JP2002043307A - 樹脂被膜基板および樹脂被膜基板の製造方法 - Google Patents

樹脂被膜基板および樹脂被膜基板の製造方法

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JP2002043307A
JP2002043307A JP2000224982A JP2000224982A JP2002043307A JP 2002043307 A JP2002043307 A JP 2002043307A JP 2000224982 A JP2000224982 A JP 2000224982A JP 2000224982 A JP2000224982 A JP 2000224982A JP 2002043307 A JP2002043307 A JP 2002043307A
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solvent
resin film
substrate
resin
film
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Hiroyuki Yamamoto
裕之 山本
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基板の反りを防止することができる樹脂被膜
基板の製造方法と、この製造方法で製造される樹脂被膜
基板とを提供する。 【解決手段】 基板41上に樹脂成分を第1溶剤に溶解
させた流動体43を塗布し、この第1溶剤のみを揮発さ
せて、基板41上に乾燥樹脂被膜44を形成する。その
後、この乾燥樹脂被膜44の所定領域に、第2溶剤を付
着させて、乾燥樹脂被膜44にクラック51を生じさせ
る。これによって、乾燥樹脂被膜44に作用する引っ張
り応力が低減され、基板41の反りが低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂被膜が形成さ
れた基板、および樹脂被膜基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子の製造工程は、素子基板の表
面にフォトレジストやポリイミドなどからなる乾燥樹脂
被膜を形成する工程を有する。この乾燥樹脂被膜は、た
とえば保護膜として機能する。このような乾燥樹脂被膜
は、一般的に樹脂成分を溶剤に溶解させた流動体を基板
の表面上に塗布し、その後、この溶剤のみを揮発させる
ことによって形成される。このように溶剤を揮発させる
と、乾燥した樹脂被膜が収縮し、これによって基板には
引っ張り応力が生じる。したがって、基板は樹脂被膜が
形成された面を凹面にして、反ってしまうと言った問題
がある。このような基板の変形を緩和するために、基板
に生じる引っ張り応力を低減する種々の先行技術が提案
されており、その典型的な先行技術を以下に説明する。
【0003】図5は、特開平6−184767号公報に
開示される先行技術を示す図である。図5には、熱応力
緩和型のセラミックス耐熱部材7の構成が示されてい
る。Niを主成分とする耐熱合金から成る基材1上に、
Co,Ni,Cr,Al,Y(コバルト、ニッケル、ク
ロム、アルミニウムおよびイットリウム)合金被覆層で
あるメタル層2、Al23層3、および緻密な組織から
成る緻密組織ZrO2(酸化ジルコニア)系セラミック
層4をこの順番で積層し、さらに緻密組織ZrO 2系セ
ラミック層4上に柱状組織から成る柱状組織ZrO2
セラミック層5を積層して形成される。この柱状組織Z
rO2系セラミック層5は、緻密組織ZrO2系セラミッ
ク層4上に酸素イオンを照射しながらZrO2−6%Y2
3を蒸着することによって得られる。このように最表
層を柱状構造の被膜とすることによって、各セラミック
層4,5と基材1との熱膨張差による熱応力を著しく緩
和することができる。つまり、柱状構造のZrO2系セ
ラミック層5から成る被膜は、結晶の成長方向が一方向
にほぼ揃った構造、すなわち繊維強化構造を有している
ので、成長方向(図5の上下方向)に強度が大きく、成
長方向に垂直な方向(図5の左右方向)に強度が小さ
い。したがって、熱応力などによって外力が加わると、
強度の弱い方向(図5の左右方向)に微細なクラック6
が生じ、その結果外力(熱応力)の緩和作用が生じる。
【0004】また、応力に起因する基板の反りを防止す
るためには、応力の大きさが一定の場合、応力の働く面
積を小さくすると有効である。つまり、基板1の面積を
小さくして乾燥樹脂被膜を形成すると、基板1の反りを
小さくすることが可能であるが、このような小さい基板
の取り扱いは困難であり、半導体素子の製造工程数を著
しく増加させると言った問題がある。
【0005】上記の半導体素子の製造工程数を増加させ
ると言った問題を解決するとともに基板の反りを防止す
ることができる先行技術が、特開平9−17702号公
報に開示される。図6は特開平9−17702号公報に
開示される先行技術を示す図であり、(a)は平面図、
(b)は(a)の切断面線A−Aから見た断面図であ
る。この先行技術は、基板であるシリコンウェハ11上
に、引っ張り応力の原因となる被膜12を形成した後、
この被膜12に格子状の溝13を形成して応力を緩和さ
せる方法である。
【0006】さらに詳しく述べると、シリコンウェハ1
7の表面上に光学素子や光学回路を形成するためのガラ
スや強誘電体の被膜12を形成したシリコン基板14に
は、被膜12を形成した後に、シリコンウェハ11と被
膜12との熱膨張係数の違いによって、反りが生じる。
この問題を解決するために、この被膜12にダイシング
またはエッチングによって、格子状の溝13を形成す
る。つまり、被膜12によってシリコンウェハ11に一
様に作用していた応力が、溝13によって部分的に開放
され、シリコン基板14の反りを低減することができ
る。
【0007】図7は、特許第2532650号公報に開
示される先行技術を示す図である。この先行技術では、
被膜を形成する基板上に予め格子状の溝を加工しておく
ことによって、基板の反りを防止している。つまり、図
7(a)に示す石英ガラス基板21上に、ダイシングソ
ーを使用して、図7(b)に示すように格子状の溝22
を形成し、その後電気炉アニール工程および酸エッチン
グ工程を経た後、図7(c)に示すように多層被膜23
を形成する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図5に示す特開平6−
184767号公報の先行技術では、柱状構造を実現す
る材料と、この作成方法が限定されるので、ポリイミド
などのように流動体を塗布する成膜方法には適用できな
い。
【0009】また、図6に示す特開平9−17702号
公報の先行技術では、被膜12の表面から基板表面まで
にわたって深く、溝幅の大きい溝13が形成されている
ので、さらにこの上にフォトレジストなどの流動体を塗
布すると、この流動体が溝13に多く流れ込んでしまっ
て、厚みムラや乾燥ムラなどが発生する。
【0010】また、特許第2532650号公報の先行
技術では、流動体を塗布するような成膜方法では、溝2
2が流動体で埋まってしまうので、基板の反りを解消す
ることが困難であった。
【0011】したがって本発明の目的は、基板表面上に
流動体を塗布することによって、基板表面上に樹脂被膜
を形成する成膜法に適し、樹脂被膜表面に深く、溝幅の
大きい溝を形成することなく、基板に作用する引っ張り
応力を低減して基板の反りを防止することができる樹脂
被膜基板の製造方法と、この製造方法で製造される樹脂
被膜基板を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、樹脂成分を第
1溶剤に溶解させた流動体を、基板表面上に塗布し、第
1溶剤のみを揮発させることによって、基板表面上に乾
燥樹脂被膜を形成する樹脂被膜基板の製造方法におい
て、前記乾燥樹脂被膜の表面の所定領域に、第2溶剤を
付着させることによって、乾燥樹脂被膜の第2溶剤の付
着領域にクラックを生じさせ、その後付着した第2溶剤
を揮発させることを特徴とする樹脂被膜基板の製造方法
である。
【0013】本発明に従えば、樹脂成分を第1溶剤に溶
解させた流動体を、基板表面上に塗布し、その後塗布さ
れた流動体のうち、第1溶剤のみを揮発させることによ
って、基板表面上に乾燥樹脂被膜を形成する。この乾燥
樹脂被膜の表面上の所定領域に第2溶剤を付着させるこ
とによって、乾燥樹脂被膜の第2溶剤付着部分にクラッ
クを生じさせ、その後付着した第2溶剤を完全に揮発さ
せる。したがって、このクラックによって、乾燥樹脂被
膜が基板に作用する応力が開放され、基板の反りを低減
することができる。さらに、クラックを生じさせる手段
として、ダイシング法やエッチング法を使用しないの
で、乾燥脂被膜に溝幅の大きい溝が形成されることがな
く、このクラックが発生した乾燥樹脂被膜上にフォトレ
ジストなどの流動体を塗布したとき、この流動体がクラ
ックに流れ込む量が少なくて済み、厚みムラや乾燥ムラ
を防止できる。
【0014】また本発明は、前記所定領域の形状と同一
形状を有し、前記第2溶剤が含浸された浸透材を、前記
乾燥樹脂被膜の表面上に接触させることによって、乾燥
樹脂被膜の表面上に所定形状で第2溶剤を付着させるこ
とを特徴とする。
【0015】本発明に従えば、乾燥樹脂被膜の表面上に
溶剤を付着させる方法として、所定領域の形状と同一形
状を有し、第2溶剤を含浸させた浸透材を乾燥樹脂被膜
の表面上に接触させる方法を使用する。これによって、
乾燥樹脂被膜の所定領域にクラックを確実に形成するこ
とができる。これによって、乾燥樹脂被膜が基板に作用
する応力が開放され、基板の反りを低減することができ
る。
【0016】また本発明は、前記乾燥樹脂被膜の表面上
に、前記所定領域の形状と同一形状の開口部が形成され
たマスクを配置し、乾燥樹脂被膜に前記第2溶剤を噴霧
することによって、乾燥樹脂被膜の表面上に所定形状で
第2溶剤を付着させることを特徴とする。
【0017】本発明に従えば、乾燥樹脂被膜の表面上に
溶剤を付着させる方法として、乾燥樹脂被膜の表面上
に、所定領域の形状と同一形状の開口部を有するマスク
を配置し、このマスクの上から第2溶剤を噴霧する方法
を使用する。これによって、乾燥樹脂被膜の所定領域の
みに第2溶剤を付着させることができる。したがって、
乾燥樹脂被膜に所定形状のクラックを確実に形成するこ
とができ、これによって、乾燥樹脂被膜が基板に作用す
る応力が開放され、基板の反りを低減することができ
る。
【0018】また本発明は、前記乾燥樹脂被膜の表面上
に、前記所定領域の形状と同一形状の開口部が形成され
たマスクを配置し、乾燥樹脂被膜を前記第2溶剤の蒸気
にさらすことによって、乾燥樹脂被膜の表面上に所定形
状で第2溶剤を付着させることを特徴とする。
【0019】本発明に従えば、乾燥樹脂被膜の表面上に
溶剤を付着させる方法として、乾燥樹脂被膜の表面上
に、所定形状と同一形状の開口部を有するマスクを配置
した状態で、基板を第2溶剤の蒸気にさらす方法を使用
する。これによって、乾燥樹脂被膜の所定領域のみに溶
剤を付着させることができる。したがって、乾燥樹脂被
膜に所定形状のクラックを確実に形成することができ、
これによって、乾燥樹脂被膜が基板に作用する応力が開
放され、基板の反りを低減することができる。
【0020】また本発明は、前記所定領域の形状は、所
定のパターンが繰り返される形状であることを特徴とす
る。
【0021】本発明に従えば、第2溶剤が付着する所定
領域の形状を、たとえば基板上に形成された複数の半導
体素子をダイシングして半導体チップに切り分けるとき
のダイシングラインに沿うようなパターン形状とする。
これによって、乾燥樹脂被膜のクラックは、ダイシング
ラインに沿って形成されるので、このクラックが半導体
チップの中に形成される素子に影響をおよぼすことがな
い。
【0022】また本発明は、樹脂成分を第1溶剤に溶解
させた流動体を、基板表面上に塗布し、第1溶剤のみを
揮発させることによって、前記基板表面上に乾燥樹脂被
膜を形成し、前記乾燥樹脂被膜の表面上に、所定形状で
第2溶剤を付着させ、この付着した第2溶剤を揮発させ
ることによって、乾燥樹脂被膜の所定領域にクラックが
発生していることを特徴とする樹脂被膜基板である。
【0023】本発明に従えば、樹脂成分を第1溶剤に溶
解させた流動体を、基板表面上に塗布し、その後塗布さ
れた流動体のうち、第1溶剤のみを揮発させることによ
って、基板表面上に乾燥樹脂被膜を形成する。この乾燥
樹脂被膜の表面上の所定領域に、第2溶剤を付着させる
ことによって、乾燥樹脂被膜の第2溶剤付着部分にクラ
ックを生じさせ、その後、付着した第2溶剤を完全に揮
発させる。したがって、このクラックによって、乾燥樹
脂被膜が基板に作用する応力が開放され、基板の反りを
低減することができる。さらに、クラックを生じさせる
手段として、ダイシング法やエッチング法を使用しない
ので、乾燥脂被膜に溝幅の大きい溝が形成されることが
なく、このクラックを形成した乾燥樹脂被膜上にフォト
レジストなどの流動体を塗布したとき、この流動体がク
ラックに流れ込む量が少なくて済み、厚みムラや乾燥ム
ラを防止できる。
【0024】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形
態の樹脂被膜基板45の製造方法を説明するための図で
ある。まず、図1(a)に示す平坦な基板41の一表面
42上に、図1(b)に示すように、樹脂成分を第1溶
剤に溶解させた流動体43を均一に塗布する。
【0025】上記基板41は、本発明の樹脂被膜基板4
5の製造工程において、侵されることのない材料から成
るものであればよい。さらに詳しくは、流動体43を構
成する第1溶剤に溶解せず、かつ後の工程の第1溶剤を
揮発させる加熱処理に対して、充分な耐熱性を有する材
料であればよい。このような特性を有する材料として、
たとえばシリコン、石英ガラスおよびセラミックスなど
が挙げられる。また、この基板41には、形成される樹
脂被膜44に応じて、一表面42に樹脂被膜44との密
着性を向上させるための表面処理が施されていてもよ
い。
【0026】上述のように流動体43を塗布する方法と
して、公知であるスピンコート法またはアプリケート法
が好適に用いられる。スピンコート法は、基板41を回
転させながら、流動体43を塗布することによって、遠
心力で流動体43を飛散させ、基板41の一表面42上
の流動体43の厚みを均一にする方法である。
【0027】またアプリケート法は、基板41の一表面
42と一定の間隔を保持したブレードを一表面42に平
行に移動させることによって、基板41の一表面42上
に滴下した流動体43を引き延ばして、厚みが均一とな
るように塗布する方法である。このアプリケート法は、
塗布される流動体43の厚さが100μmを超える場合
に好適である。
【0028】次に、流動体43が塗布された基板41を
加熱することによって、第1溶剤だけを完全に揮発させ
る。これによって、基板41の一表面42上には、樹脂
成分のみから成る乾燥樹脂被膜44が形成される。この
第1溶剤の揮発処理は、窒素ガスなどの不活性ガスの気
流中で行われることが好ましい。また、減圧した状態で
加熱して、第1溶剤を揮発させてもよい。このとき、流
動体43中の第1溶剤が沸騰して気泡が発生しないよう
に、注意する必要がある。このようにして、基板41の
一表面42上に乾燥樹脂被膜44が形成される。上記の
ように第1溶剤を揮発させると、乾燥による体積減少に
よって、乾燥樹脂被膜44には引っ張り応力が生じ、こ
れによって基板41には、乾燥樹脂被膜44の表面46
を凹面とする反りが生じている。
【0029】次に、図1(d)に示すように、溶剤容器
47のケーシング48から外部に突出し、第2溶剤を含
浸させた浸透材49の格子形状の先端部50を乾燥樹脂
被膜44の表面46に上方から接触させて、乾燥樹脂被
膜44の表面46に、格子形状の所定領域に第2溶剤を
付着させる。これによって、この先端部50が接触した
所定領域のみに第2溶剤が付着する。このように、乾燥
樹脂被膜44の表面46の所定領域に第2溶剤を付着さ
せると、第2溶剤が付着した部分の乾燥樹脂被膜44は
一旦収縮して膜強度が弱くなる。したがって、乾燥樹脂
被膜44に生じている引っ張り応力によって、第2溶剤
の付着した部分にクラック51が生じる。なお、この第
2溶剤は、上記の第1溶剤と同一の溶剤でもよく、また
他の溶剤であってもよい。
【0030】次に、乾燥樹脂被膜44に付着および吸収
された第2溶剤を除去するために、基板41を加熱す
る。これによって、乾燥樹脂被膜44から第2溶剤が完
全に除去され、図1(e)に示す本発明の樹脂被膜基板
45が完成する。この樹脂被膜基板45には、格子形状
の所定領域にクラック51が形成されているので、部分
的に応力が緩和され、樹脂被膜基板41の反りが小さ
い。
【0031】次に、図2を参照して溶剤容器47につい
て説明する。図2は、溶剤容器47を示す図であり、
(a)は底面図、(b)は(a)の切断面線B−Bから
見た断面図である。なお断面図の都合上、溶剤容器47
は、浸透材49の先端部50を図中上向きに記している
が、この溶剤容器47は、図1(d)に示す工程で使用
される溶剤容器47と同一のものである。つまり、図1
および図2は溶剤容器47が配置される方向を規定する
ものではない。
【0032】溶剤容器47は、ケーシング48と浸透材
49とによって構成される。ケーシング48は、中空
で、かつ矩形板状の部材であり、その厚み方向一表面5
2には、略円形の領域内で、所定のパターン形状である
格子形状を有し、厚み方向一方側(図2の上方)に臨ん
で開口する開口部53が形成される。また、ケーシング
48の一表面52には、上記格子形状の開口部53に沿
って配置され、かつ厚み方向一方側(図2の上方)に立
設する立設部54が形成される。このケーシング48内
に第2溶剤を染み込ませた浸透材49が収容され、この
浸透材49の先端部50は、ケーシング48の格子形状
の開口部53からケーシング48の外部に露出する。つ
まり、先端部50の最先端55がケーシング48の立設
部54の端面56よりも、厚み方向一方側に突出してい
る。したがって、図1(d)に示す工程において、浸透
材49の先端部51から染み出た第2溶剤のみが、乾燥
樹脂被膜44に接触する構成となっている。
【0033】上記格子形状は、完成した樹脂被膜基板4
5に種々の加工、たとえば半導体素子を形成する加工な
どを施した後、この樹脂被膜基板45をダイシング加工
して、複数個の半導体チップに分割するときのダイシン
グラインに沿う形状である。つまり、図1(d)に示す
工程で形成された格子形状のクラックは、ダイシングラ
インに沿って、ダイシングラインの近傍に生じるので、
このクラックが半導体チップ内に形成された半導体素子
に影響をおよぼすことがない。
【0034】また、ケーシング48および浸透材49の
材料は、耐溶剤性に優れたものが好ましい。特に浸透材
49の材料は、耐溶剤性材料の繊維をフェルト状にした
もの、あるいは耐溶剤性の繊維で形成された不織布また
は紙などが好ましい。
【0035】上記のように構成される溶剤容器47を使
用して、図1(d)に示すように、乾燥樹脂被膜44の
表面46に、選択的に所定領域に第2溶剤を接触させる
ことによって、乾燥樹脂被膜44に、全面にわたって、
数秒で格子形状のクラック51を生じさせることができ
る。
【0036】本件発明者は、上記で説明した第1の実施
の一形態の樹脂被膜基板の製造方法に従って、具体的な
各部材を使用して、本発明の実施の一形態の樹脂被膜基
板45を作成した。その結果について、以下に説明す
る。
【0037】まず、基板41である厚さが525μm
で、直径が4インチのシリコンウェハの一表面上に、流
動体43であるフッ素化ポリイミドOPI−N205ワ
ニス(日立化成工業株式会社製)をアプリケート法によ
って、塗布した。このワニスは、ポリイミドの前駆体樹
脂成分であるポリアミック酸を、第1溶剤であるN,N
−ジメチルアセトアミドに溶解させたものである。この
ワニスの塗布厚さは、約1.3mm程度とした。次に、
このワニスが塗布されたシリコンウェハを、40kPa
の窒素気流下において、50度で約20時間、加熱保持
することによって、N,N−ジメチルアセトアミドを完
全に揮発させて、シリコンウェハの一表面上に、乾燥樹
脂被膜44であるポリアミック酸樹脂被膜(以下、PA
A樹脂被膜と略記する)を形成した。
【0038】次に、第2溶剤としてアセトンを使用し、
図1(d)に示す方法によって、PAA樹脂被膜に格子
形状のクラックを生じさせた。次に、PAA樹脂被膜に
残存するアセトンを除去するために、シリコンウェハ
を、40kPaの窒素気流下において、50度で一時間
以上、加熱保持することによって、アセトンを完全に揮
発させ、350度まで昇温し、PAA樹脂被膜45に熱
イミド化処理を施した。
【0039】上述のように作成した樹脂被膜基板45の
反りを測定した。シリコンウェハの反りを、その中心か
ら半径30mmの位置で測定した。ワニス乾燥後、つま
り図1(c)に示す工程の直後では、シリコンウェハの
反りは180μmであった。アセトンを接触させて、P
AA樹脂被膜にクラックを発生させた直後、つまり図1
(d)に示す工程の直後では、シリコンウェハの反り
は、190μmにやや増加した。熱イミド化処理を施し
た直後、つまり図1(e)に示す工程の直後では、シリ
コンウェハの反りは、50μmにまで減少した。
【0040】また、本発明の第1の実施の形態の樹脂被
膜基板の製造方法で作成した樹脂被膜基板45の反りの
低減効果を検証するために、上記と同一のシリコンウェ
ハおよびワニスを使用して、クラックを生じさせずに、
熱イミド化処理まで施した従来技術の樹脂被膜基板を作
成した。この従来技術の樹脂被膜基板の中心から半径3
0mmの位置でのシリコンウェハの反りは、400μm
であった。したがって、本件発明の第1の実施の形態の
樹脂被膜基板の製造方法で作成した樹脂被膜基板は、従
来技術の樹脂被膜基板の製造方法で作成した樹脂被膜基
板に比較して、その反りが、1/8にまで、低減される
ことが確認された。
【0041】さらに本件発明者は、上記と同様のプロセ
スで、アセトンに代えて、第2溶剤として、N,N−ジ
メチルアセトアミド(以下、DMAcと略記する。)、
N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記す
る)、イソプロピルアルコール(IPA)およびキシレ
ンを使用して、PAA樹脂被膜にクラックをを生じさせ
る実験を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】表1に示すように第2溶剤としてアセトン
を使用した場合、PAA樹脂被膜は、容易に溶解され、
かつクラックの発生も良好であった。また、第2溶剤と
してDMAcを使用した場合、PAA樹脂被膜は容易に
溶解されたが、発生したクラックは小さいものであっ
た。また、第2溶剤としてNMPを使用した場合、PA
A樹脂被膜は容易に溶解されたが、クラックの発生は確
認されなかった。DMAcおよびNMPは、良溶媒であ
るため、PAA樹脂被膜の溶解反応は速く進行するが、
これらの溶剤は揮発性が低く、長時間にわたって液滴が
PAA樹脂被膜上に残るため、発生したクラックが消滅
してしまうと考えられる。
【0044】また、第2溶剤としてIPAを使用した場
合、PAA樹脂被膜の溶解反応の進行速度が遅く、かつ
クラックの発生も確認されなかった。また、第2溶剤と
してキシレンを使用した場合、PAA樹脂被膜の溶解反
応およびクラックの発生も確認されなかった。IPAお
よびキシレンは、ワニスとの反応性が低く、クラック発
生に寄与しない結果となった。以上の結果から、PAA
樹脂被膜にクラックを発生させるためには、第2溶剤と
してアセトンを使用することが、最も効果的であること
が確認された。
【0045】また、上述したような、流動体43である
ポリアミック酸ワニスは、以下の利点を有する。第1溶
剤を揮発させて、樹脂被膜を形成する材料の中でも、ポ
リアミック酸を熱イミド化することによって得られるポ
リイミドは、300度以上の耐熱性を有するので、この
ようにして作製されたポリイミド樹脂被膜基板は、処理
温度300度までの各種処理に耐えることができる。ま
たポリイミドは、高濃度の酸およびアルカリ以外には、
侵されないので、第1,第2溶剤またはその他の溶剤で
の洗浄も可能である。
【0046】次に、図3を参照して、本発明の第2の実
施形態の樹脂被膜基板の製造方法について説明する。図
3は、本発明の第2の実施の形態の樹脂被膜基板の製造
方法を示す図である。なお、図3(a)に示す工程から
図3(b)に示す工程は、上述の第1の樹脂被膜基板の
製造方法の図1(a)に示す工程から図1(c)に示す
工程と同一であるため、対応する部材には同一の参照符
号を付し、詳細説明は省略する。
【0047】まず、図3(a)に示す平坦な基板41の
一表面42上に、図3(b)に示すように、樹脂成分を
第1溶剤に溶解させた流動体43を均一に塗布し、その
後、図3(c)に示すように第1溶剤のみを揮発させ
て、基板41上の一表面42上に、樹脂成分のみから成
る乾燥樹脂被膜44を形成する。
【0048】次に、図3(d)に示すように、マスク5
7を乾燥樹脂被膜44の表面46上に配置した状態で、
マスク57の上方から矢符58に示すように、第2溶剤
を噴霧するか、あるいは第2溶剤の蒸気にさらす。この
マスク57には所定形状、たとえば格子状の開口部59
が形成されているので、噴霧された第2溶剤あるいは第
2溶剤蒸気のうち開口部59を通過した第2溶剤のみ
が、乾燥樹脂被膜44の表面に付着する。このようにし
て、乾燥樹脂被膜44の所定領域のみに第2溶剤を付着
させることができる。このように、乾燥樹脂被膜44の
表面46の所定領域に第2溶剤を付着させると、第2溶
剤が付着した部分の乾燥樹脂被膜44の膜強度が弱くな
る。したがって、乾燥樹脂被膜44の全体に生じている
引っ張り応力によって、第2溶剤の付着した部分にクラ
ック51が生じる。
【0049】このようにしてクラック51を発生させた
後、マスク59を取り外し、乾燥樹脂被膜44に吸収お
よび付着された第2溶剤を除去するために、基板41を
加熱して第2溶剤を除去する。このようにして、図3
(e)示す本発明の樹脂被膜基板45が作製される。こ
の樹脂被膜基板45には、格子形状の所定領域にクラッ
ク51が形成されているので、部分的に応力が緩和さ
れ、樹脂被膜基板45の反りが小さい。
【0050】次に、図4を参照してマスク59について
説明する。図4は、マスク59を示す図であり、(a)
は平面図、(b)は図4(a)の切断面線C−Cから見
た断面図である。マスク59は、矩形板状の部材であ
り、略円形の領域内で所定のパターン形状である格子形
状を有し、厚み方向に貫通する開口部59が形成され
る。なお、隣接するマスク領域60同士は、ワイヤ61
によって相互に連結固定されている。図4(b)に示す
ように、このワイヤ61は、マスク59の厚み方向一方
側(図4(b)の上方)に僅かに湾曲させて、マスク表
面62よりも浮かせてある。これによって、ワイヤ61
の影による噴霧された第2溶剤または第2溶剤蒸気の乾
燥樹脂被膜44の表面46への付着漏れが防止され、確
実に乾燥樹脂被膜44の表面46に、格子形状で第2溶
剤が付着する。したがって、マスク59の上方から噴霧
された第2溶剤または第2溶剤蒸気を吹き付けることに
よって、乾燥樹脂被膜45に全面にわたって、数秒で格
子状のクラック51を生じさせることができる。
【0051】なお、この格子形状は、完成した樹脂被膜
基板45に種々の加工、たとえば半導体素子を形成する
加工などを施した後、この樹脂被膜基板45をダイシン
グ加工して、複数個の半導体チップに分割するときのダ
イシングラインに沿う形状である。したがって、図3
(d)に示す工程で形成された格子形状のクラック51
は、ダイシングラインに沿って、ダイシングラインの近
傍に生じるので、このクラック51が半導体チップ内に
形成された半導体素子に影響をおよぼすことがない。ま
た、格子形状を構成する各セル内に、一つの半導体チッ
プが配置される構成であってもよく、各セル内に複数の
半導体チップが配置される構成であってもよい。
【0052】また、上述したマスク59は、耐溶剤性、
特に第2溶剤に対して耐性を有する材料から構成される
ことが好ましい。特にマスク59をできるだけ薄く形成
し、かつ剛性を有する材料という観点からは、セラミッ
クスや金属が好ましい。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、乾燥樹脂被膜の表面上
の所定領域に第2溶剤を付着させることによって、乾燥
樹脂被膜の第2溶剤付着部分にクラックが生じる。これ
によって、乾燥樹脂被膜が基板に作用する応力が開放さ
れ、基板の反りを低減することができる。
【0054】また本発明によれば、所定領域の形状と同
一形状を有し、第2溶剤が含浸された浸透材を乾燥樹脂
被膜の表面上に接触させて、乾燥樹脂被膜に第2溶剤を
付着させるので、乾燥樹脂被膜の所定領域にクラックを
確実に形成することができる。これによって、乾燥樹脂
被膜が基板に作用する応力が開放され、基板の反りを低
減することができる。
【0055】また本発明によれば、乾燥樹脂被膜の表面
上に、所定領域の形状と同一形状の開口部を有するマス
クを配置し、このマスクの上から第2溶剤を噴霧するこ
とによって、乾燥樹脂被膜の所定領域に第2溶剤を付着
させるので、乾燥樹脂被膜に所定形状のクラックを確実
に形成することができる。これによって、乾燥樹脂被膜
が基板に作用する応力が開放され、基板の反りを低減す
ることができる。
【0056】また本発明によれば、乾燥樹脂被膜の表面
上に溶剤を付着させる方法として、乾燥樹脂被膜の表面
上に、所定形状と同一形状の開口部を有するマスクを配
置した状態で、基板を第2溶剤の蒸気にさらす方法を使
用する。これによって、乾燥樹脂被膜の所定領域のみに
溶剤を付着させることができる。したがって、乾燥樹脂
被膜に所定形状のクラックを確実に発生させることがで
き、これによって、乾燥樹脂被膜が基板に作用する応力
が開放され、基板の反りを低減することができる。
【0057】また本発明によれば、第2溶剤が付着する
所定領域の形状を、たとえば基板上に形成された複数の
半導体素子をダイシングして半導体チップに切り分ける
ときのダイシングラインに沿うようなパターン形状にす
ることによって、乾燥樹脂被膜のクラックは、ダイシン
グラインに沿って形成されるので、このクラックが半導
体チップの中に形成される素子に影響をおよぼすことが
ない。
【0058】また本発明によれば、乾燥樹脂被膜に所定
形状のクラックが生じるので、乾燥樹脂被膜が基板に作
用する応力が開放され、基板の反りを低減することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の樹脂被膜基板の製造
方法を示す図である。
【図2】溶剤容器47を示す図であり、(a)は底面
図、(b)は(a)の切断面線B−Bから見た断面図で
ある。
【図3】本発明の第2の実施形態の樹脂被膜基板の製造
方法を示す図である。
【図4】マスク59を示す図であり、(a)は平面図、
(b)は(a)の切断面線C−Cから見た断面図であ
る。
【図5】特開平6−184767号公報に開示される先
行技術を示す図である。
【図6】特開平9−17702号公報に開示される先行
技術を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)
の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図7】特許第2532650号公報に開示される先行
技術を示す図である。
【符号の説明】
41 基板 43 流動体 44 乾燥樹脂被膜 45 樹脂被膜基板 49 浸透材 51 クラック 57 マスク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H025 AB16 EA04 EA10 4D075 AA01 AD11 BB24Y BB24Z BB56Y CA50 DA06 DB11 DB13 DB70 DC22 EA05 EA60 EB11 EB31 5F046 JA04 JA27 LA19 5F058 AA10 AC02 AF04 AH01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂成分を第1溶剤に溶解させた流動体
    を、基板表面上に塗布し、第1溶剤のみを揮発させるこ
    とによって、基板表面上に乾燥樹脂被膜を形成する樹脂
    被膜基板の製造方法において、 前記乾燥樹脂被膜の表面の所定領域に、第2溶剤を付着
    させることによって、乾燥樹脂被膜の第2溶剤の付着領
    域にクラックを生じさせ、その後付着した第2溶剤を揮
    発させることを特徴とする樹脂被膜基板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記所定領域の形状と同一形状を有し、
    前記第2溶剤が含浸された浸透材を、前記乾燥樹脂被膜
    の表面上に接触させることによって、乾燥樹脂被膜の表
    面上に所定形状で第2溶剤を付着させることを特徴とす
    る請求項1記載の樹脂被膜基板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記乾燥樹脂被膜の表面上に、前記所定
    領域の形状と同一形状の開口部が形成されたマスクを配
    置し、乾燥樹脂被膜に前記第2溶剤を噴霧することによ
    って、乾燥樹脂被膜の表面上に所定形状で第2溶剤を付
    着させることを特徴とする請求項1記載の樹脂被膜基板
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記乾燥樹脂被膜の表面上に、前記所定
    領域の形状と同一形状の開口部が形成されたマスクを配
    置し、乾燥樹脂被膜を前記第2溶剤の蒸気にさらすこと
    によって、乾燥樹脂被膜の表面上に所定形状で第2溶剤
    を付着させることを特徴とする請求項1記載の樹脂被膜
    基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記所定領域の形状は、所定のパターン
    が繰り返される形状であることを特徴とする請求項2〜
    4のいずれか一つに記載の樹脂被膜基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 樹脂成分を第1溶剤に溶解させた流動体
    を、基板表面上に塗布し、第1溶剤のみを揮発させるこ
    とによって、前記基板表面上に乾燥樹脂被膜を形成し、
    前記乾燥樹脂被膜の表面上に、所定形状で第2溶剤を付
    着させ、この付着した第2溶剤を揮発させることによっ
    て、乾燥樹脂被膜の所定領域にクラックが発生している
    ことを特徴とする樹脂被膜基板。
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