JP2001304955A - 高感度赤外線検出素子およびその製造方法 - Google Patents
高感度赤外線検出素子およびその製造方法Info
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Abstract
提供する。 【解決手段】 高感度赤外線検出素子は、赤外線の入射
による温度上昇により電気的な出力を提供する赤外線検
出部と、前記の出力を取り出すための一対の第1電極お
よび第2電極と、赤外線検出部の赤外線受光面側に設け
られる赤外線吸収部とを具備し、赤外線吸収部が金属硫
化物を含むことを特徴とする。
Description
素子の温度が上昇することにより電気的な出力が得られ
る熱型赤外線検出素子およびその製造方法に関するもの
である。
子型がある。熱型赤外線検出素子は、赤外線を吸収して
これを熱に変換し、熱によって生じた温度変化に基く電
気的出力により入射赤外線を検出するものであり、サー
モパイル型、焦電型、ボロメータ型に分類される。熱型
赤外線検出素子は、量子型に比べ一般に感度が低く応答
が遅いが、素子の冷却が不要で感度の波長依存性がない
という特徴を有しているため上記の短所を改善すべく活
発な研究開発が行われている。
率を向上させることによって改善でき、従来においては
赤外線受光部にカーボンペーストを塗布したり、金黒を
形成して赤外線の吸収率を高めることが一般的であっ
た。例えば、日本公開特許公報10−206230号
は、焦電型赤外線検出素子とその製造方法について記載
している。図17に示すように、酸化マグネシウム等の
単結晶材料でなる基板1Pと、一対の第1電極2Pおよび
第2電極4Pと、第1電極上に形成されるチタン酸鉛系
誘電体材料でなる薄膜焦電体3Pと、第1電極と第2電
極の間の電気絶縁性を提供する層間絶縁膜5Pと、赤外
線を吸収することにより得た熱を薄膜焦電体3Pに供給
する赤外線吸収体6Pとを具備する。
カーボン粒子またはグラファイト粒子を添加した有機系
材料を主成分とする材料で第2電極4Pを形成すること
により、人体あるいは物体から放出される赤外線を熱エ
ネルギーとして効率良く第2電極で吸収し、吸収した熱
を赤外線受光部の薄膜焦電体3Pに伝達させている。
受光部にカーボンペースト等を塗布する場合、微細領域
に均一な塗布量で塗布することが困難であり、塗布量が
不均一な場合は熱容量が変化するため感度のバラツキが
発生する原因となる。また、塗布位置がずれると感度を
向上させることができないだけでなく、電極接触不良等
を引き起こす恐れもある。一方、金黒を蒸着する場合
は、形成された膜が微粒子状の密着性の乏しい膜であ
り、膜形成後の剥離等が問題となっていた。
のであり、製造が比較的容易で高い赤外線吸収率を有す
る高感度赤外線検出素子およびその製造方法を提供す
る。
度赤外線検出素子を提供するものであって、赤外線の入
射による温度上昇により電気的な出力を提供する赤外線
検出部と、その電気的出力を取り出すための一対の第1
および第2電極と、赤外線検出部の赤外線受光面側に設
けられる赤外線吸収部とを具備し、赤外線吸収部が金属
の硫化物を含むことを特徴とするものである。赤外線吸
収部として金属硫化物を使用することにより、赤外線吸
収率を高めて高感度の赤外線検出素子を提供することが
できる。
度赤外線検出素子において、金属硫化物が、銅または銅
合金の硫化物、銀または銀合金の硫化物、ニッケルまた
はニッケル合金の硫化物、鉄または鉄合金の硫化物、ス
ズまたはスズ合金の硫化物を含むことを特徴とするもの
である。これらは、硫化物の中でも黒色系で赤外線吸収
率が高く、高感度の赤外線検出素子を提供できる。
記載の高感度赤外線検出素子において、赤外線吸収部が
金属の硫化物と酸化物の混合物でなることを特徴とする
ものである。この場合は、酸化物と硫化物の間で赤外線
吸収率が異なるので、これらの混合物とすることで赤外
線の吸収特性を制御することができる。
かに記載の高感度赤外線検出素子において、赤外線検出
部は第1および第2電極の間に配置され、赤外線吸収部
は赤外線受光側の第1電極上に形成されることを特徴と
するものであり、本発明の高感度赤外線検出素子のより
具体的な構造を提供するものである。
度赤外線検出素子において、赤外線吸収部と第1電極と
の間に硫化に対して活性度の低い材料でなるバリヤ層を
有することを特徴とするものである。硫化性雰囲気にお
いて赤外線吸収部の金属硫化物を形成する場合に、第1
電極を構成する材料の硫化による導電率の低下を防止す
ることができる。
度赤外線検出素子において、第1電極は、赤外線に対し
て実質的に透明な導電性材料でなることを特徴とするも
のである。この場合は、赤外線吸収部だけでなく赤外線
検出部によっても赤外線が吸収されるので、全体として
吸収される赤外線量が増加して応答性が向上する。
度赤外線検出素子において、第1電極は、赤外線吸収部
と同一の材料でなることを特徴とするものである。この
場合は、赤外線検出素子を簡易な構造とすることで、そ
の製造工程を簡略化することができる。
度赤外線検出素子において、第2電極上に第2の赤外線
吸収部を具備することを特徴とするものである。この場
合は、赤外線受光側の赤外線吸収部の厚みを薄くして、
検出素子内から温度上昇させることで応答性を向上させ
ることができる。
かに記載の高感度赤外線検出素子において、第1および
第2電極は、赤外線検出部の赤外線受光側の表面および
それに対向する表面にそれぞれ配置され、赤外線吸収部
は第1電極に隣接して位置するように赤外線検出部の赤
外線受光側の表面に形成されることを特徴とするもので
あり、本発明の高感度赤外線検出素子のより具体的な構
造を提供するものである。
感度赤外線検出素子において、第1電極の表面は酸化物
セラミックスでなる保護被膜を有することを特徴とする
ものであり、赤外線検出素子の製造工程において電極の
硫化防止に使用することができるとともに、赤外線検出
素子の使用時においては電極の保護層として機能する。
に記載の高感度赤外線検出素子において、赤外線吸収部
の厚さが赤外線検出部の厚みの10%以下であることを
特徴とするものであり、素子の熱容量が大きくなって応
答性を低下させることなく、赤外線の吸収率を向上させ
る上で好ましい。
感度赤外線検出素子において、赤外線吸収部の赤外線受
光面は、検出すべき赤外線の波長の1/8以上の大きさ
の凹凸を有することを特徴とするものである。赤外線吸
収部の表面に設けた凹凸により赤外線を多重反射させ、
赤外線吸収部への赤外線の入射量を増やすことができる
ので、赤外線検出素子の感度のさらなる向上に有効であ
る。
高感度赤外線検出素子において、赤外線吸収部の赤外線
受光面における凹凸の平均周期は、検出すべき赤外線波
長の1/4であることを特徴とするものであり、赤外線
の反射率を抑えて赤外線の吸収率を向上させる上で好ま
しい。
高感度赤外線検出素子において、赤外線検出部の赤外線
受光側の表面は、赤外線吸収層を透過した赤外線の多重
反射を起こさせるのに必要な大きさの凹凸を有すること
を特徴とするものであり、赤外線検出部を透過した赤外
線についても、多重反射させて効率良く吸収することが
できる。
子を含む構造体を提供するものであって、請求項1〜1
4のいずれかに記載の高感度赤外線検出素子と、赤外線
検出素子を収容する空間およびこの空間に突出する一対
の保持手段を備えた基台とを含み、赤外線検出素子は、
前記空間において保持手段によって連結保持されること
を除いて基台から離して配置されることを特徴とするも
のである。赤外線検出素子によって吸収された熱が周囲
に容易に拡散しないように熱絶縁対策を講じた基台によ
って保持することにより、本発明の赤外線検出素子の性
能を充分に発揮させることができる。
子の製造方法を提供するものであって、赤外線の入射に
よる温度上昇により電気的な出力を提供する材料でなる
基板を提供する工程と、その出力を取り出すための一対
の第1及び第2電極を基板の対向する表面に形成する工
程と、基板の赤外線受光面側に金属の硫化物を含む赤外
線吸収層を形成する工程とを含むことを特徴とするもの
である。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、赤外線吸収
層を形成する工程は、基板の赤外線受光面側に金属被膜
を形成する工程と、金属被膜に硫化処理を施す工程とを
含むことを特徴とするものである。この方法によれば、
金属被膜を構成する材料の選択、硫化処理の条件設定に
より赤外線の吸収率を任意に決めることができ、金属硫
化物を含む赤外線吸収層を再現性よく形成することがで
きる。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、硫化処理に
より金属被膜の最表層にのみ金属硫化物を形成すること
を特徴とするものであり、電極を構成する材料の硫化を
防ぐとともに、硫化処理に要する時間を短縮して製造方
法の効率化を図れる。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、赤外線吸収
層を形成する工程は、基板の赤外線受光側の表面に形成
した第1電極にマスクパターンを形成する工程と、マス
クパターンによって露出される第1電極の領域に硫化処
理を施して、第1電極の一部に赤外線吸収層を形成する
工程とを含むことを特徴とするものである。第1電極を
構成する材料として、硫化物を形成して赤外線吸収能を
示すとともに導電性に優れる材料を選択することによ
り、第1電極の形成と別途に赤外線吸収層のための金属
被膜を形成する工程を実施する必要がなく、製造方法の
効率化を図ることができる。また、マスクパターンの使
用により、所望の領域に赤外線吸収層を容易に形成する
ことができる。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、マスクパタ
ーンは、酸化物セラミックスでなることを特徴とするも
のであり、製造工程が終了した後、マスクパターンとし
て使用した酸化物セラミックスをそのまま素子保護層と
して利用できる。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、硫化に対し
て活性度の低い金属材料でなる第1電極を基板の赤外線
受光側の表面の第1領域に形成する工程と、硫化に対し
て活性度の高い材料でなる金属被膜を基板の赤外線受光
側の表面の第2領域に形成する工程と、硫化処理により
金属被膜を硫化して上記赤外線吸収層を形成する工程と
を含むことを特徴とするものであり、硫化に対して活性
度の低い金属材料で第1電極を形成することでマスクパ
ターンを使用せずに所望の領域に赤外線吸収層を形成で
きる。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、基板の赤外
線受光側の表面に設けた第1電極上に硫化に対して活性
度の低い材料でなるバリヤ層を形成する工程と、バリヤ
層上に金属被膜を形成する工程と、硫化処理により金属
被膜を硫化して赤外線吸収層を形成する工程とを含むこ
とを特徴とするものである。第1電極を構成する材料の
硫化をバリヤ層によって防ぐことにより、硫化処理によ
る第1電極の導電率の低下を考慮することなく高感度赤
外線検出素子を製造することができる。
よび22のいずれかに記載の高感度赤外線検出素子の製
造方法において、金属被膜が真空蒸着法もしくはスパッ
タリングにより形成されることを特徴とするものであ
る。この場合は、赤外線吸収層の厚さを制御しやすく、
フォトリソグラフィ法を使用しての微細なパターンニン
グが可能である。
高感度赤外線検出素子の製造方法において、赤外線吸収
層を形成する工程は、気相合成法により柱状構造を有す
る金属硫化物の被膜を形成する工程を含むことを特徴と
するものである。赤外線検出材料でなる基板の表面が鏡
面であっても、赤外線吸収層の表面に赤外線の多重反射
を起こさせるのに十分な凹凸を再現性良く提供すること
ができる。
よび22のいずれかに記載の高感度赤外線検出素子の製
造方法において、金属被膜を形成する工程は、気相合成
法により微粒子を堆積させた構造でなる金属被膜を形成
する工程を含むことを特徴とするものである。この場合
は、金属被膜の表面積が増加して活性度が高くなるので
金属硫化物を形成しやすくなる。また、赤外線吸収層の
表面に微細な凹凸が形成されるので、赤外線吸収率を向
上させることができる。
の製造方法を以下の実施例1〜3に基いて具体的に説明
する。尚、これらの実施例はいずれも本発明の好適な例
示であって、本発明を限定するものではない。 (実施例1)実施例1の赤外線検出素子は、図1に示す
ように、赤外線の入射による温度上昇により電気的な出
力を提供する赤外線検出層10と、その電気的出力を取
り出すための一対の上部電極20および下部電極25
と、赤外線受光側の上部電極20上に設けられる赤外線
吸収層30とを具備する。
TaO3やPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等のセラミ
ックスやPVDF(ポリ弗化ビニリデン)等を使用する
ことができる。また、赤外線検出層の厚みは、例えば、
30〜100μm程度とすることができる。
は、Au、Pt、NiCr等の導電性の金属材料を使用
することができる。また電極20,25の厚みは、例え
ば、0.03〜0.2μm程度とすることができる。
金の硫化物、銀または銀合金の硫化物、ニッケルまたは
ニッケル合金の硫化物、鉄または鉄合金の硫化物、スズ
またはスズ合金の硫化物を使用することができ、例え
ば、Ag2SやCu2Sを使用することが好ましい。ま
た、赤外線吸収層30を上記した金属の硫化物と酸化物
の混合物、例えば、Cu2O+Cu2SやAg2O+Ag2
Sとしてもよい。この場合は、酸化物と硫化物の赤外線
吸収率の差異に基いてその混合比を調節し、赤外線の吸
収特性(吸収率、波長)を制御することができる。
10の厚みの1/10以下であることが好ましく、例え
ば、0.1〜3μm程度とすることができる。本発明の
金属硫化物でなる赤外線吸収層を有する赤外線検出素子
においては、赤外線吸収層を形成しない場合と比較して
1.3倍の電圧感度が得られている。尚、図1において
は、赤外線吸収層30を上部電極20上にのみ形成して
いるが、下部電極25上にも赤外線吸収層を設けても良
い。これにより、赤外線受光面側の赤外線検出層30の
厚みを薄くでき、感度の向上だけでなく応答性も改善す
ることができる。
0を必ずしも上部電極20の全面に設ける必要はなく、
所望の領域(図2では中央部)にのみ赤外線吸収層30
を形成しても良い。赤外線吸収層30の下方に定義され
る赤外線検出層の検知領域11とそれ以外の領域との温
度差を大きくすることにより感度を向上させることがで
きる。また、赤外線吸収層30の周囲に上部電極20の
露出領域が形成されるので、この領域を配線部21とし
て使用して他の回路と間に信頼性の高い電気接続を提供
できる。
は、その表面状態を制御することによりさらに改善する
ことができる。すなわち、赤外線を多重反射させること
により赤外線吸収層への赤外線の入射量を増加させて赤
外線の吸収率を向上させるのである。具体的には、図3
に示すように、赤外線吸収層30の表面に検出すべき赤
外線の波長λの1/8以上の高さHを有する凹凸を形成
する。光を受光する表面の形状が、波長λの1/8程度
であると、光学的にほぼ鏡面とみなしてもよく、乱反射
成分が考慮されなくなる。従って、表面で多重反射を起
こさせるためには1/8λ以上の高さの凹凸を形成する
必要がある。上記のような表面状態は、赤外線吸収層の
表面を研磨あるいはブラスト処理等により粗面化して得
ることができる。
状の平均周期Pを波長λの1/4とすることが好まし
い。光学的特性である反射・透過・吸収のうち、材料に
よる赤外線吸収率を向上させるだけでなく、表面形状に
より赤外線の反射率を抑えることで全体として赤外線吸
収層30の赤外線吸収率を向上させることができる。す
なわち、反射率Rは、次式(1)で示されるように、2
つの材料の屈折率n0、n1で決まる。
(2)で示されるように、その凹凸の大きさにより反射
率を定義することができる。
凹凸の山と谷の幅である(TE波の場合)。このよう
に、凹凸の大きさにより反射率を調整することができ
る。
ば、以下の方法に基いて製造することができる。まず、
赤外線の入射による温度上昇により電気的な出力を提供
する材料でなる基板10を準備する。本実施例では、厚
さ約70μmのLiTaO3単結晶基板を使用した。
の上面および下面にそれぞれ上部電極20および下部電
極25を形成する。本実施例においては、厚さ約50n
mのNiCr被膜を真空蒸着により作成して上部電極お
よび下部電極とした。尚、真空蒸着の代わりにスパッタ
リング等のPVD法を用いても良い。
光側の上部電極20の表面にIbまたはVIII族の金属
被膜31を形成する。本実施例においては、厚さ約10
0nmの銅被膜を真空蒸着により作成した。尚、真空蒸
着の代わりにスパッタリング、イオンビーム蒸着法等の
PVD法、あるいは湿式めっき等により金属被膜を形成
しても良い。PVD法を採用する場合は、厚さの制御性
が良く、微妙な感度調整が可能である。また、フォトリ
ソグラフィ法を利用できるので、微細なパターンニング
を形成する際に好適である。
膜31に硫化処理3を施して赤外線吸収層30を形成す
る。本実施例においては、金属被膜31を硫黄蒸気雰囲
気中に1分間放置することにより硫化処理を行ったが、
硫酸カリウム/塩化アンモニウム混合溶液等を使用した
り、亜硫酸ガス雰囲気や硫化プラズマ等を使用して硫化
処理を行っても良い。尚、金属被膜を構成する材料の選
択、および金属被膜の硫化の度合いに基いて赤外線の吸
収率を制御することができる。
硫化されるように実施することも好ましい。赤外線吸収
層30は、光学的に透過しない程度の厚み(約0.1μ
m以上)で良く、上部および下部電極は電気的出力を提
供するにあたって充分な導電率を維持できる厚さ(約
0.02μm以上)で良いので、例えば、0.2μm程度
の厚みの金属被膜31を形成してその最表層のみ硫化す
れば赤外線吸収層30として機能させることができる。
この場合は、硫化処理に要する時間を短縮でき、赤外線
検出素子の製造効率を改善することができる。また、金
属被膜の最表層のみを硫化させることで電極材料の硫化
を防げるので、上部電極の導電率の低下させることなく
赤外線吸収層30を作成することができる。
硫化して金属硫化物でなる赤外線吸収層30を作成した
が、IbまたはVIII族金属の硫化物薄膜を赤外線受光
側の上部電極20の表面に直接形成しても良い。尚、金
属硫化物は金属の硫化処理や金属硫化物被膜の形成によ
り作成することが好ましいが、金属硫化物の粉末を電極
の表面に塗布することを排除するものではない。
設ける場合は、研磨あるいはブラスト処理等により赤外
線検出層30の表面を粗面化する。また、図5に示すよ
うに、赤外線検出層10の表面にも凹凸を形成しておく
ことが好ましい。赤外線検出層10の表面における多重
反射により、赤外線吸収層30を透過した赤外線も効率
良く吸収することができる。特に、赤外線吸収層30が
薄い場合、それを透過する赤外線の量が増えるので、そ
のような透過した赤外線も効率良く吸収できる。凹凸
は、上部電極20の形成に先立って研磨あるいはブラス
ト処理等により赤外線検出層10の表面を粗面化するこ
とにより得ることができる。硫化処理後、ダイシングに
より素子を切り出す素子外形加工を実施して赤外線検出
素子を得る。
ング法で形成する場合は、図6に示すように、その膜形
成条件(真空度、成膜速度、成膜温度等)を制御して柱
状成長させることにより赤外線吸収層30の表面に凹凸
を設けることもできる。柱状成長により得られる表面の
凹凸は、多重反射効果を提供するのに効果的である。そ
の他、赤外線吸収層の形成と凹凸の形成を同時に行うこ
とができる点、および赤外線検出層の表面が鏡面のよう
に平坦な場合であっても赤外線吸収層にのみ凹凸を形成
できる点等の長所がある。
成する場合は、図7に示すように、高めの圧力条件の下
で気相合成することにより金属微粒子が堆積してなる金
属膜32を形成し、これに硫化処理を施すことで表面に
微細な凹凸を有する赤外線吸収層を形成することができ
る。金属微粒子が堆積してなる金属膜32は、表面積が
大きく活性度が高いため硫化しやすいという長所があ
る。この方法を採用する場合は、金属膜32を構成する
材料としてニッケル、銀あるいは銅を選択することが好
ましい。
極20と赤外線吸収層30との間に硫化に対して活性度
の低い材料でなるバリヤ層40を設けることも好まし
い。この場合は、硫化による上部電極20の導電率の変
化を防ぐことができる。また、硫化雰囲気中において硫
化させる場合、硫化反応の進行がバリヤ層によって止め
られるので各層の厚みを精度良く制御することができ
る。このように、バリヤ層の形成は、電極層の導電率を
低下させることなく所望の厚みの赤外線吸収層30を作
成するのに有効である。
るいは金属酸化物を使用することができる。バリヤ層の
形成は、例えば、上部電極を形成した後、PVD法によ
りPT、Au、あるいは金属酸化物を上部電極上に被覆
したり、上部電極を構成する材料としてPtやAuを選
択してバリヤ層を兼ねる上部電極を設けたり、上部電極
上に銅やアルミニウム等の金属被膜を形成した後、プラ
ズマや高温酸化雰囲気等を利用して金属被膜を酸化する
ことによって行える。
0と赤外線検出層10の間の上部電極を透明導電性電極
23とすることも好ましい。透明導電性電極23として
は、例えば、錫酸化物、インジウム酸化物、亜鉛酸化
物、あるいはそれらの複合酸化物等を使用することがで
きる。透明導電性電極としない場合は、入射赤外線は主
として赤外線吸収層30によって吸収されるが、透明導
電性電極とする場合は、入射赤外線は赤外線吸収層30
によって吸収されるとともに、透明導電性電極23を介
して赤外線検出層10によっても吸収される。その結
果、赤外線吸収層の厚みを薄くでき、素子の熱容量を小
さくして感度特性を向上させることができる。また、素
子の温度変化が赤外線吸収層からの熱伝導だけでなく、
赤外線検出素子全体による赤外線吸収によってもたらさ
れるので応答性を改善することができる。
せた赤外線検出素子は、赤外線の吸収により得た熱エネ
ルギーを周囲に逃がさないように熱絶縁された構造によ
って保持されることが好ましく、それにより相乗的な感
度の向上を達成することができる。例えば、図10に示
すような熱絶縁対策を講じた基台50によって赤外線検
出素子1を保持することが好ましい。すなわち、基台5
0は、赤外線検出層10と同じ材料で作成され、一対の
保持部51によって赤外線検出素子に連結されることを
除いて赤外線検出素子とはスリット52を介して離され
ている。このスリット52の形成により赤外線検出素子
1が吸収した熱が周囲に拡散するのを防いでいる。尚、
基台と赤外線検出素子の赤外線検出層は一体に形成する
ことが好ましい。図9中、番号5は赤外線検出素子1の
電極に接続される配線である。 (第2実施例)本実施例においては、図11に示す方法
により製造される高感度赤外線検出素子について説明す
る。まず、赤外線の入射による温度上昇により電気的な
出力を提供する材料でなる基板10を準備する。次に、
図11(a)に示すように、基板10の上面および下面
に上部電極20と下部電極25をそれぞれ形成する。赤
外線受光側の上部電極20は、銅や銀などの金属硫化物
を形成可能で電気伝導性に優れる金属材料でなる。次い
で、図11(b)に示すように、上部電極20を構成す
る金属材料に硫化処理3を実施して、上部電極20の最
表面から所定の深さにわたって金属硫化物でなる赤外線
吸収層30を形成する。上部および下部電極の形成後に
金属被膜を別途形成することなく硫化処理を行って赤外
線吸収層30を形成できるので、赤外線検出素子1をよ
り効率よく製造することができる。
化処理を施して赤外線吸収層30とするものであるが、
金属硫化物が良好な導電性を有する場合は、図12に示
すように、金属硫化物でなる電極兼赤外線吸収層33を
赤外線検出層10上に直接設けても良い。例えば、金属
材料の短時間の硫化処理により得られる低級硫化物とす
ることで、導電率の低下を防ぐとともに良好な赤外線吸
収率を有する電極兼赤外線吸収層を得ることができる。 (実施例3)本実施例においては、図13に示す方法に
より製造される高感度赤外線検出素子について説明す
る。まず、赤外線の入射による温度上昇により電気的な
出力を提供する材料でなる基板10を準備する。次に、
図13(a)に示すように、基板10の上面および下面
に上部電極20および下部電極25をそれぞれ形成す
る。赤外線受光側の上部電極20は、銅や銀などの金属
硫化物を形成可能で電気伝導性に優れる金属材料でな
る。
部電極上に市販のフォトレジスト材料でマスク60を作
成して所定のパターンに沿って上部電極20を露出させ
る。次に、図13(c)に示すように、この上部電極2
0の露出面に硫化処理3を実施して、基板10上に上部
電極20を構成する金属を硫化してなる赤外線吸収層3
0を形成する。硫化処理後、マスク60を除去すること
によって、図14(a)に示すように、中央部に赤外線
吸収層30を有し、その周囲に上部電極20の露出領域
を有する赤外線検出素子1が得られる。上部電極20形
成後に赤外線吸収層の位置をマスクの使用により任意の
箇所に設定できるので、赤外線検出素子の良好な検知性
能が得られることを確認した箇所にのみ硫化処理を実施
して赤外線吸収層を形成できる。また、露出された上部
電極20により他の回路等との電気接続に関して高い信
頼性を確保できる点でも好ましい。尚、図14(b)に
示すように、中央部に赤外線吸収層30を有し、その一
部に隣接するように上部電極20を設けた赤外線検出素
子1を作成しても良い。
法に基いて図14(a)の赤外線検出素子1を作成する
こともできる。まず、図15(a)に示すように、赤外
線検出層を構成する基板10の上面中央付近に後に実施
される硫化処理に対して高い活性を有する金属材料でな
る金属被膜31を形成する。次いで、図15(b)に示
すように、基板10の下面に下部電極25を形成すると
ともに、基板10の上面で金属被膜31の周辺部に硫化
処理に対して低い活性を有する材料でなる上部電極20
を形成する。次に、図15(c)に示すように、硫化処
理3を実施することで硫化処理に対して高い活性を有す
る金属被膜31のみを選択的に硫化して赤外線吸収層3
0を形成する。
材料の代わりにシリカ、アルミナ、チタニア等の酸化物
をマスク材料として使用しても良い。この場合は、硫化
処理を実施した後、酸化物マスクを除去せずに赤外線検
出素子の保護層として使用することができる。すなわ
ち、図16に示すように、中央部に赤外線吸収層30を
有し、その周囲に酸化物薄膜でなる素子保護層70を有
する赤外線検出素子1を得ることができる。
製造方法を好適な実施例に基づいて説明したが、本発明
の技術思想から逸脱しないかぎりにおいて種々の変更お
よび改良を加えることが可能であることは言うまでもな
い。
層を設けることで赤外線吸収率を向上させてなる高感度
の赤外線検出素子を提供するものであり、従来より指摘
されている熱型赤外線検出素子の感度の問題を改善する
ものである。また、赤外線検出層の表面状態を制御して
赤外線の多重反射を起こさせたり、赤外線検出素子に吸
収された熱を周囲に逃がさないように熱絶縁対策を講じ
た構造体に収容して供給する等により、相乗的に感度の
向上を達成することが可能である。さらに、赤外線吸収
層の厚みを薄くすることができるような構成を採用する
ことによって赤外線検出素子の熱容量の増加を防ぎ、そ
の応答性の改善を図ることもできる。
出素子を製造する方法を提供するものであり、所定の金
属材料でなる金属被膜に硫化処理を施して金属硫化物を
形成したり、気相合成法により金属硫化物でなる被膜を
合成して赤外線吸収層とすることで性能の安定した高感
度赤外線検出素子を効率良く製造することができる。ま
た、金属被膜の最表層のみを硫化して赤外線吸収層を作
成する場合は、金属硫化物の形成工程に要する時間を一
層短縮できて製造方法のさらなる効率化を図ることがで
きる。このように、本発明は、赤外線検出素子の従来の
問題点を改善してそのさらなる普及を促進する上で産業
上の利用価値の高いものである。
素子の概略斜視図である。
検出素子の概略斜視図である。
素子の概略断面図である。
く高感度赤外線検出素子の製造方法を示す概略図であ
る。
検出素子の概略断面図である。
外線検出素子の概略断面図である。
外線検出素子の概略断面図である。
素子の変更例を示す概略斜視図である。
素子の別の変更例を示す概略斜視図である。
出素子を含む構造体の概略斜視図である。
に基づく高感度赤外線検出素子の製造方法を示す概略図
である。
出素子の概略斜視図である。
づく高感度赤外線検出素子の製造方法を示す概略図であ
る。
に基づく高感度赤外線検出素子の概略斜視図である。
づく高感度赤外線検出素子の別の製造方法を示す概略図
である。
出素子の変更例を示す概略斜視図である。
断面図である。
Claims (25)
- 【請求項1】 赤外線の入射による温度上昇により電気
的な出力を提供する赤外線検出部と、前記出力を取り出
すための一対の第1および第2電極と、前記赤外線検出
部の赤外線受光面側に設けられる赤外線吸収部とを具備
し、前記赤外線吸収部は金属の硫化物を含むことを特徴
とする高感度赤外線検出素子。 - 【請求項2】 上記金属の硫化物は、銅または銅合金の
硫化物、銀または銀合金の硫化物、ニッケルまたはニッ
ケル合金の硫化物、鉄または鉄合金の硫化物、スズまた
はスズ合金の硫化物を含むことを特徴とする請求項1に
記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項3】 上記赤外線吸収部は、金属の硫化物と酸
化物の混合物でなることを特徴とする請求項1もしくは
2に記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項4】 上記赤外線検出部は、第1および第2電
極の間に配置され、上記赤外線吸収部は赤外線受光側の
第1電極上に形成されることを特徴とする請求項1〜3
のいずれかに記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項5】 上記赤外線吸収部と第1電極との間に、
硫化に対して活性度の低い材料でなるバリヤ層を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の高感度赤外線検出素
子。 - 【請求項6】 第1電極は、赤外線に対して実質的に透
明な導電性材料でなることを特徴とする請求項4に記載
の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項7】 第1電極は、上記赤外線吸収部と同一の
材料でなることを特徴とする請求項4に記載の高感度赤
外線検出素子。 - 【請求項8】 第2電極上に第2の赤外線吸収部を具備
することを特徴とする請求項4に記載の高感度赤外線検
出素子。 - 【請求項9】 第1および第2電極は、上記赤外線検出
部の赤外線受光側の表面およびそれに対向する表面にそ
れぞれ配置され、上記赤外線吸収部は第1電極に隣接し
て位置するように上記赤外線検出部の赤外線受光側の表
面に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
かに記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項10】 第1電極の表面は、酸化物セラミック
スでなる保護被膜を有することを特徴とする請求項9に
記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項11】 上記赤外線吸収部の厚さは、上記赤外
線検出部の厚みの10%以下であることを特徴とする請
求項4もしくは9に記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項12】 上記赤外線吸収部の赤外線受光面は、
検出すべき赤外線の波長の1/8以上の大きさの凹凸を
有することを特徴とする請求項1に記載の高感度赤外線
検出素子。 - 【請求項13】 上記赤外線吸収部の赤外線受光面にお
ける上記凹凸の平均周期は、検出すべき赤外線の波長の
1/4であることを特徴とする請求項12に記載の高感
度赤外線検出素子。 - 【請求項14】 上記赤外線検出部の赤外線受光側の表
面は、赤外線吸収層を透過した赤外線の多重反射を起こ
させるのに必要な大きさの凹凸を有することを特徴とす
る請求項12に記載の高感度赤外線検出素子。 - 【請求項15】 請求項1〜14のいずれかに記載の高
感度赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子を収容する
空間および前記空間に突出する一対の保持手段を備えた
基台とを含み、前記赤外線検出素子は、前記空間におい
て前記保持手段によって連結保持されることを除いて前
記基台から離して配置されることを特徴とする高感度赤
外線検出素子を含む構造体。 - 【請求項16】 赤外線の入射による温度上昇により電
気的な出力を提供する材料でなる基板を提供する工程
と、前記出力を取り出すための一対の第1及び第2電極
を前記基板の対向する表面に形成する工程と、前記基板
の赤外線受光面側に金属の硫化物を含む赤外線吸収層を
形成する工程とを含むことを特徴とする高感度赤外線検
出素子の製造方法。 - 【請求項17】上記赤外線吸収層を形成する工程は、上
記基板の赤外線受光面側に金属被膜を形成する工程と、
前記金属被膜に硫化処理を施す工程とを含むことを特徴
とする請求項16に記載の高感度赤外線検出素子の製造
方法。 - 【請求項18】 上記硫化処理により上記金属被膜の最
表層にのみ金属硫化物を形成することを特徴とする請求
項17に記載の高感度赤外線検出素子の製造方法。 - 【請求項19】 上記赤外線吸収層を形成する工程は、
上記基板の赤外線受光側の表面に設けた第1電極上にマ
スクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンに
よって露出される第1電極の領域に硫化処理を施して第
1電極の一部に上記赤外線吸収層を形成する工程とを含
むことを特徴とする請求項16に記載の高感度赤外線検
出素子の製造方法。 - 【請求項20】 上記マスクパターンは、酸化物セラミ
ックスでなることを特徴とする請求項19に記載の高感
度赤外線検出素子の製造方法。 - 【請求項21】 硫化に対して活性度の低い金属材料で
なる第1電極を上記基板の赤外線受光側の表面の第1領
域に形成する工程と、硫化に対して活性度の高い材料で
なる金属被膜を上記基板の赤外線受光側の表面の第2領
域に形成する工程と、硫化処理により前記金属被膜を硫
化して上記赤外線吸収層を形成する工程とを含むことを
特徴とする請求項16に記載の高感度赤外線検出素子の
製造方法。 - 【請求項22】 上記基板の赤外線受光面に配置される
第1電極上に硫化に対して活性度の低い材料でなるバリ
ヤ層を形成する工程と、前記バリヤ層上に金属被膜を形
成する工程と、硫化処理により前記金属被膜を硫化して
上記赤外線吸収層を形成する工程とを含むことを特徴と
する請求項16に記載の高感度赤外線検出素子の製造方
法。 - 【請求項23】 上記金属被膜は、真空蒸着法もしくは
スパッタリングにより形成されることを特徴とする請求
項17、21および22のいずれかに記載の高感度赤外
線検出素子の製造方法。 - 【請求項24】 上記赤外線吸収層を形成する工程は、
気相合成法により柱状構造を有する金属硫化物の被膜を
形成する工程を含むことを特徴とする請求項16に記載
の高感度赤外線検出素子の製造方法。 - 【請求項25】 上記金属被膜を形成する工程は、気相
合成法により微粒子を堆積させた構造でなる金属被膜を
形成する工程を含むことを特徴とする請求項17、21
および22のいずれかに記載の高感度赤外線検出素子の
製造方法。
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