JP2001303269A - 金属成形品の表面処理 - Google Patents
金属成形品の表面処理Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 耐食性と表面硬さとが向上した金属、とくに
マグネシウムまたはアルミニウムの合金の成形品であっ
て、美麗な外観の表面処理製品を提供する。 【解決手段】 金属とくにマグネシウムまたはアルミニ
ウムの合金の成形品（１）を素材とし、その上にプライ
マー層（２）、ハードコート層（３）、金属蒸着膜層
（４）およびイオンプレーティングによる金属または金
属化合物の層（５）を順に設ける。金属蒸着膜層の存在
によりイオンプレーティング層が健全に発達し、強固に
成形品を被覆するので、最表面層である金属または金属
化合物の層が、耐食性や耐擦傷性を発揮する。
マグネシウムまたはアルミニウムの合金の成形品であっ
て、美麗な外観の表面処理製品を提供する。 【解決手段】 金属とくにマグネシウムまたはアルミニ
ウムの合金の成形品（１）を素材とし、その上にプライ
マー層（２）、ハードコート層（３）、金属蒸着膜層
（４）およびイオンプレーティングによる金属または金
属化合物の層（５）を順に設ける。金属蒸着膜層の存在
によりイオンプレーティング層が健全に発達し、強固に
成形品を被覆するので、最表面層である金属または金属
化合物の層が、耐食性や耐擦傷性を発揮する。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、比較的軽量で強度
が高いか、または軟質で加工性が高いか、またはこれら
二つの特性をあわせて有する、Ｍｇ、Ａｌ、Ｚｎまたは
Ｃｕの特徴を生かし、その金属成形品の表面に、硬さと
耐擦傷性に加えて金属の光沢面またはツヤ消し面のもつ
美麗な風合いを与えた、表面処理を施した金属成形品に
関する。本発明はまた、そのような金属成形品の製造方
法にも関する。
が高いか、または軟質で加工性が高いか、またはこれら
二つの特性をあわせて有する、Ｍｇ、Ａｌ、Ｚｎまたは
Ｃｕの特徴を生かし、その金属成形品の表面に、硬さと
耐擦傷性に加えて金属の光沢面またはツヤ消し面のもつ
美麗な風合いを与えた、表面処理を施した金属成形品に
関する。本発明はまた、そのような金属成形品の製造方
法にも関する。
【０００２】本発明において「金属成形品」の語は、上
記したＭｇ、Ａｌ、ＺｎまたはＣｕ単体の成形品のみな
らず、この金属を主体にした合金、たとえばＭｇを主成
分としてこれにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃｅ，
ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２種以
上の成分を添加してなる合金の成形品をも包含する。以
下、「マグネシウム」の語でＭｇおよびＭｇ合金を一括
して指すこととし、その他の金属についても同様とす
る。
記したＭｇ、Ａｌ、ＺｎまたはＣｕ単体の成形品のみな
らず、この金属を主体にした合金、たとえばＭｇを主成
分としてこれにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃｅ，
ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２種以
上の成分を添加してなる合金の成形品をも包含する。以
下、「マグネシウム」の語でＭｇおよびＭｇ合金を一括
して指すこととし、その他の金属についても同様とす
る。
【０００３】「成形」には、鋳造、ダイキャスト、圧
延、プレス、切削そのほか、この種の金属の成形に適用
される任意の手段が含まれる。
延、プレス、切削そのほか、この種の金属の成形に適用
される任意の手段が含まれる。
【０００４】
【従来の技術】軽量でありながら、かなりの強度を有す
る金属材料として、アルミニウムやチタンが盛んに利用
されている。一方、より軽量な構造材に対する需要に応
えて、近年、マグネシウムの利用が進んでいる。とりわ
け、モバイル電子機器類は、携帯を容易にする軽さを実
現し、剛性および耐衝撃性を確保するという観点から、
プラスチックとともに、またはプラスチックに代えて、
マグネシウムが好んで使用されるようになってきた。亜
鉛もまた、鋳造が容易であり、比較的軽量である上に安
価であるから、各方面に使用可能である。銅は、軽量と
はいえないが、加工性が高く、成形品の材料としては使
いやすい。
る金属材料として、アルミニウムやチタンが盛んに利用
されている。一方、より軽量な構造材に対する需要に応
えて、近年、マグネシウムの利用が進んでいる。とりわ
け、モバイル電子機器類は、携帯を容易にする軽さを実
現し、剛性および耐衝撃性を確保するという観点から、
プラスチックとともに、またはプラスチックに代えて、
マグネシウムが好んで使用されるようになってきた。亜
鉛もまた、鋳造が容易であり、比較的軽量である上に安
価であるから、各方面に使用可能である。銅は、軽量と
はいえないが、加工性が高く、成形品の材料としては使
いやすい。
【０００５】これらの金属に共通の問題は、その表面が
軟らかで、傷がつきやすいことである。マグネシウムや
亜鉛は、その高い化学的活性に起因する低い耐食性を、
どのようにしてカバーするかという問題がある。アルミ
ニウムは酸化物被膜による耐食性付与の技術が確立され
ているが、金属光沢を有する表面を実現することは困難
である。
軟らかで、傷がつきやすいことである。マグネシウムや
亜鉛は、その高い化学的活性に起因する低い耐食性を、
どのようにしてカバーするかという問題がある。アルミ
ニウムは酸化物被膜による耐食性付与の技術が確立され
ているが、金属光沢を有する表面を実現することは困難
である。
【０００６】このような要望に応える一つの試みとし
て、代表にマグネシウムを取り上げると、特公昭６４−
７１５４号は、表面の導電性を確保し、かつ耐熱衝撃性
と耐摩耗性が高い、表面処理されたマグネシウムを提案
している。その手法は、マグネシウムの表面に、まず陽
極酸化または化成処理を行なって酸化被膜を形成し、そ
の上に熱硬化性樹脂の塗膜を形成してこれを硬化させた
のち、イオンプレーティングにより金属の薄膜を形成す
ることからなる。この表面処理方法は、表面の導電性の
確保に主眼があり、表面に形成された金属薄膜層は耐擦
傷性の観点からは不満足なものである。
て、代表にマグネシウムを取り上げると、特公昭６４−
７１５４号は、表面の導電性を確保し、かつ耐熱衝撃性
と耐摩耗性が高い、表面処理されたマグネシウムを提案
している。その手法は、マグネシウムの表面に、まず陽
極酸化または化成処理を行なって酸化被膜を形成し、そ
の上に熱硬化性樹脂の塗膜を形成してこれを硬化させた
のち、イオンプレーティングにより金属の薄膜を形成す
ることからなる。この表面処理方法は、表面の導電性の
確保に主眼があり、表面に形成された金属薄膜層は耐擦
傷性の観点からは不満足なものである。
【０００７】発明者らは、プラスチックの成形品であっ
て、高い表面硬さと美麗な外観をもったものを提供する
ことを意図し、イオンプレーティングによる金属または
金属化合物、とくに金属炭化物や窒化物の形成によりこ
れが実現することを見出し、すでに提案した（特願平１
１−２８８５６３号）。この表面処理法は、プラスチッ
ク成形品の表面にハードコート層、金属蒸着膜層および
スパッタリングを伴うイオンプレーティングによる金属
または金属化合物の層を順に設けることからなる。
て、高い表面硬さと美麗な外観をもったものを提供する
ことを意図し、イオンプレーティングによる金属または
金属化合物、とくに金属炭化物や窒化物の形成によりこ
れが実現することを見出し、すでに提案した（特願平１
１−２８８５６３号）。この表面処理法は、プラスチッ
ク成形品の表面にハードコート層、金属蒸着膜層および
スパッタリングを伴うイオンプレーティングによる金属
または金属化合物の層を順に設けることからなる。
【０００８】発明者らは、上述のプラスチック成形品の
表面処理技術を、マグネシウムをはじめとし、アルミニ
ウム、亜鉛および銅のような金属の成形品にも適用でき
ないかと考えて実験したところ、いずれも好成績を得
た。
表面処理技術を、マグネシウムをはじめとし、アルミニ
ウム、亜鉛および銅のような金属の成形品にも適用でき
ないかと考えて実験したところ、いずれも好成績を得
た。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、発明
者らが得た上記の知見を活用し、表面が高い耐食性と耐
擦傷性を有し、かつ美麗な外観をもった、マグネシウ
ム、アルミニウム、亜鉛および銅からえらんだ金属の成
形品を提供すること、およびその製造方法を提供するこ
とにある。
者らが得た上記の知見を活用し、表面が高い耐食性と耐
擦傷性を有し、かつ美麗な外観をもった、マグネシウ
ム、アルミニウム、亜鉛および銅からえらんだ金属の成
形品を提供すること、およびその製造方法を提供するこ
とにある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】本発明の表面処理を施し
た金属成形品は、図１に模式的に示したように、マグネ
シウム、アルミニウム、亜鉛および銅からえらんだ金属
の成形品（１）の表面に、ハードコート層（３）、金属
蒸着膜層（４）およびイオンプレーティングによる金属
または金属化合物の層（５）を順に設けてなる。
た金属成形品は、図１に模式的に示したように、マグネ
シウム、アルミニウム、亜鉛および銅からえらんだ金属
の成形品（１）の表面に、ハードコート層（３）、金属
蒸着膜層（４）およびイオンプレーティングによる金属
または金属化合物の層（５）を順に設けてなる。
【００１１】金属の成形品（１）とハードコート層
（３）との間には、両者の密着を助ける材料でプライマ
ー層（２）を設けてもよい。
（３）との間には、両者の密着を助ける材料でプライマ
ー層（２）を設けてもよい。
【００１２】上記の、表面処理を施した金属成形品を製
造する本発明の方法は、マグネシウム、アルミニウム、
亜鉛および銅からえらんだ金属の成形品の表面にハード
コート層を形成し、その上に金属の蒸着を行って蒸着膜
を形成したのち、イオンプレーティングにより金属また
は金属化合物の層を設けることからなる。
造する本発明の方法は、マグネシウム、アルミニウム、
亜鉛および銅からえらんだ金属の成形品の表面にハード
コート層を形成し、その上に金属の蒸着を行って蒸着膜
を形成したのち、イオンプレーティングにより金属また
は金属化合物の層を設けることからなる。
【００１３】
【発明の実施形態】、本発明の表面処理を適用する成形
品をつくる金属は、Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕ単体の
みならず、これらを主成分とする合金である。Ｍｇの合
金でいえば、ＭｇにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃ
ｅ，ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２
種以上の成分を添加してなる合金であり、具体例を挙げ
れば、次のような鋳物用マグネシウム合金がある。 Ｍｇ−(5.3~6.7)％Ａｌ−(2.5~3.5)％Ｚｎ Ｍｇ−(8.1~9.3)％Ａｌ−(0.4~1.0)％Ｚｎ Ｍｇ−(8.3~9.7)％Ａｌ−(1.6~2.4)％Ｚｎ Ｍｇ−(1.2~2.4)％Ｍｎ
品をつくる金属は、Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕ単体の
みならず、これらを主成分とする合金である。Ｍｇの合
金でいえば、ＭｇにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃ
ｅ，ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２
種以上の成分を添加してなる合金であり、具体例を挙げ
れば、次のような鋳物用マグネシウム合金がある。 Ｍｇ−(5.3~6.7)％Ａｌ−(2.5~3.5)％Ｚｎ Ｍｇ−(8.1~9.3)％Ａｌ−(0.4~1.0)％Ｚｎ Ｍｇ−(8.3~9.7)％Ａｌ−(1.6~2.4)％Ｚｎ Ｍｇ−(1.2~2.4)％Ｍｎ
【００１４】アルミニウムの合金としては、次のような
ものが代表である。
ものが代表である。
【００１５】 Ａｌ５０５６：Ａｌ−4.5％Ｍｇ−0.3％Ｓｉ−0.1％Ｃ
ｕ Ａｌ２０１１：Ａｌ−5.0％Ｃｕ−0.4％Ｓｉ−0.7％Ｆ
ｅ
ｕ Ａｌ２０１１：Ａｌ−5.0％Ｃｕ−0.4％Ｓｉ−0.7％Ｆ
ｅ
【００１６】ハードコート層を構成する材料として好適
なものの例を挙げれば、加熱、風乾または紫外線により
硬化するウレタン樹脂、シリコーン樹脂およびアクリル
樹脂などである。前記したプライマー層の使用は、基材
とハードコート層との密着を助けるという観点から、好
ましいものである。
なものの例を挙げれば、加熱、風乾または紫外線により
硬化するウレタン樹脂、シリコーン樹脂およびアクリル
樹脂などである。前記したプライマー層の使用は、基材
とハードコート層との密着を助けるという観点から、好
ましいものである。
【００１７】ハードコートおよびプライマーに関して
は、従来から、プラスチック成形品の表面の耐擦傷性を
高める目的で、さまざまなハードコート剤とプライマー
剤が開発され、使用されている。その多くは、マグネシ
ウム成形品を対象とする本発明にとっても有用であるこ
とが確認されたから、既知のものの中から適宜に選択使
用すればよい。たとえば、特開平７−１３３４４１号
は、プラスチックレンズに適したプライマーとしてオレ
フィン系オリゴマーを主体とするものを使用し、その上
にシリコーン系ハードコート剤を塗布し、加熱硬化させ
ることを提案している。
は、従来から、プラスチック成形品の表面の耐擦傷性を
高める目的で、さまざまなハードコート剤とプライマー
剤が開発され、使用されている。その多くは、マグネシ
ウム成形品を対象とする本発明にとっても有用であるこ
とが確認されたから、既知のものの中から適宜に選択使
用すればよい。たとえば、特開平７−１３３４４１号
は、プラスチックレンズに適したプライマーとしてオレ
フィン系オリゴマーを主体とするものを使用し、その上
にシリコーン系ハードコート剤を塗布し、加熱硬化させ
ることを提案している。
【００１８】ハードコート層は、場合によっては２層ま
たはそれ以上の多層を重ねることもできる。たとえば、
とくに丈夫な表面を形成したい場合には、外側のハード
コートを硬くし、それを支える内側のハードコートは比
較的やわらかで、基材のマグネシウム成形品とのなじみ
がよいものを選んで組み合わせるといった変更態様であ
る。ハードコート層の厚さは（多層の場合は合計の厚さ
で）、少なくとも１μｍは必要であり、３μｍ以上ある
ことが好ましい。通常、１００μｍを超える厚さは不要
であるが、マグネシウム成形品の表面状態によっては、
厚いハードコート層により平滑な表面を得ることが有利
な場合もある。
たはそれ以上の多層を重ねることもできる。たとえば、
とくに丈夫な表面を形成したい場合には、外側のハード
コートを硬くし、それを支える内側のハードコートは比
較的やわらかで、基材のマグネシウム成形品とのなじみ
がよいものを選んで組み合わせるといった変更態様であ
る。ハードコート層の厚さは（多層の場合は合計の厚さ
で）、少なくとも１μｍは必要であり、３μｍ以上ある
ことが好ましい。通常、１００μｍを超える厚さは不要
であるが、マグネシウム成形品の表面状態によっては、
厚いハードコート層により平滑な表面を得ることが有利
な場合もある。
【００１９】金属蒸着膜層は、イオンプレーティングに
より金属または金属化合物の被膜を生成させるとき、ハ
ードコート層に直接金属イオンが衝突すると、そのエネ
ルギーが大きいためにハードコート層内に侵入して、プ
レーティング被膜の組成が金属または金属化合物の組成
と異なるものになる。換言すれば、金属または金属化合
物とプラスチックとが混在したものになり、これが、被
膜がくすんだ色になる原因と考えられる。蒸着膜は、基
材の表面を金属の層が一面に被覆したものであるから、
金属イオンの衝撃を受け止め、その表面に金属または金
属化合物の整然とした被覆が行なわれることを可能にす
るわけである。
より金属または金属化合物の被膜を生成させるとき、ハ
ードコート層に直接金属イオンが衝突すると、そのエネ
ルギーが大きいためにハードコート層内に侵入して、プ
レーティング被膜の組成が金属または金属化合物の組成
と異なるものになる。換言すれば、金属または金属化合
物とプラスチックとが混在したものになり、これが、被
膜がくすんだ色になる原因と考えられる。蒸着膜は、基
材の表面を金属の層が一面に被覆したものであるから、
金属イオンの衝撃を受け止め、その表面に金属または金
属化合物の整然とした被覆が行なわれることを可能にす
るわけである。
【００２０】このような金属蒸着膜を構成する金属とし
ては、Ｔｉ，Ｃｒ，Ｔａ，Ａｌ，ＶおよびＺｒからえら
んだ１種または２種以上のものが適切である。一般に
は、上記の作用を前提にすれば、イオンプレーティング
を構成する金属成分と同じものが好ましい。同じであれ
ば、金属蒸着膜とイオンプレーティング層との密着性を
高く得ることができる。金属蒸着膜の層の厚さは、少な
くとも０．０１μｍなければならないが、１μｍを超え
る必要はない。
ては、Ｔｉ，Ｃｒ，Ｔａ，Ａｌ，ＶおよびＺｒからえら
んだ１種または２種以上のものが適切である。一般に
は、上記の作用を前提にすれば、イオンプレーティング
を構成する金属成分と同じものが好ましい。同じであれ
ば、金属蒸着膜とイオンプレーティング層との密着性を
高く得ることができる。金属蒸着膜の層の厚さは、少な
くとも０．０１μｍなければならないが、１μｍを超え
る必要はない。
【００２１】本発明に従ってイオンプレーティング層を
構成する金属または金属化合物は、ひとつは表面処理製
品に望む表面物性によって、いまひとつは色彩によっ
て、選択すべきである。、好適な例は、ＴｉＮ（金
色），ＴｉＣ（黒色）、および（ＴｉＡｌ）−Ｎ（ブラ
ウン）であって、それぞれ、カッコ内に記載したような
色彩を呈する。層の厚さは、表面物性の向上を確実にす
るためには、少なくとも０．２μｍ欲しいが、一般に５
μｍまでの厚さがあれば十分である。
構成する金属または金属化合物は、ひとつは表面処理製
品に望む表面物性によって、いまひとつは色彩によっ
て、選択すべきである。、好適な例は、ＴｉＮ（金
色），ＴｉＣ（黒色）、および（ＴｉＡｌ）−Ｎ（ブラ
ウン）であって、それぞれ、カッコ内に記載したような
色彩を呈する。層の厚さは、表面物性の向上を確実にす
るためには、少なくとも０．２μｍ欲しいが、一般に５
μｍまでの厚さがあれば十分である。
【００２２】本発明の表面処理した金属成形品の製造方
法を構成する諸工程は、いずれも既知の技術に従って実
施できる。すなわち、金属の成形品を用意する工程は、
鋳造、圧延、プレス、切削、板金加工などによる。ハー
ドコート層の形成やプライマーの利用は、プラスチック
加工の分野において知られているところに従えばよく、
またそれに続く金属蒸着膜の形成とイオンプレーティン
グによる被膜の形成は、真空表面処理の分野において、
それぞれ既存の設備を使用して実施することができる。
法を構成する諸工程は、いずれも既知の技術に従って実
施できる。すなわち、金属の成形品を用意する工程は、
鋳造、圧延、プレス、切削、板金加工などによる。ハー
ドコート層の形成やプライマーの利用は、プラスチック
加工の分野において知られているところに従えばよく、
またそれに続く金属蒸着膜の形成とイオンプレーティン
グによる被膜の形成は、真空表面処理の分野において、
それぞれ既存の設備を使用して実施することができる。
【００２３】イオンプレーティングに用いる装置として
は、１００℃以下の低温操業が可能な、スパッタリング
を利用するイオンプレーティング装置が、使用する材料
の耐熱温度による制約を受けず、有利である。しかし、
それ以外のイオンプレーティング装置（Ｔｉ，Ｃｒなど
の蒸発物質にエネルギーを与えて蒸発させる方式、たと
えばアーク放電、イオンガン、ホローカソード方式のも
の）であっても、蒸発物質とイオンプレーティングを受
ける物体との距離を離したり、内部に冷却装置を組み込
んで、低温で処理できるようにした装置であれば、本発
明の実施に使用することができる。
は、１００℃以下の低温操業が可能な、スパッタリング
を利用するイオンプレーティング装置が、使用する材料
の耐熱温度による制約を受けず、有利である。しかし、
それ以外のイオンプレーティング装置（Ｔｉ，Ｃｒなど
の蒸発物質にエネルギーを与えて蒸発させる方式、たと
えばアーク放電、イオンガン、ホローカソード方式のも
の）であっても、蒸発物質とイオンプレーティングを受
ける物体との距離を離したり、内部に冷却装置を組み込
んで、低温で処理できるようにした装置であれば、本発
明の実施に使用することができる。
【００２４】
【実施例１】Ｍｇ−９％Ａｌ−２％Ｚｎ合金のダイキャ
ストを行って、カセットレコーダーの外箱を製造した。
これを、プライマー剤として用意したポリウレタン樹脂
塗料液（日本エーアールシー（株）製）に浸漬し、引き
上げて自然流下により液切りし、室温で風乾後、５０℃
に６０分間加熱して硬化させた。膜厚は０．５μｍであ
った。続いて、ハードコート剤として用意した紫外線硬
化型シリコン樹脂塗料（日本エーアールシー（株）製）
を、膜厚２０μｍとなるように塗布し、紫外線照射によ
り乾燥硬化させた。
ストを行って、カセットレコーダーの外箱を製造した。
これを、プライマー剤として用意したポリウレタン樹脂
塗料液（日本エーアールシー（株）製）に浸漬し、引き
上げて自然流下により液切りし、室温で風乾後、５０℃
に６０分間加熱して硬化させた。膜厚は０．５μｍであ
った。続いて、ハードコート剤として用意した紫外線硬
化型シリコン樹脂塗料（日本エーアールシー（株）製）
を、膜厚２０μｍとなるように塗布し、紫外線照射によ
り乾燥硬化させた。
【００２５】このようにして得たハードコート成形品の
表面に、スパッタリングによりＴｉの厚さ０．１μｍの
蒸着膜を形成した。続いて、下記の条件でイオンプレー
ティングを行ない、厚さ０．２μｍのＴｉＮの被膜を設
けた。 反応ガス：窒素 ターゲット（蒸発源）：Ｔｉ 炉内温度：８０℃ 処理時間：３０分間 処理時真空度：８×１０-1Ｐａ
表面に、スパッタリングによりＴｉの厚さ０．１μｍの
蒸着膜を形成した。続いて、下記の条件でイオンプレー
ティングを行ない、厚さ０．２μｍのＴｉＮの被膜を設
けた。 反応ガス：窒素 ターゲット（蒸発源）：Ｔｉ 炉内温度：８０℃ 処理時間：３０分間 処理時真空度：８×１０-1Ｐａ
【００２６】光沢のある金色をした、豪華な外観のカセ
ットレコーダー外箱が得られた。一般に製品表面硬度の
指標として採用されている鉛筆硬度を調べたところ、ク
ロムメッキ品がHであるのに対し、本発明の実施品では
２Hの値が得られた。これは、硬質クロムメッキの表面
硬度がＨｖ６００〜８００であるのに対し、ＴｉＮ膜の
それは少なくともＨｖ１０００を超えるという事実と符
合するものである。別に落球試験を行ない、小さな衝撃
に対する堅牢さをチェックしたところ、この外箱は十分
に実用に耐えるものであった。
ットレコーダー外箱が得られた。一般に製品表面硬度の
指標として採用されている鉛筆硬度を調べたところ、ク
ロムメッキ品がHであるのに対し、本発明の実施品では
２Hの値が得られた。これは、硬質クロムメッキの表面
硬度がＨｖ６００〜８００であるのに対し、ＴｉＮ膜の
それは少なくともＨｖ１０００を超えるという事実と符
合するものである。別に落球試験を行ない、小さな衝撃
に対する堅牢さをチェックしたところ、この外箱は十分
に実用に耐えるものであった。
【００２７】耐食性を調べるため、製品の表面処理が及
んでいない内面を樹脂塗装により被覆して、ＪＩＳ−Ｚ
２３７１に従った塩水噴霧試験９６時間を行なって、表
面処理した部分の腐食状況をしらべた。９６時間すなわ
ち４日間経過の後も、表面の変化は認められなかった。
んでいない内面を樹脂塗装により被覆して、ＪＩＳ−Ｚ
２３７１に従った塩水噴霧試験９６時間を行なって、表
面処理した部分の腐食状況をしらべた。９６時間すなわ
ち４日間経過の後も、表面の変化は認められなかった。
【００２８】
【実施例２】前記した組成をもつＡｌ５０５６合金およ
びＡｌ２０１１合金を材料とし、自動車のホイールを鍛
造した。その表面に、プライマーなしに、下記の処理条
件でシリコーン系熱硬化性樹脂（日本エーアールシー
（株）製）のハードコート層を形成する処理を行なっ
た。 塗装方法：スプレー塗装 塗膜厚さ：２０μｍ 加熱温度：１２０℃ 加熱時間：６０分間
びＡｌ２０１１合金を材料とし、自動車のホイールを鍛
造した。その表面に、プライマーなしに、下記の処理条
件でシリコーン系熱硬化性樹脂（日本エーアールシー
（株）製）のハードコート層を形成する処理を行なっ
た。 塗装方法：スプレー塗装 塗膜厚さ：２０μｍ 加熱温度：１２０℃ 加熱時間：６０分間
【００２９】得られたハードコート成形品の表面に、実
施例１と同様にして、スパッタリングによりＴｉの厚さ
０．１μｍの蒸着膜を形成し、続いて、前記した条件で
イオンプレーティングを行ない、厚さ０．２μｍのＴｉ
Ｎの被膜を設けた。スパッタリングおよびイオンプレー
ティングの間、樹脂からのガスの放出や樹脂層の亀裂な
どの問題なく表面処理を進めることができ、美しい金色
の表面をもつホイールが得られた。
施例１と同様にして、スパッタリングによりＴｉの厚さ
０．１μｍの蒸着膜を形成し、続いて、前記した条件で
イオンプレーティングを行ない、厚さ０．２μｍのＴｉ
Ｎの被膜を設けた。スパッタリングおよびイオンプレー
ティングの間、樹脂からのガスの放出や樹脂層の亀裂な
どの問題なく表面処理を進めることができ、美しい金色
の表面をもつホイールが得られた。
【００３０】
【発明の効果】本発明によれば、マグネシウム成形品の
表面にハードコートおよび金属蒸着の各層を重ねた上に
イオンプレーティングを行ない、金属または金属化合物
の被膜を形成することにより、十分な耐食性と表面硬さ
を有し、しかも、被膜の金属または金属化合物が本来も
っている美麗な色彩の、光沢表面またはツヤ消し表面を
もった表面処理マグネシウム成形品が得られる。この処
理を行なうマグネシウム成形品素材は、その表面の平滑
度をとりたてて高める努力をしないでも、たとえば常用
のダイキャスト金型を用いて鋳造したものであっても、
良好な表面状態の製品とすることができる。
表面にハードコートおよび金属蒸着の各層を重ねた上に
イオンプレーティングを行ない、金属または金属化合物
の被膜を形成することにより、十分な耐食性と表面硬さ
を有し、しかも、被膜の金属または金属化合物が本来も
っている美麗な色彩の、光沢表面またはツヤ消し表面を
もった表面処理マグネシウム成形品が得られる。この処
理を行なうマグネシウム成形品素材は、その表面の平滑
度をとりたてて高める努力をしないでも、たとえば常用
のダイキャスト金型を用いて鋳造したものであっても、
良好な表面状態の製品とすることができる。
【図１】 本発明の表面処理したマグネシウム成形品に
ついて、表面の層構成を示す模式的な断面図。
ついて、表面の層構成を示す模式的な断面図。
１ 金属（マグネシウム）の成形品 ２ プライマー層 ３ ハードコート層 ４ 金属蒸着膜層 ５ イオンプレーティングによる金属または金属化合
物の層
物の層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成１２年４月２６日（２０００．４．２
６）
６）
【手続補正１】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００１３
【補正方法】変更
【補正内容】
【００１３】
【発明の実施形態】本発明の表面処理を適用する成形品
をつくる金属は、Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕ単体のみ
ならず、これらを主成分とする合金である。Ｍｇの合金
でいえば、ＭｇにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃ
ｅ，ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２
種以上の成分を添加してなる合金であり、具体例を挙げ
れば、次のような鋳物用マグネシウム合金がある。 Ｍｇ−（５．３〜６．７）％Ａｌ−（２．５〜３．５）
％Ｚｎ Ｍｇ−（８．１〜９．３）％Ａｌ−（０．４〜１．０）
％Ｚｎ Ｍｇ−（８．３〜９．７）％Ａｌ−（１．６〜２．４）
％Ｚｎ Ｍｇ−（１．２〜２．４）％Ｍｎ
をつくる金属は、Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕ単体のみ
ならず、これらを主成分とする合金である。Ｍｇの合金
でいえば、ＭｇにＡｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃ
ｅ，ＢｅおよびＲＥＭからなるグループの１種または２
種以上の成分を添加してなる合金であり、具体例を挙げ
れば、次のような鋳物用マグネシウム合金がある。 Ｍｇ−（５．３〜６．７）％Ａｌ−（２．５〜３．５）
％Ｚｎ Ｍｇ−（８．１〜９．３）％Ａｌ−（０．４〜１．０）
％Ｚｎ Ｍｇ−（８．３〜９．７）％Ａｌ−（１．６〜２．４）
％Ｚｎ Ｍｇ−（１．２〜２．４）％Ｍｎ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｂ０５Ｄ 7/24 ３０２ Ｂ０５Ｄ 7/24 ３０２Ｙ // Ｃ２３Ｃ 14/06 Ｃ２３Ｃ 14/06 Ｑ Ｆターム(参考） 4D075 AE03 BB46Z BB81Z BB85X CB04 DA06 DB05 DB06 DB07 EA21 EA41 EB38 EB42 EC10 4K029 AA02 AA21 AA24 BA02 BA03 BA07 BA16 BA17 BA54 BA55 BA58 BA60 BA62 BB02 BD06 CA03 CA05 DD05 DD06 4K044 AA06 AB05 AB10 BA21 BB04 BB05 BC02 BC06 BC09 CA53
Claims (7)
- 【請求項１】 Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕから選んだ
金属またはその金属を主体にした合金を材料とする成形
品の上に、ハードコート層、金属蒸着膜層およびイオン
プレーティングによる金属または金属化合物の層を順に
設けてなる、表面処理を施した金属成形品。 - 【請求項２】 材料の合金が、Ｍｇを主体とし、これに
Ａｌ，Ｚｎ，Ｚｒ，Ｃｕ，Ｔｈ，Ｃｅ，ＢｅおよびＲＥ
Ｍからなるグループの１種または２種以上の成分を添加
してなるものである請求項１の表面処理を施した金属成
形品。 - 【請求項３】 ハードコート層を構成する材料が、加
熱、風乾または紫外線により硬化するウレタン樹脂、シ
リコーン樹脂およびアクリル樹脂から選んだものであ
り、層の厚さが１〜１００μｍである請求項１の表面処
理を施した金属成形品。 - 【請求項４】 金属蒸着膜層を構成する金属が、Ｔｉ，
Ｃｒ，Ｔａ，Ａｌ，ＶおよびＺｒからえらんだ１種また
は２種以上のものであり、層の厚さが０．０１〜１μｍ
である請求項１の表面処理を施した金属成形品。 - 【請求項５】 イオンプレーティング層を構成する金属
または金属化合物が、Ｔｉ，Ｃｒ，Ｔａ，Ａｌ，Ｖおよ
びＺｒからえらんだ１種または２種以上の金属またはそ
の窒化物、炭化物もしくは窒化炭化物であり、層の厚さ
が０．０５〜５μｍである請求項１の表面処理を施した
金属成形品。 - 【請求項６】 金属成形品の上に、そのプラスチックと
ハードコート層との密着を助ける材料のプライマー層を
設けた請求項１ないし５の表面処理を施した金属成形
品。 - 【請求項７】 Ｍｇ、Ａｌ、ＺｎおよびＣｕから選んだ
金属またはその金属を主体にした合金を材料とする成形
品の表面にハードコート層を形成し、その上に金属の蒸
着を行なって蒸着膜を形成したのち、イオンプレーティ
ングにより金属または金属化合物の層を設けることから
なる、表面処理を施した金属成形品の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2000124674A JP2001303269A (ja) | 2000-04-25 | 2000-04-25 | 金属成形品の表面処理 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2000124674A JP2001303269A (ja) | 2000-04-25 | 2000-04-25 | 金属成形品の表面処理 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2001303269A true JP2001303269A (ja) | 2001-10-31 |
Family
ID=18634765
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2000124674A Pending JP2001303269A (ja) | 2000-04-25 | 2000-04-25 | 金属成形品の表面処理 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2001303269A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2005296841A (ja) * | 2004-04-13 | 2005-10-27 | Fukuda Corporation:Kk | 樹脂基材又は金属基材の加飾方法 |
| JP2007268323A (ja) * | 2006-03-30 | 2007-10-18 | Fukuda Corporation:Kk | マグネシウム合金成型品の加飾方法 |
| JP2009197152A (ja) * | 2008-02-22 | 2009-09-03 | Jsr Corp | プライマー層形成用放射線硬化性組成物、積層体及び金属表面保護膜の形成方法 |
-
2000
- 2000-04-25 JP JP2000124674A patent/JP2001303269A/ja active Pending
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2005296841A (ja) * | 2004-04-13 | 2005-10-27 | Fukuda Corporation:Kk | 樹脂基材又は金属基材の加飾方法 |
| JP4538720B2 (ja) * | 2004-04-13 | 2010-09-08 | 株式会社フクダコーポレーション | 樹脂基材又は金属基材の加飾方法 |
| JP2007268323A (ja) * | 2006-03-30 | 2007-10-18 | Fukuda Corporation:Kk | マグネシウム合金成型品の加飾方法 |
| JP2009197152A (ja) * | 2008-02-22 | 2009-09-03 | Jsr Corp | プライマー層形成用放射線硬化性組成物、積層体及び金属表面保護膜の形成方法 |
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