが構成されている。
【0006】そして、円筒部101aの外周にはステー
タ108が固定され、ハブ104の内周面下側に固定さ
れているロータ磁石109とギャップを介して周面対向
して駆動モータMを形成しており、軸103とハブ10
4とが一体的に回転駆動される。軸103が回転する
と、スラスト流体軸受S及びラジアル流体軸受Rの各動
圧発生用の溝のポンピング作用により、各流体軸受S,
Rの軸受すきまの潤滑剤に動圧が発生して、軸103は
スリーブ102及びカウンタープレート106と非接触
となり支承される。
【0007】このような従来のスピンドルモータは、ス
ラストプレート105と軸103との圧入による締結強
度を確保して外部衝撃に対する耐衝撃性を確保するため
に、スラストプレート105はヤング率の高いステンレ
ス鋼(ビッカース硬さHv=約270)により構成さ
れ、相手部材であるスリーブ102及びカウンタープレ
ート106は、同一の組成の銅合金(例えば、ビッカー
ス硬さHv=約150の快削黄銅)により構成されてい
た。また、スラスト流体軸受Sの動圧発生用の溝は、ス
ラストプレート105の両平面にエッチングにより加工
されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】最近のHDD用スピン
ドルモータにおいては、長期信頼性を確保するために起
動停止耐久性に優れることが要求されている。特に、動
圧流体軸受の場合には、起動停止時にスラスト軸受面1
06sとスラスト受面105sとが互いに接触すること
は避けられないので、起動停止を繰り返す間に徐々に摩
耗して、発生した摩耗粉をかみ込むことにより軸受の回
転精度が劣化したり、ひどい場合には回転不能となるお
それがあった。したがって、起動停止の際の接触によっ
てスラスト軸受面106s及びスラスト受面105sが
損傷することを防止することが重要である。
【0009】しかしながら、従来のスラスト流体軸受S
においては、硬さの高いステンレス鋼からなるスラスト
プレート105に動圧発生用の溝が加工されているため
に、エッチング加工により生じた前記溝周辺の微小なば
りや盛り上がり部分を、完全に除去することが困難であ
る。そのため、起動及び停止の繰り返しにより、硬さの
低い銅合金からなる相手部材(スリーブ102及びカウ
ンタープレート106)の軸受面(スラスト軸受面10
2s及びスラスト軸受面106s)を損傷させるおそれ
があった。
【0010】また、ステンレス鋼は切削性が良好でない
ために、寸法精度の確保がむずかしく量産性が劣るとい
う問題があった。そこで、本発明は、上記のような従来
の流体軸受装置が有する問題点を解決し、起動停止耐久
性や量産性に優れた流体軸受装置を提供することを課題
とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明の流体軸受装置は、フランジ部を有する軸と、該軸に
ラジアル流体軸受の流体軸受すきまを介して対向するス
リーブと、前記フランジ部の少なくとも一方の平面にス
ラスト流体軸受の流体軸受すきまを介して対向する相手
部材と、を備えた流体軸受装置において、前記フランジ
部と前記スリーブとを、異なる組成の銅合金で構成した
ことを特徴とする。
【0012】このような流体軸受装置は、前記フランジ
部と前記スリーブとを切削性の良好な銅合金で構成した
ので、寸法精度の確保が容易で、且つ加工性が高く量産
性が優れている。また、異なる組成の銅合金で構成され
ている前記フランジ部と前記スリーブのうち、硬さが低
い方に動圧発生用の溝を加工すれば、溝の加工性が高い
ので量産性が優れている。また、前記溝の加工により生
じた前記溝周辺の微小なバリや盛り上がり部分を、完全
に除去することが可能であるので、前記フランジ部又は
前記スリーブが接触する部材の軸受面が、軸受の起動及
び停止の繰り返しによって損傷することを防止できる。
【0013】なお、前記フランジ部と前記スリーブと
は、硬さの差がビッカース硬さHvで50以上となるよ
うに、異なる組成の銅合金で構成することが好ましい。
そうすれば、前記部材の軸受面がより損傷しにくいの
で、起動停止耐久性がより優れる。ただし、前記フラン
ジ部と前記スリーブとの硬さが同じ場合には、動圧発生
用の溝はどちらに設けても差し支えないし、両方に設け
ても差し支えない。
【0014】また、本発明の流体軸受装置は、前記スリ
ーブを構成する銅合金を、ビッカース硬さHvが180
以上の銅合金とすることが好ましく、200以上の銅合
金とすることがより好ましい。さらに、本発明の流体軸
受装置は、前記銅合金を、ベリリウム銅,高力黄銅,及
びアルミ青銅のうちのいずれかとすることができる。
【0015】このようなビッカース硬さHvが180以
上の銅合金(より好ましくはビッカース硬さHvが20
0以上の銅合金)は、良好な加工性(切削加工性、塑性
加工性等)と優れた摺動性とを併せ持っているので、量
産性に優れ低コストであるうえ、起動停止耐久性にも優
れている。なお、前記スリーブを構成する銅合金を、ビ
ッカース硬さHvが300以上の銅合金とすれば、流体
軸受装置の起動停止耐久性を著しく高めることができる
のでより好ましい。
【0016】さらに、前記銅合金をベリリウム銅とし、
時効硬化処理等を施してビッカース硬さHvを350以
上とすれば、流体軸受装置の起動停止耐久性をより高め
ることができるのでさらに好ましい。ベリリウム銅は、
時効硬化処理前でもビッカース硬さHvが210〜27
0程度である。なお、この場合には、ボール転造等の塑
性加工により動圧発生用の溝を設けた後に、時効硬化処
理等を施してビッカース硬さHvを350以上とすれ
ば、加工性すなわち量産性が損なわれることなく起動停
止耐久性を高めることができる。
【0017】さらに、本発明の流体軸受装置は、前記相
手部材を銅合金で構成することができる。さらに、本発
明の流体軸受装置は、前記ラジアル流体軸受を構成する
深さ2〜10μmの動圧発生用の溝を、スリーブの内周
面に設けた構成とすることができる。このような構成で
あれば、ボール転造等の塑性加工による前記溝の加工が
容易となり好ましい。もちろん、ボール転造に限らず、
切削加工等によって前記溝を加工してもよい。
【0018】例えば、ビッカース硬さHvが180以上
の銅合金(より好ましくはビッカース硬さHvが200
以上の銅合金)は、快削黄銅(ビッカース硬さHv15
0程度)に比べて硬さが高いために加工が難しい。した
がって、前記溝の深さが10μmを越えると、ボール転
造等の塑性加工で溝を加工する際の負荷が大きく、転造
ボールが割れやすくなるので、量産が困難となる。2μ
m未満では、軸受の回転に伴う前記溝のポンピング作用
により発生する動圧が小さく、所定の軸受性能が得られ
ない。前記溝の深さを2〜10μmとすれば、前記溝の
加工性と軸受性能とを両立することが可能である。な
お、前記溝の加工をより容易とするためには、前記溝の
深さは2〜6μmとすることがより好ましい。
【0019】なお、銅合金がベリリウム銅である場合
は、上記と同様の理由により、前記溝の深さは2〜8μ
mとすることが好ましく、2〜6μmとすることがより
好ましい。さらに、本発明の流体軸受装置は、前記フラ
ンジ部を、前記軸にねじ止めによって固着した構成とす
ることができる。このような構成であれば、前記フラン
ジ部を圧入により固着した場合のように、フランジ部の
抜け荷重がフランジ部の材質の縦弾性係数により制約さ
れるということがないので、流体軸受装置の耐衝撃性を
確保するのに適している。
【0020】さらに、本発明の流体軸受装置は、前記ス
リーブと前記相手部材とは、その材質又は硬さが異なる
構成とすることができる。さらに、本発明の流体軸受装
置は、前記スリーブが備える平面が、前記スラスト流体
軸受の流体軸受すきまを介して前記フランジ部の一方の
平面に対向し、前記相手部材が備える平面が、前記スラ
スト流体軸受の流体軸受すきまを介して前記フランジ部
の他方の平面に対向するとともに、前記スリーブの平面
及び前記相手部材の平面のうち少なくとも一方は、表面
処理を施された構成とすることができる。
【0021】すなわち、本発明の流体軸受装置は、前記
フランジ部の両平面に設けたスラスト受面に対向するス
ラスト軸受面を備えた前記スリーブ及び前記相手部材の
うち、起動停止時のアキシアル荷重が主に作用する方の
軸受面のみ、硬さが高く摺動性のよい材質とするか、又
は高硬度で且つ良摺動性となる表面処理を施したもので
ある。
【0022】これにより、前記スリーブ及び前記相手部
材の両方を、硬さが高く摺動性のよい材質としたり、高
硬度で且つ良摺動性となる表面処理を施したりするより
も、低コストでしかも実質的に同程度の起動停止耐久性
が確保できる。さらに、本発明の流体軸受装置は、前記
ラジアル流体軸受の流体軸受すきま及び前記スラスト流
体軸受の流体軸受すきまに、0.1〜5wt%の酸化防
止剤を含有する潤滑剤を充填した構成とすることができ
る。
【0023】このような構成であれば、潤滑剤と銅合金
との反応を抑制できるとともに、高温時の蒸発による潤
滑剤の減量を抑えることが可能である。酸化防止剤の含
有量が0.1wt%未満であると、上記の効果が不十分
となり、5wt%を越えると潤滑剤の粘度がベース油
(基油)と異なる粘度となってしまうという問題が生じ
るおそれがある。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明に係る流体軸受装置の実施
の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
以下の説明における上,下等の方向を示す用語は、特に
断りがない限り、説明の便宜上、各図におけるそれぞれ
の方向を意味するものである。 〔第一実施形態〕図1は、本発明の流体軸受装置の第一
実施形態であるスピンドルモータの断面図である。
【0025】ベース11の中央部に立設されている円筒
部11aの内側に、銅合金製(ビッカース硬さHv26
4)のフランジ付円筒体状のスリーブ12が内挿されて
いて、前記フランジ12fにより一体的に固着されてい
る。そして、スリーブ12には中空状の軸13が挿通さ
れていて、軸13は内周面に雌ねじ13fが形成されて
いる。この軸13の上端部13aは他部より小径となっ
ていて、この小径の上端部13aを浅い逆カップ状のハ
ブ14の中央部に設けられた穴に圧入することにより、
軸13とハブ14とが一体に固着されている。小径な上
端部13aと大径な他部との境目に形成される前記大径
な他部の上端面13bにハブ14の下面が当接されるか
ら、軸13とハブ14とは十分な耐衝撃性を確保するに
足る強度で固着される。なお、軸13は中空状ではなく
棒状(中実軸)でもよい。
【0026】ベース11の円筒部11aの外周にはステ
ータ18が固定され、ハブ14の内周面に固定されたロ
ータ磁石19とギャップを介して周面対向して駆動モー
タMを形成している。そして、スリーブ12の下端より
突き出た軸13の下端には、銅合金製(ビッカース硬さ
Hv90)の円板状のスラストプレート15が固定され
ている。なお、このスラストプレート15が本発明の構
成要件たるフランジ部に相当する。本実施形態の場合
は、軸13の内周面に設けられた雌ねじ13fに螺合し
た止めねじ20により、スラストプレート15が軸13
に取り付けられている。
【0027】スラストプレート15をねじ止めにより取
り付けたので十分な締結強度が確保され、圧入により取
り付ける場合とは異なり、スラストプレート15にヤン
グ率の低い銅合金(切削性が良好)を使用できる。な
お、止めねじ20の頭部20aの形状としては、図示の
平頭形に限定されることはなく、丸小ねじのような丸頭
形や皿小ねじのような皿頭形など適宜変更してよい。
【0028】そして、このスラストプレート15の下面
は、ベース11に取り付けた銅合金製(ビッカース硬さ
Hv264)のカウンタープレート16の上面と対向
し、停止時には両対向面同士が当接している。カウンタ
ープレート16の中央部(軸13の真下の位置)には、
止めねじ20の頭部20aを収納する凹部16aが設け
てある。そうすれば、止めねじ20をスラストプレート
15に没入した形態で取り付ける必要がなく、スラスト
プレート15の加工が容易となる。
【0029】なお、スラストプレート15を固定する止
めねじ20を頭部20aが没入した形態で取り付けた
り、スラストプレート15を軸13に圧入して固着する
などした場合は、凹部16aは設ける必要はない。ただ
し、スラストプレート15を軸13に圧入して固着した
場合は、抜け荷重がスラストプレート15の材質の縦弾
性係数により制約されるので、ねじ止めの方が耐衝撃性
を確保するのに適している。
【0030】スラストプレート15の上下の両平面はス
ラスト受面15sとされる。そして、上面側のスラスト
受面15sに対向する一方の相手部材であるスリーブ1
2の下端面と、下面側のスラスト受面15sに対向する
他方の相手部材であるカウンタープレート16の上面と
が、それぞれスラスト軸受面12s及び16sとされ
て、相対するスラスト受面15s,15sとスラスト軸
受面12s,16sとのうちスラスト受面15s,15
sに、例えばヘリングボーン状の動圧発生用の溝(図示
せず)を備えてスラスト流体軸受Sを構成している。す
なわち、スリーブ12,カウンタープレート16,及び
スラストプレート15の中で、ビッカース硬さHvが低
いスラストプレート15に動圧発生用の溝を設けてい
る。
【0031】スラストプレート15の両平面(スラスト
受面15s,15s)へ前記溝を設ける加工方法は、特
に限定されるものではなく、塑性加工,切削加工,化学
エッチング,電解エッチング等があげられる。ただし、
スラストプレート15に硬さの低い銅合金を用いた場合
は、コイニング加工による塑性加工が容易であるので、
量産性に優れるという利点がある。なお、スリーブ12
やカウンタープレート16は、強度が必要なため硬さが
高い方が好ましい。
【0032】一方、軸13の外周面には、軸方向に間隔
をおいて上下に一対のラジアル受面13rが形成される
と共に、このラジアル受面13rに対向するラジアル軸
受面12rがスリーブ12の内周面に形成されている。
そして、ラジアル軸受面12rに例えば、くの字状のヘ
リングボーン状の動圧発生用の溝17を備えて、ラジア
ル流体軸受Rが構成されている。このラジアル流体軸受
Rの動圧発生用の溝17を、溝長さが外側より内側の方
が僅かに短い内向き非対称溝パターンにしておくと、回
転中に軸受すきま内の潤滑剤が外部に流出する現象を防
止できる。
【0033】なお、動圧発生用の溝17は、ラジアル受
面13rに設けてもよいし、ラジアル軸受面12rとラ
ジアル受面13rとの両方に設けてもよい。また、スピ
ンドルモータのトルクを小さくするために、上下2つの
ラジアル流体軸受R,Rに挟まれたスリーブ12の内周
面(又は軸13の外周面あるいはスリーブ12の内周面
と軸13の外周面との双方でもよい)に、ラジアル流体
軸受Rの軸受すきまに向かってすきまが狭くなるテーパ
状の周溝からなる逃げ溝21を設けている。
【0034】さらに、スリーブ12の外周面と円筒部1
1aの内周面との間には、円環状のすきまが介在してい
て、そのすきまが潤滑剤溜まり22を形成している。こ
の潤滑剤溜まり22の上部には、外気と連通する空気抜
き穴23が開口している。空気抜き穴23は、潤滑剤溜
まり22の最上部から水平に延び、途中で上方に屈曲し
てスリーブ12の上端面に開口している。すなわち、空
気抜き穴23は、円筒部11aのスリーブ12とのはめ
あい面に軸方向のスリットを形成するようにして設けら
れている。もちろん、潤滑剤溜まり22の最上部から垂
直に伸び、スリーブ12の上端面に開口するように設け
てもよい。
【0035】また、潤滑剤溜まり22の内面を形成する
スリーブ12の外周面は、下方のスラスト流体軸受Sに
向かってすきまが狭くなるテーパ面24とされている。
もっとも、テーパ面24は必ずしもスリーブ12の外周
面に形成するとは限らず、円筒部11aの内周面に形成
してもよく、あるいはスリーブ12の外周面と円筒部1
1aの内周面との双方に形成してもよい。なお、テーパ
面24は、カウンタープレート16の位置するところま
でテーパ状となっていてもよい。
【0036】そして、潤滑剤溜まり22の下部の流体軸
受に近接して連通する部分は、軸受すきまとほぼ等しい
か、又は僅かに大きいすきまを有する潤滑剤供給路25
とされ、表面張力に基づく毛管現象により潤滑剤が前記
軸受すきまに導入されやすいようになっている。当該ス
ピンドルモータへの潤滑剤の注入は、スピンドルモータ
の組立途中に空気抜き穴23から行う。ただし、カウン
タープレート16の中心に厚み方向の通し穴からなる貫
通穴が備えられていれば、全体を組み立てた後に該貫通
穴から潤滑剤の注入を行ってもよい。注入された潤滑剤
は、表面張力によりスラスト流体軸受S及びラジアル流
体軸受Rの各軸受すきまを満たすとともに、余分な潤滑
剤は潤滑剤溜まり22に溜まって、そのテーパ面24に
表面張力に基づく毛管現象により保持される。したがっ
て、輸送時や使用時にスピンドルモータが倒置されたと
しても、潤滑剤溜まり22内の潤滑剤が外部に流出する
ことはない。
【0037】また、潤滑剤溜まり22のすきまの大きさ
が、テーパ面24により下方の潤滑剤供給路25に向か
って狭くなっているため、外部衝撃で飛散した潤滑剤
も、外部に流出しない限りは潤滑剤溜まり22のすきま
の狭い潤滑剤供給路25の方に自然に集められる。この
ようにスピンドルモータを組み立てると、軸受すきまに
気泡の残留が少ない。また、気泡の脱気をより確実にす
るために、必要により潤滑剤を注入後にスピンドルモー
タを真空槽に入れ脱気するようにしてもよい。
【0038】駆動モータMにより、被回転体である図示
しない磁気ディスクを外周部に搭載するハブ14と軸1
3とを一体的に回転駆動させると、スラスト流体軸受S
及びラジアル流体軸受Rの各動圧発生用の溝のポンピン
グ作用により、各流体軸受S,Rの軸受すきまに充填さ
れている潤滑剤に動圧が発生して、軸13はスリーブ1
2及びカウンタープレート16と非接触となり支承され
る。
【0039】回転に伴い軸受すきまに残留する気泡があ
っても、潤滑剤溜まり22に開口する空気抜き穴23を
経由してすみやかに外気に放出される。運転が長期に及
んで、軸受すきまに保持されている潤滑剤が次第に蒸発
したり飛散したりして不足してくると、潤滑剤溜まり2
2内に表面張力に基づく毛管現象で保持されている潤滑
剤が、その不足分に応じてテーパ面24に案内されつつ
すきまの狭い方に吸引され、軸受すきま内に潤滑剤が満
たされるまで補給される。すなわち、軸受すきま内の潤
滑剤の減少に伴い、潤滑剤供給路25を経由してすきま
の狭い軸受すきまに毛管現象で吸引され、潤滑剤溜まり
22のテーパ面24の表面張力が釣り合う位置で安定す
る。こうして、潤滑剤の減少分だけ自動的に潤滑剤が補
給される。
【0040】このように本実施形態によれば、潤滑剤溜
まり22のすきまがテーパ状であるから、潤滑剤は表面
張力ですきまの狭い方に吸引され、一方、組立時に巻き
込んだ残留気泡はすきまの大きな方に分離排出される。
したがって、各軸受すきまには気泡のない潤滑剤が自動
的に確実に補給されて潤滑剤溜まり22と連通し、常時
潤滑剤で満たされた状態となり、長期にわたり使用して
も信頼性の高い耐久性に優れたスピンドルモータが得ら
れる。
【0041】また、本実施形態のスピンドルモータは、
スリーブ12及びカウンタープレート16がビッカース
硬さHvが264の銅合金で構成され、スラストプレー
ト15がビッカース硬さHvが90の銅合金で構成され
ている。そして、ビッカース硬さHvが低いスラストプ
レート15の方に、前記動圧発生用の溝が設けられてい
る。
【0042】銅合金は切削性が良好であり、さらに、硬
さが低い方に前記動圧発生用の溝を加工するので、寸法
精度の確保が容易で、且つ加工性が高く量産性が優れて
いる。また、前記溝の加工により生じた前記溝周辺の微
小なばりや盛り上がり部分を、完全に除去することが可
能であるので、軸受の起動及び停止の繰り返しによるス
リーブ12及びカウンタープレート16のスラスト軸受
面12s,16sの損傷を防止できる。
【0043】次に、上記の実施形態と同様のスピンドル
モータにおいて、相手部材(スリーブ12,カウンター
プレート16)及びスラストプレート15を構成する金
属の種類を種々変更したものを用意して、起動・停止の
繰り返しによるスラスト軸受面の損傷の程度を評価する
試験を行った。使用した金属の種類と評価結果とを表1
に示す。
【0044】
【表1】
【0045】従来例である比較例1の場合は、スラスト
プレートが硬さの高いステンレス鋼で構成されていて、
しかも相手部材を構成する銅合金よりも硬いので、該相
手部材に備えられたスラスト軸受面の損傷は大きなもの
となっている。それに対して、実施例1〜7のものは、
スラストプレートと相手部材とが組成の異なる銅合金か
ら構成されていて、しかも、硬さが低い(軟らかい)ス
ラストプレートの方に動圧発生用の溝が設けられてい
る。その結果、相手部材に備えられたスラスト軸受面の
損傷は軽微で、特に、実施例2〜7のようにスラストプ
レートと相手部材とのビッカース硬さHvの差が50以
上であると、より損傷しにくく、より起動停止耐久性に
優れることが判明した。
【0046】なお、比較例2のように同一組成の銅合金
(硬さも同じ)の場合は、ともがねとなり、起動・停止
によりスラスト受面及びスラスト軸受面が損傷しやすい
ことが判明した。 〔第二実施形態〕図2は、本発明の流体軸受装置の第二
実施形態であるスピンドルモータの断面図である。な
お、図2においては、図1と同一又は相当する部分に
は、図1と同一の符号を付してある。
【0047】ベース11の中央部に立設されている円筒
部11aの内側に、ビッカース硬さHvが180以上の
銅合金製(より好ましくはビッカース硬さHvが200
以上の銅合金製)であるフランジ付円筒体状のスリーブ
12が内挿されていて、前記フランジにより一体的に固
着されている。前記銅合金としては、例えば、高力黄銅
(中越合金社製、商品名CSM−3E(ビッカース硬さ
Hv180),CSM−3ME(ビッカース硬さHv1
96),P−31BE(ビッカース硬さHv254)
等)、アルミ青銅(三菱マテリアル社製、商品名:アー
ムズブロンズ110(ビッカース硬さHv306)
等)、ベリリウム銅(ビッカース硬さHv200以上)
等があげられる。
【0048】そのスリーブ12に中空状の軸13が挿通
されている。軸13は、内周面に雌ねじ13fが形成さ
れており、上端部には浅い逆カップ状のハブ14が一体
に固着されている。なお、軸13は中空状ではなく棒状
でもよい。ベース11の円筒部11aの外周にはステー
タ18が固定され、ハブ14の内周面に固定されたロー
タ磁石19とギャップを介して周面対向して駆動モータ
Mを形成している。
【0049】そして、スリーブ12の下端より突き出た
軸13の下端には、円板状のスラストプレート15が固
定されている。本実施形態の場合、スラストプレート1
5は軸13の内周面に設けられた雌ねじ13fに螺合し
た止めねじ20により取り付けられている。そしてこの
スラストプレート15の下面は、ベース11に取り付け
たカウンタープレート16の上面と対向し、停止時には
両対向面同士が当接している。なお、このスラストプレ
ート15が、本発明の構成要件たるフランジ部に相当す
る。
【0050】カウンタープレート16の中央部(軸13
の真下の位置)には、止めねじ20の頭部20aを収納
する凹部16aが設けてある。そうすれば、止めねじ2
0をスラストプレート15に没入した形態で取り付ける
必要がなく、スラストプレート15の加工が容易とな
る。なお、スラストプレート15を固定する止めねじ2
0を頭部20aが没入した形態で取り付けたり、スラス
トプレート15を軸13に圧入して固着するなどした場
合は、凹部16aは設ける必要はない。ただし、スラス
トプレート15を軸13に圧入して固着した場合は、抜
け荷重がスラストプレート15の材質の縦弾性係数によ
り制約されるので、ねじ止めの方が耐衝撃性を確保する
のに適している。
【0051】スラストプレート15の上下の両平面はス
ラスト受面15sとされる。そして、上面側のスラスト
受面15sに対向する一方の相手部材であるスリーブ1
2の下端面及び下面側のスラスト受面15sに対向する
他方の相手部材であるカウンタープレート16の上面
が、それぞれスラスト軸受面12s及び16sとされ
て、相対するスラスト受面とスラスト軸受面との少なく
とも一方に、例えばヘリングボーン状の動圧発生用の溝
(図示せず)を備えてスラスト流体軸受Sを構成してい
る。
【0052】一方、軸13の外周面には、軸方向に間隔
をおいて上下に一対のラジアル受面13rが形成される
と共に、このラジアル受面13rに対向するラジアル軸
受面12rがスリーブ12の内周面に形成されている。
そして、ラジアル軸受面12rに例えば、くの字状のヘ
リングボーン状の動圧発生用の溝17を備えて、ラジア
ル流体軸受Rが構成されている。このラジアル流体軸受
Rの動圧発生用の溝17を、溝長さが外側より内側の方
が僅かに短い内向き非対称溝パターンにしておくと、回
転中に軸受すき間内の潤滑剤が外部に流出する現象を防
止できる。
【0053】なお、動圧発生用の溝17は、ラジアル受
面13rに設けてもよいし、ラジアル軸受面12rとラ
ジアル受面13rとの両方に設けてもよい。また、スピ
ンドルモータのトルクを小さくするために、上下2つの
ラジアル流体軸受R,Rに挟まれたスリーブ12の内周
面(又は軸13の外周面あるいはスリーブ12の内周面
と軸13の外周面との双方でもよい)に、ラジアル流体
軸受Rの軸受すき間に向かってすき間が狭くなるテーパ
状の周溝からなる逃げ溝21を設けている。
【0054】さらに、スリーブ12の外周面と円筒部1
1aの内周面との間には、円環状のすき間が介在してい
て、そのすき間が潤滑剤溜まり22を形成している。こ
の潤滑剤溜まり22の上部には、外気と連通する空気抜
き穴23が開口している。空気抜き穴23は、潤滑剤溜
まり22の最上部から垂直に延び、スリーブ12の上端
面に開口している。もちろん、空気抜き穴23は、円筒
部11aのスリーブ12とのはめあい面に軸方向のスリ
ットを形成するようにして設けてもよい。
【0055】また、潤滑剤溜まり22の内面を形成する
円筒部11aの内周面は、下方のスラスト流体軸受Sに
向かってすき間が狭くなるテーパ面24とされている。
もっとも、テーパ面24は必ずしも円筒部11aの内周
面に形成するとは限らず、スリーブ12の外周面に形成
してもよく、あるいはスリーブ12の外周面と円筒部1
1aの内周面との双方に形成してもよい。なお、テーパ
面24は、カウンタープレート16の位置するところま
でテーパ状となっていてもよい。
【0056】そして、潤滑剤溜まり22の下部の流体軸
受に近接して連通する部分は、軸受すき間とほぼ等しい
か、又は僅かに大きいすき間を有する潤滑剤供給路25
とされ、表面張力に基づく毛管現象により潤滑剤が前記
軸受すき間に導入されやすいようになっている。当該ス
ピンドルモータへの潤滑剤の注入は、全体を組み立てた
後に、カウンタープレート16の中心に設けた厚み方向
の通し穴からなる貫通穴26から行われる。注入された
潤滑剤は、表面張力によりスラスト流体軸受S及びラジ
アル流体軸受Rの各軸受すき間を満たすとともに、余分
な潤滑剤は潤滑剤溜まり22に溜まって、そのテーパ面
24に表面張力に基づく毛管現象により保持される。し
たがって、輸送時や使用時にスピンドルモータが倒置さ
れたとしても、潤滑剤溜まり22内の潤滑剤が外部に流
出することはない。
【0057】また、潤滑剤溜まり22のすき間の大きさ
が、テーパ面24により下方の潤滑剤供給路25に向か
って狭くなっているため、外部衝撃で飛散した潤滑剤
も、外部に流出しない限りは潤滑剤溜まり22のすき間
の狭い潤滑剤供給路25の方に自然に集められる。スピ
ンドルモータに潤滑剤を注入した後、貫通穴26にボー
ル27を圧入することにより、該貫通穴26を密封して
いる。なお、ボール27は円筒部材等でもよい。
【0058】このようにスピンドルモータを組み立てる
と、軸受すきまに気泡の残留が少ない。また、気泡の脱
気をより確実にするために、必要により潤滑剤を注入後
にスピンドルモータを真空槽に入れ脱気するようにして
もよい。なお、外部衝撃により圧入したボール27の脱
落やボール圧入部のすきまからの油もれを防止するため
に、ボール27の圧入後にカウンタープレート16の外
側にシート部材や粘着シール部材等を接着してもよい
(図示せず)。
【0059】駆動モータMにより、被回転体である図示
しない磁気ディスクを外周部に搭載するハブ14と軸1
3とを一体的に回転駆動させると、スラスト流体軸受S
及びラジアル流体軸受Rの各動圧発生用の溝のポンピン
グ作用により、各流体軸受S,Rの軸受すき間に充填さ
れている潤滑剤に動圧が発生して、軸13はスリーブ1
2及びカウンタープレート16と非接触となり支承され
る。
【0060】回転に伴い軸受すき間に残留する気泡があ
っても、潤滑剤溜まり22に開口する空気抜き穴23を
経由してすみやかに外気に放出される。運転が長期に及
んで、軸受すき間に保持されている潤滑剤が次第に蒸発
したり飛散したりして不足してくると、潤滑剤溜まり2
2内に表面張力に基づく毛管現象で保持されている潤滑
剤が、その不足分に応じてテーパ面24に案内されつつ
すき間の狭い方に吸引され、軸受すき間内に潤滑剤が満
たされるまで補給される。すなわち、軸受すき間内の潤
滑剤の減少に伴い、潤滑剤供給路25を経由してすき間
の狭い軸受すき間に毛管現象で吸引され、潤滑剤溜まり
22のテーパ面24の表面張力が釣り合う位置で安定す
る。こうして、潤滑剤の減少分だけ自動的に潤滑剤が補
給される。
【0061】このように本実施形態によれば、潤滑剤溜
まり22のすき間がテーパ状であるから、潤滑剤は表面
張力ですき間の狭い方に吸引され、一方、組立時に巻き
込んだ残留気泡はすき間の大きな方に分離排出される。
したがって、各軸受すき間には気泡のない潤滑剤が自動
的に確実に補給されて潤滑剤溜まり22と連通し、常時
潤滑剤で満たされた状態となり、長期にわたり使用して
も信頼性の高い耐久性に優れたスピンドルモータが得ら
れる。
【0062】このような本実施形態のスピンドルモータ
は、スリーブ12がビッカース硬さHvが180以上の
銅合金(より好ましくはビッカース硬さHvが200以
上の銅合金)で構成され、スリーブ12の内周面にヘリ
ングボーン状の溝である複数の動圧発生用の溝17が加
工されている。スリーブ12の内周面に溝加工するの
は、量産性に優れたボール転造等の塑性加工により溝を
加工するためである。ボール転造は、軸の外周にはめ合
わせた中空状の外筒に複数個の鋼球を保持させた転造治
具を、スリーブに押し込むことによって加工する方法で
ある。すなわち、スリーブを旋盤上で切削加工した後、
旋盤の主軸をゆっくり正逆回転させながら転造治具をス
リーブに押し込むことにより内周面にヘリングボーン状
(くの字状)の溝加工を行い、その後に溝周辺の盛り上
がり部分を除去する仕上げ切削やボール通しなどの仕上
げ加工を必要に応じて行う。もちろん旋盤上でなく、転
造装置を用いて転造治具を左右に正逆回転させながら固
定されたスリーブに押し込み、ヘリングボーン状の溝を
転造加工してもよい。
【0063】ビッカース硬さHvが180以上の銅合金
(より好ましくはビッカース硬さHvが200以上の銅
合金)からなるスリーブ12の内周面に、ボール転造で
動圧発生用の溝17を加工する場合、快削黄銅(ビッカ
ース硬さHv150程度)に比べて硬さが高いために加
工が難しい。したがって、溝17の深さを従来よりも浅
く、2〜10μmの範囲に、好ましくは2〜6μmに設
定することが必要である。そうすれば、溝加工が比較的
容易でしかも軸受性能のよい流体軸受が得られる。
【0064】また、起動停止耐久試験の結果から、スリ
ーブ12を構成する銅合金の硬さをビッカース硬さHv
で300以上とすると、ラジアル流体軸受Rの起動停止
耐久性を著しく高めることができることが判明した。さ
らに、銅合金をベリリウム銅とし、時効硬化処理等を施
してビッカース硬さHvを350以上とすると、ラジア
ル流体軸受Rの起動停止耐久性をより高めることができ
ることが判明した。
【0065】ただし、銅合金の硬さが高くなると、動圧
発生用の溝を塑性加工した際に生じる該溝周辺の盛り上
がり部分を、ボール転造により除去することが困難にな
るので、旋盤により前記盛り上がり部分を切削除去する
必要がある。すなわち、旋盤上でスリーブ12を所定寸
法に切削した後、その内周面に溝加工を行い、その後に
該溝周辺の盛り上がり部分を前記旋盤上で切削除去す
る。そうすれば、スリーブ12の内周面の形状精度を容
易に確保でき、且つ内外径の同軸度や寸法精度の良好な
スリーブ12を得ることができる。
【0066】なお、銅合金をベリリウム銅とし、時効硬
化処理を施してビッカース硬さHvを350以上とする
場合には、予めボール転造によりスリーブ12の内周面
に溝加工を行った後に、時効硬化処理を施して硬さを高
くしてもよい。そうすれば、スリーブ12の加工が容易
で量産性に優れるので好ましい。その際、時効硬化処理
(例えば、315℃で2時間保持)を行うと、材料の収
縮のために寸法が変化するので、予め所定の寸法変化を
見込んで切削仕上げ加工しておく必要がある。すなわ
ち、例えば内径寸法は、時効硬化処理による収縮量を見
込んで予め大きく加工しておき、そこに溝加工や必要に
応じて溝周辺の盛り上がりを除去する加工を行う。な
お、時効硬化処理による内径寸法変化は0.06%程度
であるので、溝深さの変化に及ぼす影響は実用上無視で
きる。
【0067】軸13の材質は、硬さが高くて耐食性に優
れた材料であれば特に限定されるものではないが、例え
ばマルテンサイト系のステンレス鋼やオーステナイト系
ステンレス鋼に熱処理を施して表面を硬化させたもの
や、あるいはメッキやDLC(ダイヤモンドライクカー
ボン)膜による表面処理を行って表面を硬化させたもの
があげられる。また、スラストプレート15の材質に
は、コイニングにより塑性加工しやすい銅合金が適して
いる。
【0068】なお、カウンタープレート16もビッカー
ス硬さHvが180以上の銅合金(より好ましくはビッ
カース硬さHvが200以上の銅合金)で構成すると、
スラスト流体軸受Sの起動停止耐久性が向上する。ただ
し、駆動モータMのロータ磁石19とステータ18の軸
方向の位置をずらせて吸引力を作用(図2における上向
きに吸引力を作用させる)させ、スリーブ12の端面
(スラスト軸受面12s)にアキシアル荷重の大半を受
けもたせるように設計しておくと、カウンタープレート
16側には負荷がほとんど作用しないので、カウンター
プレート16の材質にはビッカース硬さHvが180以
上の銅合金に限らず快削黄銅,鉛青銅鋳物,リン青銅等
の通常の銅合金を使用することができる。
【0069】また、前記潤滑剤は酸化防止剤を0.1〜
5wt%添加したものであることが好ましい。なぜな
ら、本実施形態のスピンドルモータについて長期連続回
転耐久試験を行ったところ、潤滑剤(例えば、DOS,
DOA,DIDA等のジエステル油や、これらのうち2
種以上を混合したもの)が銅合金と反応して前記潤滑剤
が変色したり劣化したりするという問題が発生したから
である。前記潤滑剤に酸化防止剤を0.1〜5wt%添
加すれば、銅合金との反応を抑制できるとともに、高温
時の蒸発による潤滑剤の減量を抑えることが可能であ
る。
【0070】酸化防止剤としては、例えば、イルガノッ
クス,フェノール系酸化防止剤(例えば、ヒンダードフ
ェノール化合物等)等があげられる。また、その添加量
が0.1wt%未満であると上記の添加効果が不十分と
なり、5wt%を越えると潤滑剤の粘度がベース油(基
油)と異なる粘度となってしまうという問題が生じるお
それがある。
【0071】以上説明したように、本実施形態のスピン
ドルモータによれば、加工性が良好で且つ硬さが高く摺
動性に優れたビッカース硬さHvが180以上の銅合金
(より好ましくはビッカース硬さHvが200以上の銅
合金)でスリーブ12を構成したので、量産性に優れ低
コストであるうえ、起動停止耐久性に優れている。ま
た、動圧発生用の溝の深さを2〜10μmとしたので、
ボール転造等の塑性加工による動圧発生用の溝17の加
工が容易である。
【0072】さらに、銅合金で構成されるスリーブ12
のビッカース硬さHvを300以上、より好ましくは3
50以上とすると、起動停止耐久性をさらに向上するこ
とができる。 〔第三実施形態〕第三実施形態のスピンドルモータの構
成は、スリーブ12がベリリウム銅で構成されている点
を除いては、第二実施形態のスピンドルモータの構成と
同様であるので、その説明は省略する。
【0073】このような本実施形態のスピンドルモータ
は、スリーブ12がベリリウム銅で構成され、スリーブ
12の内周面にヘリングボーン状の溝である複数の動圧
発生用の溝17が加工されている。スリーブ12の内周
面に溝加工するのは、量産性に優れたボール転造等の塑
性加工により溝を加工するためである。ベリリウム銅か
らなるスリーブ12の内周面に、ボール転造で動圧発生
用の溝17を加工する場合、ベリリウム銅は時効硬化処
理前でもビッカース硬さHvが210〜270程度であ
り、快削黄銅(ビッカース硬さHv150程度)に比べ
て硬さが高いために加工が難しい。したがって、溝17
の深さを従来よりも浅く、2〜8μmの範囲に、好まし
くは2〜6μmに設定することが必要である。
【0074】ベリリウム銅からなるスリーブ12の場
合、動圧発生用の溝17の溝深さを2〜6μmとする
と、溝加工が比較的容易でしかも軸受性能の良い流体軸
受が得られる。また、起動停止耐久試験の結果から、ベ
リリウム銅からなるスリーブ12に時効硬化処理を施し
て、ビッカース硬さHvを300以上、好ましくは35
0以上とすると、ラジアル流体軸受Rの起動停止耐久性
が著しく向上することが判明した。ただし、前述の第二
実施形態の場合と同様の理由により、予めボール転造に
よりスリーブ12の内周面に溝加工を行った後に、時効
硬化処理を施して硬さを高くするようにすれば、加工が
容易で量産性に優れるので好ましい。
【0075】その際、時効硬化処理(例えば、315℃
で2時間保持)を行うと、材料の収縮のために寸法が変
化するので、前述の第二実施形態の場合と同様に、予め
所定の寸法変化を見込んで切削仕上げ加工しておく必要
がある。軸13の材質は、硬さが高くて耐食性に優れた
材料であれば特に限定されるものではないが、例えばマ
ルテンサイト系のステンレス鋼やオーステナイト系ステ
ンレス鋼に熱処理を施して表面を硬化させたものや、あ
るいはメッキやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)
膜による表面処理を行って表面を硬化させたものがあげ
られる。なお、オーステナイト系ステンレス鋼や硬さの
高いスリーブ12と異なる組成の銅合金を用いると、ベ
リリウム銅との熱膨張係数が近いので、高温でも軸受す
きまの変化が少ないという利点がある。また、スラスト
プレート15の材質には、コイニングにより塑性加工し
やすい銅合金が適している。
【0076】なお、カウンタープレート16もベリリウ
ム銅で構成すると、スラスト流体軸受Sの起動停止耐久
性が向上する。ただし、駆動モータMのロータ磁石19
とステータ18の軸方向の位置をずらせて吸引力を作用
(図2における上向きに吸引力を作用させる)させ、ス
リーブ12の端面(スラスト軸受面12s)にアキシア
ル荷重の大半を受けもたせるように設計しておくと、カ
ウンタープレート16側には負荷がほとんど作用しない
ので、カウンタープレート16の材質にはベリリウム銅
に限らず快削黄銅,鉛青銅鋳物,リン青銅等の通常の銅
合金を使用することができる。
【0077】以上説明したように、本実施形態のスピン
ドルモータによれば、加工性が良好で且つ硬さが高く摺
動性に優れたベリリウム銅でスリーブ12を構成したの
で、量産性に優れ低コストであるうえ、起動停止耐久性
に優れている。また、動圧発生用の溝の深さを2〜8μ
mとしたので、ボール転造等の塑性加工による動圧発生
用の溝17の加工が容易である。
【0078】さらに、ベリリウム銅で構成されるスリー
ブ12のビッカース硬さHvを300以上とすると、起
動停止耐久性をさらに向上することができる。特に、ボ
ール転造等の塑性加工により動圧発生用の溝17を設け
た後に、時効硬化処理等によりビッカース硬さHvを3
00以上とすると、加工性すなわち量産性が損なわれる
ことなく起動停止耐久性を高めることができる。
【0079】〔第四実施形態〕図3は、本発明の流体軸
受装置の第四実施形態であるスピンドルモータの断面図
である。ベース101の円筒部101aにスリーブ10
2が固着されている。そのスリーブ102に軸103が
回転自在に挿通され、軸103の上端に一体的にカップ
状のハブ(ロータ)104が圧入固定されていて、軸1
03とスリーブ102との間には動圧流体軸受部が介在
している。すなわち、軸103の下端には円板状のスラ
ストプレート105が圧入等の手段で固着されていて、
スラストプレート105の両平面がスラスト流体軸受S
のスラスト受面105sとされている。
【0080】そして、上面側のスラスト受面105sに
は一方の相手部材であるスリーブ102の下端面が対向
して、スラスト流体軸受Sのスラスト軸受面102sと
されている。一方、スラストプレートの下方には、他方
の相手部材であるカウンタープレート106が配置さ
れ、ベース101に固定されている。このカウンタープ
レート106の上面がスラストプレート105の下面側
のスラスト受面105sに対向して、スラスト流体軸受
Sのスラスト軸受面106sとされている。
【0081】上記スラスト受面105sとスラスト軸受
面106sとの少なくとも一方に、図示されないヘリン
グボーン状又はスパイラル状の動圧発生用の溝を備えて
スラスト流体軸受Sが構成されている。このスラスト流
体軸受Sの構成部材であるスリーブ102,軸103、
スラストプレート105,カウンタープレート106等
の材質については後述する。
【0082】軸103の外周面には、上下に離して一対
のラジアル受面103rが形成されされている。また、
このラジアル受面103rに対向させて、スリーブ10
2の内周面にラジアル軸受面102rが形成されてい
る。そして、ラジアル受面103rとラジアル軸受面1
02rとの少なくとも一方に、例えばヘリングボーン状
の動圧発生用の溝107を備えて、ラジアル流体軸受R
が構成されている。
【0083】ベース101の円筒部101aの外周には
積層ケイ素鋼板と巻き線とを有するステータ108が固
定され、ハブ104の内周面下側に固定されているロー
タ磁石109とギャップを介して周面対向して駆動モー
タMを形成しており、軸103とハブ104とが一体的
に回転駆動される。軸103が回転すると、スラスト流
体軸受Sとラジアル流体軸受Rの各動圧発生用溝のポン
ピング作用で各流体軸受の軸受すきまの潤滑剤に動圧が
発生して、軸103はスリーブ102及びカウンタープ
レート106と非接触となり支承される。
【0084】この実施形態では、スラスト流体軸受Sを
構成する部材の材質を次のように選定している。スラス
トプレート105のスラスト受面105sに対向するス
ラスト軸受面106sを有する相手部材であるカウンタ
ープレート106の材質は、例えばベリリウム銅,ステ
ンレス鋼又はセラミック等、加工コストは高くなるが硬
さの高いものを用いることができる。これに対して、ス
ラスト軸受面102sを有する他の相手部材であるスリ
ーブ102の材質は、従来通り加工性のよい快削黄銅の
ままでよい。
【0085】その理由は、次の通りである。ノート型パ
ソコン用HDDの場合、実使用状態では机に置いて使用
する。そこで、起動停止時に主に接触してアキシアル荷
重が作用するのは、図3のスラストプレート105の下
側のスラスト軸受面105sである。従って、この部分
に加工コストが多少高くても起動停止耐久に優れた硬さ
が高く摺動性のよい材質を用いれば、実用寿命は問題が
ない。しかも、他方の相手部材の方には、より低コスト
の材料を使用して可及的にコストダウンを図ることがで
きる。
【0086】もっとも、硬さが高く摺動性のよい材質を
使用する代わりに、表面処理を施してもよい。例えば、
カウンタープレート106の材質には、硬さは低いが快
削性がよく加工しやすい快削黄銅,リン青銅,鉛青銅鋳
物やアルミ合金を用い、その表面(スラスト軸受面10
6s)に加工コストは高くなるが硬さが高く摺動性のよ
いニッケルメッキやDLC(ダイヤモンドライックカー
ボン)膜をコーティングするものであり、同じく可及的
にコストダウンを図りつつ長い実用寿命が得られる。
【0087】表面処理の厚さとしては、軸受面の寸法精
度のばらつきを少なくするために、厚さ3μm以内とす
ることが好ましい。このようにすると、厚さのばらつき
が膜厚さの1/3あっても、寸法精度のばらつきを1μ
m以内に抑えることができ、軸受性能に及ぼす影響が少
ない。 〔第五実施形態〕図4は、本発明の流体軸受装置の第五
実施形態であるスピンドルモータの断面図である。な
お、図4においては、図3と同一又は相当する部分に
は、図3と同一の符号を付してある。
【0088】この実施形態では、スリーブ102が外側
スリーブ102aと内側スリーブ102bとの二重構造
になっている。外側スリーブ102aはベース101に
一体に立設され、その内周面にフランジ付円筒状の内側
スリーブ102bがそのフランジ部で固着されている。
また、ハブ104の内壁に取り付ける駆動モータMのロ
ータ磁石109の位置を、外側スリーブ102aの外壁
に固定されたステータ108に対して、下方に若干オフ
セットしておき、ベース101に対してハブ104を上
側に磁力で吸引するようにしている。このため、起動停
止時には、装置の使用姿勢に関係なく、スリーブ102
の下端面のスラスト軸受面102sとスラストプレート
105の上側スラスト受面105sとが主として接触摺
動する。
【0089】このようにすると、内側スリーブ102b
に硬さが高く摺動性のよいベリリウム銅等を用いるか、
又は、硬さは低いが加工しやすい銅合金,リン青銅,鉛
青銅鋳物等を用いると共にその表面(特に起動停止時に
接触してアキシアル荷重が作用するスラスト軸受面10
2s)に加工コストは高くなるが硬さが高く摺動性のよ
いニッケルメッキやDLC膜をコーティングすること
で、起動停止の繰り返しによる摩耗を低減させて寿命を
延長できる。特に、内側スリーブ102bに時効硬化処
理したベリリウム銅を用いると、硬さがHvで200以
上を確保でき、起動停止時の摩耗がスラスト軸受面10
2sのみならず、ラジアル軸受面102rでも少なくで
きることが判明した。
【0090】なお、ベリリウム銅の時効硬化処理は、素
材のときに実施してもよいが、硬さが高くて内側スリー
ブ内径に転造で動圧発生用の溝を形成しようとすると加
工しにくいので、時効硬化処理前にあらかじめ所定の収
縮量を見越した寸法に仕上げ加工しておき、時効硬化処
理後に所定の寸法精度に入るようにすると、加工が容易
で量産性に優れる。
【0091】一方、外側スリーブ102aはベース10
1と一体として、切削性や量産性に優れ加工コストの安
いアルミ合金,アルミダイカスト,マグネシウム合金,
マグネシウム射出成形品,銅合金,プラスチック射出成
形品等を用いることができる。すなわち、この第五実施
形態の場合、内側スリーブ102bには、加工性は多少
劣るが硬く摺動性のよい材料を用いるか、硬さは低いが
加工しやすい材料を用いると共にその表面に硬さが高く
摺動性のよい表面処理を施すことができ、外側スリーブ
102a/ベース101には摺動性を犠牲にしても加工
性に優れコストの安い材料を用いることができて、起動
停止耐久性の向上とコストダウンとを両立させることが
可能である。
【0092】なお、この実施形態では、軸103は中空
とされ、その内周面に雌ねじ110が形成されている。
そして、内側スリーブ102bを貫通して突き出た軸下
端面に、円板状のスラストプレート105が、雌ねじ1
10に螺合した止めねじ111で固定されている。ねじ
止め構造にすると、軸にスラストプレートを圧入して固
着する構造(図3参照)に比べて、軸とスラストプレー
トとの材質の違いや、固着部分の表面精度に影響されず
に抜け荷重が確保できるため、強度及び信頼性に優れる
利点がある。また、スラストプレート105のスラスト
受面105sに動圧発生用の溝をコイニングで加工する
にあたり、ステンレス鋼より成形圧力が低くて成形性の
よい銅系材料を使用することができる利点もある。
【0093】この実施形態の場合、スラストプレート1
05の下方の相手部材であるカウンタープレートは不要
である。ただし、ベース101には軸103の真下の位
置に、止めねじ111の頭部を収納する貫通穴112を
設けている。このように貫通穴112を設けると、組立
後でも流体軸受部への潤滑剤の注入が容易となる。この
場合、磁気ディスク装置(図4に一点鎖線で表されてい
る)に組み込んだとき、貫通穴112を通り抜けて外部
から軸受内部にゴミが侵入しないように、ベース101
の底面にカバープレート113を固着して蓋している。
また、スピンドルモータ使用中の温度変化により、貫通
穴112の空間の空気が膨張するなどして内圧が変化す
ると軸受すき間内に保持される潤滑剤が押し出される可
能性があるので、これを防ぐために、貫通穴112の空
間及びベース101とカバープレート113との間の空
間114を磁気ディスク装置内に連通させる通気穴11
5がベース101に設けられている。
【0094】なお、例えば潤滑剤の注入を真空中で行
い、しかも軸103とハブ104の固着を軸受組立後に
行うようにすれば、必ずしも貫通穴112を設ける必要
はない。貫通穴112を設けない場合は、スラストプレ
ート105を固定する止めねじの頭が突出しないように
固定したり、あるいはスラストプレート105を軸10
3に圧入して固着するなどの工夫が必要である。
【0095】なおまた、内外二重構造のスリーブ102
において、内側スリーブ102bと外側スリーブ102
aとの間は、円環状の潤滑剤溜まり116になってお
り、その下端側の潤滑剤供給通路117がスラスト流体
軸受Sとラジアル流体軸受Rとの間に開口している。潤
滑剤供給通路117の開口の大きさは、各流体軸受の軸
受すきまと等しいか、わずかに大きい程度で、表面張力
に基づく毛管現象により潤滑剤を保持するようにしてい
る。潤滑剤供給通路117の上端側は、内側スリーブ1
02bのフランジで閉じているが、そのフランジを貫通
する空気抜き穴118を設けて外部に連通している。
【0096】また、潤滑剤溜り116を囲む外側スリー
ブ102aの内壁(又は/及び内側スリーブ102aの
外壁)はテーパ面119とされ、潤滑剤溜り116のす
きまを潤滑剤供給通路117に向かって次第に狭くなる
ようにして、軸受すき間への潤滑剤供給の円滑化を図っ
ている。その他の構成及び作用・効果は第四実施形態と
ほぼ同様である。
【0097】〔第六実施形態〕図5は、本発明の流体軸
受装置の第六実施形態であるスピンドルモータの断面図
である。第六実施形態のスピンドルモータの構成は、第
五実施形態のスピンドルモータの構成とほぼ同様である
ので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略
する。なお、図5においては、図4と同一又は相当する
部分には、図4と同一の符号を付してある。
【0098】この実施形態においては、第五実施形態と
は逆に、駆動モータMのロータ磁石109をステータ1
08に対して上方にオフセットしている。このことによ
り磁気吸引力を下向きに働かせ、起動停止時にはスラス
トプレート105の下側のスラスト受面105sとカウ
ンタープレート106のスラスト軸受面106sとを主
に摺動させるようにしている。
【0099】この場合、ベース101に固着して設けた
カウンタープレート106に、摺動性の良い硬いベリリ
ウム銅(特に時効硬化処理し、硬さHv200以上にし
たものが好ましい)やステンレス鋼等の材料を用いる
か、又は、硬さは低いが加工しやすい銅合金,リン青
銅,鉛青銅鋳物等を用いると共にその表面(特に起動停
止時に接触してアキシアル荷重が作用するスラスト軸受
面106s)に硬さが高く摺動性のよいニッケルメッキ
やDLC膜コーティング等の表面処理を施す。カウンタ
ープレート106が単純な板状であるため、複雑形状の
内側スリーブ102bの材質と異なり加工性が多少劣っ
ても摺動性に優れた材料を選ぶことができるし、あるい
はスラスト軸受面106sへの樹脂コーティング,メッ
キ,DLC膜などの表面処理が容易にできる利点があ
る。
【0100】また、スラストプレート105に硬さが低
く加工性のよい銅系材質を用いることができるから、そ
のスラスト受面105sに動圧発生用の溝をコイニング
で加工することができ、量産性に優れコストが安くなる
利点がある。また、動圧発生用の溝を硬さの低い材質側
に設けることで、硬さの高い相手部材をキズつけるおそ
れが少なくなるので、起動停止耐久性の向上の点で非常
に好ましい。
【0101】なお、スリーブ102、特に内側スリーブ
102aの材質としては、快削黄銅の代わりにリン青
銅,鉛青銅鋳物,高力黄銅,ベリリウム銅(硬さHv2
00未満の生材)等を用いてもよく、またその構造も適
宜変更してもよい。以上説明した各実施形態は本発明の
一例を示したものであって、本発明は前記各実施形態に
限定されるものではない。
【0102】例えば、前記各実施形態においては、流体
軸受装置としてスピンドルモータを例示して説明した
が、本発明は他の種々の流体軸受装置に対して適用する
ことができる。また、流体軸受の構造,空気抜き穴2
3,118や潤滑剤溜まり22,116の構造, 貫通穴
26の構造及び有無, 動圧発生用の溝パターン,スピン
ドルモータの細部の構造等に関しては、前記各実施形態
に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更可
能である。
【0103】
【発明の効果】以上のように、本発明の流体軸受装置
は、フランジ部とスリーブとを切削性の良好な銅合金で
構成したので、量産性が優れている。また、前記フラン
ジ部と前記スリーブとは、異なる組成の銅合金で構成さ
れているので、硬さが低い方に動圧発生用の溝を加工す
れば、溝の加工性が高いため量産性が優れている。それ
に加えて、前記溝の加工により生じた前記溝周辺の微小
なバリや盛り上がり部分を、完全に除去することが可能
であるので、前記フランジ部又は前記スリーブが接触す
る部材の軸受面が、軸受の起動及び停止の繰り返しによ
って損傷することを防止できる。
【0104】さらに、本発明の流体軸受装置は、ベリリ
ウム銅,高力黄銅,及びアルミ青銅等のような、加工性
及び摺動性に優れたビッカース硬さHvが180以上の
銅合金(より好ましくはビッカース硬さHvが200以
上の銅合金)で前記スリーブを構成したので、量産性に
優れ低コストであるうえ、起動停止耐久性も優れてい
る。
【0105】さらに、本発明の流体軸受装置は、前記ス
リーブの内周面に設けるラジアル流体軸受を構成する動
圧発生用の溝の深さを2〜10μmとしたので、加工の
容易なボール転造等の塑性加工によって前記溝を加工す
ることができる。さらに、本発明の流体軸受装置は、前
記フランジ部を軸にねじ止めによって固着したので、耐
衝撃性が優れている。
【0106】さらに、本発明の流体軸受装置は、前記ス
リーブと相手部材との材質又は硬さが互いに異なってい
る。また、前記スリーブが備える平面が、スラスト流体
軸受の流体軸受すきまを介して前記フランジ部の一方の
平面に対向し、前記相手部材が備える平面が、前記スラ
スト流体軸受の流体軸受すきまを介して前記フランジ部
の他方の平面に対向するとともに、前記スリーブの平面
及び前記相手部材の平面のうち少なくとも一方は、表面
処理を施されている。
【0107】したがって、本発明の流体軸受装置は、前
記スリーブ及び前記相手部材の両方を、硬さが高く摺動
性のよい材質としたり、高硬度で且つ良摺動性となる表
面処理を施したりするよりも、低コストでしかも実質的
に同程度の起動停止耐久性を有している。さらに、本発
明の流体軸受装置は、前記ラジアル流体軸受の流体軸受
すきま及び前記スラスト流体軸受の流体軸受すきまに、
0.1〜5wt%の酸化防止剤を含有する潤滑剤を備え
ている。
【0108】したがって、潤滑剤と銅合金との反応が生
じにくく、高温時の蒸発による潤滑剤の減量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の流体軸受装置の第一実施形態であるス
ピンドルモータの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の流体軸受装置の第二及び第三実施形態
であるスピンドルモータの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の流体軸受装置の第四実施形態であるス
ピンドルモータの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の流体軸受装置の第五実施形態であるス
ピンドルモータの構成を示す断面図である。
【図5】本発明の流体軸受装置の第六施形態であるスピ
ンドルモータの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
12,102 スリーブ 13,103 軸 15,105 スラストプレート 16 カウンタープレート 17,107 動圧発生用の溝 R ラジアル流体軸受 S スラスト流体軸受
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願2000−168399(P2000−168399) (32)優先日 平成12年6月6日(2000.6.6) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 樋口 幸雄 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 大坪 丈信 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 落合 成行 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J011 AA06 AA08 AA20 BA06 BA08 CA02 CA05 DA01 JA02 KA02 KA03 LA04 MA02 MA12 MA22 MA24 QA03 QA04 RA03 SB02 SB03 SE02 5H605 BB05 BB09 BB10 BB14 BB19 CC04 EB02 EB03 EB06 5H607 AA00 BB01 BB07 BB09 BB14 BB17 BB25 CC01 DD16 GG01 GG02 GG03 GG09 GG12 GG15

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フランジ部を有する軸と、該軸にラジア
    ル流体軸受の流体軸受すきまを介して対向するスリーブ
    と、前記フランジ部の少なくとも一方の平面にスラスト
    流体軸受の流体軸受すきまを介して対向する相手部材
    と、を備えた流体軸受装置において、 前記フランジ部と前記スリーブとを、異なる組成の銅合
    金で構成したことを特徴とする流体軸受装置。
  2. 【請求項2】 前記スリーブを構成する銅合金を、ビッ
    カース硬さHvが180以上の銅合金としたことを特徴
    とする請求項1記載の流体軸受装置。
  3. 【請求項3】 前記スリーブを構成する銅合金を、ビッ
    カース硬さHvが200以上の銅合金としたことを特徴
    とする請求項1記載の流体軸受装置。
  4. 【請求項4】 前記銅合金を、ベリリウム銅,高力黄
    銅,及びアルミ青銅のうちのいずれかとしたことを特徴
    とする請求項2又は請求項3記載の流体軸受装置。
  5. 【請求項5】 前記相手部材を銅合金で構成したことを
    特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体軸受装
    置。
  6. 【請求項6】 前記ラジアル流体軸受を構成する深さ2
    〜10μmの動圧発生用の溝を、前記スリーブの内周面
    に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記
    載の流体軸受装置。
  7. 【請求項7】 前記フランジ部を、前記軸にねじ止めに
    よって固着したことを特徴とする請求項1〜6のいずれ
    かに記載の流体軸受装置。
  8. 【請求項8】 前記スリーブと前記相手部材とは、その
    材質又は硬さが異なることを特徴とする請求項1〜7の
    いずれかに記載の流体軸受装置。
  9. 【請求項9】 前記スリーブが備える平面が、前記スラ
    スト流体軸受の流体軸受すきまを介して前記フランジ部
    の一方の平面に対向し、前記相手部材が備える平面が、
    前記スラスト流体軸受の流体軸受すきまを介して前記フ
    ランジ部の他方の平面に対向するとともに、前記スリー
    ブの平面及び前記相手部材の平面のうち少なくとも一方
    に表面処理を施したことを特徴とする請求項1〜8のい
    ずれかに記載の流体軸受装置。
  10. 【請求項10】 前記ラジアル流体軸受の流体軸受すき
    ま及び前記スラスト流体軸受の流体軸受すきまに、0.
    1〜5wt%の酸化防止剤を含有する潤滑剤を充填した
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の流体
    軸受装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004079215A1 (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 動圧軸受モータ
JP2006197720A (ja) * 2005-01-13 2006-07-27 Nippon Densan Corp スピンドルモータ

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