JP2001328937A - 多剤耐性癌克服剤およびその製造方法 - Google Patents

多剤耐性癌克服剤およびその製造方法

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JP2001328937A
JP2001328937A JP2000228158A JP2000228158A JP2001328937A JP 2001328937 A JP2001328937 A JP 2001328937A JP 2000228158 A JP2000228158 A JP 2000228158A JP 2000228158 A JP2000228158 A JP 2000228158A JP 2001328937 A JP2001328937 A JP 2001328937A
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JP2000228158A
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Masayoshi Ando
政義 安東
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KNC Laboratories Co Ltd
Original Assignee
KNC Laboratories Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 複数の抗癌剤に対する耐性を獲得した癌細
胞に投与する多剤耐性癌克服剤およびその製造方法の提
供。 【解決手段】 例えば式(1)で表せる化合物を含む薬
剤。 (式中Rはエステル化されている水酸基等を、R
水素を、またはRとRとが一緒になって=Oを、R
は水素を、R、Rは水素等を、Rはメチル基等
を、R〜Rは水酸基等、R10は水素またはR
一緒になって単結合を表してもよい、R11はメチル基
等、R12〜R14は水素、水酸基等を示す。)これら
は日本イチイの針葉部から取り出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癌克服剤、特に、
複数の抗癌剤に対する耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性
癌細胞)に投与する多剤耐性癌克服剤およびその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、互いに化学構造や作用点に類
似性の無い複数の抗癌剤に対する耐性(多剤耐性)を獲
得した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に投与する多剤耐性癌
克服剤が種々開発されており、有望な薬剤が幾つか報告
されている。例えば、カルシウム拮抗薬であるベラパミ
ル(Verapamil) には、ビンクリスチン(Vincristine) を
はじめとする複数種の抗癌剤(抗癌作用物質)の、多剤
耐性癌細胞内への蓄積増強作用(排出抑制作用)がある
こと、つまり、多剤耐性癌克服作用(多剤耐性克服作
用)があることが認められている。また、Heterocycle
s, 47(2), 1111-1133(1998) には、日本イチイ(Taxus
cuspidata Sieb. et Zucc.)の針葉部から取り出された
数種類のタキサン関連化合物(総称;タキソイド)に、
上記ベラパミルと同程度の多剤耐性癌克服作用があるこ
とが報告されている。さらに、Bioorganic & Medicinal
Chemistry Lett., 7(4), 393-398 (1997)、同 8, 1555
-1558(1998)、同 9, 389-394 (1999)、およびChem. Pha
rm. Bull., 46(7), 1135-1139(1998) には、タキサン関
連化合物のバイオアッセイ(Bioassay)に関する検討結果
が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】多剤耐性癌克服剤とし
ては例えば、強い多剤耐性癌克服作用を備えているこ
と、及び、副作用が少ないこと等の条件を満たすことが
要求される。しかしながら、上記の条件を充分に満たす
多剤耐性癌克服剤は見出されているとは未だいい難いの
が現状である。例えば、上記ベラパミルには、副作用と
して血圧降下作用があることが認められており、それゆ
え、実用化には至っていない。また、上記Heterocycles
に記載されているタキサン関連化合物には、ベラパミル
と同程度の多剤耐性癌克服作用があるものの、実用可能
であるかは未だ不明なところが多い。
【0004】さらにまた、多剤耐性癌克服剤として、上
記の条件に加え、低殺細胞性や、生体内での低分解性等
の特性が必要とされる場合もある。従って、新規な多剤
耐性癌克服剤の探索は、これら複雑多岐にわたるニーズ
を満足させ、多剤耐性癌克服剤の適用範囲を拡大しうる
可能性を秘めているという観点から、特に必要とされて
いる。
【0005】本発明の主要な目的は、上記従来の問題点
に鑑み、その目的は、癌細胞特に複数の抗癌剤に対する
耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に投与する新
規な癌克服剤特に多剤耐性癌克服剤、その製造方法等を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
多剤耐性癌克服剤は、上記の課題を解決するために、特
定の化学式で表される化合物群より選ばれる少なくとも
一種の化合物を含むことを特徴としている。
【0007】上記化合物は何れも、通常の癌細胞または
複数の抗癌剤に対する耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性
癌細胞)に対する癌克服作用を有している。それゆえ、
前記化合物群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含
む癌克服剤乃至多剤耐性癌克服剤は、該癌細胞に好適に
投与することができる。
【0008】すなわち、本発明は(1)式(1)
【化63】 (式中、Rは水素原子またはエステル化もしくはエー
テル化されていてもよい水酸基を、Rは水素原子を、
またはRとRとが一緒になって=Oを、Rは水素
原子を、Rは水素原子もしくは水酸基を、またはR
とRとが一緒になって、単結合または−O−を形成し
てもよく、またはRとRが一緒になって−O−CH
−を形成してもよく、Rは水素原子またはエステル
化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
はメチル基、ヒドロキシメチル基、またはエステル化も
しくはエーテル化されていてもよい水酸基、Rはエス
テル化またはエーテル化されていてもよい水酸基、R
は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化されて
いてもよい水酸基、Rは水素原子またはエステル化も
しくはエーテル化されていてもよい水酸基、R10は水
素原子またはRと一緒になって単結合を表してもよ
い、R11はメチル基またはエステル化もしくはエーテ
ル化されていてもよい水酸基を有するメチル基、R12
は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化されて
いてもよい水酸基を、R13は水素原子またはエステル
化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
14は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化さ
れていてもよい水酸基を示す)で表される化合物、式
(2)
【化64】 (式中、R15はエステル化もしくはエーテル化されて
いてもよい水酸基を、R16は水素原子を、R17はメ
チル基を、またはR16とR17とが一緒になって−O
−CH−を形成してもよく、R18は水素原子または
エステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基
を、R19はエステル化もしくはエーテル化されていて
もよい水酸基を、
【化65】 は二重結合または単結合を示す)で表される化合物、式
(3)
【化66】 (式中、R20はエステル化またはエーテル化されてい
てもよい水酸基を、R は水素原子またはエステル化
もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R22
は水素原子を、またはR21とR22とが一緒になって
=Oを形成してもよく、R23は水素原子またはエステ
ル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
24は水素原子を、またはR23とR24とが一緒にな
って=Oを形成してもよく、R25は水素原子またはエ
ステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基
を、R26は水素原子を示す。もっともR25とR26
とが一緒になって=Oを形成してもよい)で表される化
合物、式(4)
【化67】 (式中、R27、R28、R29、R30、R31およ
びR32はそれぞれ同一または異なって水素原子、また
はエステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸
基を示す。R33、R34は水素原子を示すかR32
33またはR とR34とが一緒になって=Oを形
成してもよい)で表される化合物、または式(5)
【化68】 (式中、R35、R36、R37、R38およびR39
はそれぞれ同一または異なって、エステル化またはエー
テル化されていてもよい水酸基を示す)で表される化合
物またはその塩を含有することを特徴とする医薬、
(2)化合物が式
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【化97】
【化98】
【化99】
【化100】
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【化105】
【化106】
【化107】
【化108】
【化109】 または
【化110】 (式中、Acはアセチル基を、Bzはベンゾイル基を、
Meはメチル基を、Phはフェニル基を示す)で表され
る化合物を含有することを特徴とする前記(1)記載の
医薬、(3)癌克服剤である前記(1)または(2)に
記載の医薬、(4)多剤耐性癌克服剤である前記(1)
または(2)に記載の医薬、(5)抗癌作用物質蓄積増
強剤である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医
薬、(6)さらに抗癌作用物質を含有する前記(1)〜
(5)のいずれかに記載の医薬、(7)前記(1)また
は(2)に記載の化合物と抗癌作用物質とを組み合わせ
て癌患者に投与することを特徴とする癌の治療方法、
(8)式
【化111】
【化112】
【化113】
【化114】
【化115】
【化116】
【化117】
【化118】
【化119】
【化120】
【化121】 または
【化122】 (式中、Acはアセチル基を、Meはメチル基を、Ph
はフェニル基を示す)で表される化合物、(9)式
【化123】 または
【化124】 (式中、Acはアセチル基を、Phはフェニル基を示
す)で表される化合物を含有することを特徴とする制癌
剤、(10)日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb. et Z
ucc.)の組織またはその組織より誘導されるカルスから
前記(2)に記載の化合物を採取することを特徴とする
前記(2)に記載された化合物の製造方法、および(1
1)タキシン骨格、タキシニン骨格またはアビエタン骨
格を有し、抗癌作用物質蓄積増強作用または抗癌作用物
質排出抑制作用のある化合物を含有する医薬、に関す
る。
【0009】化学式(6)〜(14)で表される化合物
はタキシン化合物であり、化学式(15)〜(29)で
表される化合物はタキシニン化合物である。尚、化学式
(23)で表される化合物は 2'-desacetylaustrospica
tineである。また、化学式(24)で表される化合物は
2-desacethoxy taxinine Bであり、化学式(25)で表
される化合物はtaxinine Eである。
【0010】なお、化学式(17)、(22)、(2
7)、(28)および(29)で表される化合物は新規
タキシニン化合物である。化学式(30)で表される化
合物はタクスユンナニンC(taxuyunnanin C);化学式
(31)で表される化合物は2α,5α,10β−トリ
アセトキシ−14β−プロピオニロキシ−タキサ−4
(20),11−ジェン;化学式(32)で表される化
合物はユンナキサン(yunnanxane);化学式(33)で
表される化合物は2α,5α,10β−トリアセトキシ
−14β−(2’−メチル)ブチリロキシ−タキサ−4
(20),11−ジェン;化学式(34)で表される化
合物は2α,5α,10β−トリアセトキシ−14β−
イソブチリロキシ−タキサ−4(20),11−ジェ
ン;化学式(35)で表される化合物は2α−ヒドロキ
シ−5α,10β,14β−トリアセトキシ−タキサ−
4(20),11−ジェン(2α−hydroxy−5α,1
0β,14β−triacetoxy−taxa−4(20),11−
diene);化学式(36)で表されるタキシニン化合物
は5α,13α−ジアセトキシ−9α−シンナモイルオ
キシ−10β−ヒドロキシ−タキサ−4(20),11
−ジェン(5α,13α−diacetoxy−9α−cinnamoyl
oxy−10β−hydroxy−taxa−4(20),11−dien
e);化学式(37)で表されるアビエタン化合物は、
3α,7α,11−トリヒドロキシ−12−メトキシ−
3,20−エポキシ−アビエタ−8,11,13−トリ
エン(3α,7α,11−trihydroxy−12−methoxy
−3,20−epoxy−abieta−8,11,13−trien
e);化学式(38)で表されるアビエタン化合物は、
3β,12−ジヒドロキシ−アビエタ−6,8,11,
13−テトラエン(3β,12−dihydroxy−abieta−
6,8,11,13−tetraene);化学式(39)で表
されるアビエタン化合物は3α−ヒドロキシ−9(10
→20)アベオアビエタ−1,5,8,10(20),
13−ペンタエン−7,11,12−trione;化学式
(40)で表される化合物はタクスシン(taxusin);
化学式(41)で表されるタキシニン化合物は10−デ
アセチル タキシニン(10−deacetyl taxinine);
化学式(42)および化学式(43)で表される化合物
はタキシニン化合物;化学式(44)で表される化合物
は2−デスアセトキシ タキシニンE(2−desacetoxy
taxinine E);化学式(45)で表される化合物はタ
キシンNA−2(taxicin NA-2);化学式(46)で表
される化合物は2−デスアセトキシ タキシニンJ(2
−desacetoxy taxinine J);化学式(47)で表され
る化合物は5−シンナモイル−10−アセチル−タキシ
ンII(5−cinnamoyl−10−acetyl−taxicin II)
である。
【0011】化学式(6)〜(47)の化合物はいずれ
も日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.)より
採取または単離(以下単に採取と略称する)することが
できるが、このように採取した化学式(6)〜(47)
に属する化合物は他の化学式(6)〜(47)に属する
化合物に化学変換することができる。そのような化学変
換のための化学反応は通常化学者または薬学者が周知す
る伝統的な化学反応であってよい。具体的には例えば酸
(例えば塩酸)または塩基(例えば水酸化ナトリウム)
を使用してアセチル基やシンナモイル基を水酸基に変換
する加水分解反応;例えばナトリウムボロンハイドライ
ドを使用する化学還元や水素ガスと還元触媒を使用する
接触還元などによるカルボニル基を水酸基に変換する還
元反応;例えば水酸基に例えばアセチル基やシンナモイ
ル基を導入するエステル化反応等を挙げることができ
る。従って化学者または薬学者にとっては自明のことで
あるが化学式(6)〜(47)で表される化合物は、同
一一般式(1)〜(5)のそれぞれの範囲内において化
学的に容易に変換可能である。
【0012】本発明者等は、上記課題について鋭意検討
した結果、上記式(1)〜(47)で表される化合物を
抗癌作用物質と共に癌患者に投与すると、抗癌作用物質
の癌細胞内への、特に多剤耐性癌細胞内への蓄積が増強
されるもしくは癌細胞もしくは多剤耐性癌細胞に取り込
まれた抗癌作用物質の癌細胞もしくは多剤耐性癌細胞内
から癌細胞もしくは多剤耐性癌細胞外への排出が抑制さ
れること、そしてその結果抗癌作用物質の抗癌剤として
の作用効果が向上すること、つまり、上記式の化合物は
抗癌作用物質もしくは抗多剤耐性癌作用物質(以下単に
抗癌作用物質と略称することもある)が癌細胞もしくは
多剤耐性癌細胞(以下単に癌細胞と略称することもあ
る)内に蓄積するのを増強する作用もしくは癌細胞から
排出されるのを抑制するため、癌克服剤もしくは多剤耐
性癌克服剤(以下単に癌克服剤と略称することもある)
として有用であることを見出した。すなわち、本発明
は、上記式(1)〜(47)で表される化合物と他の抗
癌作用物質とを組み合わせて、投与される医薬を提供す
る。
【0013】また、本発明者等は、式(1)〜(47)
で表される化合物自体が抗癌作用物質として作用するか
ら、式(1)〜(47)で表される化合物以外の抗癌作
用物質は必ずしも必要でないことも知見した。
【0014】また、本発明者等は、上記式(6)〜(4
7)で表される化合物が日本イチイ(Taxus cuspidata
Sieb. et Zucc.)の例えば針葉部等の組織またはその組
織より誘導されるカルスから取り出しうることができる
こと、そしてこのようにして癌細胞に投与するのに好適
な癌克服剤を、毎年再生される針葉部を使用する等、環
境を保全しながら効率的かつ工業的有利に製造すること
ができることを知見した。
【0015】また、本発明者等は、上記式(1)〜
(5)の範囲に属し、上記式(6)〜(47)で表され
る化合物以外の化合物は、上記式(6)〜(47)で表
される化合物を日本イチイから採取し、これを例えば上
記したと同様の加水分解反応、還元反応、エステル化反
応、エーテル化反応等自体公知の手段に付することによ
り容易に製造されうることを知見した。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は医薬において癌克服剤ま
たは多剤耐性癌克服剤として使用される化合物は一般式
(1)〜(5)で表される化合物である。
【0017】式(1)〜(5)中、エステル化された水
酸基はたとえば式
【化125】 で表すことができ、エーテル化された水酸基としては式 −O−Z で表される。そして、式中
【化126】 で表される基はアシル基である。
【0018】ZおよびZで表される基は本発明の精
神に反しない限りどのような化学修飾のための置換基で
あってもよいが、医薬品分野でエステル形成基もしくは
エーテル形成基(またはエステル残基もしくはエーテル
残基)として常用される置換基が特許文献上または学術
文献上もよく知られているので、本発明においてもこの
ような自体公知の修飾のための置換基を採用することが
でき、かかるエステル形成基もしくはエーテル形成基は
従来公知の方法に従って行われてよい。
【0019】ZおよびZで表される基は、具体的に
は例えば炭素数1〜50程度の飽和または不飽和の直鎖
状、分枝状または環状のアルキル基、C〜C20程度
のアラルキル基、C〜C15程度のアリール基等が挙
げられる。これらの置換基は例えば、水酸基、アミノ
基、カルボキシル基、スルホニル基(例えばメチルスル
ホニル基)、ハロゲン原子、ニトロ基、C1〜5程度の
アルコキシ基等の通常医薬の有効成分の化学修飾に常用
される置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0020】ついで、本発明化合物の製造方法等につい
て説明する。説明は化合物(6)〜(29)と化合物
(30)〜(39)と化合物(40)〜(47)に分け
て行う。
【0021】タキシン化合物またはタキシニン化合物等
のタキサン関連化合物(総称;タキソイド)であるこれ
ら化合物は、例えば、複数の抗癌剤に対する耐性を獲得
した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に対して、充分な多剤耐
性癌克服作用がある。多剤耐性癌克服剤は、上記化学式
(11),(15),(16),(17),(22),
(24),(26)で表される化合物群より選ばれる少
なくとも一種の化合物を含んでいることが、より好まし
い。これら7種類の化合物は、より強い多剤耐性癌克服
作用を備えている。そして、上記化学式(17),(2
2),(27),(28),(29)で表される5種類
のタキシニン化合物は、新規物質である。
【0022】該多剤耐性癌克服剤は、複数の抗癌剤に対
する耐性(多剤耐性)を獲得した癌細胞(多剤耐性癌細
胞)内に取り込まれた様々な抗癌剤を、該多剤耐性癌細
胞外に排出する複数の作用機構の何れかを阻害する作用
を有するものである。抗癌剤を多剤耐性癌細胞外に排出
する作用機構として、具体的には、例えば、多剤耐性癌
細胞において存在または発現するP−糖蛋白質が、多剤
耐性癌細胞内に取り込まれた様々な抗癌剤と結合し、こ
れらを能動輸送により排出する機構等が挙げられる。上
記化学式(6)〜(29)で表される化合物は、それぞ
れ単独で、P−糖蛋白質による抗癌剤の能動輸送の阻害
剤(以下、P−糖蛋白質阻害剤と称する)としての機能
を少なくとも有し、本発明にかかる多剤耐性癌克服剤と
成り得る。上記の化合物が多剤耐性癌克服作用を有する
ことは、本願発明者が新たに見い出したことである。
尚、以下の説明においては、必要に応じて、例えば上記
化学式(6)〜(29)で表される化合物を、順に、化
合物(6)〜(29)と称する(他の化学式についても
同じ)。
【0023】本発明にかかる多剤耐性癌克服剤の製造方
法は、上記化合物のうちの少なくとも1つを、日本イチ
イ(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.)の針葉部から、
例えば、有機溶媒を用いて抽出した後、得られた抽出液
を酸および/または塩基で処理し、次いで液体クロマト
グラフィーによって分画し、取り出す工程を行うことに
よって製造する方法である。日本イチイの針葉部は、入
手が比較的容易であり、該日本イチイは、例えば北海
道、本州、四国、九州の亜熱帯から温帯にわたって分布
している。尚、本発明における「針葉部」には、「葉
身」、「葉柄」、並びに、該「葉部(葉身+葉柄)」が
複数枚付いた「小枝」、さらには、「新芽(その原基で
あっても良い)」や該「新芽」が付いた「若茎」が含ま
れることとする。
【0024】日本イチイの針葉部から前記化合物(6)
〜(29)、即ち、タキサン関連化合物を取り出す具体
的な方法は、特に限定されるものではないが、抽出を行
う方法が好適であり、有機溶媒を用いて抽出を行う方法
が最適である。そして、抽出を行う具体的な方法として
は、例えば、針葉部(生針葉部)を、必要に応じて粉砕
した後、有機溶媒に数日間から数週間浸漬する方法が挙
げられる。抽出条件は、特に限定されるものではない
が、抽出温度は30℃以下であることがより好ましい。
【0025】上記の有機溶媒としては、具体的には、例
えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロ
ピルアルコール、クロロホルム、n−ヘキサン、酢酸エ
チル、各種エーテル、トルエン等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。これら有機溶媒は、一種類の
みを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよ
い。上記例示の有機溶媒のうち、メチルアルコールおよ
び酢酸エチルがより好ましい。
【0026】また、上記抽出操作を行う前に、針葉部に
含まれる油分を除去(脱脂)するために、該針葉部を有
機溶媒で洗浄してもよい。上記例示の有機溶媒のうち、
n−ヘキサンが、針葉部に含まれる油分を除去するのに
好適である。
【0027】タキサン関連化合物が抽出された抽出液
は、アルカロイド誘導体やフェノール誘導体等の成分を
分離・除去するために、酸および/または塩基で処理す
ることが好ましい。抽出液を酸および/または塩基で処
理する方法としては、具体的には、抽出液を酸性水およ
び/または塩基性水で洗浄する方法が挙げられる。
【0028】上記の酸としては、具体的には、例えば、
塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸等の有機
酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。こ
れら酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。従って、酸性水としては、これら
無機酸および/または有機酸の水溶液が挙げられる。該
酸性水のpHは、特に限定されるものではないが、5以
下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。抽出液を
酸性水で洗浄することによって、該抽出液から、アルカ
ロイド誘導体等の成分を分離・除去することができる。
【0029】尚、タキサン関連化合物のうちの幾つかの
化合物は、酸で環開裂(分解)し易いオキセタン骨格を
分子構造に有している。従って、一般に、酸で処理を行
うと、該オキセタン骨格の環開裂が生じてタキサン関連
化合物が破壊されてしまうと考えられている。ところ
が、本願発明者等が検討したところ、タキサン関連化合
物は、酸で処理を行っても、オキセタン骨格の環開裂が
生じないことが判明した。それゆえ、酸で処理を行うこ
とによって、タキサン関連化合物と、アルカロイド誘導
体等の成分とを分離することができる。
【0030】また、上記の塩基としては、具体的には、
例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;アン
モニウム化合物等の有機塩基;が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これら塩基は、一種類のみを用
いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。従っ
て、塩基性水としては、これら無機塩基および/または
有機塩基の水溶液が挙げられる。該塩基性水のpHは、
特に限定されるものではないが、9以上がより好まし
く、10以上がさらに好ましく、11以上が特に好まし
い。抽出液を塩基性水で洗浄することによって、該抽出
液から、フェノール誘導体等の成分を分離・除去するこ
とができる。
【0031】尚、タキサン関連化合物は、塩基で加水分
解され易いエステルを分子構造に有している。従って、
一般に、塩基で処理を行うと、該エステルの加水分解が
生じてタキサン関連化合物が破壊されてしまうと考えら
れている。ところが、本願発明者等が検討したところ、
タキサン関連化合物は、塩基、特に強塩基で処理を行っ
ても、エステルの加水分解が生じないことが判明した。
それゆえ、塩基で処理を行うことによって、タキサン関
連化合物と、フェノール誘導体等の成分とを分離するこ
とができる。
【0032】酸および/または塩基で処理した後の抽出
液は、中性になるまで水洗することがより好ましい。ま
た、水洗後の抽出液は、タキサン関連化合物の単離が容
易となるように、濃縮する(有機溶媒を除去する)こと
がより好ましい。抽出液を濃縮することにより、中性分
画が得られる。
【0033】中性分画からタキサン関連化合物、即ち、
前記化合物群に属する個々の化合物(6)〜(29)を
単離・精製する具体的な方法は、特に限定されるもので
はないが、液体クロマトグラフィーを採用する方法が好
適である。該液体クロマトグラフィーとしては、具体的
には、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、
逆相または順相の高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)、遠心液液分配クロマトグラフィー(CPC)等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。上記の高
速液体クロマトグラフィーは、例えば、移動相のpHを
考慮して、逆相か順相かを選択すればよい。
【0034】固定相(充填剤)としては、具体的には、
例えば、シリカゲル、アルミナ、ODS(オクタデシル
シリル)系化合物等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。上記例示の固定相のうち、逆相高速液体ク
ロマトグラフィー等を採用する場合には、ODS系化合
物がより好ましい。
【0035】移動相(キャリア,溶離液)として用いる
のに好適な液体としては、具体的には、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、クロロホルム、n−ヘ
キサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン、アセト
ニトリル、水等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら液体は、一種類のみを用いてもよく、ま
た、二種類以上を併用してもよい。上記例示の液体のう
ち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや順相高速液
体クロマトグラフィー等を採用する場合には、n−ヘキ
サン/酢酸エチル系の混合溶液がより好ましく、逆相高
速液体クロマトグラフィー等を採用する場合には、メチ
ルアルコール/アセトニトリル系の混合溶液がより好ま
しく、遠心液液分配クロマトグラフィー等を採用する場
合には、n−ヘキサン/メチルアルコール系の混合溶液
がより好ましい。
【0036】逆相高速液体クロマトグラフィーにおける
上記液体のpH、即ち、移動相のpHは、緩衝溶液によ
って酸性に調節されていることがより好ましい。つま
り、逆相ODSカラムを用いた単離・精製は、酸性条件
下で行われることがより好ましい。緩衝溶液は、移動相
のpHを5.5以下に調節することができる溶液であれ
ばよく、特に限定されるものではない。該緩衝溶液とし
ては、具体的には、例えば、酢酸アンモニウム水溶液等
が挙げられる。尚、上記の液体と緩衝溶液との組み合わ
せは、特に限定されるものではない。
【0037】逆相液体クロマトグラフィーにおける移動
相のpHを酸性に調節することにより、該液体クロマト
グラフィーの分離能がより向上するので、タキサン関連
化合物をより一層選択的に単離することができる。移動
相のpHが中性付近であると、アルカロイド誘導体の分
離・除去が充分に行われない場合がある。また、アルカ
ロイド誘導体が有する窒素原子に対してプロトン付加が
可逆的に起こるので、分離・除去すべき成分(ピーク)
が増加したり、該成分(ピーク)がブロードになって分
離能が低下したり、保持時間が変化したりして、成分
(ピーク)を特定(解析)することができなくなる場合
がある。
【0038】中性分画を液体クロマトグラフィーを採用
して分離し、タキサン関連化合物を単離・精製する具体
的な方法としては、例えば、先ず、シリカゲルフラッ
シュカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ーや、遠心液液分配クロマトグラフィーを採用して、n
−ヘキサン/酢酸エチル系の混合溶液(溶離液)を用い
て、中性分画を分離して中程度の極性を有する分画(フ
ラクション)を取り出し、次に、順相高速液体クロマ
トグラフィーを採用して、n−ヘキサン/酢酸エチル系
の混合溶液(キャリア)を用いて、該分画を分離し、さ
らに、逆相高速液体クロマトグラフィーを採用して、
メチルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム水溶液
(pH4.8)とアセトニトリルとを容量比1:2:2
で混合してなる混合溶液(キャリア)を用いて、上記
で得た分画をさらに分離してタキサン関連化合物を含む
分画を取り出す方法が挙げられる。上記の分離・精製操
作を行うことにより、タキサン関連化合物と、アルカロ
イド誘導体やフェノール誘導体等の成分とを分離するこ
とができるので、タキサン関連化合物を精製することが
できる。そして、必要に応じて、上記・の分離・精
製操作を繰り返して行うことにより、タキサン関連化合
物、即ち、前記化合物群に属する個々の化合物(6)〜
(29)の純度をさらに向上させることができる。
【0039】得られたタキサン関連化合物を分析する際
には、上記液体クロマトグラフィーを採用して、上記単
離・精製条件と同様の条件で分析操作を行えばよい。つ
まり、分析は、酸性条件下で行われることがより好まし
い。移動相のpHを酸性に調節することにより、液体ク
ロマトグラフィーの分離能がより向上するので、タキサ
ン関連化合物をより一層正確に分析することができる。
移動相のpHが中性付近であると、分離・除去すべき成
分(ピーク)が増加したり、該成分(ピーク)がブロー
ドになって分離能が低下したり、保持時間が変化したり
して、成分(ピーク)を特定(解析)することができな
くなる場合がある。
【0040】上記抽出等の一連の取り出し操作を行うこ
とにより、前記化合物(6)〜(29)が得られる。前
記化合物(6)〜(29)は何れも、複数の抗癌剤に対
する耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に対する
多剤耐性癌克服作用を有している。それゆえ、前記化学
式(6)〜(29)で表される化合物群より選ばれる少
なくとも一種の化合物を含む多剤耐性癌克服剤は、該癌
細胞に好適に投与することができる。
【0041】該化合物(6)〜(29)は、前記説明
(針葉部からの取り出し方法の説明)において述べたよ
うに、酸または塩基に対して安定であり、それゆえ、例
えば生体内で分解(胃液による分解、胆液による分解
等)されるおそれが少ない。従って、化合物(6)〜
(29)より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んで
なる本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は、例えば、その
投与方法や投与場所等の制限が少なく、広範囲な適用が
可能であると期待される。
【0042】特に、化合物(11),(15)〜(1
7),(22),(24),(26)は、ベラパミルを
上回る多剤耐性癌克服作用を有する高活性化合物である
ことから、それ単独で特に有効な(新規な)多剤耐性癌
克服剤となり得る。
【0043】また、前記化合物(6)〜(29)は、日
本イチイの針葉部から取り出すことができる。即ち、本
発明にかかる製造方法によれば、毎年再生される針葉部
を使用するので、環境を保全しながら、日本イチイから
前記化合物(6)〜(29)を製造することができる。
これにより、癌細胞に投与するのに好適な多剤耐性癌克
服剤を、環境を保全しながら製造することができる。
【0044】尚、本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は、
必要に応じて、例えば、癌細胞の特定部位(またはP−
糖蛋白質)と特異的に結合可能な抗体や、抗癌剤等をさ
らに含んで構成されていてもよい。これにより、標的と
すべき(多剤耐性)癌細胞への多剤耐性癌克服剤の供給
を確実にする効果や、該癌細胞への抗癌剤の同時供給が
可能となる効果等を実現することができる。これら多剤
耐性癌克服剤の投与方法は、特に限定されるものではな
く、多剤耐性癌克服剤に含まれる物質(上記化合物
(6)〜(29)や、抗体、抗癌剤等を指す)の物性等
に応じた最適なドラッグデリバリーシステムを採用すれ
ばよい。
【0045】上記の化学式(30)〜(39)で表され
る化合物は、それぞれ単独で、少なくともP−糖蛋白質
による抗癌剤の能動輸送の阻害剤(以下、P−糖蛋白質
阻害剤と称する)としての機能を有し、本発明にかかる
多剤耐性癌克服剤となりうる。また、上記の化合物のう
ち、化学式(31),(33),(36)で表される化
合物は、従来の多剤耐性癌克服剤であるベラパミルと比
較して多剤耐性癌克服作用が著しく高く、以下、高活性
化合物と称する。本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は、
これらの高活性化合物の少なくとも一つを含んでいるこ
とがより好ましい。
【0046】上記の化合物が多剤耐性癌克服作用を有す
ることは、本願発明者が新たに見出したことである。ま
た、上記の化学式(36)で表されるタキシニン化合物
は、本発明にかかる新規なタキシニン化合物であり、上
記の化学式(37)〜(39)で表されるアビエタン化
合物はいずれも、本発明にかかる新規なアビエタン化合
物である。尚、以下、必要に応じて、上記化学式(3
0)〜(39)で表される化合物を順に、化合物(3
0)〜(39)と称する。
【0047】尚、本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は必
要に応じて、例えば、癌細胞の特定部位(またはP−糖
蛋白質)と特異的に結合可能な抗体や、抗癌剤等をさら
に含んで構成されていてもよい。これにより、標的とす
べき(多剤耐性)癌細胞への多剤耐性癌克服剤の供給を
確実とする効果や、該癌細胞への抗癌剤の同時供給が可
能となる効果等を実現することができる。これら多剤耐
性癌克服剤の投与方法は特に限定されるものではなく、
多剤耐性癌克服剤に含まれる物質(上記化合物(30)
〜(39)や、抗体、抗癌剤等を指す)の物性等に応じ
た最適なドラッグデリバリーシステムを採用すればよ
い。
【0048】本発明にかかる多剤耐性癌克服剤の製造方
法は、上記説明の多剤耐性癌克服剤に含まれる化合物
(30)〜(39)の少なくとも一つ(以下、単に化合
物と称し、特定の化合物を指す場合のみ(30)〜(3
9)の番号を付すものとする)を、日本イチイ(Taxus
cuspidata Sieb. et Zucc.)の組織より誘導されるカル
スから取り出す工程を含む製造方法である。
【0049】本発明において「日本イチイの組織」と
は、日本イチイに由来する組織、より具体的には、植物
体(根部、茎部、葉部を成す各組織、すなわち栄養器官
全体を指す)、並びに、その花、花粉、及び果実(生殖
器官)を成す組織のことを指す。尚、ここでいう「葉
部」とは、「葉身」と「葉柄」とから構成される単位を
指し、また、「果実」とは、「仮種衣(アリル)」およ
び「種子」を含む概念である。これら日本イチイの組織
の中でも、特にその「針葉部」は、A)培養細胞の増殖
性、即ち、カルスの誘導性に特に優れている点、及び、
B)組織の採取が比較的容易である上、植物体に大きな
ダメージを与えることがない点等で、より好適である。
【0050】上記「針葉部」とは、「葉身」、「葉
柄」、並びに、「葉部」が複数枚付いた「小枝」、さら
には、「新芽(その原基であっても良い)」や該「新
芽」が付いた「若茎」も含まれるものとする。これら
「針葉部」のうち、特に、秋季並びに冬季に採取した
「若茎」(直径2mm〜3mm程度の緑色若茎部)が、
カルスの誘導性に特に優れると共に、何代にもわたる継
代培養を行っても、上記化合物の生産量が低下しないの
で、特に好ましい。また、シュートや芽生え等の若い組
織も、カルス誘導のための組織として好適に使用するこ
とができる。
【0051】カルス誘導用の「日本イチイの組織」(以
下、場合によっては外植体と称する)の採取時期は特に
限定されるものではないが、上記組織を植物体から得る
場合には、採取前1ヵ月間の平均気温が18℃以下、よ
り好ましく5℃以下である環境下で生育された後に採取
されることが好ましい。尚、この環境は、人工的に作ら
れるものであってもよい。
【0052】外植体からのカルス誘導およびその培養
は、特別な添加剤(添加物)や培養条件を用いることな
く、一般的な手法で以て、例えば、寒天培地等の市販の
植物培養培地(固体培地)とオーキシンとを用いること
によって、容易に実施することができる。また、場合に
よっては、オーキシンを含んでなる液体培地を用いて振
盪培養を行ってもよい。このように、外植体から容易に
カルスを誘導することができるので、簡便な設備で以て
大量培養することができ、該カルスから上記化合物を大
量に取り出すことができる。カルスの形成方法として
は、具体的には、例えば、外植体の切片を70重量%エ
チルアルコール水溶液等で滅菌処理した後、上記の切片
を、寒天粉末を含み、さらにオーキシンを所定の濃度で
含む改変ガンボーグ培地等の固体培地に置床し、次い
で、25℃〜27℃程度の暗所に静置して培養(静置培
養)する方法が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。
【0053】そして、培養細胞は、上記固体培地を用い
た簡便な方法で以て、例えば30日〜50日毎、より好
ましくは40日毎に増殖性に優れているカルスを選抜、
継代培養することによって、該カルスを再現性良く、大
量培養することができる。すなわち、上記カルスは、大
量培養可能であるとともに上記化合物を比較的多量に含
んでいるため、該化合物を効率的に製造することができ
る。
【0054】上記のオーキシンとしては、具体的には、
例えば、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸(NA
A;別名、ナフタレン酢酸)、2,4−ジクロロフェノ
キシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロ−インドール酢
酸(4-Cl IAA)、インドール酪酸等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。上記例示のオーキシンのう
ち、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、2,4−ジ
クロロフェノキシ酢酸、および4−クロロインドール酢
酸がより好ましい。固体培地におけるオーキシンの含有
量は、0を越えて1.0mg/L以下が好ましく、0.
5mg/L程度がより好ましい。オーキシンの含有量が
1.0mg/Lを越えると、継代培養を繰り返すにつれ
て、カルスの増殖性が次第に低下する場合がある。4−
クロロインドール酢酸を含む固体培地は、培養細胞にお
ける、2次代謝物である上記化合物の生産性をより向上
させることができる。
【0055】固体培地は、必要に応じて、サイトカイニ
ン、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)等の褐変防止
剤;ジャスモン酸メチル等のエリシタ;オリゴサッカラ
イド;各種ビタミン;等の添加剤をさらに含んでいても
よい。ジャスモン酸メチルを含む固体培地は、培養細胞
における、上記化合物の生産性をより向上させることが
できる。固体培地における添加剤の含有量は、該添加剤
の種類や組み合わせに応じて設定すればよい。
【0056】上記オリゴサッカライドとしては、具体的
には、例えば、食用のオクラの果実(またはその植物
体)から抽出・精製された粘性多糖を酸で加水分解して
なる、2糖〜5糖のオリゴ糖の混合物(以下、KTOS
と略記す)が挙げられる。該オリゴ糖は、例えば、ラム
ノース、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコース等
の単糖で構成されている。上記KTOSは、継代による
培養細胞の老化を抑制する作用を備えている。このた
め、KTOSを含む固体培地を用いることにより、老化
を抑制しながら継代培養を繰り返すことができるので、
培養細胞を増殖させ続けることができる。従って、KT
OSを含む固体培地は、培養細胞に対して、上記化合物
の生産性をより向上させることができる。
【0057】そして、固体培地(または液体培地)は、
4−クロロインドール酢酸および/またはオリゴサッカ
ライドを含むと共に、必要に応じて、1−ナフチル酢酸
および/または2−ナフチル酢酸をさらに含んでいるこ
とが、特に好ましい。
【0058】カルスから上記化合物を取り出す具体的な
方法は、特に限定されるものではないが、抽出を行う方
法が好適であり、有機溶媒を用いて抽出を行う方法が最
適である。抽出を行う具体的な方法としては、例えば、
カルスを凍結乾燥等によって乾燥させ、必要に応じて粉
砕した後、有機溶媒に数分間から数時間浸漬する方法が
挙げられる。抽出条件は、特に限定されるものではない
が、抽出温度は30℃以下であることがより好ましい。
そして、得られた抽出液を、必要に応じて酸および/ま
たは塩基で処理し、次いで液体クロマトグラフィーによ
って分画することにより、上記化合物を単離・精製する
ことができる。
【0059】さらに具体的には、上記化合物(30)〜
(36)は、アビエタン化合物である化合物(37)〜
(39)と比較して極性が低いので、乾燥させたカルス
(以下、乾燥カルスと記す)を、必要に応じて粉砕した
後、n−ヘキサン等の低極性の有機溶媒に浸漬して抽出
し、次いで、得られた抽出液をシリカゲルを用いたカラ
ムクロマトグラフィーで粗分けした後、順相高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)を用いて単離することが
できる。
【0060】一方、上記化合物(37)〜(39)は、
化合物(30)〜(36)と比較して極性が高いので、
該化合物(30)〜(36)の抽出が終了した後の乾燥
カルスを、酢酸エチルやクロロホルム、エーテル等の高
極性の有機溶媒に浸漬して抽出し、次いで、得られた抽
出液を酸・塩基処理することによって共存アルカロイド
やフェノール類を除去し、シリカゲルを用いたカラムク
ロマトグラフィーで粗分けした後、順相高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)を用いて単離することができ
る。
【0061】以下、カルスから上記化合物を取り出す方
法について、詳述する。上記の有機溶媒としては、具体
的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、クロロホルム、n−ヘキ
サン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン等が挙げら
れるが、特に限定されるものではない。これら有機溶媒
は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。上記例示の有機溶媒のうち、メチルアル
コール、n−ヘキサン、および酢酸エチルがより好まし
い。
【0062】上記化合物が抽出された抽出液は、必要に
応じて、不純物として含まれるアルカロイド誘導体等の
塩基性成分や、フェノール誘導体等の酸性成分を分離・
除去するために、酸および/または塩基で処理すること
がより好ましい。抽出液を酸および/または塩基で処理
する方法としては、具体的には、抽出液を酸性水および
/または塩基性水で洗浄する方法が挙げられる。酸およ
び/または塩基で処理した後の抽出液は、中性になるま
で水洗することがより好ましい。
【0063】上記の酸としては、具体的には、例えば、
塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸等の有機
酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。こ
れら酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。従って、酸性水としては、これら
無機酸および/または有機酸の水溶液が挙げられる。該
酸性水のpHは、特に限定されるものではないが、5以
下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。抽出液を
酸性水で洗浄することによって、該抽出液から、アルカ
ロイド誘導体等の塩基性成分を分離・除去することがで
きる。
【0064】また、上記の塩基としては、具体的には、
例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;アン
モニウム化合物等の有機塩基;が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これら塩基は、一種類のみを用
いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。従っ
て、塩基性水としては、これら無機塩基および/または
有機塩基の水溶液が挙げられる。該塩基性水のpHは、
特に限定されるものではないが、9以上がより好まし
く、10以上がさらに好ましく、11以上が特に好まし
い。抽出液を塩基性水で洗浄することによって、該抽出
液から、フェノール誘導体等の酸性成分を分離・除去す
ることができる。尚、上記化合物(30)〜(39)は
いずれも、酸または塩基に対して安定であることが確認
されている。
【0065】上記化合物が抽出された抽出液は、該化合
物の単離が容易となるように、濃縮する(有機溶媒を除
去する)ことがより好ましい。抽出液を濃縮することに
より、中性分画が得られる。
【0066】中性分画から上記化合物を単離・精製する
具体的な方法は、特に限定されるものではないが、液体
クロマトグラフィーを採用する方法が好適である。該液
体クロマトグラフィーとしては、具体的には、例えば、
シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相または順相
の高速液体クロマトグラフィー、遠心液液分配クロマト
グラフィー(CPC)等が挙げられるが、特に限定され
るものではない。上記の高速液体クロマトグラフィー
は、例えば、移動相のpHを考慮して、逆相か順相かを
選択すればよい。
【0067】固定相(充填剤)としては、具体的には、
例えば、シリカゲル、アルミナ、ODS(オクタデシル
シリル)系化合物等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。上記例示の固定相のうち、逆相高速液体ク
ロマトグラフィー等を採用する場合には、ODS系化合
物がより好ましい。
【0068】移動相(キャリア,溶離液)として用いる
のに好適な液体としては、具体的には、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、クロロホルム、n−ヘ
キサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン、アセト
ニトリル、水等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら液体は、一種類のみを用いてもよく、ま
た、二種類以上を併用してもよい。上記例示の液体のう
ち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや順相高速液
体クロマトグラフィー等を採用する場合には、n−ヘキ
サン/酢酸エチル系の混合溶液がより好ましく、逆相高
速液体クロマトグラフィー等を採用する場合には、メチ
ルアルコール/アセトニトリル系の混合溶液がより好ま
しく、遠心液液分配クロマトグラフィー等を採用する場
合には、n−ヘキサン/メチルアルコール系の混合溶液
がより好ましい。
【0069】逆相高速液体クロマトグラフィーにおける
上記液体のpH、即ち、移動相のpHは、緩衝溶液によ
って酸性に調節されていることがより好ましい。つま
り、逆相ODSカラムを用いた単離・精製は、酸性条件
下で行われることがより好ましい。緩衝溶液は、移動相
のpHを5.5以下に調節することができる溶液であれ
ばよく、特に限定されるものではない。該緩衝溶液とし
ては、具体的には、例えば、酢酸アンモニウム水溶液等
が挙げられる。尚、上記の液体と緩衝溶液との組み合わ
せは、特に限定されるものではない。
【0070】逆相液体クロマトグラフィーにおける移動
相のpHを酸性に調節することにより、該液体クロマト
グラフィーの分離能がより向上するので、上記化合物を
より一層選択的に単離することができる。移動相のpH
が中性付近であると、アルカロイド誘導体の分離・除去
が充分に行われない場合がある。また、アルカロイド誘
導体が有する窒素原子に対してプロトン付加が可逆的に
起こるので、分離・除去すべき成分(ピーク)が増加し
たり、該成分(ピーク)がブロードになって分離能が低
下したり、保持時間が変化したりして、成分(ピーク)
を特定(解析)することができなくなる場合がある。
【0071】中性分画を液体クロマトグラフィーを採用
して分離し、上記化合物を単離・精製する具体的な方法
としては、例えば、先ず、シリカゲルフラッシュカラ
ムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーや、遠
心液液分配クロマトグラフィーを採用して、n−ヘキサ
ン/酢酸エチル系の混合溶液(溶離液)を用いて、中性
分画を分離して中程度の極性を有する分画(フラクショ
ン)を取り出し、次に、順相高速液体クロマトグラフ
ィーを採用して、n−ヘキサン/酢酸エチル系の混合溶
液(キャリア)を用いて、該分画を分離し、さらに、
逆相高速液体クロマトグラフィーを採用して、メチルア
ルコールと0.05M酢酸アンモニウム水溶液(pH
4.8)とアセトニトリルとを容量比1:2:2で混合
してなる混合溶液(キャリア)を用いて、上記で得た
分画をさらに分離して上記化合物を含む分画を取り出す
方法が挙げられる。上記の分離・精製操作を行うことに
より、上記化合物と、アルカロイド誘導体等の塩基性成
分やフェノール誘導体等の酸性成分とを分離することが
できるので、上記化合物を精製することができる。そし
て、必要に応じて、上記・の分離・精製操作を繰り
返して行うことにより、上記化合物の純度をさらに向上
させることができる。つまり、上記の分離・精製操作を
行うことにより、上記化合物を効率的に抽出・分離する
ことができる。
【0072】得られた上記化合物を分析する際には、例
えば、上記液体クロマトグラフィーを採用して、上記単
離・精製条件と同様の条件で分析操作を行えばよい。つ
まり、分析は、酸性条件下で行われることがより好まし
い。移動相のpHを酸性に調節することにより、液体ク
ロマトグラフィーの分離能がより向上するので、上記化
合物をより一層正確に分析することができる。移動相の
pHが中性付近であると、分離・除去すべき成分(ピー
ク)が増加したり、該成分(ピーク)がブロードになっ
て分離能が低下したり、保持時間が変化したりして、成
分(ピーク)を特定(解析)することができなくなる場
合がある。尚、上記化合物の分析方法は、特に限定され
るものではない。
【0073】上記抽出等の一連の取り出し操作を行うこ
とにより、化合物(30)〜(39)が得られる。前記
化合物(30)〜(39)は何れも、複数の抗癌剤に対
する耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に対する
多剤耐性癌克服作用を有している。それゆえ、上記化学
式(30)〜(39)で表される化合物群より選ばれる
少なくとも一種の化合物を含む多剤耐性癌克服剤は、該
癌細胞に好適に投与することができる。
【0074】これらの化合物(30)〜(39)は、上
記説明(カルスからの取り出し方法の説明)において述
べたように、酸または塩基に対して安定であり、それゆ
え、例えば生体内で分解(胃液による分解、胆液による
分解等)されるおそれが少ない。従って、化合物(3
0)〜(39)より選ばれる少なくとも一種の化合物を
含んでなる本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は、例え
ば、その投与方法や投与場所等の制限が少なく、広範囲
な適用が可能であると期待される。
【0075】特に、化合物(31),(33),(3
6)は、ベラパミルを上回る多剤耐性癌克服作用を有す
る高活性化合物であることから、それ単独で特に有効な
(新規な)多剤耐性癌克服剤となり得る。
【0076】また、上記化合物(30)〜(39)は、
日本イチイの組織を培養して得られるカルスから取り出
すことができる。上記カルスは少量の外植体より誘導さ
れ、簡便な設備で以て再現性良く大量培養することがで
きる。加えて、該カルスは、多剤耐性癌克服作用を有す
る上記化合物を比較的多量に含んでいる。即ち、本発明
にかかる製造方法によれば、環境を保全しながら、日本
イチイから上記化合物(30)〜(39)を効率的に製
造することができる。これにより、癌細胞に投与するの
に好適な多剤耐性癌克服剤を、効率的に製造することが
できる。
【0077】上記の化学式(40)〜(47)で表され
る化合物は、それぞれ単独で、少なくともP−糖蛋白質
による抗癌剤の能動輸送の阻害剤(以下、P−糖蛋白質
阻害剤と称する)としての機能を有し、本発明にかかる
多剤耐性癌克服剤となりうる。また、上記の化合物のう
ち、化学式(40),(41),(43),(44),
(45),(46),(47)で表される化合物は、従
来の多剤耐性癌克服剤であるベラパミルと比較して多剤
耐性癌克服作用が高く、以下、高活性化合物と称する。
本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は、これらの高活性化
合物の少なくとも一つを含んでいることがより好まし
い。
【0078】上記の化合物が多剤耐性癌克服作用を有す
ることは、本願発明者が新たに見出したことである。ま
た、上記の化学式(41)〜(43)で表される3種の
タキシニン化合物はいずれも、本発明にかかる新規なタ
キシニン化合物である。尚、以下、必要に応じて、上記
化学式(40)〜(47)で表される化合物を順に、化
合物(40)〜(47)と称する。また、化合物(4
0)〜(47)を総称する場合には、単に、本発明のタ
キサン関連化合物と記載する場合もある。
【0079】尚、本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は必
要に応じて、例えば、癌細胞の特定部位(またはP−糖
蛋白質)と特異的に結合可能な抗体や、抗癌剤等をさら
に含んで構成されていてもよい。これにより、標的とす
べき(多剤耐性)癌細胞への多剤耐性癌克服剤の供給を
確実とする効果や、該癌細胞への抗癌剤の同時供給が可
能となる効果等を実現することができる。これら多剤耐
性癌克服剤の投与方法は特に限定されるものではなく、
多剤耐性癌克服剤に含まれる物質(上記化合物(40)
〜(47)や、抗体、抗癌剤等を指す)の物性等に応じ
た最適なドラッグデリバリーシステムを採用すればよ
い。
【0080】本発明にかかる多剤耐性癌克服剤の製造方
法は、上記説明の多剤耐性癌克服剤に含まれる化合物
(40)を、「日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb. et
Zucc.)の組織」より誘導されるカルスから取り出す工
程を含む方法(以下、製造方法Aと称する場合がある)
である。また、本発明にかかる他の多剤耐性癌克服剤の
製造方法は、上記説明の多剤耐性癌克服剤に含まれる化
合物(41)〜(47)の少なくとも一つを、日本イチ
イの「針葉部」から取り出す工程を含む方法(以下、製
造方法Bと称する場合がある)である。以下、はじめに
上記製造方法Aについて説明を行い、製造方法Bに関し
ては、製造方法Aとの相違点のみを記載する。
【0081】本発明において「日本イチイの組織」と
は、日本イチイに由来する組織、より具体的には、植物
体(根部、茎部、葉部を成す各組織、すなわち栄養器官
全体を指す)、並びに、その花、花粉、及び果実(生殖
器官)を成す組織のことを指す。尚、ここでいう「葉
部」とは、「葉身」と「葉柄」とから構成される単位を
指し、また、「果実」とは、「仮種衣(アリル)」およ
び「種子」を含む概念である。これら日本イチイの組織
の中でも、特にその「針葉部」は、A)培養細胞の増殖
性、即ち、カルスの誘導性に特に優れている点、及び、
B)組織の採取が比較的容易である上、植物体に大きな
ダメージを与えることがない点等で、より好適である。
【0082】上記「針葉部」とは、「葉身」、「葉
柄」、並びに、「葉部」が複数枚付いた「小枝」、さら
には、「新芽(その原基であっても良い)」や該「新
芽」が付いた「若茎」も含まれるものとする。これら
「針葉部」のうち、特に、秋季並びに冬季に採取した
「若茎」(直径2mm〜3mm程度の緑色若茎部)が、
カルスの誘導性に特に優れると共に、何代にもわたる継
代培養を行っても、上記化合物(40)の生産量が低下
しないので、特に好ましい。また、シュートや芽生え等
の若い組織も、カルス誘導のための組織として好適に使
用することができる。
【0083】カルス誘導用の「日本イチイの組織」(以
下、場合によっては外植体と称する)の採取時期は特に
限定されるものではないが、上記組織を植物体から得る
場合には、採取前1ヵ月間の平均気温が18℃以下、よ
り好ましく5℃以下である環境下で生育された後に採取
されることが好ましい。尚、この環境は、人工的に作ら
れるものであってもよい。
【0084】外植体からのカルス誘導およびその培養
は、特別な添加剤(添加物)や培養条件を用いることな
く、一般的な手法で以て、例えば、寒天培地等の市販の
植物培養培地(固体培地)とオーキシンとを用いること
によって、容易に実施することができる。また、場合に
よっては、オーキシンを含んでなる液体培地を用いて振
盪培養を行ってもよい。このように、外植体から容易に
カルスを誘導することができるので、簡便な設備で以て
大量培養することができ、該カルスから上記化合物(4
0)を大量に取り出すことができる。カルスの形成方法
としては、具体的には、例えば、外植体の切片を70重
量(質量)%エチルアルコール水溶液等で滅菌処理した
後、上記の切片を、寒天粉末を含み、さらにオーキシン
を所定の濃度で含む改変ガンボーグ培地等の固体培地に
置床し、次いで、25℃〜27℃程度の暗所に静置して
培養(静置培養)する方法が挙げられるが、特に限定さ
れるものではない。
【0085】そして、培養細胞は、上記固体培地を用い
た簡便な方法で以て、例えば30日〜50日毎、より好
ましくは40日毎に増殖性に優れているカルスを選抜、
継代培養することによって、該カルスを再現性良く、大
量培養することができる。すなわち、上記カルスは、大
量培養可能であるとともに上記化合物(40)を比較的
多量に含んでいるため、該化合物(40)を効率的に製
造することができる。
【0086】上記のオーキシンとしては、具体的には、
例えば、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸(NA
A;別名、ナフタレン酢酸)、2,4−ジクロロフェノ
キシ酢酸、インドール酢酸、4−クロロインドール酢酸
(4-Cl IAA)、インドール酪酸等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。上記例示のオーキシンのうち、
1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、2,4−ジクロ
ロフェノキシ酢酸、および4−クロロインドール酢酸が
より好ましい。固体培地におけるオーキシンの含有量
は、0を越えて1.0mg/L以下が好ましく、0.5
mg/L程度がより好ましい。オーキシンの含有量が
1.0mg/Lを越えると、継代培養を繰り返すにつれ
て、カルスの増殖性が次第に低下する場合がある。4−
クロロインドール酢酸を含む固体培地は、培養細胞にお
ける、2次代謝物である上記化合物(40)の生産性を
より向上させることができる。
【0087】固体培地は、必要に応じて、サイトカイニ
ン、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)等の褐変防止
剤;ジャスモン酸メチル等のエリシタ;オリゴサッカラ
イド;各種ビタミン;等の添加剤をさらに含んでいても
よい。ジャスモン酸メチルを含む固体培地は、培養細胞
における、上記化合物(40)の生産性をより向上させ
ることができる。固体培地における添加剤の含有量は、
該添加剤の種類や組み合わせに応じて設定すればよい。
【0088】上記オリゴサッカライドとしては、具体的
には、例えば、食用のオクラの果実(またはその植物
体)から抽出・精製された粘性多糖を酸で加水分解して
なる、2糖〜5糖のオリゴ糖の混合物(以下、KTOS
と略記す)が挙げられる。該オリゴ糖は、例えば、ラム
ノース、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコース等
の単糖で構成されている。上記KTOSは、継代による
培養細胞の老化を抑制する作用を備えている。このた
め、KTOSを含む固体培地を用いることにより、老化
を抑制しながら継代培養を繰り返すことができるので、
培養細胞を増殖させ続けることができる。従って、KT
OSを含む固体培地は、培養細胞における、上記化合物
(40)の生産性をより向上させることができる。
【0089】そして、固体培地(または液体培地)は、
4−クロロインドール酢酸および/またはオリゴサッカ
ライドを含むと共に、必要に応じて、1−ナフチル酢酸
および/または2−ナフチル酢酸をさらに含んでいるこ
とが、特に好ましい。
【0090】カルスから上記化合物(40)を取り出す
具体的な方法は、特に限定されるものではないが、抽出
を行う方法が好適であり、有機溶媒を用いて抽出を行う
方法が最適である。抽出を行う具体的な方法としては、
例えば、カルスを凍結乾燥等によって乾燥させ、必要に
応じて粉砕した後、有機溶媒に数分間から数時間浸漬す
る方法が挙げられる。抽出条件は、特に限定されるもの
ではないが、抽出温度は30℃以下であることがより好
ましい。そして、得られた抽出液を、必要に応じて酸お
よび/または塩基で処理し、次いで液体クロマトグラフ
ィーによって分画することにより、上記化合物(40)
を単離・精製することができる。
【0091】以下、カルスから上記化合物(40)を取
り出す方法について、詳述する。上記の有機溶媒として
は、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルア
ルコール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、n
−ヘキサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。これら有
機溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。上記例示の有機溶媒のうち、メチ
ルアルコール、n−ヘキサン、および酢酸エチルがより
好ましい。
【0092】上記化合物(40)が抽出された抽出液
は、必要に応じて、不純物として含まれるアルカロイド
誘導体等の塩基性成分や、フェノール誘導体等の酸性成
分を分離・除去するために、酸および/または塩基で処
理することがより好ましい。抽出液を酸および/または
塩基で処理する方法としては、具体的には、抽出液を酸
性水および/または塩基性水で洗浄する方法が挙げられ
る。
【0093】上記の酸としては、具体的には、例えば、
塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸等の有機
酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。こ
れら酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。従って、酸性水としては、これら
無機酸および/または有機酸の水溶液が挙げられる。該
酸性水のpHは、特に限定されるものではないが、5以
下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。抽出液を
酸性水で洗浄することによって、該抽出液から、アルカ
ロイド誘導体等の塩基性成分を分離・除去することがで
きる。
【0094】尚、タキサン関連化合物の中には、酸で環
開裂(分解)し易いオキセタン骨格を分子構造に有する
ものがある。従って、一般に、酸で処理を行うと、該オ
キセタン骨格の環開裂が生じてタキサン関連化合物が破
壊されてしまうと考えられている。ところが、本願発明
者等が検討したところ、本発明のタキサン関連化合物
は、酸で処理を行ってもオキセタン骨格の環開裂が生じ
ないことが判明した。それゆえ、酸で処理を行うことに
よって、本発明のタキサン関連化合物と、アルカロイド
誘導体等の成分とを分離することができる。
【0095】また、上記の塩基としては、具体的には、
例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;アン
モニウム化合物等の有機塩基;が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これら塩基は、一種類のみを用
いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。従っ
て、塩基性水としては、これら無機塩基および/または
有機塩基の水溶液が挙げられる。該塩基性水のpHは、
特に限定されるものではないが、9以上がより好まし
く、10以上がさらに好ましく、11以上が特に好まし
い。抽出液を塩基性水で洗浄することによって、該抽出
液から、フェノール誘導体等の酸性成分を分離・除去す
ることができる。
【0096】尚、タキサン関連化合物の中には、塩基で
加水分解され易いエステルを分子構造に有するものがあ
る。従って、一般に、塩基で処理を行うと、該エステル
の加水分解が生じてタキサン関連化合物が破壊されてし
まうと考えられている。ところが、本願発明者等が検討
したところ、本発明のタキサン関連化合物は、塩基で処
理を行ってもエステルの加水分解が生じないことが判明
した。それゆえ、塩基で処理を行うことによって、本発
明のタキサン関連化合物と、フェノール誘導体等の成分
とを分離することができる。
【0097】酸および/または塩基で処理した後の抽出
液は、中性になるまで水洗することがより好ましい。ま
た、上記化合物(40)が抽出された抽出液(水洗する
場合には水洗後のもの)は、該化合物(40)の単離が
容易となるように、濃縮する(有機溶媒を除去する)こ
とがより好ましい。抽出液を濃縮することにより、中性
分画が得られる。
【0098】中性分画から上記化合物(40)を単離・
精製する具体的な方法は、特に限定されるものではない
が、液体クロマトグラフィーを採用する方法が好適であ
る。該液体クロマトグラフィーとしては、具体的には、
例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相ま
たは順相の高速液体クロマトグラフィー、遠心液液分配
クロマトグラフィー(CPC)等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。上記の高速液体クロマトグラ
フィーは、例えば、移動相のpHを考慮して、逆相か順
相かを選択すればよい。
【0099】固定相(充填剤)としては、具体的には、
例えば、シリカゲル、アルミナ、ODS(オクタデシル
シリル)系化合物等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。上記例示の固定相のうち、逆相高速液体ク
ロマトグラフィー等を採用する場合には、ODS系化合
物がより好ましい。
【0100】移動相(キャリア,溶離液)として用いる
のに好適な液体としては、具体的には、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、クロロホルム、n−ヘ
キサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン、アセト
ニトリル、水等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら液体は、一種類のみを用いてもよく、ま
た、二種類以上を併用してもよい。上記例示の液体のう
ち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや順相高速液
体クロマトグラフィー等を採用する場合には、n−ヘキ
サン/酢酸エチル系の混合溶液がより好ましく、逆相高
速液体クロマトグラフィー等を採用する場合には、メチ
ルアルコール/アセトニトリル系の混合溶液がより好ま
しく、遠心液液分配クロマトグラフィー等を採用する場
合には、n−ヘキサン/メチルアルコール系の混合溶液
がより好ましい。
【0101】逆相高速液体クロマトグラフィーにおける
上記液体のpH、即ち、移動相のpHは、緩衝溶液によ
って酸性に調節されていることがより好ましい。つま
り、逆相ODSカラムを用いた単離・精製は、酸性条件
下で行われることがより好ましい。緩衝溶液は、移動相
のpHを5.5以下に調節することができる溶液であれ
ばよく、特に限定されるものではない。該緩衝溶液とし
ては、具体的には、例えば、酢酸アンモニウム水溶液等
が挙げられる。尚、上記の液体と緩衝溶液との組み合わ
せは、特に限定されるものではない。
【0102】逆相液体クロマトグラフィーにおける移動
相のpHを酸性に調節することにより、該液体クロマト
グラフィーの分離能がより向上するので、上記化合物
(40)をより一層選択的に単離することができる。移
動相のpHが中性付近であると、アルカロイド誘導体の
分離・除去が充分に行われない場合がある。また、アル
カロイド誘導体が有する窒素原子に対してプロトン付加
が可逆的に起こるので、分離・除去すべき成分(ピー
ク)が増加したり、該成分(ピーク)がブロードになっ
て分離能が低下したり、保持時間が変化したりして、成
分(ピーク)を特定(解析)することができなくなる場
合がある。
【0103】中性分画を液体クロマトグラフィーを採用
して分離し、上記化合物(40)を単離・精製する具体
的な方法としては、例えば、先ず、シリカゲルフラッ
シュカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ーや、遠心液液分配クロマトグラフィーを採用して、n
−ヘキサン/酢酸エチル系の混合溶液(溶離液)を用い
て、中性分画を分離して中程度の極性を有する分画(フ
ラクション)を取り出し、次に、順相高速液体クロマ
トグラフィーを採用して、n−ヘキサン/酢酸エチル系
の混合溶液(キャリア)を用いて、該分画を分離し、さ
らに、逆相高速液体クロマトグラフィーを採用して、
メチルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム水溶液
(pH4.8)とアセトニトリルとを容量比1:2:2
で混合してなる混合溶液(キャリア)を用いて、上記
で得た分画をさらに分離して上記化合物(40)を含む
分画を取り出す方法が挙げられる。上記の分離・精製操
作を行うことにより、上記化合物(40)と、アルカロ
イド誘導体等の塩基性成分やフェノール誘導体等の酸性
成分とを分離することができるので、上記化合物(4
0)を精製することができる。そして、必要に応じて、
上記・の分離・精製操作を繰り返して行うことによ
り、上記化合物(40)の純度をさらに向上させること
ができる。つまり、上記の分離・精製操作を行うことに
より、上記化合物(40)を効率的に抽出・分離するこ
とができる。
【0104】一方、上記製造方法Bにおいて、化合物
(41)〜(47)の少なくとも一つを取り出す工程で
は、例えば、上記説明の日本イチイの「針葉部」を必要
に応じて粉砕し、有機溶媒を用いて針葉部粉砕物の抽出
を行った後、得られ抽出液を酸および/または塩基で処
理し、次いで液体クロマトグラフィーによって分画する
ことにより、上記化合物が取り出される。有機溶媒を用
いた抽出、抽出液に対する酸および/または塩基での処
理、並びに、液体クロマトグラフィーによる分画、の各
工程は、上記化合物(40)をカルスから取り出す場合
と同様にして行うことができるため、その詳細な説明を
省略する。
【0105】尚、製造方法Bでは、上記抽出操作を行う
前に、針葉部に含まれる油分を除去(脱脂)する目的
で、該針葉部を有機溶媒で洗浄してもよい。この有機溶
媒は、針葉部粉砕物の抽出に用いられる有機溶媒と同様
のものを使用すればよく、なかでもn−ヘキサンが、針
葉部に含まれる油分を除去するのに好適である。油分の
除去は、特に生針葉部を使用する場合に必要とされる。
【0106】上記何れかの方法により得られた上記化合
物(40)〜(47)を分析する際には、例えば、上記
液体クロマトグラフィーを採用して、上記分離・精製条
件と同様の条件で分析操作を行えばよい。つまり、分析
は、酸性条件下で行われることがより好ましい。移動相
のpHを酸性に調節することにより、液体クロマトグラ
フィーの分離能がより向上するので、上記化合物(4
0)〜(47)をより一層正確に分析することができ
る。移動相のpHが中性付近であると、分離・除去すべ
き成分(ピーク)が増加したり、該成分(ピーク)がブ
ロードになって分離能が低下したり、保持時間が変化し
たりして、成分(ピーク)を特定(解析)することがで
きなくなる場合がある。尚、上記化合物(40)〜(4
7)の分析方法は、特に限定されるものではない。
【0107】上記抽出等の一連の取り出し操作を行うこ
とにより、化合物(40)〜(47)が得られる。前記
化合物(40)〜(47)は何れも、複数の抗癌剤に対
する耐性を獲得した癌細胞(多剤耐性癌細胞)に対する
多剤耐性癌克服作用を有している。それゆえ、上記化学
式(40)〜(47)で表される化合物群より選ばれる
少なくとも一種の化合物を含む多剤耐性癌克服剤は、該
癌細胞に好適に投与することができる。
【0108】これらの化合物(40)〜(47)は、上
記説明(カルスまたは針葉部からの取り出し方法の説
明)において述べたように、酸または塩基に対して安定
であり、それゆえ、例えば生体内で分解(胃液による分
解、胆液による分解等)されるおそれが少ない。従っ
て、化合物(40)〜(47)より選ばれる少なくとも
一種の化合物を含んでなる本発明にかかる多剤耐性癌克
服剤は、例えば、その投与方法や投与場所等の制限が少
なく、広範囲な適用が可能であると期待される。
【0109】特に、化合物(40),(41),(4
3),(44),(45),(46),(47)は、ベ
ラパミルを上回る多剤耐性癌克服作用を有する高活性化
合物であることから、それ単独で特に有効な(新規な)
多剤耐性癌克服剤となり得る。
【0110】また、上記化合物(40)は、日本イチイ
の組織を培養して得られるカルスから取り出すことがで
きる。上記カルスは少量の外植体より誘導され、簡便な
設備で以て再現性良く大量培養することができる。加え
て、該カルスは、多剤耐性癌克服作用を有する上記化合
物を比較的多量に含んでいる。即ち、本発明にかかる製
造方法Aによれば、環境を保全しながら、日本イチイか
ら上記化合物(40)を効率的に製造することができ
る。これにより、癌細胞に投与するのに好適な多剤耐性
癌克服剤を、効率的に製造することができる。
【0111】一方、上記化合物(41)〜(47)は、
日本イチイの針葉部から取り出すことができる。即ち、
本発明にかかる製造方法Bによれば、毎年再生される針
葉部を使用するので、環境を保全しながら、日本イチイ
から上記化合物(41)〜(47)を製造することがで
きる。これにより、癌細胞に投与するのに好適な多剤耐
性癌克服剤を、環境を保全しながら製造することができ
る。
【0112】このようにして製造される式(6)〜(4
7)で表される化合物以外の化合物で式(1)〜(5)
の範囲に属する化合物の詳細な製造方法を下記する。
【0113】式(6)〜(47)で表される化合物は例
えばアセチル基、式
【化127】 等で示されるアシル基を加水分解で脱アシル化して水酸
基とし、所望によりアシル化反応で異なるアシル基を導
入することにより水酸基をエステル化するか、あるいは
脱アシル化生成した水酸基をエーテル化するかあるい
は、エポキシ基を開裂して水酸基を生成させてこれを上
記のようにエステル化またはエーテル化するか、あるい
【化128】 を還元して
【化129】 とし、この水酸基を上記と同様ににエステル化あるいは
エーテル化する等自体公知の化学修飾反応によって、容
易に製造される。このための加水分解反応、エステル化
反応、エーテル化反応還元反応は常法に従って行われて
よい。これらの操作によって、水酸基は上記した
【化130】 −O−Z等の置換基に変換される、式(6)〜(4
7)以外の式(1)〜(5)で表される化合物が容易に
製造できる。
【0114】式(1)〜(47)で表される化合物は、
上記した抗癌作用物質蓄積増強作用または抗癌作用物質
排出抑制作用に基づき、癌克服剤、特に多剤耐性癌克服
剤として有用である。該多剤耐性癌克服剤は、多剤耐性
を有する癌細胞(多剤耐性癌細胞)内に取り込まれた様
々な抗癌作用物質(抗癌剤)を、多剤耐性癌細胞外に排
出する複数の作用機構のいずれかを阻害する作用を有す
るものである。多剤耐性でなくて、通常の抗癌作用物質
に耐性を有する癌細胞に対しても、式(1)〜(47)
の化合物は同じ作用機構を示す(以下同じ)。また、耐
性癌細胞に対してだけではなくして、通常の癌細胞に対
しても、式(1)〜(47)で表される化合物は同じ作
用機構を示す(以下同じ)。
【0115】多剤耐性癌細胞外に排出する作用機構とし
て、具体的には、例えば、多剤耐性癌細胞において存在
または発現するP−糖蛋白質が、多剤耐性癌細胞内に取
り込まれた様々な抗癌剤と結合し、これらを能動輸送に
より排出する機構等を挙げることができるが特にこれに
限定されるものではない。本発明はこのようは作用機構
によって、優れた癌治療に貢献する。
【0116】上記の化学式(1)〜(47)で表される
化合物は、それぞれ単独で、少なくともP−糖蛋白質に
よる抗癌剤の能動輸送の阻害剤(以下、P−糖蛋白質阻
害剤と称する)としての機能を有し、本発明にかかる癌
克服剤もしくは多剤耐性癌克服剤となりうる。また、上
記の化合物のうち多くの化合物、例えば式(40)〜
(47)の化合物等で表される多くの化合物は、従来の
多剤耐性癌克服剤であるベラパミルと比較して多剤耐性
癌克服作用が高く、以下、高活性化合物と称する。本発
明にかかる多剤耐性癌克服剤は、これらの高活性化合物
の少なくとも一つを含んでいることがより好ましい。
【0117】本発明に使用される化合物が多剤耐性癌克
服作用を有することは、本願発明者が新たに見出したこ
とである。また、式(6)〜(47)で示される化合物
を化合物(6)〜(47)と称することもある。
【0118】尚、本発明にかかる多剤耐性癌克服剤は必
要に応じて、例えば、癌細胞の特定部位(またはP−糖
蛋白質)と特異的に結合可能な抗体や、抗癌作用物質
(抗癌剤)等をさらに含んで構成されていてもよい。こ
れにより、標的とすべき(多剤耐性)癌細胞への多剤耐
性癌克服剤の供給を確実とする効果や、該癌細胞への抗
癌剤の同時供給が可能となる効果等を実現することがで
きる。これら多剤耐性癌克服剤の投与方法は特に限定さ
れるものではなく、多剤耐性癌克服剤に含まれる物質
(上記式(1)〜(47)で表される化合物や、抗体、
抗癌作用物質を指す)の物性等に応じた自体公知の最適
なドラッグデリバリーシステムを採用すればよい。
【0119】本発明で使用される化合物(1)〜(4
7)以外の抗癌作用物質としては具体的には例えば、シ
クロホスファミド(CPM, Cyclophosphamide)、ナイト
ロジェンマスタード−N−オキシド(HN2-oxide, Nitro
gen-mustard-N-oxide)、イフォスファミド(Ifosfamid
e)、メルファラン(L-PAM, Melphalan)、クロラムブ
チル(CHL, Chlorambucil)、イミダゾールカルボキサ
ミド(DTIC, Imidazole carboxamide)等のクロル−エ
チル−アミン系化合物;例えばトリエチレンフォスファ
ラミド(Thio-TEPA, Tri-ethylene-phospharamide)、
カルボコン(CQ, Carboquone)等のアジリジン(Aziliz
in)系化合物;例えばブスルファン(BUS, Buslfun)、
イムプロスルファントシレート(864-T, Improsulfan-t
osilate)等のスルフォン酸エステル系化合物;例えば
ミトブロニトール(DBM, Mitobronitol)等のエポキシ
ド化合物;例えばニムスチン(ACNU, Nimustine-HCl)
等のニトロソ・ウレア系化合物;例えばカルムスチン
(BCNU, Carmustine)、ロムスチン(CCNU, lomustin
e)、セムスチン(methyl-CCNU, semustine)、GAN
U等のその他のアルキル化剤;例えばアメプテリン(MT
X, Amepterin)等の葉酸拮抗剤;例えば5−フルオロウ
ラシル(5-FU, 5-Fluoro-uracil)、テガフール(Tegaf
ur)、カルモフール(Carmofur)、シタラビン(Ara-C,
Cytarabin)、エノシタビン(Enocitabine)、テガフ
ール・ウラシル(Tegafur-uracil)、アンシタビン(An
citabine)等のピリミジン代謝拮抗剤(Pyrimidine ant
agonist);例えばメルカプトプリン(6-MP, 6-Mercapt
opurine)、チオイノシン(6MPR, Thioinosine)等のプ
リン代謝拮抗剤(Purine antagonist);例えばビンク
リスチン(VCR, Vincristine)、ビンブラスチン(VLB,
Vinblastine)、ビンデシン(VDS,Vindestine)等の植
物アルカロイド;例えばマイトマイシンC(MMC, Mitom
ycin C)、ドキソルビシン(Doxorubicin ADR;ADM, Adr
iamycin)、アクラルビシン(ACR, Aclarubicine)、ブ
レオマイシン(BLM, Bleomycin)、ペプレオマイシン
(PEP, Pepleomycin)、クロモマイシンA3(CHRM, ch
romomycine)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ネ
オカルチノスタチン(NCS, neocarzinostatin)、ネオ
スラマイシン(NTM, neothramycin)等の抗癌性抗生物
質(Antibiotics);例えばフォスフェストロール(Fos
festrol)、エピチオスタノール(Epitiostanol)、メ
ピチオスタン(Mepitiostane)、エチニルエストラジオ
ール(Ethinylestradiol)、エストラムスチン(Estram
ustine)等の女性ホルモン;例えばフルオキシメステロ
ン(Fluoxymesterone)、プロピオン酸テストステロン
(Testosterone propionate)、プロピオン酸ドロモス
タノロン(Dromostanolone propionate)等の男性ホル
モン;例えばタモキシフェン(Tamoxifen)等のエステ
ロゲン拮抗剤;例えばシスプラチン(Cisplatinum)、
CBDCA(JM-8, Carboplatin)、CHIP(JM9)、
TNO−6等のDNAキレート剤;例えばインターフェ
ロン(IFN、Interferon;例えばIFN−α、IFN
−β、IFN−γ)等のBRM(Biological response
modifires)が挙げられる。
【0120】もっとも式(1)〜(47)で示される化
合物は上記したように、抗癌作用物質蓄積増強作用また
は抗癌作用物質排出抑制作用以外に抗癌作用をも示すか
ら、上記の抗癌作用物質の併用もしくは共存は必ずしも
必要ではない。従って、本発明の医薬は式(1)〜(4
7)で示される化合物と所望によりそれ以外の上記の抗
癌作用物質とを癌患者に投与することによって、癌治療
効果を奏する事ができる。投与に際しては、式(1)〜
(47)の化合物とそれ以外の抗癌作用物質を一緒に含
む医薬製剤を投与してもよいし、式(1)〜(47)の
化合物を含む製剤とそれ以外の抗癌作用物質を含む製剤
を別々に製造しておき、それらを同時にあるいは別々に
投与するようにしてもよい。もちろん、式(1)〜(4
7)で示される化合物以外の抗癌作用物質は単一種類で
もよいし、複数種類でもよい。複数種類の場合は、それ
ぞれ別の製剤であってもよい。それは同時に投与されて
もよいし、別々に投与されてもよい。
【0121】本発明の医薬は、抗癌剤として、例えば、
白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などの非固形癌、あるい
は胃がん、食道癌、大腸、直腸、膵臓癌、肝臓癌、腎臓
癌、膀胱癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、
皮膚癌、脳腫瘍癌などの固形癌の治療に用いることがで
きる。
【0122】本発明の医薬としては、有効成分である上
記物質(すなわち上記式(1)〜(47)で示される化
合物あるいはそれと抗癌作用物質)をそのまま投与して
もよいが、一般的には、有効成分である上記の物質とさ
らに1または2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物
の形態で投与することが望ましい。このような医薬組成
物は、それ自体製剤学の分野で周知または慣用の方法に
従って製造することが可能である。また、医薬組成物の
形態の本発明の医薬には、所望により、上記した以外の
他の医薬の有効成分が1または2以上含まれていてもよ
い。なお、本発明の医薬は、ヒトを含む哺乳類動物に摘
要可能である。
【0123】本発明の医薬の投与経路は特に限定され
ず、経口または非経口投与のいずれかから治療及び/ま
たは予防のために最も効果的な投与経路を適宜選択する
ことができる。非経口投与としては、気道内、直腸内、
皮下、筋肉内、及び静脈内などの投与経路を挙げること
ができる。経口投与に適する製剤の例としては、例え
ば、錠剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、溶液剤、カプセ
ル剤、または懸濁剤などを挙げることができ、非経口投
与に適する製剤の例と経粘膜吸収剤などを挙げることが
できる。
【0124】経口投与に適する液体製剤の製造には、例
えば、水、蔗糖、ソルビット、果糖などの糖類;ポリエ
チレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコ
ール類;ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類;p−
ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などの製材
用添加物を用いることができる。また、カプセル剤、錠
剤、散剤、または顆粒剤などの固形製剤の製造には、例
えば、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニットなどの賦形
剤;澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤;ステアリン
酸マグネシウム、タルクなどの潤沢剤;ポリビニルアル
コール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなど
の結合剤;脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリ
ンなどの可塑剤を用いることができる。
【0125】非経口投与に適する製剤のうち注射剤や点
滴剤などの血管内投与用製剤は、好ましくはヒト血液と
等張の水性媒体を用いて調製することができる。例え
ば、注射剤は、塩溶液,ブドウ糖溶液,または塩水とブ
ドウ糖溶液の混合物から選ばれる水性媒体を用い、常法
に従って適当な助剤と共に溶液、懸濁液、または分散液
として調製することができる。腸内投与のための座剤
は、例えばカカオ脂、水素化脂肪または水素化カルボン
酸などの担体を用いて調製することができる。噴霧剤
は、ヒトの口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分
である上記の物質を微細な粒子として分散させて吸収を
促進することのできる単体を用いて調製することができ
る。このような担体として、例えば、乳糖またはグルセ
リンなどのを用いることができる。有効成分である上記
物質及び用いる担体の性質により、エアロゾルやドライ
パウダーなどの形態の調剤として調製することができ
る。非経口用の製剤の製造には、例えば、希釈剤、香
料、防腐剤、賦形剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可
塑剤などから選択される1または2以上の調剤用添加物
を用いることができる。なお、本発明の医薬の形態及び
その製造方法は、上記に具体的に説明したものに限定さ
れることはない。
【0126】本発明の医薬の投与料及び投与頻度は特に
限定されず、有効成分である上記物質の種類、治療すべ
き病態の種類、投与経路、患者の年齢及び体重、症状、
及び疾患の重篤度などの種々の条件に応じて医師の指示
に従って適宜選択することが可能である。例えば、式
(1)〜(47)で示される化合物またはそれ以外の抗
癌作用物質の使用量については、成人一日あたり0.0
1〜200mg/kg(好ましくは5〜150mg/k
g)程度を一日一回または数日から数週間に一回の割合
で投与することができるが、投与量及び投与頻度はこの
特定の例に限定されることはない。また、本発明の医薬
は他の抗癌作用物質(抗癌剤、抗腫瘍剤)と組み合わせ
て用いることができ、一般的には、作用機序の異なる数
種類の抗癌作用物質と組み合わせて用いることが好まし
い。
【0127】また、式(1)〜(47)の化合物は抗菌
作用を示し、例えばBacillus Subtilis 等に対して、≦
1000γ/ccの最小発育阻止濃度(Minimum Inhibi
toryConcentration)を示すので、これを常法により、
軟膏として例えば湿疹、吹出物、おでき、にきび治療の
ための皮膚外用剤とすることができる。
【0128】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるもの
ではない。
【0129】〔多剤耐性癌克服作用の測定方法〕前記化
合物群に属する幾つかの化合物の多剤耐性癌克服作用
(ここでは、P−糖蛋白質阻害剤としての機能)を、以
下に示すバイオアッセイ法にて測定した。該バイオアッ
セイ法は、2780AD細胞(ヒト卵巣癌細胞A278
0より樹立された多剤耐性癌細胞)、ビンクリスチン
(抗癌剤の一種)、および、P−糖蛋白質阻害剤の候補
物質(前記化合物群に属する化合物に相当)を、それぞ
れ所定量含んでなる反応溶液をウェルにアプライし、所
定の温度条件下で一定時間反応させることにより行っ
た。
【0130】2780AD細胞にビンクリスチンを作用
させると、ビンクリスチンは該細胞に一旦は取り込まれ
るものの、細胞膜に存在或いは発現するP−糖蛋白質に
より細胞外へ排出されて、その総取り込み量(蓄積量)
は低い値を示す。しかし、P−糖蛋白質阻害剤としての
機能を有する物質をさらに加えると、ビンクリスチンの
2780AD細胞への総取り込み量が増加する。上記の
測定方法は、この現象を利用したものである。
【0131】各測定試験のコントロールとしては、上記
反応溶液よりP−糖蛋白質阻害剤の候補物質を除いたも
のを使用し、該コントロールと比較することにより、前
記化合物群に属する幾つかの化合物の多剤耐性癌克服作
用を判定した。また、コントロールとの比較に加えてベ
ラパミルを対照薬剤とした比較実験も併せて行い、ベラ
パミルを上回る多剤耐性癌克服作用を有する化合物(高
活性化合物)の評価を行った。尚、ベラパミルを対照薬
剤とした比較とは、各反応溶液において、P−糖蛋白質
阻害剤の候補物質に代えて、これと同濃度のベラパミル
を用いて行われる比較実験のことを指す。
【0132】尚、上記の測定方法に関する参考文献とし
ては、例えば、Rogan, A.M., et al. Reversal of adri
amycin resistance by verapamil in human ovarian ca
ncer. Science, 224: 994-996, 1984 や、Broxterman,
H.J., et al. Increase of daunorubicin and vincrist
ine accumulation in multidrug resistant human ovar
ian carcinoma cells by a monoclonal antibody react
ing with P-glycoprotein. Biochemical Pharmacology,
37: 2389-2393, 1988が挙げられる。
【0133】判定基準は、各測定試験におけるビンクリ
スチンの総取り込み量が、そのコントロールにおけるビ
ンクリスチンの総取り込み量に対して90%以下である
場合を「−」、90%を超えて110%以下である場合
を「±」、110%を超えて300%以下である場合を
「+」、300%を超えて500%以下である場合を
「++」、500%を超えて1000%以下である場合
を「+++」、1000%を超えて2000%以下であ
る場合を「++++」、2000%を超える場合を「+
++++」の7段階とした。そして、上記判定基準に基
づく評価基準としては、ベラパミル以上の多剤耐性癌克
服作用が認められる場合を「P」、ベラパミル以上の多
剤耐性癌克服作用が認められない場合を「N」とした。
【0134】即ち、上記「+」以上の段階であると判定
されたP−糖蛋白質阻害剤の候補物質は、P−糖蛋白質
阻害剤としての機能(多剤耐性癌克服作用)を明らかに
有していると判断される。一方、上記「±」の段階であ
ると判定されたP−糖蛋白質阻害剤の候補物質は、P−
糖蛋白質阻害剤としての機能が明確には認められないと
判断される。また、上記「P」と評価されたP−糖蛋白
質阻害剤の候補物質は、高活性化合物であると判断され
る。
【0135】〔実施例1〕樹高2mの日本イチイの針葉
部(生針葉部)からタキサン関連化合物である化合物
(17)、化合物(18)、化合物(22)および化合
物(26)を取り出した。即ち、上記の針葉部1248
gをn−ヘキサン8Lに1週間浸漬することにより脱脂
した後、酢酸エチル8Lに浸漬した。1週間浸漬した
後、針葉部を濾別し、濾液である抽出液を得た。次い
で、抽出液から酢酸エチルを室温で減圧除去し、該酢酸
エチルに可溶な成分(粗酢酸エチル抽出物)19.69
gを得た。
【0136】上記の成分を、メチルアルコールと酢酸エ
チルとを容量比1:3で混合してなる混合溶液400m
lに溶解した。次に、該溶液を、酸性水溶液である0.
5M硫酸100mlで3回(3×100ml)洗浄し、
続いて、塩基性水溶液である2M水酸化ナトリウム水溶
液100mlで2回(2×100ml)洗浄した。さら
に、上記の溶液(油層)を飽和食塩水で洗浄した後、無
水硫酸ナトリウムで乾燥させ、メチルアルコールおよび
酢酸エチルを除去した。これにより、粗中性分画(テル
ペン分画)7.49g(針葉部の量を基準として0.6
00%)を得た。
【0137】一方、洗浄後の上記0.5M硫酸に29%
アンモニア水を添加してpHを9.0とした後、クロロ
ホルム200mlで3回(3×200ml)抽出した。
これにより、粗アルカロイド分画3.65g(針葉部の
量を基準として0.292%)を得た。また、洗浄後の
上記2M水酸化ナトリウム水溶液からフェノール分画
1.08g(同0.087%)を得た。
【0138】次に、上記の粗中性分画を、シリカゲルを
用いたオープンカラムクロマトグラフィーを採用して、
溶媒としてn−ヘキサンと酢酸エチルとメチルアルコー
ルとを用いたグラジュエント溶出を行うことにより、F
1 〜F10の10個のフラクションに分画(荒分け)し
た。F1 〜F8 の溶出液は酢酸エチル:n−ヘキサンが
容量比2:3で混合してなる混合溶液であり、F9 の溶
出液は酢酸エチルであり、F10の溶出液はメチルアルコ
ールであった。各フラクションの収量は、1番目(低極
性側)から10番目(高極性側)に向かって順に、F1
830mg,F22233mg,F3 722mg,F4
405mg,F5 311mg,F6 208mg,F7
77mg,F8 144mg,F9 237mg,F10
051mgであった。
【0139】そして、上記2番目のフラクション(F
2 )を、シリカゲルステンレスカラム(INERTSIL PREP-
SIL, GL Science, 250×10mm i.d., UV 254nm )を用い
た順相高速液体クロマトグラフィーを採用して、酢酸エ
チルとn−ヘキサンとを容量比3:7で混合してなる混
合溶液(キャリア, 流速5.0 ml/min.)を用いて分離
し、保持時間(tR)12.0〜45.2分の分画F
2-1 962mgを分取した。これを上記カラムを用いて
同一条件でさらに分離し、保持時間0〜17.0分の分
画F2-2 269mg、および保持時間17.0〜21.
8分の分画F2-3 479.2mgを分取した。分画F
2-2 を上記カラムを用いて同一条件でさらに分離し、保
持時間0〜14.0分の分画F2-4 48.0mgを分取
した。
【0140】得られた分画F2-4 を、ODSステンレス
カラム(INERTSIL PREP-ODS, GL Science, 250×10mm
i.d., UV 254nm )を用いた逆相高速液体クロマトグラ
フィーを採用して、メチルアルコールと0.05M酢酸
アンモニウム緩衝液(pH4.8)とアセトニトリルと
を容量比1:1:2で混合してなる混合溶液(キャリ
ア, 流速5.0 ml/min.)を用いて単離・精製した。こ
れにより、化合物(26)15.0mg(保持時間1
5.1分)を取り出した。
【0141】また、同様の操作を行うことにより、分画
2-3 から化合物(26)1.4mgを得た。従って、
粗中性分画から化合物(26)16.4mg(針葉部の
量を基準として0.0013%)を得た。一方、同様の
操作を行うことにより、粗アルカロイド分画から化合物
(26)6.1mgを得た。従って、粗中性分画および
粗アルカロイド分画から化合物(26)22.5mg
(同0.0018%)を得た。
【0142】さらにまた、上記分画F2-3 から保持時間
26.4分の分画F2-5 (ピーク)14.5mgを分取
した。これを上記カラムを用いて同一条件でさらに分離
し、単離・精製することにより、化合物(17)4.8
mg(保持時間40.3分)を取り出した。
【0143】また、同様の操作を行うことにより、分画
2-2 から化合物(17)1.4mgを得た。従って、
粗中性分画から化合物(17)6.2mg(針葉部の量
を基準として0.0005%)を得た。
【0144】また、前記3番目のフラクション(F3
を、シリカゲルステンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL,
GL Science, 250×20mm i.d., UV 254nm )を用いた順
相高速液体クロマトグラフィーを採用して、酢酸エチル
とn−ヘキサンとを容量比1:1で混合してなる混合溶
液(キャリア, 流速15 ml/min.)を用いて分離し、保
持時間18.0〜22.0分の分画F3-1 164.7m
gを分取した。これを上記カラムを用いて同一条件でさ
らに分離し、保持時間17.5分の分画F3-2(ピー
ク)154.4mgを分取した。次いで、分画F3-2
を、ODSステンレスカラム(INERTSIL PREP-ODS, GL
Science, 250×10mm i.d., UV 254nm )を用いた逆相高
速液体クロマトグラフィーを採用して、メチルアルコー
ルと0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)
とアセトニトリルとを容量比1:1:2で混合してなる
混合溶液(キャリア, 流速5.0 ml/min.)を用いて単
離・精製した。これにより、化合物(22)4.4mg
(保持時間9.8分、針葉部の量を基準として0.00
04%)を得た。
【0145】また、前記5番目のフラクション(F5
を、シリカゲルステンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL,
GL Science, 250×10mm i.d., UV 254nm )を用いた順
相高速液体クロマトグラフィーを採用して、酢酸エチル
とn−ヘキサンとを容量比1:1で混合してなる混合溶
液(キャリア, 流速5.0 ml/min.)を用いて分離し、
保持時間18.0〜35.0分の分画F5-1 158.1
mgを分取した。これを、ODSステンレスカラム(IN
ERTSIL PREP-ODS, GL Science, 250×10mm i.d., UV 25
4nm )を用いた逆相高速液体クロマトグラフィーを採用
して、メチルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム
緩衝液(pH4.8)とアセトニトリルとを容量比1:
2:2で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速5.0
ml/min.)を用いて単離・精製した。これにより、化合
物(18)3.3mg(保持時間15.4分、針葉部の
量を基準として0.0003%)を得た。
【0146】単離された化合物の同定並びに構造決定
は、インバースプローブを装着した500MHzのNM
Rを用い、PFG−COSY、PFG−HMQC、PF
G−HMBC等の測定結果を解析することによって行っ
た。
【0147】これら測定結果のうち、新規物質である化
合物(17)の 1H−NMRおよび 13C−NMRの測定
結果を表1・2にまとめて示す。これにより、化合物
(17)の構造を解析した。また、該化合物(17)の
物性値等を測定した結果、 分子式 : C33408 分子量 : 564.2720(測定値)、564.2
723(計算値) 融 点 : 98℃〜100℃ 〔α〕D 20: +97.3°(c=0.45,CHCl
3 ) I R : 3610,1745,1714,167
2,1239 cm-1(CHCl3 ) であった。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】また、新規物質である化合物(22)の 1
H−NMRおよび13C−NMRの測定結果を表3・4に
まとめて示す。これにより、化合物(22)の構造を解
析した。また、該化合物(22)の物性値等を測定した
結果、 分子式 : C354210 分子量 : 622.2775(測定値)、622.2
778(計算値) 融 点 : 95℃〜96℃ 〔α〕D 20: +22.10°(c=0.285,CH
Cl3 ) I R : 3600,1742,1712,164
0,1236 cm-1(CHCl3 ) であった。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】化合物(26)の 1H−NMRおよび13
−NMRの測定結果を表5・6にまとめて示す。これに
より、化合物(26)の構造を解析した。また、該化合
物(26)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C35449 分子量 : 608.2993(測定値)、608.2
986(計算値) 融 点 : 98℃〜99℃ 〔α〕D 20: +65.5°(c=1.154,CHC
3 ) I R : 3616,1740,1640 cm-1
(CHCl3 ) であった。
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
【0156】また、化合物(18)の物性値等を測定し
た結果、 分子式 : C394615 分子量 : 754.2835(測定値)、754.2
838(計算値) 融 点 : 222℃〜223℃(CDCl3 ) 〔α〕D 20: −24.80°(c=0.254,CH
Cl3 ) I R : 3450,1732,1642,1252
cm-1(CHCl 3 ) であった。
【0157】化合物(17)、化合物(18)、化合物
(22)および化合物(26)の多剤耐性癌克服作用に
ついては、後段にて詳述する。
【0158】〔実施例2〕日本イチイの針葉部(生針葉
部)からタキサン関連化合物である化合物(27)、化
合物(28)および化合物(29)を取り出した。即
ち、上記の針葉部10.47kgをn−ヘキサン66.
0Lに1週間浸漬することにより脱脂した後、酢酸エチ
ル66.0Lに浸漬した。1週間浸漬した後、針葉部を
濾別し、濾液である抽出液を得た。次いで、抽出液から
酢酸エチルを室温で減圧除去し、該酢酸エチルに可溶な
成分(粗酢酸エチル抽出物)143.3g(針葉部の量
を基準として1.37%)を得た。
【0159】上記の成分を、メチルアルコールと酢酸エ
チルとを容量比1:4で混合してなる混合溶液2500
mlに溶解した。次に、該溶液を、酸性水溶液である
0.5M硫酸600mlで3回(3×600ml)洗浄
し、続いて、塩基性水溶液である2M水酸化ナトリウム
水溶液500mlで2回(2×500ml)洗浄した。
さらに、上記の溶液(油層)を飽和食塩水200mlで
4回(4×200ml)洗浄した後、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥させ、メチルアルコールおよび酢酸エチルを除
去した。これにより、粗中性分画73.1g(針葉部の
量を基準として0.70%)を得た。
【0160】一方、洗浄後の水層である上記0.5M硫
酸(pH1.5)に29%アンモニア水800mlを添
加してpHを10.0とした後、クロロホルム500m
lで6回(6×500ml)抽出した。さらに、該抽出
液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホルムを除
去した。これにより、粗塩基性分画13.3g(針葉部
の量を基準として0.13%)を得た。
【0161】また、洗浄後の水層である上記2M水酸化
ナトリウム水溶液(pH7.5)に0.5M硫酸800
mlを添加してpHを3.0とした後、クロロホルム5
00mlで6回(6×500ml)抽出した。さらに、
該抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホル
ムを除去した。これにより、粗酸性分画22.5g(針
葉部の量を基準として0.21%)を得た。
【0162】次に、上記の粗中性分画を、シリカゲル
(Silica gel 60 MERK, 70〜230 mesh)800gを用い
たオープンカラムクロマトグラフィーを採用して、溶媒
としてn−ヘキサンと酢酸エチルとメチルアルコールと
を用いたグラジュエント溶出を行うことにより、F1
(低極性側)〜F9 (高極性側)の9個のフラクション
に分画(荒分け)した。F1 〜F6 の溶出液は酢酸エチ
ル:n−ヘキサンが容量比3:2で混合してなる混合溶
液であり、F7 ・F8 の溶出液は酢酸エチルであり、F
9 の溶出液はメチルアルコールであった。
【0163】そして、上記3番目のフラクション(F
3 )8.6gを、シリカゲル(Silicagel 60 MERK, 230
〜400 mesh ASTM)650gを用いたフラッシュカラムク
ロマトグラフィーを採用して、溶媒としてn−ヘキサン
と酢酸エチルとメチルアルコールとを用いたグラジュエ
ント溶出を行うことにより、F3-1 (低極性側)〜F3-
5 (高極性側)の5個のフラクションに分画した。F
3-1 の溶出液は酢酸エチル:n−ヘキサンが容量比1:
1で混合してなる混合溶液であり、F3-2 の溶出液は同
容量比3:2で混合してなる混合溶液であり、F3-3
溶出液は同容量比7:3で混合してなる混合溶液であ
り、F3-4 の溶出液は酢酸エチルであり、F3- 5 の溶出
液はメチルアルコールであった。
【0164】次に、上記2番目のフラクション(F
3-2 )4.5gを、シリカゲル(Silicagel 60 MERK, 23
0〜400 mesh ASTM)250gを用いたフラッシュカラム
クロマトグラフィーを採用して、溶媒としてn−ヘキサ
ンと酢酸エチルとメチルアルコールとを用いたグラジュ
エント溶出を行うことにより、F3-2-1 (低極性側)〜
3-2-7 (高極性側)の7個のフラクションに分画し
た。F3-2-1 ・F3-2-2 の溶出液は酢酸エチル:n−ヘ
キサンが容量比3:2で混合してなる混合溶液であり、
3-2-3 〜F3-2-5 の溶出液は同容量比4:1で混合し
てなる混合溶液であり、F3-2-6 の溶出液は酢酸エチル
であり、F3-2-7 の溶出液はメチルアルコールであっ
た。
【0165】得られた分画F3-2-2 1651mgを、O
DSステンレスカラム(INERTSIL PREP-ODS, GL Scienc
e, 250×2.0mm i.d., UV 254nm)を用いた逆相高速液体
クロマトグラフィーを採用して、メチルアルコールと
0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)とア
セトニトリルとを容量比1:2:2で混合してなる混合
溶液(キャリア, 流速10.0 ml/min.)を用いて単離
・精製した。これにより、粗10−脱アセチル−7−エ
ピタキソール131.3mg(保持時間8.9分)、お
よび、粗7−エピタキソール124.7mg(保持時間
10.1分)を取り出した。
【0166】次いで、上記粗10−脱アセチル−7−エ
ピタキソールを、ODSステンレスカラム(INERTSIL P
REP-ODS, GL Science,+ Shodex C18-10E, 250×1.0mm
i.d., UV 254nm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフ
ィーを採用して、メチルアルコールと0.05M酢酸ア
ンモニウム緩衝液(pH4.8)とアセトニトリルとを
容量比1:2:2で混合してなる混合溶液(キャリア)
を用いて精製した。その後、さらに、シリカゲルステン
レスカラム(INERTSIL PREP-SIL, GL Science,250×0.4
6mm i.d., UV 254nm )を用いた順相高速液体クロマト
グラフィーを採用して、酢酸エチルとn−ヘキサンとを
容量比2:3で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速
2.0 ml/min.)を用いて精製した。これにより、10
−脱アセチル−7−エピタキソールの他に、化合物(2
7)1.9mg(保持時間9.7分、針葉部の量を基準
として0.000018%)、および化合物(28)
3.2mg(保持時間10.8分、同0.000031
%)を得た。
【0167】また、上記粗7−エピタキソールを、シリ
カゲルステンレスカラム(INERTSILPREP-SIL, GL Scien
ce, 250×2.0mm i.d., UV 254nm)を用いた順相高速液
体クロマトグラフィーを採用して、酢酸エチルとn−ヘ
キサンとを容量比1:1で混合してなる混合溶液(キャ
リア, 流速10.0 ml/min.)を用いて精製した。これ
により、7−エピタキソール25.7mg(保持時間1
7.1分)、および粗7−エピ−セファロマニン40.
6mg(保持時間18.6分)を得た。
【0168】この粗7−エピ−セファロマニンを、OD
Sステンレスカラム(Shodex C18-10E, 250 ×1.0mm i.
d., UV 254nm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィ
ーを採用して、メチルアルコールと0.05M酢酸アン
モニウム緩衝液(pH4.8)とアセトニトリルとを容
量比1:2:2で混合してなる混合溶液(キャリア,流
速5.0 ml/min.)を用いて精製した。これにより、粗
製の化合物(29)12.4mg(保持時間14.2
分)、および7−エピ−セファロマニン16.5mg
(保持時間17.7分)を得た。
【0169】上記粗製の化合物(29)を、シリカゲル
ステンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL, GL Science, 2
50×0.46mm i.d., UV 254nm )を用いた順相高速液体ク
ロマトグラフィーを採用して、酢酸エチルとn−ヘキサ
ンとを容量比2:3で混合してなる混合溶液(キャリ
ア, 流速2.0 ml/min.)を用いて精製した。これによ
り、化合物(29)5.8mg(保持時間6.7分、針
葉部の量を基準として0.000055%)、および5
−シンナモイル−10−アセチルタキシンII6.9mg
(保持時間9.7分)を得た。
【0170】新規物質である化合物(27)の 1H−N
MRおよび13C−NMRの測定結果を表7・8にまとめ
て示す。これにより、化合物(27)の構造を解析し
た。また、該化合物(27)の物性値等を測定した結
果、 分子式 : C33409 分子量 : 580.2679(測定値)、580.2
673(計算値) 融 点 : 215℃〜217℃ 〔α〕D 20: +113.27°(c=0.113,C
HCl3 ) I R : 3612,3000,1730,167
0,1640,1228 cm-1 (CHCl3 ) であった。
【0171】
【表7】
【0172】
【表8】
【0173】また、新規物質である化合物(28)の 1
H−NMRおよび13C−NMRの測定結果を表9・10
にまとめて示す。これにより、化合物(28)の構造を
解析した。また、該化合物(28)の物性値等を測定し
た結果、 分子式 : C33409 分子量 : 580.2646(測定値)、580.2
673(計算値) 融 点 : 91℃〜93℃ 〔α〕D 20: −60.33°(c=0.179,CH
Cl3 ) I R : 3612,3464,3000,171
8,1638,1204 cm-1 (CHCl3 ) であった。
【0174】
【表9】
【0175】
【表10】
【0176】また、新規物質である化合物(29)の 1
H−NMRおよび13C−NMRの測定結果を表11・1
2にまとめて示す。これにより、化合物(29)の構造
を解析した。また、該化合物(29)の物性値等を測定
した結果、 分子式 : C31387 分子量 : 522.2621(測定値)、522.2
618(計算値) 融 点 : 136℃〜137℃ 〔α〕D 20: +144.80°(c=0.433,C
HCl3 ) I R : 3668,2996,1714,166
8,1642,1234 cm-1 (CHCl3 ) であった。
【0177】
【表11】
【0178】
【表12】
【0179】〔実施例3〕日本イチイの針葉部(生針葉
部)からタキサン関連化合物である化合物(15)およ
び化合物(16)を取り出した。即ち、上記の針葉部2
64gをn−ヘキサン1.6Lに1週間浸漬することに
より脱脂した後、酢酸エチル1.6Lに浸漬した。1週
間浸漬した後、針葉部を濾別し、濾液である抽出液を得
た。次いで、抽出液から酢酸エチルを室温で減圧除去
し、該酢酸エチルに可溶な成分(粗酢酸エチル抽出物)
3.61g(針葉部の量を基準として1.37%)を得
た。
【0180】上記の成分を、メチルアルコールと酢酸エ
チルとを容量比1:4で混合してなる混合溶液50ml
に溶解した。次に、該溶液を、酸性水溶液である0.5
M硫酸15mlで3回(3×15ml)洗浄し、続い
て、塩基性水溶液である2M水酸化ナトリウム水溶液1
5mlで2回(2×15ml)洗浄した。さらに、上記
の溶液(油層)を飽和食塩水20mlで4回(4×20
ml)洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、メ
チルアルコールおよび酢酸エチルを除去した。これによ
り、粗中性分画1.86g(針葉部の量を基準として
0.71%)を得た。
【0181】一方、洗浄後の水層である上記0.5M硫
酸(pH1.5)に29%アンモニア水50mlを添加
してpHを10.0とした後、クロロホルム20mlで
5回(5×20ml)抽出した。さらに、該抽出液を無
水硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホルムを除去し
た。これにより、粗塩基性分画0.36g(針葉部の量
を基準として0.14%)を得た。
【0182】また、洗浄後の水層である上記2M水酸化
ナトリウム水溶液(pH7.5)に0.5M硫酸50m
lを添加してpHを3.0とした後、クロロホルム20
mlで3回(3×20ml)抽出した。さらに、該抽出
液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、クロロホルムを除
去した。これにより、粗酸性分画0.88g(針葉部の
量を基準として0.33%)を得た。
【0183】次に、上記の粗中性分画を、シリカゲル(S
ilica gel 60 MERK, 230〜400 mesh) 55.8gを用い
たフラッシュカラムクロマトグラフィーを採用して、溶
媒としてn−ヘキサンと酢酸エチルとメチルアルコール
とを用いたグラジュエント溶出を行うことにより、F1
(低極性側)〜F10(高極性側)の10個のフラクショ
ンに分画(荒分け)した。F1 〜F5 の溶出液は酢酸エ
チル:n−ヘキサンが容量比3:2で混合してなる混合
溶液であり、F6 ・F7 の溶出液は酢酸エチルであり、
8 〜F10の溶出液はメチルアルコールであった。
【0184】そして、上記1番目のフラクション
(F1)1002.5mgを、シリカゲルステンレスカ
ラム(INERTSIL PREP-SIL, GL Science, 250×1.0mm i.
d., UV 254nm)を用いた順相高速液体クロマトグラフィ
ーを採用して、酢酸エチルとn−ヘキサンとを容量比
3:7で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速5.0
ml/min.)を用いて単離・精製した。これにより、粗タ
キシニン27.2mg(保持時間17.4分)、およ
び、化合物(15)1.2mg(保持時間33.2分、
針葉部の量を基準として0.0005%)を取り出し
た。
【0185】次いで、上記粗タキシニンを、シリカゲル
ステンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL, GL Science, 2
50×1.0mm i.d., UV 254nm)を用いた順相高速液体クロ
マトグラフィーを採用して、酢酸エチルとn−ヘキサン
とを容量比1:4で混合してなる混合溶液(キャリア,
流速5.0 ml/min.)を用いて精製した。これにより、
タキシニン21.8mg(保持時間35.0分)、およ
び、化合物(16)1.6mg(保持時間40.5分、
針葉部の量を基準として0.0006%)を得た。
【0186】化合物(15)の 1H−NMRおよび13
−NMRの測定結果を表13・14にまとめて示す。こ
れにより、化合物(15)の構造を解析した。また、該
化合物(15)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C33408 分子量 : 564.2723(測定値)、564.2
724(計算値) 融 点 : 58℃〜60℃ 〔α〕D 20: +87.00°(c=0.10,CHC
3 ) I R : 3628,2936,1734,171
8,1672,1642,1248 cm-1 (CHC
3 ) であった。
【0187】
【表13】
【0188】
【表14】
【0189】また、化合物(16)の 1H−NMRおよ
13C−NMRの測定結果を表15・16にまとめて示
す。これにより、化合物(16)の構造を解析した。ま
た、該化合物(16)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C354210 分子量 : 622.2783(測定値)、622.2
779(計算値) 融 点 : 216℃〜218℃ 〔α〕D 20: +21.73°(c=0.092,CH
Cl3 ) I R : 2936,1750,1718,164
0,1240 cm-1(CHCl3 ) であった。
【0190】
【表15】
【0191】
【表16】
【0192】化合物(15)および化合物(16)の多
剤耐性癌克服作用については、後段にて詳述する。
【0193】〔実施例4〕樹高3mの日本イチイの針葉
部(生針葉部)からタキサン関連化合物である化合物
(6)および化合物(11)を取り出した。即ち、上記
の針葉部4228gをn−ヘキサン8.75L(×2
回)に1週間浸漬することにより脱脂した後、酢酸エチ
ル8.75L(×2回)に浸漬した。1週間浸漬した
後、針葉部を濾別し、濾液である抽出液を得た。次い
で、抽出液から酢酸エチルを室温で減圧除去し、該酢酸
エチルに可溶な成分(粗酢酸エチル抽出物)74.00
gを得た。
【0194】上記の成分を、n−ヘキサンと酢酸エチル
とを容量比1:1で混合してなる混合溶液2.5Lに投
入し、該混合溶液に不溶な成分52.5gを得た。次
に、該不溶成分を、メチルアルコールと酢酸エチルとを
容量比1:3で混合してなる混合溶液1Lに溶解した。
次に、該溶液を、酸性水溶液である0.5M硫酸250
mlで3回(3×250ml)抽出した。得られた抽出
液に29%アンモニア水を添加してpHを9.0とした
後、クロロホルム300mlで5回(5×300ml)
抽出した。さらに、該抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾
燥させ、クロロホルムを除去した。これにより、粗アル
カロイド分画9.26g(針葉部の量を基準として0.
22%)を得た。
【0195】次に、上記の粗アルカロイド分画を、活性
アルミナ(中性,活性度I)920gを用いたオープン
カラムクロマトグラフィーを採用して、溶媒としてn−
ヘキサンと酢酸エチルとメチルアルコールとを用いたグ
ラジュエント溶出を行うことにより、F1 〜F17の17
個のフラクションに分画(荒分け)した。F1 の溶出液
は酢酸エチル:n−ヘキサンが容量比3:7で混合して
なる混合溶液であり、F2 ・F3 の溶出液は同容量比
1:1で混合してなる混合溶液であり、F4 ・F 5 の溶
出液は同容量比7:3で混合してなる混合溶液であり、
6 ・F7 の溶出液は酢酸エチルであり、F8 の溶出液
は酢酸エチル:メチルアルコールが容量比9:1で混合
してなる混合溶液であり、F9 の溶出液は同容量比4:
1で混合してなる混合溶液であり、F10の溶出液は同容
量比7:3で混合してなる混合溶液であり、F11の溶出
液は同容量比1:1で混合してなる混合溶液であり、F
12〜F17の溶出液はメチルアルコールであった。各フラ
クションの収量は、1番目(低極性側)から17番目
(高極性側)に向かって順に、F1 82.5mg,F2
103.6mg,F3 108.0mg,F4 155.2
mg,F5 183.3mg,F6 195.0mg,F7
243.7mg,F8 2201mg,F9 2327m
g,F10651.5mg,F11417.0mg,F12
83.0mg,F13774.9mg,F14368.9m
g,F15270.0mg,F1635.8mg,F17
4.9mgであった。
【0196】そして、上記1〜9番目のフラクション
(F1 〜F9 )を、ODSステンレスカラム(INERTSIL
PREP-ODS, GL Science, 250×20mm i.d., UV 254nm )
を用いた逆相高速液体クロマトグラフィーを採用して、
メチルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム緩衝液
(pH4.8)とアセトニトリルとを容量比1:1:2
で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速15 ml/mi
n.)を用いて単離・精製した。これにより、アルカロイ
ド分画の主成分であるタキシンII890mg(保持時間
8.9分、針葉部の量を基準として0.0211%)、
および、化合物(6)1821mg(保持時間6.8
分、針葉部の量を基準として0.0431%)を取り出
した。
【0197】次に、上記主成分を取り出した後の(残余
の)低極性分画460.8mg(保持時間9.0〜2
2.0分)を、ODSステンレスカラム(INERTSIL PRE
P-ODS,GL Science, 250×10mm i.d., UV 254nm )を用
いた逆相高速液体クロマトグラフィーを採用して、メチ
ルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(p
H4.8)とアセトニトリルとを容量比1:1.8:2
で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速5.0 ml/mi
n.)を用いて単離・精製した。これにより、化合物(1
1)16.6mg(保持時間47.5分、針葉部の量を
基準として0.0004%)を得た。
【0198】化合物(11)の 1H−NMRおよび13
−NMRの測定結果を表17・18にまとめて示す。こ
れにより、化合物(11)の構造を解析した。また、該
化合物(11)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C37519 N 分子量 : 653.3558(測定値)、653.3
564(計算値) 融 点 : 186℃〜188℃ 〔α〕D 20: +80.2°(c=0.500,CHC
3 ) I R : 3328,1740 cm-1 (CHCl
3 ) であった。
【0199】
【表17】
【0200】
【表18】
【0201】化合物(11)の多剤耐性癌克服作用につ
いては、後段にて詳述する。
【0202】(多剤耐性癌克服作用の測定)化合物
(6)〜(19),(22)〜(26)の多剤耐性癌克
服作用(ここでは、P−糖蛋白質阻害剤としての機能)
を、上述した方法で以て測定した。
【0203】尚、化合物(24)は、針葉部の量を基準
として0.0008%の割合で、日本イチイの針葉部
(生針葉部)から取り出すことができた。化合物(2
4)の 1H−NMRおよび13C−NMRの測定結果を表
19・20にまとめて示す。これにより、化合物(2
4)の構造を解析した。また、該化合物(24)の物性
値等を測定した結果、 融 点 : 280℃〜282℃ 「284℃〜286℃ …文献」 「240℃(分解) …文献」 〔α〕D 20: +14.6°(c=0.500,CHC
3 ) 「〔α〕D 20: +137.1°(c=0.03,CH
Cl3 )…文献」 「〔α〕D 22: +71.7°(c=0.03,CHC
3 ) …文献」 I R : 2964,1742,1640,1246
cm-1 (CHCl3 ) 「1740,1710,1695,1670,164
0,1250,1230 cm-1(KBr)…文献」 「3050,1746,1625,1400,1250
cm-1(KBr)…文献」 であった。上記文献は Liang, J.Y., et al. Phytoch
em., 47, 69-72, (1998)であり、文献は Shrestha,
T.B., et al. J. Nat. Prod., 60, 820-821, (1997)で
ある。
【0204】
【表19】
【0205】
【表20】
【0206】多剤耐性癌克服作用の測定結果を、まとめ
て表21〜26に示す。同表において、「投与濃度」と
は、反応溶液における上記化合物またはベラパミルの濃
度(μg/ml)を示し、「VCR蓄積量の平均値」と
は、各ウェルにおける、2780AD細胞中のビンクリ
スチン(VCR)蓄積量の平均値(dpm/well)を示す。
また、「ベラパミル比」とは、ベラパミルを対照薬剤と
した比較実験との比較結果を示し、「評価」の項におけ
る(最大ベラパミル比)および(濃度)とは、ベラパミ
ルと比較して最も効果が高かったときの比および濃度を
示すものとする。尚、多剤耐性癌克服作用が高い化合物
については、再測定を行った(表25・26)。
【0207】
【表21】
【0208】
【表22】
【0209】
【表23】
【0210】
【表24】
【0211】
【表25】
【0212】
【表26】
【0213】表21〜26より明らかなように、前記化
合物群のうち、特に再測定を行った化合物(11),
(15)〜(17),(22),(24),(26)
は、何れも多剤耐性癌克服作用を有し、しかも、ベラパ
ミルを上回る多剤耐性癌克服作用を有する高活性化合物
であることから、それ単独で特に有効な(新規な)多剤
耐性癌克服剤となり得ることが判る。
【0214】
【表27】
【0215】前記化学式(17),(22),(2
7),(28),(29)で表される5種類のタキシニ
ン化合物は、新規物質である。
【0216】〔実施例5〕(カルスからの化合物(3
0),(31),(33)〜(36)の取り出し)日本
イチイ(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.)の若茎(針
葉部)を外植体として用い、カルスの誘導並びに組織培
養を行った。上記外植体としての若茎は、冬季(採取前
1ヵ月間の平均気温5℃以下)に採取した。
【0217】はじめに、上記切片を一般的な方法で洗浄
・滅菌処理した後、ショ糖(スクロース)、寒天粉末、
およびオーキシンであるNAAが、順に20g/L、1
0g/L、1.0mg/Lの濃度となるよう添加された
改変ガンボーグ培地(以下、改変ガンボーグ固体培地と
称する)に、該切片を置床した。すなわち、本実施例に
おける改変ガンボーグ固体培地とは、以下の表28に示
す組成よりなる固体培地である。
【0218】
【表28】
【0219】そして、上記の固体培地を25℃、暗所下
で静置した。これにより、培養細胞を静置培養して、日
本イチイのカルスを得た。次に、約40〜50日毎に増
殖性の良好なカルスを選抜し、同一組成の培地を用いて
継代培養を行うことで、系統を確立した。次に、寒天粉
末、NAA、ジャスモン酸メチル(JM)、オリゴサッ
カライド(KTOS)が、順に、10g/L、1.0m
g/L、100μM、0.3mg/Lの濃度となるよう
添加された改変ガンボーグ培地(以下、生産培地1と称
する)にこのカルスを置床し、25℃、暗所下で60日
間静置培養を行った。この結果、新鮮重量で831.9
gのカルス(新鮮カルスと称する)が得られた。
【0220】次に、上記新鮮カルスを用いて上記化合物
(30),(31),(33)〜(35)、及び新規な
タキシニン化合物としての化合物(36)の抽出を行っ
た。先ず、新鮮カルス831.9gを採取し、凍結乾燥
させることにより、乾燥カルス86.97gを得た。続
いて、n−ヘキサン1.3L中で該乾燥カルスを1時間
撹拌し、抽出操作を行った。この撹拌・抽出操作は3回
繰り返し行われた。
【0221】そして、n−ヘキサン層(抽出液)からn
−ヘキサンを留去して、粗n−ヘキサン抽出物1,84
7mgを得た。続いて、シリカゲルステンレスカラムを
用いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP
-SIL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:
n−ヘキサン=2:8;流速5ml/min) を用い
て、粗n−ヘキサン抽出物より各種化合物を分離した。
【0222】その結果、n−ヘキサン層から上記化合物
(30),(31),(33)〜(36)が単離され
た。より具体的には、化合物(35)が10.0mg
(乾燥カルスに対して0.012重量%、保持時間(t
R)21.6分)、化合物(36)が15.0mg(乾
燥カルスに対して0.017重量%、tR28.1分)
単離された。また、化合物(30)と、その14位アシ
ルオキシ同族体である化合物(31),(33),(3
4)とが順に、377mg(乾燥カルスに対して0.4
33重量%、tR15.2分)、38mg(乾燥カルス
に対して0.044重量%、tR11.5分)、354
mg(乾燥カルスに対して0.407重量%、tR8.
3分)、37mg(乾燥カルスに対して0.043重量
%、tR9.4分)単離された。すなわち、n−ヘキサ
ン層からの化合物(30)と、その14位アシルオキシ
同族体との合計単離収量は806mg(乾燥カルスに対
して0.927重量%)に達した。
【0223】n−ヘキサン層からは、その他に、タクス
アビエタンA(taxusabietane A) が8.0mg(乾燥カ
ルスに対して0.009重量%、tR13.6分)、タ
クスシン(taxusin) が57mg(乾燥カルスに対して
0.066重量%、tR18.3分)、2α−アセトキ
シタクスシン(2α−acetoxy taxusin)が5.0mg(乾
燥カルスに対して0.006重量%、tR41.0分)
単離された。
【0224】単離された化合物の同定並びに構造決定
は、インバースプローブを装着した500MHzのNM
Rを用い、PFG−COSY、PFG−HMQC、PF
G−HMBC等の測定結果を解析することによって行っ
た。尚、これらの測定結果のうち、新規なタキシニン化
合物としての化合物(36)の 1H−NMR及び13C−
NMRの測定結果を表29、30にまとめて示す。これ
により、化合物(36)の構造を解析した。また、該化
合物(36)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C33427 分子量 : 550.2936(測定値)、550.2
931(計算値) 融 点 : 228℃〜231℃ 〔α〕D 20: +99.8°(c=0.538,CHC
3 ) I R : 2960,1732,1642,1252
cm-1(CHCl 3 ) であった。
【0225】
【表29】
【0226】
【表30】
【0227】尚、上記化合物のうち化合物(35)及
び、化合物(36)は、上記生産培地1にかえて以下に
示す組成の生産培地2〜6を用いて誘導・組織培養され
てなるカルスからも単離された。
【0228】上記生産培地2とは、寒天粉末、NAA及
び、ジャスモン酸メチルが、順に10g/L、0.5m
g/L、100mMとなるように添加された改変ガンボ
ーグ培地であり、該生産培地2における化合物(35)
及び、化合物(36)の単離収量は順に、0mg、1
9.2mg(乾燥カルスに対して0.026重量%)で
あった。上記生産培地3とは、寒天粉末、NAA、ジャ
スモン酸メチル、フェニルアラニン、酢酸が、順に10
g/L、0.5mg/L、100mM、0.263g/
L、1ml/L、となるように添加された改変ガンボー
グ培地であり、該生産培地3における化合物(35)及
び、化合物(36)の単離収率は順に、0mg、19.
2mg(乾燥カルスに対して0.026重量%)であっ
た。
【0229】また、上記生産培地4とは、寒天粉末、N
AA、フェニルアラニン、酢酸が、順に10g/L、
0.5mg/L、0.263g/L、1ml/L、とな
るように添加された改変ガンボーグ培地であり、該生産
培地4における化合物(35)及び、化合物(36)の
単離収率は順に、58.8mg(乾燥カルスに対して
0.105重量%)、0mgであった。上記生産培地5
とは、寒天粉末、NAA、キトサンが、順に10g/
L、0.5mg/L、1.25g/L、となるように添
加された改変ガンボーグ培地であり、該生産培地5にお
ける化合物(35)及び、化合物(36)の単離収率は
順に、58.8mg(乾燥カルスに対して0.105重
量%)、0mgであった。上記生産培地6とは、寒天粉
末、NAA、β−シクロデキストリンが、順に10g/
L、0.5mg/L、10mM、となるように添加され
た改変ガンボーグ培地であり、該生産培地6における化
合物(35)及び、化合物(36)の単離収率は順に、
7.5mg(乾燥カルスに対して0.015重量%)、
0mgであった。
【0230】〔実施例6〕 (カルスからの化合物(30)〜(35)、並びにタキ
ソール関連化合物の取り出し)日本イチイ(Taxus cusp
idata Sieb. et Zucc.)の若茎(針葉部)を外植体とし
て用い、上記実施例1と同一の条件、培地でカルスの誘
導並びに組織培養を行った。続いて、寒天粉末、NA
A、フェニルアラニン、酢酸が、順に、10g/L、
0.5mg/L、0.263g/L、1.0ml/Lの
濃度となるよう添加された改変ガンボーグ培地に得られ
たカルスを置床し、25℃、暗所下で60日間静置培養
を行った。この結果、新鮮重量で605.5gのカルス
(新鮮カルスと称する)が得られた。
【0231】次に、上記新鮮カルスを用いて上記化合物
(30)〜(35)、並びにタキソール関連化合物の抽
出を行った。先ず、新鮮カルス605.5gを採取し、
凍結乾燥させることにより、乾燥カルス55.9gを得
た。続いて、有機溶媒としてn−ヘキサン、酢酸エチ
ル、メチルアルコールを用いて、該乾燥カルスからの抽
出操作を順に行った。即ち、n−ヘキサン1Lを用いて
一時間撹拌・抽出操作(3回繰り返す)を行った後、酢
酸エチル1Lを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回繰り
返す)を行い、次いで、メチルアルコール1Lを用いて
一時間撹拌・抽出操作(3回繰り返す)を行った。
【0232】そして、n−ヘキサン層(抽出液)からn
−ヘキサンを留去して、粗n−ヘキサン抽出物106
1.7mgを得た。また、酢酸エチル層(抽出液)から
酢酸エチルを留去して、粗酢酸エチル抽出物856.2
mgを得た。この粗酢酸エチル抽出物は、メチルアルコ
ール/酢酸エチル混合溶液(混合量、10ml:40m
l)に溶解された後に、a)0.5M硫酸水溶液20m
lで洗浄されてアルカロイド分画(塩基性成分)の除去
が行われ、ついで、b)1M水酸化ナトリウム水溶液2
0mlで洗浄されてフェノール分画(酸性成分)の除去
が行われた。続いて、溶媒(酢酸エチル)の除去が行わ
れ、粗酢酸エチル中性分画543.6mgを得た。
【0233】一方、メチルアルコール層(抽出液)から
メチルアルコールを除去して、粗メチルアルコール抽出
物を得た。この粗メチルアルコール抽出物は、メチルア
ルコール/水混合溶液(混合量、50ml:40ml)
に溶解された後に、クロロホルム100mlで3回抽出
操作が行われ、続いてクロロホルムが除去されて粗クロ
ロホルム抽出物918.3mgが得られた。この粗クロ
ロホルム抽出物は、メチルアルコール/酢酸エチル混合
溶液(混合量、10ml:40ml)に溶解された後
に、a)0.5M硫酸水溶液で洗浄されてアルカロイド
(塩基性成分)の除去が行われ、ついで、b)1M水酸
化ナトリウム水溶液で洗浄されてフェノール分画(酸性
成分)の除去が行われた。続いて、溶媒(酢酸エチル)
の除去が行われ、粗クロロホルム中性分画693.2m
gを得た。
【0234】続いて、シリカゲルステンレスカラムを用
いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-S
IL;25×2cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=2:8;流速10.0ml/min) を用
いて、上記の粗n−ヘキサン抽出物1061.7mgよ
り各種化合物を分離した。
【0235】その結果、上記化合物(30),(3
1),(33)〜(35)が単離された。より具体的に
は、化合物(33)が200.3mg(保持時間(t
R)11.0分)、化合物(34)が17.0mg(t
R12.9分)、化合物(31)が24.6mg(tR
16.5分)、化合物(30)が310.7mg(tR
22.5分)、化合物(35)が29.5mg(tR3
1.2分)単離された。また、タクスシン(taxusin) が
19.7mg(tR28.9分)単離された。
【0236】また、上記の粗酢酸エチル中性分画54
3.6mgをシリカゲルフラッシュカラムを用いたシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーにより分取し、以下に
説明する12フラクション(fr1〜fr12)に粗分
けした。フラクションfr1〜fr6は、n−ヘキサン
と酢酸エチルとを容量比5:5で混合してなる溶離液を
用いて得られた分画であり、フラクションfr7〜fr
9は、n−ヘキサンと酢酸エチルとを容量比7:3で混
合してなる溶離液を用いて得られた分画であり、フラク
ションfr10,fr11は、酢酸エチルを溶離液とし
て得られた分画であり、フラクションfr12は、メチ
ルアルコールを溶離液として得られた分画である。
【0237】続いて、低極性部のフラクションfr1〜
fr3(合計212.2mg)をシリカゲルステンレス
カラムを用いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERT
SILPREP-SIL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸
エチル:n−ヘキサン=2:8;流速5.0ml/mi
n) を用いて分取した。その結果、化合物(33)が4
0.8mg(保持時間(tR)8.6分)、化合物(3
4)が2.7mg(tR9.5分)、化合物(31)が
3.7mg(tR11.8分)、化合物(30)が5
9.1mg(tR16.9分)、化合物(35)が6.
1mg(tR22.1分)単離された。また、タクスシ
ン(taxusin) が2.7mg(tR19.3分)単離され
た。
【0238】また、フラクションfr4、及びfr5
(合計129.5mg)をシリカゲルステンレスカラム
を用いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PR
EP-SIL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチ
ル:n−ヘキサン=3:7;流速5.0ml/min)
を用いて分取した。その結果、化合物(32)が5.7
mg(保持時間(tR)29.8分)単離された。ま
た、アビエタン化合物であるタキサマイリンC(taxamai
rin C)が2.0mg(tR32.6分)単離された。
【0239】さらに、フラクションfr6〜fr9(合
計67.8mg)をシリカゲルステンレスカラムを用い
た順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-SI
L;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=5:5;流速5.0ml/min) を用い
て分取した。その結果、7−エピタキソール(7-epitaxo
l)が0.6mg(保持時間(tR)10.5分)、タキ
ソールC(taxol C) が0.2mg(tR20.3分)、
タキソール(taxol) が1.6mg(tR29.8分)単
離された。
【0240】上記の粗クロロホルム中性分画693.2
mgは、シリカゲルフラッシュカラムを用いたシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィーにより分取され、以下に説
明する18フラクション(Fr1〜Fr18)に粗分け
された。フラクションFr1〜Fr13は、n−ヘキサ
ンと酢酸エチルとを容量比5:5で混合してなる溶離液
を用いて得られた分画であり、フラクションFr14,
Fr15は、酢酸エチルを溶離液として得られた分画で
あり、フラクションFr16〜Fr18は、メチルアル
コールを溶離液として得られた分画である。
【0241】続いて、低極性部のフラクションFr1,
Fr2(合計44.3mg)をシリカゲルステンレスカ
ラムを用いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSI
L PREP-SIL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エ
チル:n−ヘキサン=2:8;流速5.0ml/mi
n) を用いて分取した。その結果、化合物(33)が
3.8mg(保持時間(tR)8.2分)、化合物(3
4)が0.5mg(tR9.5分)単離された。
【0242】また、フラクションFr3〜Fr6(合計
290.0mg)をシリカゲルステンレスカラムを用い
た順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-SI
L;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=2:8;流速5.0ml/min) を用い
て分取した。その結果、化合物(33)が27.4mg
(保持時間(tR)8.0分)、化合物(34)が7.
5mg(tR8.9分)、化合物(31)が2.6mg
(tR11.0分)、化合物(30)が80.7mg
(tR14.5分)、化合物(35)が23.1mg
(tR23.1分)単離された。また、タクシン(taxus
in) が7.8mg(tR17.4分)単離された。さら
に、フラクションFr3〜Fr6の高極性部(合計5
8.3mg)をシリカゲルステンレスカラムを用いた順
相高速液体クロマトグラフィー(INERTSILPREP-SIL;2
5×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n−ヘキ
サン=3:7;流速5.0ml/min) を用いて分取
した。その結果、化合物(32)が16.6mg(tR
24.6分)単離された。また、タキサマイリンC(tax
amairin C)が3.2mg(tR29.9分)単離され
た。
【0243】さらに、フラクションFr7〜Fr13
(合計53.9mg)を、逆相ODSカラムとしてのO
DSステンレスカラムを用いた逆相高速液体クロマトグ
ラフィー(INERTSIL PREP-ODS;25×1cm;GL Scien
ce;溶媒 メチルアルコール:酢酸アンモニウムバッフ
ァー(pH4.8):アセトニトリル=1:2:2混合
溶液;流速5.0ml/min) を用いて分取した。そ
の結果、7−エピタキソール(7-epitaxol)が0.5mg
(保持時間(tR)8.5分)、タキソールC(taxol
C) が0.5mg(tR8.6分)、バッカチンVI(bacc
atin VI) が1.5mg(tR6.3分)、タキソール
(taxol) が2.2mg(tR5.9分)単離された。
【0244】以上の結果をまとめると、上記の乾燥カル
ス55.9gより、化合物(30)が総計450.5m
g(乾燥カルスに対して0.806重量%)、化合物
(31)が総計30.9mg(乾燥カルスに対して0.
055重量%)、化合物(32)が総計22.3mg
(乾燥カルスに対して0.040重量%)、化合物(3
3)が総計272.3mg(乾燥カルスに対して0.4
87重量%)、化合物(34)が総計27.7mg(乾
燥カルスに対して0.050重量%)得られた。すなわ
ち、化合物(30)と、その14位アシルオキシ同族体
である化合物(31)〜(34)との合計単離収量は8
03.7mg(乾燥カルスに対して1.438重量%)
と極めて高い値となった。また、化合物(35)は総計
58.7mg得られた。
【0245】〔実施例7〕 (化合物(30)〜(34)、及び(36)の多剤耐性
癌克服作用の測定)化合物(30)〜(34)、及び
(36)の多剤耐性癌克服作用(ここでは、P−糖蛋白
質阻害剤としての機能)を、上記説明の方法にて測定し
た。多剤耐性癌克服作用の測定結果は以下の表31〜3
3にまとめて示す。表31〜33において、「投与濃
度」とは、化合物(30)〜(34)、化合物(3
6)、または、ベラパミルの反応溶液における濃度を示
し、「VCR蓄積量の平均値」とは、各ウェルにおけ
る、2780AD細胞中のビンクリスチン(VCR)蓄
積量の平均値を示す。また、「ベラパミル比」とは、ベ
ラパミルを対照薬剤とした比較実験との比較結果を示
し、「評価」の項における(最大ベラパミル比)、及び
(濃度)とはそれぞれ、ベラパミルと比較して最も効果
が高かったときの比および濃度を示すものとする。尚、
多剤耐性癌克服作用が高い化合物については、再測定を
行った(表33)。
【0246】
【表31】
【0247】
【表32】
【0248】
【表33】
【0249】表31〜33より明らかなように、上記化
合物(30)〜(34)、及び(36)はいずれも多剤
耐性癌克服作用を有し、それ単独で新規な多剤耐性癌克
服剤となりうることが明らかになった。特に、表33に
示すように、化合物(31),(33),(36)は、
ベラパミルを上回る多剤耐性癌克服作用を有する高活性
化合物であることが明らかとなり、それ単独で特に有効
な多剤耐性癌克服剤となりうることが明らかになった。
【0250】〔実施例8〕 (カルスからの化合物(37),(38)の取り出し)
日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.)の若茎
(針葉部)を外植体として用い、カルスの誘導並びに組
織培養を行った。上記外植体としての若茎は、冬季(採
取前1ヵ月間の平均気温5℃以下)に採取した。
【0251】はじめに、上記切片を一般的な方法で洗浄
・滅菌処理した後、ショ糖(スクロース)、寒天粉末、
およびオーキシンであるNAAが、順に20g/L、1
0g/L、0.5mg/Lの濃度となるよう添加された
改変ガンボーグ培地(以下、改変ガンボーグ固体培地と
称する)に、該切片を置床した。すなわち、本実施例に
おける改変ガンボーグ固体培地とは、以下の表34に示
す組成よりなる固体培地である。
【0252】
【表34】
【0253】そして、上記の固体培地を25℃、暗所下
で静置した。これにより、培養細胞を静置培養して、日
本イチイのカルスを得た。次に、約40〜50日毎に増
殖性の良好なカルスを選抜し、同一組成の培地を用いて
継代培養を行うことで、系統を確立した。次に、寒天粉
末、NAA、β−シクロデキストリンが、順に、10g
/L、0.5mg/L、100mMの濃度となるよう添
加された改変ガンボーグ培地(生産培地)にこのカルス
を置床し、25℃、暗所下で60日間静置培養を行っ
た。この結果、新鮮重量で471.4gのカルス(新鮮
カルスと称する)が得られた。
【0254】次に、上記新鮮カルスを用いて新規なアビ
エタン化合物としての化合物(37),(38)の抽出
を行った。先ず、新鮮カルス471.4gを採取し、凍
結乾燥させることにより、乾燥カルス47.2gを得
た。該乾燥カルスを粉砕した後、有機溶媒としてn−ヘ
キサン、酢酸エチル、メチルアルコールを用いて、順に
抽出操作を行った。即ち、乾燥カルス1g当たり20m
lのn−ヘキサンを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回
繰り返す)を行った後、乾燥カルス1g当たり20ml
の酢酸エチルを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回繰り
返す)を行い、次いで、乾燥カルス1g当たり20ml
のメチルアルコールを用いて一時間撹拌・抽出操作(3
回繰り返す)を行った。
【0255】そして、n−ヘキサン層(抽出液)からn
−ヘキサンを留去して、粗n−ヘキサン抽出物297.
5mgを得た。また、酢酸エチル層(抽出液)から酢酸
エチルを留去して、粗酢酸エチル抽出物505.8mg
を得た。この粗酢酸エチル抽出物は、メチルアルコール
/酢酸エチル混合溶液(混合量、10ml:40ml)
に溶解された後に、a)0.5M硫酸水溶液15mlで
3回洗浄されて塩基性成分の除去が行われ、ついで、
b)2M水酸化ナトリウム水溶液15mlで3回洗浄さ
れて酸性成分(フェノール誘導体)の除去が行われた。
続いて、得られた酢酸エチル層を無水硫酸水素ナトリウ
ムで乾燥後、溶媒(酢酸エチル)を除去して酢酸エチル
抽出物373.6mg(乾燥カルスに対して0.79重
量%)を得た。
【0256】一方、メチルアルコール層(抽出液)から
メチルアルコールを除去して、粗メチルアルコール抽出
物を得た。この粗メチルアルコール抽出物は、メチルア
ルコール/水混合溶液(混合量、50ml:200m
l)に溶解された後に、クロロホルム100mlで3回
抽出操作が行われ、続いてクロロホルムが除去されて粗
クロロホルム抽出物1,851.7mgが得られた。こ
の粗クロロホルム抽出物は、メチルアルコール/酢酸エ
チル混合溶液(混合量、10ml:40ml)に溶解さ
れた後に、a)0.5M硫酸水溶液15mlで3回洗浄
されて塩基性成分の除去が行われ、ついで、b)2M水
酸化ナトリウム水溶液15mlで3回洗浄されて酸性成
分(フェノール誘導体)の除去が行われた。続いて、得
られた酢酸エチル層を無水硫酸水素ナトリウムで乾燥
後、溶媒(酢酸エチル)を除去してクロロホルム抽出物
914.9mg(乾燥カルスに対して1.94重量%)
を得た。
【0257】続いて、上記の酢酸エチル抽出物373.
6mgをシリカゲルフラッシュカラムを用いたシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィー(Merck製:Silica gel 60,2
30-240mesh, 18.7g) で以下に説明する5フラクション
(f1〜f5)に粗分けした。フラクションf1〜f3
は、n−ヘキサンと酢酸エチルとを容量比5:5で混合
してなる溶離液を用いて得られた分画であり、フラクシ
ョンf4は、酢酸エチルを溶離液として得られた分画で
あり、フラクションf5は、メチルアルコールを溶離液
として得られた分画である。
【0258】そして、シリカゲルステンレスカラムを用
いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-S
IL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=4:6;流速5ml/min) を用い、上
記フラクションf2(22.6mg)より各種化合物を
分離したところ、化合物(37)が3.9mg(乾燥カ
ルスに対して0.008重量%、保持時間(tR)2
8.9分)、単離された。
【0259】単離された化合物(37)の同定並びに構
造決定は、インバースプローブを装着した500MHz
のNMRを用い、PFG−COSY、PFG−HMQ
C、PFG−HMBC等の測定結果を解析することによ
って行った。これらの測定結果は、表35、36にまと
めて示す。これにより、化合物(37)の構造を解析し
た。また、該化合物(37)の物性値等を測定した結
果、 分子式 : C21305 分子量 : 362.2095(測定値)、362.2
093(計算値) 融 点 : 116℃〜118℃ 溶解性 : CHCl3 に可溶 〔α〕D 20: +216.7°(c=0.04,CHC
3 ) I R : 3530,2950,1620cm-1(C
HCl3 ) U V : 310.5(2.08),267.5
(1.32)238.5(1.75)nm(logε)
(C25 OH) であった。
【0260】
【表35】
【0261】
【表36】
【0262】一方、クロロホルム抽出物914.9mg
をシリカゲルフラッシュカラムを用いたシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー(Merck製:Silica gel 60,230-240
mesh, 18.7g) で以下に説明する5フラクション(F1
〜F5)に粗分けした。フラクションF1〜F3は、n
−ヘキサンと酢酸エチルとを容量比5:5で混合してな
る溶離液を用いて得られた分画であり、フラクションF
4は、酢酸エチルを溶離液として得られた分画であり、
フラクションF5は、メチルアルコールを溶離液として
得られた分画である。
【0263】そして、シリカゲルステンレスカラムを用
いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-S
IL;25×1cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=4:6;流速5ml/min) を用い、上
記フラクションF2(95.8mg)より各種化合物を
分離したところ、化合物(38)が10.7mg(乾燥
カルスに対して0.023重量%、保持時間(tR)1
2.1分)、単離された。
【0264】単離された化合物(38)の同定並びに構
造決定は、上記化合物(37)の同定並びに構造決定と
同様の方法により行った。これらの測定結果は、表3
7、38にまとめて示す。これにより、化合物(38)
の構造を解析した。また、該化合物(38)の物性値等
を測定した結果、 分子式 : C20282 分子量 : 300.2093(測定値)、300.2
089(計算値) 融 点 : 129℃〜131℃ 溶解性 : CHCl3 に可溶 〔α〕D 20: −5.57°(c=0.269,CHC
3 ) I R : 3680,3520,1500cm-1(C
HCl3 ) U V : 275.5(1.30),240.5
(1.56)nm(logε)(C25 OH) であった。
【0265】
【表37】
【0266】
【表38】
【0267】〔実施例9〕 (カルスからの化合物(39)の取り出し)日本イチイ
(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.)の若茎(針葉部)
を外植体として用い、カルスの誘導並びに組織培養を行
った。上記外植体としての若茎は、冬季(採取前1ヵ月
間の平均気温5℃以下)に採取した。
【0268】はじめに、上記切片を一般的な方法で洗浄
・滅菌処理した後、ショ糖(スクロース)、寒天粉末、
およびオーキシンであるNAAが、順に20g/L、1
0g/L、0.5mg/Lの濃度となるよう添加された
改変ガンボーグ培地(以下、改変ガンボーグ固体培地と
称する)に、該切片を置床した。すなわち、本実施例に
おける改変ガンボーグ固体培地とは、上記の表34に示
す組成よりなる固体培地(実施例8における改変ガンボ
ーグ固体培地と同一のもの)である。
【0269】そして、上記の固体培地を25℃、暗所下
で静置した。これにより、培養細胞を静置培養して、日
本イチイのカルスを得た。次に、約40〜50日毎に増
殖性の良好なカルスを選抜し、同一組成の培地を用いて
継代培養を行うことで、系統を確立した。次に、寒天粉
末、およびオーキシンである4−クロロインドール酢酸
(4-Cl IAA)が、順に、10g/L、0.5mg/Lの濃
度となるよう添加された改変ガンボーグ培地(生産培
地)にこのカルスを置床し、25℃、暗所下で60日間
静置培養を行った。尚、60日間の静置培養期間中に植
え継ぎは一度行われた。すなわち、2代継代培養が行わ
れた。この結果、新鮮重量で849.9gのカルス(新
鮮カルスと称する)が得られた。
【0270】次に、上記新鮮カルスを用いて新規なアビ
エタン化合物としての化合物(39)の抽出を行った。
先ず、新鮮カルス849.9gを採取し、凍結乾燥させ
ることにより、乾燥カルス77.5gを得た。該乾燥カ
ルスを粉砕した後、有機溶媒としてn−ヘキサン、酢酸
エチルを用いて、順に抽出操作を行った。即ち、1Lの
n−ヘキサンを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回繰り
返す)を行った後、1Lの酢酸エチルを用いて一時間撹
拌・抽出操作(3回繰り返す)を行った。そして、n−
ヘキサン層(抽出液)からn−ヘキサンを留去して、粗
n−ヘキサン抽出物577.3mgを得た。また、酢酸
エチル層(抽出液)から酢酸エチルを留去して、粗酢酸
エチル抽出物775.2mgを得た。
【0271】続いて、上記の粗酢酸エチル抽出物77
5.2mgをシリカゲルフラッシュカラムを用いたシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(Merck製:Silica gel
60,230-240mesh, 18.7g) で以下に説明する9フラクシ
ョン(F(1)〜F(9))に粗分けした。フラクショ
ンF(1)は、n−ヘキサンと酢酸エチルとを容量比
8:2で混合してなる溶離液を用いて得られた分画であ
り、フラクションF(2)〜F(5)は、n−ヘキサン
と酢酸エチルとを容量比7:3で混合してなる溶離液を
用いて得られた分画であり、フラクションF(6)及び
F(7)は、n−ヘキサンと酢酸エチルとを容量比4:
6で混合してなる溶離液を用いて得られた分画である。
また、フラクションF(8)は、酢酸エチルを溶離液と
して得られた分画であり、F(9)は、メチルアルコー
ルを溶離液として得られた分画である。
【0272】そして、ODSステンレスカラムを用いた
逆相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-ODS;
25×1cm;GL Science;溶媒 メチルアルコール:
0.05M酢酸アンモニウムバッファー(pH4.
8):アセトニトリル=1:2:2混合溶液;流速5m
l/min) を用い、上記フラクションF(6)(12
0.4mg)より各種化合物を分離したところ、化合物
(39)が2.3mg(乾燥カルスに対して0.003
重量%、保持時間(tR)14.5分)、単離された。
【0273】単離された化合物(39)の同定並びに構
造決定は、上記説明の化合物(37)、(38)の同定
並びに構造決定と同様の方法により行った。これらの測
定結果は、表39にまとめて示す。これにより、化合物
(39)の構造を解析した。また、該化合物(39)の
物性値等を測定した結果、 分子式 : C20204 分子量 : 296.1415(測定値)、296.1
417(計算値) 融 点 : 282℃〜284℃ 溶解性 : CHCl3 に可溶 〔α〕D 20: −118.84°(c=0.138,C
HCl3 ) I R : 3624,2949,1728cm-1(C
HCl3 ) U V : 519.0(1.92),2308.5
(2.27),244.0(2.67),242.0
(2.67),238.5(4.68)nm(log
ε)(C25 OH) であった。尚、上記の分子量としては、分子イオン( M
+ ) からカルボニル基(C=O)が抜けた状態(すなわ
ち、C19203 )のフラグメントピークの測定値と計
算値とを示している。
【0274】
【表39】
【0275】〔実施例10〕日本イチイ(Taxus cuspid
ata Sieb. et Zucc.)の若茎(針葉部)を外植体として
用いてカルスの誘導並びに組織培養を行い、該カルスか
らタキサン関連化合物である化合物(40)の取り出し
を行った。上記外植体としての若茎は、冬季(採取前1
ヵ月間の平均気温5℃以下)に採取した。
【0276】はじめに、上記切片を一般的な方法で洗浄
・滅菌処理した後、ショ糖(スクロース)、寒天粉末、
およびオーキシンであるNAAが、順に20g/L、1
0g/L、1.0mg/Lの濃度となるよう添加された
改変ガンボーグ培地(以下、改変ガンボーグ固体培地と
称する)に、該切片を置床した。すなわち、本実施例に
おける改変ガンボーグ固体培地とは、以下の表40に示
す組成よりなる固体培地である。
【0277】
【表40】
【0278】そして、上記の固体培地を25℃、暗所下
で静置した。これにより、培養細胞を静置培養して、日
本イチイのカルスを得た。次に、約40〜50日毎に増
殖性の良好なカルスを選抜し、同一組成の培地を用いて
継代培養を行うことで、系統を確立した。続いて、寒天
粉末、NAA、フェニルアラニン、酢酸が、順に、10
g/L、0.5mg/L、0.263g/L、1.0m
l/Lの濃度となるよう添加された改変ガンボーグ培地
に得られたカルスを置床し、25℃、暗所下で60日間
静置培養を行った。この結果、新鮮重量で605.5g
のカルス(新鮮カルスと称する)が得られた。
【0279】次に、上記新鮮カルスを用いて上記化合物
(40)の抽出を行った。先ず、新鮮カルス605.5
gを採取し、凍結乾燥させることにより、乾燥カルス5
5.9gを得た。続いて、有機溶媒としてn−ヘキサ
ン、酢酸エチル、メチルアルコールを用いて、該乾燥カ
ルスからの抽出操作を順に行った。即ち、n−ヘキサン
1Lを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回繰り返す)を
行った後、酢酸エチル1Lを用いて一時間撹拌・抽出操
作(3回繰り返す)を行い、次いで、メチルアルコール
1Lを用いて一時間撹拌・抽出操作(3回繰り返す)を
行った。
【0280】そして、n−ヘキサン層(抽出液)からn
−ヘキサンを留去して、粗n−ヘキサン抽出物106
1.7mgを得た。また、酢酸エチル層(抽出液)から
酢酸エチルを留去して、粗酢酸エチル抽出物856.2
mgを得た。この粗酢酸エチル抽出物は、メチルアルコ
ール/酢酸エチル混合溶液(混合量、10ml:40m
l)に溶解された後に、a)0.5M硫酸水溶液20m
lで洗浄されてアルカロイド分画(塩基性成分)の除去
が行われ、ついで、b)1M水酸化ナトリウム水溶液2
0mlで洗浄されてフェノール分画(酸性成分)の除去
が行われた。続いて、溶媒(酢酸エチル)の除去が行わ
れ、粗酢酸エチル中性分画543.6mgを得た。
【0281】一方、メチルアルコール層(抽出液)から
メチルアルコールを除去して、粗メチルアルコール抽出
物を得た。この粗メチルアルコール抽出物は、メチルア
ルコール/水混合溶液(混合量、50ml:40ml)
に溶解された後に、クロロホルム100mlで3回抽出
操作が行われ、続いてクロロホルムが除去されて粗クロ
ロホルム抽出物918.3mgが得られた。この粗クロ
ロホルム抽出物は、メチルアルコール/酢酸エチル混合
溶液(混合量、10ml:40ml)に溶解された後
に、a)0.5M硫酸水溶液で洗浄されてアルカロイド
(塩基性成分)の除去が行われ、ついで、b)1M水酸
化ナトリウム水溶液で洗浄されてフェノール分画(酸性
成分)の除去が行われた。続いて、溶媒(酢酸エチル)
の除去が行われ、粗クロロホルム中性分画693.2m
gを得た。
【0282】続いて、シリカゲルステンレスカラムを用
いた順相高速液体クロマトグラフィー(INERTSIL PREP-S
IL;25×2cm;GL Science;溶媒 酢酸エチル:n
−ヘキサン=2:8;流速10.0ml/min) を用
いて、上記の粗n−ヘキサン抽出物1061.7mgよ
り各種化合物を分離した。その結果、上記化合物(4
0)が、19.7mg(保持時間(tR):28.9
分)単離された。
【0283】上記化合物(40)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表41にまとめて示す。これ
により、化合物(40)の構造を解析した。また、該化
合物(40)の融点は127℃〜128℃であった。
【0284】
【表41】
【0285】なお、表41には文献(S.K.Chattopadhya
y,et.al.,J.Med.Aroma.Plant Sci.,19,17:1997) に報
告のある、タクスシン(taxusin) のNMRデータを参照
(reference) として併記している。上記の化合物(4
0)のNMRデータや融点の値は、該文献の記載とほぼ
一致することが判明した。該化合物(40)の多剤耐性
癌克服作用については、実施例12にて詳述する。
【0286】〔実施例11〕樹高2mの日本イチイから
採取した新鮮葉および若茎よりなる針葉部から、タキサ
ン関連化合物である化合物(41)〜(44)、化合物
(46)、並びに、化合物(47)を取り出した。即
ち、上記の針葉部1248gをn−ヘキサン8Lに1週
間浸漬することにより脱脂した後、酢酸エチル8Lに浸
漬した。1週間浸漬した後、針葉部を濾別し、濾液であ
る抽出液を得た。次いで、抽出液から酢酸エチルを室温
で減圧除去し、該酢酸エチルに可溶な成分(粗酢酸エチ
ル抽出物)19.69gを得た。
【0287】上記の成分を、メチルアルコールと酢酸エ
チルとを容量比1:3で混合してなる混合溶液400m
lに溶解した。次に、該溶液を、酸性水溶液である0.
5M硫酸100mlで3回(3×100ml)洗浄し、
続いて、塩基性水溶液である2M水酸化ナトリウム水溶
液100mlで2回(2×100ml)洗浄することに
よりフェノール分画1.08g(針葉部の量を基準とし
て0.087%)を除去した。さらに、上記の溶液(油
層)を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで
乾燥させ、メチルアルコールおよび酢酸エチルを除去し
た。これにより、粗中性分画(テルペン分画)7.49
g(同0.600%)を得た。
【0288】一方、洗浄後の上記0.5M硫酸に29重
量%アンモニア水を添加してpHを9.0とした後、ク
ロロホルム200mlで3回(3×200ml)抽出し
た。これにより、粗アルカロイド分画3.65g(針葉
部の量を基準として0.292%)を得た。
【0289】次に、上記の粗中性分画を、シリカゲルを
用いたオープンカラムクロマトグラフィーを採用して、
溶媒としてn−ヘキサンと酢酸エチルとメチルアルコー
ルとを用いたグラジュエント溶出を行うことにより、F
1 〜F10の10個のフラクションに分画(荒分け)し
た。F1 〜F8 の溶出液は酢酸エチル:n−ヘキサンが
容量比2:3で混合してなる混合溶液であり、F9 の溶
出液は酢酸エチルであり、F10の溶出液はメチルアルコ
ールであった。各フラクションの収量は、1番目(低極
性側)から10番目(高極性側)に向かって順に、F1
830mg,F22233mg,F3 722mg,F4
405mg,F5 311mg,F6 208mg,F7
77mg,F8 144mg,F9 237mg,F1020
51mgであった。
【0290】そして、前記2番目のフラクション(F
2 )を、シリカゲルステンレスカラム(INERTSIL PREP-
SIL ;25×1cm;GL Science)を用いた順相高速液
体クロマトグラフィー(順相HPLC)を採用して、酢
酸エチルとn−ヘキサンとを容量比3:7で混合してな
る混合溶液(キャリア, 流速5ml/分)を用いて分離
し、保持時間0分〜10.0分の分画F2-1 432.0
mg、および保持時間12.0分〜45.2分の分画F
2-2 962mgを分取した。
【0291】続いて、上記分画F2-1 を上記カラムを用
いて同一条件でさらに分離し、保持時間6.4分の分画
2-1-1 (ピーク)32.7mgを分取した。続いて、
分画F2-1-1 を、上記カラムを用いた順相HPLCを採
用して、酢酸エチルとn−ヘキサンとを容量比2:8で
混合してなる混合溶液(キャリア, 流速5ml/分)に
て分離し、これにより、化合物(44)22.5mg
(保持時間10.8分)を取り出した。該化合物(4
4)の含有量は、新鮮針葉部の重量を基準として0.0
018%であった。
【0292】上記化合物(44)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表42・43にまとめて示
す。これにより、化合物(44)の構造を解析した。ま
た、該化合物(44)の物性値等を測定した結果、 融 点 : 178℃〜180℃ 〔α〕D 25 : +107.3°(c=1.062,C
HCl3 ) I R : 1736,1710,1637 cm
-1(CHCl3 ) であった。
【0293】
【表42】
【0294】
【表43】
【0295】なお、表42・43には文献(M.K.Yeh,Ph
ytochem.,27,1534:1988)に報告のある、2−デスアセト
キシ タキシニンEのNMRデータを参照(reference)
として併記している。上記の化合物(44)のNMRデ
ータは、該文献の記載とほぼ一致することが判明した。
【0296】また、前記分画F2-2 を、シリカゲルステ
ンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL;25×1cm;GL
Science)を用いた順相HPLCを採用して、酢酸エチ
ルとn−ヘキサンとを容量比3:7で混合してなる混合
溶液(キャリア, 流速5ml/分)を用いて分離し、保
持時間17.0分〜21.8分の分画F2-2-1 479.
2mg、および保持時間21.8分〜48.0分の分画
2-2-2 129.3mgを分取した。
【0297】そして、得られた分画F2-2-1 を、ODS
ステンレスカラム(INERTSIL PREP-ODS ;25×1c
m;GL Science)を用いた逆相高速液体クロマトグラフ
ィー(逆相HPLC)を採用して、メチルアルコールと
0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)とア
セトニトリルとを容量比1:1:2で混合してなる混合
溶液(キャリア, 流速5ml/分)を用いてさらに分離
し、保持時間24.7分の分画F2-2-1-1 25.0mg
を分取した。次いで、該分画F2-2-1-1 にメチルアルコ
ールを加えて不純物を再結晶させ、ろ過により結晶部が
取り除かれたろ液部17.5mgを、上記ODSステン
レスカラムを用いて同一条件でさらに分離し、タキシニ
ン NN−3(9-deacethyl taxinine)と化合物(4
1)との混合物分画(保持時間27.5分)7.9mg
を分取した。
【0298】上記混合物分画を、シリカゲルステンレス
カラム(INERTSIL PREP-SIL ;25×0.6cm;GL S
cience)を用いた順相HPLCを採用して、酢酸エチル
とn−ヘキサンとを容量比2:8で混合してなる混合溶
液(キャリア, 流速2ml/分)を用いて分離し、これ
により、化合物(41)1.2mg(保持時間38.1
分)を取り出した。該化合物(41)の含有量は、新鮮
針葉部の重量を基準として0.0001%であった。
【0299】上記化合物(41)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表44・45にまとめて示
す。これにより、化合物(41)の構造を解析した。ま
た、該化合物(41)の物性値等を測定した結果、 融 点 : 121℃〜123℃ 〔α〕D 20 : +48.05°(c=0.077,C
HCl3 ) であった。
【0300】
【表44】
【0301】
【表45】
【0302】これらの結果から、上記化合物(41)
は、新規なタキシニン化合物としての10−デアセチル
タキシニン(タキシニン NN−14)であることが
判明した。尚、10−デアセチル タキシニンは、文献
(T.Oritani,et.al.,Biosci.Biochem.,63,924:1999)
にその名称が記載された物質ではあるが、該物質と化合
物(41)とはNMR分析の結果(特に、9位と10位
のプロトンシフト値)が明らかに異なっており、該文献
に記載の物質は9−deacethyl 体 (タキシニンNN−
3) であったことが明らかとなった。なお、参照のた
め、化合物(41)および上記文献に記載の物質(refe
rence)のNMRデータを表46に併記する。
【0303】
【表46】
【0304】一方、前記分画F2-2 より得られた他方の
分画F2-2-2 を、前記分画F2-2-1から分画F2-2-1-1
を分取した要領に従ってさらに分離し、保持時間0分〜
15.8分の分画F2-2-2-1 64.1mgを分取した。
次いで、該分画F2-2-2-1 を、上記要領に従ってさらに
分離し、粗製の化合物(42)を含む分画5.6mg
(保持時間14.3分)を分取した。そして、上記粗製
の化合物(42)を含む分画を、シリカゲルステンレス
カラム(INERTSIL PREP-SIL ;25×0.6cm;GL S
cience)を用いた順相HPLCを採用して、酢酸エチル
とn−ヘキサンとを容量比2:8で混合してなる混合溶
液(キャリア, 流速1.7ml/分)を用いて分離し、
これにより、精製された化合物(42)3.1mg(保
持時間53.3分)を取り出した。該化合物(42)の
含有量は、新鮮針葉部の重量を基準として0.0002
5%であった。
【0305】上記化合物(42)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表47・48にまとめて示
す。これにより、化合物(42)の構造を解析した。ま
た、該化合物(42)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C374412 分子量 : 680.2822(測定値)、680.2
833(計算値) 融 点 : 232℃〜234℃(プリズム) 〔α〕D 20 : +30.49°(c=0.223,C
HCl3 ) I R : 3044,1750,1714,1638
cm-1(CHCl 3 ) であった。
【0306】
【表47】
【0307】
【表48】
【0308】これらの結果から、上記化合物(42)
は、新規なタキシニン化合物としてのタキシニン NN
−13であることが判明した。
【0309】また、前記2番目のフラクション(F2
2233mgを別に用意し、シリカゲルステンレスカラ
ム(INERTSIL PREP-SIL ;25×1cm;GL Science)
を用いた順相HPLCを採用して、酢酸エチルとn−ヘ
キサンとを容量比2:8で混合してなる混合溶液(キャ
リア, 流速5ml/分)を用いて分離し、保持時間1
2.0分〜45.0分の分画F2-3 961.7mgを分
取した。
【0310】続いて、上記分画F2-3 を、上記カラムを
用いた順相HPLCを採用して、酢酸エチルとn−ヘキ
サンとを容量比3:7で混合してなる混合溶液(キャリ
ア,流速5ml/分)にて分離し、保持時間0分〜1
4.0分の分画F2-3-1 269.0mgを分取した。続
いて、分画F2-3-1 を、上記カラムを用いて同一条件で
分離し、保持時間20.4分の分画(ピーク)F
2-3-1-1 113.0mgを分取した。
【0311】そして、分画F2-3-1-1 を、ODSステン
レスカラム(INERTSIL PREP-ODS ;25×1cm;GL S
cience)を用いた逆相HPLCを採用して、メチルアル
コールと0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.
8)とアセトニトリルとを容量比1:1:2で混合して
なる混合溶液(キャリア, 流速5ml/分)を用いてさ
らに分離し、これにより、化合物(46)30.7mg
(保持時間38.2分)を取り出した。該化合物(4
6)の含有量は、新鮮針葉部の重量を基準として0.0
025%であった。
【0312】上記化合物(46)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表49にまとめて示す。これ
により、化合物(46)の構造を解析した。また、該化
合物(46)の物性値等を測定した結果、 融 点 : 161℃〜163℃ 〔α〕D 20: +66.3°(c=2.32,CHCl
3 ) I R : 1742,1640,1246 cm
-1(CHCl3 ) であった。
【0313】
【表49】
【0314】なお、表49には文献(J.Zang.Chiniese
Chem.Lett.,5,497:1994)に報告のある、2−デスアセト
キシ タキシニンJのNMRデータを参照(reference)
として併記している。上記の化合物(46)のNMRデ
ータや〔α〕D 20の値は、該文献の記載とほぼ一致する
ことが判明した。
【0315】一方、上記3番目のフラクション(F3
を、シリカゲルステンレスカラム(INERTSIL PREP-SIL
;25×2cm;GL Science)を用いた順相HPLC
を採用して、酢酸エチルとn−ヘキサンとを容量比1:
1で混合してなる混合溶液(キャリア, 流速15ml/
分)を用いて分離し、保持時間15.8分の分画F3-1
147.8mg、および、保持時間18.0分〜22.
0分の分画F3-2 164.7mgを分取した。
【0316】得られた分画F3-1 を、ODSステンレス
カラム(INERTSIL PREP-ODS ;25×1cm;GL Scien
ce)を用いた逆相HPLCを採用して、メチルアルコー
ルと0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)
とアセトニトリルとを容量比1:1:2で混合してなる
混合溶液(キャリア, 流速5ml/分)を用いて単離・
精製した。これにより、化合物(43)2.5mg(保
持時間17.4分)を取り出した。該化合物(43)の
含有量は、新鮮針葉部の重量を基準として0.0002
%であった。
【0317】上記化合物(43)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表50・51にまとめて示
す。これにより、化合物(43)の構造を解析した。ま
た、該化合物(43)の物性値等を測定した結果、 分子式 : C354210 分子量 : 622.2783(測定値)、622.2
778(計算値) 融 点 : 247℃〜249℃ 〔α〕D 20: +173.37°(c=0.154,C
HCl3 ) I R : 3548,1780,1714,1640
cm-1(CHCl 3 ) であった。
【0318】
【表50】
【0319】
【表51】
【0320】上記の結果から、化合物(43)は、本願
発明者により新たに見いだされた新規なタキシニン化合
物としてのタキシニン NN−12であることが判明し
た。
【0321】一方、前記分画F3-2 を、前記フラクショ
ンF3 から分画F3-1 ・F3-2 を分取した要領に従って
さらに分離し、保持時間17.5分の分画F3-2-1
4.1mg、および、保持時間18.7分の分画F
3-2-2 100.3mgを分取した。次いで、これら分画
3-2-1 ・F3-2-2 それぞれを、ODSステンレスカラ
ム(INERTSIL PREP-ODS ;25×1cm;GL Science)
を用いた逆相HPLCを採用して、メチルアルコールと
0.05M酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)とア
セトニトリルとを容量比1:2:2で混合してなる混合
溶液(キャリア, 流速5.0ml/分)を用いて分離し
た。これにより、分画F3-2-1 から保持時間7.3分の
分画F3-2-1-1 2.5mgを、分画F3-2-2 から保持時
間7.3分の分画F3-2-2-1 8.7mgを分取した。
【0322】得られた上記分画F3-2-2-1 を、上記OD
Sステンレスカラムを用い、上記と同一条件で再分離し
て、保持時間20.7分の分画1.1mgを分取し、続
いて、該分画と分画F3-2-1-1 とをそれぞれNMR分析
して、両分画に共通の化合物が含まれていることを確認
した。
【0323】次いで、上記分画F3-2-2-1 から分取され
た分画と分画F3-2-1-1 とをあわせて、上記ODSステ
ンレスカラムを用い、上記と同一条件で単離・精製を行
った。これにより、化合物(47)1.5mg(保持時
間35.2分)を取り出した。該化合物(47)の含有
量は、新鮮針葉部の重量を基準として0.00012%
であった。
【0324】上記化合物(47)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表52・53にまとめて示
す。これにより、化合物(47)の構造を解析した。ま
た、該化合物(47)の物性値等を測定した結果、 融 点 : 200℃〜202℃ 〔α〕D 20 : +161.7°(c=0.115,C
HCl3 ) であった。
【0325】
【表52】
【0326】
【表53】
【0327】なお、表52・53には文献(G.Appendin
o,Phytochem.,31,4253:1992)に報告のある、5−シンナ
モイル−10−アセチル−タキシン II のNMRデータ
を参照(reference) として併記している。上記の化合物
(47)のNMRデータや物性値(融点、並びに〔α〕
D 20)は、該文献の記載とほぼ一致することが判明し
た。
【0328】取り出された上記の化合物(41)〜(4
4)、化合物(46)、並びに、化合物(47)の多剤
耐性癌克服作用の測定結果は、以下の実施例12にまと
めて示すものとする。
【0329】〔実施例12〕仙台産の日本イチイから採
取した新鮮葉および若茎よりなる針葉部から、タキサン
関連化合物である化合物(45)を取り出した。即ち、
上記の針葉部1674gをn−ヘキサン6.95Lに1
週間浸漬し、n−ヘキサン抽出物2.8gを得、残りを
さらに酢酸エチル6.95Lに一週間浸漬し、酢酸エチ
ル抽出物29.3gを得た。この酢酸エチル抽出物を酢
酸エチル/n−ヘキサン(体積比1:1)混合溶液に溶
かし、不溶部として20.8gのクルードオイルを得
た。
【0330】次に、該クルードオイルをメチルアルコー
ル100mlに溶かし、さらに酢酸エチル300mlを
加えた後、酸性水溶液である0.5M硫酸100mlで
3回(3×100ml)洗浄することにより、塩基性物
質を水層(硫酸)中に抽出した。そして、洗浄後の上記
0.5M硫酸(水層)に29重量%アンモニア水を添加
してpHを9.0とした後、クロロホルム100mlで
3回(3×200ml)抽出した。これにより、粗アル
カロイド分画2.8gを得た。
【0331】こうして得られた粗アルカロイド分画を、
アルミナ272gを充填剤として用いたカラムクロマト
グラフィーを採用して、展開溶媒としてn−ヘキサンと
酢酸エチルとメチルアルコールとを用いたグラジュエン
ト溶出を行うことにより、f1〜f14の14個のフラ
クションに分画(荒分け)した。
【0332】次に、これらのフラクションを、ODSカ
ラムを用いた逆相HPLCで分析することにより以下に
示す計8つのフラクションF1〜F8にまとめた。これ
らフラクションとはすなわち、F1(f1〜f4:35
0mg)、F2(f5〜f6:350mg)、F3(f
7:200mg)、F4(f8:54mg)、F5(f
9:1.18g)、F6(f10:271mg)、F7
(f11:219mg)、F8(f12〜f14:11
5mg)、である。
【0333】これらフラクションのうち、逆相HPLC
を採用してフラクションF2の分取を行い、次の条件で
化合物(45)を単離した。すなわち、測定機器として
SHIMAZU LU-6A を、カラムとしてODSステンレスカラ
ム(Q INERTSIL PREP-ODS;25cm×2cm)を採用し、検出U
Vの波長(λ)=254nmの条件下で、メチルアルコ
ールと0.05M酢酸−酢酸アンモニウム緩衝液(pH
4)とアセトニトリルとを容積比1:1:2で混合して
なる展開溶液(キャリア, 流速9.0ml/分)を用い
て、フラクションF2を分離した。これにより、フラク
ションF2から保持時間0分〜15分の分画F1−1
193mgを分取した。
【0334】続いて、酢酸エチルとn−ヘキサンとを体
積比4:6で含む展開溶媒を使用して、上記分画F1−
1をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、得
られた高極性部154mgを逆相HPLCで粗分けした
後、再度分取を行い、化合物(45)37.7mgを取
り出した。該化合物(45)の含有量は、新鮮針葉部の
重量を基準として0.0022%であった。
【0335】上記化合物(45)の 1H−NMRおよび
13C−NMRの測定結果を表54・55にまとめて示
す。これにより、化合物(45)の構造を解析した。ま
た、該化合物(45)の物性値等を測定した結果、 融 点 : 61℃〜65℃ 〔α〕D 20: +46.6°(c=1.17,CHCl
3 ) I R : 3616,1740 cm-1(CHCl
3 ) であった。
【0336】
【表54】
【0337】
【表55】
【0338】上記の化合物(45)のNMRデータや物
性値(融点、並びに〔α〕D 20)は、文献(J.Kobayash
i,Chem.Pharm.Bull.,45,1205:1997) の記載とほぼ一致
し、タキシンNA−2 (タクスピンZ:taxuspine Z)で
あることが判明した。該化合物(45)の多剤耐性癌克
服作用の測定については以下に示す。
【0339】(化合物(40)〜(47)の多剤耐性癌
克服作用の測定)化合物(40)〜(47)の多剤耐性
癌克服作用(ここでは、P−糖蛋白質阻害剤としての機
能)を、上記説明の方法にて測定した。多剤耐性癌克服
作用の測定結果は以下の表56〜61にまとめて示す。
表56〜61において、「投与濃度」とは、化合物(4
0)〜(47)、または、ベラパミルの反応溶液におけ
る濃度を示し、「VCR蓄積量の平均値」とは、各ウェ
ルにおける、2780AD細胞中のビンクリスチン(V
CR)蓄積量の平均値を示す。また、「ベラパミル比」
とは、ベラパミルを対照薬剤とした比較実験との比較結
果を示し、「評価」の項における(最大ベラパミル
比)、及び(濃度)とはそれぞれ、ベラパミルと比較し
て最も効果が高かったときの比および濃度を示すものと
する。尚、多剤耐性癌克服作用がベラパミルより明らか
に高い7種の化合物については、再測定を行った(表5
9〜61参照)。
【0340】
【表56】
【0341】
【表57】
【0342】
【表58】
【0343】
【表59】
【0344】
【表60】
【0345】
【表61】
【0346】表56〜61より明らかなように、上記化
合物(40)〜(47)はいずれも多剤耐性癌克服作用
を有し、それ単独で新規な多剤耐性癌克服剤となりうる
ことが明らかになった。特に、表59〜61に示すよう
に、化合物(40),(41),(43),(44),
(45),(46),(47)は、ベラパミルを上回る
多剤耐性癌克服作用を有する高活性化合物であることが
明らかとなり、それ単独で特に有効な多剤耐性癌克服剤
となりうることが明らかになった。
【0347】〔生物テスト〕本発明化合物の抗癌作用を
測定した。本発明化合物の代表として化合物(26)と
化合物(36)を選んだ。ヒト培養癌細胞パネルによる
抗癌剤スクリーニングは,米国国立研究所(NCI)の
方法に順じてインビトロテストを行った。すなわち,ヒ
ト培養癌細胞パネルは、肺癌7系、胃癌6系、大腸癌5
系、卵巣癌5系、脳腫瘍6系、乳癌5系、腎癌2系、前
立腺癌2系およびメラノーマ系1系の計39系よりな
る。これらを1つのパネルとして扱い、in vitro 薬剤
感受性試験を行った。癌細胞を96ウェルプレートにま
き込み、翌日検体溶液(5 doses、10-4から10-8Mまで
1 log間隔、最高濃度をHigh Conc と呼ぶ)を添加、2
日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色
定量で測定した。その結果を下記するが、データ解析の
パラメータとして、薬をかける直前(Time Zero)の細
胞数を基準として G150:Controlに比べて増殖を50%抑制する濃度 TGI :Time Zeroと同じ細胞数に増殖を抑制する濃
度(見かけ上細胞数の増減がない濃度) LC50:Time Zeroの50%に細胞数を減少させる濃
度 の3種類を求めた。
【0348】
【表62】
【0349】
【表63】 上記において、G150、TgIおよびLC−50はそ
れぞれモル濃度を表し、E−04、E−05およびE−
06はそれぞれ10−4、10−5および10 −6を表
す。
【0350】
【発明の効果】本発明の多剤耐性癌克服剤は、以上のよ
うに、上記化学式(1)〜(47)で表される化合物か
ら選ばれる少なくとも一種の化合物を含む構成である。
【0351】上記化合物は何れも、複数の抗癌剤に対す
る耐性を獲得した癌細胞、特に多剤耐性癌細胞に対する
多剤耐性癌克服作用を有しており、該癌細胞に好適に投
与することができる多剤耐性癌克服剤を提供することが
できるという効果を奏する。
【0352】上記化学式(1)〜(47)の化合物また
は当該化合物と他の抗癌作用物質(抗癌剤)とを組み合
わせて使用して優れた癌治療効果を奏することができ
る。本発明の多剤耐性癌克服剤の製造方法は、化学式
(6)〜(47)で示される化合物を日本イチイの組織
または日本イチイの組織より誘導されるカルスから取り
出す工程を含む方法である。
【0353】上記の製造方法によれば、環境を保全しな
がら、該有用化合物を効率的に製造することができる。
これにより、上記多剤耐性癌克服剤を、環境を保全しな
がら効率的に製造することができるという効果を奏す
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/352 A61K 31/352 35/78 35/78 B A61P 35/00 A61P 35/00 C07C 39/23 C07C 39/23 49/637 49/637 69/33 69/33 69/618 69/618 229/34 229/34 C07D 493/08 C07D 493/08 B 493/18 493/18 Fターム(参考) 4C071 AA03 AA07 BB02 BB07 CC11 EE03 EE05 EE07 FF15 FF17 FF18 GG01 HH05 HH08 KK17 LL01 4C086 AA01 AA02 CA01 MA01 MA04 NA14 ZB26 4C088 AB03 AC05 BA32 CA06 CA07 CA14 NA14 ZB26 4C206 AA01 AA02 CA05 CA14 CA16 CB24 CB25 DB20 MA01 MA04 NA14 ZB26 4H006 AA01 AA03 AB29 BJ20 BN20 BR70 FC36 FE12 GP02

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1) 【化1】 (式中、Rは水素原子またはエステル化もしくはエー
    テル化されていてもよい水酸基を、Rは水素原子を、
    またはRとRとが一緒になって=Oを、Rは水素
    原子を、Rは水素原子もしくは水酸基を、またはR
    とRとが一緒になって、単結合または−O−を形成し
    てもよく、またはRとRが一緒になって−O−CH
    −を形成してもよく、Rは水素原子またはエステル
    化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
    はメチル基、ヒドロキシメチル基、またはエステル化も
    しくはエーテル化されていてもよい水酸基、Rはエス
    テル化またはエーテル化されていてもよい水酸基、R
    は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化されて
    いてもよい水酸基、Rは水素原子またはエステル化も
    しくはエーテル化されていてもよい水酸基、R10は水
    素原子またはRと一緒になって単結合を表してもよ
    い、R11はメチル基またはエステル化もしくはエーテ
    ル化されていてもよい水酸基を有するメチル基、R12
    は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化されて
    いてもよい水酸基を、R13は水素原子またはエステル
    化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
    14は水素原子またはエステル化もしくはエーテル化さ
    れていてもよい水酸基を示す)で表される化合物、式
    (2) 【化2】 (式中、R15はエステル化もしくはエーテル化されて
    いてもよい水酸基を、R16は水素原子を、R17はメ
    チル基を、またはR16とR17とが一緒になって−O
    −CH−を形成してもよく、R18は水素原子または
    エステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基
    を、R19はエステル化もしくはエーテル化されていて
    もよい水酸基を、 【化3】 は二重結合または単結合を示す)で表される化合物、式
    (3) 【化4】 (式中、R20はエステル化またはエーテル化されてい
    てもよい水酸基を、R は水素原子またはエステル化
    もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R22
    は水素原子を、またはR21とR22とが一緒になって
    =Oを形成してもよく、R23は水素原子またはエステ
    ル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基を、R
    24は水素原子を、またはR23とR24とが一緒にな
    って=Oを形成してもよく、R25は水素原子またはエ
    ステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸基
    を、R26は水素原子を示す。もっともR25とR26
    とが一緒になって=Oを形成してもよい)で表される化
    合物、式(4) 【化5】 (式中、R27、R28、R29、R30、R31およ
    びR32はそれぞれ同一または異なって水素原子、また
    はエステル化もしくはエーテル化されていてもよい水酸
    基を示す。R33、R34は水素原子を示すかR32
    33またはR とR34とが一緒になって=Oを形
    成してもよい)で表される化合物、または式(5) 【化6】 (式中、R35、R36、R37、R38およびR39
    はそれぞれ同一または異なって、エステル化またはエー
    テル化されていてもよい水酸基を示す)で表される化合
    物またはその塩を含有することを特徴とする医薬。
  2. 【請求項2】 化合物が式 【化7】 【化8】 【化9】 【化10】 【化11】 【化12】 【化13】 【化14】 【化15】 【化16】 【化17】 【化18】 【化19】 【化20】 【化21】 【化22】 【化23】 【化24】 【化25】 【化26】 【化27】 【化28】 【化29】 【化30】 【化31】 【化32】 【化33】 【化34】 【化35】 【化36】 【化37】 【化38】 【化39】 【化40】 【化41】 【化42】 【化43】 【化44】 【化45】 【化46】 【化47】 または 【化48】 (式中、Acはアセチル基を、Bzはベンゾイル基を、
    Meはメチル基を、Phはフェニル基を示す)で表され
    る化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の医
    薬。
  3. 【請求項3】 癌克服剤である請求項1または2に記載
    の医薬。
  4. 【請求項4】 多剤耐性癌克服剤である請求項1または
    2に記載の医薬。
  5. 【請求項5】 抗癌作用物質蓄積増強剤である請求項1
    〜4のいずれかに記載の医薬。
  6. 【請求項6】 さらに抗癌作用物質を含有する請求項1
    〜5のいずれかに記載の医薬。
  7. 【請求項7】 請求項1または2に記載の化合物と抗癌
    作用物質とを組み合わせて癌患者に投与することを特徴
    とする癌の治療方法。
  8. 【請求項8】 式 【化49】 【化50】 【化51】 【化52】 【化53】 【化54】 【化55】 【化56】 【化57】 【化58】 【化59】 または 【化60】 (式中、Acはアセチル基を、Meはメチル基を、Ph
    はフェニル基を示す)で表される化合物。
  9. 【請求項9】 式 【化61】 または 【化62】 (式中、Acはアセチル基を、Phはフェニル基を示
    す)で表される化合物を含有することを特徴とする制癌
    剤。
  10. 【請求項10】 日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb.
    et Zucc.)の組織またはその組織より誘導されるカルス
    から請求項2に記載の化合物を採取することを特徴とす
    る請求項2に記載された化合物の製造方法。
  11. 【請求項11】 タキシン骨格、タキシニン骨格または
    アビエタン骨格を有し、抗癌作用物質蓄積増強作用また
    は抗癌作用物質排出抑制作用のある化合物を含有する医
    薬。
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