【発明の詳細な説明】
コラーゲンを製造するための改良法
発明の分野
本発明はコラーゲンに関し、特にコラーゲンの改良形態および改良型コラーゲ
ンの調製方法に関する。
背景技術
コラーゲンは、動物の骨、軟骨、靱帯、腱、皮膚および結合組織の主要タンパ
ク質成分である。「コラーゲン」という用語は、共通の三重らせん構造をもつ広
範なタンパク質分子を含む一般的な用語として用いられることが多い。しかしな
がら、結合組織に存在するコラーゲンの最も普通の型はI〜III型である。I型コ
ラーゲンは皮膚、腱および靱帯の主要コラーゲンであり、一方、III型コラーゲ
ンは血管に重要である。コラーゲン分子は、タイトな三重らせんを形成するコラ
ーゲンポリペプチド3個からなる。各ポリペプチドの大部分は、反復アミノ酸配
列Gly-X-Y-(式中XおよびYはいかなるアミノ酸であってもよいが大抵の場合プロ
リンおよびヒドロキシプロリンである)によって特徴づけられる。コラーゲンポ
リペプチドの各末端には非三重らせん型テロペプチド領域がある。コラーゲン鎖
のテロペプチド領域はコラーゲン鎖間の架橋を生じる。
コラーゲンは前駆体コラーゲン(α)鎖として細胞内で合成される。さらに細
胞のプロセシングが行われる間、コラーゲン分子の各末端にテロペプチド領域が
形成される。これらの領域は、分子内架橋形成によるコラーゲンマトリックスの
成熟に重要な役割を果たす。分子内における架橋形成は、強靱なコラーゲン組織
の形成に極めて重要な段階である。細胞外のマトリックスにおいては、コラーゲ
ンはフィブリル(細繊維)に取り込まれ、次いで組織内でさらに会合し繊維束を
形成する。
あらゆる結合組織での必要不可欠なその役割により、コラーゲンはますますバ
イオ物質の主成分となってきており、そうしたバイオ物質には、天然そのままの
改変されていない移植片、心臓血管系の代替成分を含む医療製品、ならびに軟組
織増量用の注入可能なコラーゲンが含まれる。つい最近になって研究が行われ始
めたのは、特に注入可能であるかまたは可溶性コラーゲンの形態である。そのよ
うな可溶性コラーゲンは、医療および美容に繁用されるからである。市販されて
いるコラーゲン様バイオ物質および可溶性コラーゲンインプラント(組織移植片
)の範囲が利用可能であり、これには、ZYDERMおよびZYPLAST(注入可能なコラ
ーゲンインプラント、Collagen Corporation,Palo Alto)、ATELOCOLLAGEN(注
入可能なコラーゲンインプラント、コーケン社、東京)、GELFOAM(ゼラチン止
血フォーム、Upjohn Co.、ミシガン)およびCOLLASTAT(コラーゲン止血スポン
ジ、Kendall Co.、ボストン)が含まれる。
ZYDERMコラーゲンインプラント(ZCIと称することがある)は、20mMリン酸ナ
トリウム、130mM塩化ナトリウムおよび0.3%リグノカイン、pH7.2、中に懸濁した
ウシコラーゲンフィブリルの滅菌懸濁液である。この懸濁液は、フィブリルとし
て沈澱するペプシン可溶化コラーゲンから調製され、次いでフィブリルを集めて
35または65mg/mlのタンパク質濃度になるまで最終緩衝液に再懸濁する。次いで
その懸濁液を配送用シリンジに装入する。電子顕微鏡によれば、ZCIはコラーゲ
ンフィブリルの多分散混合物からなることが判明している。その細繊維の性質ゆ
えに、シリンジから押し出される間の流れ挙動は重要であり、研究の結果、それ
は非ニュートン剪断減挙動を示すことが判った。
さらに最近の製品であるZYPLASTもまたリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁したウ
シコラーゲンフィブリルの注入可能な無菌懸濁液であるが、これは低濃度のグル
タールアルデヒドにより安定化されたコラーゲンフィブリルをもっている。架橋
コラーゲンはpH7〜7.6で35mg/mlのタンパク質濃度をもつ。
ZYPLASTやZYDERMの形のような可溶性コラーゲンが皮膚およびその他の組織に
注入されるとする。その場合、あらゆる形態の可溶性コラーゲンにまず要求され
るのは、コラーゲンが免疫学的に不活性であり毒性がないことである。コラーゲ
ンが生体系の天然成分であり必須成分であるという事実にも拘わらず、可溶性コ
ラーゲンもコラーゲン由来のバイオ物質も細胞毒作用を誘発する場合があること
が報告されている。主な理由の一つは、市販のコラーゲン製品の中に極めて安定
な架橋コラーゲンを与えるものがあるという事実による。しかしながら、使用さ
れている架橋剤としてグルタールアルデヒドおよびヒアルロン酸が含まれており
、これらは毒性の原因になる可能性がある。架橋していない可溶性コラーゲン製
品
に対して抗体が生成されることが判明しているため、該コラーゲンが免疫原性を
もつ可能性も報告されている。研究によれば、I型コラーゲンは極めて弱い免疫
原であり、III型、V型およびVI型などの他の型のコラーゲンのように、抗原反応
を生じるおそれはほとんどあり得ないことが示されている。従って、実質的に10
0%のI型可溶性コラーゲン製品を利用できれば、それは望ましいことである。
さらに、種々の市販されている注入可能な可溶性コラーゲン製品の免疫原性を
調べた結果、優勢な免疫反応をもたらす非コラーゲンタンパクがごく少量存在す
ることが判った。免疫原性源となるもう一つの可能性は変性コラーゲンの存在で
あった。無処置のらせんコラーゲン分子よりも個々の鎖のほうが免疫原性となり
易いからである。
短期および長期の急性もしくは慢性の炎症ならびに免疫試験を評価するため、
ラット、モルモット、およびウサギを含む動物について、可溶性コラーゲンを含
むコラーゲンバイオ物質の一般的毒性を調べる実験を行った。主に瘢痕またはし
わ治療の美容外科手術を受けた患者から得られた、皮膚のZYDERMおよびZYPLAST
インプラントに対する免疫反応に関しては、ヒトについての試験も行った。これ
らの製品はおそらく、精製・再構成されたコラーゲンエクスプラント(外植片)
物質について最も広く特徴づけられ、最も広く用いられた例である。少数の患者
には免疫反応が観察されるが、全体から見ると免疫反応は軽微であった。
報告された中で最も共通している反応は過敏症の一つであり、人口の約3%に潜
在的な反応がある。将来発症しそうな患者の感受性を調べるため、日常的に前処
理した皮膚テストが行われているが、こうしたテストでは注入後に免疫反応を起
こしそうな患者を選別することはできないようである。従って、免疫原性のない
、注入可能な可溶性コラーゲン製品が必要とされている。
さらに、市販の注入可能な可溶性コラーゲン製品の粘度では、細いゲージの注
入針(25〜30のような)によって注入できるかどうかは難しく、注入物の塊やタ
マが生じる。これは、顔の小皺に注入することが必要な場合には特に問題となる
可能性がある。さらに、注入針は製品を最終的に切断することが多い。また、定
常的なフローを保証することができず、正確な量を輸送できないことが多い。従
って、そんな場合でもなお同程度のコラーゲン濃度をもつ、容易に注入可能な可
溶性コラーゲン製品が望ましい。
現在市販されているコラーゲン製品の粘度は、使用前にそれらの製品が保管さ
れている状態の低温下で取り出した場合、取り出してすぐ注入することができな
いような粘度である。こうしたコラーゲン製品は非常に粘度が高いため、製品を
暖めなければならない(例えば、シリンジを温湯に浸すことにより)。この加温
は時にコラーゲンの変性を引き起こすことがある。従って、低温下で取り出して
直ちに注入可能な程度の粘度をもつコラーゲン製品が好都合である。
市販の注入可能なコラーゲン製品についてはまた、その持続性にばらつきがあ
り、それは6ヶ月後のコラーゲンインプラントの皮膚による収縮と広がりに画然
と表れるので、患者はインプラントコラーゲンを追加注入しなければならないこ
とが一般に観察されている。従って、一定量を保持しつつ分解に対してさらに改
善された抵抗を示す持続性コラーゲンインプラントが要求されている。
さらに、現在市販されているコラーゲン製品の色は「白色ないしオフホワイト
」である。従って、浅黒い肌の色をもつ患者(コーカサス人だけでなく非コーカ
サス人も)がその皮膚に可溶性コラーゲンの注入を受ける場合、コラーゲンイン
プラントは皮膚の下の白っぽい領域として識別できることが非常に多いことが観
察されている。これは特に、注入が小皺を治療するためなど、外面的に明瞭に現
れる場合の事例である。これはもちろん、注入が普通は美容上の理由で行われて
いるこを考えると極めて望ましくないことである。
発明の目的
従って本発明の目的は、外観が半透明ないし澄明で高純度であり、免疫学的に
不活性であり、8〜18℃の範囲の温度で容易に注入することができる粘度をもち
、かつ、皮膚へ注入後消失または消滅することなく9〜24ヶ月持続するコラーゲ
ン組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、外観が半透明ないし澄明で高純度な、8〜18℃の範囲の
温度で容易に注入することができる粘度をもち、かつ、皮膚へ注入後消失または
消滅することなく9〜24ヶ月持続する改良型コラーゲン組成物の製造法を提供す
ることである。
本発明の他の目的は、上記方法で製造されたコラーゲン組成物を提供すること
である。
本発明のさらに他の目的は、外観が半透明ないし澄明で高純度な、8〜18℃の
範囲の温度で容易に注入することができる粘度をもち、かつ、皮膚へ注入後消失
または消滅することなく9〜24ヶ月持続する、改良されたコラーゲン組成物を予
め封入したシリンジを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、本発明の改良されたコラーゲン組成物を必要とす
る患者にこれを投与することを含む軟組織の増量方法を提供することである。
発明の説明
本発明の第1の局面によれば、実質的に100%のI型コラーゲンからなる注入可能
なコラーゲン組成物が提供され、該注入可能な組成物は約3〜6のpH範囲および約
20〜90mg/mlのコラーゲン濃度をもっている。
本発明の第1局面の態様によれば、実質的に100%のI型コラーゲンからなる注入
可能なコラーゲン組成物であって、約3〜6の範囲のpHおよび約20〜90mg/mlのコ
ラーゲン濃度を有し、小塊を作ることなく少なくとも30ゲージの注入針で注入可
能な粘度を有するコラーゲン組成物が提供される。
本発明の第1局面の他の態様によれば、実質的に100%のI型コラーゲンからなる
注入可能なコラーゲン組成物であって、約3〜6の範囲のpHおよび約20〜90mg/ml
のコラーゲン濃度を有し、約8〜18℃の範囲の温度で小塊を作ることなく少なく
とも30ゲージの注入針により注入可能な粘度を有するコラーゲン組成物が提供さ
れる。
本発明の第1局面のさらに他の態様によれば、実質的に100%のI型コラーゲンか
らなる注入可能なコラーゲン組成物であって、約3〜6の範囲のpHおよび約20〜90
mg/mlのコラーゲン濃度を有し、かつ外観が実質的に半透明ないし澄明であるコ
ラーゲン組成物が提供される。
典型的には、組成物のpHは約3.5〜5.5の範囲、より典型的には約4〜5の範囲、
そして最も典型的には約4.2〜4.8の範囲である。
典型的には、コラーゲン濃度は約20〜60mg/mlの範囲、より典型的には約20〜4
0mg/mlの範囲、そして最も典型的には約22〜38mg/mlの範囲である。
典型的には、注入可能な組成物は、30〜35ゲージの注入針を用いて注入可能で
あり、最も典型的には32または33ゲージの注入針が用いられる。
典型的には、組成物の粘度は、組成物が10〜15℃の範囲の温度、より典型的に
は10〜13℃の範囲の温度にある時に30〜35ゲージの注入針によって注入可能な粘
度である。
本発明の第2の局面によれば、下記の段階を含むコラーゲン組成物の製造法が
提供され:
(a)哺乳類の結合組織を機械的に処理して長さ約0.1〜5mmの結合組織フラグメ
ントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液で該フラグメントを消化する段階、
(c)溶液中にある実質的にすべてのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通
過できるように該溶液を機械的に剪断する段階、
(d)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および、
(e)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的には、機械的処理とは腱を細砕するかまたはフラグメント化する機械的
手段すべてを含む。通常、そのような機械的処理は、方形切断(dicing)、チョ
ッピング(chopping)、ホモジナイズまたはその他の物理的処理などの細かく切
断する処理型であればどんな処理であってもよく、最も典型的には細切(mincin
g)形態を取る。細片化された腱のフラグメントはより典型的には約0.5〜4mm、
最も典型的には1〜3mmのサイズ範囲である。
本発明の第2局面における一態様においては、下記の段階を含むコラーゲン組
成物の製造法が提供される:
(a)哺乳類の結合組織を機械的に処理して長さ約0.1〜5mmの結合組織フラグメ
ントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液で該フラグメントを消化する段階、
(c)該溶液を混合する段階、
(d)溶液中にある実質的にすべてのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通
過できるように該溶液を機械的に剪断する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的には該溶液の混合は、該溶液中の各コラーゲン分子のポリペプチド鎖が
少なくとも互いにほどけ始めるよう、3,500〜22,000rpmの範囲で行う。
典型的には哺乳動物の結合組織は、ブタおよびウシ由来の、最も典型的には皮
膚、軟骨、腱、および筋肉を含む組織から得ることができる。
したがって、本発明の第二局面の態様において、下記の段階を含むコラーゲン
組成物の製造法が提供される:
(a)ウシの腱を機械的に処理して、長さ約0.1〜5mmのウシ腱フラグメントを生
成する段階、
(b)少なくとも一つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含む酸性溶
液中で該フラグメントを消化する段階、
(c)該溶液を混合する段階、
(d)溶液中の実質的に全てのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通過でき
るように該溶液を機械的に剪断する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を該剪断溶液に添加して、コラ
ーゲン懸濁液を生成する段階、および
(f)約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで該コラーゲン懸濁液を透析する段階。
典型的には、ウシの腱は若いウシから得られ、最も典型的には年齢が約1年未
満の「ビーラー(vealer)」と呼ばれるウシである。本方法において効果的で最も
好ましいウシの腱は仔ウシの腱である。
典型的には、結合組織フラグメントはその長さと同程度の直径を有する。従っ
て、結合組織フラグメントは約0.1〜5mmの長さおよび直径を有することが好まし
い。
本発明の第2局面における一態様において、下記の段階を含むコラーゲン組成
物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して長さおよび直径が共に約0.1〜5
mmのウシ腱フラグメントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液で該フラグメントを消化する段階、
(c)該溶液を混合する段階、
(d)溶液中にある実質的にすべてのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通
過できるよう該溶液を機械的に剪断する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および、
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的に述べると、無菌状態とは、ウシの腱を、退色剤、その他の安定化剤ま
たは防腐剤で処理してパイロジェン不含環境を保証する状態を含む。そのような
処理は希次亜塩素酸塩溶液で腱を化学的に滅菌するのが典型的な例である。ある
いは、ウシの腱をまず物理的にフラグメント化処理し、次いで化学的に滅菌する
こともまた典型的な例である。最も典型的な例は、約数分間〜約2時間までの所
望時間、希(250ppm)次亜塩素酸ナトリウム溶液に腱を液浸することである。
滅菌後、腱またはフラグメントを洗浄して滅菌剤を除去するのが典型的である
。
本発明の第2局面における他の態様においては、下記の段階を含むコラーゲン
組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して長さ約0.1〜5mmのウシ腱フラグ
メントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において前記フラグメントを消化する段階、
(c)該溶液を混合する段階、
(d)溶液中の実質的にすべてのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通過で
きるよう該溶液を機械的に剪断する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および、
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的には、消化が起こる酸性溶液は、任意のカルボン酸溶液もしくは任意の
鉱酸溶液または両者の混合液から選択される。より典型的には酸性溶液は酢酸溶
液であり、酢酸溶液は発煙濃塩酸と混合してもしなくてもよい。消化用溶液のpH
は約1〜約6の範囲である。
酸性溶液中に存在する酵素はまた、ペプシン、トリプシンおよびその他の非コ
ラーゲナーゼ酵素から選択するのが典型的である。最も典型的には酵素はペプシ
ンである。
消化は通常8〜20℃、より一般的には8〜15℃、最も典型的には8〜12℃の温度
で起こる。
また、消化液の混合は通常消化の前または消化開始直後に行う。
消化時間は様々であるが、典型的には約4〜28時間、より典型的には5〜24時間
、最も典型的には約5〜20時間の範囲で行われる。
最も典型的な例を挙げれば、消化液は腱フラグメント各100gにつき、10%酢酸3
0リットル、発煙塩酸20mlおよびペプシン1gを含む。
本発明の第2の局面におけるその他の態様においては、下記の段階を含む、コ
ラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して長さ約0.1〜5mmのウシ腱フラグ
メントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間にわたって該フラグメン
トを消化する段階、
(c)該溶液を混合する段階、
(d)溶液中の実質的にすべてのコラーゲンが200ミクロンのフィルターを通過で
きるよう該溶液を機械的に剪断する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および、
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
消化は8〜10℃において24時間までに起こるのが典型的である。
次いで溶液を、好ましくは実験室用ブレンダーなどの機械的混合手段により混
合する。
必要があれば、酵素を不活化するため、および/または痕跡の酸および酵素を
除去するために上記溶液を処理してもよい。そのような処理は消化液の混合前か
後に行うことができ、それはコラーゲンフラグメントをほぐす作用をする。
典型的な例を説明すると、混合された溶液は約24時間以内の間約5〜10℃の温
度に冷却された後、機械的に剪断される。
典型的には、溶液の機械的剪断は濾過の形で行う。篩分けはさらに別の手段で
あり、これによって溶液中のコラーゲンを剪断することができる。
従って本発明の第2の局面におけるその他の態様では、下記の段階を含むコラ
ーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して約0.1〜5mmのウシ腱フラグメン
トを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間にわたり該フラグメント
を消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)濾過後に前記溶液が約50〜200ミクロンのサイズ範囲にある実質的にすべて
のコラーゲン分子を含むように該溶液を濾過する段階、
(e)非リン酸塩および/または非リン酸緩衝液を前記剪断された溶液に添加して
コラーゲン懸濁液を生成する段階、および、
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
混合された溶液の濾過は、50〜100ミクロンのフィルターを使用して行うが、
最も典型的なフィルターとしては50ミクロンのものが用いられる。濾過すること
によって、実質的にすべてのコラーゲン分子がサイズ約50〜200ミクロン、最も
好ましくは50ミクロンに剪断される。
典型的な場合を説明すると、コラーゲン分子を含有する濾過された溶液は次い
で、該溶液からコラーゲンを再構成(reconstitution)するのに十分な非リン酸
アルカリ金属塩類溶液で処理される。再構成されたコラーゲンはコラーゲン懸濁
液となり、溶液中のコラーゲンによってフィブリルへ再凝集される。そのような
アルカリ金属塩の典型的な例としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウムおよ
び塩化カリウムがある。
典型的な場合を説明すると、溶液中にコラーゲン分子を含有する濾液は、次い
で、塩化ナトリウム、好ましくは塩化ナトリウム溶液の形で、さらに好ましくは
5M塩化ナトリウム溶液の形で処理される。典型的には、濾液を飽和させるに十分
な塩化ナトリウムを濾液に添加して、濾液からコラーゲン分子を取り出す。さら
に典型的には、最終溶液中1M濃度の塩化ナトリウムが得られるに十分な塩化ナト
リウムを濾液に添加すると、コラーゲン分子が再構成される。
従って、本発明の第2の局面におけるその他の態様においては、下記の段階を
含むコラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して長さおよび直径が共に約0.1〜5m
mのウシ腱フラグメントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間にわたり該フラグメント
を消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)約50〜200ミクロンのフィルターサイズ範囲をもつ少なくとも1つのフィル
ターで該溶液を濾過する段階、
(e)前記濾液に塩化ナトリウムを添加してコラーゲン懸濁液を生成する段階、
および、
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的には、撹拌しながら塩化ナトリウムを濾液に添加する。
塩化ナトリウム含有溶液は通常約1〜24時間、より一般的には1〜15時間放置す
る。放置する温度の典型的な例は約8〜25℃、より典型的には約8〜15℃の範囲で
ある。
典型的な場合を説明すると、穏やかなバッチ遠心分離によって溶液中コラーゲ
ン懸濁液の形で再構成されたコラーゲン分子を回収し、上清は捨てる。また消化
以降溶液の処理が行われていない場合には特に、遠心分離を行うと、残留酵素の
除去にも効果がある。通常、緩衝液または水にコラーゲンゲルを再懸濁し再度遠
心分離することができ、上清は再び廃棄する。
従って、本発明の第2の局面におけるさらに他の態様においては、下記の段階
を含むコラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して直径および長さが共に約0.1〜5m
mのウシ腱フラグメントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間にわたり該フラグメント
を消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)約50〜200ミクロンのフィルターサイズ範囲をもつ少なくとも1つのフィル
ターで該溶液を濾過する段階、
(e)i)前記濾液に塩化ナトリウムを添加してコラーゲン懸濁液を生成する段階
、
ii)コラーゲンゲルを生成させるために該溶液を遠心分離する段階、およ
び
(f)該コラーゲン懸濁液を約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
本発明の第2の局面におけるさらに他の態様においては、下記の段階を含むコ
ラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して直径および長さが共に約0.1〜5m
mのウシ腱フラグメントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間に渡り該フラグメントを
消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)約50〜200ミクロンのフィルターサイズ範囲をもつ少なくとも1つのフィル
ターで該溶液を濾過する段階、
(e)i)前記濾液に塩化ナトリウムを添加してコラーゲン懸濁液を生成する段階
、
ii)コラーゲンゲルを生成させるために前記濾液を遠心分離する段階、
(f)前記コラーゲンゲルを回収して再懸濁し、該再懸濁コラーゲンを再び遠心
分離してコラーゲンゲルを生成する段階、および、
(g)該コラーゲンゲルを約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階。
典型的には、透析は透析バッグまたは透析管を用いて行われる。通常、コラー
ゲンは蒸留水または酢酸のような希酸に対して透析する。透析は約12〜96時間か
けて行うのが好ましく、さらに好ましくは約24〜80時間、最も好ましくは48〜72
時間かけて行う。透析の間、コラーゲンは水またはその他の透析液を典型的には
1〜6回取り替えて行い、より典型的には1〜4回水を取り替え、最も典型的には3
回水を取り替える。好ましい一態様において、コラーゲンの透析は24時間毎に3
回水を取り替えて行われる。
典型的には、透析管または透析バッグ中のコラーゲン濃度は、約24〜72時間透
析した後、約20〜90mg/mlの必要範囲にならなければならない。このコラーゲン
濃度は、さらに典型的には25〜65mg/mlの範囲であり、最も典型的には25〜40mg/
mlの範囲である。
コラーゲン溶液の粘度は、最終コラーゲン溶液が約35〜35ゲージの範囲にある
注入針をもつシリンジによって小塊を作ることなく注入可能な粘度となるよう典
型的にはモニターする。さらに、粘度は、コラーゲン組成物が温度約8〜18℃で
注入可能であるような粘度であり、より典型的には温度約10〜15℃で注入可能な
粘度である。
本発明の第2の局面におけるさらに他の態様においては、下記の段階を含む、
コラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して長さ約0.1〜5mmのウシ腱フラグ
メントを生成する段階、
(b)少なくとも1つのタンパク質分解(非コラーゲナーゼ)酵素を含有する酸性
溶液中約4〜25℃の温度範囲において約4〜28時間にわたり該フラグメント
を消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)濾過後に前記溶液が約50〜200ミクロンのサイズ範囲にある実質的にすべて
のコラーゲン分子を含むように該溶液を濾過する段階、
(e)i)前記濾液に塩化ナトリウムを添加してコラーゲン懸濁液を生成する段階
、
ii)コラーゲンゲルを生成させるために該溶液を遠心分離する段階、
(f)該コラーゲンゲルを約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度まで透析する段階、お
よび
(g)約2〜5mg/mlの麻酔剤濃度となるよう該コラーゲンに麻酔剤を添加する段階
。
典型的な場合を説明すれば、麻酔剤はリグノカイン溶液であり、コラーゲン液
の使用前に気泡を除去する目的で、穏やかな遠心分離手段などにより混合しなが
ら、麻酔剤をコラーゲンに加える。コラーゲン液の最終リグノカイン濃度はより
典型的には約3〜5mg/mlであり、最も典型的には3〜4mg/mlである。
本発明の第2の局面における好ましい一態様においては、下記の段階を含むコ
ラーゲン組成物の製造法が提供される:
(a)無菌条件下でウシの腱を機械的に処理して直径および長さが共に約0.1〜5m
mのウシ腱フラグメントを生成する段階、
(b)ペプシン含有酸性溶液中約4〜25℃の温度範囲において約24時間にわたり該
フラグメントを消化する段階、
(c)約3,500〜22,000rpmの速度で該溶液を混合する段階、
(d)濾過後に前記溶液が約50ミクロンのサイズをもつ実質的にすべてのコラー
ゲン分子を含むように50ミクロンのフィルターで該溶液を濾過する段階、
(e)i)前記濾液に塩化ナトリウムを添加してコラーゲン懸濁液を生成する段階
、
ii)コラーゲンゲルを生成させるために該溶液を遠心分離する段階、
(f)該コラーゲンゲルを回収して再懸濁し、該再懸濁コラーゲンを再び遠心分
離してコラーゲンゲルを得る段階、
(g)24時間毎に蒸留水を3回換えて前記コラーゲンゲルを約20〜90mg/mlのコラ
ーゲン濃度まで透析する段階、
(h)約2〜5mg/mlのリドカイン濃度となるよう前記コラーゲンにリドカイン塩酸
溶液を添加する段階、および、
(i)遠心分離して前記コラーゲンから気泡を除去する段階。
本発明の第3の局面によれば、本発明は上記方法のいずれかによって製造され
た注入可能なコラーゲン組成物を提供する。
本発明の第4の局面によれば、本発明は、実質的に100%I型コラーゲンからなる
注入可能なコラーゲン組成物を予め注入したシリンジを提供するものであり、前
記注入可能な組成物は、約3〜6のpH範囲、約20〜90mg/mlのコラーゲン濃度、そ
して小塊を作ることなしに、前記組成物を少なくとも30ゲージの注入針で注入可
能な粘度を有する。
本発明の第4の局面によれば、本発明の一態様は、実質的に100%I型コラーゲン
からなる注入可能なコラーゲン組成物を予め注入したシリンジを提供するもので
あり、前記注入可能な組成物は、約3〜6のpH範囲、約20〜90mg/mlのコラーゲン
濃度、そして該組成物が温度範囲約8〜18℃にあるとき、小塊を作ることなしに
、前記組成物を少なくとも30ゲージの注入針で注入可能な粘度を有する。
本発明の第4の局面におけるさらに別の態様は、実質的に100%I型コラーゲンか
らなる注入可能なコラーゲン組成物を予め注入したシリンジを提供するものであ
り、前記注入可能な組成物は、約3〜6のpH範囲、約20〜90mg/mlのコラーゲン濃
度を有し、該組成物はその外観が実質的に半透明ないし澄明である。
典型的には、組成物のpHは約3.5〜5.5の範囲にあり、さらに典型的には約4〜5
の範囲、最も典型的には約4.2〜4.8の範囲である。
典型的なコラーゲン濃度は約20〜60mg/mlの範囲、さらに典型的には約20〜40m
g/mlの範囲、最も典型的には約22〜38mg/mlの範囲である。
本発明の第5の局面によれば、本発明の組成物を必要とする患者にこの組成物
を注入することを含む、軟組織を増量する方法が提供される。
典型的な増量の例としては、軟組織における欠損の修復または修正が含まれる
。
そのような欠損の例としては、渋面しわ、鼻唇のしわ、皺およびその他の表面
鞏皮しわが典型的である。
本発明の生成物は半透明ないし澄明であり、浅黒い皮膚色素をもつ人々に注入
しても目立つことがない。本発明の生成物は、濁りがなく、免疫原性をもたず、
小塊を作ることなく少なくとも30ゲージの注入針で注入可能であり、架橋を生じ
ることがなく、かつ、高純度である。
本生成物の粘度はまた、約8〜18℃の温度範囲で注入可能であり、10〜12℃の
温度でさえも注入可能である。
本明細書の目的のために次の用語を以下の通り定義する。
「コラーゲン」とは、インビボで作られたとしてもインビトロで作られたとし
ても、あらゆるソースのコラーゲンの全種類および型を指し、架橋したコラーゲ
ンに限定されず、非架橋コラーゲンフィブリルをも含む。
「溶液中のコラーゲン」とはコラーゲンが非フィブリル型をとっている、酸性
溶液中のコラーゲンを指す。
「注入可能な」とは、実質的に小塊を作ることなく、通常の条件および指圧下
少なくとも30ゲージのシリンジで小分けできる組成をいう。
「澄明な」とは、生成物が410nmにおいて実質的に少なくとも90%の光透過率を
もつ光学的な澄明度を意味する。
「半透明な」とは、生成物が410nmにおいて実質的に少なくとも75%の光透過率
をもつ光学的な澄明度を意味する。
「小塊を作る」とは、注入物が凝集および/または塊を作ることを意味する。
これはまた、組成物を一定速度で注入不可能なことを意味する。
発明を実施するための最良の形態およびその他の形態
原材料の調製
無菌条件下、ウシの腱またはその他哺乳類の結合組織を処理する。従って、組
織は希次亜塩素酸塩溶液のようなブリーチ剤で洗浄するだけでなく滅菌蒸留水で
も洗浄する。そうすることによって、この組織および処理条件はパイロジェンフ
リーとなる。クリーンルームは滅菌ピンセットやその他の器具を用いて整え、無
菌防護服の着用も遵守される。
組織がどんな形態であるかによって各組織はそれぞれ異なる方法で処理する。
典型的には、皮膚がコラーゲン源として使用される場合、脂肪はすべて取り去っ
て除去する。腱の場合、皮膚は脂肪や望ましくない組織と一緒に除去する。
組織を機械的に処理するには、細砕、細切化または同様の物理的処理によって
細分化する手段を用いる。そうすることにより、組織は細かくフラグメント化ま
たは細切されるので、さらに効率的にコラーゲンを可溶化することができる。
可溶化
水性酸性媒体に組織フラグメントを分散し、コラーゲナーゼ以外のタンパク質
分解酵素で消化することにより、非変性条件下で組織中のコラーゲンを可溶化す
る。媒体のpHは、約1〜7未満の範囲であればどんなpHであってもよい。酸性媒体
は、塩酸のような鉱酸、酢酸やマロン酸のようなカルボン酸、またはカルボン酸
と鉱酸との混合物を用いて作ることができる。安定化用としては、酢酸と少量の
発煙濃塩酸との混合物からなる水性の酸性溶液が好ましい。また変性を避けるた
めに、可溶化が起こる温度は約4〜25℃の範囲に保つことが好ましい。
酵素は酸性pHで低温下にて活性でなければならず、通常ペプシン、パパイン、
トリプシンおよびキモトリプシンのような酵素から選択される。酵素は、組織を
加える前に酸性溶液中に存在していてもよく、あるいはまた、組織の後酸性溶液
に加えてもよい。典型的な酵素濃度は約0.1〜5重量%の範囲である。
酵素による組織の消化は、数時間から数週間の間であればいつでも起こり得る
。5〜15℃程度の低温下であれば少なくとも4時間消化を行うことが好ましい。
可溶化の間は、常法に従って最初の撹拌とこれに続く折々の撹拌を行う。
混合
溶液はブレンダ中ーで撹拌する。この撹拌はコラーゲンフラグメントをほぐし
易くするために行われる。少なくとも1部がほぐれたコラーゲンストランドでは
、濾過および再構成がさらに容易かつ効率的に行われる。混合は約3,500〜22,00
0rpmの速度で行う。混合は約15〜25℃の温度範囲、普通は20℃近辺で行うのが便
利である。
濾過
濾過は、溶液中の細繊維凝集体を細分化することにより好ましい出発物質が提
供される。最も典型的な場合を説明すると、5〜25℃程度の温度において50ミク
ロンのフィルターで、冷却した溶液を機械的に濾過する。こうすることによって
、改善された流動性と細いゲージの注入針による注入性がさらに高められたコラ
ーゲンが得られる。
再構成
再構成の目的は、コラーゲンフィブリルがコラーゲン濾液から懸濁状態で沈澱
するよう、コラーゲンフィブリルを効果的に再凝集させることにある。再構成は
、溶液中のコラーゲンがフィブリルに再凝集する濃度まで非リン酸緩衝液および
/または非リン酸塩類溶液(緩衝化されていてもいなくてもよいが、緩衝化され
て
いる場合には非リン酸緩衝液を使用する)を加えるなどの手段により、溶液のイ
オン強度および/またはpHを上げることによって行うことができる。従って、好
ましくは約2〜8のpH範囲であり、最も好ましくは約3.5〜約7.5のpH範囲である。
無菌の塩化ナトリウムは溶液状態であるのが典型的であるが、これを本発明に
従って撹拌しながら前記溶液に添加する。添加は約4〜25℃の温度範囲で行うこ
とができ、通常は20℃前後である。コラーゲンフィブリルの架橋を避けるため温
度は低く保つのが好ましい。塩類溶液は緩衝化されていてもよいがその場合には
非リン酸緩衝液であり、塩類溶液を添加することによって、溶液中でアテロペプ
チド(atelopeptide)フィブリルに再凝集したコラーゲンが生じる。
フィブリル生成は30分から24時間以上の間であればいつでも起こり得る。
遠心分離
再凝集されたコラーゲンフィブリルは遠心分離によって回収することができる
。遠心分離は、好ましくは約20,000〜40,000gの近似速度で少なくとも30分間行
う。
沈澱したコラーゲンゲルは、必要であれば水またはその他の緩衝液に再懸濁し
て、遠心分離プロセスを繰り返し行うことができる。こうすることによって、残
留酵素があればこれを除去することができ、またこれは精製段階ともなる。次い
でコラーゲンゲルを無菌透析管もしくは透析バッグに移す。
透析
滅菌蒸留水を3回取り替えて透析時間を1回につき約20〜24時間継続する、無菌
透析管もしくは透析バッグでの透析は典型的な例である。透析は、好ましくはコ
ラーゲンフィブリルの架橋が生じないような温度で行う。典型的な場合を説明す
ると、透析は約5〜25℃の温度範囲、普通は20℃前後で行われる。透析管は、好
ましくは約5,000〜10,000の範囲の分子量カットオフを有する。透析管/バッグ中
のコラーゲン濃度は所望の濃度に達するまでモニターすることができる。コラー
ゲンの純度および存在するコラーゲン型を示すゲル電気泳動(SDS-PAGE)、存在
するコラーゲンの型をさらに識別するアミノ酸分析を含め、可溶性コラーゲンを
特性化するには様々な方法を利用することができる。
注入可能な最終組成物
注入時の局所痛を和らげるため、約0.2〜0.5重量%の濃度までの局所麻酔剤、
好ましくはリグノカインをコラーゲンに加える。次いで少なくとも30ゲージの注
入針、好ましくは31、32または33ゲージの注入針をもつシリンジに上記コラーゲ
ンを装填する。
実施例
器具および材料
器具はすべて無菌であり、すべての無菌操作はクラスCクリーンルームのクラ
スA層気流キャビネットで行われる。
非自己無菌プロセスはすべて滅菌濾過される(0.2μ)。
本発明の実施に下記の器具および材料を使用した:
パイロジェン不含滅菌水
クリーンルームクラスC
層気流キャビネットクラスA(LAF)
クリーンルーム服
冷却室
メスおよび剃刀
プラスティック製チョッピングボード
BP次亜塩素酸塩溶液
細切器(次亜塩素酸塩で化学滅菌済み)
無菌換気を備えたカーボイ
ウェーリングブレンダー(Waring blender)
使い捨ての0.2μカプセルフィルター
ステンレススチールハウジング収容50μポリプロピレンフィルターカートリッジ
BP氷酢酸
BP塩化ナトリウム
USPペプシン
AR発煙塩酸
水和透析管(ガンマ線滅菌済み)
滅菌ロート
BPリグノカイン塩酸
使い捨て遠心分離びん
32ゲージ注入針をもつ滅菌シリンジ
方法
1. 凍結されたウシアキレス腱を供給する。
2. アキレス腱を解凍し両端1cmを滅菌メスで切り取る。
3. 希(250ppm)の次亜塩素酸ナトリウム溶液中アキレス腱を化学的に滅菌する
。
4. 上記腱を細かく切断(mince)し、それをLAFに集める。
5. 細切した組織重量を計量し、その100gにつき10%酢酸30リットル、発煙塩酸2
0ml、およびペプシン1gを含有する滅菌カーボイに移す。
6. 混合物を24時間消化させる。
7. 得られた混合物を次いでバッチのウェリングブレンダーで混合し、カーボイ
中で再結合させる。
8. 溶液をしばらく(24時間以内)冷却した後50μフィルターで濾過し、カーボ
イに集める。
9. 撹拌しながら5M塩化ナトリウム溶液を加えて1M塩化ナトリウム濃度にし、該
溶液を冷却する。
10.生成したコラーゲンゲルをバッチ遠心分離によって回収する。上清は捨てコ
ラーゲンを再懸濁する。
11.前記と同様にしてコラーゲンを遠心分離し上清を捨てる。
12.ゲルを長さ約30cmの滅菌透析管に移し、24時間毎に3回水を取り替えて透析
する。
13.ゲルの代表的なサンプルを分析してコラーゲン濃度を測定する。
14.透析バッグ中でコラーゲンを必要濃度以上まで濃縮する。
15.コラーゲンゲルを回収し、適当量のリグノカイン塩酸溶液を加えると約20〜
90mg/mlのコラーゲン濃度および約1〜5mg/mlのリグノカイン塩酸濃度が得られる
。
16.30〜35ゲージの注入針付きシリンジへコラーゲン生成物を充填する前に、好
ましくは穏やかな遠心分離により生成物を完全に混合して気泡を除く。
ウシコラーゲン生成物の分析
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
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(72)発明者 ビダル ベンクディクト デ キャンポス
ブラジル国 サンパウロ カンピナス デ
アルメイダ 1347 ルア アントニオ
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