JP2001354613A - トリメリット酸の製造法 - Google Patents

トリメリット酸の製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】プソイドクメンを酸化してトリメリット酸を製
造するに際して、着色度しない無水トリメリット酸を高
収率で得ることができる方法を提供する。 【解決手段】酸化原料のプソイドクメン中にジメチルベ
ンズアルデヒドを5重量%以上含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプソイドクメンを液
相酸化してトリメリット酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酢酸溶媒中における臭素―遷移金属触媒
を用いたp−キシレンの空気酸化によるテレフタル酸製
造は多くの国において工業的に実施されている。プソイ
ドクメンは他のアルキル芳香族化合物と同様に重金属触
媒存在下に空気酸化されてトリメリット酸が製造される
が、生成物のトリメリット酸の二つのカルボキシル基が
オルト構造のため、重金属と錯体を形成して触媒の活性
を低下させるので、このような構造を持たないアルキル
芳香族化合物に比して収率が低いとされている。このた
め触媒系における種々の改良が行われており、米国特許
3920735号には、Mn-BrおよびCo-Mn-Br触媒系は
ジルコニウムの添加により改善されることが示されてい
る。また特許第2939346号にはさらにセリウムを
加えて、コバルト/マンガン/ジルコニウム/セリウム
/臭素触媒を段階的に加え、プソイドクメンを酸化する
方法が記載されている。特開平5−221919号には
コバルト/マンガン/セリウム/チタン/臭素触媒を段
階的に加え、プソイドクメンを酸化する方法が記載され
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】トリメリット酸は、通
常、脱水して無水トリメリット酸とし、樹脂、可塑剤を
合成するための中間体としても使用される。この場合、
得られる無水トリメリット酸および樹脂に着色しないこ
とが望まれる。本発明者らは特許第2939346号お
よび特開平5−221919号に記載の方法でプソイド
クメンを酸化し、得られたトリメリット酸を脱水して無
水トリメリット酸としたが、該無水トリメリット酸は若
干着色した。(本願比較例2および3) 本発明の目的は、プソイドクメンを酸化してトリメリッ
ト酸を製造するに際して、着色しない無水トリメリット
酸を高収率で得ることができる方法を提供することであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、原料であるプソ
イドクメンを酸化する際に、所定量以上のジメチルベン
ズアルデヒドを該原料に含有させることにより、目的と
する着色しない高品質のトリメリット酸が得られること
を見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、コバル
ト、マンガン、ジルコニウムおよび臭素の存在下、炭素
数1〜5個の脂肪族モノカルボン酸を溶媒に用いて液相
空気酸化して、トリメリット酸を製造する方法におい
て、該酸化原料のプソイドクメン中にジメチルベンズア
ルデヒドを5重量%以上含有させることを特徴とするト
リメリット酸の製造法である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で用いる酸化原料のプソイ
ドクメンは、接触改質油又は熱分解残油中のC9 留分に
存在し、蒸留により分離された市販品を使用することが
できる。副酸化原料として用いられるジメチルベンズア
ルデヒドには、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、
2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチル
ベンズアルデヒドがあり、これらの単品または混合物を
使用することができる。なお本発明において酸化原料中
にジメチル安息香酸 (3,4−ジメチル安息香酸、2,
4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸) が
含まれていても良い。
【0006】本発明において酸化原料に少なくとも5重
量%のジメチルベンズアルデヒドを含むプソイドクメン
を用いる。該酸化原料には6重量%のジメチルベンズア
ルデヒドを含むことが好ましい。ジメチルベンズアルデ
ヒドを含む場合、プソイドクメンの酸化が促進され、燃
焼および副反応が減少し、酸化収率が向上する。そのた
め、その後の無水化反応においても製品の着色しなくな
る。
【0007】液相酸化に用いる溶媒は、炭素数1〜5個
の脂肪族モノカルボン酸であり、ギ酸、酢酸、プロピオ
ン酸、酪酸等あるいはこれらの混合物が使用されるが、
酢酸、プロピオン酸が好ましく、特に酢酸が好ましい。
溶媒中の水含有量は10重量%以下とすることが好まし
い。溶媒と酸化原料との重量比は1:1〜4:1、好ま
しくは1.5:1〜3.0:1である。
【0008】本発明において液相酸化に使用される触媒
には、金属成分として、コバルト、マンガン、ジルコニ
ウムを含有する。これらの金属は、有機酸塩、ハロゲン
化物等の化合物として使用できるが、特に酢酸塩、臭化
物として用いることが好ましい。
【0009】また該触媒には臭素が含まれる。使用され
る臭素源としては反応系で溶解し、臭素イオンを発生す
るものであれば、如何なる物でも良く、例えば、臭化水
素、臭化ナトリウムおよび臭化コバルト等の無機臭化
物、テトラブロモエタン等の有機臭化物がある。特に臭
化水素、臭化コバルト、臭化マンガンが好ましい。
【0010】酸化原料に対する触媒金属の濃度は金属原
子として0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.7
重量%の範囲である。総金属に対する個々の金属の割合
は、触媒総金属量に対し、コバルト含有量が40〜65
重量%、マンガン含有量が30〜55重量%、ジニコニ
ウム含有量が1〜5重量%であることが好ましい。
【0011】酸化原料に対する臭素濃度は0.08〜
0.8重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲
である。また、触媒金属の臭素に対する原子比は0.1
〜2、好ましくは0.2〜1.5の範囲である。
【0012】本発明における液相酸化は触媒濃度および
反応温度を変えて少なくとも2段階で行うことが好まし
い。触媒添加方法としては、金属触媒および臭素化合物
をそれぞれ分割して加えることができる。即ち、例えば
第1段階で金属触媒および臭素化合物の初期添加を行っ
て反応を開始した後、反応の進行に応じて、金属触媒お
よび/または臭素化合物の残量を段階的に、または連続
的に加えることができる。好ましい形態としては第1段
階で全臭素の0〜55重量%を加え、残りを最終段階で
加える方法である。
【0013】反応温度は、第1段階が120〜170
℃、好ましくは130〜160℃、最終段階が190〜
240℃、好ましくは200〜230℃の範囲であり、
反応圧力は、第1段階が0.3〜0.8MPa好ましくは
0.4〜0.7MPa、最終段階が1.5〜3MPa、好まし
くは1.6〜209MPaの範囲である。
【0014】酸化反応には酸素含有ガスを用いる。これ
には酸素ガス、または酸素を窒素、アルゴン等の不活性
ガスと混合したガスが挙げられるが、空気が最も一般的
である。酸化反応器としては攪拌槽や気泡塔などを用い
ることができるが、攪拌槽が反応器内の攪拌を充分に行
うことができ好ましい。反応の形式としては回分式でも
連続式でもよいが、回分式がより好適である。
【0015】反応器からの排ガス中の酸素濃度は0.1
〜8容量%、好ましくは1〜5容量%である。反応器に
は還流冷却器を設け、排ガスに同伴される多量の溶媒お
よび酸化反応で生成する水を凝縮させる。凝縮した溶媒
および水は通常反応器に還流されるが、反応器内の水分
濃度を調整するために、その一部を反応系外に抜き出す
ことも行われる。反応時間は一般的に30〜100分間
である。
【0016】酸化反応混合物は冷却して、10〜120
℃、好ましくは20〜40℃の範囲にし、晶析した結晶
を濾別する。その後、得られたトリメリット酸を特別な
精製工程を行わず、210〜240℃で加熱脱水して、
無水トリメリット酸とする。さらに減圧蒸留して精製す
ることで無水トリメリット酸の製品が得られる。
【0017】
【実施例】次に実施例により、本発明をさらに具体的に
説明する。但し本発明は、以下の実施例により何ら制限
されるものではない。尚、実施例および比較例における
品質試験は下記の方法によった。溶融色 :50gの無水トリメリット酸を試験管に入れ、
190℃で1時間加熱し、目視でAPHA標準色(JI
S K 1557の6.2に記載された方法により調
製)と比色した。Br化合物 :蛍光X線により測定した。結果を示す表1
におけるPQはプソイドクメン、DBALは2,4−ジ
メチルベンズアルデヒド、TMはトリメリット酸であ
る。また、表1でBr化合物は液相酸化により得られたト
リメリット酸中の無機Br化合物および有機Br化合物の合
計のBr濃度(ppm) であり、製品溶融色は無水トリメリッ
ト酸の溶融色(APHA)である。
【0018】実施例1 反応器として、還流冷却器付きのガス排出管、ガス吹き
込み管および攪拌機を有する2Lのチタン製オートクレ
ーブを使用した。反応器に原料としてプソイドクメン1
68g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド20g、お
よび溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕込ん
だ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン4水
塩、酢酸ジルコニウム、臭化水素を、プソイドクメンに
対し、コバルト濃度2300ppm、マンガン濃度20
00ppm、ジルコニウム濃度60ppm、臭素濃度1
40ppmとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱
し、165℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反
応した。続いてポンプで触媒液を追加してマンガン(2
00ppm)、ジルコニウム(40ppm)、臭化水素
(2660ppm)となるように追加し、圧力を2MPa
とし、220℃で45分間反応を継続した。この時の総
金属濃度はプソイドクメンに対して4600ppmであ
る。また、臭素の総量はプソイドクメンに対して280
0ppmである。反応後、反応混合物を50℃に冷却し
た後、得られたスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリ
ンスし、粗トリメリット酸結晶を得た。さらに230℃
で窒素を送入して1時間無水化した。得られた無水物を
15Torrで、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留し
た。酸化反応での原料のプソイドクメンおよび2,4−
ジメチルベンズアルデヒドに対するトリメリット酸収率
は86.8モル%、燃焼率は6.8モル%であり、トリ
メリット酸中のBr化合物は220ppmであった。無水
トリメリット酸の溶融色はAPHAが60であった。結果を
表1に示す。
【0019】実施例2 原料をプソイドクメン150g、2,4−ジメチルベン
ズアルデヒド42gとした以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表1に示す
【0020】実施例3 原料をプソイドクメン96g、2,4−ジメチルベンズ
アルデヒド105gとした以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表1に示す。
【0021】実施例4 原料をプソイドクメン0g、2,4−ジメチルベンズア
ルデヒド212gとした以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表1に示す。
【0022】比較例1 原料をプソイドクメン191g、2,4−ジメチルベン
ズアルデヒド0gとした以外は実施例1と同様に行っ
た。結果を表1に示す。
【0023】比較例2 実施例1と同様な反応器に、原料としてプソイドクメン
191g、溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕
込んだ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン
4水塩、酢酸ジルコニウム、臭化水素をプソイドクメン
に対し、コバルト濃度2200ppm、マンガン濃度1
000ppm、ジルコニウム濃度40ppm、臭素濃度
600ppmとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱
し、165℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反
応した。続いて前述と同様な方法で触媒をセリウム(1
000ppm)、ジルコニウム(20ppm)、臭化水
素(2600ppm)となるように追加し、圧力を2MP
aとし、220℃で45分反応を継続した。この時の総
金属濃度はプソイドクメンに対して4260ppmであ
り、また、臭素の総量はプソイドクメンに対して320
0ppmである。反応後、反応混合物を50℃に冷却し
た後、得られたスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリ
ンスし、粗トリメリット酸結晶を得た。さらに230℃
で、窒素を送入して、1時間無水化した。得られた無水
物を15Torrで、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留
した。結果を表1に示す。
【0024】比較例3 実施例1と同様な反応器に、原料としてプソイドクメン
191g、溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕
込んだ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン
4水塩、四塩化チタン、臭化水素をプソイドクメンに対
し、コバルト濃度1700ppm、マンガン濃度100
0ppm、チタン濃度70ppm、臭素濃度460pp
mとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱し、165
℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反応した。続
いて前述と同様な方法で触媒をセリウム(640pp
m)、チタン(70ppm)、臭化水素(1460pp
m)となるように追加し、圧力を2MPaとし、220℃
で45分、反応を継続した。この時の総金属濃度はプソ
イドクメンに対して3480ppmであり、また、臭素
の総量はプソイドクメンに対して1920ppmであ
る。反応後、反応混合物を50℃に冷却した後、得られ
たスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリンスし、粗ト
リメリット酸結晶を得た。さらに230℃で、窒素を流
して、1時間無水化した。得られた無水物を15Torr
で、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留した。結果を
表1に示す。
【0025】 表1 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 実−1 実−2 実−3 実−4 比−1 比−2 比−3 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― PQ (モル%) 90 80 50 0 100 100 100 DBAL(モル%)10 20 50 100 0 0 0 TM収率(モル%)86.8 87.7 88.8 89.9 84.5 86.6 84.7 燃焼率(モル%) 6.8 6.9 5.1 6.5 9.1 7.0 10.0 Br化合物(ppm) 160 140 90 40 280 280 160 製品溶融色(APHA)60 50 50 50 110 90 120 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0026】実施例5 原料をプソイドクメン150g、2,4−ジメチルベン
ズアルデヒド21g、2,4−ジメチル安息香酸21g
とした以外は実施例1と同様に行った。酸化反応でのト
リメリット酸収率は88.0モル%、燃焼率は5.0モ
ル%であった。酸化反応でのトリメリット酸のBr化合物
は35ppmであり、得られた無水トリメリット酸の溶
融色はAPHAが45であった。
【0027】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、従
来法と比較して、本発明により原料にジメチルベンズア
ルデヒドを含有させたプソイドクメンを用いて液相酸化
を行うことにより、トリメリット酸の収率が向上し、Br
含有量が低下する。また、該トリメリット酸から純度が
高く、着色度しない無水トリメリット酸が得られる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年6月23日(2000.6.2
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】反応温度は、第1段階が120〜170
℃、好ましくは130〜160℃、最終段階が190〜
240℃、好ましくは200〜230℃の範囲であり、
反応圧力は、第1段階が0.3〜0.8MPa好ましくは
0.4〜0.7MPa、最終段階が1.5〜3MPa、好まし
くは1.6〜2.9MPaの範囲である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G069 AA06 AA08 BB08A BB08B BC51A BC51B BC62A BC62B BC67A BC67B BD13A BD13B BE08A BE08B CB07 CB74 DA02 FA01 FB14 FC08 4H006 AA02 AC46 BA10 BA16 BA20 BC10 BC14 BC34 BC35 BD10 BD21 BE30 BE53 BJ10 BS30 4H039 CA65 CC30

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コバルト、マンガン、ジルコニウムおよび
    臭素の存在下、炭素数1〜5個の脂肪族モノカルボン酸
    を溶媒に用いてプソイドクメンを液相空気酸化して、ト
    リメリット酸を製造する方法において、該酸化原料のプ
    ソイドクメン中にジメチルベンズアルデヒドを5重量%
    以上含有させることを特徴とするトリメリット酸の製造
    法。
  2. 【請求項2】臭素添加を少なくとも2段階に分けて行な
    い、第1段階で全臭素の0〜55重量%を加え、残りを
    最終段階で加え、第1段階の温度が120〜170℃、
    最終段階の温度が190〜240℃である請求項1に記
    載のトリメリット酸の製造法。
  3. 【請求項3】触媒中のコバルト、マンガン、ジルコニウ
    ムからなる総金属量がプソイドクメンに対して、0.1
    〜1重量%である請求項1に記載のトリメリット酸の製
    造法。
  4. 【請求項4】触媒総金属量に対し、コバルト含有量が4
    0〜65重量%、マンガン含有量が30〜55重量%、
    ジニコニウム含有量が1〜5重量%である請求項1に記
    載のトリメリット酸の製造法。
  5. 【請求項5】プソイドクメンに対して、0.08〜0.
    8重量%の臭素を使用する請求項1に記載のトリメリッ
    ト酸の製造法。
  6. 【請求項6】溶媒とプソイドクメンとの重量比が1:1
    〜4:1である請求項1に記載のトリメリット酸の製造
    法。
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