JP3734885B2 - 抗菌性ペプチドおよび抗菌剤 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、抗菌性ペプチドおよび抗菌剤に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、副作用が無く、少量で、広範囲の微生物に対して抗菌作用を有する新規な抗菌性ペプチドと、この抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、脊椎動物、昆虫、植物等に由来するタンパク質およびペプチドのなかには抗菌性を有するものが数多く存在することが知られている。例えば、脊椎動物に由来するものとしては、リゾチーム[プロシーディングス・オブ・ザ・ロイヤル・ソサイエティ・オブ・ロンドン(Proceedings of the Royal Society of London)、第93巻、第306〜317ページ、1922年、およびブレティン・デ・ラ・ソシエーテ・デ・キミー・ビオロジーク(Bulletin de la Societe Chimie Biologique)、第50巻、第2543〜2551ページ、1986年]、ラクトペルオキシダーゼ[ヨーロピアン・ジャ−ナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry)、第198巻、第733〜739ページ、1991年、およびディーエヌエー・セル・バイオロジー(DNA Cell Biology)、第9巻、第499〜509ページ、1990年]、ラクトフェリン[ブリティッシュ・ジャーナル・メディシン(British Journal of Medicine )、第1巻、第69〜72ページ、1972年、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(Journal of Experimental Medicine)、第13巻、第559〜570ページ、1970年、およびインフェクション・アンド・イミュニティ(Infection and Immunity)、第51巻、第373〜377ページ、1986年]等のタンパク質、および分子量が3〜4キロダルトンのディフェンシン[ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(European Journal of Haematology )、第44巻、第1〜8ページ、1990年、およびブラッド(Blood )第76巻、第2169〜2181ページ、1990年]等のペプチド等について、その構造および殺菌作用等が知られている。また、昆虫に由来するものとしては、セクロピンまたはディフェンシン[バイオエッセイズ(BioEssays )第13巻、第657〜663ページ、1991年、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ユー・エス・エー(Proceedings of the National Academy of Science of U.S.A.)、第86巻、第262〜266ページ、1989年、およびビオキミカ・ビオフィジカ・アクタ(Biochimica Biophysica Acta)、第1132巻、第203〜206巻、1992年]等の抗菌性のペプチドが知られ、さらに、植物の種子からも抗菌性のペプチドが単離されている[グッド・ジャミー(Goode Jamie )編、「アンチマイクロバイアル・ペプチズ(Antimicrobial Peptides) 」、第91〜106ページ、ワイリー(Wiley) 社、1994年]。
【0003】
ウシ由来の抗菌性ペプチドについても、従来いくつかの報告がなされている。例えば、乳由来としては、ラクトフェリンをペプシンで消化した際に生じるN末端領域のペプチドであるラクトフェリシン(登録商標)B[ジャーナル・オブ・アプライド・バクテリオロジー(Journal of Applied Bacteriology )、第73巻、第472〜479ページ、1992年]、カゼインから生じるカソシジン−I[フェブス・レターズ(FEBS letters)、第372巻、第185〜188ページ、1995年]、精液から単離されたセミナルプラスミン[ネイチャー(Nature)、第279巻、第725〜728ページ、1979年]、および好中球由来のインドリシジン[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry )、第267巻、第4292〜4295ページ、1992年]、バクテネシン[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry )、第263巻、第9573〜9575ページ、1988年]、インフェクション・アンド・イミュニティ(Infection and Immunity)、第57巻、第3142〜3146ページ、1989年]等が抗菌性ペプチドとして知られている。
【0004】
一方、従来から種々の微生物に対して抗菌作用を有するペプチドについては多数の発明が知られている。例えば、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に有効なホスホノトリペプチド(特開昭57−106689号公報)、ホスホノジペプチド誘導体(特開昭58−13594号公報)、環状ペプチド誘導体(特開昭58−213755号公報)、抗菌および抗ウイルス作用を示すペプチド(特開昭59−51247号公報)、酵母に有効なポリペプチド(特開昭60−130599号公報)、グラム陽性菌に有効な糖ペプチド誘導体(特開昭60−172998号公報、特開昭61−251699号公報、特開昭63−44598号公報)、グラム陽性菌に有効なオリゴペプチド(特開昭62−22798号公報)、ペプチド系抗生物質(特開昭62−51697号公報、特開昭63−17897号公報)、その他、北米産カブトガニの血球から抽出した抗菌性ペプチド(特開平2−53799号公報)、蜂蜜の血リンパから単離した抗菌性ペプチド(特開平2−500084号公報)等である。
【0005】
ところで、血清中にはコレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質が存在する。これらの脂質はそのままでは血清には溶解しないので、アポリポタンパク質と結合したリポタンパク質の微粒子として血清中に存在している。アポリポタンパク質は、アポAからEまでの5つに分類され、さらにアポAはA−I、A−IIに、アポCはC−I、C−II、C−IIIに分かれる(日経メディカル・日経バイオテク編、「日経バイオテクノロジー最新用語辞典」、第9ページ、日経マグロウヒル社、1985年)。一方、血清中のリポタンパク質は、トリグリセリドを主要脂質とするカイロミクロン(乳状脂粒)、エステル型コレステロールを主要脂質とする超低比重リポタンパク質(LDL)、およびリン脂質を主要脂質とする高比重リポタンパク質(HDL)等に分類されている[野間惟道編、「医科学大辞典」、第49巻、第84〜85ページ、講談社、1984年]。
【0006】
従来、ヒト・アポリポプロテインA−Iを含むリポタンパク質画分に抗菌性があることが報告されている[モレキュラー・セル・バイオケミストリー(Molecular Cell Biochemistry )、第119巻、第171〜178ページ、1993年、および特公平8−5798号公報]。
しかしながら、ウシ血清中から単離され、特定のアミノ酸配列を有するペプチドの抗菌作用については、文献が皆無であり、従来知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術から明らかなとおり、各種の抗菌性ペプチドが知られているが、適用対象毎の抗菌性ペプチドの選択の余地を増大する目的から、さらに、望ましくない副作用(例えば、抗原性等)がなく、耐熱性があり、かつ強い抗菌作用を有する抗菌性ペプチドを自然界から見い出すことが望まれていた。特に、安価なウシ血清等の原料より大量に調製が可能で、かつ細菌および真菌(カビ、酵母)等の微生物に対して抗菌作用を有し、動物細胞に対しては抗菌作用がない動物組織培養用培地添加剤として有用な抗菌性ペプチドが望まれていた。
【0008】
この発明は、以上のとおりの従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、副作用が無く、少量で、広範囲の微生物に対して抗菌作用を有する新規な抗菌性ペプチドと、この抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するものとして、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する抗菌性ペプチドを提供する。
また、この発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、このペプチドの薬学的に許容される誘導体、このペプチドの薬学的に許容される塩類、またはこれらの2以上の混合物を有効成分として含有する抗菌剤を提供する。
【0010】
なお、この発明の抗菌性ペプチドおよび抗菌剤においては、前記ペプチドが、ウシ胎児血清より単離されたペプチドであることを好ましい態様としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の抗菌性ペプチドの出発原料はウシ血清であり、例えば、市販の成牛血清、ウシ新生児血清、ウシ胎児血清を例示することができ、特にウシ胎児血清が望ましい。これらの出発原料からこの発明の抗菌性ペプチドを常法により容易に単離精製することができる。例えば、ウシ胎児血清を、疎水クロマトグラフ、ゲル濾過、および逆相クロマトグラフ等の順序で処理し、抗菌活性を有することが確認されている画分を順次に精製することによって、この発明の特定アミノ酸配列を有する抗菌性ペプチドを単離精製することができる。
【0012】
使用する疎水クロマトグラフ用樹脂は、ブチル基を有する樹脂が望ましく、例えば、市販のブチル・トヨパール650M(東ソー社製)、ブチル・トヨパール650S(東ソー社製)、ブチル・セファロース4FF(ファルマシア社製)等を例示することができる。
使用するゲル濾過用担体は、500キロダルトンの排除限界分子量を有する担体が望ましく、例えば、市販のTSKゲルG3000SW(東ソー社製)、Asahipak GFA−50F(旭化成社製)、PROTEIN PAK 300(日本ウォターズ社製)等を例示することができる。
【0013】
使用する逆相クロマトグラフ用担体は、リガンドとして炭素数4の直鎖状炭化水素が望ましく、例えば、市販のPROTEIN C4(VYDAC社製)、マイクロボンダスフェアーC4 (日本ウォターズ社製)、YMC−Pack C4 (ワイエムシィ社製)等を例示することができる。
以上のようにして単離精製した抗菌性ペプチドは、後記する試験例2に示すとおり、配列番号1に記載の特定のアミノ酸配列を有しており、また、試験例1に示すとおり、細菌および真菌(酵母)に対する抗菌作用を有している。なお、この発明の抗菌性ペプチドは、そのアミノ酸配列からウシ由来アポリポプロテイン様物質であるものと予測されたが、前記ヒト・アポリポプロテインA−Iとは、そのアミノ酸配列において全く異なる物質であった。
【0014】
次に、この発明の抗菌剤について説明する。この発明の抗菌剤は、前記のとおりに単離精製した抗菌性ペプチド、このペプチドの薬学的に許容される誘導体、このペプチドの薬学的に許容される塩類(以下、これらをまとめて「ペプチド類」と記載することがある)、またはこれらの2以上の混合物を有効成分として含有する。抗菌性ペプチドの誘導体は、抗菌性ペプチドの一部置換体または付加化合物等のペプチド誘導体であり、例えば、カルボキシル基をアミド化またはアシル化した誘導体を例示することができる。また、抗菌性ペプチドの塩類は、例えば、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の酸付加塩を例示することができる。
【0015】
この発明の抗菌剤は、一般的な医薬製剤の形態でヒトまたは動物に投与することができ、例えば、静注、皮下注、または経口によりヒトまたは動物に投与することができる。特に、この発明の抗菌剤の有効成分であるペプチド類は、毒性が極めて低く、LD50は100mg/体重kg以上であるため、ヒトまたは動物に対して安全に使用することができ、経口投与による抗下痢剤としても使用することができる。
【0016】
この発明の抗菌剤は、ペプチド類またはこれらの2以上の混合物を5mg/g以上の濃度で含有させて製剤化することができ、その他の成分としては、医薬製造分野で通常使用される各種の担体、例えば充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤の希釈剤または賦形剤等を用いることができる。また、医薬製剤として、各種の剤形が使用目的、使用対象に応じて選択でき、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等が挙げられる。錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用することができる。さらに錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸用被錠フィルムコーティング錠または二重錠、多層錠とすることができる。注射剤として調製される場合は、液剤、乳剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用することができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖、グリセリン等を製剤中に含有させてもよく、また、溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合してもよい。上記各形態の医薬製剤中には、さらに必要に応じて慣用される着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等を配合することができ、また、他の医薬品有効成分を含有させることもできる。
【0017】
この発明の抗菌剤は、医薬品としてのみならず、食品、飼料、化粧品等のようにヒトまたは動物の体内に摂取され、または体表面に適用される製品、その他一般に細菌の増殖を防止または抑制することが望まれるあらゆる製品に配合して使用することができ、またこの発明の抗菌剤により、それらの製品または原料素材を処理することができる。すなわち、食品(例えば、チュウインガム等)、医薬品(例えば、目薬、乳房炎治療剤、下痢防止剤、水虫薬等)、医薬部外品(例えば、口中洗浄剤、制汗剤、養毛剤等)、各種化粧品(例えば、整髪料、クリーム、乳液等)、各種歯磨用品(例えば、歯磨、歯ブラシ等)、各種生理用品、各種ベビー用品(例えば、オムツ等)、各種高齢者用品(例えば、入れ歯固定剤、オムツ等)、各種洗剤(例えば、石鹸、薬用石鹸、シャンプー、リンス、洗濯用洗剤、キッチン用洗剤、住宅用洗剤等)、各種除菌用品(キッチン用除菌ペーパー、トイレット用除菌ペーパー等)、飼料(例えば、ペットフード等)、それらの原料となる素材、その他一般に微生物の増殖の防止、抑制が望まれるあらゆる物品に添加、配合、噴霧、付着、被覆、含浸等を行ってもよく、またその他一般に微生物の増殖の防止、抑制が望まれるあらゆる物品の処理に用いることができる。特に、この発明の抗菌剤は、有効成分であるペプチド類が哺乳動物(ウシ)由来であり、動物細胞に対して有害な作用を持たないため、動物組織培養用培地添加剤として有用である。
【0018】
さらに、この発明の抗菌剤は、必要に応じて、他の抗菌剤と併用して使用することもできる。
次に、試験例を示してこの発明を詳述する。
試験例1
この試験は、この発明の抗菌性ペプチドの抗菌作用を調べるために行った。
(1)試料の調製
実施例1と同一の方法により、ウシ胎児血清より単離した配列番号1のアミノ酸配列を有する抗菌性ペプチドを、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)に、それぞれ0.1μg/μl、0.25μg/μl、0.5μg/μl、1.0μg/μl、1.5μg/μl、および2μg/μlの各濃度で溶解し、試料溶液として用いた。
(2)試験菌株懸濁液の調製
各試験菌株懸濁液を下記のとおり調製した。
▲1▼エシェリキア・コリ懸濁液の調製
エシェリキア・コリ[Escherichia coli ATCC 25922 (アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲)]を保存スラントから1白金耳採取し、これを2%ペプトン;1%酵母エキス;2%グルコースからなる増殖培地5mlに接種し、30℃、2日間振とう培養し、この培養液0.1mlを新しい増殖培地5mlに接種し、30℃で6時間振とう培養した。培養後に集菌し、蒸留水で洗浄、遠心分離を2回繰り返し、さらに蒸留水に懸濁した。菌数は血球計算盤を用いて計数し、細胞数を4〜6×104 細胞/10μlに調整し、これをエシェリキア・コリ懸濁液として用いた。
▲2▼スタヒロコッカス・アウレウス懸濁液の調製
スタヒロコッカス・アウレウス[Staphylococcus aureus IFO 12732 (発酵研究所より分譲]を用い、増殖培地として1%ペプトン;0.2%酵母エキス;0.1%硫酸マグネシウム・七水和物からなる増殖培地を用いたことを除き、前記エシェリキア・コリ懸濁液の調製方法と同一の方法により懸濁液を調製し、これをスタヒロコッカス・アウレウス懸濁液として用いた。
▲3▼サッカロミセス・セレビシエ懸濁液の調製
サッカロミセス・セレビシエ[Saccharomyces cerevisiae A364A(イ−スト・ジェネティック・ストック・センタ−より分譲]を用いたことを除き、前記エシェリキア・コリ懸濁液の調製方法と同一の方法により懸濁液を調製し、これをサッカロミセス・セレビシエ懸濁液として用いた。
▲4▼カンジダ・アルビカンス懸濁液の調製
カンジダ・アルビカンス[Candida albicans ATCC 10259 (アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲)]を用い、増殖培地として1%ポリペプトン;2%グルコースからなる増殖培地を用たことを除き、前記エシェリキア・コリ懸濁液の調製方法と同一の方法により懸濁液を調製し、これをカンジダ・アルビカンス懸濁液として用いた。
(3)試験方法
各試験菌株懸濁液10μlと各濃度試料溶液40μlとを混合し、37℃で2時間保温した。その後、混合液を寒天培地(前記各試験菌株毎の増殖培地に1.5%の寒天を添加した培地)にまき、各試験菌株毎の最適培養条件でそれぞれ培養し、生じたコロニー数を計測した。各試験菌株毎の最適培養条件は、エシェリキア・コリは、培養温度30℃、培養時間14時間とし、スタヒロコッカス・アウレウスおよびサッカロミセス・セレビシエは、培養温度30℃、培養時間2日間とし、カンジダ・アルビカンスは、培養温度30℃、培養時間1日間とした。
(4)試験結果
この試験の結果は、図1および表1に示すとおりである。図1は、抗菌性ペプチド濃度と生菌数との関係を示し、図中縦軸および横軸は、それぞれ生菌数[CFU(colony foming unit)は細胞のコロニー形成単位を示す]および抗菌性ペプチドの濃度を示し、●、■、△および◇は、それぞれエシェリキア・コリ、スタヒロコッカス・アウレウス、サッカロミセス・セレビシエおよびカンジダ・アルビカンスを示す。
【0019】
図1から明らかなとおり、抗菌性ペプチド濃度が増加するとともに生菌数は著しく減少した。図1から求められる各試験菌株に対する抗菌性ペプチドの最小阻止濃度を示した表1から明らかなとおり、この発明の抗菌性ペプチドは、1.6μg/μlという低い濃度で、この試験に使用された全ての試験菌株に対して強い抗菌作用を示した。
【0020】
【表1】
Figure 0003734885
【0021】
試験例2
この試験は、試験例1で使用した抗菌性ペプチドのアミノ酸配列を決定するために行った。
試験例1で使用した抗菌性ペプチド0.2mgに蒸留水160μlを添加し、50mMジチオスレイトール(DTT)、5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を含む250mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)を40μl添加して溶解し、これにピログルタミン酸アミノペプチダーゼ溶液(0.5U/ml)を8μl添加して37℃で8時間酵素処理した。その後、この反応液にクロロホルム:メタノール(2:1)溶液を10ml添加して沈殿させ、遠心分離によって沈殿物を回収した。この沈殿物に、さらにエタノール:エーテル(3:2)溶液を10ml添加して遠心分離を行い、沈殿物を回収した。
【0022】
回収した沈殿物の一部(80μg)を6M尿素を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)100μlで溶解し、さらに10mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を200μl添加し、のちリシルエンドペプチダーゼ溶液(1μg/50μl)を50μl添加して37℃で8時間酵素処理した。
これとは別に、沈殿物の一部(80μg)を6M尿素を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)50μlで溶解し、さらに50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)を200μl添加し、エンドプロテアーゼAsp−N溶液(0.4mg/ml)を5μl添加して37℃で8時間反応させた。
【0023】
前記リシルエンドペプチダーゼおよびエンドプロテアーゼAsp−Nの2種の反応液中のペプチド断片をODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィーによりそれぞれ精製し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列を気相式自動アミノ酸シーケンサー(パーキンエルマー・アプライドバイオシステムズ社製)を用いて測定した。
【0024】
その結果、それぞれのペプチド断片のアミノ酸配列から、ペプチド全体のアミノ酸配列を決定し、この抗菌性ペプチドが配列番号1に示されるアミノ酸配列を有することを確認した。
次に実施例を示し、この発明をさらに具体的に説明するが、この発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
実施例1
市販のウシ胎児血清(シグマ社製)400mlに、5M塩化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製)100mlを添加し、これを疎水クロマト樹脂[ブチル・トヨパール650M(東ソー社製)]に添加して吸着させ、この吸着樹脂をカラムに充填し、1M塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、0.15M塩化ナトリウム水溶液および蒸留水で溶出し、得られた抗菌活性を有する蒸留水溶出画分を、ゲル濾過担体[TSKgelG3000SW(東ソー社製)]を使用し、100mM塩化ナトリウム含有10mMリン酸緩衝液(pH6.9)を移動相に用いたゲル濾過を行い、分子量約10キロダルトン付近の抗菌活性を有する画分を回収した。
【0026】
さらに、この画分を、逆相クロマト担体[PROTEIN C4(VYDAC社製)]を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸(和光純薬工業社製)を含む32〜56%アセトニトリル(和光純薬工業社製)を用いた直線濃度勾配溶出法による逆相クロマトグラフ法により、アセトニトリル濃度48〜50%に溶出される抗菌活性を有するピークを回収した。
【0027】
この回収液を凍結乾燥し、抗菌性ペプチドの精製標品約2.4mgを得た。この抗菌性ペプチドの精製標品は、SDS電気泳動において単一バンドを示し、前記試験例2と同一の方法によりアミノ酸配列を決定した結果、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有していた。
実施例2
実施例1と同一の方法で得た抗菌性ペプチド5mgを、メチルセルロ−ス5mgおよび精製水1gの混合液に溶解し、抗菌剤を製造した。
実施例3
次の組成の点眼薬を常法により製造した。なお、抗菌性ペプチド以外の成分はいずれも市販品である。
【0028】
ホウ酸 1.6(%)
実施例1の抗菌性ペプチド 1.0
メチルセルロース 0.5
精製水 96.9
実施例4
次の組成の歯磨を常法により製造した。なお、抗菌性ペプチド以外の成分は、いずれも市販品である。
【0029】
第二リン酸カルシウム・二水和物 36.0(%)
ソルビトール 45.0
グリセリン 15.0
カルボキシメチルセルロース・ナトリウム 1.5
ソルビタン脂肪酸エステル 0.5
サッカリンナトリウム 1.0
実施例1の抗菌性ペプチド 1.0
実施例5
次の組成の皮膚洗浄剤を常法により製造した。この皮膚洗浄剤は、使用時水で50倍に希釈して使用する。なお、抗菌性ペプチド以外の成分は、いずれも市販品である。
【0030】
塩化ナトリウム 8.0(%)
実施例1の抗菌性ペプチド 0.7
精製水 91.3
実施例6
次の組成の防黴剤を常法により製造した。なお、抗菌性ペプチド以外の成分は、いずれも市販品である。
【0031】
エチルアルコール 20.0(%)
実施例1の抗菌性ペプチド 0.6
精製水 79.4
実施例7
次の組成の動物組織培養用培地をにより製造した。なお、抗菌性ペプチド以外の成分は、いずれも市販品である。
【0032】
塩化カリウム 0.04(%)
リン酸二水素カリウム 0.006
塩化ナトリウム 0.8
炭酸水素ナトリウム 0.035
リン酸水素二ナトリウム・七水和物 0.009
グルコース 0.1
実施例1の抗菌性ペプチド 0.5
精製水 98.51
【0033】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、哺乳動物(ウシ)に由来し、広範囲の微生物に対して抗菌作用を示す新規な抗菌性ペプチドと、この抗菌性ペプチドを有効成分とする抗菌剤が提供される。この抗菌剤によって、ヒトまたは動物、あるいは各種物品を安全かつ効果的に抗菌処理することが可能となる。
【0034】
【配列表】
Figure 0003734885

【図面の簡単な説明】
【図1】抗菌性ペプチド濃度と生菌数との関係を示すグラフ図である。

Claims (4)

  1. 配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する抗菌性ペプチド。
  2. ウシ胎児血清から単離されたペプチドである請求項1の抗菌性ペプチド。
  3. 配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、このペプチドの薬学的に許容される誘導体、このペプチドの薬学的に許容される塩類、またはこれらの2以上の混合物を有効成分として含有する抗菌剤。
  4. ペプチドが、ウシ胎児血清から単離されたペプチドである請求項3の抗菌剤。
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