JP2001301588A - 車両用減速度制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンブレーキアシスト時のドライバビリ
ティーを確保し得る車両用減速度制御装置を提供する。 【解決手段】 エンジンブレーキを補助するため、制動
トルクを付加している車輪のスリップ量を検出し（Ｓ
１、Ｓ２、Ｓ５）、そのスリップ量が所定範囲内に維持
されるよう制動トルクを調整する（Ｓ６）。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両に減速度を付
加する車両用減速度制御装置に関し、特に、ブレーキ非
操作時にアクセル操作状態を検出してその操作状態に応
じて車輪に制動トルクを付加することにより車両に減速
度を付加する車両用減速度制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から運転者がアクセルペダルの踏み
込みを解除した際に制動力を作動させて車両に減速度を
付加するいわゆるエンジンブレーキアシスト効果を有す
る減速度制御装置が提案されている。特開平９−２７２
４１９号公報で開示されている技術はそのうちの一つで
あり、アクセルペダルが減速域にある場合には、減速度
制御装置を介して主ブレーキ系に制動力を付加するもの
である。

【０００３】このような減速度制御装置を付加すること
により、車両を緩やかに加減速する際に、ブレーキペダ
ルを頻繁に操作する必要がなく、減速応答性を高め、イ
ージードライブを実現できると記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】同公報にはスリップ率
が所定値以上のときに制動力によって付加する減速度を
０とする技術が開示されており、これによりスリップに
よる車輪ロックを回避できると記載されている。しかし
ながら、スリップ率が所定値以上となった時点で減速度
を０とするために車両の走行状態が急変しドライバビリ
ティーが悪化するおそれがある。

【０００５】そこで本発明は、こうしたエンジンブレー
キアシスト時のドライバビリティーを確保し得る車両用
減速度制御装置を提供することを課題とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係る車両用減速度制御装置は、(1)運転者
のアクセル操作状態を検出するアクセル操作状態検出手
段と、(2)車輪に制動トルクを付加する減速度付加手段
と、(3)ブレーキ非操作時にアクセル操作状態検出手段
の検出結果に応じて減速度付加手段を制御して付加する
制動トルクを調整する制御部と、を備える車両用減速度
制御装置において、(4)減速度付加手段によって制動ト
ルクが付加されている車輪のスリップ量を検出するスリ
ップ量検出手段をさらに備えており、この制御部は、ス
リップ量検出手段によって検出されるスリップ量が所定
値以上の場合には、そのスリップ量が所定範囲内となる
よう減速度付加手段によってその車輪に付加する制動ト
ルクを調整することを特徴とする。

【０００７】本発明によれば、減速度付加手段で付加す
る制動トルクを、スリップ量検出手段によって検出され
るスリップ量が所定値以上になった場合には、所定範囲
内となるよう調整を行う。このため、エンジンブレーキ
アシスト時に制動力を確保しつつ、車両挙動を安定させ
ることが可能であり、車両の走行状態が急変してドライ
バビリティーが悪化することがないあるいは本発明に係
る車両減速度制御装置は、(1)〜(3)と、(4)減速度付加
手段によって制動トルクが付加されている車輪のスリッ
プ状態が所定のスリップ状態にあるか否かを判定するス
リップ状態判定手段と、(5)減速度付加手段による制動
トルクの付加状態情報を運転者に告知する告知手段とを
備えており、この制御部はスリップ量が所定値以上とな
った場合には、減速度付加手段による制動トルクの付加
を停止するとともに、告知手段を介して制動トルクの付
加が停止した旨を運転者に告知するものでもよい。

【０００８】この場合は、所定のスリップ状態になる
と、減速度付加手段による制動トルクの付加が停止され
るが、告知手段によって所定のスリップ状態となり、制
動トルクの付加が停止した旨を運転者に告知するので、
運転者が減速度急変に対応することができ、ドライバビ
リティーの悪化を避けられる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理
解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に
対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説
明は省略する。

【００１０】図１は、本発明に係る減速度制御装置を含
む減速度制御系統の構成を示す図であり、図２は、本発
明に係る減速度制御装置を搭載した車両の制動系の構成
を示す図である。

【００１１】まず、図２を参照して車両の制動系の構成
から説明する。この車両は、前輪ＦＲおよびＦＬと後輪
ＲＲおよびＲＬのそれぞれに車輪制動用のホイルシリン
ダ２５〜２８が設けられており、各ホイルシリンダ２５
〜２８でブレーキを駆動することにより車両の制動を行
う構成となっている。各車輪ＦＲ、ＦＬ、ＲＲ、ＲＬに
はそれぞれの車輪速度Ｖｗを検出する車輪速センサ５１
〜５４が配置されている。

【００１２】そして、この制動系を操作するためのブレ
ーキペダル１０は、マスタシリンダ１１のピストン軸に
接続されている。ブレーキペダル１０には、ブレーキペ
ダルの操作状態を検出するブレーキストロークセンサ４
０が接続されている。マスタシリンダ１１には、さらに
ブレーキペダル１０と反対側にストロークシミュレータ
１５が接続され、ブレーキペダル１０の操作に対して適
度な反発力を発生させる。

【００１３】このマスタシリンダ１１から延びる２つの
作動液ラインは、それぞれソレノイド弁１２、１３を介
して右前輪ＦＲと左前輪ＦＬのそれぞれのホイルシリン
ダ２５、２６に接続されている。このマスタシリンダ１
１からソレノイド弁１２（１３）に至る経路には、マス
タ圧センサ３８（３９）が配置されている。

【００１４】一方、リザーバタンク１６から延びる作動
液ラインは、モータ１８により駆動されるポンプ１７に
接続され、ポンプ１７から延びる作動液ラインは、各リ
ニア弁２１ａ〜２４ａを介して各車輪のホイルシリンダ
２５〜２８へと接続されている。ポンプ１７と各リニア
弁２１ａ〜２４ａへの分岐部との間には圧力センサ３１
とアキュムレータ１９とが配置されている。また、各ホ
イルシリンダ２５〜２８からリザーバタンク１６へと戻
る作動液ラインには、減圧弁２１ｂ〜２４ｂがそれぞれ
接続されている。各ホイルシリンダ２５〜２８には、ホ
イルシリンダ圧センサ３２〜３５がそれぞれ取り付けら
れている。

【００１５】本発明に係る車両減速度制御装置の制御部
を構成する減速度制御ユニット１００には、前述したブ
レーキペダル１０の開度を検出するブレーキストローク
センサ４０、後述するアクセルペダル４の開度θを検出
するアクセル開度センサ４２、前述した車輪速センサ５
１〜５４のほか、エンジン回転数センサ４６、シフトセ
ンサ４８、ホイルシリンダ圧センサ３２〜３５、圧力セ
ンサ３１、マスタ圧センサ３８、３９の各出力信号も供
給されている。

【００１６】さらに、減速度制御ユニット１００は、減
速度制御の際に用いるテーブルや定数などを格納してお
くメモリユニット１２０を有し、各ホイルシリンダ２５
〜２８に接続されるリニア弁２１ａ〜２４ａと減圧弁２
１ｂ〜２４ｂ並びにソレノイド弁１２、１３をそれぞれ
制御する。また、表示系２００に対して制御系の状態を
表す信号を送出する。表示系２００は必要な情報を表示
することにより、運転者に車両状態の情報を告知する。

【００１７】ここで、この制動系の制動時の基本動作に
ついて説明する。ここで、リザーブタンク１６から送ら
れる作動液は、ポンプ１７の下流側配管内では、所定の
圧力に昇圧保持されており、アキュムレータ１９はこの
圧力を維持する役目を果たす。そして、圧力センサ３１
で検出した作動液の液圧がこの所定圧力を下回っている
ときはポンプ１７をモータ１８で駆動することによりこ
の下流側配管内の作動液をこの所定圧力まで昇圧する。
ブレーキペダル１０が踏み込まれると、マスタシリンダ
１１のピストン軸が押されて、操作量に応じた液圧（マ
スタ圧）が発生する。正常時には、ソレノイド弁１２、
１３は遮断状態にあり、マスタ圧が直接右前輪ＦＲのホ
イルシリンダ２５と左前輪ＦＬのホイルシリンダ２６に
伝達されることはない。マスタシリンダ１１の操作量は
マスタ圧センサ３８、３９によって検出され、その操作
量に応じて減速度制御ユニット１００が各ホイールシリ
ンダ２５〜２８へと付加すべき液圧（ホイルシリンダ
圧）を演算する。そして、各リニア弁２１ａ〜２４ａ、
減圧弁２１ｂ〜２４ｂの動作を制御することにより、各
ホイルシリンダ２５〜２８へと伝達されるホイルシリン
ダ圧（ホイルシリンダ圧センサ３２〜３５で計測）を求
めたホイルシリンダ圧となるよう調整する。このよう
に、各ホイルシリンダ２５〜２８に伝達されるホイルシ
リンダ圧を独立に制御することで、各車輪に印加される
制動力を独立して制御することが可能である。

【００１８】制動系統の異常時には、各ソレノイド弁１
２、１３を導通状態として、マスタシリンダ１１のマス
タ圧をソレノイド弁１２、１３を介して右前輪ＦＲのホ
イルシリンダ２５、左前輪ＦＬのホイルシリンダ２６へ
とそれぞれ伝達して両前輪ＦＲ及びＦＬの制動を行う。

【００１９】本発明に係る減速度制御装置は、さらに、
踏み込んだアクセルペダルが戻される際に、制動力を付
加して減速度を発生させて自動変速機搭載車両で不足し
がちなエンジンブレーキ効果を補助する減速度制御を行
う。以下、これをエンジンブレーキアシスト（EBA）制
御と呼ぶ。図３はアクセルペダル開度θを説明する図で
あり、図４はその制御の一形態を示すフローチャートで
ある。この制御は減速度制御ユニット１００によって行
われるものであり、車両のエンジンを駆動させた時点か
ら所定のタイミングで繰り返し実行される。ただし、ブ
レーキペダル１０が操作されている場合には、ブレーキ
ペダル１０の操作状態に応じて制動トルクが付加される
ので、本フローチャートの処理は行われず、スキップさ
れる。

【００２０】ステップＳ１においては、アクセルペダル
４に取り付けられたアクセル開度センサ４２の出力信号
として送られてきたアクセル開度θと、車輪速センサ５
１〜５４の出力信号として送られてきた各車輪ＦＲ、Ｆ
Ｌ、ＲＲ、ＲＬの車輪速Ｖｗfr、Ｖｗfl、Ｖｗrr、Ｖｗ
rlが読み込まれる。続くステップＳ２では、各車輪速Ｖ
ｗfr、Ｖｗfl、Ｖｗrr、Ｖｗrlの最大値を推定車速Ｖｒ
として設定する。

【００２１】ステップＳ３では、推定車速Ｖｒとアクセ
ル開度θを基にして付加すべき減速度EBAori(t)を演算
する。具体的には、アクセルペダル４が図４に示される
燃料遮断位置（フューエルカット位置、アクセル開度θ
₀）より全閉位置側（アクセル開度０）に位置している
場合に、 EBAori(t)＝ｆ（Ｖｒ）×（θ₀−θ） で表される減速度EBAori(t)を付加するものである。

【００２２】ステップＳ４では、求めた減速度EBAori
(t)を得るのに必要な各車輪に付加すべき制動トルクを
演算し、この制動トルクが得られるホイルシリンダ圧を
演算して、各リニア弁２１ａ〜２４ａ及び減圧弁２１ｂ
〜２４ｂを制御して各車輪のホイルシリンダ２５〜２８
に作用する液圧を求めたホイルシリンダ圧に調整する。
アクセルペダル４が戻されたときは、図示していないエ
ンジン制御ユニットが燃料、空気の供給を削減して、エ
ンジン回転数Ｎｅを減少せしめ、この抵抗により制動力
が生ずるエンジンブレーキ効果が発生するが、付加する
制動トルクがこれをアシストする役目を果たす。この結
果、車両には減速度が付加され、減速が行われる。中高
速領域では、アクセルペダル４が燃料遮断位置より全閉
位置側へと戻された時点で、エンジン制御ユニットがエ
ンジンへの燃料供給を遮断することによりさらに大きな
減速度が得られる。

【００２３】ステップＳ５では、制動トルクを付加した
ことで車輪がロックしてスリップが発生していないかを
判定する。具体的には、各車輪ｘ（ＦＲ、ＦＬ、ＲＲ、
ＲＬ）のスリップ率Ｓｘ（Ｓfr、Ｓfl、Ｓrr、Ｓrl）の
いずれかが所定値Ａ（ここでＡは０より大きい値）以上
となったときにスリップ状態であると判定する。ここ
で、スリップ率Ｓｘは、各車輪速Ｖｗ（Ｖｗfr、Ｖｗf
l、Ｖｗrr、Ｖｗrl）と推定車速ＶｒからＳｘ＝（Ｖｒ
−Ｖｗ）／Ｖｒとして求められる。

【００２４】スリップ状態であると判定した場合には、
ステップＳ６へと移行して、付加される制動トルクを調
整し、スリップ率Ｓｘがいずれも所定範囲に収まるよう
に制御する。ここで所定範囲とは、上記所定値Ａよりも
小さく０より大きいスリップ率の範囲をいう。これによ
り、EBA制御時に各車輪がロックするのを防止し、十分
な制動力を確保しつつ、車両挙動を安定させることがで
きる。したがって、ドライバビリティーも確保され、悪
化することがない。

【００２５】一方、ステップＳ５でスリップ状態でない
と判定した場合には、ステップＳ６の処理をスキップし
て処理を終了する。この場合は、ステップＳ３で求めた
減速度EBAori(t)がそのまま付加されることになる。こ
の場合は、スリップ率Ｓｘは所定範囲内であり、車両挙
動は安定した状態であって十分な制動力が確保される。
したがって、ドライバビリティーも確保され、悪化する
ことはない。

【００２６】次に、本発明に係る別の制御形態について
説明する。この実施形態は図４に示される制御フローチ
ャートのステップＳ６部分を図５に示されるステップＳ
６ａに変更したものである。この実施形態では、ステッ
プＳ５において、スリップ状態であると判定した場合に
は、ステップＳ６ａへと移行して、制動トルクの付加を
解除して、アシスト制動力の付加を停止する。これによ
り、車両に付加される減速度が急変する可能性があるの
で、同時に表示系２００へ信号を送出し、アシスト制動
力の付加を停止している旨を表示せしめ、運転者に対し
て告知する。これにより、運転者は減速度が急変するこ
とを知り、スリップ状態となりやすい状態にあることを
容易に認識しうるので、車両挙動の変化を予測して適切
に対処することが可能である。したがって、ドライバビ
リティーが確保される。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ブ
レーキ非操作時のアクセル操作状態に基づいて車輪に制
動トルクを付加して減速力を付加する際に、制動トルク
を付加する車輪のスリップ量を調べてスリップ量が所定
値以上の場合には、所定範囲内になるよう付加する制動
トルクを制御しているので、車輪のロックを防止して、
車両挙動を安定させつつ、十分な制動トルクを付加する
ことができ、ドライバビリティーが悪化することがな
い。

【００２８】あるいは、車輪が所定のスリップ状態に陥
った場合には、制動トルク付加を停止して、運転者に告
知するようにすることで、運転者は車両挙動の変化を予
測でき、適切に対処することができ、ドライバビリティ
ーが悪化することがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る減速度制御装置の構成を示す図で
ある。

【図２】本発明に係る減速度制御装置を搭載した車両の
制動系の構成を示す図である。

【図３】アクセルペダル開度を説明する図である。

【図４】図１の装置の減速度制御を説明するフローチャ
ートである。

【図５】図４の制御フローの一部を変更した制御の変更
部分のフローチャートである。

【符号の説明】

４…アクセルペダル、１０…ブレーキペダル、１１…マ
スタシリンダ、１６…リザーバタンク、１７…ポンプ、
１９…アキュムレータ、２１ａ〜２４ａ…リニア弁、２
１ｂ〜２４ｂ…減圧弁、２５〜２８…ホイルシリンダ、
３１…ブレーキ圧センサ、３２〜３５…ホイルシリンダ
圧センサ、４２…アクセル開度センサ、５１〜５４…車
輪速センサ、１００…減速度制御ユニット、１２０…メ
モリユニット。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 運転者のアクセル操作状態を検出するア
   クセル操作状態検出手段と、車輪に制動トルクを付加す
   る減速度付加手段と、ブレーキ非操作時に前記アクセル
   操作状態検出手段の検出結果に応じて前記減速度付加手
   段を制御して付加する制動トルクを調整する制御部と、
   を備える車両用減速度制御装置において、 前記減速度付加手段によって制動トルクが付加されてい
   る車輪のスリップ量を検出するスリップ量検出手段をさ
   らに備えており、前記制御部は、前記スリップ量検出手
   段によって検出されるスリップ量が所定値以上の場合に
   は、該スリップ量が所定範囲内となるよう前記減速度付
   加手段によって該車輪に付加する制動トルクを調整する
   車両用減速度制御装置。
2. 【請求項２】 運転者のアクセル操作状態を検出するア
   クセル操作状態検出手段と、車輪に制動トルクを付加す
   る減速度付加手段と、ブレーキ非操作時に前記アクセル
   操作状態検出手段の検出結果に応じて前記減速度付加手
   段を制御して付加する制動トルクを調整する制御部と、
   を備える車両用減速度制御装置において、 前記減速度付加手段によって制動トルクが付加されてい
   る車輪のスリップ状態が所定のスリップ状態にあるか否
   かを判定するスリップ状態判定手段と、 減速度付加手段による制動トルクの付加状態情報を運転
   者に告知する告知手段と、 をさらに備えており、前記制御部は前記スリップ状態判
   定手段が前記所定のスリップ状態にあると判定した場合
   には、前記減速度付加手段による制動トルクの付加を停
   止するとともに、前記告知手段を介して制動トルクの付
   加が停止した旨を運転者に告知する車両用減速度制御装
   置。