JP2002039298A - 駆動伝達装置における張力調整装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の課題は、ベルトの張り側を押さえると
同時に緩み側を緩めず、プーリの巻角をほぼ一定に保つ
駆動伝達装置における張力調整装置の提供にある。 【解決手段】上記課題を解決するため、駆動源からの回
転力を無端調帯を介して伝達する駆動伝達装置におい
て、ベルトを例とする無端調帯の張り側の外周面にプー
リを例とする圧接子が当接され、緩み側の外周面にも別
の圧接子が当接され、それぞれの圧接子が弾性部材によ
って互いに接近方向に付勢されて連結されてオートテン
ショナ部が形成され、そのオートテンショナ部が平衡装
置を介して無端調帯と交差方向に移動可能に支持される
ようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明は、張力調整装置に関
し、詳しくは、例えばエンジンのタイミングベルト等、
無端調帯を用いる駆動伝達装置にて、無端調帯に圧接子
を当接させることで張力を調節する張力調整装置に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の駆動伝達装置における張力調整装
置には、次に示すようなものがある。例えば特開平９−
１４４８２１においては図５に示すように駆動プーリ１
と従動プーリ２との間に、支軸３を中心としてアーム４
が回動自在に設けられている。アーム４には、支軸３を
挟んで両端部にテンションプーリ５、６がそれぞれ回転
自在に設けられており、一端側が引張ばね７により掛け
止められている。その引張ばね７によりアーム４がタイ
ミングベルト８の回転駆動方向に付勢され、テンション
プーリ５が張り側に、テンションプーリ６が緩み側に各
々押し当てられる。

【０００３】そして、例えば張り側８ａ、又は緩み側８
ｂの張力が強くなると、アームが反付勢方向へ回動して
テンションプーリ５、６が外へ逃げて張力を弱める方向
に動き、負荷変動が吸収される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来技術においては、２つのテンションプーリがともに張
力を弱める方向に動くため、緩み側がさらに緩んでｐの
部分の間隔が広がり、駆動プーリの巻角θが減少すると
いう問題点があった。

【０００５】巻角が減少すると、ベルトとプーリとの接
触面積が減少し、ベルトが滑って駆動力の伝達が不十分
となる。特にコッグドベルトでは、歯にかかる荷重が増
大して歯欠けの恐れがある。

【０００６】従って、本発明の目的は、プーリの巻角を
ほぼ一定に保つことのできる駆動伝達装置における張力
調整装置の提供にある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、駆動源からの回転力を伝達する無端調帯を押圧し、
無端調帯に張力を付与する張力調整装置において、ベル
トを例とする無端調帯の張り側の外周面に、プーリーを
例とする圧接子を当接し、緩み側の外周面にも別の圧接
子を当接し、それぞれの圧接子を弾性部材によって互い
に接近方向に移動可能に連結して、オートテンショナ部
を形成し、そのオートテンショナ部を平衡装置を介して
無端調帯に対して交差する方向に移動可能に支持するこ
とにした。

【０００８】また、オートテンショナ部と平衡装置をリ
ンク機構により連結することもできる。

【０００９】さらにオートテンショナ部の振動を減衰す
る減衰機構を備えることも好ましい。

【００１０】加えて、この張力調整装置をエンジンに適
用し、無端調帯がクランクプーリを含む３つ以上のプー
リに掛け渡される場合には、圧接子がクランクプーリの
前後にて無端調帯に当接するように配置することが好ま
しい。

【００１１】

【作用】上記のように構成された張力調整装置では、張
り側又は、緩み側の張力が増加した場合、張力が増加し
た側の圧接子が張力を緩める方向へ動き、それと同時に
反対側の圧接子が張力が緩んだ側を押さえる方向へ動く
ことで、駆動源となる回転体に対し、前記回転体に巻き
掛けられた無端調帯の巻角を減少させないようにする。

【００１２】また、オートテンショナ部と平衡装置がリ
ンク機構により連結されることで、平衡装置の運動方向
が適宜変換される。

【００１３】さらに、減衰機構部を備えることで、オー
トテンショナ部の動きが減衰装置で抑制されるため、無
端調帯の駆動方向に垂直な振動が抑制される。

【００１４】加えて、上記のように構成された張力調整
装置を、エンジンにてクランクプーリより回転力を伝達
する無端調帯に適用した場合には、圧接子をクランクプ
ーリの前後に配置することで、クランクプーリ・カムプ
ーリ間、或いは、クランクプーリ・ポンププーリ間等、
間隔の広い部位にて無端調帯を押さえることができる。

【００１５】

【発明の実施の形態】（第一実施例）以下、図面を参照
して本発明を、例えば自動車用エンジンに適用した実施
例について説明する。本発明では、図１に示すように、
駆動源であるクランクプーリ１１の回転力が、無端調帯
であるタイミングベルト１２（通常はコッグドベルトが
採用される）を介して従動側カムプーリ１３とポンププ
ーリ１４に伝達される。

【００１６】尚、前記のように配置されたタイミングベ
ルト１２においては、駆動源であるクランクプーリ１１
の前後にて、クランクプーリ１１に巻き取られる形で移
動する側が張り側となり、クランクプーリ１１より送り
出される形で移動する側が緩み側となる。

【００１７】前記ベルトの張り側の外周面に圧接子であ
るテンションプーリ１５が当接し、緩み側の外周面にも
別のテンションプーリ１６が当接し、それぞれのテンシ
ョンプーリ１５、１６が弾性部材であるテンションばね
１７によって互いに接近方向に付勢した形で連結されて
いる。テンションプーリ１５、１６は駆動源であるクラ
ンクプーリの前後に配置される。

【００１８】図２に示すように、滑子１８の右側端部に
は嵌め孔２４が、左側端部には長孔２３が設けられてい
る。そして、嵌め孔２４にはテンションプーリ１５の中
心軸１５ａが回転可能に嵌挿されており、長孔２３には
テンションプーリ１６の中心軸１６ａが回転可能かつテ
ンションプーリ１５に接近離隔可能に嵌挿されている。

【００１９】滑子１８は、ガイド１９によりタイミング
ベルト１２と交差する方向（矢印Ｘ）に移動可能に支持
されている。

【００２０】さらに、オートテンショナ部ｃは、一端を
固定された平衡ばねからなる平衡装置２０と、それに並
列するシリンダー型の減衰器２１を介して、前記交差方
向に移動可能に支持されている。

【００２１】以上に記載したように、本実施例の張力調
整装置は、テンションプーリ１５、１６とテンションば
ね１７及び滑子１８よりなるオートテンショナ部ｃと、
平衡装置２０と、減衰器２１よりなる。

【００２２】（作用）タイミングベルト１２の全体の張
力は、テンションばね１７によって維持されている。経
年劣化等により、タイミングベルト１２が伸びた場合に
は、タイミングベルト１２全体の張力と釣り合っている
テンションばね１７の作用により、テンションプーリ１
６がテンションプーリ１５に接近する方向に移動し、タ
イミングベルト１２の張力を保障する。

【００２３】また、エンジンの稼働中に、不規則にタイ
ミングベルト１２の張力が変動した場合の本装置の挙動
を、次に説明する。

【００２４】図３−（Ａ）に示すように、張り側１２ａ
の張力増加時には、テンションプーリ１５が図面右方向
に逃げて増加した張力を吸収するとともに、テンション
プーリ１６も図面右方向に動き、緩み側１２ｂを押さえ
る。

【００２５】詳細には（図２を参照）、張力増加の際に
テンションプーリ１５が前記右方向へ逃げると、滑子１
８も前記右方向に移動する。その瞬間テンションプーリ
１６は慣性によりその場にとどまろうとし、テンション
ばね１７が伸展しテンションプーリ１５、１６は離間す
る。しかし、即座にテンションばね１７の復元力による
収縮によりテンションプーリ１６はテンションプーリ１
５を追いかけるようにして前記右方向に移動する。

【００２６】上記の動きによれば、ｐ部分のタイミング
ベルト１２の間隔はほぼ一定に保たれ、駆動側であるク
ランクプーリ１１のタイミングベルト１２の巻角θもほ
とんど変化しない。

【００２７】また図３−（Ｂ）に示すように、緩み側１
２ｂの張力増加時には、テンションプーリ１６が図面左
方向に逃げて増加した張力を吸収するとともに、テンシ
ョンプーリ１５も前記左方向に動き張り側１２ａを押さ
える。

【００２８】詳細には、この場合も張り側１２ａの張力
増加時と同時に、まずテンションプーリ１６が前記左方
向へ逃げ、その瞬間テンションプーリ１５と滑子１８は
慣性によりその場にとどまろうとし、テンションばね１
７が伸展しテンションプーリ１５、１６は離間する。し
かし、即座にテンションばね１７の復元力によりテンシ
ョンプーリ１５は滑子１８とともに、テンションプーリ
１６を追いかけるようにして前記左方向に移動する。

【００２９】この時も、張り側１２ａの張力増加時と同
じくｐ部分のタイミングベルト１２の間隔はほぼ一定に
保たれ、クランクプーリ１１のタイミングベルト１２の
巻角θもほとんど変化しない。

【００３０】張り側１２ａの張力増加時にはオートテン
ショナ部ｃは前記右方向へと移動し、平衡装置２０の平
衡ばねが圧縮される。一方緩み側１２ｂの張力増加時に
はオートテンショナ部ｃは前記左方向へと移動し、平衡
装置２０の平衡ばねが伸展する。前記右方向、又は前記
左方向へ移動したオートテンショナ部ｃは、平衡ばねの
復元力により静止位置である図１の位置へと戻る。

【００３１】さらにオートテンショナ部ｃの前記右方
向、又は前記左方向への動きは、オートテンショナ部ｃ
と平行に連結された減衰器２１により減衰される。この
減衰器２１は、一般的には油圧式のダンパーが採用され
るが、単に摺動摩擦を利用して、運動を減衰させる方式
のものでもよい。これによりタイミングベルト１２の駆
動方向に交差する方向のオートテンショナ部ｃ全体の振
動を抑制することができる。

【００３２】本実施例の形態の駆動伝達装置における張
力調整装置によれば以下の効果を得ることができる。

【００３３】駆動源となるクランクプーリ１６に対し、
巻き掛けられたタイミングベルト１２の巻角がほぼ一定
であるため、クランクプーリ１６とタイミングベルト１
２の接触面積が変化せず、巻角の変化によりクランクプ
ーリ１６とタイミングベルト１２の間に滑りが生じ、駆
動力の伝達が不十分になるといった不具合を回避でき
る。

【００３４】また、タイミングベルト１２の緩み側１２
ｂが更に緩むと弦振動が発生しやすくなるが、本実施例
の形態では、張り側１２ａの張力の増加を抑えると共
に、緩み側１２ｂが緩むことがないため、前記弦振動の
発生を防止することができる。

【００３５】さらに、タイミングベルト１２の緩み側１
２ｂが更に緩み、張り側１２ａとの張力の差が増大する
と、タイミングベルトの寿命が短くなるが、本実施の形
態では、このような不具合を回避できる。

【００３６】加えて、クランクプーリ１１・カムプーリ
１３間、或いはクランクプーリ１１・ポンププーリ１４
間等特に広い部位にてタイミングベルトを押さえるた
め、タイミングベルトの弦振動を有効に抑制することが
できる。

【００３７】また、クランクプーリ１１は、運転状態の
変化により回転数が変化し、タイミングベルト１２の張
力変動の原因となりやすいため、テンションプーリ１
５、１６をクランクプーリ１１の前後に配置すると効果
的である。

【００３８】（第二実施例）第一実施例では、オートテ
ンショナ部ｃと、平衡装置２０及び減衰器２１が互いに
平行に連結されているが、この第二実施例では、図４に
示すように２つのリンクからなるリンク機構２５によ
り、オートテンショナ部ｃと平衡装置２０及び減衰器２
１が互いに垂直に連結される。リンク機構２５はリンク
ガイド２６によりガイドされオートテンショナ部ｃの図
面左右方向への動きを平衡装置２０及び減衰器２１の図
面垂直方向の動きに変換する。（尚、リンクによる連結
は垂直方向に限定されず、交差する方向に連結可能であ
る。） （作用）これによれば、平衡装置及び減衰機構をオート
テンショナ部と平行にも、交差する方向にも取り付けら
れるため、特にエンジンにおいてオートテンショナ機構
を取り付けるスペースの制限がある場合等に配置の融通
性が効くという効果がある。

【００３９】尚、実施の形態は上記実施例１、２の形態
に限らず、以下のように変更してもよい。

【００４０】○無端調帯として、ベルトでなくチェーン
でも実施可能である。

【００４１】○圧接子として、プーリでなく押さえ板で
も実施可能である。

【００４２】○減衰機構として、シリンダー型でなく例
えば、オートテンショナ部を移動可能に支えるガイドの
摺動面に、例えばフェルト材等の運動を減衰させる摩擦
係数の高い部材を内張りする等して実施することも可能
である。

【００４３】○従動プーリをカムプーリとポンププーリ
の２つとしたが、例えばカムプーリ１つでも実施可能で
ある。

【００４４】○オートテンショナ機構の取り付け部位を
駆動プーリであるクランクプーリ側としたが、従動プー
リであるカムプーリ側もしくはポンププーリ側としても
実施可能である。

【００４５】○滑子の左右を逆にして、嵌め孔が左側端
部、長孔が右側端部でも実施可能である。

【００４６】

【発明の効果】本発明によれば、以下の効果がある。

【００４７】駆動源となる回転体に対し、巻き掛けられ
た無端調帯の巻角がほぼ一定であるため、回転体と無端
調帯の接触面積が変化せず、無端調帯が一般的なベルト
の場合には滑って駆動力の伝達が不十分となる、或いは
無端調帯がコッグドベルトである場合には歯欠けを生じ
る、といった接触面積の変化による問題が生じにくい。

【００４８】また、オートテンショナ部と平衡装置をリ
ンク機構により連結した場合には、平衡装置の配置に自
由度が増し、装置のレイアウトを容易にすることができ
る。

【００４９】さらに、オートテンショナ部の振動を減衰
する減衰機構を備えた場合には、張力が変化して、オー
トテンショナ部全体が移動するような振動のときにも、
振動を抑制することができる。

【００５０】加えて、本発明の張力調整装置をエンジン
のクランクプーリの前後に配置した場合には、クランク
プーリ・カムプーリ間、或いはクランクプーリ・ポンプ
ープーリ間等、間隔の広い部位にて無端調帯を押さえる
ことができるため、無端調帯の弦振動を有効に抑制する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明における、張力調整装置の構成を示した
図である。

【図２】本発明における、張力調整装置のオートテンシ
ョナ部の拡大図である。

【図３】本発明における、張力調整装置の作用を示した
図である。

【図４】本発明における、別の実施の形態を示した図で
ある。

【図５】従来技術における、張力調整装置の構成を示し
た図である。

【符号の説明】

１１ クランクプーリ １２ タイミングベルト １３ カムプーリ １４ ポンププーリ １５、１６ テンションプーリ １７ テンションばね １８ 滑子 １９ ガイド ２０ 平衡装置 ２１ 減衰器 ２３ 長孔 ２４ 嵌め孔 ２５ リンク機構 ２６ リンクガイド

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】駆動源からの回転力を伝達する無端調帯を
   押圧し、無端調帯に張力を付与する張力調整装置におい
   て、前記無端調帯の張り側の外周面に圧接子が当接し、
   緩み側の外周面にも別の圧接子が当接し、それぞれの圧
   接子が弾性部材によって互いに接近方向に付勢されて連
   結されたオートテンショナ部と、該オートテンショナ部
   を平衡装置を介して無端調帯に対して交差する方向に移
   動可能に支持したことを特徴とする駆動伝達装置におけ
   る張力調整装置。
2. 【請求項２】請求項１の張力調整装置で、オートテンシ
   ョナ部と平衡装置がリンク機構により連結され、平衡装
   置の運動方向が適宜変換されることを特徴とする駆動伝
   達装置における張力調整装置。
3. 【請求項３】請求項１及び２の張力調整装置で、オート
   テンショナ部の振動を減衰する減衰機構を備えたことを
   特徴とする駆動伝達装置における張力調整装置。
4. 【請求項４】請求項１から請求項３に記載された張力調
   整装置であって、前記無端調帯がエンジンのクランクシ
   ャフトに連結されたクランクプーリを含む３つ以上のプ
   ーリに掛け渡されるとともに、前記圧接子が、前記クラ
   ンクプーリの前後にて前記無端調帯に当接することを特
   徴とする駆動伝達装置における張力調整装置。