JP2001525316A - ニュールツリンタンパク質産物を使用する難聴の予防および治療方法 - Google Patents

ニュールツリンタンパク質産物を使用する難聴の予防および治療方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、一般に、ニュールツリン神経栄養因子タンパク質産物を投与することによる、蝸牛有毛細胞およびラセン神経節ニューロンの損傷または変性の予防および/または治療方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、感音難聴の治療方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) 本発明は、一般に、神経栄養因子タンパク質産物を投与することによる、有毛
細胞、聴覚ニューロンなどの内耳感覚細胞の損傷または変性の予防および/また
は治療方法に関する。本発明は、特に、種々の原因による難聴の予防および/ま
たは治療方法に関する。
【0002】 神経栄養因子は、神経系または該神経系に神経支配される非神経組織内で見出
される天然タンパク質であり、ある種の神経および/またはグリア細胞集団の生
存を促進し、それらの表現型分化を維持するよう機能する(Varonら, Ann. Rev.
Neuroscience, 1:327, 1979; Thoenenら, Science, 229:238, 1985)。この生 理的役割のため、ある種の神経栄養因子は、ある種の神経細胞の変性および分化
機能の喪失(神経損傷から生じるもの)の治療に有用であることが判明している
。神経損傷は、(1)損傷部位付近の軸索突起の変性(今度はこれが神経細胞死 を招く)および/または神経細胞体の変性を引き起こす物理的損傷、(2)卒中 などの場合に見られる、神経系部分への血流の一時的または永久的な停止(虚血
)、(3)癌およびエイズの化学療法剤であるそれぞれシスプラチナムおよびジ デオキシシチジン(ddC)などの神経毒に対する意図的または偶然的な曝露、(4
)糖尿病、腎不全などの慢性代謝疾患、または(5)特定のニューロン集団の変 性から生じるパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症などの神
経変性疾患を含む、1以上の神経細胞型の生存および/または適当な機能を損な う状態により生じる。特定の神経栄養因子が、神経損傷の治療に潜在的に有用と
なるためには、損傷を受けた神経細胞のクラスまたはクラス群が、該因子に対し
て応答性でなければならない。すべてのニューロン集団は、必ずしもすべての神
経栄養因子に応答性ではなく、また、それらに同等には影響されないことが確認
されている。
【0003】 同定された最初の神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)であった。NGFは、ニ
ューロトロフィンと称される栄養因子の確定ファミリーの最初のメンバーであり
、現在では、ニューロトロフィンには、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロ
トロフィン-3(NT-3)、NT-4/5およびNT-6も含まれる(Thoenen, Trends. Neuro
sci. 14:165-170, 1991; 1991; Snider, Cell, 77:627-638, 1994; Bothwell, A
nn. Rev. Neurosci., 18:223-253, 1995)。これらのニューロトロフィンは、tr
kチロシンキナーゼ受容体(すなわち、trkA、trkB、trkC)のファミリーおよび 低親和性p75受容体を介して作用することが公知である(Snider, Cell, 77:627-
638, 1994; Bothwell, Ann. Rev. Neurosci., 18:223-253, 1995; Chaoら, TINS
18:321-326, 1995)。
【0004】 グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)は、インビトロにおいて中脳ドーパミ
ン作動性ニューロンの生存を促進し該ニューロンの伝達物質表現型を刺激するそ
の効能に基づくアッセイを用いて同定および精製されたタンパク質である(Lin ら, Science 260:1130-1132, 1993)。GDNFは、トランスフォーミング増殖因子 β(TGF-β)スーパーファミリーのタンパク質と或る程度の構造的相同性を有す
るグリコシル化ジスルフィド結合ホモ二量体である(Linら, Science 260:1130-
1132, 1993; Krieglsteinら, EMBO J. 14:736-742, 1995; Poulsenら, Neuron 1
3:1245-1252, 1994)。GDNF mRNAは、末梢神経系における筋肉およびシュワン細
胞中(Hendersonら, Science, 266:1062-1064, 1994; Truppら, J. Cell. Biol.
, 130:137-148, 1995)および中枢神経系におけるI型アストロサイト中で検出さ
れている(Schaarら, Exp. Neurol., 124:368-371, 1993)。インビボでは、外 因性GDNFでの処理は、黒質ニューロンのドーパミン作動性表現型を刺激し、パー
キンソン病のモデル動物において軸索切断またはドーパミン作動性神経毒により
誘導された機能的欠損を回復させる(Hudsonら, Brain Res. Bull. 36:425-432,
1995; Beckら, Nature 373:339-341, 1995; Tomacら, Nature 373:335-339, 19
95; Hofferら, Neurosci. Lett. 182:107-111, 1994)。GDNFは少なくともイン ビトロにおいてはドーパミン作動性ニューロンに比較的に特異的であると当初は
考えられていたが、GDNFは、中脳ドーパミン作動性ニューロンおよび体性運動ニ
ューロン以外の神経栄養標的のより大きなスペクトルを有する可能性があること
を示す証拠が現れ始めている(YanおよびMatheson, Nature 373:341-344, 1995;
Oppenheimら, Nature 373:344-346, 1995; Mathesonら, Soc. Neurosci. Abstr
, 21, 544, 1995; Truppら, J. Cell. Biol. 130:137-148, 1995)。特に、GDNF
は、インビボおよびインビトロの両方において脳幹および脊髄コリン作動性運動
ニューロンに対する(Oppenheimら, Nature, 373:344-346, 1995; Zurnら, Neur
oreport, 6:113-118, 1994; Yanら, Nature, 373:341-344, 1995; Hendersonら,
Science, 266:1062-1064, 1994)、網膜ニューロン(例えば、光受容体および 網膜神経節細胞)に対する、および背根神経節からの感覚ニューロンに対する神
経栄養効力を有することが判明した。
【0005】 内耳のコルチ器内の神経上皮有毛細胞は音を神経活性に変換し、それは、第8 脳神経の蝸牛部に沿って伝達される。この神経は、以下の3つのタイプのニュー ロンからの線維よりなる(Spoendlin, H.H., In: Friedmann, I. Ballantype, J
.編, Ultrastructural Atlas of Inner Ear; London. Butterworth, pp. 133-16
4, 1984):1)ラセン神経節に存在し蝸牛を脳幹に接続する求心性ニューロン、
2)上オリーブ複合体に由来する遠心性オリーブ蝸牛ニューロン、および3)頚部
交感神経幹に由来し蝸牛を神経支配する自律性アドレナリン作動性ニューロン。
ヒトには、それぞれ約50の層板よりなる有髄軸索および4〜6μm径を有する約30,
000の求心性蝸牛ニューロンが存在する。この組織学的構造は、重要な機能的特 徴である均一な伝導速度の基礎を形成する。聴神経の全長にわたり、求心性線維
の栄養的配列が存在し、その「基底(basal)」線維は、中央に配置する「尖端 (apical)」線維上で、ねじれたロープ状に包まれている。Spoendlin(Spoendl
in, H.H. In: Naunton, R.F., Fernadex, C.編, Evoked Electrical Activity i
n the Auditory Nervous System. London, Academic Press, pp.21-39, 1978) は、形態学的相違に基づき、ラセン神経節中の2つの型の求心性ニューロンを同 定した。I型細胞(95%)は双極性であり、内有毛細胞に投射する有髄細胞体お よび軸索を有する。II型細胞(5%)は、無髄軸索を有する単極性であり、コル チ器の外有毛細胞に投射する。各内有毛細胞は約20の線維に神経支配され、それ
らの各々は僅か1個の細胞上でシナプスを形成している。それに対して、各外有 毛細胞は約6の線維に神経支配され、各線維は枝分かれして約10個の細胞に供給 する。蝸牛内では、線維は、1)主として同側性に生じ内有毛細胞への求心性ニ ューロンとシナプス形成する内ラセン群、および2)主として対側性に生じ外有 毛細胞と直接的にシナプス形成する、より多数の外側放射状群に分けられる。あ
る1つの周波数(特徴周波数または最良周波数)に最小閾値が存在するが、この レベルより上および下の周波数では、閾値が急激に上昇する(Pickles, J.O. In
: Introduction to the Physiology of Hearing. London, Academic Press, pp.
71-106, 1982)。したがって、単一の聴神経線維が帯域通過(バンドパス)フィ
ルターとして挙動しているらしい。基底膜は、その長さに沿った距離が異なれば
異なる周波数に対して優先的に振動し、各蝸牛神経線維の周波数選択性は、該線
維が接続している内有毛細胞の周波数選択性と類似している。したがって、各蝸
牛神経線維は、その隣接線維とは異なる周波数範囲に及ぶ同調曲線を示す(Evan
s, E.F. In: Beagley H.A.編, Auditory investigation: The Scientific and T
echnological basis. New York, Oxford University Press, 1979)。このメカ ニズムにより、複合音が内耳のフィルターにより成分周波数に分解される(周波
数分解)。
【0006】 社会的コミュニケーションおよび就業に関連したコミュニケーションを妨げる
ほどに甚だしい難聴は、米国人集団において最も一般的な慢性神経障害の1つで ある。健康面接データ(Vital and health statistics. Series 10. No.176. Wa
shington, D.C. (DHHS publication no. (PHS) 90-1504)によると、45歳未満の
人の約4%および65歳以上の人の約29%が障害性の難聴を有すると見積もられて いる。2800万人を超える米国人が聴力障害を有し、このグループの200万人もの 人が深刻な難聴であると見積もられている(A report of the task force on th
e National Strategic plan. Bethesda, Md.: National Institute of Health,
1989)。難聴の罹患率は、年齢と共に劇的に増加する。乳児1000人当たり約1人 が、助力無しでの話し言葉の発達を妨げるほどに重篤な難聴を有する(Gentile,
A.ら, Characteristics of persons with impaired hearing: United States,
1962-1963. Series 10. No. 35. Washington, D.C.: Government printing offi
ce, 1967 (DHHS publication no. (PHS)1000) (Human communication and its d
isorders: an overview. Bathesda, Md.: National Institutes of health, 170
)。75歳を超える1000人当たり約360人が障害性の難聴を有する(Vital and hea
lth statistics. Series 10. No. 176. Washington, D.C. (DHHS publication n
o. (PHS) 90-1504)。
【0007】 聴覚、発声および言語の障害による生産性減少、特殊教育および医学的治療の
コストは、年間300憶ドルを上回りうると見積もられている(1990 annual repor
t of the National Deafness and other Communication Disorders Advisory Bo
ard. Washington, D.C.: Government Printing Office, 1991. (DHHS publicati
on no. (NIH) 91-3189)。小児における深刻な難聴の一般的な主要原因は遺伝的
障害および髄膜炎であり、これらは全体のそれぞれ約13%および9%を構成する (Hotchkiss, D. Demographic aspects of hearing impairment: questions and
answers.第2版. Washington, D.C.: Gallaudet University Press, 1989)。小
児難聴の症例の約50%は原因不明であるが、遺伝的原因または素因によると考え
られる(Nance WE, Sweeney A. Otolaryngol. Clin. North Am 1975; 8:19-48)
【0008】 外耳道から中枢神経系までの聴覚伝導路に沿ったいずれかの部位における障害
が、難聴を引き起こしうる。聴覚器は、外および中耳、内耳および聴神経および
中枢聴覚伝導路に細分することができる。ヒトにおける聴覚情報は、内耳内の約
15,000個の神経上皮細胞(有毛細胞)および30,000個の一次ニューロン(ラセン
神経節細胞)の作用により、機械的信号から神経伝導性電気インパルスに変換さ
れる。ラセン神経節ニューロンのすべての中心線維は、橋脳幹の蝸牛神経核にお
いてシナプスを形成する。聴覚に関与するニューロンの数は、蝸牛から聴覚脳幹
および聴覚皮質にかけて劇的に増加する。すべての聴覚情報は、僅か15,000個の
有毛細胞により変換され、そのうちの3500個を占めるいわゆる内有毛細胞は、30
,000個の一次聴覚ニューロンの約90%とシナプスを形成するため非常に重要であ
る。したがって、聴覚末梢における比較的少数の細胞に対する損傷でも、相当な
難聴につながりうる。したがって、感覚神経の喪失のほとんどの原因は内耳内の
病変に起因しうる(Nadol, J.B., New England Journal of Medicine, 1993, 32
9:1029-1102)。
【0009】 難聴は、伝音、感音および中枢のレベルで生じうる。伝音難聴は、内耳液へ鼓
膜および小骨により増幅される空気伝播音の正常な伝導路の破壊を引き起こす外
耳または中耳を冒す病変により生じる。感音難聴は、蝸牛または第8脳神経の聴 覚部の病変により生じる。中枢性難聴は中枢聴覚伝導路の病変による。これらは
、蝸牛および背側オリーブ核複合体、下丘、内側膝状体、聴覚皮質(側頭葉中)
および相互連絡する求心性および遠心性線維路よりなる(Adams R.D.およびMaur
ice, V. E編: Principles of Neurology. 1989. McGraw-Hill Information serv
ices Company. pp 226-246)。
【0010】 前記のとおり、小児における深刻な難聴の症例の少なくとも50%は遺伝的原因
による(Brown, K.S., Med. Clin. North AM. 1969; 53:741-72)。遺伝的素因 が、75歳を超える集団の3分の1を冒す老人性または加齢関連難聴の主要な原因因
子である可能性を考慮すると(Nadol, J.B. In: Beasley DS, Davis GA編, Agin
g: Communication Processes and Disorders. New York: Grune & Stratton, 19
81:63-85)、おそらく遺伝的因子が難聴のまさに最も一般的な原因であろう。遺
伝的異常は、伝音難聴よりも感音難聴としてはるかに頻繁に現れる。遺伝的に定
められる感音難聴は、特に小児においては、感音難聴の、最も主要とまではいか
なくとも明らかに主要な原因である(Nance WE, Sweeney A. Otolaryngol. Clin
. North Am 1975; 8:19-48)。感音難聴の最も一般的な症候群形態としては、ワ
ールデンブルグ症候群、アルポート症候群およびアッシャー症候群が挙げられる
【0011】 一般に使用される種々の薬物は耳毒性を有する。最もよく知られているのは、
アミノグリコシド抗生物質(Lerner, S.A.ら編, Aminoglycoside ototoxicity.
Boston: Little, Brown, 1981; Smith, C.R.ら. N Engl. J. Med. 1980; 302:11
06-9)、係蹄利尿薬(Bosher, S.K., Acta Otolaryngol. (Stockholm) 1980;90:
4-54)、サリシラート(Myers, E.N.ら, N Engl. J. Med. 1965;273:587-90)お
よび抗腫瘍剤、例えばシスプラチン(Strauss, M.ら, Laryngoscope 1983; 143:
1263-5)である。また、耳毒性は、エリスロマイシンの経口または非経口投与中
に認められている(Kroboth, P.D.ら, Arch Intern Med. 1983; 1:169-79; Achw
eitzer, V.G., Olson, N. Arch. Otolaryngol. 1984; 110:258-60)。
【0012】 ほとんどの耳毒性物質は、蝸牛、特に聴覚有毛細胞および血管条(これは、流
体および電解質の恒常性をもたらす内耳内の特殊化した上皮性器官である)を損
なうことにより難聴を引き起こす(Nadol, J.B. New England J. Med. 1993, 32
9:1092-1102)。有毛細胞を冒す耳毒性事象から長期間を経た後に、二次神経変 性が生じうる。いくつかの耳毒性物質は内耳内に選択的に濃縮されて、全身投与
を中断したにもかかわらず進行性感音難聴を引き起こしうるという証拠がある(
Federspil, P.ら, J. Infect. Dis. 1976; 134 Suppl: S200-S205)。
【0013】 聴覚の過剰刺激による外傷は、難聴のもう1つの主要原因である。騒音からの 外傷に対する感受性には個人差がある。人によっては、強度の騒音にさらされる
と、たとえそれが米国職業安全衛生管理局により承認されているレベル未満であ
っても、臨床的に重要な感音難聴が生じうる(Osguthorpe, J.D.編. Washington
D.C.: American Academy of Otolarynogology-Head and Neck Surgery Foundat
ion, 1988)。
【0014】 多発性硬化症などの脱髄過程は感音難聴を引き起こしうる(Noffsinger, Dら,
Acta Otolaryngol Suppl (Stockh) 1972; 303:1-63)。より最近になって、免 疫媒介感音難聴が認められた(McCabe, B.F. Ann Otol Rhinol Laryngol 1979;
88:585-9)。難聴は、通常、両側性であり、急速に進行し(週および月単位で測
定される)、前庭症状を伴うこともあれば伴わないこともある。
【0015】 原発性および転移性の種々の腫瘍は、内耳または聴神経を冒すことにより伝音
難聴または感音難聴を引き起こしうる(Houck, J.R.ら, Otolaryngol Head Neck
Surg 1992; 106:92-7)。原因不明の種々の変性障害が感音難聴を引き起こしう
る。変動性の感音難聴、偶発的な眩暈および耳鳴りにより特徴づけられるメニエ
ール症候群(Nadol, JB.編. Meniere’s disease: pathogenesis, pathophysiol
ogy, diagnosis, and treatment. Amsterdam: Kugler & Ghedini 1989)の発生 病理は依然として不明であるが、それは内耳内の流体恒常性の障害により引き起
こされるらしい。中等度ないしは重症の感音難聴を引き起こす突発的な特発性感
音難聴(Wilson, W.R.ら, Arch Otolaryngol 1980; 106:772-6)は、内耳虚血お
よび迷路炎を含む種々の原因による可能性がある。
【0016】 加齢に関連した難聴である老人性難聴は、75歳を超える人の3分の1を冒す。老
人性難聴の最も一般的な組織病理学的相関因子は、末梢聴覚系の神経上皮(有毛
)細胞、ニューロンおよび血管条の喪失である(Schuknecht H.F. Pathology of
the Ear. Cambridge, Mass: Harvard University Press, 1974:415-420)。老 人性難聴は、音響性外傷、耳毒性および遺伝的な影響による変性を含む一生の間
のいくつかの有害な影響の累積的効果から生じるものとして最もよく理解されて
いる。
【0017】 ある種の神経栄養因子は、発生中のニューロンの分化および生存を調節するこ
と(Korsching S.J. Neurosci 13:2739-2748, 1993)、および成体における損傷
および毒素からニューロンを保護すること(Hefti, Neurosci. 6:2155-2162, 19
86; Apfelら, Ann Neurol 29:87-89, 1991; Hymanら, Nature 350:230-233, 199
1; Knuselら, J. Neurosci. 12:4391-4402, 1992; Yanら, Nature, 360:753-755
, 1992; Koliatsosら, Neuron, 10:359-367, 1993)が示されている。ニューロ トロフィン受容体TrkBおよびTrkCのmRNAが、発生中の蝸牛前庭神経節により発現
されること(Ylikoskiら, Hear. Res. 65:69-78 1993; Schectersonら, Hearing
Res. 73:92-100 1994)、およびBDNFおよびNT-3のmRNAが、コルチ器を含む内耳
内に存在すること(Pirvolaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9915-9919, 19
92; Schectersonら, Hearing Res. 73:92-100 1994; Wheelerら, Hearing Res.
73:46-56, 1994)が、in situハイブリダイゼーション研究において示されてい る。前庭および聴覚系の発生におけるBDNFおよびNT-3の生理的役割が、欠失した
BDNFおよび/またはNT-3遺伝子を保持するマウスにおいて検討された(Ernfors ら, Neuron 14:1153-1164 1995)。蝸牛において、BDNF突然変異体は、2型ラセ ンニューロンを喪失して、外有毛細胞の神経支配の不存在を招いた。NT-3突然変
異体は求心性体の欠乏を示し、内有毛細胞を神経支配する1型ニューロンに恐ら く相当すると考えられるラセンニューロンの87%を喪失していた。二重突然変異
体は、追加的な喪失を有し、すべての前庭およびラセンニューロンを欠いていた
。特定のニューロン集団の生存および内耳の末梢感覚系における標的の神経支配
の維持にTrkBおよびTrkC受容体が必要であることが、これらの遺伝子のチロシン
キナーゼ触媒ドメインにおける生殖細胞系突然変異を保持するマウスの研究によ
り示された(Schimmangら, Development, 121:3381-3391 1995)。Gaoら(J. Ne
urosci. 15:5079-5087, 1995)は、分散培養におけるラット生後ラセン神経節ニ
ューロンに関するNT-4/5、BDNFおよびNT-3の生存促進効力を示しており、また、
NT-4/5がこれらのニューロンを抗癌薬シスプラチンの神経毒作用から保護するこ
とを示している。また、BDNFおよびNT-3は、分散培養において成体ラット聴覚ニ
ューロンの生存を助けることが示されている(Lefevreら, Neuroreport 5: 865-
868, 1994)。
【0018】 現在のところ、難聴の治療におけるニュールツリン(neurturin)の使用の報 告はない。聴覚障害は大きな苦痛であるため、聴覚ニューロンおよび有毛細胞を
損傷から保護しうる何らかの物質および治療方法が同定できれば、非常に有益で
あろう。
【0019】 (発明の概要) 本発明は、治療的に有効な量のニュールツリン神経栄養因子タンパク質産物を
、内耳内に病変を有する対象に投与することを含んでなる、感音難聴の治療方法
を提供する。例えば、該難聴は、内耳内の神経上皮有毛細胞(蝸牛有毛細胞)ま
たはラセン神経節ニューロンの損傷または変性に関連していることが可能である
【0020】 本発明は、有毛細胞が、シスプラチン、ネオマイシンなどの耳毒素(ototoxin
)の毒性効果を妨げることによりニュールツリンに応答するという知見、および
聴覚ニューロンもまた、例えばシスプラチン、ネオマイシン、サリチル酸ナトリ
ウムなどの種々の耳毒素の毒性効果を妨げることによりニュールツリンに応答す
るという知見に基づく。したがって、有毛細胞およびラセン神経節ニューロンの
保護、生存または再生を促進させるために、治療的に有効な量のニュールツリン
タンパク質産物を投与することが可能である。
【0021】 また、前庭器の病変または障害を有する対象に、治療的に有効な量のニュール
ツリンタンパク質産物を投与することにより、そのような病変または障害を治療
しうることが見出された。そのような病変は、眩暈感、眩暈または平衡の喪失を
引き起こしうる。
【0022】 そのようなニュールツリンタンパク質産物は、好ましくは、ニュールツリンタ
ンパク質、例えば、図面に記載するアミノ酸配列に示すもの、ならびにその変異
体および誘導体を含むと意図される。また、そのようなニュールツリンタンパク
質産物は[Met-1]ニュールツリンを含むと意図される。
【0023】 本発明においては、該ニュールツリンタンパク質産物を、約1μg/kg/日〜約10
0mg/kg/日の用量、典型的には、約0.1mg/kg/日〜約25mg/kg/日の用量、通常は、
約5mg/kg/日〜約20mg/kg/日の用量で非経口的に投与することが可能である。ま た、個々の患者の必要性および投与経路に応じて、該ニュールツリンタンパク質
産物を、毎日ではなく、より低頻度で(例えば、1週間ごと又は週に数回)投与 することが可能であると意図される。さらに、ニュールツリンタンパク質産物は
、中耳または内耳内に直接投与することが可能であると意図される。より少量の
ニュールツリンタンパク質産物のそのような投与においては、例えば、直接的な
中耳または内耳への約1μg/耳〜約1mg/耳の投与量を単回の注射または複数回の 注射において用いることが可能であると当業者には理解されるであろう。あるい
は、局所的または経口的に投与する場合には、比較的に高用量を用いることが可
能である。
【0024】 さらに、ニュールツリンタンパク質産物を、もう1つの治療剤(例えば、GDNF 、BDNFおよびNT-3)の有効量と組合せて又はそれと共に投与することが可能であ
ると意図される。本発明はまた、感音難聴の種々の原因による有毛細胞および聴
覚ニューロンの損傷または変性の治療用の医薬または医薬組成物の製造における
ニュールツリンタンパク質産物の使用を提供する。そのような医薬組成物は、局
所、経口または中耳および内耳用のニュールツリンタンパク質産物製剤を含み、
それを蝸牛インプラントと組合せることが可能である。
【0025】 これらの投与方法は、後記で詳しく説明する細胞療法(cell therapy)および
遺伝子治療手段により達成しうると当業者に理解されるであろう。例えば、遺伝
子治療手段においては、該ニュールツリンタンパク質産物を産生し分秘するよう
に細胞が修飾されている。該細胞は、エクスビボ(ex vivo)またはインビボで 修飾することができる。現在のところ好ましい本発明の実施態様を記載する以下
の発明の詳細な説明を考慮すれば、本発明の多数の追加的な態様および利点が当
業者に明らかとなるであろう。
【0026】 後記で説明する図面を参照することにより、本発明の多数の特徴および利点が
明らかとなるであろう。
【0027】 (発明の詳細な説明) 本発明は、治療的に有効な量のニュールツリン神経栄養因子タンパク質産物を
投与することによる感音難聴の予防および/または治療方法を提供する。本発明
の1つの態様では、医薬組成物、ニュールツリン発現細胞の移植またはニュール ツリン遺伝子治療により、治療的に有効な量を投与することによる、損傷した有
毛細胞および聴覚ニューロンの治療方法を提供する。本発明は、図1、2、4およ び5に記載のアミノ酸配列(配列番号1、2、3、4および5)で表されるタンパク質
(その変異体および誘導体を含む)を含む生物学的に活性なニュールツリンタン
パク質産物を使用して実施することができる。該ニュールツリンタンパク質産物
の経口的、非経口的または局所的運搬に加えて、細胞療法および遺伝子治療法に
よる投与が意図される。
【0028】 本発明は、培養内の成体ラット由来の解離ラセン神経節ニューロンおよびラッ
ト蝸牛の組織片培養において、ニュールツリンが、耳毒素により誘導される細胞
死から有毛細胞を保護するという最初の知見に基づく。ニュールツリンタンパク
質産物の投与は、外傷性損傷(例えば、音響性外傷ならびにシスプラチンおよび
アミノグリコシド抗生物質による急性または慢性的治療)から、または軸索から
細胞体への神経栄養因子の輸送の遮断により引き起こされる神経栄養因子の欠乏
から生じる損傷から、有毛細胞およびラセン神経節ニューロンを保護すると考え
られる。そのような治療は、外傷または耳毒素から生じる間欠性発作に対して有
毛細胞および/または聴覚ニューロンを耐性にすること、および老人性難聴(加
齢関連難聴)、遺伝的感覚神経変性、特発性疾患後(post-idiopathic)難聴な どの病態における難聴を引き起こす聴覚ニューロンおよび有毛細胞の進行性変性
の進行を遅くすること、および内耳の機能的完全性を維持することを可能にする
と考えられる。また、それは、蝸牛インプラントが、より良好かつより長く働く
ように聴覚ニューロンを支持するであろう。
【0029】 本発明においては、該ニュールツリンタンパク質産物を、約1μg/kg/日〜約10
0mg/kg/日の用量、典型的には、約0.1mg/kg/日〜約25mg/kg/日の用量、通常は、
約5mg/kg/日〜約20mg/kg/日の用量で中耳内に投与することが可能である。内耳 への侵入が既に適所に存在する場合(例えば、蝸牛インプラントまたは内耳手術
の方法などの場合)には、ニュールツリンタンパク質産物を内耳内に直接投与す
ることができる。そのような場合には、より少量のニュールツリンタンパク質産
物を、例えば、約1μg/耳〜約1mg/耳にて単回の注射または複数回の注射で投与 する。該タンパク質産物の慢性的な投与が必要な場合には、Alzetミニポンプな どの運搬装置をカニューレに取り付け、その先端を中耳または内耳内に導入して
該タンパク質産物を連続的に放出させることが可能である。あるいは、ニュール
ツリンタンパク質産物を、鼓膜胞(tympanic membrane of the Bulla)に浸透す
る点耳剤の形態で運搬することができる。さらに、ニュールツリンタンパク質産
物を、聴覚ニューロン変性の治療用のもう1つの治療剤、例えばGDNF、BDNFおよ びNT-3、ならびに種々の内耳病変の治療に使用する他の神経栄養因子または薬物
の有効量と共に投与することが可能であると意図される。後記において、種々の
医薬製剤および種々の運搬技術を更に詳しく説明する。
【0030】 本発明で用いる「ニュールツリンタンパク質産物」なる語は、精製された天然
、合成または組換えニュールツリン神経栄養因子、生物学的に活性なニュールツ
リン変異体(挿入、置換および欠失変異体を含む)、および化学修飾されたその
誘導体を含む。また、図1および4に記載のアミノ酸配列(配列番号1、3および4 )を有するヒトニュールツリンタンパク質と実質的に相同なニュールツリンタン
パク質も含まれる。また、これらの種々のタンパク質の化学修飾された誘導体が
本発明に含まれる。また、ニュールツリンタンパク質産物は、その生物学的に活
性な形態においてホモ二量体またはヘテロ二量体として存在しうる。
【0031】 本発明で用いる「生物学的に活性」なる語は、該ニュールツリンタンパク質産
物が、図面に記載のアミノ酸配列を有するニュールツリンと同様の神経栄養特性
を示す(ただし、有毛細胞およびラセン神経節ニューロンの保護、生存または再
生を促進する活性を少なくとも有していれば、該ニュールツリンと同じ特性の必
ずしもすべてを示す必要はなく、また、それを必ずしも同程度で示す必要はない
)ことを意味する。関心のある個々の神経栄養特性の選択は、該ニュールツリン
タンパク質産物を投与する用途に左右される。
【0032】 本発明で用いる「実質的に相同」なる語は、図1、2、4および5に記載のアミノ
酸配列(配列番号1、2、3、4および5)を有するニュールツリンタンパク質に対 する相同性の程度が、好ましくは、70%以上、より好ましくは80%以上、より一
層好ましくは90%以上または95%以上であることを意味する。例えば、該マウス
タンパク質と該ヒトタンパク質との間の相同性の程度は約91%であり、好ましい
哺乳動物ニュールツリンタンパク質は、同様に高い相同性を有すると考えられる
。相同性(%)または同一性(%)は、Dayhoff, Atlas of Protein Sequence a
nd Structure Vol.5, p.124, National Biochemical Research Foundation, Was
hington, D.C. (1972)(その開示を、参照により本明細書に組入れることとする
)に記載されているとおり、アライメントを助けるために100アミノ酸長中に4個
のギャップを導入しうる場合、比較される配列中の同一アミノ酸残基と整列する
2つの配列の小さい方に見出されるアミノ酸残基の割合(%)として算出される 。また、図1または2(配列番号1または2)のニュールツリンに対する抗体との交
差反応性に基づいて単離しうる任意のニュールツリンタンパク質産物、あるいは
図1または2(配列番号1または2)のニュールツリンをコードする遺伝子または遺
伝子セグメントとのハイブリダイゼーションにより遺伝子を単離しうる任意のニ
ュールツリンタンパク質産物が、実質的に相同なものとして含まれる。
【0033】 本発明のニュールツリンタンパク質産物は、種々の手段により単離または製造
することができる。本発明で有用なニュールツリンタンパク質産物の典型的な製
造法は、1994年5月23日付け出願の米国特許出願第08/182,183号およびその親出 願;WO93/06116として公開されている1992年9月17日付け出願のPCT出願第PCT/US
92/07888号(Linら, Syntex-Synergen Neuroscience Joint Venture);EP610 2
54として公開されている欧州特許出願第92921022.7号;および1995年9月28日付 け出願の米国特許出願第08/535,681号(“Truncated Glial Cell-Line Derived
Neurotrophic Factor”)(それらの開示を参考として本明細書に組入れること とする)に記載のGDNFの製造法と実質的に類似している。
【0034】 ニュールツリンタンパク質産物は、当業者に公知の手段により化学的または組
換え的に合成することができる(例えば、Kotzbauerら, Nature 384:467-470, 1
996を参照されたい)。ニュールツリンタンパク質産物は、好ましくは、組換え 法により製造する。なぜなら、組換え法は、比較的に、より大量のタンパク質を
、より高純度で与えうるからである。組換えニュールツリンタンパク質産物の形
態は、該タンパク質のグリコシル化および非グリコシル化形態を含み、細菌、哺
乳動物または昆虫細胞系中で発現されるタンパク質産物を含むが、これらに限定
されるものではない。
【0035】 一般に、組換え法は、ニュールツリンをコードする遺伝子を単離し、適当なベ
クターおよび細胞型中へ該遺伝子をクローニングし、必要に応じて所望の変異体
をコードするように該遺伝子を修飾し、そして該遺伝子を発現させて該ニュール
ツリンタンパク質産物を産生させることを含む。別法として、所望のニュールツ
リンタンパク質産物をコードするヌクレオチド配列を、化学合成してもよい。ニ
ュールツリンタンパク質産物を、遺伝暗号の縮重または対立遺伝子変異のために
コドン使用頻度が異なるヌクレオチド配列を用いて発現させることが可能であり
、選択した細胞による該タンパク質産物の製造を促進するために改変を行なうこ
とが可能であると意図される。Kotzbauerら, Nature 384:467-470は、ニュール ツリンタンパク質のマウスcDNAおよびアミノ酸配列ならびにヒトcDNAおよびアミ
ノ酸配列の同定について記載している。WO93/06116は、該ニュールツリンタンパ
ク質産物の発現にも用いることができるGDNFタンパク質産物の発現のための種々
のベクター、宿主細胞および培養増殖条件を記載している。大腸菌(E. coli) におけるニュールツリンタンパク質産物の発現に適した追加的なベクターは、19
91年4月24日付け公開の欧州特許出願第EP0 423 980号(“Stem Cell Factor”)
(その開示を参照により本明細書に組入れることとする)に開示されている。
【0036】 精製されたニュールツリンの分子量は、該タンパク質が、その生物学的に活性
な形態において、ジスルフィド結合で結合した二量体であることを示している。
細菌系での発現後に単離される物質は、実質的に生物学的に不活性であり、単量
体として存在する。生物学的に活性なジスルフィド結合で結合した二量体を得る
ためには、リフォールディングが必要である。細菌系で発現されたニュールツリ
ンのリフォールディングおよびナチュレーション(naturation)のための方法は
、WO93/06116に記載の方法に実質的に類似している。また、ニュールツリンの活
性を測定するための標準的なインビトロアッセイは、WO93/06116および1995年9 月28日付け出願の共有同時係属米国特許出願第08/535,681号(参照により本明細
書に組み入れる)に記載のGDNF活性の測定方法に実質的に類似している。
【0037】 A.ニュールツリン変異体 本発明で用いる「ニュールツリン変異体」なる語は、図1、2、4および5のニュ
ールツリンのアミノ酸配列内の残基と比べて、1以上のアミノ酸が欠失している (「欠失変異体」)、挿入されている(「付加変異体」)または置換されている
(「置換変異体」)ポリペプチドを含む。そのような変異体は、該ポリペプチド
をコードするDNA中に適当なヌクレオチドの変更を導入することにより、あるい は所望のポリペプチドのインビトロ化学合成により製造する。最終的な分子がニ
ュールツリンの生物学的活性を有する限り、欠失、挿入および置換の多数の組合
せを行なうことができると当業者に理解されるであろう。代表的な置換変異体を
図4に記載する。
【0038】 1以上の選択されたアミノ酸残基の置換、挿入または欠失のための突然変異誘 発法は、当業者によく知られている(例えば、米国特許第4,518,584号(その開示
を参照により本明細書に組入れることとする))。変異体の構築においては、突 然変異部位の位置、および突然変異の性質という2つの主要な変数がある。ニュ ールツリン変異体を設計する場合、突然変異部位および突然変異の性質の選択は
、修飾すべきニュールツリンの特性に左右されうる。突然変異の部位は、例えば
、(1)まず同類アミノ酸選択物で置換し、ついで、得られた結果に応じて、よ り過激(radical)な選択物で置換する、(2)標的アミノ酸残基を欠失させる、
あるいは(3)その位置する部位の隣にアミノ酸残基を挿入することにより、個 別的または連続的に修飾することができる。1〜20個のアミノ酸の同類変化が好 ましい。所望のニュールツリンタンパク質産物のアミノ酸配列が決定されたら、
該タンパク質の発現に使用する核酸配列は容易に決定される。また、N末端およ びC末端の欠失変異体は、タンパク質分解酵素により得ることができる。
【0039】 ニュールツリンの欠失変異体の場合、欠失は、一般には約1〜30個の残基、通 常は約1〜10個の残基、典型的には約1〜5個の連続した残基に及ぶ。N末端、C末 端および内部の配列内欠失が意図される。ニュールツリンの活性を修飾するため
に、他のTGF-βファミリーメンバーに対して低い相同性を有する領域内に欠失を
導入してもよい。他のTGF-βスーパーファミリーの配列と実質的に相同な領域内
で欠失させると、ニュールツリンの生物活性をより有意に修飾する可能性が高く
なるであろう。連続的欠失の数は、影響を受けるドメイン(例えば、システイン
架橋)内のニュールツリンタンパク質産物の三次構造を維持するよう選択する。
欠失変異体の非限定的な具体例には、1〜7個のN末端アミノ酸を欠くトランケー ト化ニュールツリンタンパク質産物、または該C末端残基を欠く変異体、または それらの組合せが含まれる。
【0040】 基本的な実施形態においては、該トランケート化ニュールツリンタンパク質は
、以下のアミノ酸配列(この配列においては、ヒトニュールツリンタンパク質と
の比較を容易にするために図1のアミノ酸残基の番号付けを用いている):
【0041】 X-[Cys8-Cys101]-Y (式中、 [Cys8-Cys101]は、図1に示すCys8〜Cys101のアミノ酸配列(配列番号1)を 表す; Yは、0個または1個以上のカルボキシ末端アミノ酸残基(例えば、Val102) を表す; Xは、メチオニン残基、0個または1個以上のアミノ末端アミノ酸残基、例え ば、
【0042】 P RP ARP GARP LGARP RLGARP ARLGARP を表す)で表されうる。
【0043】 本発明で用いる「トランケート化ニュールツリンタンパク質産物」なる語は、
生物学的に活性な合成または組換えトランケート化ニュールツリンタンパク質、
成熟ニュールツリンから得たトランケート化ニュールツリンタンパク質、生物学
的に活性なトランケート化ニュールツリン変異体(挿入、置換および欠失変異体
を含む)、および化学修飾されたそれらの誘導体を含む。また、図1に記載のア ミノ酸配列(配列番号1)を有するヒトニュールツリンタンパク質と実質的に相 同なトランケート化ニュールツリンタンパク質も含む。
【0044】 ニュールツリンの付加変異体の場合、アミノ酸配列の付加は、典型的には、1 残基長から100以上の残基長を含有するポリペプチドまでの範囲のNおよび/また
はC末端の融合体、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の内部配列内付加を 含む。内部の付加は、一般には約1〜10残基、より典型的には約1〜5残基、通常 は約1〜3アミノ酸残基に及ぶ。N末端付加変異体には、例えば、[Met−1]ニュー ルツリンと称されるN末端メチオニル残基を有するニュールツリン(例えば、細 菌組換え細胞培養におけるニュールツリンの直接発現の人工産物)、および組換
え宿主細胞から成熟ニュールツリンが分泌されるのを促進するためのニュールツ
リンのN末端に対する異種N末端シグナル配列の融合体が含まれる。そのようなシ
グナル配列は、一般には、意図される宿主細胞種から得られ、したがってそれと
同種となるであろう。また、付加には、他の神経栄養因子の配列に由来するアミ
ノ酸配列(例えば、ヒトまたはラットGDNFタンパク質の1〜35 N末端アミノ酸残 基)を含めることが可能である。本発明に従い使用するための好ましいニュール
ツリンタンパク質産物は、組換えヒト[Met−1]ニュールツリンである。
【0045】 ニュールツリンの置換変異体では、ヒトまたはマウスニュールツリンアミノ酸
配列のアミノ酸配列の少なくとも1アミノ酸残基が除去されており、その位置に 異なる残基が挿入されている。そのような置換変異体には、種集団における天然
に存在するヌクレオチド配列の変化(これは、アミノ酸の変化を引き起こすこと
もあれば引き起こさないこともある)により特徴付けられる対立遺伝子変異体が
含まれる。置換変異体の一例を、図4(配列番号3または4)に記載する。
【0046】 ニュールツリンアミノ酸配列の特異的な突然変異は、グリコシル化部位(例え
ば、セリン、トレオニンまたはアスパラギン)に対する修飾を含むことが可能で
ある。グリコシル化の不存在または部分的にすぎないグリコシル化は、任意のア
スパラギン-結合グリコシル化認識部位またはO-結合炭水化物の付加により修飾 される分子の任意の部位におけるアミノ酸の置換または欠失から生じる。アスパ
ラギン-結合グリコシル化認識部位は、適当な細胞グリコシル化酵素により特異 的に認識されるトリペプチド配列を含む。これらのトリペプチド配列は、Asn-Xa
a-ThrまたはAsn-Xaa-Ser(式中、Xaaは、Pro以外の任意のアミノ酸であることが
可能である)である。グリコシル化認識部位の1番目または3番目のアミノ酸位置
の一方または両方が種々のアミノ酸で置換されたり欠失すると(および/または
、2番目の位置でアミノ酸が欠失すると)、修飾されたトリペプチド配列部位に おける非グリコシル化が生じる。したがって、適当な改変ヌクレオチド配列の発
現により、その部位でグリコシル化されていない変異体が得られる。別法として
、グリコシル化部位を付加するように、ニュールツリンアミノ酸配列を修飾する
ことができる。
【0047】 突然変異誘発のためのニュールツリンのアミノ酸残基または領域を同定するた
めの1つの方法は、CunninghamおよびWells(Science, 244:1081-1085, 1989)に
記載されているとおり、「アラニンスキャニング突然変異誘発(alanine scanni
ng mutagenesis)」と称される。この方法では、標的残基のアミノ酸残基または
基を同定し(例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGluなどの荷電残基)、それを 中性のまたは負に荷電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラ
ニン)で置換して、細胞内外における周囲の水性環境と該アミノ酸との相互作用
に影響を与える。ついで、該置換に対し機能的な感受性を示すドメインを、該置
換部位に追加的または代替的な残基を導入することにより改良する。このように
して、アミノ酸配列変異を導入するための標的部位を決定し、該DNA配列の対応 標的コドンまたは領域上でアラニンスキャニングまたはランダム突然変異誘発を
行ない、発現されたニュールツリン変異体を、所望の活性と活性の程度との最適
な組合せに関してスクリーニングする。
【0048】 置換突然変異誘発において最も関心のある部位には、種々の種からのニュール
ツリンタンパク質中に見出されるアミノ酸が側鎖の嵩高さ、電荷および/または
疎水性の点で実質的に異なっている部位が含まれる。関心のある他の部位は、種
々の種から得られるニュールツリン様タンパク質の特定の残基が同一である部位
である。そのような位置は、一般には、タンパク質の生物活性に重要である。ま
ず、これらの部位を、比較的に同類的な様態で置換する。そのような同類置換を
、表1の「好ましい置換」の項目に示す。そのような置換により生物活性が変化 すれば、より実質的な変化(代表的な置換)を導入し、および/または、他の付
加または欠失を行ない、得られた産物を活性に関してスクリーニングすることが
可能である。
【0049】
【表1】
【0050】 アミノ酸配列に対する同類修飾(およびコードする核酸配列に対する対応する
修飾)は、天然ニュールツリンと同様の機能的および化学的特性を有するニュー
ルツリンタンパク質産物を与えると予想される。これに対して、ニュールツリン
タンパク質産物の機能的および/または化学的特性の実質的な修飾は、(a)置 換領域におけるポリペプチドバックボーンの構造(例えば、シートまたはらせん
コンホメーションとしての構造)、(b)標的部位における分子の電荷または疎 水性、または(c)側鎖の嵩高さを維持することに対するその効果の点で有意に 異なる置換を選択することにより達成することができる。天然に存在する残基は
、一般的な側鎖の特性に基づき、以下のグループに分類される: 1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile; 2)中性親水性:Cys、Ser、Thr; 3)酸性:Asp、Glu; 4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg; 5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および 6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0051】 非同類置換には、これらの1つのクラスのメンバーを別のクラスのものと交換 することを含めることが可能である。そのような置換残基は、GDNFを含む他のTG
F-βスーパーファミリーのタンパク質と相同なニュールツリンタンパク質領域中
、または該分子の非相同領域中に導入することができる。
【0052】 B.ニュールツリン誘導体 また、当業者であれば、本開示に基づき、ニュールツリンタンパク質産物の化
学修飾誘導体を製造することが可能である。誘導体化に最も適した化学的部分に
は、水溶性重合体が含まれる。水溶性重合体が結合したタンパク質は、水性環境
(例えば、生理的環境)中で沈殿しないため、水溶性重合体が望ましい。治療用
産物または組成物の製造のためには、好ましくは、該重合体は医薬上許容される
ものである。当業者であれば、該重合体/タンパク質コンジュゲートを治療用に
使用するか否かの考慮、また、そうであれば所望の用量、循環時間、タンパク質
分解に対する抵抗性およびその他の考慮事項に基づき、所望の重合体を選択する
ことが可能であろう。
【0053】 適当な水溶性重合体には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコ ール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキス
トラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラ ン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミ ノ酸(ホモ重合体またはランダム共重合体のいずれか)、およびデキストランま
たはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール
ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキ
シエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およ
びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリエチレ
ングリコールプロピオンアルデヒドは水中で安定であるため、製造上有利かもし
れない。
【0054】 該重合体は、任意の分子量のものであることが可能であり、また、分枝状また
は非分枝状であることが可能である。ポリエチレングリコールの場合、好ましい
分子量は、取り扱いおよび製造の容易さの点で、約2kDa〜約100kDaである(「約
」なる語は、ポリエチレングリコール調製物のうち、ある分子は、示されている
分子量より大きく、ある分子は小さいことを示す)。所望の治療プロフィール(
例えば、所望の徐放性の持続時間、生物活性に対する存在する効果、取り扱い易
さ、抗原性の程度または欠如、および治療用タンパク質または変異体に対するポ
リエチレングリコールの他の公知の効果)に応じて、他のサイズを用いてもよい
【0055】 このように結合する重合体分子の数は、様々であることが可能であり、当業者
であれば、機能に対するその効果を確認することができるであろう。モノ−誘導
体化(mono-derivatize)を行なうことが可能であり、あるいは同じまたは異な る化学的部分(例えば、種々の重量のポリエチレングリコールなどの重合体)で
、ジ−、トリ−、テトラ−誘導体化あるいは誘導体化の何らかの組み合わせを行
なうことが可能である。タンパク質(またはペプチド)分子に対する重合体分子
の比率は、反応混合物中のそれらの濃度と同様、特に限定されるものではない。
一般に、最適な比率(過剰な未反応タンパク質または重合体が存在しないという
点での反応効率に関して)は、誘導体化の所望の程度(例えば、モノ−、ジ−、
トリ−など)、選択した重合体の分子量、該重合体が分枝状か非分枝状か、反応
条件などの因子により決定されることとなる。
【0056】 ポリエチレングリコール分子(または他の化学的部分)は、該タンパク質の機
能ドメインまたは抗原ドメインに対する効果を考慮して該タンパク質に結合させ
るべきである。多数の結合方法が当業者に利用可能である。例えば、EP 0 401 3
84(G-CSFに対するPEGの結合)(その開示を参照により本明細書に組入れること
とする)を参照されたい。また、Malikら, Exp. Hematol. 20: 1028-1035, 1992
(塩化トレシル(tresyl chloride)を用いるGM-CSFのペジル化(pegylation)を報 告している)も参照されたい。例えば、反応性基(例えば、遊離アミノまたはカ
ルボキシル基)を介してアミノ酸残基により、ポリエチレングリコールを共有結
合させることができる。反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子
が結合しうる基である。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基には、リシン残基お
よびN末端アミノ酸残基が含まれうる。遊離カルボキシル基を有するものには、 アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、およびC末端アミノ酸残基が含まれう る。また、ポリエチレングリコール分子を結合させるための反応性基として、ス
ルフヒドリル基を使用してもよい。治療目的には、アミノ基における結合、例え
ばN末端またはリシン基における結合が好ましい。受容体の結合が望まれる場合 には、受容体の結合に重要な残基での結合は避けるべきである。
【0057】 N末端で化学修飾されたタンパク質が特に望ましいかもしれない。ポリエチレ ングリコールを本組成物の例示として用いる場合には、種々のポリエチレングリ
コール分子(分子量、分枝などによる)、反応混合物中のタンパク質(またはペ
プチド)分子に対するポリエチレングリコール分子の比率、行なうペジル化反応
の型、およびN末端がペジル化された選択したタンパク質の入手方法を選択する ことができる。N末端がペジル化された調製物の入手方法(すなわち、必要に応 じて、他のモノペジル化部分からこの部分を分離すること)は、ペジル化された
タンパク質分子の集団から、N末端がペジル化された物質を精製することにより 実施することができる。選択的なN末端の化学修飾は、ある特定のタンパク質に おける誘導体化に利用可能な種々のタイプの一級アミノ基の反応性の相違(リシ
ン対該N末端)を利用する還元的アルキル化により達成することができる。適当 な反応条件下で、カルボニル基含有重合体による、N末端での該タンパク質の実 質的に選択的な誘導体化が達成される。例えば、該タンパク質のリシン残基のe −アミノ基とN末端残基のa−アミノ基との間のpKaの相違を利用可能にするpHで 反応を行なうことにより、該タンパク質のN末端を選択的にペジル化することが できる。そのような選択的な誘導体化により、タンパク質に対する水溶性重合体
の結合を制御する。すなわち、該重合体との結合は該タンパク質のN末端で優先 的に生じ、他の反応性基(例えば、リシン側鎖アミノ基)の有意な修飾は生じな
い。還元的アルキル化を用いる場合は、該水溶性重合体は、前記のタイプのもの
であることが可能であり、該タンパク質に結合するための単一の反応性アルデヒ
ドを有するべきである。単一の反応性アルデヒドを含有するポリエチレングリコ
ールプロピオンアルデヒドを使用することが可能である。
【0058】 本発明は、少なくとも1つのポリエチレングリコール分子に結合した、原核生 物により発現されたニュールツリンまたはその変異体の使用、ならびにアシルま
たはアルキル結合を介して1以上のポリエチレングリコール分子に結合したニュ ールツリンまたはその変異体の使用を意図する。
【0059】 ペジル化は、当技術分野で公知の任意のペジル化反応により行なうことができ
る。例えば、Focus on Growth Factors, 3(2):4-10 (1992); EP 0 154 316(そ の開示を参照により本明細書に組入れることとする); EP 0 401 384; およびペ
ジル化に関する、本明細書中に引用する他の刊行物を参照されたい。ペジル化は
、反応性ポリエチレングリコール分子(または類似した反応性水溶性重合体)と
のアシル化反応またはアルキル化反応により行なうことができる。
【0060】 アシル化によるペジル化は、一般に、ポリエチレングリコール(PEG)の活性 エステル誘導体を該ニュールツリンタンパク質または変異体と反応させることを
含む。公知であるか又は後に見出されることとなる任意の反応性PEG分子を使用 して、ニュールツリンタンパク質または変異体のペジル化を行なうことができる
。好ましい活性化PEGエステルは、N-ヒドロキシスクシンイミドに対してエステ ル化されたPEGである。本発明で用いる「アシル化」は、該治療用タンパク質と 水溶性重合体(例えば、PEG)との間のアミド、カルバマート、ウレタンなど( これらに限定されるものではない)のタイプの結合を包含する意である。Biocon
jugate Chem., 5:133-140, 1994を参照されたい。反応条件は、ペジル化の技術 分野で公知の又は後に開発されることとなる任意のものから選択することができ
るが、修飾するニュールツリンまたは変異体を不活性化する温度、溶媒およびpH
の条件は避けるべきである。
【0061】 アシル化によるペジル化は、一般に、ポリ-ペジル化ニュールツリンタンパク 質または変異体を与えるであろう。好ましくは、該連結結合はアミドである。ま
た、好ましくは、得られる産物は、実質的に専ら(例えば、>95%)モノ、ジ− またはトリ−ペジル化される。しかしながら、ペジル化度がより高いいくつかの
種が、用いる特定の反応条件に応じた量で生成するかもしれない。所望により、
とりわけ透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロ
マトグラフィー、電気泳動などの標準的な精製法により、該混合物、特に未反応
種から、より精製されたペジル化種を分離することができる。
【0062】 アルキル化によるペジル化は、一般に、還元剤の存在下、PEGの末端アルデヒ ド誘導体を該ニュールツリンタンパク質または変異体と反応させることを含む。
また、アルキル化によるペジル化は、ポリ−ペジル化ニュールツリンタンパク質
または変異体を与えうる。さらに、実質的に該ニュールツリンタンパク質または
変異体のN末端のa-アミノ基においてのみ(すなわち、モノ−ペジル化タンパク 質)ペジル化を有利に行なえるように、反応条件を操作することができる。モノ
ペジル化またはポリペジル化のいずれの場合にも、該PEG基を、好ましくは、-CH 2 -NH-基を介して該タンパク質に結合させる。特に-CH2-基に関して、この型の結
合を本発明では「アルキル」結合と称することとする。
【0063】 モノペジル化産物を与える還元的アルキル化による誘導体化は、誘導体化に利
用可能な種々のタイプの一級アミノ基の反応性の相違(リシン対該N末端)を利 用する。該反応は、該タンパク質のリシン残基のe-アミノ基とN末端残基のa-ア ミノ基との間のpKaの相違を利用可能にするpHで行なう。そのような選択的な誘 導体化により、アルデヒドなどの反応性基を含有する水溶性重合体の、タンパク
質に対する結合を制御する。すなわち、該重合体との結合は該タンパク質のN末 端で優先的に生じ、他の反応性基(例えば、リシン側鎖アミノ基)の有意な修飾
は生じない。1つの重要な態様においては、本発明は、モノ重合体/ニュールツ リンタンパク質(または変異体)コンジュゲート分子の実質的に均一な調製物(
重合体分子が実質的に専ら(すなわち、>95%)単一の部位で結合しているニュ ールツリンタンパク質または変異体を意味する)の使用を意図する。より詳しく
は、ポリエチレングリコールを使用する場合には、本発明はまた、ポリエチレン
グリコール分子が該ニュールツリンタンパク質または変異体に直接結合しており
抗原結合基をおそらく欠いているペジル化ニュールツリンタンパク質または変異
体の使用を含む。
【0064】 このように、本発明で用いるニュールツリンタンパク質産物は、PEG基がアシ ルまたはアルキル基を介して結合したペジル化ニュールツリンタンパク質または
変異体を含みうると意図される。前記のとおり、そのような産物は、モノ−ペジ
ル化またはポリ−ペジル化されている(例えば、2〜6個、好ましくは2〜5個のPE
G基を含有する)ことが可能である。PEG基は、一般に、アミノ酸のa-またはe-ア
ミノ基において該タンパク質に結合するが、PEG基は、適当な反応条件下でPEG基
に結合するようになるのに十分な程度に反応性である、該タンパク質に結合して
いる任意のアミノ基にも結合しうると意図される。
【0065】 アシル化およびアルキル化の両方のアプローチにおいて使用する重合体分子は
、前記の水溶性重合体から選択することができる。選択した重合体は、単一の反
応性基(例えば、アシル化用の活性エステルまたはアルキル化用のアルデヒド)
を有するように修飾すべきであり、好ましくは、それにより、本方法において提
供されるとおりに重合度を制御することができる。代表的な反応性PEGアルデヒ ドは、水溶性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはその
モノC1-C10アルコキシまたはアリールオキシ誘導体である(米国特許第5,252,71
4号を参照されたい)。該重合体は、分枝状または非分枝状であることが可能で ある。アシル化反応の場合には、選択する重合体は、単一の反応性エステル基を
有するべきである。この還元的アルキル化の場合には、選択する重合体は、単一
の反応性アルデヒド基を有するべきである。一般に、水溶性重合体は、天然に生
じるグリコシル残基からは選択しない。なぜなら、これらは、通常、哺乳動物組
換え発現系により、より簡便に得られるからである。該重合体は、任意の分子量
を有していることが可能であり、分枝状または非分枝状であることが可能である
【0066】 本発明で使用するための特に好ましい水溶性重合体は、ポリエチレングリコー
ルである。本発明で用いるポリエチレングリコールは、他のタンパク質を誘導体
化するのに使用されている任意の形態のPEG(例えば、モノ−(C1-C10)アルコキ シ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコール)を包含する意である。
【0067】 一般に、化学誘導体化は、生物学的に活性な物質を活性化重合体分子と反応さ
せるのに用いられる適当な任意の条件下で行なうことができる。ペジル化ニュー
ルツリンタンパク質産物の製造法は、一般には、(a)ニュールツリンタンパク 質産物を、該タンパク質が1以上のPEG基に結合するようになる条件下で、ポリエ
チレングリコール(例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と 反応させ、そして(b)反応産物を得る工程を含むであろう。一般には、アシル 化反応のための最適な反応条件は、公知のパラメーターおよび所望の結果に基づ
いて、その場合ごとに決定することとなる。例えば、PEG:タンパク質の比が大 きくなるほど、ポリ−ペジル化産物の割合は高くなる。
【0068】 モノ重合体/ニュールツリンタンパク質産物コンジュゲート分子の実質的に均
一な集団を得るための還元的アルキル化は、一般には、(a)ニュールツリンタ ンパク質産物を、還元的アルキル化条件下、該ニュールツリンタンパク質産物の
アミノ末端におけるa−アミノ基の選択的修飾を可能にするのに適したpHにて、 反応性PEG分子と反応させ、そして(b)反応産物を得る工程を含むであろう。
【0069】 モノ重合体/ニュールツリンタンパク質産物コンジュゲート分子の実質的に均
一な集団の場合、還元的アルキル化反応条件は、ニュールツリンタンパク質産物
のN末端に対する水溶性重合体部分の選択的な結合を許容する条件である。その ような反応条件は、一般に、リシンアミノ基とN末端のa-アミノ基とのpKaの相違
を与える(pKaは、アミノ基の50%がプロトン化され50%がプロトン化されないp
Hである)。また、pHは、使用するタンパク質に対する重合体の比率に影響を及 ぼす。一般に、pHが低いほど、タンパク質に対して、より過剰の重合体が必要と
なるであろう(すなわち、N末端のa-アミノ基の反応性が低いほど、最適条件を 得るためにはより大量の重合体が必要となる)。pHがより高ければ、重合体:タ
ンパク質の比は、それほど大きくする必要はない(すなわち、利用可能な基の反
応性が高いほど、重合体分子は少なくてすむ)。本発明の目的には、pHは、一般
に、3〜9、好ましくは3〜6の範囲内となるであろう。
【0070】 もう1つの重要な考慮事項は、重合体の分子量である。一般に、重合体の分子 量が大きいほど、該タンパク質に結合しうる重合体分子は少なくなる。同様に、
これらのパラメーターを最適化する場合には、重合体の分枝を考慮すべきである
。一般に、分子量が大きくなるほど(あるいは分枝が著しくなるほど)、重合体
:タンパク質の比は大きくなる。一般に、本発明で意図されるペジル化反応の場
合、好ましい平均分子量は、約2kDa〜約100kDaである。好ましい平均分子量は、
約5kDa〜約50kDa、特に好ましくは約12kDa〜約25kDaである。ニュールツリンタ ンパク質産物に対する水溶性重合体の比率は、一般に、1:1から100:1、好まし
くは、(ポリペジル化の場合には)1:1から20:1、(モノペジル化の場合には )1:1から5:1の範囲となろう。
【0071】 前記の条件を用いる還元的アルキル化は、アミノ末端にa-アミノ基を有する任
意のニュールツリンタンパク質産物に対する重合体の選択的結合を与え、モノ重
合体/ニュールツリンタンパク質産物コンジュゲートの実質的に均一な調製物を
与える。本発明で用いる「モノ重合体/ニュールツリンタンパク質産物コンジュ
ゲート」なる語は、ニュールツリンタンパク質の分子に結合した単一の重合体分
子を含む組成物を意味する。該モノ重合体/ニュールツリンタンパク質産物コン
ジュゲートは、好ましくは、リシンアミノ側鎖基ではなくN末端に位置する重合 体分子を有する。該調製物は、好ましくは、90%以上のモノ重合体/ニュールツ
リンタンパク質産物コンジュゲート、より好ましくは、95%以上のモノ重合体/
ニュールツリンタンパク質産物コンジュゲートであり、認められうる分子の残り
は未反応のもの(すなわち、重合体部分を欠くタンパク質)である。
【0072】 この還元的アルキル化の場合には、還元剤は、水溶液中で安定であるべきであ
り、好ましくは、還元的アルキル化の初期過程で生じるシッフ塩基のみを還元す
る能力を有すべきである。適当な還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノホ
ウ水素化ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランおよびピ
リジンボランから選択することができる。特に好ましい還元剤は、シアノホウ水
素化ナトリウムである。溶媒、反応時間、温度などの他の反応パラメーター、お
よび産物の精製手段は、水溶性重合体によるタンパク質の誘導体化に関する公開
されている情報に基づいて、場合ごとに決定することができる(本明細書中で引
用している刊行物を参照されたい)。
【0073】 C.ニュールツリンタンパク質産物の医薬組成物 ニュールツリンタンパク質産物の医薬組成物は、典型的には、投与法に適する
ように選択される1以上の医薬上および生理的に許容される製剤化物質と混合さ れた、ニュールツリンタンパク質産物の治療的に有効な量を含む。適当な製剤化
物質には、抗酸化剤、保存剤、着色剤、香味および希釈化剤、乳化剤、懸濁化剤
、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝剤、運搬用ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/ま
たは医薬佐剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、適当な
ビヒクルは、非経口投与用組成物中で一般に用いられる他の物質でおそらく補足
される注射用水、生理食塩水または人工脳脊髄液である。中性の緩衝化塩類液、
または血清アルブミンと混合された塩類液は、さらに典型的なビヒクルである。
【0074】 ビヒクル中の主要な溶媒は、事実上、水性または非水性であることが可能であ
る。さらに、ビヒクルは、製剤のpH、浸透圧、粘性、清澄性、色、無菌性、安定
性、溶解速度または香りを改変したり維持するための他の医薬上許容される賦形
剤を含有していてもよい。同様に、ビヒクルは更に、ニュールツリンタンパク質
産物の放出速度を改変したり維持するための、あるいはニュールツリンタンパク
質産物の、鼓膜を通過する吸収または透過を促進するための医薬上許容される賦
形剤を含有していてもよい。そのような賦形剤は、単一投与形または複数回投与
形の内耳投与用製剤に製剤化するために通例用いられる物質である。
【0075】 治療用医薬組成物を製剤化したら、それを、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固
体または脱水もしくは凍結乾燥した粉末として、無菌バイアル中に保存すること
ができる。そのような製剤は、そのまま使用可能な形態、あるいは投与前に再構
成を要する形態(例えば、凍結乾燥形態)で保存することが可能である。
【0076】 最適な医薬製剤は、投与経路および所望の投与量などの考慮事項に応じて当業
者により決定されることとなる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Scienc
es, 第18版 (1990, Mack Publishing Co., Easton, PA 18042), p.1435-1712( その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。その
ような製剤は、該ニュールツリンタンパク質、変異体および誘導体の物理学的状
態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響を及ぼ
しうる。
【0077】 また、他の有効な投与形態、例えば、内耳徐放製剤、吸入ミストまたは経口的
に活性な製剤も意図される。例えば、徐放製剤においては、該ニュールツリンタ
ンパク質産物を、リポソームまたは高分子化合物(例えば、ポリ乳酸、ポリグリ
コール酸など)の粒子状製剤に結合させたり、あるいはその中に組み入れること
が可能である。また、ヒアルロン酸を使用することができ、これは、循環中での
維持の持続化を促進する効果を有するかもしれない。
【0078】 適当な生分解性徐放性マトリックスには、ゼラチンおよび例えば乳酸の重合体
またはコラーゲン(アテロコラーゲン(atelocollagen)、メチル化コラーゲン 、スクシニル化コラーゲンなどの修飾コラーゲンを含む)が含まれる。例えば、
1991年2月13日付け公開の欧州特許出願公開EP 412 554 A2を参照されたい。他の
適当な徐放性マトリックスには、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタマートと の共重合体、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、エチレンビニルアセ タート、ポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸、他のポリエステル、ヒアルロン酸または
リポソームが含まれる。該コントロールリリースマトリックスは、GDNF溶液また
はゲルと該生分解性マトリックス担体とを混合し、ついで該混合物を濃縮し乾燥
することにより製造することができる。
【0079】 該タンパク質が予備成形多孔性高分子微粒子中に分散したコントロールリリー
ス組成物を製造することが可能であると意図される。1993年8月19日付け公開のP
CT出願公開WO 93/15722を参照されたい。該微粒子は、ポリエステル、ポリアミ ド、ポリ酸無水物、ポリアクリラートなどの適当な任意の高分子材料から製造す
ることが可能であり、好ましくは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコ
ール酸との共重合体、ポリ{1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セ バシン酸}などの生分解性重合体である。該微粒子は、一般には、直径50〜400ミ
クロンであり、0.01〜1ミクロンの網目状の孔で覆われており、タンパク質の懸 濁液または溶液中に該微粒子を平衡化することによりタンパク質を該微粒子にロ
ーディングする。該微粒子中への該薬物の移動を促進するために、減圧または加
圧を適用することができる。該微粒子は、制御された蒸発乾燥により、流動する
不活性ガスにより、凍結乾燥または他の技術により、空気中、真空下で乾燥し、
ついで更に、注射用または移植用の所望の組成物に加工することができる。
【0080】 また、該ニュールツリンタンパク質産物医薬組成物は、例えば鼓膜への注入ま
たは注射による中耳投与用に製剤化することが可能であり、徐放性または持続性
循環製剤を含むことが可能である。そのような中耳投与用治療用組成物は、典型
的には、医薬上許容されるビヒクル中に該ニュールツリンタンパク質産物を含む
、発熱物質を含有せず中耳に許容性の水溶液の形態である。他の好ましいビヒク
ルは無菌蒸留水である。
【0081】 また、ニュールツリンタンパク質産物を含有するある種の製剤を経口投与する
ことが可能であると意図される。このようにして投与するニュールツリンタンパ
ク質産物は、エリキシル剤、錠剤、カプセル剤またはゲル剤として製剤化するこ
とが可能であり、固形剤形の配合に通常使用される担体の存在下または不存在下
で製剤化することが可能である。カプセル剤は、生物学的利用能が最大になり前
全身分解(pre-systemic degradation)が最小になる胃腸管内部位で該製剤の活
性部分を放出するよう設計することができる。ニュールツリンタンパク質産物の
吸収を促進するために、追加的な賦形剤を含有させることができる。また、希釈
剤、香味剤、低融点ロウ、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤および結合剤
を使用することができる。
【0082】 中耳用の溶液、懸濁液および軟膏を含む局所的耳用製剤の製剤化は、当業者に
よく知られている(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, 第86章,
p.1581-1592, Mack Publishing Company, 1990)を参照されたい)。中耳への注 射を含む他の投与方法が利用可能であり、そのような投与方法に適した中耳用製
剤の製造のための方法および手段もよく知られている。
【0083】 本出願で用いる「中耳」は、鼓膜と内耳との間の腔を意味する。この位置は、
すべての内耳組織の外部にあり、該ニュールツリンが鼓膜を介して浸透するよう
な製剤を開発した場合には、この領域に到達するのに侵襲的方法は要求されない
であろう。あるいは、鼓膜を介する注射により、該物質を中耳に導入することが
可能であり、あるいは反復投与が必要な場合には、鼓膜に穴をあける。そのよう
な系には、例えば、これらの領域へ治療用物質を運搬するのに使用することがで
きる挿入物および「局所的」に適用される滴剤、ゲル剤または軟膏剤が含まれる
。鼓膜の開口は、中耳の感染症(通常は小児の場合)などの場合に外来診療で行
なわれる非常に一般的な方法である。該開口は数日後に自然に閉じる。
【0084】 また、内耳の疾患または損傷の治療における、ニュールツリンタンパク質産物
の現在記載している使用の場合、好ましくは、局所的に適用される製剤は、中耳
および内耳内への該治療剤の浸透または輸送を促進する物質を含む。そのような
物質は当技術分野で公知である。例えば、Keら, 米国特許第5,221,696号は、角 膜を介する軟膏剤の浸透を増強するための物質の使用を開示している。
【0085】 内耳系は、蝸牛、前庭器官などの内耳の組織層の内部、間または周囲の任意の
組織区画における使用に適した系である。これらの位置は、血管条、ライスネル
膜、コルチ器、ラセン靭帯、蝸牛ニューロンなどの蝸牛の種々の構造体を含む。
タンパク質は、正円窓の膜から内耳の外リンパ中へ浸透することが示されている
ため、それらの構造体に到達するのに、侵襲的方法は要求されないであろう。
【0086】 正円窓膜を介した浸透によりニュールツリンを内耳内に導入するのに特に適し
たビヒクルは、人工外リンパである。この溶液は、280〜300mOsmおよびpH7.2の 脱イオン水中のダルベッコリン酸緩衝食塩水の1.0%溶液中の10.00mM D-グルコ ース、1,5mM CaCl、1.5mM MgClよりなる。さらに別の製剤は、該タンパク質の遅
延放出または徐放をもたらす中耳内への注射用のミクロスフェアまたはリポソー
ムなどの物質と共に該ニュールツリンタンパク質産物の製剤を含むことが可能で
あり、ついでそれはデポー注射剤として運搬されうる。ニュールツリンタンパク
質産物の内耳導入のための他の適当な手段には、移植可能な又は該ニュールツリ
ンタンパク質産物を含有する薬物運搬装置、および貫通トンネルを有する蝸牛イ
ンプラント(したがって、ニュールツリンがそれを介して内耳内に連続的に運搬
されうる)が含まれる。
【0087】 本発明の耳治療用製剤、特に局所製剤は、当技術分野でよく知られている他の
成分、例えば、中耳に許容性の保存剤、等張化剤、共存溶媒、錯化剤、緩衝剤、
抗微生物剤、抗酸化剤および界面活性剤を含むことが可能である。例えば、適当
な等張促進剤には、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは塩化ナトリウムまたは
塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。耳内に点滴する
製剤が内および外リンパの浸透圧モル濃度に適合するように、十分な等張促進剤
を加えるのが好ましい。適当な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、チメロサー
ル、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシ
ジン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸などが含まれるが、これらに限定される
ものではない。また、保存剤として過酸化水素を使用することができる。適当な
共存溶媒には、アルコール、グリセリン、グリセロール、プロピレングリコール
およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない
。適当な錯化剤には、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキスト リンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが含まれる。適当な抗酸
化剤には、亜硫酸水素ナトリウムおよびアスコルビン酸が含まれる。適当な界面
活性剤または湿潤剤としては、例えば、ソルビタンエステル、ポリソルベート(
例えば、ポリソルベート80)、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロ
キサパールなどが挙げられる。緩衝剤は、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、リン
酸塩、炭酸水素塩またはTris-HClなどの通常の緩衝剤であることが可能である。
血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、グリシン、グル
タミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リシン、システインなどのアミノ酸、
ならびにグルコース、マンノース、デキストリンなどの単糖類および二糖類を含
む他の安定化剤を使用することが可能である。
【0088】 該製剤成分は、中耳または内耳の投与部位に許容される濃度で存在する。例え
ば、緩衝剤を使用して、生理的pHまたはそれより少し低いpH、典型的には約5〜 約8のpH範囲内に該組成物を維持する。
【0089】 追加的な製剤成分は、中耳投与治療剤の持続的な滞留をもたらして局所的接触
を最大にし正円窓を介した吸収を促進する物質を含むことが可能である。適当な
物質には、該中耳用製剤の粘度の増加をもたらす重合体またはゲル形成物質が含
まれる。内耳用治療剤のコントロールリリース(例えば、徐放性および持続性運
搬)に対する本発明の製剤の適合性は、当技術分野で公知の種々の方法により測
定することができる。さらにもう1つの耳用製剤は、錠剤の製造に適した中耳治 療に許容される無毒性賦形剤との混合物中に有効量のニュールツリンタンパク質
産物を含むことが可能である。無菌水または他の適当なビヒクル中に錠剤を溶解
することにより、中耳治療用溶液を単位投与形として製造することができる。適
当な賦形剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳糖
、リン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;またはデンプン、ゼラチンまたはアカ
シアなどの結合剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0090】ニュールツリンタンパク質産物の投与/送達 該ニュールツリンタンパク質産物は、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、鼻腔内
、肺内、腹腔内、眼球内、経強膜的、硝子体内(intravitreal)、網膜下、鞘内
および脳内経路を介して非経口的に投与することができる。適当な場合には、病
巣内投与が適応となりうる(例えば、損傷領域を洗浄するために潅注流体を使用
する場合、あるいは適当なマトリックスを損傷領域に移植する場合)。あるいは
、ニュールツリンタンパク質産物は、経口的に、または胃腸管の特定の領域内に
、または直腸、経皮もしくは局所経路により投与することができる。
【0091】 内耳の状態の治療には、該ニュールツリンタンパク質産物を、局所適用、挿入
、注射、移植、細胞療法または遺伝子治療により、中耳内(または、特に侵襲的
手段が既に適当に行なわれている場合には、直接的に内耳内に)に投与すること
ができる。例えば、生分解性重合体マトリックス中に包埋された神経栄養因子を
含有する徐放性インプラントは、ニュールツリンタンパク質産物を運搬しうる。
ニュールツリンタンパク質産物は、血液脳関門を通過するように化学修飾または
パッケージングされた形態で脳外に投与することができる。あるいは、それは、
ニュールツリンタンパク質産物が該関門を透過するのを促進しうる1以上の物質 と共に投与することができる。同様に、該ニュールツリンタンパク質産物は、中
耳または内耳内に投与することができる。あるいは、それは、耳の膜を介したニ
ュールツリンタンパク質産物の浸透または輸送を促進しうる1以上の物質と共に 鼓膜上に投与することができる。投与頻度は、製剤化されたニュールツリンタン
パク質産物の薬物動態学的パラメーターおよび投与経路に左右されるであろう。
【0092】 具体的な用量は、体重、体表面積または器官のサイズの考慮事項に応じて計算
することができる。前記の各製剤がかかわる治療のための適当な用量を決定する
のに必要なさらに厳密な計算は、当業者により日常的に行なわれており、特に本
明細書に開示の投与量の情報およびアッセイを考慮すれば、通常実施されている
技量の範囲内である。適当な用量は、投与量を測定するための確立されたアッセ
イを適当な用量反応データと共に用いることにより確認することができる。内耳
に投与する製剤において用いる投与量は、全身注射または経口投与において用い
るものと比べて非常に少ないと当業者に理解されるであろう。
【0093】 前記の状態の治療方法にかかわる最終的な投与計画は、薬物の作用を改変する
種々の要因(例えば、患者の年齢、体重、性別および食事、いずれかの感染の重
症度、投与時間ならびに他の臨床的要因)を考慮して担当医師が決定することと
なる。研究が行なわれるにつれて、種々の疾患および状態の治療のための適当な
投与量レベルに関する更なる情報が得られるであろう。
【0094】 ニュールツリンタンパク質産物の連続的投与または持続的運搬が、ある与えら
れた治療に有利となりうると考えられる。連続的投与は、機械的手段(例えば、
注入ポンプ)により行なうことができるが、他の連続的またはほぼ連続的な投与
方法を実施することも可能であると意図される。例えば、化学的誘導体化または
カプセル化は、決定された投与計画に基づく予測可能な量での連続的存在の効果
を有する該タンパク質の徐放性形態を与えうる。したがって、ニュールツリンタ
ンパク質産物は、そのような連続的投与を達成するように誘導体化または製剤化
されたタンパク質を含む。
【0095】 また、ニュールツリンタンパク質産物細胞療法(例えば、ニュールツリンタン
パク質産物を産生する細胞の中耳または内耳移植)も意図される。この実施形態
は、生物学的に活性な形態のニュールツリンタンパク質産物を合成し分泌する能
力を有する細胞を患者中に移植することを含むであろう。そのようなニュールツ
リンタンパク質産物を産生する細胞は、ニュールツリンタンパク質産物の天然の
生産体であることが可能であり、あるいは該タンパク質を発現するように修飾さ
れた細胞であることが可能である。そのような修飾された細胞は、所望のニュー
ルツリンタンパク質産物の発現および分泌の促進に適したベクター中に該タンパ
ク質産物をコードする遺伝子での形質転換によりニュールツリンタンパク質産物
を産生する能力が増強されている組換え細胞が含まれる。外来種のニュールツリ
ンタンパク質産物を投与された患者における潜在的な免疫反応を最小限に抑える
ためには、ニュールツリンタンパク質産物を産生する天然の細胞がヒト由来であ
り、それがヒトニュールツリンタンパク質産物を産生することが好ましい。同様
に、ニュールツリンタンパク質産物を産生する組換え細胞を、ヒトニュールツリ
ンタンパク質産物をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換するこ
とが好ましい。周囲の組織の浸潤を避けるために、移植細胞をカプセル化するこ
とができる。ニュールツリンタンパク質産物の放出を許容するが患者の免疫系に
よる又は周辺組織からの他の有害因子による細胞の破壊を防ぐ生体適合性で半透
過性の高分子封入物または膜中のヒトまたはヒト以外の動物の細胞を、患者に移
植することができる。そのようなインプラントは、例えば、ニュールツリンタン
パク質産物を産生しそれを外リンパ中に直接放出するように中耳の正円窓膜に付
着させることが可能である。
【0096】 生存細胞の膜カプセル化のための方法は、当業者によく知られており、カプセ
ル化された細胞の作製および患者内へのその移植は、過度な実験を行なうことな
く達成することができる。例えば、米国特許第4,892,538号、第5,011,472号およ
び第5,106,627号(それらのそれぞれを参照により本明細書中に特に組入れるこ ととする)を参照されたい。生存細胞をカプセル化するための系は、参照により
本明細書中に特に組入れるAebischerらのPCT出願WO91/10425に記載されている。
また、AebischerらのPCT出願WO91/10470、Winnら, Exper. Neurol., 113:322-32
9, 1991、Aebischerら, Exper. Neurol., 111:269-275, 1991、Trescoら, ASAIO
, 38:17-23, 1992(それらのそれぞれを参照により本明細書中に特に組入れるこ
ととする)も参照されたい。リポソーム担体、生分解性粒子またはビーズ、デポ
ー注射剤などの種々の他の徐放または制御運搬手段を製剤化するための技術も、
当業者に公知である。
【0097】 また、ニュールツリンタンパク質産物を得るために、患者自身の細胞をエクス
ビボで形質転換し、カプセル化することなく直接移植することが可能であると意
図される。例えば、コルチ器支持細胞を採取し、該細胞を培養し、適当なベクタ
ーで形質転換し、患者の内耳内に再び移植すると、その部位で該細胞は所望のニ
ュールツリンタンパク質またはニュールツリンタンパク質変異体を産生し放出す
るであろう。
【0098】 また、核酸構築物または他の適当な運搬用ベクターの局所注射により、ニュー
ルツリンタンパク質産物をコードする遺伝子を標的内耳細胞内に導入することに
よる、インビボでのニュールツリンタンパク質産物遺伝子治療も意図される(He
fti, J. Neurobiol., 25:1418-1435, 1994)。例えば、ニュールツリンタンパク
質産物をコードする核酸配列を、内耳細胞への運搬用のアデノ随伴ウイルスベク
ターまたはアデノウイルスベクター中に含有させることができる。その他のウイ
ルスベクターには、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびパピローマウ
イルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、リポソ
ーム媒介導入、直接注射(裸のDNA)、受容体媒介導入(リガンド−DNA複合体)
、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿または微粒子射撃(遺伝子銃
)により、適宜インビボまたはエクスビボのいずれかで物理的な導入を行なうこ
とができる。
【0099】 本明細書に記載のニュールツリンタンパク質産物の製剤は、獣医学的適用およ
びヒトに対する適用に用いることが可能であり、「患者」なる語は限定的に解釈
されるべきではないことに注意すべきである。獣医学的適用の場合、用量範囲は
、前記で特定されているものと同じになるはずである。
【0100】ニュールツリンタンパク質産物をコードするポリヌクレオチド 本発明はさらに、ニュールツリンタンパク質産物をコードする新規ポリヌクレ
オチドを提供する。該核酸配列は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅
プライマーとして使用する場合には、実質的に、他の核酸配列のすべては含まな
い。該核酸配列は、組換えタンパク質の発現に使用する場合には、融合タンパク
質を意図しない限り、一般には、他のタンパク質をコードする核酸配列を実質的
に含まないであろう。当業者であれば、本明細書に基づき、また、普遍コドン表
を用いて、ニュールツリンタンパク質産物のアミノ酸配列をコードする核酸配列
のすべてを容易に決定することが可能である。また、ニュールツリンタンパク質
産物をコードする新規ポリヌクレオチドは、変異体タンパク質(人工物であるか
天然に存在するものであるかには無関係である)をコードする核酸配列を含むと
当業者に理解されるであろう。
【0101】 後記の説明に従い行なう組換え発現技術を用いて、これらのポリヌクレオチド
を製造し、種々のニュールツリンタンパク質産物を発現させることができる。例
えば、当業者であれば、タンパク質をコードする核酸配列を適当なベクター中に
挿入することにより、多量の所望のヌクレオチド配列を容易に製造することが可
能である。ついで該配列を使用して、検出プローブまたは増幅プライマーを作製
することができる。あるいは、ニュールツリンタンパク質産物をコードするポリ
ヌクレオチドを、発現ベクター中に挿入することができる。該発現ベクターを適
当な宿主中に導入することにより、所望のタンパク質を多量に製造することがで
きる。
【0102】 本明細書中でさらに説明するとおり、核酸配列の増幅および/またはニュール
ツリンタンパク質産物の製造に利用可能な多数の宿主/ベクター系が存在する。
これらには、プラスミド、ウイルスおよび挿入ベクターならびに原核および真核
宿主が含まれるが、それらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明
の配列を産生または発現するように、異種DNAを増殖または発現しうる宿主/ベ クター系を適合させることが可能である。
【0103】 そのような組換え技術により、より高い純度を有する本発明のタンパク質を、
商業的な量で容易に製造することができる。さらに、本開示を考慮して、該新規
核酸配列は、図面中に具体的に記載されているタンパク質またはそのようなタン
パク質の変異体をコードする縮重核酸配列、およびこれらの核酸配列の相補体と
ハイブリダイズする(好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション
条件下でハイブリダイズする)核酸配列を含む、と当業者には理解されるであろ
う(例えば、Maniatisら, Molecular Cloning (A Laboratory Manual); Cold Sp
ring Harbor Laboratory, p. 387-389, 1982を参照されたい)。代表的なストリ
ンジェントなハイブリダイゼーション条件は、4×SSC中、62〜67℃でのハイブリ
ダイゼーション、およびそれに続く0.1×SSC中、62〜67℃で約1時間の洗浄であ る。あるいは、代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、45
〜55%ホルムアミド、4×SSC中、40〜45℃でのハイブリダイゼーションである。
ニュールツリンタンパク質に関する相補的な配列に緩和な(relaxed)ハイブリ ダイゼーション条件下でハイブリダイズする及び本発明のニュールツリンタンパ
ク質をコードするDNA配列も、本発明に含まれる。そのような緩和なストリンジ ェンシーのハイブリダイゼーション条件は、例えば、45〜55℃で4×SSC、あるい
は40〜45℃で30〜40%ホルムアミドでのハイブリダイゼーションである。
【0104】 本発明はまた、ニュールツリンタンパク質産物をコードするDNA配列と共にベ クターDNAを含む組換えDNA構築物を提供する。そのようなDNA構築物においては 、該タンパク質(シグナルペプチドを伴う又は伴わない)をコードする核酸配列
は、選択した宿主内での該タンパク質の複製および/または発現を指令しうる適
当な発現制御または調節配列に作動的に結合している。
【0105】ニュールツリンタンパク質産物の組換え発現 ニュールツリンタンパク質産物をコードするポリヌクレオチドの製造 ニュールツリンタンパク質産物をコードする核酸配列は、化学合成、cDNAまた
はゲノムライブラリースクリーニング、発現ライブラリースクリーニングおよび
/またはcDNAのPCR増幅を含む(これらに限定されるものではない)種々の方法 で容易に得ることができる。これらの方法およびそのような核酸配列の製造に有
用な他の方法は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manu
al, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989) 、Ausbelら編(Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols
Press, 1994)、およびBergerおよびKimmel(Methods in Enzymology: Guide to
Molecular Cloning Techniques, vol. 152, Academic Press, Inc., San Diego
, CA, 1987)に記載されている。
【0106】 また、Engelsら(Angew. Chem. Intl. Ed., 28:716-734, 1989)に記載されて
いる方法などの当技術分野でよく知られている方法を用いて、ニュールツリンタ
ンパク質産物をコードする核酸配列の化学合成を行なうことができる。これらの
方法には、とりわけ、核酸配列合成のホスホトリエステル、ホスホルアミジット
およびH-ホスホナート法が含まれる。該タンパク質をコードする核酸配列は、数
百塩基対(bp)またはヌクレオチド長となろう。大きな核酸配列、例えば、約10
0ヌクレオチド長より大きな核酸配列を数個の断片として合成することができる 。ついでこれらの断片を互いに連結して、該タンパク質をコードする核酸配列を
得ることができる。好ましい方法は、標準的なホスホルアミジット化学法を用い
る、重合体に担持された合成である。
【0107】 あるいは、適当なcDNAライブラリー(すなわち、該タンパク質を発現すると考
えられる1以上の組織源から調製したライブラリー)またはゲノムライブラリー (全ゲノムDNAから調製したライブラリー)をスクリーニングすることにより、 適当な核酸配列を得ることができる。該cDNAライブラリーの起源は、典型的には
、合理的な量でニュールツリンを発現すると考えられる任意の種からの組織であ
る。該ゲノムライブラリーの起源は、ニュールツリンまたはニュールツリンホモ
ログをコードする遺伝子を保持すると考えられる哺乳動物種または他の種からの
任意の組織であることが可能である。該ライブラリー中に存在するニュールツリ
ンまたはニュールツリンホモログのcDNAまたは遺伝子と選択的にハイブリダイズ
する1以上の核酸プローブ(クローニングするニュールツリンまたはニュールツ リンホモログcDNAまたは遺伝子に対して許容レベルの相同性を有するオリゴヌク
レオチド、cDNAまたはゲノムDNA断片)を使用して、ニュールツリンcDNA/遺伝 子の存在に関して該ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのよう
なライブラリースクリーニングに典型的に使用されるプローブは、通常、該ライ
ブラリーの調製の起源種と同一または類似の種からのニュールツリンDNA配列の 小さな領域をコードする。あるいは、本明細書中に記載のとおり、該プローブは
縮重していることが可能である。
【0108】 ライブラリーのスクリーニングは、典型的には、該オリゴヌクレオチドプロー
ブまたはcDNAを該ライブラリー中のクローンに対してアニーリングさせることに
より行なう。この場合、該プローブまたはプライマーに対して有意なレベルの相
同性を有するクローンの結合を許容するが非特異的結合を妨げるストリンジェン
シーの条件下で、該アニーリングを行なう。典型的なハイブリダイゼーションお
よび洗浄のストリンジェンシー条件は、1つには、該cDNAまたはオリゴヌクレオ チドプローブのサイズ(すなわち、ヌクレオチド長の数)、および該プローブが
縮重しているか否かに左右される。また、ハイブリダイゼーション溶液の設計に
おいては、該クローンの入手可能性(例えば、cDNAまたはゲノムライブラリーが
スクリーニングされているか否か;それがcDNAライブラリーである場合には、関
心のあるcDNAが高レベルで存在する可能性)も考慮する。
【0109】 DNA断片(例えば、cDNA)をプローブとして使用する場合には、典型的なハイ ブリダイゼーション条件は、Ausubelら編(前掲)に記載の条件を含む。ハイブ リダイゼーション後、プローブのサイズ、クローンに対するプローブの予想され
る相同性、スクリーニングしているライブラリーの型、スクリーニングしている
クローンの数などのいくつかの要因に応じて、該ライブラリーを含有するブロッ
トを適当なストリンジェンシーで洗浄する。ストリンジェントな洗浄溶液(これ
は、通常、イオン強度が低く、比較的高温で使用される)は、以下の通りである
。1つのそのようなストリンジェントな洗浄は、0.015M NaCl、0.005Mクエン酸Na
および0.1%SDS(55〜65℃)である。もう1つのそのようなストリンジェントな バッファーは、1mM Na2EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)および1%SDS(約40〜50℃
)である。1つの他のストリンジェントな洗浄は、0.2×SSCおよび0.1%SDS(約5
0〜65℃)である。
【0110】 また、オリゴヌクレオチドプローブを使用してcDNAまたはゲノムライブラリー
をスクリーニングするストリンジェントな洗浄条件の代表的なプロトコールがあ
る。例えば、第1のプロトコールは、プローブの長さに応じて約35〜62℃で、0.0
5%ピロリン酸ナトリウムと共に6×SSCを使用する。例えば、14塩基のプローブ
は35〜40℃で、17塩基のプローブは45〜50℃で、20塩基のプローブは52〜57℃で
、23塩基のプローブは57〜63℃で洗浄する。バックグラウンドの非特異的結合が
高いと考えられる場合には、温度を2〜3℃上昇させることができる。第2のプロ トコールは、洗浄に塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用する。1つの そのようなストリンジェントな洗浄溶液は、3M TMAC、50mM Tris-HCl(pH8.0) および0.2%SDSである。
【0111】 ニュールツリンタンパク質産物をコードする核酸配列を得るためのもう1つの 適当な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この方法では、ニュール ツリンを発現する組織からポリ(A)+RNAまたは全RNAを抽出する。ついで、逆転写
酵素を使用して、RNAからcDNAを調製する。ついで、ニュールツリンcDNA(オリ ゴヌクレオチド)の2個の分離した領域と典型的には相補的である2個のプライマ
ーを、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼと共に、該cDNAに加える。該ポリメ ラーゼは、それらの2個のプライマーの間のcDNA領域を増幅する。
【0112】 所望のニュールツリンタンパク質産物をコードする核酸配列を製造するのに選
択した方法が、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブの使用を要する場
合(例えば、PCR、cDNAまたはゲノムライブラリースクリーニング)には、ライ ブラリースクリーニングまたはPCR増幅中に生じる非特異的結合の量を最小限に 抑えるように、プローブまたはプライマーとして選択するオリゴヌクレオチド配
列は適度に長く十分に明白(unambiguous)であるべきである。該プローブまた はプライマーの実際の配列は、通常、別の生物からの同一または類似の遺伝子か
らの保存された又は高度に相同な配列または領域に基づく。所望により、該プロ
ーブまたはプライマーは、完全または部分的に縮重していることが可能である(
すなわち、異なるコドンを用いて同一アミノ酸配列をすべてがコードしているプ
ローブ/プライマーの混合物を含有しうる)。デジェネレート(縮重)プローブ
を調製するためのもう1つの方法は、種によって異なるコドン位置のいくつか又 はすべてにイノシンを配置することである。該オリゴヌクレオチドプローブまた
はプライマーは、前記のDNA化学合成法により調製することができる。
【0113】 また、これらの核酸配列に基づくニュールツリンタンパク質産物、およびそれ
らの突然変異体または変異体の配列も、本発明の範囲内に含まれると意図される
。前記のとおり、突然変異体または変異体の配列は、野生型配列と比較した場合
に1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含有する配列であっ て、野生型アミノ酸配列と比較した場合のアミノ酸配列変異の発現を引き起こす
配列である。場合によっては、自然対立遺伝子変異の存在のために、天然に生じ
るニュールツリンアミノ酸突然変異体または変異体が存在するかもしれない。そ
のような天然に生じる突然変異体または変異体に基づくニュールツリンタンパク
質産物も、本発明の範囲内に含まれる。また、合成突然変異配列の調製は当技術
分野でよく知られており、例えば、Wellsら(Gene, 34:315, 1985)およびSambr
ookら(前掲)に記載されている。
【0114】 ベクター ニュールツリンタンパク質産物をコードするcDNAまたはゲノムDNAを、さらな るクローニング(該DNAの増幅)または発現のためにベクター中に挿入する。適 当なベクターが商業的に入手可能であるか、あるいは該ベクターを特別に構築す
ることができる。適当なベクターの選択または構築は、1)それをDNAの増幅に使
用するのか、DNAの発現に使用するのか、2)該ベクター中に挿入しようとするDN
Aのサイズ、および3)該ベクターで形質転換しようとする宿主細胞(例えば、哺
乳動物、昆虫、酵母、真菌、植物または細菌の細胞)に左右される。各ベクター
は、その機能(DNAの増幅またはDNAの発現)および意図する宿主細胞に対するそ
の和合性に応じて、種々の成分を含有する。該ベクター成分は、一般には、シグ
ナル配列、複製起点、1以上の選択またはマーカー遺伝子、エンハンサー要素、 プロモーター、転写終結配列などの1以上を含むが、これらに限定されるもので はない。これらの成分または発現調節要素は、天然源から入手したり、公知方法
により合成することができる。本発明のベクターは、選択した宿主細胞における
該タンパク質の発現を指令し制御しまたは引き起こしうる1以上の発現制御また は調節配列に作動的に結合した、関心のあるニュールツリンタンパク質産物をコ
ードする核酸配列を含む。
【0115】 シグナル配列 シグナル配列は、該ベクターの一成分となりうる。あるいは、それは、該ベク
ター中に挿入するニュールツリンタンパク質産物のDNAの一部となりうる。該ニ ュールツリンDNAは、該成熟タンパク質を生成する該タンパク質の翻訳後プロセ シング中に切断される該タンパク質のアミノ末端においてシグナル配列をコード
している。本発明の範囲内には、天然シグナル配列および他のプレプロ配列を有
するニュールツリンタンパク質産物のポリヌクレオチド、および該天然シグナル
配列が欠失し異種シグナル配列で置換されているポリヌクレオチドが含まれる。
選択する異種シグナル配列は、宿主細胞により認識されプロセシングされる、す
なわち、シグナルペプチダーゼにより切断されるものであるべきである。天然ニ
ュールツリンシグナル配列を認識もプロセシングもしない原核宿主細胞の場合に
は、該シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼまた
は耐熱性エンテロトキシンIIリーダーの群から選ばれる原核性シグナル配列で置
換する。酵母分泌のためには、天然ニュールツリンシグナル配列を、酵母インベ
ルターゼ、α因子または酸性ホスファターゼリーダーで置換することができる。
哺乳動物細胞発現においては、該天然シグナル配列で十分であるが、他の哺乳動
物のシグナル配列が適していることもある。
【0116】 複製起点 発現およびクローニングベクターは、一般には、選択した1以上の宿主細胞中 で該ベクターが複製されるのを可能にする核酸配列を含む。クローニングベクタ
ーにおいては、この配列は、典型的には、宿主染色体DNAと独立して該ベクター が複製されるのを可能にする配列であり、複製起点または自律複製配列を含む。
そのような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスに関して良く知られている
。プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、
種々の起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)が、
哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、複製起点
の成分は、哺乳動物発現ベクターには必ずしも必要でない(例えば、SV40は、初
期プロモーターを含有しているという理由のみで使用されることが多い)。
【0117】 選択遺伝子 発現およびクローニングベクターは、典型的には、選択遺伝子を含有する。こ
の遺伝子は、選択培地中で増殖させた場合の形質転換宿主細胞の生存または増殖
に必要な「マーカー」タンパク質をコードしている。該ベクターで形質転換され
なかった宿主細胞は、選択遺伝子を含有しないため、培地中で生存しないであろ
う。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシ リン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリン)に対する耐性
を付与する、(b)栄養要求性の欠損を補う、または(c)培地から利用できない
重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしている。
【0118】 他の選択遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅することができる。増幅
は、増殖に決定的に重要なタンパク質の産生に対する要求度がより高い遺伝子が
、組換え細胞の連続世代の染色体内でタンデムに反復される(reiterated)過程
である。哺乳動物細胞用の適当な選択マーカーには、ジヒドロ葉酸レダクターゼ
(DHFR)およびチミジンキナーゼが含まれる。哺乳動物細胞形質転換体を、該ベ
クター中に存在するマーカーのおかげで生存するように、該形質転換体のみを独
自に適応させる選択圧下に置く。培地中の選択剤の濃度が連続的に変化すること
により選択遺伝子とニュールツリンタンパク質産物をコードするDNAとの両方の 増幅がもたらされる条件下で、該形質転換細胞を培養することにより、選択圧を
かける。その結果、量的に増加したニュールツリンタンパク質産物が、その増幅
されたDNAから合成される。
【0119】 例えば、まず最初に、DHFR選択遺伝子で形質転換した細胞を同定する。これは
、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセートを含有する培地中で該形
質転換体のすべてを培養することにより行なう。野生型DHFRを使用する場合に適
当な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣細胞系である
(例えば、UrlaubおよびChasin, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 77(7): 421
6-4220 (1980)を参照されたい)。ついで、該形質転換細胞を、上昇させたレベ ルのメトトレキセートにさらす。これにより、多コピーのDHFR遺伝子と、それに
伴って、発現ベクター中に存在する多コピーの他のDNA(例えば、ニュールツリ ンタンパク質をコードするDNA)との合成が生じる。
【0120】 プロモーター 本発明の発現およびクローニングベクターは、典型的には、ニュールツリンタ
ンパク質産物をコードする核酸配列に作動的に結合した、宿主生物に認識される
プロモーターを含有する。プロモーターは、ある特定の核酸配列の転写および翻
訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’側)(一般には、約100〜10
00bp以内)に位置する非翻訳配列である。プロモーターは、通常、誘導的プロモ
ーターおよび構成的プロモーターの2つのクラスのうちの1つに分類される。誘導
的プロモーターは、培養条件中の何らかの変化(例えば、栄養素の存在もしくは
不存在、または温度変化)に応答して、その制御下、増加したレベルの転写をDN
Aから開始する。潜在的な種々の宿主細胞により認識される多数のプロモーター が、よく知られている。制限酵素消化により該プロモーターを起源DNAから取り 出し、所望のプロモーター配列を該ベクター中に挿入することにより、これらの
プロモーターを、ニュールツリンをコードするDNAに作動的に結合させる。ニュ ールツリンDNAの増幅および/または発現を指令するためには、天然ニュールツ リンプロモーター配列を使用することができる。しかしながら、異種プロモータ
ーが、天然プロモーターと比べて強力な転写および発現タンパク質の高い収量を
可能にする場合、および異種プロモーターが、使用するために選択した宿主細胞
系に和合性である場合には、そのような異種プロモーターが好ましい。
【0121】 原核性宿主と共に使用するのに適したプロモーターには、β-ラクタマーゼお よびラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼ、トリプトファン(tr
p)プロモーター系;およびハイブリッドプロモーター(例えば、tacプロモータ
ー)が含まれる。他の公知の細菌プロモーターも好適である。それらのヌクレオ
チド配列は公開されている。したがって、必要ないずれかの制限部位を付与する
ために、必要に応じて、リンカーまたはアダプターを使用して、該ヌクレオチド
配列を所望のDNA配列に連結することが、当業者において可能である。
【0122】 酵母宿主と共に使用するための適当なプロモーター配列も、当技術分野で良く
知られている。酵母エンハンサーを酵母プロモーターと共に使用するのが有利で
ある。哺乳動物宿主細胞と共に使用するための適当なプロモーターは良く知られ
ており、それらには、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例
えば、アデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメ ガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはシミ アンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーターが含
まれる。他の適当な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例
えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。CHO細 胞中でのタンパク質の製造において現在用いられているプロモーターとして、SR
aが挙げられる(Takebeら, Mol. Cell. Biol., 8(1): 466-472, 1988を参照され
たい)。
【0123】 エンハンサー要素 本発明のタンパク質をコードするDNA配列の、高等真核生物による転写を増加 させるために、エンハンサー配列をベクター中に挿入することができる。エンハ
ンサーは、プロモーターに作用してその転写を増加させる通常は10〜300bp長の シス作用性のDNA要素である。エンハンサーは、配向および位置にはそれほど左 右されない。それは、転写単位の5’側および3’側に見出されている。哺乳動物
遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が公知である(例えば、グロ
ビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテインおよびインスリン)。し
かしながら、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーを使用することになろう
。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポ
リオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが、真核性プロモータ
ーの活性化のための代表的なエンハンサー要素である。エンハンサーは、ニュー
ルツリンDNAの5’側または3’側の位置でベクター中にスプライシングされうる が、それは典型的には、プロモーターの5’側の部位に位置する。
【0124】 転写終結 また、真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細
胞生物からの有核細胞)中で使用する発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの
安定化に必要な配列を含有するであろう。そのような配列は、真核DNAまたはcDN
Aの5’非翻訳領域、時には3’非翻訳領域から一般的に入手可能である。これら の領域は、該タンパク質をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化断片
として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。
【0125】 所望のニュールツリンタンパク質産物をコードする配列と共に前記で挙げた成
分の1以上を含有する適当なベクターの構築は、標準的な連結技術により行なう 。単離されたプラスミドまたはDNA断片を、切断し、操作し、所望の順序で再連 結して、必要なプラスミドを得る。正しい配列が構築されたことを確認するため
に、該連結混合物を使用して大腸菌(E. coli)を形質転換することができ、成 功裡に得られた形質転換体を公知技術(例えば、前記のアンピシリンまたはテト
ラサイクリン耐性)により選択することができる。ついで該形質転換体からのプ
ラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、および/または
配列決定して、所望の構築物の存在を確認する。
【0126】 また、ニュールツリンタンパク質産物をコードするDNAの哺乳動物細胞中での 一過性発現をもたらすベクターを使用することもできる。一般に、一過性発現は
、宿主細胞中で効率的に複製されうる発現ベクターの使用を伴い、それにより宿
主細胞は、多コピーの発現ベクターを蓄積し、そして該発現ベクターにコードさ
れる高レベルの所望のタンパク質を合成する。適当な発現ベクターと宿主細胞と
を含む一過性発現系は、クローン化DNAにコードされるタンパク質の簡便な陽性 同定と、所望の生物学的または生理的特性に関するそのようなタンパク質の迅速
なスクリーニングとを可能にする。したがって、一過性発現系は、該タンパク質
の変異体の同定において特に有用である。
【0127】 宿主細胞の選択および形質転換 本発明はまた、組換えニュールツリンタンパク質の発現に使用する核酸配列で
形質転換された宿主細胞(例えば、細菌、哺乳動物、昆虫、酵母または植物細胞
)を提供する。形質転換された宿主細胞を、該核酸配列の発現を許容する適当な
条件下で培養する。適当な宿主細胞の選択、および形質転換、培養、増幅、スク
リーニングおよび産物の製造および精製のための方法は、当技術分野で良く知ら
れている。例えば、GethingおよびSambrook, Nature, 293:620-625 (1981)また はKaufmanら, Mol. Cell. Biol., 5(7): 1750-1759 (1985)またはHowleyら, 米 国特許第4,419,446号を参照されたい。形質転換された宿主細胞を適当な培地中 で培養し、ついで、発現された因子を、所望により、当業者に公知の適当な手段
により、培地から(または細胞内で発現させた場合には、該細胞から)回収し、
単離し、精製する。
【0128】 本発明におけるベクターのクローニングまたは発現のための適当な宿主細胞と
しては、前記のとおり、原核細胞、酵母細胞または高等真核細胞が挙げられる。
原核宿主細胞には、真性細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物、例えば
大腸菌(E. coli)、バシラス(Bacilli)、例えばバシラス・サチリス(B. sub
tilis)、シュードモナス(Pseudomonas)種、例えばシュードモナス・エルジノ
ーサ(P. aeruginosa)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimur
ium)またはセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)が含まれるが、
これらに限定されるものではない。あるいは、クローニングのインビトロ方法(
例えば、PCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応)が適している。
【0129】 ニュールツリンタンパク質産物の発現には、原核宿主細胞に加えて、糸状菌、
酵母などの真核微生物が適当な宿主となりうる。下等真核宿主微生物のなかでは
、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパ
ン酵母が最も一般的に使用されるが、多数の他の属、種および株が良く知られて
おり、一般的に入手可能である。
【0130】 グリコシル化ニュールツリンタンパク質産物の発現のための適当な宿主細胞は
、多細胞生物に由来する。そのような宿主細胞は、複雑なプロセシングおよびグ
リコシル化活性の能力を有する。原則として、任意の高等真核細胞培養の使用が
、そのような培養が脊椎動物細胞を含むか無脊椎生物細胞(植物細胞および昆虫
細胞を含む)を含むかにかかわらず、可能であろう。培養(組織培養)中での脊
椎動物細胞の増殖は良く知られた方法であるため、脊椎動物細胞は一般に用いら
れている。有用な哺乳動物宿主細胞系には、例えば、SV40(COS7)で形質転換さ
れたサル腎CV1系、ヒト胎児腎系(293細胞または浮遊培養中での増殖のためにサ
ブクローニングされた293細胞)、乳児ハムスター腎細胞およびチャイニーズハ ムスター卵巣細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適当な
哺乳動物細胞系には、HeLa、マウスL-929細胞、Swiss、Balb-cもしくはNIHマウ ス由来の3T3系、BHKまたはHaKハムスター細胞系が含まれるが、これらに限定さ れるものではない。
【0131】 本発明に適した宿主細胞として同様に有用なものとして、細菌細胞が挙げられ
る。例えば、大腸菌(E. coli)の種々の株(例えば、HB101、DH5a、DH10および
MC1061)が、宿主細胞としてバイオテクノロジーの分野において良く知られてい
る。また、ストレプトマイセス(Streptomyces)種などの種々の株を使用するこ
ともできる。ニュールツリンタンパク質を製造するための現在好ましい宿主細胞
は、細菌細胞(例えば、大腸菌(Escherichia. coli))および哺乳動物細胞( 例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞など)である。
【0132】 前記の発現またはクローニングベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、好
ましくは形質転換し、通常の栄養培地中で培養する。プロモーターを誘導し、形
質転換体を選択し、あるいは所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、
適宜、培地を修飾することができる。当業者に良く知られており、用いる宿主細
胞に応じて適宜選択される標準的な技術を用いて、トランスフェクションおよび
形質転換を行なう。例えば、細胞壁のない哺乳動物細胞の場合には、リン酸カル
シウム沈殿法を使用することができる。また、エレクトロポレーション、マイク
ロインジェクションおよび他の公知技術を用いることもできる。
【0133】 宿主細胞の培養 本発明のタンパク質を製造するのに使用する形質転換細胞を、適当な培地中で
培養する。必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、イン
スリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム
、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、バッファー(例えば、HEPES) 、ヌクレオシド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、ゲ
ンタマイシン)、微量元素(マイクロモルの範囲の最終濃度で通常は存在する無
機化合物と定義される)およびグルコースまたは他のエネルギー源で、培地を補
足することができる。また、当業者には理解されるとおり、他の補足剤を適当な
濃度で加えることも可能である。選択した宿主細胞に用いる温度、pHなどの適当
な培養条件は、当業者に良く知られている。
【0134】 また、相同組換えにより、あるいは、ニュールツリンまたはGDNFをコードする
DNAを既に含有する細胞中に導入された制御要素を使用する組換え製造法により 、ニュールツリンタンパク質産物を製造することができると考えられる。相同組
換えは、転写的に活性な遺伝子中で突然変異を誘導または修正するために遺伝子
をターゲッティングするために元来開発された技術である(Kucherlapati, Prog
. in Nucl. Acid Res. and Mol. Biol., 36:301 (1989))。その基本的な技術は
、哺乳動物ゲノムの特定の領域中に特定の突然変異を導入するための方法(Toma
sら, Cell, 44:419-428, 1986; TomasおよびCapecchi, Cell, 51:503-512, 1987
; Doetschmanら, Proc. Natl. Acad. Sci., 85:8583-8587, 1988)、または欠損
遺伝子内の特定の突然変異を修正するための方法(Doetschmanら, Nature, 330:
576-578, 1987)として開発された。代表的な相同組換え技術は、米国特許第5,2
72,071号(EP 91 90 3051, EP公開第505 500号; PCT/US90/07642, 国際公開第WO
91/09955号)(その開示を参照により本明細書に組入れることとする)に記載 されている。
【0135】 相同組換えにより、ゲノム中に挿入するDNA配列を、関心のある遺伝子の特定 の領域に導くことができる(これは、それをターゲッティングDNAに結合させる ことにより行なうことができる)。該ターゲッティングDNAは、ゲノムDNAの領域
に相補的(相同)なDNAである。ゲノムの特定の領域に相補的なターゲッティン グDNAの小片を、DNA複製過程中に親鎖と接触させる。細胞中に挿入されているDN
Aの一般的な特性は、共有されている相同領域にわたり、他の内因性DNA片とハイ
ブリダイズし、したがってそれと組換えを起こすことである。この相補鎖が、突
然変異または異なるDNA配列を含有するオリゴヌクレオチドに結合している場合 には、組換えの結果、それもまた、新たに合成された鎖中に取込まれる。プルー
フリーディング機能の結果、新たなDNA配列が鋳型として機能することが可能で ある。このようにして、導入されたDNAがゲノム中に取込まれる。
【0136】 ニュールツリンタンパク質産物の核酸配列、プレプロ配列または発現制御配列
などの或る特定の遺伝子の配列が既知であれば、例えば、関心のある領域の境界
となる特定の認識部位での該天然DNAの適当な制限酵素処理により、該遺伝子の 選択された領域に相補的なDNA断片を合成または入手することができる。この断 片は、細胞中への挿入の際のターゲッティング配列として働き、該ゲノム内のそ
の相同領域とハイブリダイズすることになる。このハイブリダイゼーションがDN
A複製中に生じる場合は、このDNA断片と、それに結合している追加的な任意の配
列とが、岡崎フラグメントとして作用し、新たに合成される娘鎖DNA中に返し縫 い(backstitched)されることになる。
【0137】 本発明においては、ターゲッティングDNAのこれらの断片に結合しているのは 、ニュールツリンタンパク質産物の発現と相互作用しうるDNA領域である。例え ば、プロモーター/エンハンサー要素、サプレッサー、または外因性転写モジュ
レーション要素を、該ニュールツリンタンパク質産物をコードするDNAの転写に 影響を及ぼすのに十分な接近性と配向で、意図される宿主細胞のゲノム中に挿入
する。該制御要素は、ニュールツリンをコードしないが、その代わりに、宿主細
胞ゲノム中に存在するDNAの一部を制御する。したがって、該タンパク質の発現 は、ニュールツリンタンパク質産物の遺伝子自体をコードするDNAのトランスフ ェクションによってではなく、ニュールツリンタンパク質産物の転写のための認
識可能なシグナルを内因性遺伝子配列に与えるDNA調節セグメントと結合したタ ーゲッティングDNA(これは、関心のある内因性遺伝子に相同な領域を含有する )の使用により行なうことができる。また、本発明では、相同組換え法を用いて
、通常は転写的にサイレントなニュールツリンタンパク質産物遺伝子を含有する
細胞を修飾して、ニュールツリンタンパク質産物を発現する細胞を得ることが可
能である。
【0138】 以下の例示的な実施例を考慮すれば、本発明の他の態様および利点が理解され
るであろう。実施例1では、蝸牛組織片培養系における有毛細胞に対するニュー ルツリンタンパク質産物の投与の効果を検討する。実施例3では、蝸牛から得た 分散細胞培養における内耳聴覚ニューロン(ラセン神経節ニューロン)に対する
ニュールツリンタンパク質産物の投与の効果を検討する。
【0139】 実施例 実施例1 ニュールツリンタンパク質産物は蝸牛有毛細胞を耳毒性から保護する材料 以下の実施例で用いた材料は、以下のとおりに入手した。
【0140】コルチ器の解剖用の溶液 1.5g/LのD-グルコース(Dextrose. Cat. #15023-021, Gibco BRL)を含有する
ダルベッコリン酸緩衝食塩水(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)(PBS
; 1×, 塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含まない, Cat. #14190-136,
Gibco BRL)。
【0141】コルチ器組織片培養培地 1.高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM; 1×, L-グルタミンを含有
, ピルビン酸ナトリウムを含有しない, Cat. #11965-084, Glico BRL)。 2.0.15g/100mlのD-グルコース(Dextrose. Cat. #15023-021, Gibco BRL)。 3.1% N-2補足物(100X, Cat. #17502-030, Gibco BRL)。 4.100単位/mlのペニシリンGカリウム(Penicillin; Cat. #21840-020, Gibco B
RL)。
【0142】方法 培地の調製 DMEMを1% N-2補足物で補足し、D-グルコースを最終濃度1.5g/Lまで加えた。 ペニシリンを100単位/mlで加えた。混合後、該培地を濾過し、4℃で維持した。 実験間のばらつきを最小限に抑えるために、該培地は使用直前に新たに調製した
。タンパク質の吸着を最小限に抑えるために、全体にわたりプラスチックピペッ
トおよび容器を使用した。
【0143】ニュールツリンタンパク質産物の溶液 ヒト組換えニュールツリンタンパク質産物を、5%ウシ血清アルブミンを含有 するD-PBS(蒸留水で調製したリン酸緩衝食塩水)中の1mg/ml溶液として製造し た。該溶液を数個のアリコートとして-85℃で保存した。系列希釈物(通常の培 地中、0.1、1、10、50、100ng/ml)を96マイクロプレート中で調製した。10マイ
クロリットルの10倍濃縮ニュールツリンタンパク質産物溶液を、耳毒素を含有す
る又は含有しない(対照)コルチ器組織片培養(90μl)に加えた。対照培養に は通常の培地(10μl)を加えた。該ニュールツリンタンパク質産物での処理は 、プレーティング当日に開始した。2日目に、培地を、該耳毒素を単独で若しく はニュールツリンと共に含有する又はそれらのどちらも含有しない(対照)培地
に交換した。
【0144】解剖道具および培養皿 1.4”および5”解剖用ピンセットならびに4”解剖用ハサミは、Roboz Surgical
, Washington, DCからのものである。 2.Falcon無菌96ウェルマイクロプレート(平底, Cat. #3072)、組織培養プラ スチック製品およびポリプロピレン遠心管は、Beckton-Dickinson, Lincoln Par
k, New Jerseyからのものである。
【0145】耳毒素および関連試薬 1.ネオマイシン溶液(Cat. #N1142, Sigma. St. Louis, MO)。これは、0.6mM の最終濃度で使用した(90μlの1mg/mlネオマイシンを1410μlの培地に加えるこ
とにより、新鮮な溶液を各実験ごとに調製した)。 2.シスプラチン(Platinol-AQ. Cat. #NDC 0015-3220-22, Bristol-Myers Squi
bb Laboratories, Princeton, New Jersey)。これは、35μg/mlの最終濃度で使
用した(52.5μlの1mg/mlシスプラチンを1447.5μlのメディウムに加えることに
より、新鮮な溶液を各実験ごとに調製した)。 3.Triton X-100(t-オクチルフェノキシポリ-エトキシエタノール. Cat. #X-10
0, Sigma. St. Louis, MO)。 4.ファロイジン(FITC標識体, Cat. #P-5282, Sigma. St. Louis, MO)。 5.Vectashield(封入剤, Cat. #H-1000, Vector, Burlingame, CA)。
【0146】ラットコルチ器外植片の調製 コルチ器外植片はP3-P4 Wistarラットから得た。ラットを断頭し、下顎を切除
し、皮膚を除去した。側頭骨を解剖溶液中に集め、迷路骨包を露出させ、骨-軟 骨性蝸牛包(bony-cartilaginous cochlear capsule)を側頭骨から注意深く分 離した。分離した蝸牛を、さらなる解剖のために、解剖溶液を含有するもう1つ のペトリ皿に移した。中枢VIII神経組織をつまみそれを取り出すために細ピンセ
ットを使用することにより無傷コルチ器を得、ついで血管条膜を先端または基部
から注意深く剥ぎ取った。ついでコルチ器を、グルコースで補足され培養の準備
が整っている冷PBSを含有する35mm径のペトリ皿に移した。
【0147】蝸牛組織片培養法 蝸牛外植片を、コートされていない96ウェルマイクロプレート中で培養した。
単一のコルチ器をウェル中に配置し、培地中に浮遊状態で維持した。
【0148】 外植片を、通常の培地中に24時間維持した(90μl/ウェル)。ニュールツリン
タンパク質溶液(10μl)を「処理」培養に加え、10μlの培地を対照に加えた。
24時間のインキュベーションの後、該培地を交換し、該外植片をニュールツリン
タンパク質溶液(10μl)の存在下または不存在下(対照)に耳毒素含有培地(9
0μl)にさらした。該培養を更に3日間インキュベートした。ついで該外植片を 、0.1M D-PBS中の4%パラホルムアルデヒドで室温にて30分間固定し、免疫染色 用に加工した。
【0149】有毛細胞のFITC-ファロイジン染色 コルチ器中の有毛細胞を同定し計数するために、直接免疫染色法を用いて、有
毛細胞の不動毛束中に天然に存在するアクチンを標識した。該外植片を、D-PBS (200μl/ウェル)で3回洗浄し、その透過性を1% Triton X-100 D-PBSで室温に
て15分間上昇させた。D-PBS中で3回洗浄した後、該外植片をFITC標識ファロイジ
ン(50μl/ウェル、ストックから1:60)と共に室温で45分間インキュベートした
。ファロイジンは光に感受性であるため、該プレートをアルミニウムホイルで覆
った。D-PBSで更に3回洗浄した後、該標識外植片を顕微鏡スライド上のグリセロ
ール滴中に配置し、カバーガラスで覆い、マニキュア液で封入した。該外植片を
、FITCフィルターおよび蛍光レンズを用いてNikon Diaphot-300倒立蛍光顕微鏡 下で観察した。
【0150】有毛細胞数の測定 各実験段階で、2〜4個の蝸牛を使用した。各蝸牛においては、それぞれ長さ17
5mmの2〜3個の切片において有毛細胞数を計数した。蝸牛の中央回転部(middle
turn)の切片のみを分析した。各実験は数回繰返した。対照およびシスプラチン
またはネオマイシンで処理した培養の有毛細胞の数を、各段階あたり40個の蝸牛
の分析から得た。
【0151】結果 浮遊組織片培養中の有毛細胞は、4日間の実験期間中に死亡しなかった。した がって、耳毒素および処理の不存在下での4日間の実験期間の終了時に存在する ファロイジン染色細胞の数は、105.4±6.9(n=28)であった。プレーティングの
2日後に外植片に加えた耳毒素は、インビトロで4日後に見出される有毛細胞数の
有意な減少を引き起こした。プレーティングの24時間後に35μg/mlのシスプラチ
ンにさらすと、該有毛細胞の約80%が喪失した。すなわち、最初の有毛細胞数の
20.8%±4.6(n=21)しか生存しなかった(表1)。0.8mMネオマイシンにさらした
後は、有毛細胞の5.9%±4.7(n=23)しか生存しなかった(表2)。これらの2つ の処理の間でコルチ器の形態に著しい相違があった。ネオマイシンでの処理は有
毛細胞のほとんど完全な喪失を引き起こしたが、残存した有毛細胞は、依然とし
て、典型的な4列構造(外有毛細胞の3列および内有毛細胞の1列)に組織化され ていた。一方、シスプラチン処理は、該4列構造の著しい破壊を引き起こし、生 存細胞は不規則に位置していた。
【0152】 プレーティングの時点でニュールツリンを与えた培養においては(前処理)、
耳毒素に3日間(第2日〜第4日)さらした後も、有意な数の有毛細胞が生存して いた。シスプラチンにさらした培養においては、僅か0.1ng/mlの濃度のニュール
ツリンでの処理が、生存有毛細胞を21%(未処理培養)から35%へ増加させた。
最大保護活性には、1ng/mlのニュールツリンで到達した(50%生存)(表1)。 ネオマイシンにさらした培養においては、0.1ng/mlのニュールツリンが有毛細胞
の数を6%から22%に増加させた。最大ニュールツリン活性(22%生存)が、10n
g/mlのニュールツリンで認められた(表2)。ニュールツリンでの処理は、ネオ マイシン処理培養においては該4列形態を維持したが、シスプラチンによるその 破壊を阻止しなかった。
【0153】
【表2】
【0154】 ニュールツリンは、プレーティング当日に該組織片培養に導入した。シスプラ
チン(35μg/ml)を24時間後に加え、該培養を更に3日間インキュベートした。 該有毛細胞をFITCファロイジンで染色した。有毛細胞数を、それぞれ長さ175μm
の2〜3個の切片における蝸牛の中央回転部で計数した。結果を、インビトロにお
ける4日後の未処理培養内に存在する有毛細胞に対する割合(%)として表す(1
05.4±6.9; n=28)。各数字は、n個の蝸牛の平均±SDである。
【0155】
【表3】
【0156】 ニュールツリンは、プレーティング当日に該組織片培養に導入した。ネオマイ
シン(35μg/ml)を24時間後に加え、該培養を更に3日間インキュベートした。 該有毛細胞をFITCファロイジンで染色した。有毛細胞数を、それぞれ長さ175μm
の2〜3個の切片における蝸牛の中央回転部で計数した。結果を、インビトロにお
ける4日後の未処理培養内に存在する有毛細胞に対する割合(%)として表す(1
05.4±6.9; n=28)。各数字は、n個の蝸牛の平均±SDである。
【0157】 実施例2 大腸菌(E. coli)におけるニュールツリンタンパク質産物の組換え産生 図面に示す代表的なニュールツリンタンパク質産物を、大腸菌(E. coli)内 で発現させた。コードするヌクレオチド配列(例えば、図3)を含む相補的な重 複オリゴヌクレオチドを、使用するコドンが大腸菌(E. coli)による発現に対 して最適化されるように合成した。該オリゴヌクレオチドをアニールさせ、PCR
Technology, Principles and Applications for DNA Amplification, Henry A.
Erlich編, Stockton Press, NY, 1989(第6章, Using PCR to Engineer DNA)(
その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載のとおりにPCR 法のための鋳型として使用した。該PCR反応の産物は完全長のニュールツリン遺 伝子であった。このDNA断片を、大腸菌(E. coli)内での発現用の発現ベクター
中にクローニングした。ついで、DNA配列を確認した後、該発現プラスミドを大 腸菌(E. coli)宿主株中に形質転換した。
【0158】 実施例3 内耳聴覚ニューロン(ラセン神経節ニューロン)の生存を促進し耳毒素に対し
て保護するニュールツリンタンパク質産物材料 以下の実施例で使用する材料は、以下のとおりに入手することができる。
【0159】 高グルコースダルベッコ変法(DMEM; #11965-092)、ハム(Hams’)F12培地 (F12; #11765-021)、B27培地補足物(#17504-010)、ペニシリン/ストレプト
マイシン(#15070-014)、L-グルタミン(#25030-016)、ダルベッコリン酸緩衝
食塩水(D-PBS; #14190-052)、マウスラミニン(#23017-015)、ウシ血清アル ブミンおよび画分V(#110-18-017)はすべて、GIBCO/BRL, Grand Island, NY.か
らのものである。熱不活性化ウマ血清は、HyClone, Logan, Utahからのものであ
る。ポリ-L-オルニチン臭化水素酸塩(P-3655)、ウシインスリン(I-5500)、 ヒトトランスフェリン(T-2252)、プトレッシン(P-6024)、プロゲステロン(
P-6149)および亜セレン酸ナトリウム(S-9133)はすべて、Shigma Chemical Co
mpany, Saint-Louis, MOからのものである。パパイン、デオキシリボヌクレアー
ゼI(DNアーゼ)およびオボアルブミン(パパイン解離系)は、Worthington Bio
chemicals, Freehold, NJ.からのものある。Falcon無菌96ウェルマイクロプレー
ト(#3072)、組織培養プラスチック製品およびポリプロピレン遠心管は、Beckt
on-Dickinson, Oxnard, CA.からのものである。Nitex 20μmナイロンメッシュ(
#460)は、Tetko, Elmsford, NYからものである。4”の解剖用ピンセットおよび
4”の解剖用ハサミは、Roboz Surgical, Washington, DCからのものである。
【0160】抗体および関連試薬 ニューロン特異的エノラーゼ(Neuronal Specific Enolase)(NSE)ウサギポ
リクローナル抗体はChemicon(#AB951)、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(#BA-100
0)およびペルオキシダーゼコンジュゲート化アビジン/ビオチン複合体(ABC E
lite; キットPK-6100)はVector Laboratories,Burlingame, CAからのものであ る。3’,3’-ジアミノベンジジンはCappel Laboratories, West Chester, PAか らのものである。PBS中のSuperblockブロッキングバッファー(#37515)は、Pie
rce, Rockford, ILからのものである。Triton X-100(X100)、Nonidet P-40(N
6507)および過酸化水素(30%, v/v; H1009)はSigmaからのものである。すべて
の他の試薬は、特に示さない限り、Sigma Chemical Company(Saint-Louis, MO )から得る。
【0161】耳毒素 シスプラチン(Platinol-AQ, #NDC 0015-3220-22)はBristol-Myers Squibb,
Princeton, NJ、サリチル酸ナトリウムはJ.T. Baker, Phillipsburg, NJ.(#387
2-01)、およびネオマイシンはSigma(#N1142)からのものである。
【0162】方法 培地の調製 基礎培地は、DMEMおよびF12培地の1:1混合物として調製し、50倍濃縮ストッ ク溶液として加えたB27培地補足物で補足する。B27培地補足物は、ビオチン、L-
カルニチン、コルチコステロン、エタノールアミン、D(+)-ガラクトース、還元 グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレッシン、酢酸
レチニル、セレン、T3(トリヨード-1-チロニン、DL-α-トコフェロール、ビタ ミンE)、酢酸DL-α-トコフェロール、ウシ血清アルブミン、カタラーゼ、イン スリン、スーパーオキシドジスムターゼおよびトランスフェリンよりなる。L-グ
ルタミンは約2mMの最終濃度、ペニシリンは約100 IU/lで、ストレプトマイシン は約100mg/lで加える。熱不活性化ウマ血清は約2.5%の最終濃度まで、D-グルコ
ースは約5/lの最終濃度まで、HEPES緩衝剤は約20mMの最終濃度まで、ウシインス
リンは約2.5mg/mlの最終濃度まで、ヒトトランスフェリンは約0.1mg/mlの最終濃
度まで加える。混合後、pHを約7.3に調節し、該培地を4℃に維持する。実験間の
ばらつきを最小限に抑えるために、該培地は使用直前に新たに調製する。タンパ
ク質の吸着を最小限に抑えるために、全体にわたりプラスチックピペットおよび
容器を使用する。
【0163】ニュールツリンタンパク質産物溶液 精製された組換えニュールツリンタンパク質産物(例えば、図1および3)は、
5%ウシ血清アルブミンを含有するD-PBS(蒸留水で調製したリン酸緩衝食塩水)
中の1mg/ml溶液として調製する。該溶液を数個のアリコートとして-85℃で保存 する。系列希釈物を96マイクロプレート中で調製する。10マイクロリットルの10
倍濃縮ニュールツリンタンパク質産物溶液を、培地を含有する細胞培養(90μl )に加えた。対照培養には5%アルブミン(10μl)と共にD-PBSを加えた。該ニ ュールツリンタンパク質産物の処理を、細胞を播いてから1時間後または24時間 後に、単独で又は耳毒素と共に、該培養に加える。
【0164】耳毒素の調製 ネオマイシンは、10μl/ウェルでストック溶液(約10-3M)から直接加えて、 約10-4Mの最終濃度にする。シスプラチンは、ストック溶液(1ml/ml)から20μg
/mlの溶液に培地で希釈し、10μl/ウェルで加えて、2μg/mlの最終濃度にする。
サリチル酸ナトリウムは、粉末からPBS中1Mのストック溶液に調製し、さらに該 培地中で100mMまで希釈し、これは、10μl/ウェルで培地に加えた場合に10mMの 最終濃度となる。
【0165】培養基質 基質に対するラセン神経節細胞の最適な付着および神経突起のアウトグロウス
(outgrowth)を促進するために、以下の方法に従うポリ-L-オルニチンおよびそ
れに続くラミニンでの連続的コーティングによりマイクロタイタープレートの表
面(培養基質)を修飾する。該プレート表面を、室温で少なくとも1時間、0.1M ホウ酸(pH8.4)中のポリオルニチンの0.1mg/mlの無菌溶液で完全に覆い、つい でSuper-Q水で無菌的に洗浄する。ついで該水洗液を吸引し、PBS中のマウスラミ
ニンの10μg/ml溶液を加え、37℃で2時間インキュベートする。結果の再現性を 保証するために、これらの方法は、該プレートを使用する直前に行なう。
【0166】ラットラセン神経節細胞培養の調製 3〜4週齢のWistarラット(Jackson Laboratories, Bar Harbor, Maineから入 手)に、3:3:1の比のケタミン(100mg/ml)、キシラジン(20mg/ml)およびマ
レイン酸アコプロマジン910mg/ml)の過量の溶液を注射する。ついで該ラットを
断頭により殺し、蝸牛と共に側頭骨を摘出し、氷上の1.5g/Lグルコースを含有す
るPBS中に無菌的に移す。実験当たり最大30個の蝸牛を加工する。該蝸牛を開口 し、蝸牛軸と共にコルチ器を、5mlの解離培地(120単位のパパインおよび2000単
位のDNアーゼ(HBSS中))を含有する50mlの無菌管中に集める。該組織を、約200r
pmのロータリープラットフォームシェーカー上で約37℃で30分間インキュベート
する。該解離溶液を新鮮な溶液と交換し、該インキュベーションを再び更に30分
間行なう。ついで該細胞を、口焼きしたパスツールピペットによるトリチュレー
ションにより分散させ、40μmのNitexナイロンメッシュによる篩いにかけて未解
離組織を捨て、IEC臨床遠心機を用いて200×gで5分間遠心分離を行なう。得られ
た細胞ペレットを、オボアルブミンおよび約500単位のDNアーゼを含有するHBSS に再懸濁し、4%オボアルブミン溶液(HBSS中)上に重層し、500×gで約6分間遠
心分離する。最終ペレットを約6mlの該培地に再懸濁し、予めコートされたプレ ート中に90μl/ウェルで播く。
【0167】ラセン神経節細胞の免疫組織化学 ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)に関する免疫組織化学染色により、ラセ ン神経節ニューロンを同定する。ラセン神経節細胞の培養を、D-PBS(pH7.4)中
の8%パラホルムアルデヒドで室温にて約10分間固定し、該培地に100μl/ウェル
で加え、ついで100μlの4%パラホルムアルデヒドにより更に10分間置換し、つ いでD-PBS(200μl/6mmウェル)中で3回洗浄する。ついで、固定した培養を、該
抗体の浸透を増加させるために1% Nonidet P-40を含有するPBS中のSuperblock ブロッキングバッファー中でインキュベートする。ついでウサギポリクローナル
抗NSE抗体(Chemicon)を、同じバッファー中の1:6000の希釈度で適用し、該培
養をロータリーシェーカー上で37℃で2時間インキュベートする。D-PBSで3回洗 浄した後、該ラセン神経節細胞結合抗体を、ヤギ抗ウサギビオチン化IgG(Vecto
r Laboratories, Burlingame, CAからのVectastainキット)を約1:300の希釈度
で使用して検出する。該二次抗体を該細胞と共に37℃で約1時間インキュベート し、該細胞をD-PBSで3回洗浄する。ついで該二次抗体を、1:300で希釈したアビ
ジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体で標識し、該細胞を37℃で約60分間イン
キュベートする。D-PBSで更に3回洗浄した後、該標識細胞培養を、0.04% 3’,3-
ジアミノベンジジン-(HCl)4、0.06% NiCl2および0.02%過酸化水素を含有する0
.1M Tris-HCl(pH7.4)溶液中で5分間反応させる。
【0168】ラセン神経節細胞の生存の測定 培養内での種々の時間(24時間、3日間および4日間)の経過後に、ラットラセ
ン神経節細胞の培養を固定し、加工し、NSEに関して免疫染色し(前記のとおり )、ついで該培養を、200倍の倍率で明光レンズ(bright-light optics)で検査
する。6mmウェル中に存在するNSE陽性ニューロンのすべてを計数する。生存可能
なラセン神経節細胞は、15〜40μmのサイズの円形体を有し神経突起を保持する ものとして特徴づけられる。不規則で空胞化した核周囲部細胞体または断片化神
経突起を有するなどの変性の徴候を示すラセン神経節細胞を、その計数から除外
する(しかしながら、変性しているラセン神経節細胞のほとんどは、培養基質か
ら剥離した)。細胞数を、細胞/6mmウェルとして又は対照細胞密度に対する変化
倍率として表す。
【0169】結果 耳毒素に対する生存および保護に対するニュールツリンタンパク質産物の効果
を示すために、ラットラセン神経節ニューロンの培養を用いることが可能である
。ラセン神経節細胞を、3〜4週齢のラット蝸牛から得る。ついで該解離細胞を、
B27培地補足物、2.5%熱不活性化ウマ血清、D-グルコース、HEPES、インスリン およびトランスフェリンで補足されたDMEM/F12中、ポリオルニチン-ラミニンで コートされたマイクロプレート中に蝸牛約1個/ウェルの密度で播く。該培養は、
ニューロンおよび非ニューロン細胞の混合物よりなる。好ましくは、存在する唯
一のニューロンはラセン神経節ニューロンであり、これらは、NSE免疫反応性の 存在により同定することができる。
【0170】 ニュールツリンタンパク質産物の投与の効果を、培養ラットラセン神経節ニュ
ーロンの生存および形態学的成熟ならびにそれらが公知耳毒素(例えば、シスプ
ラチン)の毒性作用を妨げる能力に関して評価する。ラセン神経節細胞の培養を
、播種の24時間後に、ヒト組換えニュールツリンタンパク質産物(50ng/ml〜0.1
ng/ml)のみ、またはそれとシスプラチン(35μg/ml)との組合せで処理する。 播種の24時間後に、対照培養と1ng/mlおよび10ng/mlのニュールツリンで処理し た培養との間に聴覚ニューロンの数に相違はないと考えられる。さらに3日後、1
ng/mlの濃度のニュールツリンでの処理は、ニューロン細胞数の有意な増加を引 き起こさないと考えられる。しかしながら、著しい栄養効果が存在すると考えら
れる。すなわち、ニューロン細胞体は、対照培養の場合より大きく、線維は、よ
り長く、より複雑である。10ng/mlのニュールツリンで処理した培養においては 、24時間後に存在するニューロンの約70%は生存していると考えられ、これは、
対照培養に対して平均40%の増加に相当する。該栄養効果は、1ng/mlのニュール
ツリンで処理した培養の場合より一層強力であると考えられる。
【0171】 また、ニュールツリンは、ラセン神経節ニューロンをシスプラチンの毒性から
保護すると考えられる。播種の24時間後に培養を5μg/mlのシスプラチンにさら すと、培養内で4日後には、最初のニューロン数(24時間の時点)の約90%の喪 失を引き起こしうる。シスプラチンと共にニュールツリンを加えると、4日後に 見出されるニューロン数は、有意に多いと考えられる。また、ニュールツリンの
この保護効果は用量依存的であり、ニュールツリンに応答するニューロン(該ラ
セン神経節ニューロン集団の約40%)の約60%もまた、シスプラチンの毒性に対
して保護されうると考えられる。
【0172】 実施例4 蝸牛有毛細胞のインビボでの生存を促進するニュールツリンタンパク質産物 以下の実施例では、モデル動物において耳毒性に対して蝸牛有毛細胞を保護す
るためのニュールツリンタンパク質産物の内耳投与について説明する。該ニュー
ルツリンタンパク質産物は、蝸牛の基底回転部(basal turn)にあけた穴から鼓
室階中に押し込んだカニューレを介して内耳内に導入する。該カニューレは、0.
5μl/時の放出速度で14日間、ニュールツリンタンパク質産物(50ng/ml)をロー
ディングしたAlzetミニポンプに接続する。カニューレ挿入の2日後に、1mg/mlで
15日間毎日または7.5mg/kgで5日間隔で2回のシスプラチンの筋肉内注射を開始す
る。該実験は、27日後に終了する。該有毛細胞をFITC-ファロイジンで染色し、 それらの数を蝸牛の中央回転部において(該中央回転部の少なくとも20%におい
て)測定する。結果を、ニュールツリンタンパク質産物で処理した内耳(右耳)
および未処理の耳(左耳)に関して、それぞれのモルモットの喪失した有毛細胞
の割合(%)として表す。
【0173】材料 以下の実施例で使用する材料は、以下のとおりに入手する。
【0174】ミニポンプ調製材料 医学用ビニル管(サイズV/4、カタログNo BB317-85)は、Bolab Products((8
00)331-7724)からのものである。Fisherブランドの5mlプラスチックピペットを
使用する。Microlmenポリイミド管(カタログ#8004853 OG(Tampa Florida)) を使用する。Silicone Medical Product MDX 4-4210は、Dow Corning Corporati
on, Midland, MIからのものである。Alzet浸透圧ミニポンプ流速調節(減速)材
およびAlzet浸透圧ミニポンプ(カタログNo 2002)は、Alza Corp., Palo Alto,
CAからのものである。テープ(TimeMed tape)、Prosil-28(製品No 11975-0)
は、PCR Incorporated, Gainesville Floridaからのものである。精製ニュール ツリンタンパク質産物は、D-PBSおよび0.1% BSA中の50ng/ml溶液として調製する
。PBSに溶解した無菌0.1%メチレンブルー(カタログ#M-9140)および鉱油(カ タログ#400-5)は、Sigmaからものである。
【0175】ミニポンプの調製方法 ビニル管を約4インチの切片に切断し、小型万力中に配置する。Microlumenポ リイミド管(7mm)をビニル管の末端中に配置する。約10部の塩基および1部の硬
化剤を加えることにより、シリコーンを混合する。細い探り針を使用して液滴を
該ビニル管の開口部に配置し、該Microlumen管を、該ビニル中に押し込み、3.75
mmの長さが該ビニル管から伸びるようにする。該探り針上のシリコーンの液滴を
用いて、その先端から0.5mmの該Microlumen管の周囲に小球を作り、一晩乾燥さ せる。
【0176】 5mlピペットの直径を、該ピペットの長さ方向に同心層のテープを巻きおろす ことにより増加させる。該ピペットが未被覆のままの部分に一定の間隙を残す。
該ピペットの周囲をV/4管で包み、2つの緩い管末端が生じ全コイル間に連続的な
接触が生じるように該コイルを調節する。2つの薄いテープ片を該ピペット上の テープの端と整列させて、該コイルを適所に固定する。スーパーグルを該コイル
上に2本の線状に薄く均一に塗る。少なくとも1時間乾燥した後、前記の緩い末端
を該ピペットにほぼ平行に整列させ、1片のテープで適所に固定する。該管を該 コイルに固定するために、1滴のスーパーグルを塗る。一晩乾燥させた後、該テ ープを除去し、該コイルを該ピペットからスライドさせる。流速調節材を、前記
の緩い末端の一方に挿入し、1滴のスーパーグルで固定する。
【0177】 該コイルを水中の1% Prosil-28でフラッシュし、水で十分にリンスし、ついで
70%エタノールでフラッシュする。シリンジまたは減圧により該エタノールを除
去する。コイルを減圧下のデシケーター中に少なくとも30分間放置し、密閉され
たデシケーター中に一晩維持し、ついでガス滅菌する。該ローディング操作中、
ニュールツリンタンパク質産物、油および染料の液体の、重力により駆動される
運動を防ぐために、該コイル装置を可能な限り水平に維持する。ポンプまたはコ
イル内の気泡の形成は避ける。該ポンプを無菌PBSに浸し、37℃で一晩インキュ ベートする。
【0178】 ポンプへのメチレン染料のローディングは、ポンプを垂直位置に保つことによ
り行なう。染料をローディングしたシリンジをポンプ内に完全に挿入し、ポンプ
がオーバーフローするまで該染料を注入する。ポンプ内への気泡の注入は避ける
。無菌V/4管の短い断片を流速調節材(Flow Moderator)上に配置する。V/4管に
接続したシリンジを使用して、ニュールツリンタンパク質産物を、230μlの合計
容量中PBS+0.1%BSA中50ng/mlの濃度で、カニューレの先端の約10mm以内にローデ
ィングする。ビヒクル対照実験には、同容量のPBS+0.1%BSAをポンプ内にローデ ィングする。前記のV/4管の短い断片を除去する。ついで、2mmの空間および7mm の鉱油がポンプ流体とライン流体(line fluid)(注入流体)との間に配置され
るように、シリンジで鉱油を該コイル装置内にローディングする。流速調節材を
ポンプ内に完全に挿入する。
【0179】内耳内へのポンプの挿入 材料 組織接着剤シアノアクリレートはVetbond Tissue Adhesive, 3M Animal Care
Products, St. Paul, MN.からのものである。カルボキシラートセメントESPE Du
relon(カタログ#03828)はESPE-Premier Sales Corp., Norristown PA.からの ものである。メタクリル酸メチルはLang Jet Acrylic, Lang Dental MFG, Co.,
Wheeling, IL.からのものである。解剖道具はRoboz Surgical.からのものである
。キシラジン、ケタミンおよびブプレノルフィンを使用する。潤滑眼軟膏剤(AK
WA Tears)はAkorn Inc., Abita Springs LAからのものである。キシロカイン2%
(カタログNo NDC 0186-0160-01)はASTRAからのものである。医学等級シリコー
ングリース(Art. No. 51.300)はUnimedからのものである。Durelon Pulver粉 末カルボキシラート-セメント(カタログNo. D-82229)はESPE, Seefeldからの ものである。スルファート軟膏剤(バシトラシン亜鉛-ネオマイシン, カタログN
o. 0168-0012-31)はFougeraからのものである。
【0180】方法 アルビノモルモット(250〜350g)を、キシラジン10mg/kg、ケタミン40mg/kg およびブプレノルフィン0.05mg/kgの混合物で麻酔する。頭頂の約2cm前方、肩甲
骨の4〜5cm後方で耳介後から、右耳領域を尾側に剃る。剃った領域をベタジンで
洗浄する。潤滑眼軟膏剤を両眼に塗る。キシロカインを、切開する組織中に皮下
注射する。無菌技術を用いて、耳介後切開を行なう。細い針を使用して、胞(bu
lla)中に孔をあけて、中耳腔を露出させ、蝸牛を可視化する。細い針を使用し て、正円窓の下の基底回転部の骨壁(bone wall of the basal turn)中に手動 で小さな孔をあける。該シリコーン滴が該骨に対して配置されるまで、カニュー
レの先端を該孔に挿入する(それは、該カニューレの先端を鼓室階管のほぼ中間
部に配置する)。シアノアクリレート1滴を該胞孔に配置する。カルボキシラー トセメントを、該シアノアクリレート上、カニューレの周囲に配置する。該セメ
ントが硬化したら、該配置を確認し、該孔の残部をシリコーングリースの層上に
カルボキシレートセメントで覆う。肩甲骨の間に、ポンプを収容する皮下ポケッ
トを作り、ついでポンプを挿入する。該皮下ポケットを、無菌PBSに溶解したニ トロフラゾンの3mlの溶液で1回洗浄し、ついで3mlの無菌PBS+1%ゲンタマイシン
で満たして、感染を阻止する。ニトロフラゾン粉末を該創傷の周囲に適用した後
、該切開を創傷クリップで閉じる。
【0181】難聴化 材料 シスプラチン(Platinol-AQ)(カタログNo NDC 0015-3220-22)はBristol-My
ers Squibb Laboratories, Princeton. NJ.からのものである。
【0182】方法 シスプラチンの注射(i.p.)を、ミニポンプの移植の2日後に開始する。2つの
適用例を用いる。すなわち、2回の7.5mg/kgの注射を5日間隔で、または1mg/kgの
注射を毎日15日間行なう。
【0183】潅流 4週間後、該モルモットをキシラジンとケタミンとの混合物で深く麻酔し、心 臓経由で氷冷PBS、ついでPBS中の氷冷4%パラホルムアルデヒドで潅流する。側 頭骨を取り出し、骨性(bony)蝸牛を4%パラホルムアルデヒド中に配置して、4
℃で一晩、後固定(postfixation)する。
【0184】染色 表面調製(surface preparation)およびファロイジン染色方法を用いて、有 毛細胞を染色する。骨性蝸牛を細い針または#11刃により開口する。細いピンセ ットを使用して血管条を除去する。PBSで満たしたペトリ皿中、細い針を使用し て基底膜を骨性蝸牛軸から注意深く切り離す。それを無傷のまま取り出すように
注意する。ファロイジン染色のための方法は、インビトロ外植片について行なっ
た方法に類似しており、透過性上昇を20〜30分間行なう点、およびファロイジン
を90分間加える点で異なっている。尖、中央回転および基底回転断片を、60×22
カバーグラス上にマウントする。1滴のVECTASHIELDマウント媒体を加え、該サン
プルを22×22mmのカバーグラスで覆い、マニキュア液で封入して、蒸発を防ぐ。
【0185】データの分析 各蝸牛を、FITCフィルターセットを有する顕微鏡下で検査する。基底膜の中央
回転部からの最大の有毛細胞の喪失を有する8個のセグメントを選択し、付属コ ンピュータープリンターにより写真撮影する。該写真を用いて、有毛細胞の計数
を手動で行なう。各動物において、左耳の有毛細胞の喪失(対照、すなわちニュ
ールツリンタンパク質産物の注入の不存在下)を、右耳の有毛細胞の喪失(ニュ
ールツリンタンパク質産物を注入した場合)と比較する。
【0186】結果 シスプラチンの注射は、蝸牛内の有毛細胞の有意な喪失をもたらす。シスプラ
チンを1mg/kgで毎日15日間注射した3匹のモルモットの左耳において分析した中 央回転部におけるこの喪失は、20〜50%であると考えられる。また、シスプラチ
ンを1mg/kgで毎日ではなく7.5mg/kgで2回注射したモルモットにおいては、左耳 の有毛細胞の約40%の予想された喪失が存在する。各モルモットの右耳へのニュ
ールツリンの導入は、有毛細胞の喪失の有意な減少を引き起こすと考えられる。
ニュールツリンタンパク質産物の代わりにビヒクルを満たしたミニポンプを移植
した動物においては、左耳(未処理耳)および右耳(移植耳)で見出される有毛
細胞数における予想される相違は存在しない。
【0187】 実施例5 蝸牛有毛細胞のインビボでの生存を促進するニュールツリンタンパク質産物の
注射 以下の実施例では、モデル動物において耳毒性に対して蝸牛有毛細胞を保護す
るための、中耳内に適用した場合のニュールツリンタンパク質産物の使用につい
て説明する。ニュールツリンタンパク質産物を、125〜135μlの容量中のPBS+1%B
SA中1mg/mlの濃度で、鼓膜を介する単回注射により右中耳内に導入する。シスプ
ラチンの筋肉内注射を、7.5mg/kgで5日間隔で2回、ニュールツリンタンパク質産
物の注射の1日後に開始する。該実験は、2回目のシスプラチンの注射の3日後に 終了する。該有毛細胞をFITC-ファロイジンで染色し、その数を蝸牛の中央回転 部において(該中央回転部の少なくとも20%において)測定する。結果を、ニュ
ールツリンタンパク質産物で処理した耳(右耳)および未処理の耳(左耳)に関
して、各モルモットについての有毛細胞の喪失の割合(%)として表す。
【0188】材料 この実験で使用する材料は、実施例4で使用したものと同じである。
【0189】方法 白子モルモット(体重600〜700g)を、キシラジン10mg/kg、ケタミン40mg/kg およびブプレノルフィン0.05mg/kgの混合物で麻酔する。外科用顕微鏡下、右耳 の鼓膜内に27ゲージ針を挿入することにより該鼓膜に孔をあける。鼓膜の別の位
置に、ニュールツリンタンパク質産物(PBS+1%BSA中1mg/mlの濃度)を中耳腔内 に、該腔全体が満たされるように(125〜135μl)注射する。数匹の動物には、 ニュールツリンタンパク質産物の代わりにビヒクルのみ(PBS+0.1%BSA)を注射 する。翌日、シスプラチン(7.5mg/kg)の筋肉内注射を行なう。5日後、第2の注
射を同一濃度で行なう。3日後(全実験期間の第8日)に、該動物を犠牲にし、組
織を固定し、蝸牛を分析する(実施例4に記載のとおり)。
【0190】結果 シスプラチンを注射したモルモットは、第8日には、蝸牛内の有毛細胞の有意 な喪失を示すと考えられる。左耳(ニュールツリンタンパク質産物を与えていな
い耳)においては、蝸牛の中央回転部における有毛細胞の喪失は、35〜50%であ
ると考えられる。右中耳腔内への1mg/mlのニュールツリンタンパク質産物の注射
は、この喪失を約16〜30%にまで有意に減少させると考えられる。右耳にニュー
ルツリンタンパク質ではなくビヒクルの注射を受けたモルモットは、右耳(処理
)と左耳(未処理)との間で有毛細胞数における相違を示さないと考えられる。
【0191】 以上の本発明の現在好ましい実施形態の説明を考慮すれば、本発明の実施にお
ける多数の修飾および変形が当業者に見出されると考えられる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトニュールツリン神経栄養因子のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】 マウスニュールツリン神経栄養因子のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3】 ニュールツリン神経栄養因子類似体をコードする核酸配列(配列番号3)を示 す。
【図4】 ニュールツリン神経栄養因子類似体をコードするアミノ酸配列(配列番号3ま たは4)を示す。
【図5】 プレプロヒトニュールツリン神経栄養因子のアミノ酸配列(配列番号5)を示 す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 C12N 5/00 B 15/09 ZNA 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U Z,VN,YU,ZW (72)発明者 デラニイ,ジヨン・エム アメリカ合衆国、カリフオルニア・91320、 ニユーベリー・パーク、ライブ・オーク・ ロード・1584 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA20 BA80 CA04 DA02 EA04 GA11 GA13 HA17 4B065 AA90X AA91Y AA93X AA93Y AB01 AC14 BA01 CA24 CA44 4C084 AA02 AA03 AA13 AA17 BA01 BA08 BA21 BA22 BA42 CA53 DB59 MA17 MA23 MA24 MA28 MA35 MA37 MA52 MA56 MA58 MA59 MA60 MA63 MA65 MA66 MA67 NA10 NA13 NA14 ZA022 ZA342 4H045 AA10 BA10 CA40 DA01 EA20 FA72 FA74

Claims (40)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 治療的に有効な量のニュールツリンタンパク質産物を、内耳
    内に病変を有する対象に投与することを含んでなる、感音難聴の治療方法。
  2. 【請求項2】 該難聴が内耳内の神経上皮有毛細胞の損傷または変性に関連
    している、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 該難聴がラセン神経節ニューロンの損傷または変性に関連し
    ている、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図1、2、4または5に記
    載のアミノ酸配列(配列番号1、2、3、4または5)またはその変異体もしくは誘 導体である、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図1に記載のアミノ酸 配列(配列番号1)を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図4に記載のアミノ酸 配列(配列番号3および4)を有する、請求項4に記載の方法。
  7. 【請求項7】 該ニュールツリンタンパク質産物が[Met-1]ニュールツリン である、請求項4に記載の方法。
  8. 【請求項8】 該ニュールツリンタンパク質産物を約1μg/kg/日〜約100mg/
    kg/日の用量で投与する、請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】 該ニュールツリンタンパク質産物を産生し分泌するように細
    胞が修飾されている細胞療法または遺伝子治療手段により、該ニュールツリンタ
    ンパク質産物を投与する、請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 該細胞がエクスビボ(ex vivo)で修飾されている、請求 項8に記載の方法。
  11. 【請求項11】 該細胞がインビボで修飾されている、請求項8に記載の方 法。
  12. 【請求項12】 前庭器の病変または障害の治療方法であって、そのような
    病変または障害を有する対象に、治療的に有効な量のニュールツリンタンパク質
    産物を投与することを含んでなる方法。
  13. 【請求項13】 該病変または障害が眩暈感、眩暈または平衡の喪失を引き
    起こす、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図1、2、4または5に
    記載のアミノ酸配列(配列番号1、2、3、4または5)またはその変異体もしくは 誘導体である、請求項12に記載の方法。
  15. 【請求項15】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図1に記載のアミノ 酸配列(配列番号1)を有する、請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 該ニュールツリンタンパク質産物が、図4に記載のアミノ 酸配列(配列番号3または4)を有する、請求項14に記載の方法。
  17. 【請求項17】 該ニュールツリンタンパク質産物が[Met-1]ニュールツリ ンである、請求項14に記載の方法。
  18. 【請求項18】 該ニュールツリンタンパク質産物を約1μg/kg/日〜約100m
    g/kg/日の用量で投与する、請求項12に記載の方法。
  19. 【請求項19】 該ニュールツリンタンパク質産物を産生し分泌するように
    細胞が修飾されている細胞療法または遺伝子治療手段により、該ニュールツリン
    タンパク質産物を投与する、請求項12に記載の方法。
  20. 【請求項20】 該細胞がエクスビボ(ex vivo)で修飾されている、請求 項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 該細胞がインビボで修飾されている、請求項19に記載の方
    法。
  22. 【請求項22】 図4に記載のアミノ酸配列(配列番号3または4)を含んで なるニュールツリンタンパク質産物。
  23. 【請求項23】 該アミノ酸配列が該アミノ末端にメチオニン残基を有する
    、請求項22に記載のタンパク質。
  24. 【請求項24】 1以上の重合体部分により修飾されている、請求項22に記 載のタンパク質。
  25. 【請求項25】 該重合体部分がポリエチレングリコールである、請求項24
    に記載のタンパク質。
  26. 【請求項26】 請求項22に記載の神経栄養性タンパク質と医薬的に適当な
    担体とを含んでなる医薬組成物。
  27. 【請求項27】 図4に記載のアミノ酸配列(配列番号3または4)を含むニ ュールツリンタンパク質産物をコードする核酸配列。
  28. 【請求項28】 図3に記載の配列(配列番号3)を含んでなる、請求項27に
    記載の核酸配列。
  29. 【請求項29】 請求項27に記載の核酸配列に作動的に結合した発現調節要
    素を含んでなるベクター。
  30. 【請求項30】 請求項29に記載のベクターで形質転換またはトランスフェ
    クトされた宿主細胞。
  31. 【請求項31】 哺乳動物細胞および細菌細胞よりなる群から選ばれる、請
    求項30に記載の宿主細胞。
  32. 【請求項32】 該細胞がヒトに対する移植に適しており、該細胞が該ニュ
    ールツリンタンパク質産物を発現し分泌する、請求項30に記載の宿主細胞。
  33. 【請求項33】 該細胞がエクスビボ(ex vivo)で形質転換またはトラン スフェクトされている、請求項30に記載の宿主細胞。
  34. 【請求項34】 該細胞が、ヒトに対する移植に適した半透膜中に封入され
    ている、請求項30に記載の宿主細胞。
  35. 【請求項35】 (a)図4に記載のアミノ酸配列(配列番号3または4)を含
    む神経栄養因子をコードする核酸配列で形質転換またはトランスフェクトされた
    宿主細胞を、該宿主細胞による該神経栄養因子の発現に適した条件下で培養し、 (b)所望により、該宿主細胞により発現された該神経栄養因子を単離する工 程を含んでなる神経栄養因子の製造法。
  36. 【請求項36】 該核酸配列が、図3に記載の配列(配列番号3)を含む、請
    求項35に記載の製造法。
  37. 【請求項37】 単離した神経栄養因子をリフォールディングする工程を更
    に含む、請求項35に記載の製造法。
  38. 【請求項38】 該宿主細胞が原核細胞である、請求項35に記載の製造法。
  39. 【請求項39】 該宿主細胞が真核細胞である、請求項35に記載の製造法。
  40. 【請求項40】 (a)移植に適した半透膜、および (b)該膜内に封入された細胞を含んでなる、神経損傷を治療するための物品 であって、該細胞が、図4に記載のアミノ酸配列(配列番号3または4)を含む神 経栄養因子を分泌し、該膜が、該神経栄養因子に対して透過性であり、該細胞に
    有害な物質に対して不透過性であることを特徴とする物品。
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