JP2001336245A - 床衝撃音の軽減構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 無梁版の床スラブを用いた場合においても高
い遮音性を得ることができ、この結果床スラブ厚の低減
化とフリープランニングへの対応が容易になる床衝撃音
の軽減構造を提供する。 【解決手段】 建物の床を構成する上下階の無梁版の床
スラブ１、２間であって、かつ柱が設けられていない位
置に、両端が上記床スラブにアンカーボルト６を介して
埋設された固定金具５に着脱自在に取り付けられるとと
もに上記床スラブの複数箇所に上記固定金具が配設され
ているスタッド３等からなる突張り部材３を介装した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、無梁版の床スラブ
によって上下階の床が構成された建物において、床衝撃
音を軽減するための構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、集合住宅においては、上下階の
床衝撃音は、住居環境に大きな影響を与えることから、
快適な住居環境を実現するために、各住戸間における床
衝撃音の軽減化が重要になる。一方、近年、マンション
等の鉄筋コンクリート造の集合住宅においては、コンク
リート製の床スラブが強度に優れるという利点を活用し
て、内部の間取りが居住者によって自由に変更可能な、
いわゆるフリープランニングの住戸の要請が高まってい
る。このような集合住宅にあっては、柱本数が減少する
結果、一層鉄筋コンクリート製の床スラブが変形し易く
なり、上記床衝撃音を軽減させることが難しくなる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そこで従来、この種の
床スラブによって上下階の床が構成される集合住宅にお
いては、床衝撃音を軽減させるために、例えば当該床ス
ラブに小梁を設置したり、あるいは無梁版の床スラブの
厚さ寸法を増大させる構造が採用されている。しかしな
がら、上記従来の床衝撃音の軽減構造のうち、床スラブ
に小梁を設置するものにあっては、当該小梁が下階室内
の居住空間を圧迫することになり、この結果、住戸の間
取り計画や家具、什器の配置等に多大な制約を与えるこ
とになるという問題点があった。

【０００４】他方、無梁版の床スラブの厚さ寸法を増大
させる構造によれば、当該厚さ寸法の増加に対応して、
床衝撃音を低減させることはできるものの、逆に資材コ
ストが増大して建設コストの高騰化を招来するととも
に、居室の天井高が低くなってしまうという問題点があ
った。

【０００５】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
ので、無梁版の床スラブを用いた場合においても高い遮
音性を得ることができ、しかも床スラブ厚の低減化とフ
リープランニングへの対応が容易になる床衝撃音の軽減
構造を提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の本発明
に係る床衝撃音の軽減構造は、建物の床を構成する上下
階の無梁版の床スラブ間であって、かつ柱が設けられて
いない位置に、上下端部が上記床スラブに固定された突
張り部材を設けたことを特徴とするものである。

【０００７】ここで、請求項２に記載の発明は、請求項
１に記載の突張り部材がスタッドであり、かつ当該スタ
ッドを上記床スラブ間に設けられた間仕切壁内に設置し
たことを特徴とするものであり、また請求項３に記載の
発明は、上記突張り部材が間仕切壁であることを特徴と
するものである。

【０００８】さらに、請求項４に記載の発明は、請求項
１〜３のいずれかに記載の突張り部材は、両端が上記床
スラブにアンカーボルトを介して埋設された固定金具に
着脱自在に取り付けられるとともに、上記床スラブの複
数箇所に上記固定金具が配設されていることを特徴とす
るものである。

【０００９】請求項１〜４のいずれかに記載の発明によ
れば、上下階の無梁版の床スラブを突張り部材によって
緊結することにより、柱間における床スラブの自由な変
形が抑制され、よって間柱と同様の作用によって床衝撃
音が軽減される。この結果、遮音等級の高い無梁版構造
を実現することができるとともに、併せて無梁版のスラ
ブ厚を低減することも可能になる。

【００１０】ここで、請求項２に記載の発明によれば、
上記突張り部材となるスタッドを間仕切壁内に設置して
おり、他方請求項３に記載の発明においては、上記突張
り部材として、間仕切壁自体を使用しているので、いず
れも突張り部材によって室内の外観を損なう虞が無い。

【００１１】さらに、特に請求項４に記載の発明のよう
に、スタッドや間仕切壁等の突張り部材を、上下階の床
スラブに着脱自在に設けるとともに、予め上記床スラブ
の複数箇所に、当該突張り部材を取付けるための固定金
具を配設しておけば、フリープランニングに基づく自由
な間取りに応じて、適宜箇所に上記突張り部材を設置す
ることができる。また、居住者が、将来的にリフォーム
する場合、あるいは室内の間仕切壁の位置のみを変更す
る場合においても、これに対応して当該突張り部材の設
置位置を変更することが可能になる。この結果、フリー
プランニングやフリーリフォームにも、容易に対応する
ことができる。

【００１２】

【発明の実施の形態】（第１の実施の形態）図１は、本
発明に係る床衝撃音の軽減構造の第１の実施形態を示す
もので、図中符号１、２が、図示されない柱間に敷設さ
れて上下階の床を構成する鉄筋コンクリート造の無梁版
床スラブである。そして、これら上下階の床スラブ１、
２間に、スタッド（突張り部材）３が着脱自在に設けら
れている。ここで、スタッド３は、下階の空間を仕切る
間仕切壁４の内部に設置されている。

【００１３】このスタッド３は、鋼材やアルミニウム材
等の金属あるいは木材等によって形成された所望の強度
を有する棒状部材であり、その両端部にはボルト挿入用
のフランジ部３ａが形成されている。他方、上階の床ス
ラブ１の下面およびこれと対向する下階の床スラブ２の
上面には、それぞれ平板状に形成されるとともにボルト
螺合用の雌螺子孔が形成された固定金具５が、アンカー
ボルト６を介してこれら床スラブ１、２に埋設されてい
る。そして、スタッド３は、両端部のフランジ部４に挿
通されたボルト７が固定金具５に締め込まれることによ
り、直接床スラブ１、２に着脱自在に固定されている。

【００１４】以上の構成からなる床衝撃音の軽減構造に
よれば、上下階の無梁版の床スラブ１、２同士をスタッ
ド３によって緊結しているので、柱間における床スラブ
１、２の自由な変形が抑制されることにより、間柱と同
様の作用によって床衝撃音を軽減することができる。こ
のため、遮音等級の高い無梁版構造を実現することがで
き、さらには床スラブ１、２の厚さ寸法を低減すること
もできる。しかも、スタッド３を間仕切壁４内に設置し
ているために、スタッド３自体が室内の外観を損なう虞
も無い。

【００１５】（第２の実施の形態）図２は、本発明の第
２の実施形態を示すもので、図１に示したものと同一構
成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化
する。図２に示すように、この床衝撃音の軽減構造にお
いては、予め上下階の無梁版の床スラブ１、２の複数箇
所に、上下方向に対向する固定金具５が埋設されてい
る。そして、間仕切壁４を設ける箇所に位置する固定金
具５間に、上記スタッド３が着脱自在に取り付けられて
いる。

【００１６】これにより、第２の実施形態に示す床衝撃
音の軽減構造によれば、第１の実施形態に示したものと
同様の作用効果が得られることに加えて、さらに予め床
スラブ１、２の複数箇所に固定金具５を配設しているの
で、フリープランニングに基づく自由な間取りに応じ
て、適宜箇所に上記スタッド３を設置することができ
る。また、将来的にリフォームする場合や室内の間仕切
壁４の位置のみを変更する場合においても、図中仮想線
で示すように、新たな間仕切壁４を設置する位置の固定
金具５を用いてスタッド３の設置位置を変更することが
できる。したがって、本実施形態によれば、フリープラ
ンニングやフリーリフォームにも、容易に対応すること
ができる。

【００１７】（実施の形態３）図３は、本発明の第３の
実施形態を示すもので、同様に図１および図２に示した
ものと同一構成部分に付いては、同一符号を付してその
説明を簡略化する。本実施形態に示す床衝撃音の軽減構
造においては、柱間に敷設されて上下階の床を構成する
鉄筋コンクリート造の無梁版床スラブ１、２間に、間仕
切壁（突張り部材）１０が着脱自在に設けられている。
そして、この間仕切壁１０にあっても、上下端部に形成
されたフランジ１０ａにボルト７が挿通され、当該ボル
ト７が予めアンカーボルト６を介して床スラブ１、２に
埋設された固定金具５に締め込まれることにより、直接
床スラブ１、２に着脱自在に固定されている。

【００１８】上記構成からなる床衝撃音の軽減構造によ
れば、第１の実施形態と同様の作用効果が得られる他、
さらに突張り部材として、間仕切壁１０自体を用いてい
るので、別途これを何等かの構造によって覆うことな
く、室内の外観を保持することができるために経済的で
もある。また、第２の実施形態に示したものと同様に、
予め上下階の床スラブ１、２の複数箇所に固定金具５を
埋設しておけば、フリープランニングやフリーリフォー
ムにも、容易に対応することが可能となる。

【００１９】なお、上記実施の形態においては、いずれ
も固定金具５として、雌螺子が形成された平板状のもの
を用いた場合についてのみ説明したが、これに限るもの
ではなく、アンカーボルト６の先端にナットが一体的に
接合されたもの等、各種形状のものを使用することが可
能である。また、上下階の床スラブ１、２を連結するス
タッド３についても、上記形状のものに限定されるもの
ではなく、床スラブ１、２同士を連結することにより、
当該床スラブ１、２に加えられる衝撃に対して自由な変
形を抑制可能なものであれば、各種形状の突張り部材を
使用することができる。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１〜４のい
ずれかに記載の床衝撃音の軽減構造によれば、上下階の
無梁版の床スラブ間に介装した突張り部材によって、間
柱と同様の作用により床衝撃音を軽減することができ、
よって遮音等級の高い無梁版構造を実現することができ
るとともに、無梁版のスラブ厚を低減することもでき
る。

【００２１】特に、請求項２または３に記載の発明によ
れば、いずれも突張り部材が室内の外観を損なう虞が無
く、また請求項４に記載の発明によれば、適宜箇所に突
張り部材を設置あるいは移設することができ、よってフ
リープランニングやフリーリフォームにも、容易に対応
することができるといった効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施形態を示す要部の縦断面図
である。

【図２】本発明の第２の実施形態を示す要部の縦断面図
である。

【図３】本発明の第３の実施形態を示す要部の縦断面図
である。

【符号の説明】

１ 上階の無梁版の床スラブ ２ 下階の無梁版の床スラブ ３ スタッド（突張り部材） ４ 間仕切壁 ５ 固定金具 ６ アンカーボルト ７ ボルト １０ 間仕切壁（突張り部材）

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建物の床を構成する上下階の無梁版の床
   スラブ間であって、かつ柱が設けられていない位置に、
   上下端部が上記床スラブに固定された突張り部材を設け
   たことを特徴とする床衝撃音の軽減構造。
2. 【請求項２】 上記突張り部材はスタッドであり、かつ
   当該スタッドを、上記床スラブ間に設けられた間仕切壁
   内に設置したことを特徴とする請求項１に記載の床衝撃
   音の軽減構造。
3. 【請求項３】 上記突張り部材は、間仕切壁であること
   を特徴とする請求項１に記載の床衝撃音の軽減構造。
4. 【請求項４】 上記突張り部材は、両端が上記床スラブ
   にアンカーボルトを介して埋設された固定金具に着脱自
   在に取り付けられるとともに、上記床スラブの複数箇所
   に上記固定金具が配設されていることを特徴とする請求
   項１ないし３のいずれかに記載の床衝撃音の軽減構造。