JP2001302297A - コンクリート補強用繊維及び繊維補強コンクリート組成物 - Google Patents
コンクリート補強用繊維及び繊維補強コンクリート組成物Info
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Abstract
リエステル樹脂成形物の破砕物を原料として使用し、コ
ンクリート組成物との親和性が良好で、しかも機械的特
性に優れ、かつ、耐ひび割れ性が良好な硬化コンクリー
トを与えることができるコンクリート補強用繊維、並び
にこのような補強用繊維を含有するコンクリート組成物
を提供すること。 【解決手段】 熱可塑性ポリエステル樹脂成形物の破砕
物から成形された延伸繊維の切断短繊維からなるコンク
リート補強用繊維、並びに少なくともセメント、水、骨
材、及び補強用繊維を含有する繊維補強コンクリート組
成物において、該補強用繊維が、熱可塑性ポリエステル
樹脂成形物の破砕物から成形された延伸繊維の切断短繊
維であることを特徴とする繊維補強コンクリート組成
物。
Description
用繊維及び繊維補強コンクリート組成物に関し、さらに
詳しくは、使用済みポリエチレンテレフタレート(PE
T)ボトルなどの熱可塑性ポリエステル成形物を再生利
用して形成した短繊維からなるコンクリート補強用繊
維、及び該補強用繊維を含有するコンクリート組成物に
関する。本発明において、コンクリートには、セメント
モルタルも包含される。
を形成する基本的な構造材料である。コンクリートは、
一般に、セメント、水、及び骨材(細骨材、粗骨材)か
らなる基本材料をミキサーで練り混ぜてフレッシュコン
クリートを製造し、これを打ち込み場所まで運搬して、
型枠中に打ち込み、養生してセメントの水和反応による
硬化を起こさせて、硬化コンクリートを得るという過程
で完成する。硬化コンクリートには、強度、弾性的性
質、クリープ等の力学的性質、変形性能、容積変化(乾
燥収縮)が小さく、ひび割れが生じにくいこと、耐久
性、水密性、耐熱性、耐火性など様々な性能が要求され
る。
満足できない場合がある。そこで、従来、要求性能に応
じて、基本材料であるセメント、水、及び骨材に加え
て、種々の材料がコンクリート混和剤または混和材とし
て用いられている。このようなコンクリート混和材のひ
とつとして、鋼繊維、耐アルカリガラス繊維、有機合成
繊維などの補強用繊維が知られている。コンクリート補
強用繊維は、硬化コンクリートのひび割れ防止、圧縮強
度や曲げ強度などの強度特性の向上等を目的として用い
られている。
なかで、鋼繊維は、発錆による強度低下や硬化コンクリ
ートとの接着力の低下などによる補強性の低下、錆びに
よる外観損傷などの問題がある。また、鋼繊維は、高比
重であるため、充分な補強効果を得るために、配合割合
を大きくする必要がある。耐アルカリガラス繊維は、ア
ルカリ耐久性がいまだ充分ではなく、耐久性のある構造
部材として利用することが困難である。しかも、耐アル
カリガラス繊維は、混練中の折損により繊維長が短くな
りすぎて、補強効果が低下する。
ール(PVA)短繊維をセメントモルタルまたはコンク
リート補強用繊維として使用することが提案されている
(特開平1−23428号公報、特開平1−40786
号公報、特開昭63−303837号公報)。PVA
は、側鎖に水酸基を有する親水性の高い高分子である。
したがって、PVA繊維は、親水性であり、セメント、
水、及び骨材を含むコンクリート組成物との親和性が良
好で、均一に混ざりやすく、硬化セメントとの接着性も
良好である。しかし、コンクリート補強用に適したPV
A繊維は、高強度が要求されることもあって、製造コス
トが比較的高い。
ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維などの有機合成
繊維は、一般に疎水性であるため、水を含むコンクリー
ト組成物との親和性に劣り、しかも硬化コンクリート
(セメントマトリックス)との接着性が悪く、破断時に
繊維がセメントマトリックスから引き抜けるために補強
効果は少ない。特にポリエステル系繊維は、耐アルカリ
性が弱く、コンクリート及びモルタルの耐久部材に使用
することができない(特公平1−23428号公報)。
リエステル樹脂成形物は、使用後の廃棄物処理が大きな
問題となっており、その回収・リサイクルが世界各国で
解決すべき重要課題となっている。わが国においても、
容器包装リサイクル法の施行により、PETボトルの回
収・リサイクルの促進が図られている。この回収・リサ
イクルには、大きく分けて2つの流れがある。
砕してフレークやチップなどの破砕物とし、これを洗浄
等により精製するメカニカルリサイクルである。メカニ
カルリサイクルにより、再生ポリマー量が増大してい
る。しかし、PETボトル廃棄物からの再生ポリマー
(破砕物)を樹脂原料として、ブロー成形、押出成形、
射出成形等の溶融成形法により容器等の成形品に成形し
ても、バージンポリマーを用いた場合に比べて、機械的
強度や色調等の品質の低下が避けられない。
モノマー成分にまで解重合するケミカルリサイクルであ
る。前記再生ポリマーも、このケミカルリサイクルの原
料として用いられている。しかし、ケミカルリサイクル
によれば、高純度のモノマーを得ることができるもの
の、回収システムが複雑なため、コスト的には苦しい状
況に置かれている。
ポリマーを有効利用することができるならば、コストの
問題を低減することができ、廃棄物処理問題の改善に寄
与することができる。しかし、再生ポリマーの有効利用
には、前記のような問題があり、適用分野に制限があっ
た。
使用済みPETボトル等の熱可塑性プラスチック廃材を
小片化し、これを処理して、セメント製品に混入する方
法が提案されている(特開平10−245251号公
報)。具体的には、PETボトル等のプラスチック廃材
を小片化し、この小片に加熱したフライアッシュ等のコ
ンクリート混和材を接触させて、小片の周面にコンクリ
ート混和材を固定した骨材を製造し、そして、この骨材
をセメントミルク形成材料に混練するという方法であ
る。この方法によれば、PETボトル等のプラスチック
廃材の小片と硬化コンクリートをコンクリート混和材を
介して馴染ませることができる。また、この方法によれ
ば、骨材として砂や粉石を用いた場合に比べて、軽量化
したセメント製品を得ることができる。しかし、この方
法は、セメント製品をプラスチック廃材の小片により補
強するものではなく、単なる増量法にすぎない。
な使用済みPETボトル等の熱可塑性ポリエステル樹脂
成形物の破砕物を原料として使用し、コンクリート組成
物との親和性が良好で、しかも機械的特性に優れ、か
つ、耐ひび割れ性が良好な硬化コンクリートを与えるこ
とができるコンクリート補強用繊維を提供することにあ
る。本発明の他の目的は、このような補強用繊維を含有
するコンクリート組成物を提供することにある。
鋭意研究した結果、使用済みPETボトル等の熱可塑性
ポリエステル樹脂成形物の破砕物を使用して延伸繊維を
形成し、これを切断して短繊維としたものが、意外にも
親水性が良好であり、セメント、水、及び骨材からなる
基本材料と迅速かつ均一に混練できることを見いだし
た。この短繊維を配合したコンクリート組成物を用いて
硬化コンクリートを作成したところ、圧縮強度、引張強
度、曲げ強度、曲げタフネスなどの機械的特性が改善さ
れ、耐ひび割れ性にも優れた硬化コンクリートの得られ
ることをが判明した。さらに、この短繊維を補強用繊維
として使用することにより、コンクリート組成物の使用
水分量を通常の設計基準よりも大幅に低減することがで
きる。
テル系繊維は、疎水性であって、かつ、硬化コンクリー
ト(セメントマトリックス)との接着性が悪く、補強効
果や耐久性を期待することができないことが技術常識で
あった。この点で、熱可塑性ポリエステル樹脂成形物の
破砕物を用いて得られる延伸繊維は、コンクリート補強
用繊維として、予期できない顕著な作用効果を示すもの
である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに
至ったものである。
性ポリエステル樹脂成形物の破砕物から成形された延伸
繊維の切断短繊維からなるコンクリート補強用繊維が提
供される。また、本発明によれば、少なくともセメン
ト、水、骨材、及び補強用繊維を含有する繊維補強コン
クリート組成物において、該補強用繊維が、熱可塑性ポ
リエステル樹脂成形物の破砕物から成形された延伸繊維
の切断短繊維であることを特徴とする繊維補強コンクリ
ート組成物が提供される。
成形物の破砕物 本発明が対象とする熱可塑性ポリエステル樹脂として
は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリ
ブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレン
ナフタレート(PEN)樹脂、ポリシクロヘキシレンジ
メチレンテレフタレート(PCT)樹脂などが挙げられ
る。これらの中でも、成形物の分別収集が広く行われて
おり、洗浄・乾燥した細片状の回収樹脂の入手が容易な
PET樹脂が好ましい。
は、特に限定されないが、使用済みのPETボトル、P
ETトレー、産業廃棄物としての各種PET樹脂廃棄物
等が挙げられる。成形物として、成形時に発生する成形
屑も利用できる。本発明において、熱可塑性ポリエステ
ル樹脂成形物とは、該樹脂を少なくとも1回は溶融成形
加工したものであることを意味する。破砕物としては、
フレーク状またはチップ状などの細片状に破砕したもの
が挙げられる。破砕後、常法に従って異物を除去し、洗
浄・乾燥した破砕物を用いる。ただし、破砕物は、高度
に精製されたものであることを要しない。後述するよう
に、破砕物には、ある程度の量の分解生成物が含有され
ていることが好ましい。
強い延伸がかけられると分子が一方向に揃って、機械的
に優れた延伸繊維が形成される。補強効果に優れたコン
クリート補強用繊維を得るには、熱可塑性ポリエステル
樹脂の延伸繊維から補強用の短繊維を得ることが必要で
ある。
を原料として延伸繊維を製造するには、先ず破砕物を熱
可塑性ポリエステル樹脂の融点以上の温度(PET樹脂
の場合、通常、260〜275℃)で溶融紡糸して、未
延伸糸を製造する。未延伸糸を冷却した後、熱可塑性ポ
リエステル樹脂の融点未満の温度で延伸する。延伸温度
の下限は、熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度
前後の温度である。延伸温度は、PET樹脂の場合、通
常、150〜250℃である。未延伸糸を半溶融状態で
延伸することにより、分子が延伸方向に配列し、機械的
特性に優れた延伸繊維を得ることができる。延伸は、1
段延伸でも、2段以上の多段延伸でもよい。延伸倍率
は、通常1.5〜10倍、好ましくは2〜8倍程度であ
る。このような溶融紡糸及び延伸は、熱可塑性ポリエス
テル樹脂の延伸繊維を製造する際に採用されている常法
に従って行うことができる。
はなく、ヤング率(引張弾性率)によって評価すること
ができる。本発明で使用する延伸繊維のヤング率は、好
ましくは0.2〜11GPa、より好ましくは0.5〜
10GPa、特に好ましくは0.7〜9GPaの範囲で
ある。延伸繊維のヤング率が大きいことにより、コンク
リートに対する補強効果が大きくなる。
円形、楕円形、多角形(三角形、正方形、長方形等)も
しくは異形(前記以外の任意の形状)のいずれでもよ
い。延伸工程で、歯車等を用いて、繊維の長さ方向に突
起、節もしくは凹凸(繊維周面に沿った溝と山、または
刻み目)などを設けたり、あるいは、長さ方向に捩じり
を加えることができる。このような変形を加えることに
より、アンカー効果によって、短繊維がセメントの硬化
時にセメントマトリックスと強固に結合することができ
る。
mm、より好ましくは0.05〜2mm、特に好ましく
は0.1〜1.5mmである。多くの場合、0.5〜
1.2mm程度の径で、良好な結果を得ることができ
る。この径が細すぎると、それから得られる短繊維と、
セメント、水、及び骨材を含有するコンクリート組成物
との馴染みが悪くなり、太すぎると、硬化後のコンクリ
ートモルタルやコンクリートの機械的物性が低下しやす
くなる。延伸繊維の径は、断面が円形の場合には、その
直径であるが、それ以外の場合には、断面の最長部分の
長さを意味する。
るが、所望によりマルチフィラメントの束であってもよ
い。延伸繊維は、複数のフィラメントを束ねたものであ
ってもよく、その場合には、延伸繊維の径は、束ねたマ
ルチフィラメントの径を意味する。また、延伸繊維は、
径が大きい場合には、ロッド状となっていることがあ
る。
望の長さに切断することにより得られた短繊維である。
短繊維の形状は、径が細い場合には、短いフィラメント
状であるが、径が太い場合には、ロッド状を呈してい
る。この短繊維をチップまたは短繊維状チップと呼ぶこ
とがある。
は、前述の延伸繊維の径と実質的に同じである。ただ
し、両端にこぶを形成するなど、短繊維に後加工を施し
た場合には、端部の径が元の延伸繊維の径よりも太くな
っていることがある。短繊維の長さは、通常5〜100
mm、好ましくは10〜60mm、より好ましくは15
〜50mm、特に好ましくは20〜30mmである。短
繊維の長さが短すぎると、充分な補強効果を得ることが
できない。短繊維の長さが長すぎると、コンクリート基
本材料中への均一な混合が困難になり、また、コンクリ
ート組成物を吹き付け加工する場合に、ノズル等が詰ま
りやすくなる。
切断することにより得ることができる。短繊維の形状
は、延伸繊維を単に切断したものに対応するが、所望に
より、両端部にこぶを設けてもよい。こぶを設けるに
は、例えば、両端部を溶融して径を太くする方法等が挙
げられる。
くは異形の断面を持つ短繊維、(2)長さ方向に突起、節
もしくは凹凸を設けた短繊維、(3) 長さ方向に捩じりを
加えた短繊維、(4) 両端にこぶを設けた短繊維、(5) 複
数のフィラメントを束ねたストランド繊維、または(6)
これらの2種以上を組み合わせた形状の短繊維などであ
る。
め、温度変化により伸縮することがある。寒暖の差が激
しい場所では、短繊維の伸縮が繰り返され、補強用繊維
として含有させた短繊維と硬化コンクリートとの接着性
が損なわれる恐れがある。また、短繊維は、コンクリー
ト組成物の混練や硬化過程などで熱履歴を受けて伸縮
し、硬化コンクリートとの接着性が低下する恐れもあ
る。そこで、延伸繊維を延伸工程後に熱処理するか、あ
るいは、切断後の短繊維を熱処理して、形態を安定化さ
せておくことが好ましい。熱処理効果の観点から、切断
後の短繊維を熱処理して、部分的な延伸緩和を行うこと
により、長さ方向に収縮させておくことが好ましい。
90℃で熱処理することにより、その長さ方向に収縮を
生じさせる。熱処理による繊維の長さ方向の収縮率は、
通常1〜15%、好ましくは3〜12%程度である。延
伸工程により、延伸繊維には長さ方向に沿って分子配向
が生じている。熱処理により延伸緩和が起こって、長さ
方向に収縮が生じるが、延伸により配向された分子が長
さ方向に揃ったままで収縮するので、分子配向の状態が
それほど損なわれることがない。したがって、熱処理を
行っても、短繊維の機械的強度を維持することができ
る。
ましい。熱処理時間は、熱処理温度にもよるが、通常、
1秒間〜10分間程度である。一旦、熱処理により収縮
させた短繊維は、寸法などの形態が安定しているため、
温度変化に起因する更なる伸縮が殆ど起こらなくなる。
その結果、この短繊維で補強した硬化コンクリートの機
械的物性が更に改善される。
から成形された延伸繊維の切断短繊維は、その表面(表
面近傍を含む)に熱可塑性ポリエステル樹脂の分解生成
物が存在している。分解生成物には、熱可塑性ポリエス
テル樹脂が部分的に加水分解されて生成したエチレング
リコールなどのジオール成分やテレフタル酸などの酸成
分が多く含まれている。このような分解生成物は、低分
子量で低融点であるため、溶融成形時に成形物の表面に
分布しやすい。熱可塑性ポリエステル樹脂と分解生成物
との間の溶融温度の違いや結晶化速度の違いなどによ
り、溶融成形加工時にジオール成分などの分解生成物
は、成形物の表面に存在しやすく、特に該樹脂を溶融紡
糸し、延伸加工を行った場合には、延伸繊維の表面に多
く存在することになる。
ステル樹脂成形物の破砕物は、1回以上の溶融成形加工
を受けており、さらには、破砕などの物理的な処理を受
けている。そのため、破砕物には、バージンポリマーに
比べて、比較的多量の分解生成物が含有されている。こ
の破砕物を原料とする延伸繊維の切断短繊維の表面に
は、比較的多量の分解生成物が存在している。
分)は、親水性である。熱可塑性ポリエステル樹脂から
成形してなる延伸繊維は、本来であれば疎水性である
が、熱可塑性ポリエステル樹脂成形物の破砕物から成形
された延伸繊維の切断短繊維は、その表面に親水性の分
解生成物が多く存在することにより、親水性を示すよう
になる。この短繊維は、セメント、水、及び骨材を含有
するコンクリート組成物との親和性が良好であり、繊維
状であるにもかかわらず、混練時に迅速かつ均一に分散
する。
在する加水分解生成物などの分解生成物の量に関連して
いる。短繊維表面の分解生成物の存在量は、短繊維の表
面劣化度(後記)を測定することにより定量的に評価す
ることができる。本発明の短繊維の表面劣化度は、好ま
しくは1〜10重量%、より好ましくは1.2〜5重量
%、特に好ましくは1.3〜3重量%である。短繊維の
表面劣化度が小さすぎると、親水性が低下して、コンク
リート組成物と均一に混合することが困難になり、ま
た、補強性能も低下する。短繊維の表面劣化度が大きす
ぎると、短繊維自体の強度が低下し、補強効果が不充分
となる恐れがある。
は、短繊維に親水性を付与して、コンクリート組成物へ
の分散性を向上させるだけではなく、硬化コンクリート
の機械的物性を向上させる作用をも担っている。その作
用機構は、現段階では必ずしも明瞭でないものの、ジオ
ールなど分解生成物がセメントの結晶の肥大化を抑制し
ているためであると推定される。養生期間の長いコンク
リート組成物では、硬化中にセメントの結晶が肥大化し
て、機械的強度が低下しやすい。これに対して、親水性
の分解生成物が存在すると、セメントの結晶の肥大化が
抑制されると推定される。
(セメントマトリックス)との間の接着性が良好である
ため、該短繊維による補強効果が大きい。さらに、短繊
維とコンクリート組成物との混合状態が均一であるた
め、硬化コンクリートの表面強度を弱くするレイタンス
層の発生が抑制され、表面ひび割れが効果的に防止され
る。これらの作用が複合的に働いて、圧縮強度、引張強
度、曲げ強度、曲げタフネスなどの機械的特性が改善さ
れ、耐ひび割れ性にも優れた硬化コンクリートを得るこ
とができる。さらに加えて、本発明の短繊維は、耐アル
カリ性が良好であり、耐久性に劣るとの従来より指摘さ
れていた問題点が解決されている。
性ポリエステル樹脂とほぼ同じであり、PET樹脂短繊
維の場合には、通常1.3〜1.4g/cm3 (g/c
c)程度である。これに対して、セメント、水、及び骨
材を含有するセメント組成物(フレッシュコンクリー
ト)の比重は、骨材の種類と配合割合などにもよるが、
1.2〜1.3g/cc程度である。短繊維の比重がセ
メント基本材料からなるコンクリート組成物の比重と近
いことも、該短繊維が混練時の均一分散性に優れる理由
である。
メント、水、骨材、及び補強用繊維を含有するコンクリ
ート組成物(フレッシュコンクリート)であって、補強
用繊維として、前記短繊維を用いたものである。
えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセ
メント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルト
ランドセメント、白色ポルトランドセメントなどの水硬
性セメントが挙げられる。その他のセメントとしては、
高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメン
ト、アルミナセメント、膨張セメント、超早強セメント
なども例示される。
砂利、粉石などの粗骨材;などが挙げられる。その他の
成分としては、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化
剤、分離低減剤、起泡剤、発泡剤、凝結・硬化調節剤、
急結剤、防錆剤、防水剤、収縮低減剤、防凍剤・耐寒
剤、水和熱低減剤、増粘剤、撥水剤、保水剤などのコン
クリート混和剤;膨張材、超微粉末(シリカヒューム、
高炉スラグ、フライアッシュなど)、結合材、ポリマー
混和材、その他の補強用繊維などのコンクリート混和
材;などが挙げられる。
の添加剤の配合割合は、コンクリート部材やセメントモ
ルタル、セメント製品などの用途や適用分野に応じて、
適宜選択することができる。本発明の補強用繊維(前記
の短繊維)の配合割合は、コンクリート組成物を基準と
して、通常、1〜100kg/m3 、好ましくは2〜4
0kg/m3 、より好ましくは4〜25kg/m3 であ
る。補強用繊維の配合割合が過小であると補強効果が小
さく、過大であると補強効果が飽和し、しかも混練が困
難になる。
高い強度が要求されるコンクリート製品に好適に適用す
ることができる。本発明の繊維補強コンクリート組成物
は、吹付け加工、舗装、法面、土間、壁等に使用してい
る工法を適用することができる。適用後、養生期間を経
て、機械的強度に優れた硬化コンクリートとなる。
から成形された延伸繊維の切断短繊維からなるコンクリ
ート補強用繊維は、セメント、水、骨材などを含有する
コンクリート組成物中に含有させると、水分を排除する
性質があり、通常の施工基準より低い水濃度のコンクリ
ート組成物を作ることができる。また、この短繊維をコ
ンクリート補強用繊維として用いると、それ自体による
補強効果に加えて、硬化後のセメント結晶粒子が通常よ
りも細かくなり、モルタルまたはコンクリートの強度向
上に寄与することができる。
は、表面に親水性の分解生成物が多く存在しているた
め、それ自体が親水性を示し、セメント、水、及び骨材
などの基本材料との混練性が良好である。しかも、この
短繊維は、その比重がコンクリート組成物と近似してい
るため、コンクリート組成物との混練性が更に良好であ
る。この短繊維は、アルカリ性のセメントに対する耐性
があり、もちろん錆を発生することがない。この短繊維
は、軽量であるため、セメント製品の軽量化に資するこ
とができる。
て得た硬化コンクリートは、圧縮強度、引張強度、曲げ
強度、曲げタフネスなどの機械的特性が改善され、耐ひ
び割れ性にも優れている。その理由は、短繊維自体によ
る補強効果に加えて、その表面の存在する樹脂の分解生
成物によるセメント結晶の微細化によるものと推定され
る。
げてより具体的に説明する。各物性等の測定法は次の通
りである。 (1)回収率及び表面劣化度 熱可塑性ポリエステル樹脂試料及び短繊維試料の表面劣
化度は、次の手順により測定した値である。試料約20
gを精秤し、水酸化カリウムの0.1%メタノール溶液
100ml中に25℃で24時間浸漬する。次いで、濾
過、水洗、乾燥して、試料を回収する。浸漬前の試料の
重量をa、回収した試料の重量をbとすると、回収率
は、次式により算出される。なお、浸漬処理を24時間
を越えて行っても、回収率にそれほどの変化は認められ
ない。 回収率(重量%)=〔(a−b)/a〕×100 前記浸漬処理により、主として試料表面の分解生成物
(ジオール成分と酸成分を含有する低分子量物)が溶解
除去されるため、試料の表面劣化度は、次式から求めら
れる。 表面劣化度(重量%)=100−回収率
た。 空気量:JIS A−1128に準拠して測定した。 (3)硬化コンクリートの物性測定法 圧縮強度:JIS A−1108に準拠して測定し
た。 引張強度:JIS A−1113に準拠して測定し
た。 曲げ強度:JSCE−G552に準拠して測定した。 曲げタフネス:JSCE−G552に準拠して測定し
た。 (4)素材の物性値測定法 JIS K−7113に準拠してヤング率を測定した。
浄、乾燥して得られたPET樹脂廃棄物回収フレーク
〔9mmスクリーン通過;表面劣化度=1.3重量%、
IV値=0.70dl/g〕を用いて、シリンダー内径
50mmの押出機(L/D=4)にて、押出温度260
℃、ノズル孔径1.2mmのノズルから繊維状に溶融押
出し、90℃の温水で冷却した。得られた未延伸糸を、
150℃の雰囲気下で約4倍に延伸した。その結果、断
面形状が円形で、径0.7mmφの延伸繊維が得られ
た。この延伸繊維を25mmの長さに切断して、短繊維
(補強用繊維A)を得た。この短繊維の表面劣化度は、
1.5重量%であった。
雰囲気下、2つの歯車の間に導き、これらの歯車の回転
により延伸して、その表面に、長さ方向とは垂直方向
(周面)に溝と山を交互にに形成し、長さ方向に多数の
凹凸が形成された延伸繊維を製造した。凹凸の各溝の深
さは約2μm、幅は約50μm、山の高さは約2μm、
山の幅は約50μmであった。その結果、断面形状が略
円形で、径が0.8mmで、表面に凹凸が形成された延
伸繊維が得られた。この延伸繊維を25mmの長さに切
断して、短繊維(補強用繊維B)を得た。短繊維の表面
劣化度は、1.5重量%であった。
て延伸緩和した。その結果、長さ22.5mmの短繊維
(補強用繊維C)が得られた。
の物性値に関係がある。そこで、各種素材と一般に用い
られているコンクリート補強用繊維のヤング率(引張弾
性率)を示す。 (1) PET素材:2×103 MPa(JIS K−71
13) (2) PET延伸繊維(実施例1):9×103 MPa
(=9GPa) (3) PET延伸繊維(実施例2):7×102 MPa
(=0.7GPa) (4) PET延伸繊維(実施例3):3×103 MPa
(=3GPa) (5) 鋼鉄繊維:2×105 MPa (SUT BULLETIN, 1, 2
000, P.40) (6) ガラス繊維:7×104 MPa (SUT BULLETIN, 1,
2000, P.40) (7) ナイロン66繊維:30MPa (SUT BULLETIN, 1,
2000, P.40) (8) 低密度ポリエチレン繊維:1MPa (SUT BULLETI
N, 1, 2000, P.40) (9) 高密度ポリエチレン繊維:10MPa (SUT BULLET
IN, 1, 2000, P.40) (10)ポリプロピレン繊維:100MPa (SUT BULLETI
N, 1, 2000, P.40) (11)天然ゴム繊維:2MPa (SUT BULLETIN, 1, 2000,
P.40) (12)ビニロン繊維:290MPa (SUT BULLETIN, 1, 2
000, P.40) 回収PET延伸繊維は、強度的にガラス繊維につぐ機械
物性を備えており、強度的に優れていることが分かる。
維A(0.7mmφ×25mm長)を用いて、次の処方
により繊維補強コンクリート組成物を調製した。配合処方 (単位量:kg/m3 ) セメント(早強ポルトランドセメント、比重=3.15)・・・・・・ 340 細骨材(いわき市産の山砂、表乾比重=2.61)・・・・・・・・・・・・ 880 粗骨材(福島県双葉郡楢葉町産の砕石、表乾比重=2.66)・・ 880 水 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 170 補強用繊維・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.0配合方法 セメント、細骨材、及び粗骨材を計量し、これに水を加
えて1分間混練し、次いで、補強用繊維を加えて2分間
混練して、合計40リットル(1バッチ)の繊維補強コ
ンクリート組成物を調製した。硬化コンクリート 上記で調製した繊維補強コンクリート組成物を150m
m×530mm×150mmの型枠に打ち込んで、一夜
成型後、脱型し、その後、15日間養生した。風や温度
などによる急激な乾燥を避けるため、コンクリート表面
に養生マットを敷き、散水を打設後5日間以上継続し
た。結果を表1に示す。
ーのペレット、表面劣化度=0.3重量%)を用いたこ
と以外は、実施例1と同様にして、延伸繊維を作成し、
次いで、これを切断して短繊維(0.7mmφ×25m
m)を得た。この短繊維(補強用繊維)の表面劣化度
は、0.8重量%であった。この短繊維を補強用繊維と
して用いたこと以外は、実施例4と同様にして繊維補強
コンクリート組成物を調製し、硬化コンクリートを作成
した。結果を表1に示す。
への分散性は、以下の基準により評価した。 ◎:攪拌すると、補強用繊維がコンクリート組成物中に
均一に分散する。 ○:良く攪拌すると、補強用繊維がコンクリート組成物
中に均一に分散する。 △:良く攪拌しても、部分的に未分散の補強用繊維があ
る。 ×:良く攪拌しても、補強用繊維がブロックになり分散
しない。
トル廃棄物を用いて製造した短繊維は、セメント、水、
及び骨材を含有するコンクリート組成物中への分散性に
優れており、硬化コンクリートの物性値も向上している
ことが分かる。
PET樹脂廃棄物回収フレーク、該フレークを用いて作
成したペレット、実施例1で作成した補強用繊維A、及
び実施例3で調製した補強用繊維Cを用いて、耐アルカ
リ性試験を行った。すなわち、表2に示すアルカリ性の
浸漬媒体を用いて、浸漬試験を行い、回収率を測定し
た。結果を表2に示す。
T樹脂及びそれから成形した短繊維は、耐アルカリ性が
あり、表面に付着した分解生成物が一部溶解するもの
の、濃度10%以上の水酸化ナトリウム溶液程度の強い
アルカリに対して充分な耐性を示している。
と以外は、実施例4と同様にしてコンクリート組成物を
調製し、硬化コンクリートを作成した。結果を表3〜4
に示す。
用繊維B(径0.8mm、25mm、凹凸あり)を表3
に示す単位量で用いたこと以外は、実施例4と同様にし
て繊維補強コンクリート組成物を調製し、硬化コンクリ
ートを作成した。結果を表3〜4に示す。
繊維Aを表3に示す単位量で用いたこと以外は、実施例
4と同様にして繊維補強コンクリート組成物を調製し、
硬化コンクリートを作成した。結果を表3〜4に示す。
繊維C(熱処理品)を表3に示す単位量で用いたこと以
外は、実施例4と同様にして繊維補強コンクリート組成
物を調製し、硬化コンクリートを作成した。結果を表3
〜4に示す。
明の繊維補強コンクリート組成物から高強度の硬化コン
クリートが生成する。実施例6〜9によれば、比較例2
に比べて、圧縮強度で6%、引張強度で60%、曲げ強
度で40%程度向上し、曲げタフネスも強化されてい
る。しかも、ひび割れも検出されず、全体的に軽量化も
図られている。実施例10〜11では、機械的強度が更
に向上している。その理由としては、補強用繊維と硬化
コンクリート(セメントマトリックス)がより強固に結
合しているためと考えることができる。
ボトル等の熱可塑性ポリエステル樹脂成形物の破砕物を
原料として使用し、コンクリート組成物との親和性が良
好で、しかも機械的特性に優れ、かつ、耐ひび割れ性が
良好な硬化コンクリートを与えることができるコンクリ
ート補強用繊維が提供される。また、本発明によれば、
このような補強用繊維を含有するコンクリート組成物が
提供される。高強度の硬化コンクリートは、圧縮強度、
引張強度、曲げ強度、曲げタフネス、耐ひび割れ性に優
れた性質を発揮できるので、土木分野ではトンネル吹き
付け工事、舗装工事、法面被覆などに適用することがで
きる。建築分野では、土間、壁等各種用途に用いること
ができる。したがって、本発明の補強用繊維は、従来、
鋼鉄やガラス繊維などが用いられていた分野に適用する
ことができ、それによって、軽量化を図ることもでき
る。本発明は、PETボトルなどの廃棄物処理に寄与す
ることができる。
Claims (13)
- 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル樹脂成形物の破砕
物から成形された延伸繊維の切断短繊維からなるコンク
リート補強用繊維。 - 【請求項2】 短繊維の径が0.01〜3mmで、長さ
が5〜100mmである請求項1記載のコンクリート補
強用繊維。 - 【請求項3】 短繊維の表面劣化度が1〜10重量%で
ある請求項1または2に記載のコンクリート補強用繊
維。 - 【請求項4】 延伸繊維のヤング率が0.2〜11GP
aである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンク
リート補強用繊維。 - 【請求項5】 熱収縮処理により形態が安定化された短
繊維である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコン
クリート補強用繊維。 - 【請求項6】 短繊維が、(1) 円形、楕円形、多角形も
しくは異形の断面を持つ短繊維、(2) 長さ方向に突起、
節もしくは凹凸を設けた短繊維、(3) 長さ方向に捩じり
を加えた短繊維、(4) 両端にこぶを設けた短繊維、(5)
複数のフィラメントを束ねたストランド繊維、または
(6) これらの2種以上を組み合わせた形状の短繊維であ
る請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンクリート
補強用繊維。 - 【請求項7】 少なくともセメント、水、骨材、及び補
強用繊維を含有する繊維補強コンクリート組成物におい
て、該補強用繊維が、熱可塑性ポリエステル樹脂成形物
の破砕物から成形された延伸繊維の切断短繊維であるこ
とを特徴とする繊維補強コンクリート組成物。 - 【請求項8】 短繊維の径が0.01〜3mmで、長さ
が5〜100mmである請求項7記載の繊維補強コンク
リート組成物。 - 【請求項9】 短繊維の表面劣化度が1〜10重量%で
ある請求項7または8に記載の繊維補強コンクリート組
成物。 - 【請求項10】 延伸繊維のヤング率が0.2〜11G
Paである請求項7乃至9のいずれか1項に記載の繊維
補強コンクリート組成物。 - 【請求項11】 短繊維が、熱収縮処理により形態が安
定化されたものである請求項7乃至10のいずれか1項
に記載の繊維補強コンクリート組成物。 - 【請求項12】 短繊維が、(1) 円形、楕円形、多角形
もしくは異形の断面を持つ短繊維、(2) 長さ方向に突
起、節もしくは凹凸を設けた短繊維、(3) 長さ方向に捩
じりを加えた短繊維、(4) 両端にこぶを設けた短繊維、
(5) 複数のフィラメントを束ねたストランド繊維、また
は(6) これらの2種以上を組み合わせた形状の短繊維で
ある請求項7乃至11のいずれか1項に記載の繊維補強
コンクリート組成物。 - 【請求項13】 短繊維の含有量が1〜100kg/m
3 である請求項7乃至12のいずれか1項に記載の繊維
補強コンクリート組成物。
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