JP2002053872A - 熱分解炉中におけるコークスの生成を鎮静するための組成物 - Google Patents

熱分解炉中におけるコークスの生成を鎮静するための組成物

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JP2002053872A JP2001227389A JP2001227389A JP2002053872A JP 2002053872 A JP2002053872 A JP 2002053872A JP 2001227389 A JP2001227389 A JP 2001227389A JP 2001227389 A JP2001227389 A JP 2001227389A JP 2002053872 A JP2002053872 A JP 2002053872A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、工業用の熱分解炉における
コークスの生成を減少させるための改善された技術を開
発することにある。 【解決手段】 本発明は、エチレン水蒸気分解装置のよ
うな熱分解炉中におけるコークスの生成を減少させ又は
防止するのに有用な組合せ物及び係る組成物を用いる方
法に関する。この組合せ物は、次式: 【化1】 の1種以上の化合物と、次の群: 【化2】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱分解(thermal
cracking)炉中におけるコークスの生成を鎮静する組成
物又は化合物の組合せ物に関する。
【0002】
【従来の技術】オレフィンの製造、特にエチレンの製造
においては、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ及びガ
ス油のような典型的な炭化水素流が熱炉中で高温におい
て熱分解(pyrolyze)される。その生成物はオレフィン
の混合物であり、これは下流で分離される。エチレンの
製造においては、典型的には、炭化水素供給物と共に水
が同時注入されて、熱伝達媒体として及びコークスのガ
ス化の促進剤としての働きをする。
【0003】コークスは、典型的には、炭化水素水蒸気
分解における少量だが技術的に重要な副生成物である。
同時注入された水からの水蒸気はコークスと反応してそ
の一部を一酸化炭素及び水素に転化させる。コークスは
蓄積する性質があるため、コークスの付着物が反応器の
壁面に堆積して、管温度を上昇させ且つ管を横切る圧力
降下を増大させる。そのため、脱コークスのためにプロ
セスの運転を停止させることが必要となる。この周期的
な運転停止は、エチレン生産において1年当たり推定2
0億ドル(の損失)をもたらす。さらに、コークス化の
量とオレフィンの収量との間には直接的な関係があり、
コークスが生成することのせいで製品であるオレフィン
の費用が犠牲になる。
【0004】工業的なエチレンの生産においては、コー
クスの生成を最少限にするために、炭化水素と共に硫化
水素(H2S)やジメチルスルフィド(DMS)又はジ
メチルジスルフィド(DMDS)のような硫黄含有化合
物を少量同時注入することがよくある。硫黄はコークス
の生成のための触媒となることが知られている活性金属
の表面を不動態化すると言われている。さらに、硫黄化
合物は、炭化水素又はコークスと水蒸気との反応によっ
て生成する一酸化炭素の生成を、ここでもまた金属表面
の触媒作用を不動態化し、且つCOを二酸化炭素(CO
2)に転化させる水性ガスシフト反応を触媒することに
よって、減少させることが知られている。COの生成量
を最少限にすることは、下流での還元操作を適切に機能
させるために必須である。
【0005】米国特許第4404087号明細書には、
分解用の管を錫(Sn)化合物、アンチモン(Sb)及
びゲルマニウム(Ge)を含有させた組成物で前処理す
ることによって炭化水素の熱分解の際のコークス生成速
度を低下させることが開示されている。
【0006】米国特許第4692234号明細書には、
Sn、Sb及びSiの組合せ物が同じ働きをすることが
開示されている。
【0007】また、2−エチルヘキサン酸のクロム及び
アンチモン化合物の混合物並びにCr−Sn組成物も、
時間重量CO選択指数によって測定してコークスの生成
を減少させると主張されている(ヨーロッパ特許公開第
134555号、1985年)。
【0008】炭化水素熱分解炉中で生成するコークスを
減少させるために、いくつかのリン及び硫黄化合物の組
合せ物(国際公開WO99/14290号パンフレッ
ト、1999年)が、Sn及びSb化合物(米国特許第
4551227号明細書及びヨーロッパ特許公開第73
3693号、1996年)と共に開示されている。
【0009】一般的に、米国特許第4507196号、
同第4511405号、同第4552643号、同第4
613372号、同第4666583号、同第4686
201号、同第4687567号、同第4804487
号及び同第5015358号の各明細書には、金属のS
n、Ti、Sb、Ga、Ge、Si、In、Al、C
u、P及びCr並びにそれらの無機及び有機誘導体は単
独で又は混合物として、炭化水素熱分解の際にコークス
を減少させるための防汚剤としての働きをすると教示さ
れている。
【0010】リン酸及び亜リン酸モノ及びジエステル又
はそれらのアミン塩は、分解させるべき供給物(例えば
エタン)と混合されたときに、添加剤なしで実施された
操作と比較して、運転長さの有意の増加を示した(米国
特許第4105540号明細書)。
【0011】分解用供給物を導入する前に炉管を高温に
おいて置換ベンゼン、ナフタレン及びフェナントンのよ
うな芳香族化合物で前処理することによって、触媒作用
によるコークス生成が減少することが示されている(米
国特許第5733438号明細書)。重質炭化水素(好
ましくは高級オレフィン)流を低級炭化水素にする前に
分解することによってコークス化が減少することが示さ
れている(米国特許第4599480号明細書)。両方
の場合において、管表面上に生成する触媒作用に対して
不活性なコークスの薄層がコークスの生成の伝播を防止
すると主張されている。
【0012】いくつかの特許明細書には、様々なSi化
合物を用いて金属管上にセラミック層を敷設し、それに
よって熱分解において生成するコークスを減少させるこ
とが開示されている。シロキサン、シラン及びシラザン
のような化合物が金属合金管上にシリカ層を堆積させる
ために用いられている(米国特許第5424095号、
同第5413813号及び同第5208069号の各明
細書)。オランダ国特許第7804585号、英国特許
第1552284号及びドイツ国特許第2819219
号の各明細書には、ケイ酸塩が単独で同じ働きをするこ
とが主張されている。殆どすべての例において、コーク
スの最少限化は、主として熱分解の早期段階の間の触媒
作用によるコークス生成についてのものである。国際公
開WO95/22588号パンフレットには、コークス
の生成を鎮静するためにケイ素化合物及び硫黄化合物を
1/1〜5/1のSi/S比で含有する混合物として用
いることが教示されている。
【0013】コークス化を減少させるための別のアプロ
ーチは、コークスの生成を触媒しないことが知られてい
る金属/金属の酸化物から成る金属表面を形成させるこ
とによって熱分解管の活性金属表面を不動態化するもの
である。High Temperature Alloys(HTA)は、65
0℃を超える高温において操作する工業的方法において
用いられるオーステナイト系ステンレス鋼の一群であ
る。これらは典型的にはCr18〜38%、Ni18〜
48%を含有し、残部がFe及び合金化用添加剤であ
る。鉄及びニッケルは、エチレン製造の際及び一般的に
炭化水素熱分解の際にフィラメント状炭素を生成させる
ための既知の触媒である。他方、クロム及びアルミニウ
ムの酸化物層は、触媒作用によるコークス生成の防止剤
であることが知られており、これらの合金を保護するた
めに用いられている。これらの酸化物を用いる保護は、
HTAの耐クリープ性のような特性及び物理的特徴が損
なわれず且つ酸化物層が炭化水素の熱分解において典型
的に遭遇する苛酷な条件に対して安定であるように注意
深く設計しなければならない。CoatAlloy(登録商標)
は、カナダ国アルバータ州所在のSurface Engineered P
roducts社によって開発された技術であり、エチレン炉
中に用いるためのHTA管内部を表面合金化するための
方法を提供する。Cr−Ti−Si及びAl−Ti−S
i配合製品がベース合金表面上にコーティングされ、熱
処理されて、拡散保護層のみを又は拡散層とその次の富
化プール層とを形成させる。両方の場合において、酸化
性ガスが通されてアルミナ及び/又はクロムがチタニア
及びシリカと共に生成することによって層を活性化させ
る。処理された管は、触媒作用によるコークス生成を有
意に減少させ、ベース合金管の炭化(carburization)
を最少限にし、耐浸蝕性及び熱衝撃抵抗性の向上を示す
と主張されている(国際公開WO97/41275、1
997年)。このコーティングの効果を試験するために
用いられたエタンガス流は、硫黄25〜30ppmを含
有していた。
【0014】エタン分解用に用いられる水蒸気中に低濃
度のヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)を用いること
によって石英及びIncoloyの両方の表面上におけるコー
クス化速度が低下することが報告されている(Industri
al & Engineering ChemistryResearch、第37巻、第3
号、第901頁、1998年)。コークス生成速度は低
下するが、見かけの活性化エネルギーは増大する。この
添加剤の有効性は、高温において低下する。このこと
は、この添加剤の主な効果が表面のコークス生成プロセ
スに対するものであることを示している。
【0015】これらの従来のアプローチは、硫黄、ケイ
素、リン等のような様々な添加剤を用いた金属不動態化
技術又はコークス化を減少させる特別な合金の利用のい
ずれかを伴うものだった。これらはすべて表面処理であ
る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、工業
用の熱分解炉におけるコークスの生成を減少させるため
の改善された技術を開発することである。コークスレベ
ルの低下はより高いエチレン収量につながり、装置のコ
ークス除去のための休止時間の短縮もまた高い生産速度
を可能にするであろう。
【0017】
【課題を解決するための手段】発明の概要 本発明は、エチレン水蒸気分解装置のような熱分解炉中
におけるコークスの生成を減少させ又は防止するのに有
用な組合せ物に関し、この組合せ物は、 (A)次式:
【化5】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールであり、xは1〜5である)の1種以上の化合物;
並びに (B)次の群:
【化6】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールである)(例えばヒドロキシルアミン)、
【化7】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールである)(例えばアルキルヒドラジン)、及び
【化8】 (ここで、RはH又はアルキルであり、R’及びR”は
1〜24個の炭素原子を有するアルキルである)(例え
ばアルキル/アリールアミンオキシド)から選択される
1種以上の化合物:から成る。
【0018】本発明はまた、エチレン又はプロピレンの
ようなオレフィン性物質の改良型製造方法であって、分
解させるべき炭化水素供給流又は水/水蒸気のような別
の供給流にこのいずれかの供給流が熱分解炉に入る前に
前記の混合物(組合せ物)を導入することによる、前記
改良型製造方法にも関する。
【0019】
【発明の実施の形態】発明の詳しい説明 エチレン炉中におけるコークスの生成については、触媒
作用によるものと触媒作用によらないものとの2つの基
本的メカニズムがある。触媒作用によるコークスの生成
においては、炭化水素が金属部位上に吸着される。金属
が炭化水素の元素状炭素への分解を触媒するにつれて、
炭素が金属粒子を介して拡散する。表面の下で炭素蒸気
の沈殿が起こり、金属粒子が表面から浮き上がる。この
拡散及び沈殿プロセスは何度も何度も起こり、その結果
炭素のフィラメント(それぞれが金属粒子を先に付けた
もの)が分解用の管の内部表面上に形成される。硫黄及
びリン誘導体は、おそらく金属表面を不動態化して炭素
フィラメントの形成をもたらす現象を減少させ又は取り
除くことによって、触媒作用によるコークス生成の量を
減少させるために用いられてきた。
【0020】触媒作用によらないコークス生成において
は、フリーラジカル反応によって炭化水素が気相中で熱
によって分解する。これらの反応の多くは、エチレン、
プロピレン等のような有用な化合物の生成をもたらす。
しかしながら、様々な組換え反応がより一層長鎖の種の
生成を結果としてもたらすことがあり、これは表面炭素
フィラメント中に捕捉されることがある。これらのコー
クス前駆物質は時間が経つにつれて成長し、完全に発達
したコークスになる。長鎖種のその他の部分は反応器か
ら出ていって冷却用区画において凝縮することがある。
これらの触媒作用によらない反応の最終結果は、追加の
コークス及び/又は重質縮合物の生成であり、これらは
共にエチレンを減少させる働きをする。
【0021】従来の技術は、金属表面を不動態化するこ
とによって触媒作用によるコークスの生成を防止するこ
とのみに取り組んでいた。本発明は、触媒作用によるコ
ークスの生成及び触媒作用によらないコークスの生成の
両方に取り組むものである。このアプローチは、全体と
してのコークスの生成を従来報告されていたものよりも
低いレベルのものにし、工業的な装置についての休止時
間の短縮を結果としてもたらすだろう。
【0022】最も広い意味において、本発明は、触媒作
用によるコークスの生成を減少させるための金属の不動
態化のための表面処理と気相でのコークスの生成の減少
とを組み合わせたものである。かくして、金属表面を不
動態化することが知られている任意の化合物と、フェノ
ール誘導体、メルカプタン、ヒドラジン、ホスフィン等
のようなフリーラジカルを捕捉する(scavenge)ことが
知られている化合物との組合せが本発明の範囲内とな
る。また、硫黄含有ヒドロキシルアミン誘導体のような
上記の両方の機能を含む単一の化合物も包含されるべき
である。
【0023】本発明はまた、エチレン又はプロピレンの
ようなオレフィン性物質の改良型製造方法であって、分
解させるべき炭化水素供給流又は水/水蒸気のような別
の供給流にこのいずれかの供給流が熱分解炉に入る前に
前記の成分(組合せ物)を導入することによる、前記改
良型製造方法にも関する。
【0024】本発明において有用な硫黄含有化合物は、
次式:
【化9】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールであり、xは1〜5である)を有する。
【0025】かかる化合物の例には、H2S、メチルメ
ルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタ
ン、ブチルメルカプタン及びそれらより高級のメルカプ
タン、アリールメルカプタン、ジメチルスルフィド、ジ
エチルスルフィド、非対称スルフィド、例えばメチルエ
チルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジス
ルフィド、メチルエチルジスルフィド、それらより高級
のジスルフィド、ジスルフィドの混合物、例えばメロッ
クス(merox)、炭化水素流中に天然に存在する硫黄化
合物、例えばチオフェン、アルキルチオフェン、ベンゾ
チオフェン、ジベンゾチオフェン、ポリスルフィド、例
えばt−ノニルポリスルフィド、t−ブチルポリスルフ
ィド、フェノール並びにホスフィンが包含される。ジメ
チルジスルフィドのようなアルキルジスルフィドが好ま
しく、ジメチルスルフィドが特に好ましい。好ましい物
質範囲は、炭化水素供給流に対して5ppm〜1000
ppmであり、25〜500ppmであるのがより一層
好ましく、100〜300ppmであるのが特に好まし
い。硫黄含有化合物対フリーラジカル捕捉用成分の比
は、1:0.1(重量/重量)〜1:100の範囲であ
る。
【0026】成分Bの化合物は、次の式を有する群から
選択される:
【化10】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールである)(例えばヒドロキシルアミン);
【化11】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
ールである)(例えばアルキルヒドラジン);及び
【化12】 (ここで、RはH又はアルキルであり、R’及びR”は
1〜24個の炭素原子を有するアルキルである)(例え
ばアルキル/アリールアミンオキシド)。
【0027】かかる化合物の例には、ヒドロキシルアミ
ン、モノイソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒ
ドロキシルアミン、ジブチルヒドロキシルアミン、ヒド
ラジン、メチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、トリ
エチルアミンオキシドが包含される。ヒドラジンが好ま
しく、ヒドロキシルアミンがより一層好ましく、ジエチ
ルヒドロキシルアミンが最も好ましい。好ましい物質範
囲は、炭化水素供給流に対して5ppm〜1000pp
mである。25〜500ppmであるのがより一層好ま
しく、100〜300ppmであるのが特に好ましい。
この物質対硫黄含有成分の比は、1:0.1(重量/重
量)〜1:100の範囲である。
【0028】この組合せ物は、エチレン水蒸気分解器の
ような熱分解炉中におけるコークスの生成を減少させ又
は防止するのに有用である。
【0029】また、前記の組合せ物を従来技術において
報告されている様々な表面処理、前処理、特殊な合金及
び特殊な管コーティングと組み合わせて用いることも、
本発明の範囲内である。
【0030】本発明は、DMSやDMDSのような硫黄
系化学物質(これは金属表面を不動態化する)とDEH
Aのようなフリーラジカルスカベンジャー(これは新た
に生成するコークス前駆物質を捕捉することによって気
相中でのコークスの生成を防止する)との間の相乗効果
を開示する。メカニズムに依存するものではないが、前
記の化合物の間で相乗効果が示され、全体としてのコー
クス生成がいずれかの化合物を単独で用いた場合よりも
低いレベルのものになるということは、驚くべきことで
あり、予期されなかったことである。
【0031】本発明を実施するための好ましい方法は、
炭化水素供給流を炉に導入する直前にこの炭化水素供給
流中にDMS又はDMDSとDEHAとを別々に又は混
合物として一緒に同時注入するものである。最適処理レ
ベルは個々の工業用炉の操作変数に依存するであろう
が、各成分について5ppm〜1000ppmの範囲の
レベルで殆どの工業上の状況をカバーされるはずであ
る。
【0032】本発明の利点は、各成分の処理レベルをそ
れぞれの工業用装置の操作変数に応じてその工業用装置
に適応させて最適化させることができるということであ
る。
【0033】理論上は、開示された物質が炉の分解用管
に導入される前に分解されてしまうのを最少限にするの
が望ましい。かくして、炉への注入方法はこの点に対し
て大きな影響を有するように思われる。殆ど予備加熱す
ることなく迅速に注入することを可能にするシステム
は、より一層良好な結果を与えるはずである。
【0034】本発明はまた、触媒作用によるコークス生
成を減少させ又は取り除くために開発されている新規の
合金又は管コーティングの開発に関連する有用性をも有
する。
【0035】多くの炭化水素供給流は天然に存在する硫
黄化合物、例えばチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベ
ンゾチオフェン、スルフィド及びジスルフィドを含有す
る。天然に存在する硫黄化合物を前記のフリーラジカル
スカベンジャーと共に用いることは、本発明の範囲内で
ある。
【0036】
【実施例】以下の実施例は、本発明及び本発明の実施態
様を例示するためのものである。
【0037】例1 ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルジスルフィド
(DMDS)及び無水ジエチルヒドロキシルアミン(D
EHA)は、Aldrich Chemical Company社から購入し
た。研究用等級の鉄−ニッケル粉末は、Johnson Matthe
y Inc.社から得られた。
【0038】慣用のLindberg水平炉で覆い包んだ石英反
応器(内径40mm、長さ90cm)の中央部のセラミ
ック製のボート形容器の底部に粉末状Fe−Niを入れ
た。次いでこの金属粉末を10%H2−He混合物中で
600℃において1時間還元し、次いでこの反応器をヘ
リウムでパージしながら、反応器系を所望の温度にし
た。反応器へのガス流を監視し、MKS質量流制御装置で
調節した。所望の温度に達した後に、質量流制御装置を
用いることによってエタン/水蒸気(4:1)を含有さ
せた反応成分混合物を導入し、SAGEシリンジポンプを用
いてDEHA/硫黄種混合物を導入した。典型的には反
応を2時間実施し、その時間の間中、出口のガス組成を
ガスクロマトグラフィーによって分析した。反応期間の
後に、反応器を再びヘリウムでパージしながら、室温ま
で冷ました。
【0039】各試験の間に生成した触媒作用による炭素
(以下、触媒的炭素と略記する)の量を、金属粉末及び
生成した触媒的炭素を含有するセラミック製ボート形容
器を注意深く計量することによって、測定した。反応器
の壁面上及びトラップ内の残留タールは熱分解炭素と定
義され、これもまた注意深く計量した。触媒的炭素と熱
分解炭素との合計を全炭素と定義する。
【0040】下記の表に示した結果については、次の条
件を用いた。 ・エタン流量:140cc/分; ・水蒸気流量:35cc/分; ・圧力:1atm; ・反応時間:2時間; ・温度:815℃; ・Fe−Ni合金:20:80。
【0041】触媒的炭素、全炭素及びエチレンについて
の数は、全炭素収支に基づく収量を表わす。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】本明細書全体を通じて、本発明者らは、本
発明において用いられる様々な物質をある種の成分に基
づいて呼んでいるが、これらの物質は実質的にこれらの
成分を含むものであり、又はこれらの成分は少なくとも
これらの物質中の基本的な成分を構成するものである。
【0045】当業者ならば、本発明の技術思想又は範囲
から逸脱することなく本発明の組成物及び方法に対して
様々な変更及び変形を為すことができるということがわ
かるだろう。本発明のこれらの変更及び変形は、特許請
求の範囲及びそれらの均等物である限り、本発明の一部
として包含されるべきものである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン水蒸気分解装置のような熱分解
    炉中におけるコークスの生成を減少させ又は防止するの
    に有用な組合せ物であって、 (A)次式: 【化1】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
    原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
    ールであり、xは1〜5である)の1種以上の化合物;
    並びに (B)次の群: 【化2】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
    原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
    ールである)、 【化3】 (ここで、R及びR’は独立的にH、1〜24個の炭素
    原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル又はアリ
    ールである)、及び 【化4】 (ここで、RはH又はアルキルであり、R’及びR”は
    1〜24個の炭素原子を有するアルキルである)から選
    択される1種以上の化合物:から成る、前記組合せ物。
  2. 【請求項2】 オレフィン性物質の改良型製造方法であ
    って、分解させるべき炭化水素供給流又は別の供給流
    に、この供給流が熱分解炉に入る前に請求項1記載の組
    合せ物を導入することによる、前記改良型製造方法。
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