JP2002003253A - セメントの処理剤及び処理方法 - Google Patents

セメントの処理剤及び処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡易な方法によって然も安価に、セメントよ
る改良土やセメント構造物からの六価クロムの溶出を抑
えることが出来るセメントの処理剤、並びに処理方法を
提供する。 【解決手段】 本発明に係るセメントの処理剤は、硫酸
第一鉄からなる第1原料と、シリカ及びアルミナを主成
分とする硅岩系の岩石粉末からなる第2原料とを含んで
いる。ここで、第1原料の硫酸第一鉄は、酸化チタンの
製造工程で副産物として生成された硫化鉄を乾燥後に粉
砕することによって、粉末状に加工したものである。
又、第2原料の岩石粉末は、硅岩系の変成岩を粉砕した
ものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメントに混合し
て用いる処理剤であって、例えばセメントによって地盤
改良を施した改良土やセメント構造物から六価クロムが
溶出することを抑制するための処理剤、並びに処理方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、六価クロムによる土壌汚染が大き
な社会問題となっており、この様な状況の下で、セメン
トによって地盤改良を施した改良土から基準を越える濃
度の六価クロムが溶出する虞れがあるため、その対策が
緊急課題となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、六価クロム
を含む排水の処理としては、アルカリ剤や凝集剤などを
用いて、六価クロムを沈殿・分離する方法が採られてい
るが、この方法では、多くの薬品添加物と処理工程が必
要であり、又、この方法によっては、セメントによる改
良土やセメント構造物からの六価クロムの溶出を抑える
ことは出来ない。
【0004】本発明の目的は、簡易な方法によって然も
安価に、セメントよる改良土やセメント構造物からの六
価クロムの溶出を抑えることが出来るセメントの処理
剤、並びに処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決する為の手段】そこで本発明者は、上記目
的を達成するべく、セメント若しくはセメント練り水に
対して種々の成分からなる処理剤を投入し、六価クロム
の溶出量を測定する実験を繰り返すことによって、ある
成分を有する処理剤が極めて効果的であることを発見
し、本発明の完成に至った。
【0006】即ち、本発明に係るセメントの処理剤は、
硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ及びアルミナを
主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる第2原料とを含
んでいる。後述の実験結果で実証する様に、該処理剤を
セメント若しくはセメント練り水に混合することによっ
て、六価クロムの溶出が効果的に抑えられる。
【0007】ここで、第1原料の硫酸第一鉄は、具体的
には化学記号:FeSO・7HOで表わされる。
又、第1原料の硫酸第一鉄は、酸化チタンの製造工程で
副産物として生成された硫化鉄を乾燥後に粉砕すること
によって、粉末状に加工したものである。従って、第1
原料は、安価且つ容易に製造することが出来る。
【0008】一方、第2原料の岩石粉末は、具体的に
は、硅岩系の変成岩を粉砕したものであって、シリカを
約80重量%、アルミナを約10重量%含んでいる。従
って、第2原料についても、安価且つ容易に製造するこ
とが出来る。
【0009】尚、第1原料と第2原料の混合率として
は、硫酸第一鉄の混合率が20〜80重量%、岩石粉末
の混合率が80〜20重量%であることが好ましい。混
合率をこの範囲に設定することによって、より高い効果
が得られる。
【0010】本発明に係るセメントの第1の処理方法
は、硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ及びアルミ
ナを主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる第2原料と
を混合して、セメントの処理剤を製造する第1工程と、
第1工程によって製造された処理剤をセメントに混合す
る第2工程とを有している。具体的には、第2工程で、
セメントの混合率を95.0〜99.5重量%、処理剤の
混合率を5.0〜0.5重量%とする。該処理方法では、
粉末としての処理剤をセメントに混合して用いるので、
セメント生産工場での実施が可能となる。
【0011】又、本発明に係るセメントの第2の処理方
法は、硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ及びアル
ミナを主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる第2原料
とを混合して、セメントの処理剤を製造する第1工程
と、第1工程によって製造された処理剤をセメント練り
水に溶解させ、これによって得られた水溶液を用いてセ
メントを練る第2工程とを有している。具体的には、第
2工程で、セメント練り水の混合率を95.0〜99.9
5重量%、処理剤の混合率を5.0〜0.05重量%とす
る。該処理方法によれば、処理剤をセメント練り水に溶
解させて使用するので、より少ない量の処理剤で十分な
効果を得ることが出来、又、工事現場での実施が可能と
なる。
【0012】
【発明の効果】上記本発明に係るセメントの処理剤及び
処理方法によれば、簡易な方法によって然も安価に、セ
メントよる改良土やセメント構造物からの六価クロムの
溶出を効果的に抑えることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るセメントの処
理剤及び処理方法について具体的に説明する。本発明の
処理剤は、第1原料としての硫酸第一鉄と、第2原料と
しての岩石粉末とを混合して作製され、該処理剤をセメ
ント若しくはセメント練り水に混合して使用する。
【0014】第1原料 本実施例において、第1原料として用いる硫酸第一鉄
は、酸化チタンの製造工程で副産物として生成される硫
化鉄であって、水分を含むウエットな状態である。該硫
酸第一鉄は結晶水を含んでおり、化学記号:FeSO
・7HOで表わされる。
【0015】酸化チタンの製造工程で副産物として生成
される硫化鉄に蛍光X線分析を施したところ、次の結果
が得られた。 TiO : 0.24重量% Mn : 0.16重量% Fe : 18.50重量% 尚、上記分析結果において、強熱減量にはSOやH
O等が含まれる。
【0016】上記の硫酸第一鉄に自然乾燥(天日干し)又
は機械的乾燥(乾燥室温度を80℃以下に調整して温風
を送って出来るだけ短時間で乾燥)を施して、水分を除
去する。硫酸第一鉄はこの乾燥工程によって結晶水が崩
壊して、組成がFeSO・7HO〜FeSO・1
Oに変化することがある。その後、該硫酸第一鉄を
100メッシュ以下に粉砕して、第1原料の加工を完了
する。
【0017】第2原料 本実施例において、第2原料となる岩石は、自然界に存
在する岩石であって、ゼータ電位−15mV〜−50m
Vを有しており、好ましくは、アルミナ及びシリカを主
成分とする硅岩系の変成岩が良い。その代表例として
は、愛知県北設楽郡内段戸高原県立自然公園地域で産出
される硅岩が挙げられる。該硅岩のゼータ電位は−20
mV〜−30mVである。尚、上記の硅岩に蛍光X線分
析を施したところ、次の結果が得られた。 SiO : 80.18重量% Al : 10.78重量% Fe : 0.56重量% NaO : 2.53重量% KO : 3.93重量% 尚、上記分析結果において、強熱減量にはHO等が含
まれる。
【0018】上記の硅岩を、ボールミル、ローラミル等
の岩石粉砕に適した機械を用いて、100メッシュ以下
に粉砕し、第2原料の加工を完了する。
【0019】処理剤の製造方法 上記の様にして得られた第1原料としての硫酸第一鉄
(FeSO・7HO〜FeSO・1HO)と第2
原料としての岩石粉末(ゼータ電位−20mV〜−30
mV)とを、次の配分で混合する。 硫酸第一鉄 : 20〜80重量% 岩石粉末 : 80〜20重量%
【0020】2つの原料の混合には、モルタルミキサー
又はナウターミキサー等の専用混合機を使用し、1分間
以上の攪拌を行なって、2つの原料が十分に混合された
処理剤を得る。
【0021】使用方法 セメントに混合して使用する場合 上記の様にして得られた処理剤をセメントに混合して使
用する場合は、セメントの混合率を95.0〜99.5重
量%、処理剤の混合率を5.0〜0.5重量%とする。こ
の方法は、セメント生産工場で実施する場合に有効であ
る。 セメント練り水に溶解させて使用する場合 上記の様にして得られた処理剤をセメント練り水に溶解
させて使用する場合は、セメント練り水の混合率を9
5.0〜99.95重量%、処理剤の混合率を5.0〜0.
05重量%とする。この方法は、工事現場や生コン工場
で実施する場合に有効である。
【0022】尚、何れの方法においても、処理剤の混合
率が上記の下限値よりも小さくなると、効果が著しく低
下する。又、処理剤の混合率を上記の上限値よりも大き
くすることは、それによって得られる効果に比べてコス
トの増大が著しく大きくなる。従って、処理剤の混合率
は、上記の範囲内で、セメントの種類、製造メーカ、製
造工場等によって異なる六価クロムの含有量(溶出量)に
応じ、適切な値に設定することが好ましい。
【0023】実証例 次に、本発明の処理剤及び処理方法の効果を実証するた
めに、多数の試料について六価クロムの含有量若しくは
溶出量を測定した。その代表的な試料についての結果を
表1〜表5に示す。尚、下記の実証例1〜実証例4で
は、六価クロム含有量の計量にジフェニルカルバジド法
を採用した。計量範囲は0.05mg/l〜2mg/l
である。又、下記の実証例5では、六価クロム溶出量の
計量にJIS K−0102.65.2を採用した。
【0024】(実証例1)下記表1は、セメントに処理剤
を混合して使用する場合において、処理剤の混合量を変
化させた各試料(No.1〜3)について、余剰水に含ま
れる六価クロムの量を測定した結果を表わしている。
【0025】
【表1】
【0026】表1の如く、本発明の処理剤を混合しない
試料1では、六価クロム含有量が2mg/lと高い値を
示しているのに対し、セメント10gに対して本発明の
処理剤0.15gを混合した試料2と、セメント10g
に対して本発明の処理剤0.20gを混合した試料3で
は、余剰水の六価クロム含有量が0.05mg/l未満
と、著しく低下している。
【0027】(実証例2)下記表2は、セメントに処理剤
を混合して地盤の改良に使用する場合において、処理剤
の混合量を変化させた各試料(No.4〜6)について、
余剰水に含まれる六価クロムの量を測定した結果を表わ
している。
【0028】
【表2】
【0029】表2の如く、本発明の処理剤を混合しない
試料4では、六価クロム含有量が0.50mg/lと高
い値を示しているのに対し、セメント10g、土100
gに対して本発明の処理剤0.15gを混合した試料5
と、セメント10g、土100gに対して本発明の処理
剤0.20gを混合した試料6では、余剰水の六価クロ
ム含有量が0.05mg/l未満と、著しく低下してい
る。
【0030】表1及び表2の結果、並びに処理剤の混合
率が異なる他の試料についての結果(図示省略)から判断
して、処理剤をセメントに混合して使用する場合、処理
剤の混合率は、0.5重量%以上とすることが好まし
く、1.5重量%以上とすることがより好ましいと言え
る。
【0031】(実証例3)下記表3は、セメント練り水に
処理剤を混合して使用する場合において、処理剤の混合
量を変化させた各試料(No.7〜9)について、余剰水
に含まれる六価クロムの量を測定した結果を表わしてい
る。
【0032】
【表3】
【0033】表3の如く、本発明の処理剤を混合しない
試料7では、六価クロム含有量が2mg/lと高い値を
示しているのに対し、セメント10gに本発明処理剤を
0.15%含んだ水溶液(セメント練り水+処理剤)10
ccを混合した試料8と、セメント10gに本発明処理
剤を0.2%含んだ水溶液(セメント練り水+処理剤)1
0ccを混合した試料9では、余剰水の六価クロム含有
量が0.05mg/l未満と、著しく低下している。
【0034】(実証例4)下記表4は、セメント練り水に
処理剤を混合して地盤の改良に使用する場合において、
処理剤の混合量を変化させた各試料(No.10〜12)
について、余剰水に含まれる六価クロムの量を測定した
結果を表わしている。
【0035】
【表4】
【0036】表4の如く、本発明の処理剤を混合しない
試料10では、六価クロム含有量が0.50mg/lと
高い値を示しているのに対し、セメント10g、土10
0gに本発明処理剤を0.15%含んだ水溶液(セメント
練り水+処理剤)20ccを混合した試料11と、セメ
ント10g、土100gに対して本発明処理剤を0.2
%含んだ水溶液(セメント練り水+処理剤)20ccを混
合した試料12では、余剰水の六価クロム含有量が0.
05mg/l未満と、著しく低下している。
【0037】表3及び表4の結果、並びに処理剤の混合
率が異なる他の試料についての結果(図示省略)から判断
して、処理剤をセメント練り水に混合して使用する場
合、処理剤の混合率は、0.05重量%以上とすること
が好ましく、0.15重量%以上とすることがより好ま
しいと言える。
【0038】(実証例5)下記表5は、本発明の処理剤に
よって処理したセメントの固化物を対象として、処理剤
の混合量を変化させた各試料(No.13、14)につい
てセメント固化物から溶出する六価クロムの量を測定し
た結果を表わしている。
【0039】
【表5】
【0040】表5の如く、セメント20gに本発明の処
理剤0.3gを混合した試料13、並びに、セメント2
0gに本発明処理剤を0.1%含んだ水溶液(セメント練
り水+処理剤)20ccを混合した試料14の何れにお
いても、六価クロムの溶出量は0.01mg/l未満
と、低い値になっている。
【0041】表1〜表4の結果に加えて、表5の結果か
ら明らかな様に、本発明の処理剤によれば、余剰水中の
六価クロム含有量を効果的に抑えることが出来るばかり
でなく、セメント固化物からの六価クロムの溶出量も効
果的に抑制することが出来る。
【0042】尚、本発明の処理剤は、第1原料である硫
酸第一鉄と、第2原料である岩石粉末とを混合したもの
であって、両原料が相乗効果的に六価クロムの溶出を抑
制するものであるが、第1原料及び第2原料はそれぞれ
単独でも六価クロム溶出抑制効果を発揮するので、工程
等の条件によって何れか一方の原料を単独でセメントの
処理に用いることも有効である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ
    及びアルミナを主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる
    第2原料とを含んでいるセメントの処理剤。
  2. 【請求項2】 第1原料の硫酸第一鉄は、化学記号:F
    eSO・7HOで表わされる請求項1に記載のセメ
    ントの処理剤。
  3. 【請求項3】 第1原料の硫酸第一鉄は、酸化チタンの
    製造工程で副産物として生成された硫化鉄を乾燥後に粉
    砕することによって、粉末状に加工したものである請求
    項2に記載のセメントの処理剤。
  4. 【請求項4】 第2原料の岩石粉末は、硅岩系の変成岩
    を粉砕したものであって、シリカを約80重量%、アル
    ミナを約10重量%含んでいる請求項1に記載のセメン
    トの処理剤。
  5. 【請求項5】 第1原料の硫酸第一鉄の混合率が20〜
    80重量%、第2原料の岩石粉末の混合率が80〜20
    重量%である請求項1乃至請求項4の何れかに記載のセ
    メントの処理剤。
  6. 【請求項6】 硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ
    及びアルミナを主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる
    第2原料とを混合して、セメントの処理剤を製造する第
    1工程と、第1工程によって製造された処理剤をセメン
    トに混合する第2工程とを有するセメントの処理方法。
  7. 【請求項7】 第2工程では、セメントの混合率を9
    5.0〜99.5重量%、処理剤の混合率を5.0〜0.5
    重量%とする請求項6に記載のセメントの処理方法。
  8. 【請求項8】 硫酸第一鉄からなる第1原料と、シリカ
    及びアルミナを主成分とする硅岩系の岩石粉末からなる
    第2原料とを混合して、セメントの処理剤を製造する第
    1工程と、第1工程によって製造された処理剤をセメン
    ト練り水に溶解させ、これによって得られた水溶液を用
    いてセメントを練る第2工程とを有するセメントの処理
    方法。
  9. 【請求項9】 第2工程では、セメント練り水の混合率
    を95.0〜99.95重量%、処理剤の混合率を5.0
    〜0.05重量%とする請求項8に記載のセメントの処
    理方法。
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