【発明の詳細な説明】
B型肝炎ウィルス(HBV)感染症を処置するための薬理組成物
本発明はB型肝炎ウィルス(HBV)感染症の処置のための薬理組成物に関する。
ヒトにおけるHBV感染症は慢性の肝臓病を惹起し、それは時折り肝細胞癌腫へ
と進行する。細胞に対するHBVの結合及びウィルスゲノムの宿主細胞核に対する
ウィルスゲノムのターゲッティングの初期段階は未だ解明されていない。細胞侵
入又はウィルスレセプターの媒介因子として様々な血清タンパク質及び細胞膜糖
タンパク質が提唱されているにもかかわらず、HBVについての特異的なレセプタ
ーはまだ同定されていない。HBVエンベロープタンパク質は重合アルブミン〔P.
Pontissoら、Journal of Virology,Vol.63,No.1981-1,p.988(1981)〕又は可
溶性トランスフェリン〔M.GagliardiらEur .J.Immunol.,Vol.24,pp.1372-13
76(1994)〕と相互作用する残基を含み、その対応のレセプターを介し、おそらく
は非特異的にウィルスの細胞侵入を可能にすると報告されている。
Neurathら〔A.Neurathら、J .Exp.Med.,Vol.175,pp461-469(1992)〕によ
り報告された研究において、hIL−6はHBVエンベロープのpS1(aa 21-47)セグメ
ントに結合することが示されている。HBVレセプターについての推定の候補、例
えばアンネキシンV(エンドヘキシンII)〔K.Hertogs,らVirology,Vol.197
,pp.549-557(1993)〕;アポリポタンパク質H〔H.Mehdi,らJournal of Vir ology
,Vol.68,pp.2415-2424(1994)〕;及びアシアロ糖タンパク質レセプタ
ー〔U.Treichel,らJournal of General Virology,Vol.75,pp.3021-3029(199
4)〕が最近報告されている。
結合実験は、ウィルスエンベロープタンパク質のプレ−S1(pS1)領域が宿
主細胞の認識部位を含むことを実証した〔A.R.Neurath,らCell,Vol.46,pp.4
29-436(1986)〕;M.Petit,らVirology,Vol.180,pp.483-491(1990);M.Pe
tit,らVirology,Vol.197,pp.211-222(1992)〕。過去の研究はHepG2細胞〔R
.Bchini,らJournal of Virology,Vol.64,pp.3025-3032(1991)〕及びヒト肝
細胞〔P.Gripon,らJournal of Virology,Vol.62,pp.4136-4143(1988);T.
Ochiya,らProc .Natl.Acad.Sci.U.S.A.,Vol.86,pp.1875-1879(1989):P
.Gripon,らVirology,Vol.192,pp.534-540(1993);P.Galle,らGastroente rology
,Vol.106,pp.664-673(1994)〕がHBV感染症をin vitroで維持できるこ
とを報告しているが、どの系においても細胞レセプターは特定されておらず、そ
してこれらのモデルの実験再現性は低い。
現況の報告において、ベージュ/ヌード/X連結免疫不全(BNX)マウスを利用
することにより構築し、全身照射(12Gy)により事前コンディショニングし、且
つ重症複合免疫不全(SCID)マウス骨髄(BM)細胞により再構築したキメラマウ
スが正常T及びB細胞〔I.Lubinら、Science Vol.252,pp.427-431(1991)〕並
びに正常ヒト肝組織〔E.Galunら、Journal of Infectious Diseases,Vol.175
,pp.25-30(1995)〕を許容することが示されている。C型肝炎ウィルス(HCV)ウ
ィルス血症が、既にHCV感染症をもつヒト肝断片又はHCV陽性血清をもつ移植肝断
片とのex-vivoインキュベーションを経た平常ヒト肝組織のいづれかをBNX>SCID
キメラ動物の腎包の下に移植してから2ケ月後までに放出された(E.Galunら、
前掲)。
当初の研究はヒトインターロイキン6(hIL6)がB型肝炎ウィルス(HBV)の認
識部位を含むことを示した。ヒトIL−6 cDNAでトランスフェクションされたチャ
イニーズハムスター卵巣細胞及びヒトIL
−6 cDNAで担持する組換バキュロウィルスで感染されたスポンドプテラ・フルギ
ペルダオバリアン(Spondoptera frugiperdaovarian)昆虫細胞はHBVエンベロープ
タンパク質のプレS921−47)領域を発現し、IL−6配列の発現がHBVエンベロー
プタンパク質の結合部位を包括することを示唆する。かくして、IL−6上のHBV
のレセプター結合部位を擬態するがインタクトIL−6分子の所望されない生物学
的効果は示さない抗ウィルス化合物の開発の可能性がもち上がり、その理由はHB
Vエンベロープタンパク質のプレS1領域と肝起源細胞との相互作用がIL−6及
び抗IL−6抗体により阻害されることが認められたからである〔A.Neurathら、J .Exp.Med
.Vol.176,pp.1561-1569(1992)〕。
今まで、HBV感染症の初期段階の解明及び抗ウィルス剤の評価における第一の
障害は小動物モデルの欠如にあった。上記の技術を利用し、肝臓組織によるex-v
ivo HBV DNA陽性血清インキュベーション移植を経てHBVウィルス血症を維持する
SCID>BNX動物を開発することが可能となった。本明細書に記載の実験及び移植
のための外科技術のために動物を調製する方法は今までに報告されたものと似か
よっている〔E.Galunら、前掲〕。
例えばPCT/US94/05410に記載の通り、キメラ動物モデルを用い、ヒトインタ
ーロイキン6(hIL6)がHBV感染症のために必須であることが見い出された。hIL
6がHBV感染症のための必須の橋渡しを担うことが同定されることで、本発明はB
型肝炎ウィルス感染症の処置のための薬理組成物を提供し、それはhILPとpS1と
の間の、並びにhIL6と肝細胞及びその他のHBV許容細胞との間の少なくとも一の
結合部位に相互作用する所定量の可溶性活性因子を含んで成り、ここでこの活性
因子は少なくとも一の前記結合部位に対して競合的に結合するのに十分な量で存
在し、かくして肝細胞及びその他の
HBV許容細胞のhIL6−媒介HBV感染症を阻止する。
本発明の第一の好適な態様において、B型肝炎ウィルス(HBV)感染症の処置の
ための薬理組成物であって、肝細胞及びその他のHBV許容細胞に対するhIL6の結
合を阻害するのに十分な量の可溶性gp80及び/又はgp130レセプター部位を含ん
で成る薬理組成物を提供する。
本発明の第二の好適な態様において、HBV感染症の処置のための薬理組成物で
あって、HBVとhIL6との相互作用をブロッキングする量のpS1のアミノ酸21〜46に
対応する可溶性アミノ酸配列を含んで成る薬理組成物を提供する。
本発明の第三の好適な態様において、HBV感染症の処置のための薬理組成物で
あって、hIL6と肝細胞及びその他のHBV許容細胞との相互作用をブロッキングす
る量のペプチドLYS41−ALA56、GLY77−GLU95及びGLN153−HIS165から成る群より
選ばれる可溶性リガンドを含んで成る薬理組成物を提供する。
本発明の第四の好適な態様において、抗ウィルス因子と接合されたhIL6を含ん
で成るHBV感染症の処置のための薬理組成物を提供する。
本発明の更なる別の好適な態様において、肝細胞のB型肝炎ウィルス(HBV)感
染症の処置のための薬理組成物を提供し、これはヒトインターロイキン6(hIL6
)と肝細胞との間での少なくとも一の結合部位と競合的に相互作用する可溶性活
性因子を含んで成り、当該可溶性活性因子はhIL6と相互作用するレセプター部位
を有する糖タンパク質80(gp80)、hIL6と相互作用するレセプター部位を有する
可溶性糖タンパク質130(gp130)、hIL6誘導化ペプチドLYS41−ALA56、hIL6誘導
化ペプチドGLY77−GLU95、hIL6誘導化ペプチドGLN153−HIS165、β1及びβ2hI
L6突然変異体(mhIL6β1+β2)の
組合せ、並びにmhIL6β1+β2であってphe171がleu、そしてser177がargへと
置換されたもの、並びにそれらの任意の混合物から成る群より選ばれる。一定の
好適な態様において、かかる薬理組成物はHBVによる肝細胞の感染症を処置する
ために有効な量の当該可溶性活性因子を含む。
本発明の更なる別の好適な態様において、肝細胞のB型肝炎ウィルス(HBV)感
染症の処置のための薬理組成物であって、hIL6/hIL6RαとhIL6Rβとの複合体を
破壊する可溶性活性因子を含んで成る薬理組成物を提供する。
本発明の更なる別の好適な態様において、肝細胞のB型肝炎ウィルス(HBV)感
染症の処置のための薬理組成物であって、hIL6と相互作用するレセプター部位を
有する糖タンパク質80(gp80)、hIL6と相互作用するレセプター部位を有する可
溶性糖タンパク質130(gp130)、hIL6誘導化ペプチドLYS41−ALA56、hIL6誘導化
ペプチドGLY77−GLU95、hIL6誘導化ペプチドGLN153−HIS165、β1とβ2hIL6突
然変異体との組合せ(mhIL6β1+β2)、mhIL6β1+β2であってphe171がleu
、そしてser177がargに置換されたもの、hIL6/hIL6RαとhIL6Rβとの複合体を
破壊する可溶性活性因子、並びにこれらの任意の混合物から成る群より選ばれる
可溶性活性因子を含んで成る薬理組成物を提供する。
一般に上記の薬理組成物に関して、その可溶性活性因子は肝細胞のHBV感染症
を処置するために有効な量で含まれており、例えばこの可溶性活性因子は患者の
体重に基づき約100ng/kg〜約100mg/kgの量で存在する。好適な態様において、
かかる薬理組成物は患者の体重に基づき可溶性活性因子を約10μg/kg〜約10mg
/kgの量で含む。
本発明は更にHBVによる肝細胞の感染症の処置のための方法に関
連し、この方法はヒト患者にヒトインターロイキン6(hIL6)と肝細胞との相互
作用を阻害する可溶性活性因子を投与することを含んで成る。本方法の一定の好
適な態様において、当該活性因子は少なくとも一の結合部位と競合的に相互作用
する。かかる好適な態様において、この可溶性活性因子はhIL6に結合し、そして
hIL6と肝細胞との相互作用を競合的に阻害するレセプター部位を有する可溶性糖
タンパク質80(gp80)及び/又は可溶性糖タンパク質130(gp130)を含んで成る
ことが更に好ましい。本方法のその他の好適な態様において、当該可溶性活性因
子はペプチドLYS41−ALA56、GLY77−GLU95及びGLN153−HIS165から成る群より選
ばれ、しかもhIL6と肝細胞との相互作用を競合的にブロッキングする可溶性リガ
ンドを含んで成ることが更に好ましい。本方法の更なる別の好適な態様において
、当該可溶性活性因子はhIL6/hIL6RαとhIL6Rβとの複合体を破壊することが更
に好ましい。本方法の別の好適な態様において、当該可溶性活性因子はhIL6誘導
化ペプチドLYS41−ALA56、hIL6誘導化ペプチドGLY77−GLU95、hIL6誘導化ペプチ
ドGLN153−HIS165、β1及びβ2hIL6突然変異体の組合せ(mhIL6β1+β2)、
並びにmhIL6β1+β2であってphe171がleu、そしてser177がargに置換されて
いるもの、並びにこれらの任意の混合物から成る群より選ばれることが更に好ま
しい。この任意の好適な態様において、当該可溶性活性因子1日当り約100ng/k
g〜約100mg/kgの量で投与し、そして一定の態様においては患者の体重に基づき
約10μg/kg〜約10mg/kgで投与する。
本発明は更にHBVによる肝細胞の感染症の処置のためのヒトインターロイキン
6(hIL6)と肝細胞との相互作用を阻害する可溶性活性因子の利用に更に関連す
る。一定の好適な態様において、この活性因子は少なくとも一の結合部位と競合
的に相互作用する。かかる
好適な態様において、この可溶性活性因子はhIL6に結合し、そしてhIL6と肝細胞
との相互作用を競合的に阻害するレセプター部位を有する可溶性糖タンパク質80
(gp80)及び/又は可溶性糖タンパク質130(gp130)を含んで成ることが更に好
ましい。他方、又はこれに加えて、当該可溶性活性因子はペプチドLYS41−ALA56
、GLY77−GLU95及びGLN153−HIS165から成る群より選ばれ、しかもhIL6と肝細胞
との相互作用を競合的にブロッキングする可溶性リガンドを含んで成ることが更
に好ましい。更なる別の好適な態様において、当該可溶性活性因子はhIL6/hIL6
RαとhIL6Rβとの複合体を破壊することが更に好ましい。他に、又はこれに加え
て、別の好適な態様において、当該可溶性活性因子はhIL6誘導化ペプチドLYS41
−ALA56、hIL6誘導化ペプチドGLY77−GLU95、hIL6誘導化ペプチドGLN153−HIS16
5、β1及びβ2hIL6突然変異体の組合せ(mhIL6β1+β2)、並びにmhIL6β1
+β2であってphe171がleu、そしてser177がargに置換されているもの、並びに
これらの任意の混合物から成る群より選ばれることが更に好ましい。上記章に特
定する競合的に活性な可溶性活性因子の他に、当該可溶性活性因子はHBVを阻害
するhIL−6に接合された抗ウィルス剤(例えば、3TC、ファムシクロビル及びF
IAU類似体);IL−6Rを発現する細胞に対してのみ細胞毒性を発揮する毒素(例
えばキメラ融合毒素DAB389−IL−6);IL−6タンパク質上の部位I又は部位II
のいづれかに結合するhIL−6に特異的なモノクローナル抗体;hIL−6にしっか
りと且つ特異的に結合し、しかもサイトカイン生物活性の有効なインヒビターで
あるミニボディーポリペプチド(例えばMB02);抗−IL−6R mAb、並びにこれら
の任意の混合物を含んで成りうる。本章に記載の任意の態様において、当該可溶
性活性因子は肝細胞のHBV感染症を処置するのに有効な量で投与するのが好まし
い。この有効量は一般に
1日当り約100ng/kg〜約100mg/kgの量であり、そして所望の態様においては患
者の体重に基づき約10μg/kg〜約10mg/kgであろう。更に、本章において供
与される例示は限定を意味するものではない。数多くのその他の可溶性活性因子
が本明細書の通読により当業者に明らかとなるであろう。
本発明の目的のため、hIL−6なる語はヒトインターロイキン6であり、pS1な
る語はプレ−S1を意味し;gp80は糖タンパク質80であり(更には、hIL−6R又
はhIL−6Rαともいう);そしてgp130は糖タンパク質130であり、hIL−6Rβ(ヒ
トインターロイキン6レセプターベーター)として知られる。
本発明の目的のため、「結合」及び「相互作用」なる語は同義語である。
図面:
図1は本明細書において考慮するhIL6シグナル伝達カスケードのメカニズムを
示す;
図2はHBsAgで染色した、SCID>BNXキメラマウスにおいて包下移植して1ケ月
後のHBV DNA陽性患者由来の予備感染肝臓断片を示す;
図3はヒト組織で移植されたSCID>BNXキメラマウスにおいてhIL6がHBVウィル
ス血症を媒介することを示す;
図4はSCID>BNXキメラマウス(H及びE染色)に脾内注射して1ケ月後に発
症したHepG2−hIL−6R腫瘍の肝組織学検査を示す;
図5はhIL−6 mRNAのヌクレオチド配列を示す;
図6及び6aはhIL−6レセプターmRNAのヌクレオチド配列を示す;
図7はIL−6レセプターのヌクレオチド配列を示す;
図8及び8aはgp130のヌクレオチド配列を示す;そして
図9はhIL−6レセプターアルファーのヌクレオチド配列を示す。
宿主細胞へのHBVの侵入メカニズムの研究は、莫大な数のウィルス結合部位、
ウィルス又は標的細胞膜と相互作用する介在分子、及び宿主細胞表層分子を示し
ている。全てHBV感染症に一役担っていると考えられている。細胞に対するHBV結
合に関与する因子についての公開データーのまとめを表1に示す。 表1に示す情報はHBV宿主細胞結合に関与する既知のウィルス及び細胞膜因子
の全てではないにしてもほとんどをまとめている。しかしながら、表1に特定す
る文献の基礎研究及び引用する研究者により報告されているその他の研究におい
て供与される情報はHBV融合の任意の実験、ウィルス侵入又は任意の考えられて
いる特異的な
ウィルス性、介在性もしくは細胞性因子を通じての感染症の初期工程を、組織培
養に限って、再現良く示している。
標的細胞に対する結合に関与するウィルス構造は同定されているが、HBVにつ
いての細胞レセプターは未だ決定されておらず、そして感染症に至る生化学的現
象は本発明がなされるまで不明であり続けた。HBV結合及び内在化の初期段階に
ついての知識の欠如の主たる理由の一つはほとんどの研究グループがヒト肝細胞
又はヒト肝癌細胞系を感染させることができなかったことにある。即ち、莫大な
数の公開物が介在因子を伴って及び伴わないで様々な細胞表層結合部位を教示し
ているにもかかわらず、どの公開物も感染症に至る相互作用は教示していない。
本発明は初めて、hIL−6が肝細胞に対するhIL−6結合を通じてHBV感染症の必
須の介在因子であり、そして任意の前記成分間の相互作用のブロッキングが感染
症のブロッキングに足りることを教示する。
本発明に従うと、標的細胞に対するウィルス結合は全てのパートナーが常に融
合及び感染症にとって必須ではない多段階工程であるにちがいないことが認識さ
れる。ウィルスの向性はウィルスと細胞との相互作用に影響を及ぼす様々な因子
に依存する。HIV及びその他のウィルスに関して示されている通り、推定ウィル
スレセプターの存在では宿主細胞にウィルスが侵入できるのに不十分である。更
に、多くのウィルスに関し、細胞表層上で発現される一より多くのレセプターが
標的化細胞の生産的感染にとって必須であることが見い出された。標的細胞に対
するこのウィルス結合及び細胞膜貫通はおそらくは多段階カスケード現象であろ
う。ウィルスは細胞膜結合の第一段階のために複数のレセプター分子と相互作用
する。エンベロープウィルス、例えばHBVの群のウィルス結合後、細胞質膜の貫
通がウィルスエンベロープと細胞膜との融合を経て起こる。
図1は本発明において考慮されるhIL6シグナル伝達カスケードのメカニズムを
示す。HBVエンベロープは一本のenv遺伝子によりコードされる3種の相接(conte
rminal)タンパク質から成る。ウィルスゲノムのプレ−S領域によりコードされ
るこれらのタンパク質のドメインはhIL6に対するHBVの潜在的な結合部位を示す
(そして感染症を及ぼすことなく肝細胞に直接結合することが既に報告されてい
る)。重要なHBV結合部位はプレ−S1ドメインのアミノ酸21〜47内に位置して
いることが報告され、そしてその補助結合部位はプレ−S2ドメインのアミノ酸
配列120〜145内にある。hIL−6は特異的なhIL−6−結合タンパク質(hIL−6R)
及びシグナル伝達サブユニット(gp130)から成るレセプター複合体を通じて作用
することにより標的細胞(肝細胞を含む)に対してその作用を発揮する。IL−6R
(sIL−6R)及びgp130(sgp130)の可溶性形態は様々な体液の中で見つかっている。
hIL−6/hIL−6R複合体は2個のgp130分子のホモ二量化を誘導し、いくつかの
細胞内シグナル形成現象を招き、報告によればそれはおそらくはras−微小管会
合タンパク質(MAP)キナーゼカスケード及びJak/STATシグナル形成経路の活性化
を介する転写因子NF−IL−6活性化が含まれる。gp130に対するhIL−6/hIL−6
Rの複合体の結合は2個のhIL−6、2個のhIL−6Rα及び2個のgp130サブユニッ
トから成る六量体レセプター複合体をもたらす。この複合体(hIL6に結合してい
るHBVを含む)は肝細胞の中に内在化され、かくして感染症を惹起すると信じら
れている。
A1,A2,C1,C2,C3及びBと称する部位の任意の一つでの結合(相
互作用)の妨害は本発明に従ってHBV感染症を処置及び/又は予防するであろう
。従って、抗ウィルス剤の図1に示すカスケード相互作用を経て内在化するIL−
6複合体の任意の一つの成
分に対する接合は感染症を抑制するために利用できる。かくして、例えば表2に
挙げる下記の因子が抗HBV剤として導入されうる。図1と共に参照する以下の表
2は妨害因子及び相互作用の部位/化合物に関連する。 hIL6がHBV感染症を媒介するのに作用するとの当該発見に基づき、抗ウィルス
/抗−HBV剤を調製することが可能となる。hIL6と類似のアミノ酸配列を有する
活性成分を含んで成るHBV感染症の処置及び/又は予防のための薬理組成物がか
くして開発される。hIL6Rα(Rはレセプター)及び/又はhIL6Rβ(アミノ酸残
基:40〜60,70〜100及び135〜175)と相互作用するhIL6ドメインはhIL6相互作用
と拮抗し、HBV感染症を予防する。
本発明はHBV感染症におけるhIL6の役割を初めて認識したという事実との関連
で、hIL6とpS1との間、並びにhIL6と肝細胞及びその他のHBV許容細胞との間の少
なくとも一の結合部位と相互作用する可溶性活性因子、例えば本明細書において
列挙する活性因子の投与がhIL6媒介HBV感染症を予防できることが当業者にとっ
て自明となる。例えば、ヌクレオシド類似体がHBVを阻害する抗ウィルス剤で
あることは論文で周知となっている(例えば、3TC、ファムシクロビル及びFIAU
類似体)。更に、IL6に対する因子の接合も本願出願時に当業界において周知で
ある。
例えば、天然レセプター結合ドメインをコードする領域が除去され、そしてIL
−6をコードする遺伝子で置き換えられているトランケーションジフテリア毒素
構造遺伝子の融合により操作されたキメラ融合毒素DAB389−IL−6はIL−6Rを発
現する細胞に対してのみ細胞毒性を発揮する〔R.Masoodら、Aids Research and
Human Retroviruses,Vol.10,No.8(1994)〕。従って、DAB389−IL−6及び
類似の機能性因子が本発明において有用である。
更に、hIL−6に特異的な中和モノクローナル抗体はIL−6タンパク質上の二
つの異なる部位(部位I及びII)に結合することが知られている。部位IはIL−
6のレセプター結合部位であると報告され、一方部位IIはシグナル伝達のために
重要であると報告されている。部位IIの突然変異誘発はそれ故IL−6レセプター
拮抗因子の単離を供しうる。この突然変異タンパク質は不活性であり、なぜなら
gp80レセプターとこの突然変異タンパク質との複合体はシグナル伝達因子gp130
と結合しないからである〔J.Brakenhoffら、J.Biological Chemistry,Vol.269
,pp.86-93(1994)〕。かくして、hIL−6拮抗タンパク質は本発明において有用
であろう。
その他の研究者はhIL−6変異体を同定し、それは部位IIのみでの、又は部位I
I及びIIIの双方でのgp130との相互作用を消失させる置換を担持する潜在的なサ
イトカインレセプター超拮抗因子として挙動する(更にそれはシグナル伝達に関
与すると報告されている)〔E.Sporenoら、Blood,Vol.87,No.11;pp.4510-45
19(1996)〕。かかる因子は本発明において有用である。
その他の研究者はhIL−6にしっかりと、且つ特異的に結合し、
しかもサイトカイン生物活性の有効なインヒビターであるミニボディーポリペプ
チド(MB02)を同定している〔F.Martinら、EMBO Journal Vol.13,No.22:pp
5303-5309(1994)〕。かかる因子は本発明において有用である。
更にまた、抗−IL−6 mAb又は抗−IL−6R mAbが本発明の組成物及び方法にお
いて有用であろう。抗−hIL−6 mAb(MH166)はIL−6活性を中和できることが
示されている。抗−hIL−6R mAbはレセプターに対するIL−6の結合を阻害する
ことが示されている〔Y.Mizutaniら、Cancer Research 55,590-596(1995)〕。
hIL−6又はhIL−6Rに対するモノクローナル抗体は本発明の組成物及び方法にお
いて有用であろう。
gp130及びgp80とのhIL6結合部位の分子分析はhIL6拮抗因子を担うことのでき
るhIL6上のいくつかの構造標的を示す。hIL6拮抗因子についての好適な標的はhI
L6/hIL6RαとhIL6Rβとの複合体を破壊する。
先行文献に基づき、hIL6活性に必須のいくつかのドメインを報告する:
1.Lys41−ala56(部位2a、またの名はβ2)はシグナル伝達の活性化に関与す
る。
2.Gly77−glu95(部位2c)はhIL6Rαサブユニットgp80との相互作用に重要で
ある。
3.trp158がarg又はgln160がgluに、またthr163がproに置換されたGln153−his
165(部位β1)はhIL6の生物活性と拮抗する。
4.β1とβ2hIL6突然変異体の組合せ(mhIL6β1+β2)はXG−l hIL6応答細
胞に対して不活性であり、若干の拮抗活性を有する。
5.mhIL6(mは突然変異体)β1+β2へのphe171からleu及びser177からarg
への2つの置換の付加はhIL6Rαに対する親和力を
強め、しかもXG−1細胞に対するその活性を阻害する。
当業者に周知の技術に基づき、本発明の薬理組成物において利用するためのタ
ンパク質及びペプチドは例えば下記の技術及び工程により簡単に調製できる。
pGEX−2T(Pharmacia,Uppsala,Sweden,Catalogue No.27-4801-01)挿入部位
に適合するBamHI及びEcoRI部位を導入するために構築したプライマーを用いて
の、PCRによるHBV DNA(adw2)−adw HTDを含むプラスミドからのDNAの選定のセグ
メントの増幅。このGST融合ベクターは、融合タンパク質が細菌リゼートから容
易に精製でき、そして融合タンパク質として直接、又は部位特異的プロテアーゼ
による切断を経て検出できる系を供する。pGEX−2TへのDNAの導入後、コンピテ
ントE.コリ(E.coli)(JM109)を形質転換せしめ、そしてクローニングする(L
B+10μg/mlのアンピシリン)。タンパク質発現はIPTG(0.1mM、イソプロピル−
1−チオ−b−D−ガラクトシド)を1〜2時間加えておくことにより誘導する
。融合タンパク質は溶解(音波処理)細胞からグルタチオン−アガロースビーズ
(Pharmacia)上での回収により取り出し、そして還元グルタチオン(50mMのトリ
ス−Cl、PH8.0中で5mM)を用いてビーズから溶出させる。タンパク質の同定及
び決定はGSTに対する抗体の利用により、又は挿入タンパク質の特異的な認識に
より行ってよい。完全HBV pS1タンパク質(aa1〜aa119、センス及びアンチセン
スプライマー5’−CGGGATCCATGGGAGGTTGGTCATC−3’〔NT8+2856−2876、nt
番号の開始部位はEcoRI〕及び5’−GGAATTCCACTGCATGGC−3’〔nt 6-3210〕
のそれぞれによるPCRを適用)並びにpS1結合部位aa21〜aa46構築体をデザインし
、そしてpGEX−2T系において作った(図1の化合物B)。
gp80及びgp130のトランケーション可溶性形態はpS1の調製につ
いて記載したpGEX−2T系(化合物A2及びA1のそれぞれ)を用いて合成する。
hIL6誘導化ペプチド(Lys41−ala56、Gly77−glu95及びGln153−his165、それぞ
れ図1でC1,C3及びC2と命名)はMerrifield固相合成及び誘導方法又はそ
の他の許容されている遺伝子操作方法を含む様々な方法を適用することにより合
成される。製造される化合物は線形もしくは環状ペプチド、又は巨大タンパク質
の一部である。
図5に記載してあるのはヒトロイキン6mRNAのヌクレオチド配列であり(SEQ
ID NO 1)、L.T.May,ら「Anti-beta Interferon Antibodies Inhibit the I
ncreased Expression of HLA-B7 mRNA in Tumor Necrosis Factor-Treated Huma
n Fibroblasts:Structural Studies of the beta-2 Interferon Involved」Pro
c.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.83(23),8957-8960(1986)により公開されている
。
図6及び6aに記載されているのはヒトインターロイキン6レセプターmRNAの
ヌクレオチド配列であり(SEQ ID NO 2)、K.Yamasaki,ら「Cloning and Exp
ression of the Human Interleukin 6(BSF-2/ISN beta2)Receptor」Science
241(4867),825-828(1988)により公開されている。
図7に記載されているのはインターロイキン−6レセプターのヌクレオチド配
列であり(SEQ ID NO3)、H.Schooltink,ら「Structural and Functional Stu
dies on the Human Nepatic Interleukin-6 Receptor」Biochem.J.277:659-
664(1991)により公開されている。
図8及び8aに記載されているのはgp130インターロイキン6レセプターのヌ
クレオチド配列であり(SEQ ID NO4)、Hibi,ら「Molecular Cloning and Expr
ession of an IL-6 Signal Transduce
r,gp130」Cell 63(6),1149-1157(1990)により公開されている。
図9に記載されているのはヒトインターロイキン6レセプターアルファー(IL
−6Rアルファー)のヌクレオチド配列であり(SEQ ID NO5)、K.Yamasaki,ら
「Cloning and Expression of the Human Interleukin 6(BSF-2/ISN beta 2)R
eceptor」Science 241(4867),825-828(1988)により公開されている。
本発明に係る組成物は経口又は非経口的に、例えば静脈内、腹腔内、鼻内及び
皮下投与で投与してよい。化合物の移植も有用である。
本発明のタンパク質は良好な医療行為に従いその他の薬剤と組合せて、又は単
独で投与する。この組成物は個々の患者の臨床的状況、投与の部位及び方法、投
与のスケジュール、及び医師に公知のその他の要因を考慮して、良好な医療行為
に従って投与及び服用する。本発明における目的のための「有効量」はかくして
当業界において公知のかかる考慮により決定される。
当該組成物を非経口投与する場合、注射のためと適当な薬理製剤には無菌水性
溶液又は分散体、及び無菌注射溶液又は分散体の中に再構築するための無菌粉末
が挙げられる。担体は溶媒又は分散媒体であってよく、例えば水、エタノール、
ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレング
リコール等)、その適当な混合物、及び植物油が挙げられうる。
適正な流動性は例えばレシチンの如きコーティングの利用により、分散体の場
合には必要たる粒径の維持により、及び界面活性剤の利用により維持できうる。
非水性ビヒクル、例えば綿実油、ごま油、オリーブ油、ダイズ油、コーン油、ヒ
マワリ油、又はピーナッツ油、及びエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル
も組成物の配
合のための溶媒系として使用してよい。更に、組成物の安定性、無菌性及び等張
性を高める様々な添加剤、例えば抗微生物保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び
緩衝剤を加えてよい。微生物の作用の防止は様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば
パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等により確保されうる。
多くの場合、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含ませることが所望される
であろう。注射用薬理形態の遅延式吸収は吸収を遅らせる試薬、例えばモノステ
アリン酸アルミニウム及びゼラチンの利用により供されうる。しかしながら本発
明に従い、使用する任意のビヒクル、希釈剤、又は添加剤は当該化合物と適合す
るものであろう。
無菌注射用溶液は本発明の実施において用いる当該タンパク質を所望に従い様
々なその他の成分と共に必要量の適当な溶媒の中に含ませることにより調製でき
る。
本明細書に記載の薬理製剤は任意の適合性担体、例えば様々なビヒクル、アジ
ュバント、添加剤及び希釈剤を含む注射用製剤において患者に投与してよく、又
は本発明において利用する化合物は徐放皮下移植体の形態で又はターゲッティン
グデリバリーシステム、例えばポリマーマトリックス、リポソーム及びマイクロ
スフィアとして患者に非経口式に投与してよい。本発明における使用に適当な移
植体は移植されるとゆっくり溶け出すペレットの形態にしてよく、又は当業者に
周知の生体適合性デリバリーモジュールにしてよい。かかる周知の投与形態及び
モジュールは活性成分が数日から数週間かけて徐放されるように設計する。
本発明において有用な周知の移植体及びモジュールの例には、医薬品を制御さ
れた速度で分注する移植用マイクロ点滴ポンプを開示する米国特許第4,487,603
号;皮膚を通じて医薬品を投与するための治療器具を開示する米国特許第4,486,
194号;正確な点滴速度で
医薬品を送出するための医薬品点滴ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;
連続薬剤送出のための可変式フロー移植用点滴装置を開示する米国特許第4,439,
196号;及び浸透圧薬剤デリバリーシステムを開示する米国特許第4,475,196号が
挙げられる。これらの特許は引用することで本明細書に組入れる。数多くのその
他の移植体、デリバリーシステム、及びモジュールが当業者に周知である。
本発明の薬理製剤は患者に経口投与してよい。慣用の方法、例えば錠剤、懸濁
物、溶液、エマルション、カプセル、粉末、シロップ等での当該化合物の投与が
有用である。新規の組成物を経口又は静脈輸送し、しかも生物活性を保持する既
知の技術が好ましい。
一の態様において、この新規の組成物は静脈注射によりまず投与してよい。投
与する可溶性活性因子の量は肝細胞のHBV感染症を処置するのに必要な量とする
。この有効な量は処置すべき患者及び使用する特定の因子により変動し、そして
1日当り体重1kgにつき約100ng〜100mg、そして好ましくは1日当り10μg/kg
〜10mg/kgであろう。
本発明の教示に基づき、上記の部位の少なくとも一つに競合的に相互作用又は
結合するのに必要な様々な成分の濃度は当業者により容易に決定でき、そして特
に本発明の発明日の前に有用な関連情報、例えばCancer Research 55;pp 590-5
96(1995);EMBO Journal Vol.13,No.22:pp.5303-5309(1994);J.Exp.Me
d.Volume 183;pp.1399-1406(1996);及びBlood,Vol87,No.11;pp.4510-45
19(1996)の公開物により容易に決定される。実施例
ヒト肝臓組織を、肝臓組織の中に陽性HBV DNAをもつ107〜109粒子/mlのHBVウ
ィルス血症を患う肝臓病のための肝臓手術を受けている患者から採取した。この
肝臓組織をキメラ動物の腎包の下に
移植した。HBsAgは予備感染させたHBV DNA陽性/HBeAg陽性移植組織の中では容
易に検出されたが(図2)、肝臓断片移植をして1〜3ヶ月してもHBV配列はど
の実験においてもPCR(ウィルコスコア領域及びエンベロープ領域をまたぐプラ
イマーをHBsAgのa決定基において適用)により検出できなかった。更に、正常
ヒト肝臓断片を移植してからの200μlの高力価HBV粒子(>108/ml)の静脈内
又は腹膣内(i.p.)注射はその30日後にわたりHBV DNA配列を構築しなかった(
データーは示さない)。
ドットブロットハイブリダイゼーションによりHBV DNAが陽性であるリンパ球
をリンパ泳動(lymphopheresis)(Baxter Fenwell CS-3000 Pulse Blood Cell Sep
arators,Deerfield,Illinois,U.S.A)により、血清がHBV DNA及びHBeAgについ
て陽性であるHBV関連慢性肝臓病患者から分離した。4千万個のHBV DNA陽性リン
パ球を各マウスに、腎臓の被膜下部位での正常ヒト肝臓の移植後にi.p.注射した
。HBV配列はその後21日間にわたりこれらの動物の血清において検出されなかっ
た。
HBVについての一次感染部位を肝細胞としたにもかかわらず、リンパ球及び内
皮細胞は共にHBV転写物及びウィルス関連タンパク質を担持することが示され〔J
.Romet-Lemonne,らScience,Vol.221,pp.667-669(1983);H.Blum,ら、Proc.Na tl.Acad.Sci.U.S.A
,Vol.80,pp.6685-6688(1983);E Galun,らAmerican Jour nal of Pathology
,Vol.145,pp.1001-1007(1994)〕ウィルス侵入を助ける共通
の特異的な細胞膜レセプターメカニズムが示唆された。このメカニズムは、それ
らがトランスフェクションによるHBV被覆を許容するにもかかわらず、レセプタ
ー陰性細胞の感染を阻止するであろう〔E.Galunら、Journal of General Virolo gy
,Vol.73,pp.173-178(1992)〕。HBVを天然に宿している三種の一次細胞タイ
プ、即
ち、肝細胞、リンパ球及び内皮細胞は全てその細胞膜上で発現するヒトIL6レセ
プター(hIL6R)を介してhIL6に応答する〔A.Mackiewicz,らThe Journal of Immu nology
,Vol.149,pp.2021-2027(1992),J.Bauer,らFEBS Letter,Vol.249,pp.
27-30(1989);T.Kishimoto,らScience,Vol.258,p.593(1992)〕。更に、前述
の通り、hIL6はpS1を介してHBVに結合する。
HBV関連マーカー又は病気を全く示していない患者由来の正常ヒト肝臓の断片
を、キメラ動物の腎包の下に移植する前に高力価HBV DNA陽性血清とex-vivoイン
キュベーションした。HBV DNA配列は移植して一ヶ月にわたりこれらのどの動物
においてもPCRにより2種類のゲノム領域から検出されなかった。結果を図3A
に示す。これらの結果は、4種類のHBV DNA陽性血清を利用する50匹のマウスで
の追加の実験において再現された。
しかしながら、同じ患者に由来する肝臓組織をhIL6と共に上記のHBV DNA陽性
血清とex-vivoでインキュベーションすると、移植を施した動物の約50%の血清
において16日〜31日目にHBV DNA配列が検出された。これらの結果を図3Bに示
す。
似たような結果が様々な起源に由来する更なるHBV DNA血清及び肝臓組織を利
用する上記の条件下で行う実験において得られた。これらの実験において、HBV
DNA配列は移植して60日まで検出できた(結果は示さない)。
HBVとのex-vivoでのインキュベーション前でのhIL6に対する肝臓組織の事前曝
露は感染症を約90%の動物にまで上昇させた。31日目の血清においてHBV配列が
陽性な動物は、図3Dに示すように、移植肝細胞においてもHBsAgについて陽性
であった。上記の条件下でHBVとex-vivoインキュベーションし、且つ移植前に免
疫組織化学分析のために固定しておいた肝臓断片はHBsAgについて陰性であ
った(結果は示さず)。
HBV感染症を支持するうえでのhIL6の役割を更に調べるため、ヒト肝芽腫細胞
系、HepG2(ATCC HB8065)、HepG2由来の安定的にトランスフェクションされたh
IL6R細胞系、HepG2-PD1と呼ばれるヌルhIL6R(hILR6を発現しない細胞系)及びH
epG2-hIL6と呼ばれるhIL6産生系〔S.Rose-Johnら、The Journal of Biological Chemistry
,Vol.268,pp.22084-22091(1993)〕をhIL6を伴って又は伴わないで
HBV DNA陽性血清とインキュベーションした。インキュベーション後、様々な混
合物をキメラマウスに脾内注射し、図4に示すように肝臓の中にHCCフォーカス
を構築させた。これらの実験の結果を表3にまとめる。
本実験において、4種類の独立の細胞系を調製した。この4種類の独立の細胞
系を表3において左から右に列挙する。第一の細胞系はヒトインターロイキン6
レセプター(「hIL6R」)を発現するヒト肝芽腫細胞系、(HepG2)を含む。第二
の細胞系HepG2-PDIはhIL6Rを発現しない。第三の細胞系HepG2はhIL6を産生しな
い。HepG2-hIL6として知られる第四の細胞系はhIL6を産生しない。これらの細胞
系を2組のHBV陽性DNA血清とインキュベーションし、一組目は
hIL6を有し、表1に「+」として示し、他方の組はhIL6を有さず、そして「−」
で示す。これらの細胞系をキメラマウスに脾内注射した。その結果は、HBV-DNA
がhIL6を有するDNAをもつ4種の細胞系を有するマウスにおいて検出されること
を示した。DNA hIL6とインキュベーションしたこれらの細胞系において、HBV-DN
Aは細胞系HepG2及びHepG2 hIL6を注射したマウスにおいてのみ存在していた。He
pG2 hIL6細胞系はhIL6を発現する。
表3に示す結果はHBV感染症とHBVウィルスエンベロープのプレS1ペプチド領
域、gp80及びgp130レセプター部位、並びにヒトインターロイキン6(「hIL6」
)との間での関係を樹立し、そしてHBVがhIL6により媒介されることを樹立する
。方法:
細胞系は全て10%の胎児牛血清に富むDMEM培地の添加されたT25フラスコの中
で増殖させた。感染実験のため、細胞をトリプシン処理し、そしてPBSで2回洗
い、次いで1〜2mlのDMEMの中でhIL6(500ng/ml)の存在下又は非存在下でHBV陽
性ヒト血清(108ビリオン/ml)とインキュベーションした。37℃で2〜4hの
インキュベーション後、4×106細胞/mlを0.5ml/マウスで各グループにつき8
〜10匹のSCID>BNXマウスに脾内注射した。動物を注射の後に脾臓切除にかけた
。
マウスを3ヶ月にわたり2週間毎に採血し、そしてDNAを100μlの血清から抽
出した。DNAをPCR増幅にかけた。適用したDNA抽出及びPCR法は図3の備考に記載
されている。表3は3回の実験をまとめる。
hIL6の存在下でのHBVとのインキュベーションを経たHepG2-hIL6R細胞(これは
HepG2細胞よりも約1Log高いレセプター発現率をもつ)で移植されたマウスにお
いて、HBV-DNA配列は移植して13日
後の血清の中で検出でき、一方HBV配列はhIL6の存在なしで同じ手順を経たマウ
スの血清においては検出されなかった。似たような結果がHepG2-PDI細胞を用い
る実験において得られた。これらの細胞はその細胞膜上にhIL6Rのgp80結合タン
パク質サブユニットは発現せず〔S.Rose-Johnら前掲;M.Ehlersら、The Journal of Immunology
,Vol.153,p.1744(1994)〕、しかしながらhIL6の効率的な内
在化にとって必須であるレセプターのシグナル伝達gp130を発現する〔E.Dittric
hら、The Journal of Biological Chemistry,Vol.269,pp.10914-19020(1994
)〕。
hIL6の存在下そして更には非存在下でHepG2細胞を用いる同じデザインの実験
において、HBV配列は数多くのマウス血清において検出できる。これらの結果はP
etitら〔R.Bchiniら、前掲〕により既に報告されているものと似ており、HBV DN
A陽性患者から採取した全部で55種類の血清サンプルのうち、わずか3種の血清
がHepG2細胞in vitro HBV感染を支持する低い再現性を示した。hIL6を産生するH
epG2-hIL6細胞系はhIL6の外的補給を伴って又は伴わないウィルスとのインキュ
ベーションを経てマウス血清においてHBV配列を構造した。
肝臓フラグメントを市販のヒトポリクローナル抗HBsウィルス中和抗体(HBIG
,Hepatect(登録商標)Biotest Pharma GmbH,Dreieich,Germany)の存在下で
HBV-DNA陽性血清とインキュベーションすると、HBV-DNAは、未処置のマウスグル
ープの78%(14/18)と比べ、マウスのわずか48%(10/21)において移植後11
日目に観察された(表4)。
方法:
抗体処置のため、HBV-DNA陽性血清(0.5ml)を100IVのHBIGと25℃で2時間イン
キュベーションした。ヒト肝臓断片を次に上記と同じプロトコールに従って未処
置又はHBIG処置HBV-DNA陽性血清に加え、次いでキメラ動物の腎包の下に移植し
た。マウス血清を移植の11日後にHBV-DNA配列の存在について分析した。
図面を再び参照すると、図2はHBsAgで染色したSCID>BNXキメラマウスにおけ
る被膜下移植の1ヶ月後のHBV DNA陽性患者由来の予備感染肝臓断片を示す。
図3から、hIL6はヒト組織の移植されたSCID>BNXキメラマウスにおいてHBVウ
ィルス血症を媒介することがわかる。正常ヒト肝臓断片を被膜下腎臓移植して16
及び31日後でのマウス血清からDNA抽出したHBVプレコア/コア領域のPCR増幅産
物。ヒト肝臓断片を移植前にex-vivoで、ヒトHBV陽性血清(図3A)とインキュ
ベーションする、同時にHBV血清及びhIL6(図3B)とインキュベーションする
、又はhIL6と予備インキュベーションし、その後HBV血清とインキュベーション
した(図3C)。図3A〜3Cのそれぞれにおいて、上パネルはEtBr染色であり
、そして下パネルは同じゲルの32P HBV線形インサートハイブリダイゼーション
結果である。分子マーカーサイズ(m)は矢印で示し;各パネルの頭にある数字
はマウス同定数を示し;+は陽性血清コントロール、そして一は陰性血清コント
ロールを示す。
図3DはSCID>BNXマウスの腎包の下での移植の1ヶ月後のhI16との正常肝臓
断片のex vivo HBVインキュベーションのHBsAg染色を示す。
約108ビリオン/mlを包むHBV陽性患者由来の血清を感染のために用いた。正常
ヒト肝臓の小断片を37℃で2〜4hインキュベーションしたhIL6(500ng/ml)の
非存在下(グループA)又は存在下(グループB)での2μg/mlのポリブレン
の添加された1mlのDMEM中の400μlの血清とインキュベーションした。グルー
プCでは、HBV陽性血清及びポリブレンの添加の前に肝臓断片をhIL6で37℃で2
h処理した。インキュベーション後、4〜5mlのポリブレンDMEMを加え、そして
肝臓断片をグループA、及びCのSCID>BNXキメラマウスに腎包の下にて移植し
た(それぞれ10,19及び11匹のマウス)。4ヶ月にわたり2週間毎に、各マウス
から血液を延髄後採取した。100μlの血清サンプルを10mlのEDTA及び0.25%のS
DSの中で0.5mg/mlのプロテイナーゼKにより55℃で2h又は37℃で一夜かけて
処理し、フェノールで2回抽出し、フェノール−CHCl3で1回抽出し、そしてCHC
l3で1回抽出した。DNAを0.5MのNaCl及びDNAマイクロキャリヤーを用いてエタ
ノールで沈殿させた。DNAを30μlのトリス−EDTA,pH8.0に溶かし、そしてPCR
増幅にかけた。
50μlのPCR反応容量は反応バッファー(10mMのトリス−HCl,pH8.3,50mMのK
Cl,2.0mMのMgCl2,0.01%のゼラチン(w/v),250μMのATP,dGTP,dCTP,
dTTP及び0.5μのTaqポリメラーゼ)中10pmdeずつのオリゴヌクレオチドプライマ
ーを含む。この反応混合物に30μlの鉱物油をかぶせた。PCRサイクルは94℃で
1分、55℃で1分及び72℃で3分の35反復サイクルを含んだ。10μlの反応混合
物を2%のアガロースゲル上で分析した。プレコア/コア増幅のために用いたオ
リゴヌクレオチドは:オリゴ1,センス(nt 1778〜1806):
5’GGA−GGC−TGT−AGG−CAT−AAA−TTG−GTC−TGC−GC−3’オリゴ2,アンチセンス(nt 2446〜2408):
5’CCC-GAG-ATT-GAG-ATC-TTC-TGC-GAC-GCG-GCG-ATT-GAG-ACC-3’
とした。
配列はadwサブタイプに由来する。ntはEcoRI部位から出発する。PCR DNA産物
の予想サイズは668bpである。
このPCRサンプルを2%のアガロースゲル上で電気泳動し、そしてナイロン膜
(Biodynen)に転写し、ニックトランスレーションプローブとハイブリダイゼー
ションさせた。そのオートラジオグラフィーを増強スクリーンに−70℃で7時間
曝露した。PCRの結果を確認するため、マウス血清サンプルをエンベロープ遺伝
子領域をまたぐプライマーによるPCR増幅にもかけ、同じ結果が示された(デー
ターは示さない)。
再現性のある結果が4通りの類似の実験から得られ、そこでは各グループにつ
き10〜20匹のマウスとした。
本発明を詳細に説明してきたが、本発明は実施例等の特定の態様に限定される
ことはない。当業者は本発明の範囲から逸脱することなく様々な改良を本明細書
に開示の態様に施すことができるであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
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DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
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,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M
W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM
,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E
S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID
,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M
G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT
,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,
TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,Y
U,ZW