JP2001322946A - 抗真菌剤 - Google Patents

抗真菌剤

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JP2001322946A
JP2001322946A JP2000141763A JP2000141763A JP2001322946A JP 2001322946 A JP2001322946 A JP 2001322946A JP 2000141763 A JP2000141763 A JP 2000141763A JP 2000141763 A JP2000141763 A JP 2000141763A JP 2001322946 A JP2001322946 A JP 2001322946A
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antifungal
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sarcotoxin
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Shunji Natori
俊二 名取
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RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な抗真菌剤、特には人体には害の少ない
抗真菌剤を提供すること。 【解決手段】 下記のアミノ酸配列の何れかを有するペ
プチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって上記ペプ
チドと同様の抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はそ
の塩を有効成分として含む抗真菌剤。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
示すアミノ酸配列。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗真菌剤に関する。
より詳細には、本発明は、センチニクバエ幼虫の体表傷
害時に誘導される生体防御因子であるSarcotoxinIA又は
その誘導体を有効成分として含む抗真菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】感染症は、バクテリアや真菌などの病原
微生物の体内侵入により人体機能が冒される疾患であ
る。感染症の治療にはバクテリアが作り出す抗生物質
や、人工的に合成した化学療法剤が用いられるが、薬剤
に対する耐性菌の出現の問題があり、新型の抗生物質の
開発が必要である。抗細菌剤の開発の著しい進歩と比べ
ると、抗真菌剤の開発は極めて遅れているが、その理由
としては、真菌は宿主と同様の真核生物であり、真菌だ
けをターゲットととした選択毒性の高い抗真菌剤を開発
することが困難であることが挙げられる。現在日本で使
用が認められている抗真菌剤は数種類のみであり、それ
らの抗真菌剤も効果又は副作用の点で問題点があり、さ
らに新規な抗真菌剤を開発する必要がある。さらに、近
年開発された広域スペクトルのβ−ラクタム薬の使用に
より、患者の体内のカンジダ検出率が増加し、真菌症を
患う患者数が激増しているという事実もある。これらの
現状から見て、新規な抗真菌剤を開発する必要性は極め
て高い。
【0003】本発明者はこれまでに、センチニクバエ幼
虫の体表傷害時に誘導される生体防御因子であるSarcot
oxinIAについて、その抗菌作用に注目した機能の解析を
進めてきた。SarcotoxinIAは39個のアミノ酸からなる
タンパク質であり、プラスチャージのアミノ酸を多く含
むαヘリックスと、疎水性アミノ酸を多く含むαヘリッ
クスの二つのαヘリックスを持つ両親媒性タンパクであ
ることが分かっている(Iwai,H.他、1993, Eur.J.Bioch
em. 217, 639-644)(図1及び図2)。これまでに、Sarc
otoxinIAはグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して抗菌
作用を示すことが報告されているが(Okada,M.他、198
5, Biochem.J. 229, 453-458;及びOkada,M.他、1984, B
iochem.J. 222, 119-124)、真菌に対する作用について
は全く不明であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、新規な抗真菌剤、特には人体には害の少な
い抗真菌剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解
決することを目的として、真菌C.albicansに対するSarc
otoxinIAの効果を鋭意検討した結果、SarcotoxinIAは抗
真菌作用を示すことを新たに見出した。さらに、本発明
者はSarcotoxinIAの抗真菌剤としての有用性を評価する
ことを目的として、SarcotoxinIAの抗真菌作用メカニズ
ムの詳細に解析した。具体的には先ず、SarcotoxinIAの
抗真菌作用を調べるためにC.albicansの生育環境である
サブロー培地中で抗真菌アッセイを行った結果、30μ
MのSarcotoxinIAの存在下で60分インキュベーション
した後のCFUが50%に抑えられることが判明した。
【0006】次に、SarcotoxinIAに細胞毒性があるかど
うかを調べる目的でヒト乳ガン細胞に対する代謝阻害作
用を調べた結果、高濃度のSarcotoxinIAを添加しても代
謝阻害はほとんど起こらないことが判明した。次に、Sa
rcotoxinIAの作用点を調べる目的でC.albicansのスフェ
ロプラストに対して抗真菌アッセイを行った結果、完全
なC.albicansを用いた時と比べてスフェロプラストに対
する抗真菌作用のほうがはるかに強く、SarcotoxinIAの
作用点は、細胞壁よりはむしろ細胞膜であることが示唆
された。
【0007】次に、SarcotoxinIAの抗真菌作用様式を調
べるためにSarcotoxinIA添加後の、C.albicansおよびそ
のスフェロプラストの細胞表面の走査型電子顕微鏡観察
を行った結果、C.albicansにおいてはSarcotoxinIA添加
後細胞表面に小さな突起物が出現し、細胞の形が変形し
たものが観察される一方、スフェロプラストについて
は、SarcotoxinIA添加後に、細胞膜の破壊が観察され
た。これらの結果より、SarcotoxinIAの作用点は細胞膜
であるということが示唆された。次に、SarcotoxinIAの
作用点が細胞膜上のエルゴステロールであるかどうかを
調べる目的でエルゴステロールの含量を変えたリポソー
ムを作成して、それに対するSarcotoxinIAの傷害度の違
いを調べた。その結果、コレステロールと比べてエルゴ
ステロールのリポソームのグルコース放出(%)が大き
く、また、エルゴステロールの含量依存にグルコース放
出(%)が大きくなった。この結果から、SarcotoxinIA
の抗真菌作用において、エルゴステロールの存在が重要
な意味を持つ可能性があることが示唆された。
【0008】さらにまた、SarcotoxinIAのどの部位が抗
真菌作用において重要であるかを知る目的で、Sarcotox
inIAの誘導体(SarcotoxinIAのアミノ酸1〜23からな
る部分ペプチド、又はアミノ酸3〜39からなる部分ペ
プチド)を作成して抗真菌アッセイを行った結果、N末
端の二つのアミノ酸および、N末端側のαヘリックスが
重要であることが判明した。本発明はこれらの知見に基
づき完成したものである。
【0009】即ち、本発明によれば、下記のアミノ酸配
列の何れかを有するペプチド、上記ペプチドの修飾ペプ
チドであって上記ペプチドと同様の抗真菌活性を有する
修飾ペプチド、又はその塩を有効成分として含む抗真菌
剤が提供される。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
示すアミノ酸配列。
【0010】好ましくは、本発明の抗真菌剤は、配列番
号1から3の何れかに記載のアミノ酸配列を有するペプ
チド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって上記ペプチ
ドと同様の抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はその
塩を有効成分として含む。さらに好ましくは、本発明の
抗真菌剤は、配列番号1から3の何れかに記載のアミノ
酸配列を有するペプチド又はその塩を有効成分として含
む。
【0011】本発明の別の観点によれば、真菌を抑制す
る方法であって、薬理学的に有効量の下記のアミノ酸配
列の何れかを有するペプチド、上記ペプチドの修飾ペプ
チドであって上記ペプチドと同様の抗真菌活性を有する
修飾ペプチド、又はその塩をヒトを含む哺乳類動物に投
与する工程を含む方法が提供される。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
示すアミノ酸配列。
【0012】本発明のさらに別の観点によれば、抗真菌
剤の製造における、下記のアミノ酸配列の何れかを有す
るペプチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって上記
ペプチドと同様の抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又
はその塩の使用が提供される。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
示すアミノ酸配列。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様及び実施
方法について詳細に説明する。本発明の抗真菌剤は有効
成分として、センチニクバエ幼虫の体表傷害時に誘導さ
れる生体防御因子であるSarcotoxinIA又はその誘導体を
含むことを特徴とする。上記した通り、SarcotoxinIAは
39個のアミノ酸配列(配列番号1に示す)からなり、
プラスチャージのアミノ酸を多く含むαヘリックスと、
疎水性アミノ酸を多く含むαヘリックスの二つのαヘリ
ックスを持つ両親媒性タンパクであることが分かってい
る(Iwai,H.他、1993, Eur.J.Biochem. 217, 639-644)
(図1及び図2)。
【0014】本発明の抗真菌剤における有効成分は、下
記のアミノ酸配列の何れかを有するペプチド、上記ペプ
チドの修飾ペプチドであって上記ペプチドと同様の抗真
菌活性を有する修飾ペプチド、又はその塩である。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
示すアミノ酸配列。
【0015】本発明において有効成分として使用するペ
プチドのアミノ酸配列の具体例を配列番号1から3に示
す。本発明では、配列番号1から3に記載のアミノ酸配
列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又
は挿入したアミノ酸配列であって抗真菌活性を示すアミ
ノ酸配列を有効成分として使用してもよい。上記の「1
から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1
から10個、好ましくは1から7個、さらに好ましくは
1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味す
る。
【0016】上記したようなペプチドの修飾ペプチドで
あって、上記したペプチドと同様の抗真菌活性を有する
修飾ペプチドも本発明では使用することができる。上記
の修飾ペプチドにおいて、「修飾」という用語は、化学
的修飾及び生物学的修飾を含めて最も広義に解釈しなけ
ればならない。修飾の例としては、例えば、アルキル
化、エステル化、ハロゲン化、又はアミノ化などの官能
基導入、酸化、還元、付加、又は脱離などによる官能基
変換、糖化合物(単糖、二糖、オリゴ糖、若しくは多
糖)又は脂質化合物などの導入、リン酸化、あるいはビ
オチン化などを挙げることができるが、これらに限定さ
れることはない。
【0017】上記した(b)配列番号1から3の何れか
に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が
欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列を含むペプ
チド、又は上記したようなペプチドの修飾ペプチドが抗
真菌活性を有するかどうかは、本明細書の実施例に詳細
かつ具体的に記載した試験方法によって、又は上記試験
方法に適宜の改変や修飾を加えることにより、当業者が
容易に確認可能である。
【0018】さらにまた、上記したペプチドの塩も本発
明の範囲内のものである。本発明で使用できるペプチド
の塩としては、生理学的に許容される酸付加塩または塩
基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、
リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるい
は酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、
コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香
酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機
酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウ
ム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるい
はカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジ
ンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
【0019】塩は、塩酸などの適切な酸、あるいは水酸
化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することが
できる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若
しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含
む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理すること
により調製することができる。なお、処理温度は通常0
〜100℃であるが、室温が好ましい。
【0020】SarcotoxinIAは、体表傷害を付与したセン
チニクバエ幼虫の体液から通常のペプチド精製法を用い
て単離することができる。センチニクバエ幼虫から得ら
れるSarcotoxinIA(以下、野生型SarcotoxinIAとも称す
る)のアミノ酸配列は配列番号1に示す。野生型Sarcot
oxinIAは、遺伝子工学的手法により、組み換え微生物等
から調製することも可能である。その場合は、センチニ
クバエ幼虫から野生型SarcotoxinIA遺伝子をクロ−ニン
グするか、あるいは野生型SarcotoxinIAのアミノ酸配列
をコードする遺伝子を化学合成する。次いで、該遺伝子
を適当なベクター/宿主系に導入して形質転換体を作製
する。この形質転換体を適当な培地で培養し、得られる
培養物から野生型SarcotoxinIAを採取すればよい。培養
物から得られる粗製ペプチドは、ゲル濾過、逆相HPL
C、イオン交換カラム精製など通常のタンパク質又はペ
プチド精製に用いられる手段を用いてさらに精製するこ
とが可能である。
【0021】本発明では、配列番号1から3に記載のア
ミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換
及び/又は挿入したアミノ酸配列であって抗真菌活性を
示すアミノ酸配列を有するペプチドを有効成分として使
用することもできる。このような変異型SarcotoxinIAを
調製する場合は、まず、SarcotoxinIA遺伝子の塩基配列
に付加、欠失、置換等の変異を導入して変異型Sarcotox
inIA遺伝子を構築し、次いで、該変異型遺伝子を適当な
ベクター/宿主系に導入して形質転換体を作製する。該
形質転換体の中から、抗真菌活性を有するペプチド、す
なわち変異型SarcotoxinIAを生産するものをスクリーニ
ングする。変異型SarcotoxinIAの生産能を有する形質転
換体を適当な培地で培養し、得られる培養物から変異型
SarcotoxinIAを採取すればよい。培養物から得られる粗
製ペプチドは、ゲル濾過、逆相HPLC、イオン交換カ
ラム精製など通常のタンパク質又はペプチド精製に用い
られる手段を用いてさらに精製することが可能である。
【0022】SarcotoxinIA遺伝子に変異を導入する方法
としては、該遺伝子と変異原となる薬剤、具体的にはヒ
ドロキシルアミン、亜硝酸、亜硫酸、5’−ブロモウラ
シル等を接触させる方法を挙げることができる。また、
化学合成したオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ
て、所望の部位に変異を有する変異型SarcotoxinIA遺伝
子を構築することも可能である。この他、紫外線照射
法、カセット変異法、PCR法を利用した部位特異的変
異導入法やランダム変異導入法等の方法を広く用いるこ
とができる。
【0023】本発明で用いるSarcotoxinIAは、ペプチド
の化学合成法により調製してもよい。例えば、アジド
法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、D
CC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化
還元法等のペプチドの合成の常法を使用することができ
る。またその合成は、固相合成法及び液相合成法のいず
れをも適用することができる。すなわち、ペプチド又は
その塩を構成し得るアミノ酸と残余部分とを縮合させ、
生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することに
より目的とするペプチド又はその塩が合成される。縮合
方法や保護基の脱離としては、公知のいずれの手法を用
いてもよい[例えばBodanszky, M and M.A.Ondetti, Pep
tideSynthesis, Interscience Publishers, New York
(1966)、Schroeder and Luebke, The Peptide, Academi
c Press, New York (1965)、泉屋信夫他, ペプチド合成
の基礎と実験, 丸善(1975)等を参照]。
【0024】反応後は、通常の精製法、例えば溶媒抽
出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグ
ラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明で用いるペ
プチド又はその塩を精製することができる。また、本発
明で用いるペプチド又はその塩は、C末端が通常カルボ
キシル(-COOH)基又はカルボキシレート(-COO-)である
が、C末端がアミド(-CONH2)又はエステル(-COOR)であっ
てもよい。ここで、エステルにおけるRとしては、炭素
数1〜12のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル
基、炭素6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキ
ル基などが挙げられる。さらに、本発明で用いるペプチ
ド又はその塩には、N末端のアミノ基が保護基で保護さ
れているもの、あるいは糖鎖が結合した糖ペプチドなど
の複合ペプチド等も含まれる。
【0025】次に本発明の抗真菌剤について説明する。
本発明でいう抗真菌剤とは、真菌類に対して殺菌作用ま
たは増殖阻害作用を有する薬剤を広く意味する。本発明
の抗真菌剤は、SarcotoxinIA又はその変異体や誘導体を
有効成分とし、真菌類に対して殺菌作用または増殖阻害
作用を有する。真菌類としては、酵母、キノコの他、い
わゆる糸状菌(カビ)が挙げられ、特に、内因感染の原
因となるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
やカンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotr
opicalis)などの真菌に対しても抗真菌スペクトルを有
する。本発明の抗真菌剤は、例えば、カンジダ属(Candi
da)、白癬菌属(Trichophyton) 又はアスペルギルス
属(Aspergillus) 等に起因する局所性真菌感染、粘膜感
染、全身性真菌感染等の治療に用いることができる。
【0026】なお、本発明で用いるペプチドの抗真菌活
性の測定は方法は特に限定されない。例えば、検定菌と
して上記した何れか1種以上の菌を用いて、平板培地で
の増殖阻止円の形成を指標としたり、あるいは液体培地
中で適当な期間のインキュベーション後に培地の濁度を
測定することなどにより抗真菌活性を測定することがで
きる。
【0027】また本発明で有効成分として用いるペプチ
ドは、そのままで又は医薬製造分野で通常使用される各
種の固体担体、液体担体、乳化分散剤等に含有させた形
で抗真菌剤として使用することができる。例えば、ペプ
チドを医薬組成物形態の抗真菌剤として使用する場合に
は、その製剤形態は、使用目的や使用対象に応じて適宜
選択することができ、例えば、クリーム又は軟膏などの
皮膚外用剤、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、
顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)
等の形態で用いることができる。
【0028】クリーム又は軟膏などの皮膚外用剤を調製
するためには、通常の医薬組成物で使用される賦形剤や
追加成分を任意に含有することができ、例えば、ワセリ
ンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素
類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリー
ブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルア
ルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイ
ン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール
等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン
界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エ
タノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸
収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等を適宜使用することが
できる。
【0029】また、錠剤形成に際して使用する担体とし
ては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、
尿素、デンプン、炭化カルシウム、カオリン、結晶セル
ロース、ケイ酸等の賦形剤、水又はアルコール類を含ま
せたデンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース
ナトリウム(CMC-Na)、メチルセルロース(MC)、ヒド
ロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース(HPMC)、リン酸カルシウム、ポリ
ビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、寒天末、
ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウ
リル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デ
ンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバ
ター、水素添加油糖の崩壊制御剤、第4級アンモニウム
塩基、ラウリル硫酸ナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着
剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチ
レングリコール等の滑沢剤等を使用することができる。
さらに錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例
えば糖皮錠、ゼラチン被包錠、腸溶皮膜フィルムコーテ
ィング錠又は二重錠、多層錠とすることができる。
【0030】また抗真菌剤を注射剤として調製する場合
には、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等
張であることが好ましく、これらの形態に成形するに際
しては、希釈剤として水、エチルアルコール、プロピレ
ングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、
ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエ
チレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用することが
でき、また必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜
硫酸ナトリウム等の安定剤、カルボキシメチルセルロー
ス、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニ
ウム等の懸濁化剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセ
リン等の等張化剤、パラオキシ安息香酸エステル類、ベ
ンジルアルコール、クロロブタノール等の保存剤のほ
か、溶液補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合して使用す
ることもできる。
【0031】上記各形態の医薬組成物の中には、さらに
必要に応じて慣用されている着色剤、香料、風味剤、甘
味剤等を配合することができ、また他の医薬品有効成分
を含有させても構わない。本発明の抗真菌剤中における
有効成分であるペプチドの含有量は、一般的には0.01
〜90重量%、好ましくは0.1〜80重量%程度である。
【0032】本発明の抗真菌剤はヒトを含む哺乳動物に
投与することができる。投与経路は経口投与でも非経口
投与でもよい。本発明の抗真菌剤の投与量は患者の年
齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じ
て適宜増減されるべきであるが、一般的には、有効成分
量として成人一日あたり1μg/kgから1000mg/k
g程度の範囲であり、好ましくは10μg/kgから1
00mg/kg程度の範囲である。上記投与量は一日一回
投与しても一日に数回に分けて投与してもよい。また投
与期間及び投与間隔も特に限定されず、毎日投与しても
よいしあるいは数日間隔で投与してもよい。
【0033】さらに、本発明の抗真菌剤は、医薬品とし
てのみならず、食品、飼料、化粧品等のように人又は動
物の体内に摂取され、または体表面に適用される製品、
その他一般に真菌の増殖を防止又は抑制することが望ま
れるあらゆる製品に配合して使用することができる。ま
た、本発明の抗真菌剤を製品又は原料素材の表面処理に
用いることもできる。
【0034】具体的には、食品(例えばチュウインガ
ム、生菓子等)、医薬品(例えば、目薬、乳房炎治療
薬、水虫薬等)、医薬部外品(例えば口中洗浄剤、制汗
剤、養毛剤等)、各種化粧品(例えば整髪料、ハンドク
リーム、乳液等)、各種歯磨用品(例えば、歯ブラシ
等)、各種生理用品(例えばナプキン、タンポン等)、
各種ベビー用品(例えば紙オムツ等)、各種高齢者用品
(例えば入れ歯固定剤、成人用紙オムツ等)、各種洗剤
(例えば石鹸、シャンプー、リンス、洗濯用洗剤等)、
各種除菌用品(キッチン又はトイレ用除菌クリーナー
等)、ペット飼料(例えば、ドッグフード、キャットフ
ード等)、各種家畜試料、各種養魚飼料、各種建築材
料、各種塗料、各種農園芸用品、並びにそれらの原料と
なる素材、その他一般に真菌等の微生物の増殖の防止、
抑制が望まれるあらゆる物品に添加、配合、噴霧、付
着、被覆、含浸等を行ってもよく、またその他一般に真
菌類の増殖防止、抑制が望まれるあらゆる物品の処理に
用いることもできる。以下の実施例により本発明をさら
に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何
ら限定されるものではない。
【0035】
【実施例】実施例で用いた材料と方法 (1)SarcotoxinIAおよびSarcotoxinIA誘導体による抗
真菌アッセイ サブローブロス(1%ペプトン、4%グルコース、pH
5.8)中で37℃で培養した増殖期のCandida C.albic
ansを8×105細胞/mlに調整し、10μ1をコラー
ゲンコート96穴プレートに播き、各濃度のSarcotoxin
IAおよびSarcotoxinIA誘導体(Peptide Institute Inc.
から入手)溶液(サブローブロスにて調製)30μ1を加
え、37℃で1時間インキュベーションし、菌溶液をサ
ブローブロスで20倍希釈してサブローアガープレート
に播き、37℃で24時間インキュベーションした後、
コロニー数をカウントした。
【0036】(2)スフェロプラストの調製法 サブローブロス中37℃で培養した増殖期のC.albicans
を1×107細胞/mlに調整し、5mlを1.5ml
のミリQで1回洗浄した後、500μlのジチオマレイ
トール溶液(50mMジチオマレイトール、1.2Mソ
ルビトール、25mMのEDTA)に懸濁して、30℃
で10分間ゆるやかに震盪する。1.2Mソルビトール
溶液で2回洗浄し、500μ1のザイモリアーゼ溶液
(最終100μg/mlザイモリアーゼ、0.1Mクエ
ン酸緩衝液(pH5.8))、50mMのEDTA)に
懸濁して30℃で1時間ゆるやかに震盪する。集菌した
後、1.2Mのソルビトール溶液で3回洗浄し、500
μ1のPBS溶液に懸濁してスフェロプラストとする。
【0037】(3)スフェロプラストに対する抗真菌ア
ッセイ スフェロプラストを8×105細胞/mlに調整し、1
0μlをコラーゲンコート96穴プレートに播き、各濃
度のSarcotoxinIAおよびSarcotoxinIA誘導体溶液(サブ
ローブロス(1.2Mのソルビトール)にて調製)30μ1
を加え、37℃で1時間インキュベーションし、菌溶液
をサブローブロス(1.2Mソルビトール)で20倍希釈
してサブローアガープレートに播き、37℃で24時間
インキュベーションした後、コロニー数をカウントし
た。
【0038】(4)SarcotoxinIA添加時のC.albicansお
よびそのスフェロプラストの細胞表面の走査型電子顕微
鏡観察 サンプルを乗せるガラスを0.1%ポリ−L−リジン溶
液でポリカチオン処理する。ポリカチオン処理ガラスに
サンプルを貼付した後、SarcotoxinIAを添加し、37℃
で60分間インキュベーションする。PBSで2回洗浄
し、2.5%グルタルアルデヒド/PBS溶液にて2時
間固定する。PBSで100分×3回洗浄した後、2%
四酸化オスミウムにて2時間後固定し、PBSで10分
×3回洗浄、50、70、80、90、95%エタノー
ルにて各15分脱水し、99.5%エタノールにて30
分2回脱水し、酢酸イソアミルで置換、臨界点乾燥、銀
ペーストにて試料台に貼付して、オスミウムプラズマコ
ートにて観察を行った。
【0039】(5)SarcotoxinIAによるリポソームに対
する傷害実験 C.albicans型の脂質構成(PC:PE:PS:PI=4:2:1:1)となる
ように、各脂質(PCとPEはEgg yolkから入手;PSとPIは
ウシ脳由来でクロロホルムに溶解したもの、SIGMAから
入手)を計2mgとり、これにエルゴステロール、コレ
ステロール(SIGMAから入手)を(脂質:ステロール=1:0.
8、1:1、1:1.2(重量比))となるように加え、溶媒をと
ばして薄膜とした後、0.3Mグルコース200μ1を
加え、室温でボルテックスしてマルチラメラリポソーム
を作成する。リン酸ナトリウム緩衝液(130mMのNaCl(pH
7.0))で3回洗浄し、同緩衝液200μ1で希釈したリポ
ソーム溶液10μ1に10%のTriton-100および各濃度
のSarcotoxinIA(10μ1)を加えて室温で30分イン
キュベーションし、上清にグルコース検出試薬(グルコ
ースBテストワコー、和光から入手)を加えてOD505
測定し、放出されたグルコース量を測った。Glucose re
lease(%)は、10%のTriton-100で処理した時のGlucos
e release量を100%として算出した。
【0040】(6)SarcotoxinIAの細胞毒性の検討 5%のFCS-RPM1培地中のヒト乳ガン細胞(MCF7;ATCCか
ら入手)をPBS(−)で2回洗浄し、0.05%のトリ
プシン溶液(0.2mMのEDTA)処理後、5%のFCS-
RPM1培地にて回収する。10,000細胞/wellとなる
ようにコラーゲンコート96穴プレートに播き、37℃
で24時間インキュベーションした後、各濃度のSarcot
oxinIAおよびmelittin(SIGMAから入手)100μ1を加え
て37℃で3日間インキュベーションする。上清を除去
し、10%アラマブルー(B10SOURCEから入手)100μ1
を加えて4時間後にA570−A600を測定する。薬剤0μ1に
おけるアラマブルーの還元量(A570−A600)を100%と
したときの、各濃度の薬剤添加時の還元量(A570−A600)
(%)を求めた。
【0041】実施例1:C.albicansに対する抗真菌アッ
セイ SarcotoxinIAに抗真菌作用があるかどうかを調べるため
に、C.albicansに対して抗真菌アッセイを行った。この
際、C.albicansの生育環境であるサブロー培地中で抗真
菌アッセイを行った。サブローブロス中で培養した増殖
期のC.albicansを8×105細胞1/mlに調整し、10
μ1をコラーゲンコート96穴プレートに播き、各濃度
のSarcotoxinIA溶液(サブローブロスにて調製)30μ1を
加え、37℃で1時間インキュベーションし、菌溶液を
サブローブロスで20倍希釈してサブローアガープレー
トに播き、37℃で24時間インキュベーションした
後、コロニー数をカウントした(Natori.S., 1997, J.In
sect.physiol. 23, 1169-1173)。その結果、Sarcotoxin
IAは30μMの濃度でCFUが50%近くに抑えられた
(図3)。
【0042】実施例2:SarcotoxinIAの細胞毒性の検討 SarcotoxinIAに細胞毒性があるかどうかを調べる目的
で、ヒト乳ガン細胞に対する代謝阻害作用を調べた。5
%FCS/RPMIで培養したヒト乳ガン細胞(MCF7)を10,
000細胞/wellとなるようにコラーゲンコート96穴
プレートに播き、37℃で24時間インキュベーション
した後、各濃度のSarcotoxinIAを加えて37℃で3日間
インキュベーションした。上清を除去し、10%アラマ
ブルーを加えて4時間後、アラマブルーの還元量(A570
−A600)を測定した。薬剤0μ1におけるアラマブルーの
還元量(A570−A600)を100%としたときの、各濃度の
薬剤添加時の還元量(A570−A600)(%)を求めた(Okada,M
他, 1984, Biochem.J. 222,119-124)。その結果、高濃
度のSarcotoxinIAを添加しても代謝阻害は殆ど起こらな
かった(図4)。
【0043】実施例3:スフェロプラストに対する抗真
菌アッセイ SarcotoxinIAの作用点が細胞壁であるかどうかを調べる
ために、C.albicansのスフェロプラストに対して抗真菌
アッセイを行った。まず、増殖期のC.albicansを1×1
7細胞/mlに調整し、ジチオマレイトール溶液に懸
濁して、30℃で10分間ゆるやかに震盪した。ザイモ
リアーゼ溶液に懸濁して30℃で1時間ゆるやかに震盪
した。集菌した後、1.2Mソルビトール溶液で3回洗浄
し、PBS溶液に懸濁してスフェロプラストとした(Oka
da,M他, 1983, Biochem.J. 211, 727-734)。スフェロプ
ラストを8×105細胞/mlに調整し、10μ1をコラー
ゲンコート96穴プレートに播き、各濃度のSarcotoxinIA
溶液(サブローブロス(1.2Mソルビトール)にて調製)
30μ1を加え、37℃で1時間インキュベーションし、
菌溶液をサブローブロス(1.2Mソルビトール)で20
倍希釈してサブローアガープレートに播き、37℃で2
4時間インキュベーションした後、コロニー数をカウン
トした(Okada,M他, 1985, J.Biol.Chem. 260, 7174-717
7)。その結果、完全(intact)なC.albicansを用いたと
きと比べて、スフェロプラストに対する抗真菌作用のほ
うがはるかに強く、SarcotoxinIAの作用点は、細胞壁よ
りはむしろ細胞膜であることが示唆された(図5)。
【0044】実施例4:SarcotoxinIA添加後の細胞表面
の走査型電子顕微鏡観察 SarcotoxinIAの抗真菌作用メカニズムを調べるために、
SarcotoxinIA添加後の、C.albicansおよびそのスフェロ
プラストの細胞表面の走査型電子顕微鏡観察を行った
(Osumi,M他, 1989, J.Erectron.Microsc. 38, 457;及
びOsumi,M他, 1985, J.Erectron.Microsc. 44, 198)。
ポリカチオン処理ガラスにサンプルを貼付した後、Sarc
otoxinIAを添加し、37℃で60分間インキュベーショ
ンした。2.5%グルタルアルデヒド/PBS溶液にて
2時間固定した後に観察を行った(Iwai.H.他, 1993, Eu
r.J.Biochem. 217, 639-644)。その結果、C.albicansに
ついては、SarcotoxinIA添加後、細胞表面の小さな突起
物が出現し、細胞の形が変形したものが観察された(図
6)。スフェロプラストについては、SarcotoxinIA添加
後に、細胞膜の破壊が観察された(図7)。
【0045】実施例5:エルゴステロールの含量を変え
たりボソームに対する傷害実験 SarcotoxinIAの作用点が細胞膜上のエルゴステロールで
あるかどうかを調べるために、エルゴステロールの含量
を変えたリポソームを作成し、それに対する傷害度の違
いを観察した(Nakajima,Y.他, 1987, J.Biol.Chem. 26
2, 1665-1669;及びJ.Ishibashi, 1999, Eur.J.Biochem.
266, 617-623)。C.albicans型の脂質構成となるよう
に、各脂質を計りとり、これにエルゴステロール、コレ
ステロールを(脂質:ステロール=1:0.8、1:1、1:1.2(重
量比))となるように加え、溶媒をとばして薄膜とした
後、0.3Mグルコース200μ1を加え、室温でボルテックス
してマルチラメラリポソームを作成した。リン酸ナトリ
ウム緩衝液(130mMのNaCl(pH7.0))で3回洗浄し、同緩衝
液200μ1で希釈したリポソーム溶液10μ1に10%mton-100
および各濃度のSarcotoxinIAを10μ1加えて室温で3
0分間インキュベーションし、上清にグルコース検出試
薬を加えてOD505を測定し、放出されたグルコース量
を測った(Okada,M他, 1985, Biochem.J. 229, 453-45
8)。その結果、コレステロールと比べてエルゴステロー
ルのリポソームのグルコース放出(%)が大きく、また、
エルゴステロールの含量依存にグルコース放出(%)が大
きくなった(図8)。
【0046】実施例6:SarcotoxinIAの誘導体(部分ペ
プチド)を用いた抗真菌アッセイ SarcotoxinIAの抗真菌作用において重要な部位を調べる
ために、SarcotoxinIAの誘導体(1番目から23番目の
アミノ酸から成る部分ペプチドと、3番目から39番目
のアミノ酸から成る部分ペプチド)(部分ペプチドの構
造を図10に構造を示す)を用いてC.albicansに対して
抗真菌アッセイを行った(Natori.S., 1977, J.Insect P
hysiol. 23, 1169-1173)。結果を図9に示す。図9から
分かるように、N末端の二つのアミノ酸を欠いた部分ペ
プチド(3-39)(配列番号3)は、NativeなSarcotoxinIA
と比べて抗真菌作用が弱く、また、N末端側のαヘリッ
クスのみの部分ペプチド(1-23)(配列番号2)について
は、Nativeと比べて抗真菌作用がやや強かった。このこ
とから、N末端の二つのアミノ酸、およびN末端側のα
ヘリックスが抗真菌作用において重要であることが分か
った(図9)。
【0047】実施例のまとめと考察 (1)SarcotoxinIAの抗真菌作用メカニズムの解析 センチニクバエ幼虫の体表傷害時に誘導される生体防御
因子であるSarcotoxinIAの抗菌作用に関するこれまでの
機能解析により、SarcotoxinIAはセンチニクバエに対す
る病原体の一種であるグラム陽性、陰性菌に対して抗菌
作用を発現するということが明らかにされ、その抗菌作
用メカニズムが解明されてきた。本発明者らは今回、真
菌C.albicansに対して抗真菌アッセイを行い、Sarcotox
inIAには抗真菌作用があることを新たに明らかにした
(実施例1)。SarcotoxinIAは、真核生物である昆虫の体
内に存在する抗真菌ペプチドであり、SarcotoxinIAの研
究は、選択毒性が高く、人体には害の少ない抗真菌剤の
開発につながる可能性があるといえる。このような抗真
菌作用を持つ薬剤を開発するためには、その因子の抗真
菌作用メカニズムを解析することが必要不可欠である。
そこでSarcotoxinIAの抗真菌作用メカニズムの解析を行
うことにした。
【0048】まず、SarcotoxinIAに細胞毒性があるかど
うかを調べる目的で、ヒト乳ガン細胞に対する代謝阻害
作用を調べたところ、高濃度のSarcotoxinIAを添加して
も代謝阻害は殆ど起こらなかった(実施例2)。次に、Sa
rcotoxinIAの作用点を調べる目的で、C.albicansのスフ
ェロプラストに対して抗真菌アッセイを行った結果、in
tactなC.albicansを用いた時と比べてスフェロプラスト
に対する抗真菌作用のほうがはるかに強く、Sarcotoxin
IAの作用点は、細胞壁よりはむしろ細胞膜であるという
ことが示唆された(実施例3)。次に、SarcotoxinIAの抗
真菌作用様式を調べるために、SarcotoxinIA添加後の、
C.albicansおよびそのスフェロプラストの細胞表面の走
査型電子顕微鏡観察を行った。その結果、C.albicansに
ついては、SarcotoxinIA添加後、細胞表面に小さな突起
物が出現し、細胞の形が変形したものが観察された。ま
た、スフェロプラストについては、SarcotoxinIA添加後
に、細胞膜の破壊が観察された(実施例4)。これらの結
果により、SarcotoxinIAの作用点は細胞膜であることが
示唆された。次に、SarcotoxinIAの作用点が細胞膜上の
エルゴステロールであるかどうかを調べる目的で、エル
ゴステロールの含量を変えたリポソームを作成して、そ
れに対するSarcotoxinIAの傷害度の違いを調べた。その
結果、コレステロールと比べてエルゴステロールのリポ
ソームのグルコース放出(%)が大きく、また、エルゴス
テロールの含量依存にグルコース放出(%)が大きくなっ
た(実施例5)。
【0049】上記したような今回の解析結果により、Sa
rcotoxinIAはグラム陽性菌、陰性菌に対する抗菌作用に
加えて、抗真菌作用をも有することが判明した。また、
その抗真菌作用メカニズムの解析の結果、SarcotoxinIA
の作用点は細胞膜であり、真菌特異的に発現しているエ
ルゴステロールの存在が重要であることが示唆された。
コレステロールで作成したリポソームの結果をふまえる
と、真菌に対して効いて、哺乳類の細胞に対しては効か
ないメカニズムとして、エルゴステロールとコレステロ
ールの物性の違いが原因である可能性が考えられる。つ
まり、エルゴステロールは、細胞膜の安定化に関わるコ
レステロールとは逆に、細胞膜を壊れやすくする性質を
持つ可能性があるということである。エルゴステロール
はヒト等の哺乳類の細胞には存在しないことから、本発
明のSarcotoxinIAを有効成分として含む抗真菌剤は、副
作用の少ない真菌に特異的な薬剤となり得る。また別の
可能性として、エルゴステロールはコレステロールと同
じく細胞膜の安定化に関わっており、SarcotoxinIAがエ
ルゴステロールを作用点とするために、エルゴステロー
ルの含量依存にリポソームの傷害度が高くなった、とい
うことも考えられる。
【0050】上記したように、SarcotoxinIAには抗真菌
作用があることが明らかになったが、SarcotoxinIAを実
際に抗真菌剤として臨床応用したり、あるいは植物に遺
伝子導入したりするためには、SarcotoxinIA分子のどの
部位が抗真菌作用において重要であるかを知る必要があ
り、またこれらの情報に基づいて抗真菌作用がさらに強
いペプチドを開発することが望ましい。そこで、Sarcot
oxinIAのどの部位が抗真菌作用において重要であるかを
知る目的で、SarcotoxinIAから2種類の誘導体を作成し
て抗真菌アッセイを行った。
【0051】その結果、SarcotoxinIAのN末端の二つの
アミノ酸および、N末端側のαヘリックスが抗真菌作用
において重要であることが判明した。SarcotoxinIAのど
の部位が抗真菌作用において重要であるかを調べるため
には、今回作成した誘導体の他に、C末端側のαヘリッ
クスのみ、αヘリックスを崩したものなどの様々な誘導
体を作成して各誘導体の抗真菌作用を調べればよい。本
実施例で具体的に用いた2種類の誘導体以外の誘導体を
合成して活性を評価することにより、より強い抗真菌作
用を有するSarcotoxinIA由来のペプチドを開発すること
も可能であり、このようなペプチドは本発明の範囲内の
ものである。また、このようなペプチドは抗真菌剤とし
ての臨床応用することができる。また、本発明で用いる
SarcotoxinIA由来のペプチドをコードするDNA断片を
植物などに導入することにより、真菌に対して抵抗性の
高い植物を開発することも可能である。
【0052】
【発明の効果】本発明により、SarcotoxinIAまたはその
誘導体を有効成分とした新規な抗真菌剤が提供されるこ
とになった。SarcotoxinIAは、真核生物である昆虫の体
内に存在する抗真菌ペプチドであり、これを有効成分と
して使用することにより、選択毒性が高く、人体には害
の少ない抗真菌剤を提供することが可能である。Sarcot
oxinIAは抗真菌剤として臨床応用したり、あるいは、Sa
rcotoxinIAをコードする遺伝子を用いることにより真菌
に対して抵抗性の高い植物を開発することが可能であ
る。
【0053】
【配列表】 <110> RIKEN <120> An anti-fungal agent <130> A01202MA <160> 3
【0054】 <210> 1 <211> 39 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 1 Gly Trp Leu Lys Lys Ile Gly Lys Lys Ile Glu Arg Val Gly Gln His 1 5 10 15 Thr Arg Asp Ala Thr Ile Gln Gly Leu Gly Ile Ala Gln Gln Ala Ala 20 25 30 Asn Val Ala Ala Thr Ala Arg 35
【0055】 <210> 2 <211> 23 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 2 Gly Trp Leu Lys Lys Ile Gly Lys Lys Ile Glu Arg Val Gly Gln His 1 5 10 15 Thr Arg Asp Ala Thr Ile Gln 20
【0056】 <210> 3 <211> 37 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 3 Leu Lys Lys Ile Gly Lys Lys Ile Glu Arg Val Gly Gln His Thr Arg 1 5 10 15 Asp Ala Thr Ile Gln Gly Leu Gly Ile Ala Gln Gln Ala Ala Asn Val 20 25 30 Ala Ala Thr Ala Arg 35
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、SarcotoxinIAの立体構造を示す図であ
る。
【図2】図2は、SarcotoxinIAのアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、SarcotoxinIAのC.albicansに対する抗
真菌アッセイの結果を示すグラフである。
【図4】図4は、ヒト乳癌細胞を用いたSarcotoxinIAの
細胞毒性の検討結果を示すグラフである。
【図5】図5は、SarcotoxinIAのスフェロプラストに対
する抗真菌アッセイの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、SarcotoxinIA添加後のC.albicansの走
査型電子顕微鏡観察の結果を示す。
【図7】図7は、SarcotoxinIA添加後のスフェロプラス
トの走査型電子顕微鏡観察の結果を示す。
【図8】図8は、SarcotoxinIAの各種グルコース封入リ
ポソームに対する効果を示すグラフである。
【図9】図9は、SarcotoxinIA誘導体(部分ペプチド)
を用いた抗真菌アッセイの結果を示すグラフである。
【図10】図10は、SarcotoxinIA誘導体(部分ペプチ
ド)のアミノ酸配列を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記のアミノ酸配列の何れかを有するペ
    プチド、上記ペプチドの修飾ペプチドであって上記ペプ
    チドと同様の抗真菌活性を有する修飾ペプチド、又はそ
    の塩を有効成分として含む抗真菌剤。 (a)配列番号1から3の何れかに記載のアミノ酸配
    列:又は(b)配列番号1から3の何れかに記載のアミ
    ノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及
    び/又は挿入したアミノ酸配列であって、抗真菌活性を
    示すアミノ酸配列。
  2. 【請求項2】 配列番号1から3の何れかに記載のアミ
    ノ酸配列を有するペプチド、上記ペプチドの修飾ペプチ
    ドであって上記ペプチドと同様の抗真菌活性を有する修
    飾ペプチド、又はその塩を有効成分として含む、請求項
    1に記載の抗真菌剤。
  3. 【請求項3】 配列番号1から3の何れかに記載のアミ
    ノ酸配列を有するペプチド又はその塩を有効成分として
    含む、請求項1又は2に記載の抗真菌剤。
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