JP2002025362A - 銀系透明導電体薄膜と透明積層体の製造方法 - Google Patents

銀系透明導電体薄膜と透明積層体の製造方法

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JP2002025362A
JP2002025362A JP2000201838A JP2000201838A JP2002025362A JP 2002025362 A JP2002025362 A JP 2002025362A JP 2000201838 A JP2000201838 A JP 2000201838A JP 2000201838 A JP2000201838 A JP 2000201838A JP 2002025362 A JP2002025362 A JP 2002025362A
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Toshitaka Nakamura
年孝 中村
Yoshihiro Hieda
嘉弘 稗田
Kazuhiko Miyauchi
和彦 宮内
Yukiko Azumi
由起子 安積
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Nitto Denko Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低抵抗で透明性にすぐれた銀系透明導電体薄
膜を製造する。 【解決手段】 基体上に、銀を主成分とするタ―ゲツト
を用いて、スパツタリング法により厚さが1〜30nm
の銀系透明導電体薄膜を成膜するにあたり、成膜時のス
パツタリング雰囲気を酸素ガスを有する雰囲気としたこ
とを特徴とする銀系透明導電体薄膜の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低抵抗で透明性に
すぐれた銀系透明導電体薄膜とさらにこの薄膜を含む透
明積層体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、従来の冷陰極管を使用したテレビ
やデイスプレイなどの表示装置に代わる、薄型で軽量か
つ大画面化のデイスプレイとして、プラズマデイスプレ
イパネル(以下、PDPという)の開発が進められてい
る。このPDPは、パネル内部に封入された希ガス、と
くにネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その
際に発生する真空紫外線により、パネル内部のセルに設
けられたR、G、Bの蛍光体を発光させるものである。
この発光過程において、PDPの作動には不必要な電磁
波および近赤外線が同時に放出される。
【0003】電磁波は、VCCIやFCCなどにより放
射電磁波が規制されており、また近年人体への悪影響が
懸念されており、カツトする必要がある。近赤外線は、
波長が約800〜1,200nmで、家庭用電化製品、
カラオケ用器材、音響映像機器などのリモ―トコントロ
―ル装置に使用されている赤外線センサの受光素子が約
700〜1,300nmに受光感度のピ―クを持つもの
が多いため、このコントロ―ル装置を誤動作させる問題
があり、やはりカツトする必要がある。
【0004】このような背景から、PDPから発生する
電磁波および近赤外線をカツトするフイルタが種々検討
され、従来では、たとえば、金属メツシユを埋め込んだ
ものまたはエツチングメツシユ加工を行つたアクリル板
と、アクリル板に近赤外線を吸収する色素を添加した電
磁波・近赤外線カツト成形板などが用いられてきた。し
かしながら、これらのメツシユタイプでは、低表面抵抗
値は得られやすいが、画素ピツチと導電メツシユとの間
で生ずるモアレ現象による画像のかすみや、近赤外線吸
収色素の耐熱性や耐光性に問題があつた。また、近赤外
線カツト率を高めるには、近赤外線吸収色素の添加量を
多くする必要があるが、それに伴い可視光透過率の低下
と着色という欠点が避けられなかつた。
【0005】電磁波および近赤外線をカツトする他の手
法として、たとえば、金属薄膜を透明薄膜で挟んだ構
成、これをさらに繰り返し積層した構成の透明積層体が
検討されている(特開昭55−11804号公報、特開
平9−176837号公報)。これらの透明積層体は、
金属薄膜の有する赤外線反射特性を利用でき、かつ透明
薄膜により金属表面での可視光の反射を防止する機能を
付与できる。このため、可視光は透過するが熱線は反射
する太陽電池用の透明断熱材、農業用のグリ―ンハウ
ス、建築用の窓材、食品用のシヨ―ケ―スなどに利用さ
れており、また透明かつ高い導電性を示すため、液晶デ
イスプレイ用電極、電場発光体用電極、電磁波シ―ルド
膜、帯電防止膜などに好適に利用されている。
【0006】上記の透明積層体において、金属薄膜には
導電性、赤外線反射性、可視光透過性にすぐれる銀系透
明導電体薄膜が好適に用いられている。しかし、銀系透
明導電体薄膜の厚さは、数〜数十nm程度と薄く、平坦
でかつ厚さ方向に連続である薄膜を安定して成膜するの
は容易なことではなかつた。また、銀系透明導電体薄膜
の結晶性を高めて導電性を良くする目的で、基体の温度
を上げて成膜すると、数〜数十nm程度の厚さでは銀粒
子同士が凝集し、島状構造を形成しやすくなるため、膜
方向の導電性がかえつて低下し、またこれに起因した異
常光吸収により特定の波長域で可視光透過率が大きく低
下する問題があつた。
【0007】また、上記の透明積層体をPDP用フイル
タに適用する場合、高い電磁波シ―ルド性、近赤外線カ
ツト性、可視光透過性が要求される。電磁波シ―ルド性
は、各層の銀系透明導電体薄膜を厚くしたり、層数を増
やしたりして、表面抵抗値を低減することで高められ、
同時に近赤外線カツト性も高められる。しかし、銀系透
明導電体薄膜を厚くすると、可視光透過率が低下し、ま
た可視光反射率が高くなつて外光の映り込みが激しくな
り、PDP用フイルタとして適さない。また、銀系透明
導電体薄膜の厚さを薄くし、層数を増やすことで、比較
的高い透過率を維持し、また可視光反射率を抑えなが
ら、表面抵抗値を低減し、近赤外線カツト性を高めるこ
とができるが、あまりに層数を増やすと、PDP用フイ
ルタとして適用できる可視光透過率が得られず、生産性
も低下する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情
に照らし、低抵抗で透明性にすぐれた銀系透明導電体薄
膜を製造する方法と、この方法を用いてPDP用フイル
タに要求される電磁波シ―ルド性、近赤外線カツト性、
可視光透過性、可視光低反射性、生産性の諸特性を満足
する透明積層体を製造する方法を提供することを目的と
している。
【0009】
【課題を解決するための手段】銀系透明導電体薄膜は、
通常、膜厚の制御性、均一性にすぐれるスパツタリング
法で成膜されるが、膜厚が数〜数十nmでは、その成長
過程により連続膜構造となつたり、島状構造となつたり
する。その成長過程は成膜時の基体温度などにより影響
され、たとえば、基体温度が高いと薄膜内部での凝集が
起こりやすく、比較的大きな膜厚でも連続膜構造となら
ず、島状構造となりやすい(「薄膜」、金原他著、裳華
房発行、1979年)。このような島状構造になると、
これに起因した異常光吸収によつて特定の波長域におい
て大きく可視光透過率が低下し、また膜方向の導電性が
低下する。したがつて、銀系透明導電体薄膜の結晶性を
高め、表面抵抗値を低下させる目的で、基体温度を上げ
て成膜すると、表面抵抗値がかえつて上昇し、十分な電
磁波シ―ルド性が発揮されない。
【0010】本発明者らは、このような知見を踏まえ
て、鋭意検討した結果、基体上にスパツタリング法で銀
系透明導電体薄膜を成膜するにあたり、通常用いられて
いる不活性のスパツタリングガスであるAr、Krまた
はこれらの混合ガス中に微量の酸素ガスを導入すること
により、比較的薄い膜厚でも安定して平坦かつ膜方向に
連続的な銀系透明導電体薄膜を成膜できることがわかつ
た。すなわち、従来、銀のような金属薄膜をスパツタリ
ング法で成膜する場合、金属薄膜の酸化を防止するた
め、十分高真空となるまで背圧を下げて酸素やそれを含
む水分が成膜室に極力残らないようにするのが常識であ
つたが、微量の酸素ガスを導入することで、上記酸化の
問題を生じずに、連続膜の成膜が可能となることがわか
つた。また、従来では、基体温度を上昇させると銀粒子
同士が凝集しやすく、連続膜が得られなかつたが、微量
の酸素ガスを導入すると、上記のような条件下でも平坦
な連続膜が得られやすくなり、この場合、加熱により結
晶性が増し、光学的な透明性を損なわずに、表面抵抗を
より低下できることがわかつた。
【0011】また、本発明者は、透明基体上に銀系透明
導電体薄膜と透明薄膜とを組み合わせて繰り返し積層
し、その際、上記両薄膜の構成、膜厚、光学定数などを
マトリツクス法などを基本として光学設計して、PDP
用フイルタなどに有用な透明積層体を製造するにあた
り、各層の銀系透明導電体薄膜のうちの少なくとも1層
を上記方法で成膜することにより、つまり、微量の酸素
ガスを導入した雰囲気中でスパツタリングする方法で成
膜することにより、PDP用フイルタに要求される電磁
波シ―ルド性、近赤外線カツト性、可視光透過性、可視
光低反射性などの諸特性を満足する透明積層体を製造で
きるものであることもわかつた。
【0012】さらに、本発明者は、上記の透明積層体の
製造において、銀系透明導電体薄膜と透明薄膜をともに
スパツタリング法で成膜し、両薄膜をそれぞれのタ―ゲ
ツトから同一のガス雰囲気中にて連続的に成膜すると、
透明積層体の生産性を大きく向上できることがわかつ
た。たとえば、透明基体にフイルムを使用し、ロ―ル・
トウ・ロ―ル式のスパツタリング装置で透明積層体を製
造する際に、上記装置内に複数個のタ―ゲツトを設置し
て、銀系透明導電体薄膜と透明薄膜を連続的に成膜する
と、透明積層体の生産性を高めることができる。ここ
で、透明薄膜には、一般に金属酸化物を用いることが多
いが、この金属酸化物を酸化物タ―ゲツトから成膜する
際でも、Arガスなどの不活性ガス雰囲気で成膜する
と、化学両論的組成がわずかに酸素不足の膜となり、透
明性が低下する。これに対し、スパツタリング装置内に
微量の酸素ガスを導入して、ストイキオメトリツクな透
明性にすぐれた膜が得られるように反応性スパツタを行
うと、上記透明性が改善された、前記の諸特性を満足す
る透明積層体を製造できることがわかつた。
【0013】本発明は、以上の知見をもとにして、完成
されたものである。すなわち、本発明は、基体上に、銀
を主成分とするタ―ゲツトを用いて、スパツタリング法
により厚さが1〜30nmの銀系透明導電体薄膜を成膜
するにあたり、成膜時のスパツタリング雰囲気を酸素ガ
スを有する雰囲気としたことを特徴とする銀系透明導電
体薄膜の製造方法に係るものである。とくに、本発明
は、上記の銀を主成分とするタ―ゲツトが、80重量%
以上の銀と、金、銅、パラジウム、白金、マンガン、カ
ドニウムの中から選択される少なくとも1種の元素とか
らなる上記構成の銀系透明導電体薄膜の製造方法、また
上記のスパツタリング雰囲気中の酸素ガス分圧が1×1
-3〜3×10-2Paである上記構成の銀系透明導電体
薄膜の製造方法、さらに上記成膜時の基体温度が320
〜420Kである上記構成の銀系透明導電体薄膜の製造
方法を提供できる。本発明においては、上記の製造方法
により、低抵抗で透明性にすぐれた銀系透明導電体薄膜
を提供することができるものである。
【0014】また、本発明は、透明基体上に、厚さが1
〜30nmの銀系透明導電体薄膜と厚さが10〜300
nmの透明薄膜を組み合わせて繰り返し積層するにあた
り、銀系透明導電体薄膜の少なくとも1層を前記特定構
成のスパツタリング法で成膜することを特徴とする透明
積層体の製造方法に係るものである。とくに、本発明
は、上記の銀系透明導電体薄膜と透明薄膜をともにスパ
ツタリング法で成膜し、かつ両薄膜をそれぞれのタ―ゲ
ツトから同一のガス雰囲気中にて連続的に成膜する上記
構成の透明積層体の製造方法を提供できる。本発明にお
いては、上記の製造方法により、可視光透過率が50%
以上、可視光反射率が10%以下、導電面の表面抵抗が
3Ω/□以下、800〜1,200nmの波長範囲にお
ける光線透過率が20%以下であることを特徴とする透
明積層体を提供できるものである。また、本発明におい
ては、上記の透明積層体を使用したことを特徴とするP
DP用フイルタを提供できるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において、基体上に、銀を
主成分とするタ―ゲツトを用いて、スパツタリング法に
より銀系透明導電体薄膜を成膜するには、スパツタリン
グ雰囲気を酸素ガスを有する雰囲気とする。これによ
り、低抵抗で透明性の良好な銀系透明導電体薄膜を製造
することができる。従来は、成膜時の酸素分圧が高い
と、酸化により導電性や光学的性質が大きく変化するた
め、十分高真空まで背圧を下げるなどして酸素やそれを
含む水分が成膜室に極力残らないようにしていた。しか
し、成膜室に酸素分圧がそれほど高くならない微量の酸
素ガスを導入したときには、上記酸化の問題を生じるこ
となく、厚さが1〜30nmという薄い銀系透明導電体
薄膜を連続膜として形成できることがはじめて見い出さ
れた。
【0016】この詳細な機構については不明であるが、
以下のように、推測される。すなわち、本発明者らは、
ガラス基板上に厚さが30nmの銀系透明導電体薄膜を
アルゴンガスのみの雰囲気中とアルゴンガスに微量の酸
素ガスを混合した雰囲気中で成膜して、両者のX線回折
パタ―ンを測定したところ、前者の雰囲気中で成膜した
ものでは(111)面と(200)面の強度比が10
0:26であつたのに対して、後者の雰囲気中で成膜し
たものでは同強度比が100:38となり、酸素ガスを
導入することで、(111)面が優越配向するのを抑制
する効果があることがわかつた。これは、膜が薄い場
合、(111)面に配向した銀系透明導電体薄膜粒子同
士の凝集力を低下させ、島状構造をとりにくくする、つ
まり、連続膜構造をとりやすくする効果があることを示
すものである。
【0017】上記の成膜方法において、銀を主成分とす
るタ―ゲツトには、80重量%以上の銀と、金、銅、パ
ラジウム、白金、マンガン、カドニウムの中から選択さ
れる少なくとも1種の元素とからなるものが好ましい。
銀は、金属の中でも最も電気導電率が高く、また光吸収
が小さく、光学的透明性にもすぐれているが、空気中の
湿気、硫黄、塩素などで劣化しやすい。上記他の元素を
固溶させると、上記の劣化を防止できる。導電性、光学
的透明性、耐劣化性の点より、90〜99重量%の銀と
上記他の元素10〜1重量%を固溶させた材料が好まし
い。とくに銀中に1〜10重量%の金を固溶させたもの
は、銀の劣化防止の点より、好ましい。金を混入しすぎ
ると着色のために透過性が損なわれやすくなり、導電性
の低下も大きくなり、逆に少なすぎると銀の劣化が起こ
りやすい。
【0018】スパツタリング法としては、とくに限定さ
れず、RF(高周波)マグネトロンスパツタリング法、
DC(直流)マグネトロンスパツタリング法などを使用
することができる。銀系透明導電体薄膜は、導電性のあ
る銀を主成分とするタ―ゲツトから成膜されるため、と
くにDCマグネトロンスパツタリング法が好適に利用で
きる。このDCマグネトロンスパツタリング法は、RF
マグネトロンスパツタリング法に比べて、電源も安価で
かつ簡潔な設備でもつて、大面積に均一に制御性よく銀
系透明導電体薄膜を成膜することができる。
【0019】スパツタリングガスには、アルゴン、クリ
プトン、キセノンなどの不活性ガスが用いられ、これに
微量の酸素ガスを混合して用いる。酸素ガス分圧として
は、1×10-3〜3×10-2Paとするのが望ましい。
1×10-3Paより低いと、本発明の効果を発揮させに
くく、3×10-2Paより高いと、銀系透明導電体薄膜
の酸化が進んで、導電性や光学的透明性が低下する。ス
パツタリング圧力は、とくに限定されないが、通常は
0.1〜1.5Paの範囲内とするのがよい。酸素ガス
分圧が前記の範囲内となるように、不活性ガスと酸素ガ
スの流量およびスパツタリング圧力を適宜調整するよう
にするのがよい。
【0020】本発明においては、上記の成膜方法により
基体上に厚さが1〜30nmという薄さでありながら、
連続膜構造を有し、そのために、低抵抗で透明性にすぐ
れた銀系透明導電体薄膜を形成できる。ここで、基体と
しては、表面平滑性の良好なフイルム状物や板状物など
が適宜用いられ、有機質(プラスチツク)であつても無
機質(ガラスなど)であつてもよい。また、上記のよう
に形成される銀系透明導電体薄膜の厚さが1nm未満と
なると、連続膜構造の薄膜とするのが難しく、30nm
より厚くなると、本発明の上記成膜方法によらなくて
も、ほぼ連続膜構造の薄膜を形成できるため、本発明の
効果が発揮されない。
【0021】本発明では、上記の成膜方法を用いて、透
明積層体を製造する。この方法は、透明基体上に、厚さ
が1〜30nmの銀系透明導電体薄膜と厚さが10〜3
00nmの透明薄膜を組み合わせて繰り返し積層するに
あたり、銀系透明導電体薄膜の少なくとも1層を上記の
成膜方法を用いて成膜する、つまり、酸素ガスを有する
雰囲気中でのスパツタリング法で成膜するものである。
これによれば、PDP用フイルタに要求される電磁波シ
―ルド性、近赤外線カツト性、可視光透過性、可視光低
反射性などの諸特性を満足する透明積層体を製造でき
る。
【0022】このような透明積層体の製造方法におい
て、銀系透明導電体薄膜と透明薄膜との組み合わせ構成
には、銀系透明導電体薄膜/透明薄膜の組み合わせ、透
明薄膜/銀系透明導電体薄膜/透明薄膜の組み合わせ、
または銀系透明導電体薄膜/透明薄膜/銀系透明導電体
薄膜の組み合わせ、あるいはこれらをさらに繰り返した
構成などが挙げられる。これらの銀系透明導電体薄膜と
透明薄膜は、それぞれ、すべて同じ組成または材料であ
つても、異なる組成または材料であつてもよい。また、
たとえば1層を2種以上の材料で積層して構成してもよ
い。
【0023】透明薄膜の材料は、光学的な透明性を有す
るものであれば、広く使用できる。また、各層の材料や
成膜方法、屈折率が異なつていてもよい。さらに、単一
の材料でも複数材料を焼結した材料を用いてもよい。ま
た、銀系透明導電体薄膜のマイグレ―シヨン防止効果や
水、酸素のバリア効果がある材料なら一層よい。好適な
材料としては、酸化インジウム、酸化錫、二酸化チタ
ン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化
タンタル、五酸化ニオブ、二酸化硅素、窒化硅素、酸化
アルミニウム、フツ化マグネシウム、酸化マグネシウム
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げ
られる。酸化インジウムを主成分とし二酸化チタンや酸
化錫、酸化セリウムを少量含有させたものは、銀系透明
導電体薄膜の老化防止効果があり、また導電性を有する
ため、銀系透明導電体薄膜との間の電気的導通がとりや
すく、とくに好ましい。
【0024】透明薄膜は、スパツタリング法、真空蒸着
法、イオンプレ―テイング法などの真空ドライプロセス
や湿式法などを用いて形成することができるが、膜厚の
制御性、均一性の観点より、スパツタリング法を採用す
るのが好ましい。また、このスパツタリング法を採用す
る場合、生産性の向上のため、銀系透明導電体薄膜を成
膜するスパツタリング装置内に、銀系透明導電体薄膜と
透明薄膜とのそれぞれのタ―ゲツトを設置して、両タ―
ゲツトから同一のガス雰囲気中で連続的に銀系透明導電
体薄膜と透明薄膜とを成膜するのが望ましい。
【0025】上記の透明積層体の製造方法において、銀
系透明導電体薄膜は、その少なくとも1層を酸素ガスを
有する雰囲気中でのスパツタリング法で成膜すればよい
が、本発明の効果をより良く発現させるには、銀系透明
導電体薄膜のすべての層を上記特定のスパツタリング法
で成膜するのが望ましい。上記以外の方法で成膜する層
については、酸素ガスを導入しない従来のスパツタリン
グ法にて成膜される。なお、酸素ガスを有する雰囲気中
でのスパツタリング法で成膜する場合に、そのスパツタ
リング装置内に前記した透明薄膜のタ―ゲツトも同時に
設置して、銀系透明導電体薄膜と透明薄膜とを上記同一
のガス雰囲気中で連続的に成膜する方法を採用すると、
それにより形成される透明薄膜は、上記酸素ガスの存在
により、その透明性や導電性などの面でも好ましい結果
が得られる。
【0026】上記の透明積層体の製造方法において、透
明基体には、可視光領域における透明性を有して、表面
がある程度平滑なものであればよい。一般には、高分子
フイルムが好ましく用いられる。また、場合により、ガ
ラス板、PMMA(ポリメチルメタクリレ―ト)板、ポ
リカ―ボネ―ト板などの無機質または有機質の板状物も
使用できる。これらの透明基体は、あらかじめその表面
をスパツタリグ処理、コロナ処理などのエツチング処理
を施したり、薄膜層と透明基体との密着性を向上させる
ような易接着層を形成したものであつてもよい。
【0027】透明基体として好ましい高分子フイルムに
は、ポリエチレンテレフタレ―ト、トリアセチルセルロ
―ス、ポリエチレンナフタレ―ト、ポリエ―テルスルホ
ン、ポリカ―ボネ―ト、ポリアクリレ―ト、ポリエ―テ
ルエ―テルケトン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポ
リイミドなどのフイルムがある。厚さは、ドライプロセ
スで熱じわなどの問題がなければ、とくに制限されない
が、通常10〜250μmであるのがよい。高分子フイ
ルムの片面または両面には、ハ―ドコ―ト層を設けても
よい。ハ―ドコ―ト材は紫外線硬化タイプでも熱硬化タ
イプでもよい。紫外線硬化タイプには、エステル系、ア
クリル系、ウレタン系、アミド系、シリコ―ン系、エポ
キシ系、アクリル・ウレタン系、アクリル・エポキシ系
などのモノマ―やオリゴマ―に光重合開始剤を配合した
ものなどがある。熱硬化タイプには、フエノ―ル系、尿
素系、メラミン系、不飽和ポリエステル系、ポリウレタ
ン系、エポキシ系などの樹脂に、必要に応じて架橋剤、
重合開始剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤などを配合
したものなどがある。ハ―ドコ―ト層の厚さは、1〜1
0μmが適当であり、2〜7μmがより好ましい。
【0028】本発明においては、上記の製造方法にした
がうことにより、またその際、銀系透明導電体薄膜と透
明薄膜との構成、膜厚、光学定数などをマトリツクス法
などを基本として光学設計することにより、可視光透過
率が50%以上、可視光反射率が10%以下、導電面の
表面抵抗が3Ω/□以下、800〜1,200nmの波
長範囲における光線透過率が20%以下(上記光線カツ
ト率が80%以上)である透明積層体を生産性良好に製
造することができる。
【0029】この透明積層体を用い、これに透明接着剤
層(透明粘着剤層)を形成したり、導電面(薄膜形成
面)に電極を形成したり、反射防止層などを形成するな
どの公知の処理を施すことにより、PDPの前面表示部
に直接貼り付ける直貼りタイプのPDP用フイルタを作
製することができ、また硬質の透明成形体に貼り付けて
PDP用前面板としこれを空気層を介してPDPの前面
側に配設するタイプのPDP用フイルタを作製すること
ができる。これらのPDP用フイルタは、上記の透明積
層体の光学特性などに基づいて、電磁波シ―ルド性、近
赤外線カツト性、可視光透過性、可視光低反射性などの
諸特性を満足し、とくに直貼りタイプのPDP用フイル
タでは、軽量、薄型で視認性にすぐれたものとなる。
【0030】
【実施例】つぎに、本発明を実施例により、さらに具体
的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定され
るものではない。以下、膜厚は、同じ成膜条件にて長時
間厚膜に成膜したサンプルを表面粗さ計(DEKTAK
3)により測定し、その検量線から所定の厚さになるよ
う制御した値(質量膜厚)である。また、ガス流量に使
用した単位(SCCM)は、標準状態に換算した気体流
量(Standard Cubic Centimet
er per Minute)を示したものである。
【0031】実施例1 基体として、厚さが125μmの透明ポリエチレンテレ
フタレ―ト(以下、PETという)フイルムと、Cu製
3mmΦ(300メツシユ)上にカ―ボン支持膜(約10
nm)を蒸着してなる表面透過型電子顕微鏡観察用のグ
リツド(以下、TEM測定用グリツドという)を使用し
た。これらの基体を、バツチ式スパツタリング装置の真
空槽内にセツトし、2×10-3Paまで排気したのち、
アルゴンガスを30SCCM、酸素ガスを0.5SCC
M導入し、バルブを調整することで圧力を0.4Paに
調整した(この条件で酸素分圧は6.6×10-3
a)。タ―ゲツトには6インチФ、厚さ3mmの円形タ―
ゲツトを用い、材料は、Ag:Au=97重量%:3重
量%の重量比の合金を用いた。DCマグネトロンスパツ
タ法を用い、基体温度を室温とし、投入電力を40Wと
し1nm/秒の成膜速度にて、膜厚10nmの銀系透明
導電体薄膜を成膜した。
【0032】比較例1 真空槽内に酸素ガスを導入せず、アルゴンガスのみを導
入した以外は、実施例1と同様にして、銀系透明導電体
薄膜を成膜した。
【0033】比較例2 真空槽内の酸素ガスの導入量を3SCCM(酸素分圧は
3.6×10-2Pa)とした以外は、実施例1と同様に
して、銀系透明導電体薄膜を成膜した。
【0034】実施例2 成膜時の基体温度を370Kに設定し、膜厚を15nm
とした以外は、実施例1と同様にして、銀系透明導電体
薄膜を成膜した。
【0035】比較例3 真空槽内に酸素ガスを導入せず、アルゴンガスのみを導
入した以外は、実施例2と同様にして、銀系透明導電体
薄膜を成膜した。
【0036】比較例4 真空槽内の酸素ガスの導入量を3SCCM(酸素分圧は
3.6×10-2Pa)とした以外は、実施例2と同様に
して、銀系透明導電体薄膜を成膜した。
【0037】上記の実施例1,2および比較例1〜4で
成膜した各銀系透明導電体薄膜について、基体としてP
ETフイルムを使用したものでは、薄膜面の表面抵抗値
を、三菱油化製の「Lorester SP」を用い
て、四端針法(JIS K 7194)により、測定し
た。また、基体としてTEM測定用グリツドを使用した
ものでは、透過型電子顕微鏡により、薄膜面の表面形態
を観察した。これらの結果は、表1に示されるとおりで
あつた。
【0038】
【0039】上記の表1の結果から明らかなように、実
施例1(成膜時の基体温度:室温)では、膜厚が10n
mと薄いにもかかわらず、完全に連続膜構造を形成し、
低い表面抵抗値が得られていることがわかる。これに対
して、酸素ガスを導入しない比較例1では、部分的に不
連続な構造となつており、表面抵抗値がやや上昇した。
また、酸素ガスを導入しすぎた比較例2では、連続膜構
造にはなつているが、薄膜の酸化によるためか、表面抵
抗値が大幅に上昇した。
【0040】また、実施例2(成膜時の基体温度:37
0K)では、ほぼ連続膜に近い構造を取つており、加熱
により結晶性が増し、実施例1よりもさらに低表面抵抗
値が得られていることがわかる。これに対して、酸素ガ
スを導入しない比較例3では、島粒子がつながり合つた
構造を取つており、島粒子が完全に孤立していないた
め、膜方向の導電性は十分であつたが、実施例2に比べ
て、表面抵抗値がやや低下した。また、酸素ガスを導入
しすぎた比較例4では、前記した比較例2の場合と同
様、薄膜の酸化によるためか、表面抵抗値が大きく上昇
した。
【0041】実施例3 実施例1と同様のバツチ式パツタリング装置の真空槽内
に、透明基体として、厚さが125μmのPETフイル
ムをセツトし、DCマグネトロンスパツタ法により、下
記の成膜方法により、透明薄膜と銀系透明導電体薄膜を
合計7層繰り返し積層して、透明積層体を作製した。
【0042】透明薄膜を形成するタ―ゲツト材料には、
In2 3 :SnO2 =90重量%:10重量%(以
下、ITOという)を使用し、アルゴンガスを30SC
CM、酸素ガスを1SCCM導入し、圧力を0.4Pa
に調整したのち、DCマグネトロンスパツタ法を用い、
投入電力を200Wとし0.85nm/秒の成膜速度で
成膜した。また、銀系透明導電体薄膜を形成するタ―ゲ
ツト材料には、実施例1と同じものを使用し、アルゴン
ガスを30SCCM、酸素ガスを1SCCM(この条件
で酸素分圧は1.3×10-2Pa)導入し、圧力を0.
4Paに調整したのち、DCマグネトロンスパツタ法を
用い、投入電力を40Wとし1nm/秒の成膜速度で成
膜した。成膜時の基体温度は360Kとした。
【0043】このように作製した透明積層体は、透明基
体(PETフイルム)側から、PETフイルム/ITO
(32nm)/Ag(13nm)/ITO(70nm)
/Ag(13nm)/ITO(70nm)/Ag(13
nm)/ITO(32nm)の構成からなるものであつ
た。なお、上記のAgは銀系透明導電体薄膜であり、
( )内の数値は、各薄膜の膜厚を意味している。
【0044】実施例4 基体温度を360Kから室温に変更した以外は、実施例
3と同様にして、透明積層体を作製した。
【0045】比較例5 銀系透明導電体薄膜を成膜する際に、酸素ガスを導入し
なかつた以外は、実施例3と同様にして、透明積層体を
作製した。
【0046】比較例6 銀系透明導電体薄膜を成膜する際に、酸素ガスの導入量
を1SCCMから3SCCM(酸素分圧は3.6×10
-2Pa)に変更した以外は、実施例3と同様にして、透
明積層体を作製した。
【0047】上記の実施例3,4および比較例5,6の
各透明積層体について、下記の方法により、可視光透過
率、可視光反射率、近赤外線カツト率を測定した。ま
た、薄膜表面の表面抵抗値を前記と同様に測定し、さら
に下記の方法により、透過型電子顕微鏡観察により銀系
透明導電体薄膜の断面を観察した。これらの結果は、表
2に示されるとおりであつた。
【0048】<可視光透過率と可視光反射率>大塚電子
製の瞬間マルチ測光器「MCPD−3000」により、
0°入射透過および反射スペクトルを測定し、得られた
透過および反射スペクトルから、JIS R−3016
に準じ、可視光透過率と可視光反射率を算出した。図1
に、実施例および比較例の各透明積層体の上記透過スペ
クトルを示した。
【0049】<近赤外線カツト率>日立製作所製の「U
−3410」を用いて、波長850nmにおける近赤外
線カツト率を測定した。
【0050】<透過型電子顕微鏡による断面観察>透明
積層体をガリウムイオンビ―ムを用いた収束イオンビ―
ム法により切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡によ
り観察した。
【0051】
【0052】上記の表2の結果から明らかなように、実
施例3(成膜時の基体温度:360K)の透明積層体
は、可視光透過性、可視光低反射性、近赤外線カツト性
および低表面抵抗にすぐれ、PDP用フイルタとして好
適な特性を持ち合わせていた。また、実施例4(成膜時
の基体温度:室温)の透明積層体は、実施例3に比べ、
表面抵抗値が幾分高くなつたが、銀系透明導電体薄膜が
完全な連続膜構造をとつており、可視光透過性にすぐれ
ていた。
【0053】これに対して、成膜時に酸素ガスを導入し
ない比較例5の透明積層体は、基体温度が370Kであ
るにもかかわらず、銀系透明導電体薄膜が連続膜構造を
形成しておらず、これに起因した光吸収のために可視光
透過率が低下した。ただし、前記の比較例3に示すよう
に、島状粒子が完全に孤立した構造ではなく、つながり
合つているため、表面抵抗値の上昇は小さかつた。ま
た、成膜時に酸素ガスを導入しすぎた比較例6の透明積
層体は、銀系透明導電体薄膜が酸化されるため、連続膜
構造となつているにもかかわらず、表面抵抗値が著しく
増加しており、また可視光透過率も大きく低下した。
【0054】このように、本発明によれば、上記の実施
例3,4に示すように、透明薄膜と銀系透明導電体薄膜
とを組み合わせて繰り返し積層した透明積層体におい
て、銀系透明導電体薄膜が連続膜構造となることを促
し、結果として、低表面抵抗かつ高可視光透過率の透明
積層体を提供できるものであることがわかる。
【0055】実施例5 幅が1,300mm、厚さが125μmのPETフイルム
のロ―ル原反をロ―ル・トウ・ロ―ル式スパツタリング
装置に取り付け、これを透明基体として、DCマグネト
ロンスパツタ法により、透明薄膜と銀系透明導電体薄膜
を合計7層繰り返し積層して、透明積層体を作製した。
透明薄膜を形成するタ―ゲツト材料には、In2 3
TiO2 =87重量%:13重量%(以下、ITとい
う)を使用し、銀系透明導電体薄膜を形成するタ―ゲツ
ト材料には、実施例1と同じもの(銀合金)を使用し
た。
【0056】本装置には大きさ1,200mm×160mm
のタ―ゲツトを3つ装着でき、IT、銀合金、ITの順
で配置した。これらのタ―ゲツトは同一の真空槽内にあ
る。真空槽内を3×10-3Paまで真空排気したのち、
アルゴンガスを900SCCM、酸素ガスを20SCC
M導入し、メインバルブを調整することで、ガス圧を
0.5Paに調整した。2つのITタ―ゲツトにはそれ
ぞれ6kWの電力を投入した。この条件でITタ―ゲツ
ト1つあたり35nmの薄膜を形成するロ―ル速度は別
途行つた予備実験の結果から0.6m/分であつた。同
様に予備実験の結果から、ロ―ル速度0.6nm/分に
て厚さ13nmの銀系透明導電体薄膜が形成されるよう
に、銀合金タ―ゲツトには0.41kWの電力を投入し
た。
【0057】上記の条件により、透明基体(PETフイ
ルム)側から、 1パス目:PETフイルム/IT(32nm)/Ag
(13nm)/IT(32nm) 2パス目:PETフイルム/IT(32nm)/Ag
(13nm)/IT(64nm)/Ag(13nm)/
IT(32nm) 3パス目:PETフイルム/IT(32nm)/Ag
(13nm)/IT(64nm)/Ag(13nm)/
IT(64nm)/Ag(13nm)/IT(32n
m) の順に成膜して、上記3パス目の構成からなる透明積層
体を作製した。ただし、ロ―ル温度は室温に保つた。ま
たこの条件にて、50mの透明積層体を成膜するに要し
た時間は、約4時間15分であつた。なお、上記のAg
は銀系透明導電体薄膜であり、( )内の数値は、各薄
膜の膜厚を意味している。
【0058】比較例7 真空槽内に酸素ガスを導入せず、アルゴンガスのみを導
入するようにした以外は、実施例5と同様にして、透明
積層体を作製した。
【0059】比較例8 透明薄膜(IT)と銀系透明導電体薄膜(Ag)を、各
1層づつ合計7パスで成膜するようにした以外は、実施
例5と同様にして、透明積層体を作製した。ここで、I
T薄膜成膜時のガス雰囲気は実施例5と同様にし、銀系
透明導電体薄膜成膜時には酸素ガスを導入せず、アルゴ
ンガスのみを導入して、成膜を行つた。32nmのIT
薄膜はタ―ゲツトを2つ使用し1.2m/分のロ―ル速
度で、64nmのIT薄膜は0.6m/分のロ―ル速度
で行つた。銀系透明導電体薄膜のロ―ル速度は実施例5
と同様とした。この条件にて50mの透明積層体を成膜
するに要した時間は、約9時間30分であつた。
【0060】比較例9 銀系透明導電体薄膜の成膜には1.5kWの電力を投入
し、2.2m/分のロ―ル速度で行つた以外は、比較例
8と同様の方法により透明積層体を作製した。この条件
にて、50mの透明積層体を成膜するに要した時間は、
約6時間30分であつた。
【0061】上記の実施例5および比較例7〜9の各透
明積層体について、前記と同様に、光学特性を測定し、
また透過型電子顕微鏡観察により銀系透明導電体薄膜の
断面を観察した。その結果、実施例5の透明積層体は、
実施例4とほぼ同等であり、PDP用フイルタとして好
適な特性を有することがわかつた。
【0062】これに対して、比較例7の透明積層体は、
成膜時に酸素ガスを導入しなかつたため、IT薄膜の組
成が酸素不足となり、波長400〜500nm付近の透
過率が大きく低下し、また銀系透明導電体薄膜が連続膜
構造とならず、波長500〜700nm付近の透過率が
大きく低下し、結果として透過率は34%となつた。ま
た、比較例8の透明積層体は、IT薄膜成膜時には酸素
ガスを導入したため、波長400〜500nm付近の透
過率の低下は小さかつたが、銀系透明導電体薄膜が連続
膜構造にならないため、その諸特性は比較例5とほぼ同
程度であつた。しかも、1層づつ7パスで成膜するた
め、成膜に時間がかかるばかりか、酸素ガスを切り替
え、さらにスパツタ雰囲気を安定させる時間も必要であ
ることから、生産性が極めて悪いものであつた。
【0063】さらに、比較例9の透明積層体は、銀系透
明導電体薄膜成膜時に酸素ガスを導入しなかつたが、投
入電力を上げて成膜速度を速くしたため、連続膜が得ら
れ、その諸特性は、実施例5と同等のものが得られた。
しかし、銀系透明導電体薄膜のロ―ル速度を速めても、
7パスで成膜している点と、酸素ガスの切り替えに時間
がかかる点で、実施例5に比べると、生産性が悪いもの
であつた。また、厚さ13nmという薄い銀系透明導電
体薄膜を高速で成膜するため、幅方向、長さ方向の膜厚
の均一性が悪く、透明積層体の色むらが所々で発生し
た。
【0064】このように、本発明によれば、上記の実施
例5に示すように、スパツタリング装置内の雰囲気をア
ルゴンガスに酸素ガスを適量導入した雰囲気として、し
かも透明薄膜と銀系透明導電体薄膜とを同一のガス雰囲
気中で連続的に成膜するようにしたことにより、PDP
用フイルタとして好適な特性を有する、とくに低抵抗で
透明性にすぐれる透明積層体を生産性よく製造すること
ができる。
【0065】
【発明の効果】以上のように、本発明は、基体上に、銀
を主成分とするタ―ゲツトを用いて、スパツタリング法
により1〜30nmの薄い銀系透明導電体薄膜を成膜す
るにあたり、スパツタリング雰囲気をアルゴンなどの不
活性ガスに所定量の酸素ガスを混合した雰囲気としたこ
とにより、比較的遅い成膜速度、高い基体温度において
も、連続膜構造の銀系透明導電体薄膜を製造できる。
【0066】また、上記の製造方法を用いて、透明基体
上に銀系透明導電体薄膜と透明薄膜を組み合わせて繰り
返し積層することにより、PDP用フイルタに要求され
る電磁波シ―ルド性、近赤外線カツト性、可視光透過
性、可視光反射性などの諸特性を満足する透明積層体を
製造することができる。さらに、この方法において上記
の両薄膜をそれぞれのタ―ゲツトから同一のガス雰囲気
中にて連続的にスパツタリング成膜することにより、上
記透明積層体の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3,4および比較例5,6の各透明積層
体の可視光透過スペクトルを示す特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 14/34 C23C 14/34 R H01B 5/14 H01B 5/14 A // C08L 67:02 C08L 67:02 (72)発明者 宮内 和彦 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 安積 由起子 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内 Fターム(参考) 4F006 AA12 AA15 AA22 AA33 AA34 AA35 AA37 AA38 AA39 AA42 AB73 BA07 CA02 CA05 CA08 DA01 4F100 AB01B AB14B AB24B AB25B AT00A BA02 BA03 BA08 BA10A BA10C EH112 EH662 EJ24 EJ582 EK172 GB41 JD08 JD12 JG01B JG04 JL02 JM02B JN01 JN01B JN01C JN06 YY00 YY00B YY00C 4K029 AA02 AA11 BA43 BC08 BC09 BD00 CA06 DC04 DC34 DC39 EA01 EA03 EA05 EA08 5G307 FA02 FB02 FC08 FC09 FC10 5G323 BA01 BB05

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に、銀を主成分とするタ―ゲツト
    を用いて、スパツタリング法により厚さが1〜30nm
    の銀系透明導電体薄膜を成膜するにあたり、成膜時のス
    パツタリング雰囲気を酸素ガスを有する雰囲気としたこ
    とを特徴とする銀系透明導電体薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 銀を主成分とするタ―ゲツトは、80重
    量%以上の銀と、金、銅、パラジウム、白金、マンガ
    ン、カドニウムの中から選択される少なくとも1種の元
    素とからなる請求項1に記載の銀系透明導電体薄膜の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 スパツタリング雰囲気中の酸素ガス分圧
    が1×10-3〜3×10-2Paである請求項1または2
    に記載の銀系透明導電体薄膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 成膜時の基体温度が320〜420Kで
    ある請求項1〜3のいずれかに記載の銀系透明導電体薄
    膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の方法で
    製造される低抵抗で透明性にすぐれた銀系透明導電体薄
    膜。
  6. 【請求項6】 透明基体上に、厚さが1〜30nmの銀
    系透明導電体薄膜と厚さが10〜300nmの透明薄膜
    を組み合わせて繰り返し積層するにあたり、銀系透明導
    電体薄膜の少なくとも1層を請求項1〜4のいずれかに
    記載のスパツタリング法で成膜することを特徴とする透
    明積層体の製造方法。
  7. 【請求項7】 銀系透明導電体薄膜と透明薄膜をともに
    スパツタリング法で成膜し、かつ両薄膜をそれぞれのタ
    ―ゲツトから同一のガス雰囲気中にて連続的に成膜する
    請求項6に記載の透明積層体の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6または7の方法で製造される透
    明積層体であつて、可視光透過率が50%以上、可視光
    反射率が10%以下、導電面の表面抵抗が3Ω/□以
    下、800〜1,200nmの波長範囲における光線透
    過率が20%以下であることを特徴とする透明積層体。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の透明積層体を使用した
    ことを特徴とするプラズマデイスプレイバネル用フイル
    タ。
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