JP2001294986A - 高速度工具鋼用粉末および粉末高速度工具鋼 - Google Patents

高速度工具鋼用粉末および粉末高速度工具鋼

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性および靭性をより優れるものとする
ことによって、切削工具のより長寿命化を達成すること
のできる様な粉末高速度工具鋼、およびこうした高速度
工具用鋼を得る為に有用な高速度工具鋼用粉末を提供す
る。 【解決手段】 本発明の高速度工具鋼用粉末は、所定の
化学成分組成を有すると共に、下記(1)〜(4)式を
満足するものである。 67.8<5.85×ΔC+0.15×[Co]+0.10×Weq+64.4<71
……(1) ΔC=[C]-(2×[Mo]+[W])×0.017-0.22×[V]-0.19
……(2) Weq=[W]+2×[Mo]
……(3) ΔC≧20
……(4) 但し、[Co],[C],[Mo],[W]および[V]は、夫々Co,
C,Mo,WおよびVの含有量(質量%)示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切削工具や金型等
の素材として用いられる硬さHRC67以上の高硬度の
高速度工具鋼を粉末冶金法によって製造する為の高速度
工具鋼用粉末、およびこの粉末を粉末冶金法によって製
造して得られる粉末高速度工具鋼に関し、特に耐摩耗性
および靭性に優れ、切削工具の素材として最適な粉末高
速度工具鋼およびこうした粉末高速度工具鋼を得る為の
高速度工具鋼用粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高速度工具鋼(ハイス)は、C,Cr,
W,Mo,V,Co等の合金元素を多量に加えて高温で
の硬さや耐摩耗性を一層高めた工具鋼であり、エンドミ
ルやドリルの様に比較的靭性が要求される切削工具の素
材として汎用されている。この高速度工具鋼は、合金元
素としてWを主体として多量に添加したW系のもの(W
系ハイス)と、このW系におけるW量を減らして代替と
してMoを加えたMo系のもの(Mo系ハイス)が知ら
れている。また、上記Mo系ハイスにおいては、更にC
oを含有させることによって、高温耐久性を高めたMo
−Co系ハイスも開発されている。尚、上記Mo系ハイ
スは、W系ハイスに比べて優れた靭性を発揮するといわ
れているが、これはMo炭化物はW炭化物に比べて形態
が球状化され易いためであるとされている。
【0003】ところで上記の様な高速度工具鋼は、従来
では溶製法によって製造されていたのであるが、この溶
製法によって得られた高速度工具鋼では、粗大炭化物の
存在や偏析という問題があった。こうしたことから近年
では、従来の溶製法に代わって、粉末冶金法を用いた粉
末高速度工具鋼(粉末ハイス)が広く使用される様にな
っている。この粉末高速度工具鋼は、高速度工具鋼の溶
湯をアトマイズ法によって急冷凝固粉末とし、この粉末
を熱間静水圧加圧(HIP)等の粉末冶金法によって製
造されるものであるが、こうした粉末高速度工具鋼は溶
製法では製造し難かった成分系も製造可能であると共に
均一な組織となり、靭性に優れ、切削性能に優れた材料
が得られるとされている。
【0004】しかしながら、上記の様な粉末高速度工具
鋼を切削工具の素材として実際に使用した場合には、耐
摩耗性および靭性が不十分なことがあり、工具の切削性
能の向上という要求に十分対応できるものではなかっ
た。こうしたことから、耐摩耗性および靭性をより高め
て工具の切削性能をより向上させるという観点で、これ
までにも様々な粉末高速度工具鋼について提案されてき
ている。
【0005】例えば、日本特許第2725333号に
は、Wの含有量を比較的高くすると共に(W含有量:1
5〜60%)、鋼中に存在する炭化物のうち円相当直径
が1μm以上のものが10.0〜30.2容積%を占め
る様にして耐摩耗性と靭性を高めた粉末高速度工具鋼が
開示されている。また、米国特許第4576642号に
は、硬質粒子を生成する元素であるCr,W,Mo,T
i,Ta,Nb,V等を17%以上含有させると共に、
3μm以下の微細な硬質粒子を均質に分散させた粉末高
速度工具鋼が開示されている。
【0006】これまで提案されている上記各技術は、そ
の化学成分組成および炭化物サイズを調整することによ
って、粉末高速度工具鋼の耐摩耗性と靭性を向上させる
ものであり、上記構成によってその特性の改善が実現さ
れている。しかしながら、上記の様な粉末高速度工具鋼
では、近年の切削工具に要求されるより高度な特性を考
えた場合には、耐摩耗性および靭性が依然として不十分
であり、更なる改善が望まれているのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な状況
の下でなされたものであり、その目的は、耐摩耗性およ
び靭性をより一層に優れたものとすることによって、切
削工具のより長寿命化を達成することのできる様な粉末
高速度工具鋼、およびこうした高速度工具用鋼を得る為
に有用な高速度工具鋼用粉末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の高速度工具鋼用粉末とは、C:1.2〜3%、S
i:3%以下(0%を含まない)、Mn:3%以下(0
%を含まない)、Cr:3〜6%、W:10〜15%、
Mo:1%以下(0%を含まない)、V:3〜5%、C
o:10%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共
に、下記(1)〜(4)式を満足する点に要旨を有する
ものである。 67.8<5.85×ΔC+0.15×[Co]+0.10×Weq+64.4<71 ……(1) ΔC=[C]-(2×[Mo]+[W])×0.017-0.22×[V]-0.19 ……(2) Weq=[W]+2×[Mo] ……(3) ΔC≧0.20 ……(4) 但し、[Co],[C],[Mo],[W]および[V]は、夫々Co,
C,Mo,WおよびVの含有量(質量%)示す。
【0009】また、上記の様な高速度工具鋼用粉末を粉
末冶金法によって製造したものであり、炭化物サイズが
2.0μm以下である粉末高速度工具鋼は、耐摩耗性お
よび靭性に優れたものとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、耐摩耗性および靭
性に優れた粉末高速度工具鋼の実現を目指して様々な角
度から検討した。その結果、C,Si,Mn,Cr,
W,Mo,VおおよびCo等の基本的な成分を適切に調
整すると共に、上記(1)〜(4)を満足させた粉末を
HIP焼結すれば、従来の粉末高速度工具鋼を凌駕する
特性(耐摩耗性および靭性)を発揮し、こうした粉末高
速度工具鋼を素材として用いた切削工具では長寿命化が
達成されることを見出し、本発明を完成した。まず、本
発明で規定した上記(1)〜(4)式の意義について説
明する。
【0011】本発明者らは、前記(2)式で規定される
「ΔC」、「Co含有量[Co]」、および前記(3)式で
規定される「Weq」の3つのパラメータによって規定さ
れる値[5.85×ΔC+0.15×[Co]+0.10×Weq+64.4]
(以下、この値を「H値」と呼ぶ)は、実測した硬度と
良い相関関係を示し(後記実施例1参照)、この値を高
硬度の工具として必要な硬さの範囲内となる様に規定す
れば[前記(1)式]、上記目的に適う高速度工具用粉
末になり得ることが判明したのである。即ち、上記H値
を切削工具としての必要な硬さとの関係で、上記(1)
式を満足する様に規定すれば、耐摩耗性を備えた粉末高
速度工具鋼を製造するための高速度工具鋼用粉末が得ら
れたのである。
【0012】尚、上記(1)式において、H値の下限を
67.8超と規定したのは、上記趣旨から明らかな様
に、切削工具として適するHRC67以上の硬さを得る
為であるが、その上限を71未満としたのは、71以上
となると硬さが大きくなって被加工性が低下すると共
に、靭性の低下を招くことになるからである。
【0013】上記(1)式のパラメータの一つであるΔ
Cは、上記(2)式[ΔC=[C]-(2×[Mo]+[W])×0.017
-0.22×[V]-0.19)]によって規定されるものである。
高速度鋼の場合には、W,Mo,V等の炭化物形成元素
が多く含まれているので、マトリックス中のCは上記炭
化物の生成に使われた残りのものになり、このマトリッ
クス中のCの増加に従って、焼入れ・焼戻しで高い硬さ
が得られるものである。即ち、上記ΔCはマトリックス
中に含まれているであろうC含有量(推定C含有量)を
規定したものであり、このΔCはマトリックス硬さを示
す指標となると共に、耐摩耗性(即ち、工具の耐摩耗
性)を示す指標ともなるものである。
【0014】ところで、高速度工具鋼の適性C量(各元
素が一定の炭化物を形成するのに必要なC量)を算出す
るための関係式について、これまでにも種々提案されて
いる。例えば、「粉末および粉末冶金」(第25巻第8
号)には、上記適性C量(Ceq)について、Ceq=(2×[M
o]+[W])×0.017+0.22×[V]+0.19と規定することが示さ
れている。また、例えば特開平2−179854号に
は、上記適性C量(Ceq)としてCeq=0.06×%Cr+0.033%
W+0.063%Mo+0.2%Vと規定すると共に、このCeqとC含有
量の(C−Ceq)を−0.3〜−0.1の範囲に規定し
た粉末高速度工具鋼について開示されている。
【0015】上記(1)式は、Co含有量[Co]もパラメ
ータの一つとするものであるが、このCoはマトリック
ス中に固溶し、高温での硬さを増大させる元素であり、
炭化物を形成せずにマトリックス硬度を向上させるもの
である。
【0016】上記(3)式は、W当量(Weq)を規定し
たものである。高速度工具鋼の場合は、硬さに対して炭
化物量が大きく影響するものであり、WやMoはこうし
た炭化物(MC型炭化物、M6C型炭化物)を形成する
ことから、この炭化物に関して硬度上昇の寄与を示す指
標としてW当量が一般的に用いられている(例えば、前
記特開平2−179854号)。本発明においては、こ
うしたW当量(Weq)を、前記(1)式のパラメータの一
つとしたものである。
【0017】本発明の高速度工具鋼用粉末においては、
上記(1)〜(3)と共に、上記(4)式を満足する必
要があるが、この(4)式はΔCの値を0.20以上
(ΔC≧0.20)と規定するものである。このΔCは
前述の如く、マトリックス硬さを示す指標となると共
に、工具の耐摩耗性を示す指標ともなるものである。
【0018】ΔCに関して、Mo系ハイスではΔCが高
いものがあるが、一般的に低い値(即ち、0に近い値)
が採用されており、特に本発明で対象とするようなW系
ハイスでは殆どが0に近い値が採用されている。このΔ
Cに関する従来の知見としては、ΔCの値が大きくなる
と靭性を阻害するといわれており(例えば、前記特開平
2−179854号)、ΔCのあまり大きな値は採用さ
れていなかった。即ち、従来の高速度工具鋼において
は、炭化物量の増大や炭化物サイズの適性化等によって
所定の硬さが得られるようにして工具寿命や切削性の改
善が試みられており、この場合には、マトリックスに或
る程度の靭性を持たせるためにΔCは高くしないのが一
般的である。
【0019】本発明者らは、上記のような従来の知見に
囚われることなく、ΔCの最適な値についても検討し
た。その結果、粉末冶金法で製造され炭化物が比較的均
一に分散された組織においては、ΔCの増大は著しい靭
性の低下を起こさず、むしろ工具寿命の延長に有益であ
ることを見出したのである。本発明では、こうした観点
からΔCの値を0.20以上と規定したものであるが
[前記(4)式]、この値があまり大きくなると加工時
および熱処理時に割れが生じる恐れがあるので、その上
限は0.60以下とすることが好ましい。
【0020】本発明の高速度工具鋼用粉末において、
C,Si,Mn,Cr,W,Mo,VおよびCoの化学
成分も適切に調整する必要があるが、これら成分の範囲
限定理由は下記の通りである。
【0021】C:1.2〜3% Cは、マトリックス中に溶け込んでマトリックスの強化
に寄与する元素であり、またW,Mo,CrおよびV等
と結合して炭化物を形成して粉末高速度工具鋼の耐摩耗
性を向上させるのに不可欠な元素である。このCは、他
の合金元素の構成にもよるが、1.2〜3%の範囲内で
含有される。即ち、上記の効果を発揮させるためには、
1.2%以上含有させる必要があるが、過剰に含有させ
ると硬くなり過ぎて靭性面への悪影響があって工具寿命
が悪くなるばかりか、残留オーステナイトの残存による
ミクロ組織の不均一を招くので3%以下とする必要があ
る。尚、C含有量の好ましい下限は1.5%であり、好
ましい上限は2.5%である。
【0022】Si:3%以下(0%を含まない) Siは脱酸剤として含有され、また粉末高速度工具鋼の
硬さを向上させるのに有効な元素である。こうした効果
は、その含有量が増すにつれて大きくなるが、過剰に含
有されると粉末高速度工具鋼の靭性を劣化させることに
なるので、靭性に悪影響を与えない上限として3%以下
とする必要がある。尚、Si含有量の好ましい上限は
1.0%である。
【0023】Mn:3%以下(0%を含まない) MnはSiと同様に脱酸剤として含有されると共に、焼
入れ性を向上させる効果も発揮するが、過剰に含有され
ると粉末高速度工具鋼の靭性を劣化させることになる。
本発明では、靭性に悪影響を与えない上限として3%以
下と規定した。尚Mn含有量の好ましい上限は1.0%
である。
【0024】Cr:3〜6% Crは、鋼の焼入れ性を確保するために或る程度の含有
を必要とし、焼戻し硬さ、高温硬さ、熱処理時の耐酸化
特性等を高めるのに有用な元素である。また、上記の如
く、炭化物を形成して鋼の耐摩耗性を高めるのに有用な
元素である。これらの効果を発揮させるためには、3%
以上含有させる必要があるが、過剰に含有されるとその
効果が飽和するばかりか、却って靭性が低下することに
なるので、6%以下とする必要がある。尚Cr含有量の
好ましい下限、3.5%であり、好ましい上限は5%で
ある。
【0025】W:10〜15% Wは、高速度工具鋼の基本的な特性を付与する為の元素
であり、MC型やM6C型の炭化物を形成すると共に、
その一部がマトリックス中に溶け込み、耐摩耗性、焼戻
し硬さ、高温硬さ等を高めて工具の切削性能を改善す
る。こうした効果を発揮させる為には、W含有量は10
%以上とする必要があるが、過剰に含有されると、炭化
物量が多くなり、また炭化物サイズも大きくなる傾向が
あり、靭性が悪くなるので15%以下とすべきである。
尚W含有量の好ましい下限は11%程度であり、好まし
い上限は14%程度である。
【0026】Mo:1%以下(0%を含まない) MoはWと同様に、MC型やM6C型の炭化物を形成し
て耐摩耗性、焼戻し硬さ、高温硬さ等を高めて工具の切
削性能を改善する。こうした働きはMo:1%がWの2
%に相当する。しかしながら、Moを多く含有すると炭
化物が粗大化する傾向があり、被加工性を低下させるの
で1%以下とする。
【0027】V:3〜5% Vは、粉末高速度工具鋼の基本元素であり、Cと結合す
るとによってMC型の微細な炭化物を形成し、耐摩耗性
の向上に効果がある。こうした効果を発揮させる為に
は、3%以上含有させる必要があるが、過剰に含有され
ると靭性を害するので5%以下をする必要がある。尚V
の好ましい下限は4%であり、好ましい上限は4.5%
である。
【0028】Co:10%以下(0%を含まない) Coは、上述の如くマトリックスに固溶し、耐熱性を向
上させ、高温での硬さを増大させるのに有効な元素であ
る。また、炭化物の析出を促進すると共に、それ自体は
炭化物を生成しないので、マトリックスの硬度を高める
効果も発揮する。こうした効果は、その含有量が増加す
るにつれて大きくなるが、過剰に含有してもその効果が
飽和するので、10%以下とする必要がある。尚、Co
の好ましい上限は9%程度である。
【0029】本発明の高速度工具鋼用粉末における基本
的な化学成分組成は上記の通りであり、残部は実質的に
Feからなるものであるが、本発明の高速度工具鋼用粉
末には、上記の各種成分以外にもその特性を阻害しない
程度の微量成分を含み得るものであり、こうした粉末も
本発明の技術的範囲に含まれるものである。こうした微
量成分としては、N,Ni,Nb等の許容成分や、P,
S,Cu,As,Sb等の不純物、特に不可避的不純物
が挙げられる。
【0030】本発明の高速度工具用粉末は、上記の要件
を満足するものであるが、こうした高速度工具鋼用粉末
を粉末冶金法によって製造して炭化物サイズが2.0μ
m以下である粉末高速度工具鋼では、耐摩耗性および靭
性に優れたものとなって、こうした粉末高速度工具鋼を
切削工具の素材として用いた場合には、切削工具の長寿
命化が達成されることになる。
【0031】尚、上記の要件を満足する本発明の高速度
工具鋼用粉末にあっては、通常の粉末製造法によって製
造しても、炭化物が微細化されたものであり、こうした
粉末を通常の条件でHIPしてもその炭化物サイズを
2.0μm以下にすることができるが、炭化物サイズを
2.0μm以下にするための好ましいHIP処理条件と
しては、温度:1050〜1150℃程度、圧力:95
〜100MPa程度である。
【0032】以下、実施例によって本発明の作用・効果
をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定する
性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更
することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるもの
である。
【0033】
【実施例】実施例1 下記表1に示す化学成分を有する各種粉末を、窒素ガス
アトマイズ法によって製造した。得られた各粉末をカプ
セルに充填・脱気後、1100℃(圧力100MPa)
にてHIP処理して粉末高速度工具鋼材とした。
【0034】上記粉末高速度工具鋼材に対して、熱間加
工を施し供試材とした。得られた供試材に対してマトリ
ックス初期溶融点以下の温度(例えば、No.1の場合
は1200℃)で焼入れし、550℃にて3回の焼戻し
を行ない、その後ロックエル硬度計により3点の硬度を
測定した。
【0035】得られたデータに基づいて検討したとこ
ろ、前記の様に規定されるH値は、図1(H値と実測硬
さの関係を示すグラフ)に示す様に実測した硬度と良い
相関関係を示すことが判明した。
【0036】
【表1】
【0037】実施例2 上記表1に示した化学成分組成を有する各種粉末を、窒
素ガスアトマイズ法によって製造した。得られた各粉末
をカプセルに充填・脱気後、1100℃(圧力100M
Pa)にてHIP処理して粉末高速度工具鋼材とした。
【0038】上記粉末高速度工具鋼材をタップに加工し
て供試材とした。得られた供試材に対してマトリックス
初期溶融点以下の温度で焼入れし、550℃にて3回の
焼戻しを行ない、その後ロックエル硬度計により3点の
硬度を測定した。また、得られた供試材を切削工具(タ
ップ)として、下記の条件で切削試験を行ない、切削性
(工具寿命)を評価した。
【0039】(切削試験) 被加工材:厚さ20mmの2種類(JIS S45C、
SCM440)の材料を準備した。 評価基準:貫通の穴を開け、各供試材でタッピング加工
を施し、その穴開け個数を測定し、市販鋼(No.1
1)の寿命個数に対する比率で評価した。
【0040】これらの結果を、炭化物のサイズと共に下
記表2に示す。尚、表2に示した硬度は、3点の測定値
の平均値を代表値として示したものである。また、被加
工材S45Cに対する切削性と粉末高速度工具鋼のΔC
との関係を図2に、被加工材SCM440に対する切削
性と粉末高速度工具鋼のΔCとの関係を図3に、夫々示
す。
【0041】
【表2】
【0042】これらの結果から明らかなように、本発明
で規定する要件を満足する実施例のものは、どちらの被
加工材に対しても市販品の1.3倍以上の切削性能を発
揮していることが分かる。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、耐
摩耗性および靭性をより優れるものとすることによっ
て、切削工具のより長寿命化を達成することのできる様
な粉末高速度工具鋼、およびこうした高速度工具用鋼を
得る為に有用な高速度工具鋼用粉末が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】H値と実測硬さの関係を示すグラフである。
【図2】被加工材S45Cに対する切削性と粉末高速度
工具鋼のΔCとの関係を示したグラフである。
【図3】被加工材SCM440に対する切削性と粉末高
速度工具鋼のΔCとの関係を示したグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:1.2〜3%(質量%の意味、以下
    同じ)、Si:3%以下(0%を含まない)、Mn:3
    %以下(0%を含まない)、Cr:3〜6%、W:10
    〜15%、Mo:1%以下(0%を含まない)、V:3
    〜5%、Co:10%以下(0%を含まない)を夫々含
    有すると共に、下記(1)〜(4)式を満足することを
    特徴とする高速度工具鋼用粉末。 67.8<5.85×ΔC+0.15×[Co]+0.10×Weq+64.4<71 ……(1) ΔC=[C]-0.017×(2×[Mo]+[W])-0.22×[V]-0.19 ……(2) Weq=[W]+2×[Mo] ……(3) ΔC≧0.20 ……(4) 但し、[Co],[C],[Mo],[W]および[V]は、夫々Co,
    C,Mo,WおよびVの含有量(質量%)示す。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の高速度工具鋼用粉末を
    粉末冶金法によって製造したものであり、炭化物サイズ
    が2.0μm以下であることを特徴とする耐摩耗性およ
    び靭性に優れた粉末高速度工具鋼。
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