JP2001359236A - 磁気バランス型自動高速限流装置 - Google Patents

磁気バランス型自動高速限流装置

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JP2001359236A
JP2001359236A JP2000178169A JP2000178169A JP2001359236A JP 2001359236 A JP2001359236 A JP 2001359236A JP 2000178169 A JP2000178169 A JP 2000178169A JP 2000178169 A JP2000178169 A JP 2000178169A JP 2001359236 A JP2001359236 A JP 2001359236A
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coil
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ptc
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Kengo Hirose
健吾 廣瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電灯線回路といった低圧回路においても簡易
に限流遮断が行え、しかも、簡素な構成で安価にかつ小
型に実現出来る自動高速限流装置を提供する。 【解決手段】 短絡電流Iが生じるとPTC11a,
bに流れる電流が増加し、まず、PTC11bがその抵
抗率を増加させ、短絡電流Iはコイル12bに転流す
る。この短絡電流Iは磁気回路に起動磁束Φを発生
させ、打消電流I C2を流す。このため、同じ磁気回路
に鎖交するコイル12bは、この磁束Φの増加を妨げ
る向きに誘起電流IC1を発生させ、誘導磁束Φを生
じさせる。PTC11aには既に流れている電流I
加えて電流ΔIC1が流れるため、急速にその温度を上
昇させて高抵抗状態になり、PTC11aを流れていた
短絡電流Iもコイル12aに転流する。よって、短絡
電流Iは、各コイル12a,12bの直流抵抗分によ
ってCP13の電流遮断能力以下の電流値に直ちに限流
されて遮断される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回路遮断手段が電
流遮断する事故電流を自動的に高速に限流する回路遮断
用自動高速限流装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の高速限流装置としては、
例えば、図1に示す直流高圧回路に用いられている限流
装置がある。この限流装置は、直流高圧回路に介挿され
た抵抗器1と、この抵抗器1に並列に接続された遮断器
2と、この遮断器2を動作させる指令装置3とから構成
されている。指令装置3には、直流高圧回路に流れる電
流の大きさを検知する電流センサ4が接続されている。
また、抵抗器1には遮断器5が直列に接続されている。
【0003】このような構成において、遮断器2の抵抗
分は抵抗器1の抵抗分よりも小さいため、回路電流は定
常時には遮断器2および遮断器5を通って流れている。
回路に極めて大きな短絡電流Iが生じる非常時には、
この事故電流の発生を電流センサ4がいち早く検知し、
指令装置3は遮断器2を遮断させる。この結果、短絡電
流Iは遮断器2に並列に設けられている抵抗器1に転
流し、抵抗器1の抵抗分によって限流する。従って、短
絡電流Iの波高値の伸びが抑制され、遮断器5の責務
は軽減される。つまり、遮断器5が遮断する短絡電流I
の大きさは小さくなり、小さなエネルギーの電流を遮
断すれば済むようになる。
【0004】抵抗器1の抵抗値は、各遮断器2,5にど
のような遮断器を使用するか、回路の短絡電流Iがど
のような大きさかによって決められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の高速限流装置は用いられる回路が高圧回路であり、
装置構成は大がかりなものになっている。従って、電灯
線回路といった低圧回路で上記のような限流遮断を行お
うと思っても、そのままの装置構成を適用することは出
来ない。
【0006】また、抵抗器1に短絡電流を転流させる遮
断器2は、指令装置3の遠隔制御によって動作させる必
要がある。従って、上記従来の高速限流装置は、回路構
成上においても部品点数を要する構成になっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するためになされたもので、回路遮断手段に直列
接続された複数個の正特性サーミスタと、これら各サー
ミスタにそれぞれ並列接続されて1つの磁気回路を形成
する複数個のコイルと、回路遮断手段の電流遮断能力以
下の電流値に事故電流を限流する抵抗分とから、磁気バ
ランス型自動高速限流装置を構成した。
【0008】サーミスタが2個から構成される場合、回
路電流は通常時には各サーミスタおよび回路遮断手段を
通って流れているが、事故電流が生じると、まず、いず
れか一方のサーミスタがより速く温度を上げて、そのサ
ーミスタは抵抗を上昇させる。このため、そのサーミス
タはさらに温度を増加させて高抵抗状態になり、事故電
流はそのサーミスタに並列に設けられた一方のコイルに
転流する。このコイルに転流した事故電流は磁気回路の
磁束を増加させるため、同じ磁気回路に鎖交する他方の
コイルは、電磁誘導の法則に従ってこの磁束の増加を妨
げる向きに誘起電流を発生させる。従って、一方のコイ
ルに事故電流が転流したことを契機として、他方のコイ
ルにこれに対抗する誘起電流が流れ、そのコイルに並列
接続されたサーミスタにも直ちに誘起電流が流れ、誘起
前の従来からの回路電流に加わってその温度を上昇させ
る。この結果、まず一方のサーミスタが温度を上げ、ト
リガ状態になると、磁気バランスコイルが発動して遅れ
たサーミスタを急速に温度上昇させ、両サーミスタにか
かる電圧のバランスを維持することになる。
【0009】これら各コイルへの事故電流の転流は、事
故電流が増加する過渡現象時における各コイルの磁束変
化に基づいて行われるため、極めて短時間に行われる。
また、並列接続されたサーミスタが高抵抗状態になった
各コイルは、その直流抵抗分に応じて電源電圧をバラン
スよく分担して負担する。よって、事故発生時に各サー
ミスタを流れていた事故電流は、バランスよく瞬時に各
コイルを流れるようになり、抵抗分によって回路遮断手
段の電流遮断能力以下の電流値に直ちに限流され、つい
には、回路遮断手段によって遮断される。
【0010】また、サーミスタが3個以上から構成され
る場合、回路電流は通常時には各サーミスタおよび回路
遮断手段を通って流れているが、事故電流が生じると、
まず、いずれかのサーミスタの温度上昇が先行する。そ
して、そのサーミスタはさらに抵抗率を増加させて高抵
抗状態になり、事故電流はそのサーミスタに並列に設け
られたコイルに転流する。このコイルに転流した事故電
流は磁気回路の磁束を増加させるため、同じ磁気回路に
鎖交する残りの各コイルは、電磁誘導の法則に従ってこ
の磁束の増加を妨げる向きにそれぞれ誘起電流を発生さ
せる。従って、いずれかのコイルに事故電流が転流した
ことを契機として、残りの各コイルにこれに対抗する誘
起電流が流れ、残りの各コイルに並列に接続された各サ
ーミスタにも直ちに誘起電流が流れ、誘起前の従来から
の回路電流に加わってそれぞれの温度を上昇させる。
【0011】次に、これら各サーミスタのうちのいずれ
かがこの温度上昇によってその抵抗率をさらに増加させ
て高抵抗状態になり、そのサーミスタを流れていた事故
電流もこれに並列に接続されたコイルに転流する。この
コイルに転流した事故電流は磁気回路の磁束を再度増加
させるため、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイルは、
電磁誘導の法則に従ってこの磁束の増加を妨げる向きに
それぞれ誘起電流を発生させる。従って、事故電流の今
回のコイルへの転流によっても、残りの各コイルにこれ
に対抗する誘起電流が流れ、未だ高抵抗状態になってい
ない各サーミスタに再度誘起電流が加わってそれぞれの
温度をさらに上昇させる。
【0012】次に、これら各サーミスタのうちのいずれ
かがこの温度上昇によってその抵抗率をさらに増加させ
て高抵抗状態になり、そのサーミスタを流れていた事故
電流もこれに並列に接続されたコイルに転流する。この
事故電流の転流により、磁気回路の磁束は再々度増加す
る。以後、同様にして次々と残りのサーミスタが高抵抗
状態になり、事故電流は次々と残りのコイルに転流して
行く。ついには、全てのサーミスタが高抵抗状態にな
り、各サーミスタにかかる電圧のバランスを維持しなが
ら、事故電流は全て各コイルに転流する。
【0013】サーミスタが高抵抗状態になって事故電流
が各コイルへ転流する際、抵抗率を増加させて高抵抗状
態になったサーミスタと、これに並列に接続されたコイ
ルとからなる磁気バランス回路は、一度サーミスタが高
抵抗状態になると高抵抗状態を維持するため、磁気回路
に磁束の変化が生じてもその閉回路に電流を流さなくな
るため、磁気バランス動作をしなくなり、磁気バランス
回路全体の磁気バランス動作から次々と外れて行く。
【0014】これら各コイルへの事故電流の転流も、事
故電流が増加する過渡現象時における各コイルの磁束変
化に基づいて行われるため、極めて短時間に行われる。
また、並列接続されたサーミスタが高抵抗状態になった
各コイルは、その直流抵抗分に応じて電源電圧をバラン
スよく分担して負担する。サーミスタが次々と高抵抗状
態になって行くと、残されたサーミスタは、高抵抗状態
になる際に負担する電源電圧が小さくなって行く。この
ため、このサーミスタに並列に接続されたコイルに流れ
る電流が小さくなり、磁気回路に起きる磁束変化が次第
に小さくなって残されたコイルに誘起される電流は小さ
くなる。従って、残されたサーミスタに流れる電流は次
第に小さくなって行くが、磁気回路に磁束変化が生じる
毎に、サーミスタにはその磁束変化に応じた誘起電流が
流れ、サーミスタはエネルギを蓄積してその温度を高め
ていく。よって、残されたサーミスタは、始めに高抵抗
状態になったサーミスタに流れた電流に比較して小さな
電流であっても、容易にその温度を高めて高抵抗状態に
なる。
【0015】従って、サーミスタが3個以上から構成さ
れる場合にも、事故発生時に各サーミスタを流れていた
事故電流は、バランスよく瞬時に各コイルを流れるよう
になり、抵抗分によって回路遮断手段の電流遮断能力以
下の電流値に直ちに限流され、ついには、回路遮断手段
によって遮断される。
【0016】このため、本構成によれば、限流装置はサ
ーミスタ、コイルおよび抵抗分だけで簡単に構成され
る。また、事故電流をコイルに転流させるサーミスタ
は、従来のように外部から信号を与えることなく、自分
自身で自動的に動作する。
【0017】また、本発明は、事故電流を限流する抵抗
分が、各コイルに直列に接続された直流抵抗の抵抗分と
複数個のコイルの合成直流抵抗分とによって形成された
り、複数個のコイルの合成直流抵抗分で形成されること
を特徴とする。
【0018】抵抗分が複数個のコイルの合成直流抵抗分
で構成される場合には、各コイルに直列に直流抵抗を別
途設ける必要が無くなり、限流装置はさらに簡単に構成
される。
【0019】また、本発明は、サーミスタに並列にバリ
スタが接続されていることを特徴とする。
【0020】事故電流が大きい場合、サーミスタがトリ
ガして高抵抗状態になっても、サーミスタに電流がなお
も供給し続けられてその電圧を上昇し続けるが、本構成
によれば、バリスタによってこの電圧上昇が抑制され、
サーミスタの破壊が防止される。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、本発明による磁気バランス
型自動高速限流装置の第1の実施形態について説明す
る。
【0022】図2は本実施形態による磁気バランス型自
動高速限流装置の構成を示す回路図である。自動高速限
流装置は、2個の正特性サーミスタ(以下、PTCと称
する)11a,11bと、これら各PTC11a,11
bにそれぞれ並列に接続された2個のコイル12a,1
2bと、これらコイル12a,12bの合成直流抵抗に
よって形成される抵抗分とから構成されている。
【0023】PTC11a,11bは導電性ポリマによ
って形成されており、温度の上昇に応じてその抵抗率が
増加する。つまり、この導電性ポリマは、ポリエチレン
その他の絶縁体のポリマにカーボンなどの導電性物質が
混入されて得られている。ポリマ内に存在する導電性物
質により、PTC11a,11b内には無数の導電性パ
ス(経路)が形成されており、常温では低い抵抗値を示
している。しかし、温度上昇に伴ってポリマが熱膨脹す
ると、導電性物質相互間の距離が増大して導電性パスが
徐々に切断され、抵抗率が増大する。この性質が利用さ
れ、PTC11a,11bは過電流保護素子として機能
する。
【0024】各PTC11a,11bは、回路遮断手段
を構成するサーキットプロテクタ(CP)13に直列に
接続されている。CP13は、回路を開閉する接点13
a、閉じているこの接点13aを引き外す直列トリップ
コイル(Series Trip Coil)11b、およびシャントト
リップコイル(Shunt Trip Coil)13cから構成されて
いる。接点13aは、直列トリップコイル13bに所定
値以上の過電流が流れると引き外される。また、各PT
C11a,11bが高抵抗状態になって端子A,B間に
所定値以上の電圧が生じ、シャントトリップコイル13
cに電流が流れることによっても、接点13aは引き外
される。
【0025】本実施形態におけるCP13は、直列トリ
ップコイル13bおよびシャントトリップコイル13c
の両者を備えた構成の場合について説明しているが、い
ずれか一方のコイルのみを備えた構成であってもよい。
ただし、2つのコイル13b,13cをCP13が備え
ていると、事故電流はより速くより確実に遮断される。
【0026】各コイル12a,12bは、鉄心14が挿
入されており、1つの磁気回路を形成する。鉄心14の
形状は、内鉄型、外鉄型、トロイダル型等のいずれであ
ってもよい。各コイル12a,12bは巻き方向が同一
であり、その極性は直列に正接続されている。
【0027】また、これらコイル12a,12bの合成
直流抵抗によって形成される抵抗分は、CP13の電流
遮断能力以下の電流値に事故電流を限流する大きさに設
定されている。つまり、コイル12a,12bの直流抵
抗をra,rb、CP13の電流遮断能力以下に事故電
流を限流するのに必要な抵抗値をRとすると、ra+r
b=Rとなるように設定される。ここで、コイル12
a,12bの直流抵抗ra,rbがこの関係式を満足さ
せることが出来ない場合は、各コイル12a,12bに
直列に外付け抵抗を設け、上記の関係式を満足させる。
また、各コイル12a,12bは、定常状態および事故
電流遮断時に電源電圧を等しく分担するため、各直流抵
抗ra,rbが等しく設定されている。従って、ra=
rb=R/2である。
【0028】このような構成において、通常時には、P
TC11a,11bの抵抗分はコイル12a,12bの
直流抵抗分に比べて十分に低いため、回路電流のほとん
どは接点13a、直列トリップコイル13bおよびPT
C11a,11bを通って流れている。例えば、限流装
置部分を一部拡大した図3(a)の回路図に示すよう
に、回路電流をIとすると、PTC11a,11bに
は電流I,I、コイル12a,12bには電流I
L1,IL2が通常流れている。ここで、電流Iと電
流Iとはほぼ等しく、また、電流IL1と電流IL2
もほぼ等しい。また、電流IL1,IL2の大きさは極
めて小さい。
【0029】しかし、短絡電流Iが生じるとPTC1
1a,11bに流れる電流が増加し、本実施形態による
自動高速限流装置は次のように動作するものと考えられ
る。つまり、まず、いずれか一方のPTC11a,11
bがその温度を急激に上昇させる。例えば、PTC11
bがその抵抗率を増加させ、数mΩの低抵抗状態からM
Ωオーダの高抵抗状態に瞬時にトリップする。よって、
短絡電流Iは、PTC11bに並列に設けられた一方
のコイル12bに瞬時に転流する。
【0030】このコイル12bに転流した短絡電流I
は、同図(b)の回路図に示すように、鉄心14を通っ
て形成される磁気回路に起動磁束Φを発生させ、コイ
ル12bおよびPTC11bから構成される閉回路に打
消電流IC2を流し、PTC11bに流れる電流を抑制
する。このため、同じ磁気回路に鎖交する他方のコイル
12aは、電磁誘導の法則に従ってこの磁束Φの増加
を妨げる向きに誘起電流IC1を発生させ、誘導磁束Φ
を生じさせる。この誘導磁束Φは起動磁束Φとほ
ぼ等しい大きさである。
【0031】従って、一方のコイル12bに短絡電流I
が転流したことを契機として、他方のコイル12aに
これに対抗する誘起電流IC1が流れ、他方のコイル1
2aに並列接続された他方のPTC11aにも直ちにこ
の電流IC1が流れ、PTC11aには(I+ΔI
C1)という大きな電流が流れ、その温度を急速に上昇
させる。PTC11aはこの温度上昇によってその抵抗
率を増加させて高抵抗状態になり、PTC11bとのバ
ランスをとることになる。各PTC11a,11bがそ
れぞれトリガした後は、各PTC11a,11bの抵抗
値は極めて大きくなるので、各コイル12a,12bの
磁気バランサとしての電磁誘導作用は無視できる状態に
なり、各PTC11a,11bの電源電圧分担バランス
は各コイル12a,12bの直流抵抗分ra,rbにの
み依存することとなる。
【0032】これら各コイル12a,12bへの短絡電
流Iの転流は、短絡電流Iが増加する過渡現象時に
おける各コイル12a,12bの磁束変化に基づいて行
われるため、極めて短時間に行われる。また、各コイル
12a,12bは、各PTC11a,11bの温度上昇
のバランスをとりながら各PTC11a,11bが同時
にトリガするように作用し、かつ、その直流抵抗分r
a,rbに応じて電源電圧をバランスよく分担するよう
に作用する。よって、事故発生時に各PTC11a,1
1bを流れていた短絡電流Iは、バランスよく瞬時に
各コイル12a,12bを流れるようになり、各コイル
12a,12bの直流抵抗分ra,rbによってCP1
3の電流遮断能力以下の電流値に直ちに限流され、つい
には、CP13によって遮断される。
【0033】図4(a)のグラフは、短絡電流Iの遮
断実験において、各PTC11a,11b間に現れた遮
断電圧波形V1,V2を示している。なお、同グラフの
横軸は時間t、縦軸は電圧Vを表している。時間軸の1
div.(ディビジョン)は2msecである。各電圧波形V
1,V2はコイル12a,12bの磁気バランス作用に
よって一致しており、1つの電圧波形として示されてい
る。また、同図(b)のグラフは、時間軸だけを同図
(a)の時間軸に対して20倍し、電圧波形V2を電圧
軸の方向にグラフの1div.だけシフトして表示したもの
である。同図(b)のグラフより、各電圧波形V1,V
2がほぼ同一の波形を呈していることが理解される。
【0034】このため、本実施形態によれば、限流装置
はPTC11a,11b、コイル12a,12bおよび
抵抗分だけで簡単に構成される。また、事故電流を限流
する抵抗分が各コイル12a,12bの合成直流抵抗分
で構成される場合には、各コイル12a,12bに直列
に直流抵抗を別途設ける必要が無くなり、限流装置はさ
らに簡単に構成される。また、事故電流をコイル12
a,12bに転流させるPTC11a,11bは、従来
のように外部から信号を与えることなく、自分自身で自
動的に動作する。
【0035】次に、本発明による磁気バランス型自動高
速限流装置の第2の実施形態について説明する。
【0036】図5は本実施形態による磁気バランス型自
動高速限流装置の構成を示す回路図である。なお、同図
において図2と同一部分には同一符号をしてその説明は
省略する。本実施形態による自動高速限流装置は、4個
のPTC21a〜21dと、これら各PTC21a〜2
1dにそれぞれ並列に接続された4個のコイル22a〜
22dと、これらコイル22a〜22dの合成直流抵抗
によって形成される抵抗分とから構成されており、さら
に各PTC21a〜21dに並列にバリスタ(以下、Z
NRと称する)24a〜24dを備えている。
【0037】PTC21a〜21dは前述した導電性ポ
リマによって形成されており、温度の上昇に応じてその
抵抗率が増加する。各コイル22a〜22dは、鉄心2
3が挿入されており、1つの磁気回路を形成する。これ
ら各コイル22a〜22dも巻き方向が同一であり、そ
の極性は直列に正接続されている。また、これらコイル
22a〜22dの合成直流抵抗によって形成される抵抗
分も、CP13の電流遮断能力以下の電流値に事故電流
を限流する大きさに設定されている。つまり、コイル2
2a〜22dの直流抵抗をra〜rd、CP13の電流
遮断能力以下に事故電流を限流するのに必要な抵抗値を
Rとすると、ra+rb+rc+rd=Rとなるように
設定される。
【0038】ここでも、コイル22a〜22dの直流抵
抗ra〜rdがこの関係式を満足させることが出来ない
場合は、各コイル22a〜22dに直列に外付け抵抗を
設け、上記の関係式を満足させる。また、各コイル22
a〜22dは、定常状態および事故電流遮断時に電源電
圧を等しく分担するため、各直流抵抗ra〜rdが等し
く設定されている。従って、ra=rb=rc=rd=
R/4であり、電源電圧を4Vとすると各コイル22
a〜22dはそれぞれ電圧Vを分担している。
【0039】このような構成において、通常時には、P
TC21a〜21dの抵抗分はコイル22a〜22dの
直流抵抗分に比べて十分に低いため、回路電流のほとん
どは接点13a、直列トリップコイル13bおよびPT
C21a〜21dを通って流れている。例えば、限流装
置部分を一部拡大した図6(a)の回路図に示すよう
に、回路電流をIとすると、PTC21a,21b,
21c,21dには電流I,I,I,I、コイ
ル22a,22b,22c,22dには電流I ,I
L2,IL3,IL4が通常流れている。ここで、電流
〜電流Iはほぼ等しく、また、電流IL1〜電流
L4もほぼ等しい。また、電流IL1〜IL4の大き
さは極めて小さい。
【0040】しかし、短絡電流Iが生じるとPTC2
1a〜21dに流れる電流が増加し、本実施形態による
自動高速限流装置は次のように動作するものと考えられ
る。つまり、まず、いずれかのPTC21a〜21dが
その温度を急激に上昇させる。例えば、PTC21bが
その抵抗率を増加させ、数mΩの低抵抗状態からMΩオ
ーダの高抵抗状態に瞬時にトリップする。よって、PT
C21bにはほぼその時点での全回路電圧に近い電圧V
が印加され、短絡電流Iは、PTC21bに並列に
設けられたコイル22bに瞬時に転流する。なお、電圧
の値はその時点その時点で変化する。
【0041】このコイル22bに転流した短絡電流I
は、同図(b)に示すように、鉄心23を通って形成さ
れる磁気回路に起動磁束Φを発生させ、コイル22bお
よびPTC21bから構成される閉回路に打消電流I
C2を流し、PTC21bに流れる電流を抑制する。こ
のため、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイル22a,
22c,22dは、電磁誘導の法則に従ってこの磁束Φ
の増加を妨げる向きにそれぞれ誘起電流IC1
C3,IC4を発生させ、それぞれ誘導磁束(1/
3)・Φを生じさせる。
【0042】この際、PTC21a,21c,21dに
は、PTC21bに発生するほぼ+Vの電圧に対抗す
るほぼ−(1/3)・Vの電圧がそれぞれ発生して、
それらPTC21a,21c,21dの早期なトリガを
促すことになる。短絡電流I が特に大きいとか、他の
PTC21a,21c,21dのトリガが何らかの原因
で遅れたりして、PTC21bの電圧がVを越えるお
それのある場合は、ZNR24bが動作してこれを抑制
するため、PTC21bは、その破壊が防止されると共
に、放熱に時間がかかって高抵抗状態になっている間だ
け暫定的に電圧Vを分担維持する。
【0043】従って、コイル22bに短絡電流Iが転
流したことを契機として、残りの各コイル22a,22
c,22dにこれに対抗する誘起電流IC1,IC3
が流れ、各コイル22a,22c,22dに並列
接続された各PTC21a,21c,21dにも直ちに
電流IC1,IC3,IC4がそれぞれ流れる。よっ
て、PTC21a,21c,21dには(I+ΔI
C1),(I+ΔIC3),(I+ΔIC4)とい
う大きな電流がそれぞれ流れ、その温度をさらに上昇さ
せる。
【0044】また、この際、抵抗率を増加させて高抵抗
状態になったPTC21bと、これに並列に接続された
コイル22bとからなる磁気バランス回路は、一度PT
C21bが高抵抗状態になると高抵抗状態を維持するた
め、鉄心23を通って形成される磁気回路に磁束の変化
が生じてもその閉回路に電流を流さなくなるため、磁気
バランス動作をしなくなり、磁気バランス回路全体の磁
気バランス動作から外れる。
【0045】次に、これら各PTC21a,21c,2
1dのうちのいずれか、例えば、PTC21cがこの温
度上昇によってその抵抗率をさらに増加させて高抵抗状
態になり、そのPTC21cを流れていた短絡電流I
もこれに並列接続されたコイル22cに転流する。この
際には、コイル22bに流れる電流の時間変化は無くな
っており、また、上述したようにZNR24bが電圧V
を分担しており、今回トリガしたPTC21cにはV
の回路電圧が印加される。
【0046】従って、コイル22cに転流した短絡電流
は、同図(c)に示すように、磁気回路に磁束Φを
発生させ、コイル22cおよびPTC21cからなる閉
回路に打消電流IC3を生じさせる。よって、PTC2
1cを流れる電流はこの打消電流IC3によって抑制さ
れる。また、磁気回路の磁束は再度増加させられるた
め、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイル22a,22
dは、電磁誘導の法則に従ってこの磁束Φの増加を妨げ
る向きにそれぞれ誘起電流IC1,IC4を発生させ
る。従って、短絡電流Iの今回のコイル22cへの転
流によっても、残りの各コイル22a,22dにこれに
対抗する電流IC1,IC4が流れて磁束(1/2)・
Φが発生し、未だ高抵抗状態になっていない各PTC2
1a,21dに再度電流(I+ΔIC1),(I
ΔIC4)が流れてそれぞれの温度をさらに上昇させ
る。
【0047】この際、PTC21a,21dには、PT
C21cに発生するほぼ+Vの電圧に対抗するほぼ−
(1/2)・Vの電圧がそれぞれ発生する。PTC2
1cに過渡的に発生する+Vの過大電圧は、これに並
列接続されたZNR24cに吸収され、この過大電圧に
よってPTC21cが破壊されるのが防止される。ま
た、短絡電流Iが大きい場合、PTC21cがトリガ
して高抵抗状態になっても、PTC21cに電流がなお
も供給し続けられてその電圧を上昇し続けるが、ZNR
24cによってこの電圧上昇が抑制され、PTC21c
はその破壊が防止される。その後、ZNR24cは回路
電圧Vを分担維持する。
【0048】次に、これら各PTC21a,21dのう
ちのいずれか、例えば、PTC21aがこの温度上昇に
よってその抵抗率をさらに増加させて高抵抗状態にな
り、PTC21aを流れていた短絡電流Iもこれに並
列に接続されたコイル22aに転流する。この際には、
コイル22cに流れる電流の時間変化は無くなってお
り、また、ZNR24b,24cがそれぞれ電圧V
分担しており、今回トリガしたPTC21aにはV
回路電圧が印加される。
【0049】従って、コイル22aに転流した短絡電流
は、同図(d)に示すように、磁気回路に磁束Φを
発生させ、コイル22aおよびPTC21aからなる閉
回路に打消電流IC1を生じさせる。よって、PTC2
1aを流れる電流はこの打消電流IC1によって抑制さ
れる。また、磁気回路の磁束は再々度増加させられるた
め、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイル22dは、電
磁誘導の法則に従ってこの磁束Φの増加を妨げる向きに
誘起電流IC4を発生させる。従って、短絡電流I
今回のコイル22aへの転流によっても、残りのコイル
22dにこれに対抗する電流IC4が流れて磁束Φが発
生し、未だ高抵抗状態になっていないPTC21dに再
々度電流(I+ΔIC4)が流れてその温度をさらに
上昇させる。この際、PTC21dには、PTC21a
に発生するほぼ+Vの電圧に対抗するほぼ−Vの電
圧が発生する。
【0050】最後に、PTC21dがこの温度上昇によ
ってその抵抗率をさらに増加させて高抵抗状態になり、
PTC21dを流れていた短絡電流Iもこれに並列に
接続されたコイル22dに転流する。この際には、コイ
ル22aに流れる電流の時間変化は無くなっており、ま
た、ZNR24a,24b,24cがそれぞれ電圧V
を分担しており、今回トリガしたPTC21dにはV
の回路電圧が印加される。
【0051】従って、コイル22dに転流した短絡電流
は、同図(e)に示すように、磁気回路に磁束Φを
発生させ、コイル22dおよびPTC21dからなる閉
回路に打消電流IC4を生じさせる。よって、PTC2
1dを流れる電流はこの打消電流IC4によって抑制さ
れる。
【0052】このように本実施形態による自動高速限流
装置では、短絡電流Iは次々と各コイル22b,22
c,22a,22dに転流して行き、ついには、全ての
PTC21b,21c,21a,21dが高抵抗状態に
なって短絡電流Iは全て各コイル22a〜22dに転
流する。また、PTC21a〜21dが高抵抗状態にな
って短絡電流Iが各コイル22a〜22dへ転流する
際、抵抗率を増加させて高抵抗状態になったPTC21
a〜21dと、これに並列に接続されたコイル22a〜
22dとからなる各磁気バランス回路は、一度PTC2
1a〜21dが高抵抗状態になると高抵抗状態を維持す
るため、磁気回路に磁束の変化が生じてもその閉回路に
電流を流さなくなるため、磁気バランス動作をしなくな
り、磁気バランス回路全体の磁気バランス動作から次々
と外れて行く。
【0053】これら各コイル22a〜22dへの短絡電
流Iの転流も、短絡電流Iが増加する過渡現象時に
おける各コイル22a〜22dの磁束変化に基づいて行
われるため、極めて短時間に行われる。また、各コイル
22a〜22dは、各PTC21a〜21dの温度上昇
のバランスをとりながら各PTC21a〜21dが同時
にトリガするように作用し、かつ、その直流抵抗分r
a,rb,rc,rdに応じて電源電圧をバランスよく
分担するように作用する。よって、事故発生時に各PT
C21a〜21dを流れていた短絡電流Iは、バラン
スよく瞬時に各コイル22a〜22dを流れるようにな
り、各コイル22a〜22dの直流抵抗分ra,rb,
rc,rdによってCP13の電流遮断能力以下の電流
値に直ちに限流され、ついには、CP13によって遮断
される。
【0054】また、PTC21a〜21dが次々と高抵
抗状態になって行くと、残されたPTC21a〜21d
に流れる電流が小さくなるため、PTC内に発生するジ
ュール損も小さくなり、残されたPTCのトリガ時間は
長くなるように考えられる。しかし、トリガによって他
のPTCに誘起される電流によるジュール損は、逆に
(1/3)・W,(1/2)・W,Wと回を重ねる毎
に、結合するバランサの減少によって増加するため、そ
のエネルギ蓄積効果と共に、トリガ時間は短くなる傾向
がある。
【0055】例えば、上述した例においては、最後にト
リガするPTC21dに並列接続されたコイル22dに
は、他のPTC21b,21c,21aがトリガする毎
に磁束(1/3)・Φ,(1/2)・Φ,Φが発生す
る。このため、PTC21dには、他のPTC21b,
21c,21aがトリガする毎に、各磁束の大きさに応
じた誘起電流IC4が流れ、PTC21dはエネルギを
蓄積してその温度を高めていく。よって、残されたPT
C21dは、始めに高抵抗状態になったPTC21bに
流れた電流に比較して小さな電流であっても、容易にそ
の温度を高めて高抵抗状態になる。
【0056】従って、4個のPTC21a〜21dから
構成される本実施形態の自動高速限流装置の場合にも、
事故発生時に各PTC21a〜21dを流れていた事故
電流は、バランスよく瞬時に各コイル22a〜22dを
流れるようになり、抵抗分ra,rb,rc,rdによ
ってCP13の電流遮断能力以下の電流値に直ちに限流
され、ついには、CP13によって遮断される。
【0057】図7(a)のグラフは、上述した本実施形
態による自動高速限流装置を用いた短絡電流Iの遮断
実験において得られた遮断電流波形を示している。な
お、同グラフの横軸は時間t、縦軸は電流Iを表してい
る。時間軸の1div.は2msecである。同図(b)のグラ
フは、PTC21aに現れた遮断電圧波形V1、PTC
21a,21bの両端間に現れた遮断電圧波形V2、P
TC21a,21b,21cの両端間に現れた遮断電圧
波形V3、およびPTC21a〜21dの両端間に現れ
た遮断電圧波形V4を示している。なお、同グラフの横
軸は時間t、縦軸は電圧Vを表している。時間軸の1di
v.は0.5msecである。
【0058】図8(a)のグラフは、図7(a)に示す
遮断電流波形を図7(b)に示す電圧波形と同じく時間
軸を0.5msec/1div.にして表した波形であり、同図
(b),(c),(d),(e)の各グラフは、理解を
容易にするために図7(b)に示す電圧波形から求め
た、各PTC21d,21c,21b,21a毎に加わ
る電圧波形を示したものである。これら各グラフの横軸
は時間t、縦軸は電圧Vを表しており、時間軸は同図
(a)に示す電流波形と同じく0.5msec/1div.であ
る。各電圧波形は図7(b)に示すグラフの電圧波形V
1〜V4から求められる。つまり、同図(b)に示すP
TC21dの電圧波形はV4−V3、同図(c)に示す
PTC21cの電圧波形はV3−V2、同図(d)に示
すPTC21bの電圧波形はV2−V1によって求めら
れ、同図(e)に示すPTC21aの電圧波形は図7
(b)に示す電圧波形V1と同じである。
【0059】これら各グラフに示されるT1,T2,T
3,T4は、それぞれPTC21b,21c,21a,
21dが高抵抗状態にトリップする時間である。これら
各時間T1〜T4は同グラフから理解されるように1ms
ec以内にあり、上述した本実施形態による高速限流装置
は極めて短時間に動作し、1msec以内に短絡電流I
限流を終えることを示している。
【0060】このような本実施形態によっても、限流装
置はPTC21a〜21d、コイル22a〜22d、Z
NR24a〜24dおよび抵抗分だけで簡単に構成され
る。また、事故電流を限流する抵抗分が各コイル22a
〜22dの合成直流抵抗分で構成される場合には、コイ
ル22a〜22dに直列に直流抵抗を別途設ける必要が
無くなり、限流装置はさらに簡単に構成される。また、
事故電流をコイル22a〜22dに転流させるPTC2
1a〜21dは、従来のように外部から信号を与えるこ
となく、自分自身で自動的に動作する。
【0061】また、本実施形態では、各PTC21a〜
21dに並列にZNR24a〜24dが接続されている
ため、事故電流が各PTC21a〜21dから各コイル
22a〜22dに転流して行く際、各PTC21a〜2
1dは、コイル22a〜22dの磁束変化によって誘起
される過大な電圧が印加されるのがZNR24a〜24
dによって防止される。また、短絡電流Iが大きい場
合、各PTC21a〜21dがトリガして高抵抗状態に
なっても、各PTC21a〜21dに電流がなおも供給
し続けられてその電圧を上昇し続けるが、ZNR24a
〜24dによってこの電圧上昇が抑制され、各PTC2
1a〜21dの破壊が防止される。
【0062】また、上述した本実施形態による自動高速
限流装置の動作の説明では、まず、1個のPTCがトリ
ガした場合について説明したが、2個のPTCがほぼ同
時にトリガする場合も考えられる。例えば、短絡電流I
が生じてPTC21a〜21dに流れる電流が増加
し、まず、2個のPTC21b,21cがその温度を急
激に上昇させ、これらがほぼ同時に高抵抗状態にトリッ
プしたとする。この場合には、PTC21b,21cに
それぞれ回路電圧Vが印加され、短絡電流Iは、P
TC21b,21cに並列に設けられた各コイル22
b,22cに瞬時に転流する。
【0063】コイル22b,22cに転流した短絡電流
は、図9(a)に示すように、鉄心23を通って形
成される磁気回路にそれぞれ起動磁束Φを発生させ、コ
イル22bおよびPTC21bから構成される閉回路に
打消電流IC2、コイル22cおよびPTC21cから
構成される閉回路に打消電流IC3を流し、PTC21
bおよびPTC21cに流れる電流を抑制する。このた
め、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイル22a,22
dは、電磁誘導の法則に従って各磁束Φの増加を妨げる
向きにそれぞれ誘起電流IC1,IC4を発生させ、そ
れぞれ誘導磁束Φを生じさせる。
【0064】この際、PTC21a,21dには、PT
C21b,21cにそれぞれ発生するほぼ+Vの電圧
に対抗するほぼ−Vの電圧がそれぞれ発生する。PT
C21b,21cに過渡的に発生する+Vの過大電圧
は、これに並列接続されたZNR24b,24cに吸収
され、この過大電圧によってPTC21b,21cが破
壊されるのが防止される。また、短絡電流Iが大きい
場合、PTC21b,21cがトリガして高抵抗状態に
なっても、PTC21b,21cに電流がなおも供給し
続けられてその電圧を上昇し続けるが、ZNR24b,
24cによってこの電圧上昇が抑制され、PTC21
b,21cはその破壊が防止される。その後、ZNR2
4b,24cはそれぞれ回路電圧Vを分担維持する。
【0065】従って、コイル22b,22cに短絡電流
が転流したことを契機として、残りの各コイル22
a,22dにこれに対抗する誘起電流IC1,IC4
流れ、各コイル22a,22dに並列接続された各PT
C21a,21dにも直ちに電流IC1,IC4がそれ
ぞれ流れる。よって、PTC21a,21dには(I
+ΔIC1),(I+ΔIC4)という大きな電流が
流れ、その温度を急速に上昇させる。
【0066】次に、これら各PTC21a,21dのう
ちのいずれか、例えば、PTC21aがこの温度上昇に
よってその抵抗率をさらに増加させて高抵抗状態にな
り、そのPTC21aを流れていた短絡電流Iもこれ
に並列接続されたコイル22aに転流する。この際に
は、コイル22b,22cに流れる電流の時間変化は無
くなっており、また、上述したようにZNR24b,2
4cがそれぞれ電圧Vを分担しており、今回トリガし
たPTC21aにはVの回路電圧が印加される。
【0067】従って、コイル22aに転流した短絡電流
は、同図(b)に示すように、磁気回路に磁束Φを
発生させ、コイル22aおよびPTC21aからなる閉
回路に打消電流IC1を生じさせる。よって、PTC2
1aを流れる電流はこの打消電流IC1によって抑制さ
れる。また、磁気回路の磁束は再度増加させられるた
め、同じ磁気回路に鎖交する残りのコイル22dは、電
磁誘導の法則に従ってこの磁束Φの増加を妨げる向きに
誘起電流IC4を発生させる。従って、短絡電流I
今回のコイル22aへの転流によっても、残りのコイル
22dにこれに対抗する電流IC4が流れて磁束Φが発
生し、未だ高抵抗状態になっていないPTC21dに再
度電流(I+ΔIC4)が流れてその温度をさらに上
昇させる。
【0068】この際、PTC21dには、PTC21a
に発生するほぼ+Vの電圧に対抗するほぼ−Vの電
圧が発生する。PTC21aに過渡的に発生する+V
の過大電圧は、これに並列接続されたZNR24aに吸
収され、この過大電圧によってPTC21aが破壊され
るのが防止される。また、短絡電流Iが大きい場合、
PTC21aがトリガして高抵抗状態になっても、PT
Caに電流がなおも供給し続けられてその電圧を上昇し
続けるが、ZNR24aによってこの電圧上昇が抑制さ
れ、PTC21aはその破壊が防止される。その後、Z
NR24aは回路電圧Vを分担維持する。
【0069】最後に、PTC21dがこの温度上昇によ
ってその抵抗率をさらに増加させて高抵抗状態になり、
PTC21dを流れていた短絡電流Iもこれに並列に
接続されたコイル22dに転流する。この際には、コイ
ル22aに流れる電流の時間変化は無くなっており、ま
た、ZNR24a,24b,24cがそれぞれ電圧V
を分担しており、今回トリガしたPTC21dには回路
電圧Vが印加される。
【0070】従って、コイル22dに転流した短絡電流
は、同図(c)に示すように、磁気回路に磁束Φを
発生させ、コイル22dおよびPTC21dからなる閉
回路に打消電流IC4を生じさせる。よって、PTC2
1dを流れる電流はこの打消電流IC1によって抑制さ
れる。
【0071】このように最初に2個のPTC21b,2
1cがほぼ同時にトリガした場合においても、短絡電流
は次々と各コイル22b,22c,22a,22d
に転流して行き、ついには、全てのPTC21b,21
c,21a,21dが高抵抗状態になって短絡電流I
は全て各コイル22a〜22dに転流する。従って、こ
の場合においても上述した作用・効果が奏される。
【0072】図10に示す自動高速限流装置は、図5に
示す上述した第2の実施形態による自動高速限流装置に
おけるコイル22a〜22dが抵抗31a〜31dによ
って構成されるものであり、本出願人が別途の特許出願
(特開平11−273534号)で提案している自動高
速限流装置である。なお、図10において図5と同一部
分は同一符号を付してその説明は省略する。この自動高
速限流装置では、PTC21a〜21dが高抵抗状態に
トリップすると、短絡電流Iは、これに並列接続され
た抵抗31a〜31dに転流し、各抵抗31a〜31d
の抵抗分によって限流される。
【0073】図11は図10に示す自動高速限流装置を
用いた短絡電流Iの遮断実験において得られた遮断電
流波形を示している。なお、同グラフの横軸は時間t、
縦軸は電流Iを表している。時間軸の1div.は0.5ms
ecである。同図(b)のグラフは、PTC21aに現れ
た遮断電圧波形V1、PTC21a,21bの両端間に
現れた遮断電圧波形V2、PTC21a,21b,21
cの両端間に現れた遮断電圧波形V3、およびPTC2
1a〜21dの両端間に現れた遮断電圧波形V4を示し
ている。なお、同グラフの横軸は時間t、縦軸は電圧V
を表している。時間軸の1div.は0.5msecである。
【0074】図12(a)のグラフは、図11(a)に
示す遮断電流波形と同じであり、時間軸は0.5msec/
1div.である。同図(b),(c),(d),(e)の
各グラフは、理解を容易にするために図11(b)に示
す電圧波形から求めた、各PTC21d,21c,21
b,21a毎に加わる電圧波形を示したものである。こ
れら各グラフの横軸は時間t、縦軸は電圧Vを表してお
り、時間軸は同図(a)に示す電流波形と同じく0.5
msec/1div.である。これら各電圧波形も図11(b)
に示すグラフの電圧波形V1〜V4から求められる。つ
まり、同図(b)に示すPTC21dの電圧波形はV4
−V3、同図(c)に示すPTC21cの電圧波形はV
3−V2、同図(d)に示すPTC21bの電圧波形は
V2−V1によって求められ、同図(e)に示すPTC
21aの電圧波形は図11(b)に示す電圧波形V1と
同じである。
【0075】これら各グラフに示されるT1,T2,T
3,T4は、それぞれPTC21a,21b,21c,
21dが高抵抗状態にトリップする時間である。同グラ
フから理解されるように、3個のPTC21a,21
b,21dがトリップする時間T1,T2,T4は1ms
ec以内にあるが、PTC21cが最後にトリップする時
間T3は同図(c)に示すように非常に遅れている。こ
の原因は、PTC21cを時間T3でトリガさせるため
の電流IC3(同図(a)参照)は、最初にトリップし
た3個のPTC21a,21b,21dによって限流さ
せられたためと考えられる。
【0076】つまり、図10に示す自動高速限流装置で
は、各PTC21a〜22dの動作タイミングのバラン
スが良好にとれず、全PTC21a〜21dがトリップ
してCP13が遮断することが出来る電流値にまで短絡
電流Iを限流するのに、約3.5msecの時間がかかっ
ている。これに対して前述した第2の実施形態による自
動高速限流装置では、図8を用いて説明したように、1
msec以内で限流が行われており、さらに、限流値は図1
0に示す自動高速限流装置の場合よりも小さく抑えられ
ている。
【0077】このように事故電流を抵抗に転流させて限
流を行う自動高速限流装置では、PTCのトリガが進む
に連れて残ったPTCをトリガさせるためのエネルギ源
となる電圧が過度に小さくなり、最後に残ったPTCの
トリガは難しくなる傾向がある。これに対して事故電流
をコイルに転流させて限流を行う前述した各実施形態に
よる自動高速限流装置では、各PTCは、前述したよう
に、各PTCのトリガ毎に過渡現象によるエキサイティ
ング・エネルギが与えられ、かつ、一度トリガしたPT
Cは高抵抗状態になってその回路部分をオープン状態と
させていくため、最後に残されるPTCのトリガは速く
確実に行われる。
【0078】なお、上述した各実施形態においては、限
流された事故電流を最終的に遮断する回路遮断手段とし
てCPを用いた場合について説明したが、CPの代わり
にNFB(ノーフューズブレーカ)を用いてもよい。さ
らに、接点を有しない無接点の半導体スイッチ、例え
ば、パワー・トランジスタ(PT),ゲート・ターン・
オフ・サイリスタ(GTO)やIGBTといった素子を
回路遮断手段に用いてもよい。また、上述した各実施形
態による限流装置は交流回路にも直流回路にも適用する
ことが可能である。このような各場合においても、上記
各実施形態と同様な効果が奏される。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電
灯線回路といった低圧回路においても簡易に限流遮断が
行える。しかも、限流装置は、特別の制御をする必要も
なく、簡素な構成で安価にかつ小型に実現することが出
来る。
【0080】また、事故電流を限流する抵抗分が複数個
のコイルの合成直流抵抗分で構成される場合には、コイ
ルに直列に直流抵抗を別途設ける必要が無くなり、限流
装置はさらに簡単に構成される。また、サーミスタに並
列にバリスタが接続されている場合には、事故電流が各
サーミスタから各コイルに転流して行く際、各サーミス
タは、過度にその電圧を上げることをバリスタによって
制限され、破壊することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の高速限流装置を示す回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による磁気バランス型
自動高速限流装置を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態による自動高速限流装置の作用
を示す回路図である。
【図4】第1の実施形態による自動高速限流装置を用い
た遮断実験で得られた遮断電圧波形を示すグラフであ
る。
【図5】本発明の第2の実施形態による磁気バランス型
自動高速限流装置を示す回路図である。
【図6】第2の実施形態による自動高速限流装置の作用
を示す回路図である。
【図7】第2の実施形態による自動高速限流装置を用い
た遮断実験で得られた遮断電流波形および遮断電圧波形
を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態による自動高速限流装置を用い
た遮断実験において各PTCに現れる遮断電圧波形を示
すグラフである。
【図9】第2の実施形態による自動高速限流装置の別の
作用を示す回路図である。
【図10】事故電流を抵抗に転流させて限流する自動高
速限流装置を示す回路図である。
【図11】図10に示す自動高速限流装置を用いた遮断
実験で得られた遮断電流波形および遮断電圧波形を示す
グラフである。
【図12】図10に示す自動高速限流装置を用いた遮断
実験において各PTCに現れる遮断電圧波形を示すグラ
フである。
【符号の説明】
11a,11b,21a〜21d…正極性サーミスタ
(PTC) 12a,12b,22a〜22d…コイル 13…サーキットプロテクタ(CP) 13a…CP13の接点 13b…CP13の直列トリップコイル 13c…CP13のシャントトリップコイル 14,23…鉄心 24a〜24d…バリスタ(ZNR)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回路遮断手段に直列接続された複数個の
    正特性サーミスタと、これら各サーミスタにそれぞれ並
    列に接続されて1つの磁気回路を形成する複数個のコイ
    ルと、前記回路遮断手段の電流遮断能力以下の電流値に
    事故電流を限流する抵抗分とから構成される磁気バラン
    ス型自動高速限流装置。
  2. 【請求項2】 前記各コイルに直列に接続された直流抵
    抗を備え、前記抵抗分は、これら直流抵抗の各抵抗分
    と、複数個の前記コイルの合成直流抵抗分とによって形
    成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気バラン
    ス型自動高速限流装置。
  3. 【請求項3】 前記抵抗分は、複数個の前記コイルの合
    成直流抵抗分によって形成されることを特徴とする請求
    項1に記載の磁気バランス型自動高速限流装置。
  4. 【請求項4】 前記サーミスタに並列にバリスタが接続
    されていることを特徴とする請求項1から請求項3のい
    ずれか1項に記載の磁気バランス型自動高速限流装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008277216A (ja) * 2007-05-07 2008-11-13 Tada Denki Kk 磁気加熱装置
KR101053665B1 (ko) * 2009-09-30 2011-08-03 한국전력공사 한류 장치

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JP2008277216A (ja) * 2007-05-07 2008-11-13 Tada Denki Kk 磁気加熱装置
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