JP2001500143A - ウイルス性疾患の治療のための薬剤学的組成物 - Google Patents
ウイルス性疾患の治療のための薬剤学的組成物Info
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Abstract
(57)【要約】
RSウイルスにより誘導される疾患の治療のための薬剤学的組成物の生産のための有効成分としての、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]一酢酸、その個々の光学異性体もしくは薬剤学的に許容される塩の使用。
Description
【発明の詳細な説明】
ウイルス性疾患の治療のための薬剤学的組成物
本発明は、ヒトにおけるウイルス性疾患の治療の薬剤学的組成物および方法の
領域に含まれる。より具体的には本発明は、呼吸合胞体ウイルス(RSV)によ
り誘導される疾患の治療のための薬剤学的組成物に関する。
気道の再発性ウイルス感染の後には、免疫グロブリンEの増加レベルを伴う一
つもしくは複数の抗原に対する迅速な感作がもたらされることがよく知られてい
る。例えばOscar L. FRICKの、J.Allergy Clin.
Immunol.(November 1986)、pp.1013−1018
、を参照されたい。それに加え、ヒトおよび一層特別には子供において喘鳴をも
たらす一つの優勢なウイルスは呼吸合胞体ウイルスである。後者は特に2歳を下
回る年齢の子供に観察され、そのような子供では細気管支炎および肺炎をもたら
す。
T.CHONMAITREEらは、Journal of Infectio
ns Diseases、vol. 164(3)、pp.592−594(1
991)で、健常の個体からの単核白血球は呼吸器ウイルスに対する露出に応答
してヒスタミン放出因子(HRF)を産生することを開示しており、このことに
よりこのサイトカインがウイルス誘導性気管支痙攣のメカニズムにおいて、ある
役割を担いうることが示唆される。しかしながらこの著者らは更には、このHR
Fは例えばインターロイキン−1〜6、8、および9のような大半の他のサイト
カイン、
あるいは顆粒球からは識別されるように思われることも示している。
R.C.WELLIVERらは、New England Journal
of Medicine vol.305(15)、pp.841−846(1
981)では、呼吸合胞体ウイルス(RSV)−特異的免疫グロブリンEはヒス
タミンと共に、RSVに起因し、かつ喘鳴を示す様々な形態の呼吸器疾患を患う
大半の乳児において検出されることを開示している。しかしながら、RSV−I
gEの力価と放出されるヒスタミンの量との直接的相関関係は決定されなかった
。
ウイルスが下気道において炎症を誘導もしくは悪化させることについては多く
の理論的メカニズムが存在する。肺胞マクロファージに加え、好中性顆粒球の細
気管支周囲の浸潤が呼吸合胞体ウイルスでの感染後に観察される。好中球は貪食
および低分子量の炎症性媒介物の放出が可能な細胞であるばかりでなく、それら
は更には複数の前炎症性サイトカインを分泌する能力も有する。最近ではケモカ
インと称する新しいサイトカインが炎症性細胞を活性化するとして記載されてお
り、例えばPiotr KUNAのPharmacia Allergy Re
search Foundation Award Book(1995) p
p.23−31、を参照されたい。このケモカインファミリー内では、インター
ロイキン−8(IL−8)は多核白血球にとっての非常に効力
よる、Journal of Leukocyte Biology(July
1996)によると、呼吸合胞体ウイルスへの露出の間にヒト多核白血球によ
り多量に産生される。R.ARNORDらのImmunology、85、36
4−372(1995)により公開された別の
研究によると、末梢血単核球が、呼吸合胞体ウイルス(RSV)での感染の後に
、低用量ではあるものの前炎症性サイトカインIL−8を合成および分泌すると
いう証拠が提示されている。この研究の著者は、末梢血単核球からの効力の高い
ケモトキシンIL−8の放出は、RSV誘導性細気管支炎中の肺胞空間における
多核顆粒球の顕著な蓄積に起因しうると示唆している。
0−235(1993)中で、ウシのRSV−感染の治療法を論議している。抗
生物質療法に加え、抗ヒスタミン剤であるジフェニルヒドラミンでの治療の効果
が体内温度の測定により評価された。抗生物質療法に抗ヒスタミン剤を追加的に
毎日適用させることにより動物は有意に熱に関して耐性となった。しかしながら
この文献の教示はウシにのみ厳密に限定されており、一方で処方される組み合わ
せ物の各構成成分の作用の個々のメカニズムの説明を欠いている。
治療学的見地からは、呼吸合胞体ウイルス感染症を治療するための具体的な治
療法は存在しないということを指摘する必要がある。それに加え、アレルギーお
よび喘息の治療に用いられる様々な薬品(コルチコステロイド、テオフィリン、
ケトチフェン)は免疫防御メカニズムに直接関与する細胞において阻害効果を示
し、このことにより細菌およびウイルス感染のリスクを増加させることはよく知
られている。
従って、本発明の目的は、ヒトにおける呼吸合胞体ウイルスにより誘導される
疾患を治療するのに有用な薬剤学的組成物を提供することである。
本発明は、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1
−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その個々の光学異性体もしくは薬剤学的に
許容される塩が、RSV−誘導性細胞改変の阻害効果と共に、ウイルス複製にお
ける有意な阻害効果を呈する(IL−8産生)という予期せぬ認識に基づく。そ
れに加え、この薬理学的効果は患者の免疫系を低下させることなく生じる。
この認識により、ヒトにおける呼吸合胞体ウイルスにより誘導される例えば急
性細気管支炎もしくはウイルス性肺炎のような疾患を治療する際に得られる予期
せぬ保護効果の存在が示され、その効果は、そのような治療を必要とするヒトに
、有効成分として、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル
]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その個々の光学異性体もしくは薬剤
学的に許容される塩から選択される少なくとも一つの化合物の有効量を含む薬剤
学的組成物を投与することを含む方法によって奏される。
2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジ
ニル]エトキシ]−酢酸に関して本明細書で用いられる用語「薬剤学的に許容さ
れる塩」は、例えば酢酸、クエン酸、琥珀酸、アスコルビン酸、塩酸、臭化水素
酸、硫酸、およびリン酸などのような無毒性の有機酸および無機酸とのその付加
塩のみでなく、金属塩(例えばナトリウム塩もしくはカリウム塩)、第四級アン
モニウム塩を初めとするアンモニウム塩、およびアミノ酸塩をも意味する。
本明細書で用いられる際には用語「個々の光学異性体」は、その左旋性および
右旋性エナンチオマーを意味する。当該技術分野ではよく知られるように、その
ようなエナンチオマーの精製は、その化合物の選択さ
れた精製法および出発物質の光学純度に依存するかなり難しい過程である。従っ
て、本明細書で用いられる際には用語「個々の光学異性体」は、前記化合物が、
前記個々の(左旋性もしくは右旋性のいずれかの)光学異性体の少なくとも90
重量%、好ましくは少なくとも95重量%、そしてもう一方の個々の(それぞれ
右旋性もしくは左旋性)の光学異性体の多くとも10重量%、好ましくは多くと
も5重量%を含むことを意味する。各個々の光学異性体は、英国特許出願第2,
225,321号に開示されるもののような通常の方法を用いることによりその
ラセミ混合物から取得されてよい。追加的には、各個々の光学異性体は米国特許
第4,800,162号および第5,057,427号に開示されるもののよう
な、酵素的生物触媒分割によりラセミ混合物から調製することができる。
本発明の最も好ましい有効成分は、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル
)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸のラセミ体、および
二塩酸セトリジンとしてよく知られるヒスタミンH1レセプターアンタゴニスト
であるその二塩酸塩、ならびにその左旋性および右旋性エナンチオマーである。
本発明を実施するためには、本明細書のこれ以前に記載される組成物は、2−
[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]
エトキシ]−酢酸、その薬剤学的に許容される塩もしくは個々の光学異性体の有
効量を含むべきである。有効量は、通常の技術の使用により、かつ類似の状況下
で取得される結果を観察することにより容易に決定することができる。有効量を
決定する際には、限定されるわけではないが:患者の種;そのサイズ、年齢、お
よび一般的健康状
況;関与する具体的疾患;その疾患の関与の程度、もしくは重篤度;個々の患者
の応答;投与される特別な化合物;投与の様式:投与される調製物の生物学有用
上の特徴;選択される投与療法;および併存医療薬の使用を含む多数の因子が考
慮される。
本発明の組成物中の、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメ
チル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その薬剤学的に許容される塩も
しくは個々の光学異性体の有効量は一般的には、キログラムでの体重当たり一日
当たりで約0.1ミリグラム(mg/kg/日)〜約0.5mg/kg/日に変
化するであろう。約5mg〜約50mg、好ましくは一日当たり一回もしくは二
回の薬量(用量)が好ましい。
本発明に従う組成物は、つまり経口経路のような、有効量でその組成物を生物
学的に有効にするいずれかの形態もしくは様式で、ある患者に投与することがで
きる。その組成物は例えば、経口投与、鼻内投与、もしくは直腸投与することが
できる。経口投与が一般的には好ましい。製剤を調製する当業者は、治療予定の
疾患の特別な特徴、疾患の段階、および他の関連する状況の特別な特徴によって
、投与の適切な形態および様式を容易に選択することができる。
本発明の組成物は、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチ
ル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その薬剤学的に許容される塩もし
くは個々の光学異性体を、単独でか、または少なくとも一つの薬剤学的に許容さ
れる担体もしくは賦形剤との組合わせ物として含むことができ、その組み合わせ
物の比率および性質は、選択された組成物の可溶性および化学的特性、選択され
た投与経路、ならびに標準的な薬剤学的慣習により決定される。
担体材料は、固形、半固形、もしくは液体材料であってよく、これらは有効成
分のための賦形剤もしくは媒質として役立つことができる。適切な担体材料は当
該技術分野においてよく知られている。本発明の薬剤学的組成物は経口使用に採
用されてよく、かつ錠剤、カプセル剤、粉末剤、エレキシル剤、シロップ剤、水
剤、もしくは懸濁剤などの形態で患者に投与されてよい。本発明の薬剤学的組成
物は更には腸使用のために採用されてよく、かつ坐薬の形態で患者に投与されて
よい。
担体材料は、意図される投与形態に関連して適切に選択され、かつ通常の薬剤
学的慣習と矛盾しないべきである。例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態をと
る経口投与のためには治療学的に有効な薬物構成成分を、例えばラクトースもし
くはデンプンのようないずれかの経口用無毒性の薬剤学的に許容される不活性な
担体と組み合わせてよい。場合によっては、本発明の薬剤学的組成物は、微結晶
セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンのような結合剤、アルギン酸
のような崩壊剤、硫酸マグネシウムのような滑剤、コロイド状二酸化ケイ素のよ
うな滑沢剤(glidant)、スクロースもしくはサッカリンのような甘味料
、ぺパーミンントもしくはサリチル酸メチルのような着色料もしくは矯味・矯臭
剤も含む。
投与が簡便なため錠剤およびカプセル剤は最も有利な経口投与剤用量形態とな
る。所望される場合には錠剤は標準的な水性もしくは非水性の技術により、糖、
セラック、もしくは他の腸溶性コーティング剤でコーティングされてよい。好ま
しくは各錠剤もしくはカプセル剤は約5mg〜約50mgの有効成分を含む。
治療用の経口投与の目的のためには本発明の組成物は水剤もしくは懸
濁剤中に取り込まれてよい。これらの調製物は少なくとも0.1重量%の本発明
の組成物の有効成分を含むべきである。
このような水剤もしくは懸濁剤は更には一つもしくは複数の以下のアジュバン
トを含んでよく、それらは:注射用の水、生理学的食塩水、油類、ポリエチレン
グリコール、グリセリン、プロピレングリコール、もしくは他の合成溶剤のよう
な滅菌稀釈剤;ベンジルアルコールのような抗菌剤;アスコルビン酸もしくは亜
硫酸ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート
剤;酢酸塩、クエン酸塩、もしくはリン酸塩のような緩衝液、ならびに塩化ナト
リウムもしくはデキストローズのような張度を調節するための試薬も含んでよい
。この調製物はアンプル、またはガラスもしくはプラスティック製の複数用量用
バイアル内に封入することができる。
本発明は更には、本発明の組成物の詳細を記載する以下の実施例、ならびにそ
れらの使用法の引用により特定される。
本発明はその所定の好ましい実施例の引用をもって記載および説明されている
ものの、当業者は様々な変更、改良、および置換を本発明において、本発明の精
神から逸脱することなく作成できることを認識するであろう。例えば、有効成分
に関して本明細書のこれ以前に記載される好ましい範囲以外の有効適用量を、治
療を受けるヒトの応答性、症状の重篤度、いずれかの副作用が観察される場合に
はその副作用に関係する用量、および類似の考慮事項という変量の因果関係とし
て適用されてよい。従って、本発明の実施におけるそのような予想される変量も
しくは差、ならびに得られる結果は、本発明の目的および実施に従って企図され
る。
材料および方法
緩衝液
多核白血球を洗浄するための用いられる緩衝液は、137mM NaCl、8
mM Na2HPO4、3mM KCl、および3mM KH2PO4、pH7.4
、でできていた(改変されたダルベッコー(Dulbecco’s)リン酸緩衝
化食塩水)。刺激アッセイのためには、細胞をRPMI 1640培地(Gib
co BRL社、Eggenstein、Germany)中に懸濁させた。
多核白血球性(PMN)好中性顆粒球の調製
ヒト顆粒球は、フィコール(Ficoll)−メトリゾエート勾配上で分離し
、その後のデキストラン沈降および300gでの2度の洗浄により、健常ドナー
からの200mlのヘパリン化血(15U/ml)から単離した。この方法によ
り95%を上回る純度のPMNが得られた。細胞を、1×106PMNの最終密
度にまで希釈した。
細胞の生存率
細胞の生存率は刺激化細胞および非刺激化細胞において、トリパンブルー排除
法、ラクトースデヒドロゲナーゼ(Boehringer社、Mannheim
、Germany)の分析、ならびにWST−1(Boehringer社、M
annheim、Germany)を用いるミトコンドリア活性の決定により調
査した。これらのアッセイは製造業者(Boehringer社、Mannhe
im、Germany)により記載される要領で実施した。すべての実験は、全
3種類のアッセイ系における細胞タイプの生存率が80%を上回る条件下で実施
した。
細胞培養
上皮腫瘍細胞株であるHep−2上皮細胞をthe America
n Type Culture CollectionからATCC CCL
23として取得し、そして5%の非働化ウシ胎仔血清、4mM L−グルタミン
、および80μg/ml ゲンタマイシンを含むダルベッコー(Dulbecc
o’s)改変イーグル(eagle)培地中、5%の二酸化炭素、37℃で培養
した。
ウイルスの調製
ウイルスの調製は、R.ARNOLDらが、Immunology 82、1
26−133(1994)内に記載する要領で実施した。粗精製調製物について
は、ロングストレイン(Long Strain)(ATCC)であるRSウイ
ルス(RSV)をHEP−2細胞内で成長および力価測定した。RSV力価はプ
ラーク形成単位(PFC)アッセイで決定した。この調査に用いられるウイルス
プールの保存力価は5×106PFU/mlであった。この保存溶液は使用する
までは−70℃に保存した。インターロイキン−8(IL−8)レベルは、エン
ザイムイムノアッセイ(ELISA)により分析したところ、保存溶液内での検
出限界以下であった。マイコプラズマ感染の非存在は、マイコプラズマー特異的
PCRにより立証した。
刺激化実験
他に特に記載がない限りヒトPMN(1×106/ml)は、明示される時間
間隔につき、1mlの容量のRPMI−1640培地中、0.001〜最高10
までの感染多重度[m.o.i]に対応する様々な量のRSV(103〜107)
プラーク形成単位[PFU]で処理する。インキュベーションは、明示される濃
度での二塩酸セチリジンの非存在下もしくは存在下で実施した。刺激化実験の細
胞懸濁物を遠心分離により
回収し、そして分析のために用いるまでは−70℃に保存した。この細胞上清を
IL−8決定のために用い;細胞ペレットはRSVSHゲノムリボ核酸(RNA)
検出に用いた。
IL−8アッセイ
PMNを、1×106/mlの濃度でRPMI培地内に懸濁させた。この細胞
を適切な剌激の存在下、最高24時間まで培養した。培養物上清を回収し、そし
てそれらのIL−8含有量を分析した。IL−8放出は、本明細書のこれ以前に
記載される方法に従い、サンドイッチELISAを用いて決定した。簡潔に記載
すると、96ウエルプレート(Nunc Maxisorb社、Roskild
e、Denmark)の各ウエルを一晩、4℃下、5μg/mlの濃度の抗−I
L−8抗体を含む100μlの緩衝液/一ラウリル酸ポリオキシエチレンソルビ
タン(TWEEN 20という商品名で販売されている製品)でコーティングし
た。このプレートを緩衝液/Tweenで3度洗浄し、IL−8標準の適切な試
料(リコンビナントヒトIL−8;Calbiochem社、Bad Sode
n,Germany)を添加し、そしてインキュベーションを37℃で2時間進
行させた。その後にはアルカリ性ホスファターゼを連結させた抗−IL−8抗体
を添加した。定量のためのリン酸p−ニトロフェニ(15mg/ml)の添加の
後にはELISAリーダーおよび計算のためのMikrotekソフトウエアー
(SLT Labinstruments社、Crailsheim、Germ
any)を用いた。
ゲノムRSV−RNAの分析
RSV−特異的ゲノムRNAの分析は、R.ARNOLDらによりI
mmunology 82、126−133(1994)に既に記載される、逆
転写と、RSVの小疎水性蛋白質(SH)をコードするRSV−ゲノム−RNA
のポリメラーゼ連鎖反応PCR検出との連結法により実施した。感染させなかっ
たPMN(1×106/ml)とRSVで感染させたPMN(1×106/ml)
からの全RNAをTrizol(Gibco社、Niedereggenste
in、Germany)を用いて抽出した。全RNAを30μlのH2O内に溶
解した。ゲノムRSVSHRNAの発現を、センスプライマーを用いる逆転写およ
びcDNA転写物のPCR増幅の後に分析した。この逆転写段階は、10mM
Tris−HCI(pH8.3)、50mM KCl、5mM MgCl2、1
mL デゾキシヌクレオチド、RSVSHのための100pMのセンスプライマー
、10UのRNAse阻害剤、10μlのRNA試料、およびモロニーマウス(
Moloney−Murine)−白血病ウイルスからの200Uの逆転写酵素
(Gibco社、Eggenstein、Germany)を含む反応混合物(
最終容量20μl)を必要とした。逆転写反応は37℃で60分間実施した。c
DNA産物のPCR増幅のためには反応混合物を、50pMのセンスプライマー
およびアンチセンスプライマー、ならびに2UのTaqポリメラーゼ(Taq
Polymerase)(Gibco社、Eggensyein、German
y)と混合した。20、25、および30周期(1分、94℃;2分、53℃;
3分、72℃)の産物をアガロースゲル上で分析し、そして臭化エチジウム染色
により可視化した。RSVSHのための各プライマーは、センス:5’−ACCA
ATGGAAAATACATCC−3’;アンチセンス:5’−TGAATGC
TATGTGTTG−3’で
あった。増幅産物の予想サイズは、既に引用されているR.ARNOLDらによ
ると、RSVSHについては204塩基対であった。
統計分析
他に特に記載がない限り全データは異なるドナーからの細胞を用いる少なくと
も3回の個別の実験の平均値を示す。
RSV−特異的mRNA合成におけるセチリジンの効果
最近我々はRSV−特異的ゲノムRNAは最高24時間まではPMNの内側に
存在することを見いだした。我々は、ヒトPMNのRSVでの剌激後のRSV−
特異的mRNA発現におけるセチリジンの効果を分析した。従って、初回実験の
セットではヒトPMN(1×106/ml)を1−、0.5−、0.05−、0
.005−の感染多重度(m.o.i)のRSVで2時間および16時間処理し
た。これらの実験の結果が図1に示され:ヒトPMN(1×106/ml)を無
処理のままにするか(レーン1、2、および7、8)、またはRSV(感染多重
度(m.o.i)1:レーン3、9;感染多重度(m.o.i)0.5:レーン
4、10;感染多重度(m.o.i)0.05:レーン5、11;感染多重度(
m.o.i)0.005:レーン6、12)で2時間(レーン1〜6)および1
6時間(レーン7〜12)、37℃で処理した。細胞ペレットを、SH遺伝子の
RSV−特異的mRNA発現について分析した。矢印は増幅させたPCR産物を
示す。M:123塩基対ラダー(Gibco BRL社、Eggenstein
、Germany)。図1は、RSV−特異的mRNAはインキュベーション時
間を延長させると共にPMN内で増加することを示す。
次にはヒトPMN(1×106/ml)をRSVで、感染多重度(m.
o.i)1を用い、セチリジンの非存在下および存在下で処理した。これらの実
験の結果は図2に示され:ヒトPMN(1×106/ml)を無処理のままにす
るか(レーン1)、またはセチリジンの非存在下(レーン2)もしくはセチリジ
ンの存在下(レーン3〜7;100−、10−、1−、0.1−、0.01μg
/106PMN)でRSV(感染多重度(m.o.i)1)で処理した。インキ
ュベーションは2時間(図2A)および16時間(図2B)、37℃で進行させ
た。細胞ペレットを、RT−PCRによるRSV−特異的mRNAについて分析
した。矢印は適切なサイズの増幅産物を示す。M:123塩基対ラダー(Gib
co BRL社、Eggenstein、Germany)。図2は、セチリジ
ンの添加が小疎水性(SH)遺伝子のRSV−特異的mRNA発現を阻害するこ
とを示す。RSV−特異的mRNA発現の減少がセチリジンの全濃度範囲にわた
り観察された。それに加え、RSV−特異的mRNAの減少は、複製可能なウイ
ルスの減少を意味する。抗ヒスタミン剤によるそのようなウイルス複製阻害は以
前には決して観察されなかったことは特筆に値する。
ヒトPMNからのRSV誘導性IL−8放出における二塩酸セチリジンの効果
ヒトPMN(1×106/ml)をRSVで、感染多重度(m.o.i)1を
用い、二塩酸セチリジンの非存在下および存在下(100−、10−、1−、0
.1−、0.01μg/ml)で、2時間の合計インキュベーション時間の間3
7℃で処理した。対照として、細胞をセチリジン(100−、10−、1−、0
.1−、0.01−μg/ml)と共に、もしくはセチリジンなしで、RSVの
非存在下で処理した(緩衝
液対照)。細胞上清をELISAによりIL−8放出について分析した。これら
の実験の結果は図3に示され:データは8回の個別な実験からの平均および標準
偏差値を示す。図3は、二塩酸セチリジン(本明細書中ではこれ以降「セチリジ
ン」とする)はRSV誘導性IL−8放出の負の調節を行うことを示す。しかし
ながらセチリジンの効果は用量依存的であった。これに関し、>0.01μg/
ml、ただし<100μg/mlの濃度のセチリジンはRSV誘導性IL−8回
の放出の有意な減少をもたらした。同様の結果は最高24時間までのインキュベ
ーション時間の後、ならびに最高5までの感染多重度(m.o.i)のRSV濃
度で得られた。抗ヒスタミン剤とRSVによるIL−8誘導との間のこのような
干渉は以前には決して観察されなかったことは特筆に値する。
RSVにより誘導される現行のIL−8放出におけるセチリジンの効果
更に進んだ実験は、RSVにより誘導される現行のIL−8放出におけるセチ
リジンの効果を分析する目的で実施した。従って、ヒトPMN(1×106/m
l)をRSV(感染多重度(m.o.i)1)およびセチリジン(100μg、
10μg、1μg、0.1μg、0.01μg)で処理した。セチリジンは即座
に(図4A)か、またはRSV処理開始後30分目(図4B)、もしくは60分
目(図4C)、もしくは90分目(図4D)のいずれかに添加し;37℃での2
時間の全インキュベーション時間を選択した。細胞上清をELISAによりIL
−8放出について分析した。我々のデータは、セチリジンはRSVによる現行の
IL−8放出の負の調節を行うことを示す。しかしながら最も顕著な効果はセチ
リジンがRSV処理の開始時に添加された場合に観察された。
RSV誘導性IL−8放出の負の調節は>0.01μg/mlかつ<10μg/
mlのセチリジン濃度で最も顕著であった。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年11月18日(1998.11.18)
【補正内容】
請求の範囲
1. ヒトにおけるRSウイルスの複製の阻害のための薬剤学的組成物の生産
のための有効成分としての、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニ
ルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その個々の光学異性体もし
くは薬剤学的に許容される塩の使用。
2. 薬剤学的組成物が、5mg〜50mgの有効成分を含む投与剤の形態を
とる、請求の範囲1に記載の使用。
3. 治療すべき疾患が、細気管支炎およびウイルス性肺炎から選択される、
請求の範囲1に記載の使用。
4. 薬剤学的組成物が更に少なくとも一つの薬剤学的に許容される担体もし
くは賦形剤を含む、請求の範囲1に記載の使用。
5. 薬剤学的組成物が経口使用に適する形態をとる、請求の範囲1〜4の内
のいずれかに記載の使用。
6. 薬剤学的組成物が、錠剤、カプセル剤、粉末剤、エレキシル剤、シロッ
プ剤、水剤、もしくは懸濁剤の形態をとる、請求の範囲5に記載の使用。
7. 薬剤学的組成物が直腸使用に適する形態をとる、請求の範囲1〜4の内
のいずれかに記載の使用。
8. 薬剤学的組成物が坐薬の形態をとる、請求の範囲7に記載の使用。
9. 薬剤学的組成物が、少なくとも0.1重量%の有効成分を含む水剤もし
くは懸濁剤の形態をとる、請求の範囲6に記載の使用。
10. 有効成分としての2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)
フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その個々の光学異性
体もしくは薬剤学的に許容される塩を、薬剤学的に許容される担体と共に含む、
ヒトにおけるRSウイルスの複製の阻害のための薬剤学的組成物。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. ヒトにおけるRSウイルスの複製の阻害のための薬剤学的組成物の製造 のための有効成分としての、2−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニ ルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−酢酸、その個々の光学異性体もし くは薬剤学的に許容される塩の使用。 2. 薬剤学的組成物が、5mg〜50mgの有効成分を含む投与剤の形態を とる、請求の範囲1に記載の使用。 3. 治療すべき疾患が、細気管支炎およびウイルス性肺炎から選択される、 請求の範囲1に記載の使用。 4. 薬剤学的組成物が更に少なくとも一つの薬剤学的に許容される担体もし くは賦形剤を含む、請求の範囲1に記載の使用。 5. 薬剤学的組成物が経口使用に適する形態をとる、請求の範囲1〜4の内 のいずれかに記載の使用。 6. 薬剤学的組成物が、錠剤、カプセル剤、粉末剤、エレキシル剤、シロッ プ剤、水剤、もしくは懸濁剤の形態をとる、請求の範囲5に記載の使用。 7. 薬剤学的組成物が腸使用に適する形態をとる、請求の範囲1〜4の内の いずれかに記載の使用。 8. 薬剤学的組成物が坐薬の形態をとる、請求の範囲7に記載の使用。 9. 薬剤学的組成物が、少なくとも0.1重量%の有効成分を含む水剤もし くは懸濁剤の形態をとる、請求の範囲6に記載の使用。
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