JPH07166300A - 高速度鋼系粉末合金 - Google Patents
高速度鋼系粉末合金Info
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- JPH07166300A JPH07166300A JP31223193A JP31223193A JPH07166300A JP H07166300 A JPH07166300 A JP H07166300A JP 31223193 A JP31223193 A JP 31223193A JP 31223193 A JP31223193 A JP 31223193A JP H07166300 A JPH07166300 A JP H07166300A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 耐摩耗性や耐肌荒性のみならず、摺動性にも
優れた高速度鋼系粉末合金を提供する。 【構成】 本発明の高速度鋼系粉末合金は、化学組成が
重量％で、Ｃ ：１．５〜３．５％、 Ｓｉ：０．
６％以下、Ｍｎ：０．６％以下、 Ｃｒ：０．
５〜２５％、２Ｍｏ＋Ｗ：１．５〜４５％、 Ｎｉ：
３．０％以下、Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：
総計で０．５〜１２．０％、Ｎ ：０．１〜０．５％、
及び残部実質的にＦｅからなる。更に、前記合金成分の
他に、Ｃｏ：７．０〜２０％を含有することができる。
優れた高速度鋼系粉末合金を提供する。 【構成】 本発明の高速度鋼系粉末合金は、化学組成が
重量％で、Ｃ ：１．５〜３．５％、 Ｓｉ：０．
６％以下、Ｍｎ：０．６％以下、 Ｃｒ：０．
５〜２５％、２Ｍｏ＋Ｗ：１．５〜４５％、 Ｎｉ：
３．０％以下、Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：
総計で０．５〜１２．０％、Ｎ ：０．１〜０．５％、
及び残部実質的にＦｅからなる。更に、前記合金成分の
他に、Ｃｏ：７．０〜２０％を含有することができる。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼材圧延用ロール、工
具、金型等のように、耐摩耗性、耐肌荒性、耐焼付性が
要求される部材の構成材料として有用な高速度鋼系粉末
合金に関する。
具、金型等のように、耐摩耗性、耐肌荒性、耐焼付性が
要求される部材の構成材料として有用な高速度鋼系粉末
合金に関する。
【０００２】
【従来の技術】鋼材の熱間もしくは冷間圧延用ロール、
工具、金型等の塑性加工部材の表面には、耐摩耗性や耐
肌荒性（亀裂、凹凸、欠損等が生じにくい性質）が要求
される。従来、圧延用ロール材として高合金鋳鉄や鍛鋼
が、工具・金型材としてはＪＩＳに各種規定された合金
工具鋼や高速度鋼が使用されてきた。また、近年、特開
昭６３−２９７５１０号公報等に開示されているよう
に、機械構造用合金鋼等の強靱材からなる基材の表面に
高速度鋼系の組成を有する高合金粉末を配置して、熱間
等方圧加圧（ＨＩＰ）により粉末を焼結一体化すると共
に焼結した粉末合金を使用層として基材に接合した複合
部材も製造されている。
工具、金型等の塑性加工部材の表面には、耐摩耗性や耐
肌荒性（亀裂、凹凸、欠損等が生じにくい性質）が要求
される。従来、圧延用ロール材として高合金鋳鉄や鍛鋼
が、工具・金型材としてはＪＩＳに各種規定された合金
工具鋼や高速度鋼が使用されてきた。また、近年、特開
昭６３−２９７５１０号公報等に開示されているよう
に、機械構造用合金鋼等の強靱材からなる基材の表面に
高速度鋼系の組成を有する高合金粉末を配置して、熱間
等方圧加圧（ＨＩＰ）により粉末を焼結一体化すると共
に焼結した粉末合金を使用層として基材に接合した複合
部材も製造されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】高速度鋼系合金は、焼
き入れ、焼き戻しからなる調質熱処理が施されて、マル
テンサイトあるいはベイナイト相の硬質の基地に微細な
硬質炭化物粒子が分散析出した金属組織となっており、
優れた耐摩耗性や耐肌荒性を帯有し、圧延用ローや金型
等の材料として好適である。しかし、摺動性、耐焼付性
に問題があり、また耐摩耗性のより一層の向上が求めら
れている。
き入れ、焼き戻しからなる調質熱処理が施されて、マル
テンサイトあるいはベイナイト相の硬質の基地に微細な
硬質炭化物粒子が分散析出した金属組織となっており、
優れた耐摩耗性や耐肌荒性を帯有し、圧延用ローや金型
等の材料として好適である。しかし、摺動性、耐焼付性
に問題があり、また耐摩耗性のより一層の向上が求めら
れている。
【０００４】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、耐摩耗性のみならず、摺動性にも優れた高速度鋼系
粉末合金を提供することを目的とする。
で、耐摩耗性のみならず、摺動性にも優れた高速度鋼系
粉末合金を提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】本発明の高速度鋼系粉末
合金は、化学組成が重量％で、Ｃ ：１．５〜３．５
％、 Ｓｉ：０．６％以下、Ｍｎ：０．６％以下、
Ｃｒ：０．５〜２５％、２Ｍｏ＋Ｗ：１．５
〜４５％、 Ｎｉ：３．０％以下、Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔ
ａの内の１種以上：総計で０．５〜１２．０％、Ｎ ：
０．０５〜０．５％、及び残部実質的にＦｅからなる。
更に、前記合金成分の他に、Ｃｏ：７．０〜２０％を含
有することができる。
合金は、化学組成が重量％で、Ｃ ：１．５〜３．５
％、 Ｓｉ：０．６％以下、Ｍｎ：０．６％以下、
Ｃｒ：０．５〜２５％、２Ｍｏ＋Ｗ：１．５
〜４５％、 Ｎｉ：３．０％以下、Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔ
ａの内の１種以上：総計で０．５〜１２．０％、Ｎ ：
０．０５〜０．５％、及び残部実質的にＦｅからなる。
更に、前記合金成分の他に、Ｃｏ：７．０〜２０％を含
有することができる。
【０００６】
【作用】本発明の高速度鋼系粉末合金は、硬質基地や高
硬度炭化物の生成により良好な耐摩耗性及び耐肌荒性を
確保すると共に、Ｎを積極的に添加して窒化物を生成さ
せ、これによって耐摩耗性を向上させると共に良好な摺
動性を具備させたものである。以下、成分限定理由につ
いて説明する。
硬度炭化物の生成により良好な耐摩耗性及び耐肌荒性を
確保すると共に、Ｎを積極的に添加して窒化物を生成さ
せ、これによって耐摩耗性を向上させると共に良好な摺
動性を具備させたものである。以下、成分限定理由につ
いて説明する。
【０００７】Ｃ ：１．５〜３．５％ Ｃは炭化物形成元素であり、Ｖ、Ｔｉ、Ｎｂ、Ｔａ、
Ｗ、Ｍｏ、Ｃｒ等と結合して、ＭＣ型、Ｍ6 Ｃ型、Ｍ2
Ｃ型等の硬質炭化物を形成し、合金の硬度引いては耐摩
耗性を高める。１．５％未満ではかかる作用が不足し、
一方３．５％を越えると炭化物量が過多となり、靱性を
阻害する。尚、良好な靱性を確保するには３．０％以下
に止めるのがよい。
Ｗ、Ｍｏ、Ｃｒ等と結合して、ＭＣ型、Ｍ6 Ｃ型、Ｍ2
Ｃ型等の硬質炭化物を形成し、合金の硬度引いては耐摩
耗性を高める。１．５％未満ではかかる作用が不足し、
一方３．５％を越えると炭化物量が過多となり、靱性を
阻害する。尚、良好な靱性を確保するには３．０％以下
に止めるのがよい。
【０００８】Ｓｉ：０．６％以下 Ｓｉは脱酸作用、焼き入れ性の改善作用及び耐食性改善
作用を有するが、窒素を含有する場合、Ｓｉと窒素とが
結合して粒界に脆弱な化合物を生成する。このため、本
発明ではＳｉ含有量を０．６％以下に押さえ、主として
脱酸作用を利用する。
作用を有するが、窒素を含有する場合、Ｓｉと窒素とが
結合して粒界に脆弱な化合物を生成する。このため、本
発明ではＳｉ含有量を０．６％以下に押さえ、主として
脱酸作用を利用する。
【０００９】Ｍｎ：０．６％以下 Ｍｎは脱酸作用を有し、また焼き入れ性を改善する。し
かし、０．６％を越えて含有すると、オーステナイト結
晶粒の粗大化を招き、合金材質が脆化するようになる。 Ｃｒ：０．５〜２５％ ＣｒはＣと結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を向上さ
せる。また、基地中に多量に固溶し、焼き入れ性を改善
すると共に耐酸化性を向上させる。０．５％未満ではか
かる作用が過少であり、一方２５％を越えると基地に固
溶するＣｒ量が多くなり、靱性、耐衝撃性の低下を招
き、また高温における軟化抵抗性が減少する。
かし、０．６％を越えて含有すると、オーステナイト結
晶粒の粗大化を招き、合金材質が脆化するようになる。 Ｃｒ：０．５〜２５％ ＣｒはＣと結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を向上さ
せる。また、基地中に多量に固溶し、焼き入れ性を改善
すると共に耐酸化性を向上させる。０．５％未満ではか
かる作用が過少であり、一方２５％を越えると基地に固
溶するＣｒ量が多くなり、靱性、耐衝撃性の低下を招
き、また高温における軟化抵抗性が減少する。
【００１０】２Ｍｏ＋Ｗ：１．５〜４５％ Ｍｏ及びＷはＣと結合して、Ｍ2 Ｃ型又はＭ6 Ｃ型の炭
化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。また。その一部
は基地中に固溶し、基地を強化し、高温硬さ、焼き戻し
軟化抵抗性を向上させる。この際、ＭｏはＷの二倍の効
果があるため、成分範囲はＭｏ含有量の二倍とＷ含有量
との和（２Ｍｏ＋Ｗ）によって規定する。２Ｍｏ＋Ｗが
１．５％未満ではかかる作用が不足し、一方４５％を越
えると炭化物量が過多となり、靱性が低下する。
化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。また。その一部
は基地中に固溶し、基地を強化し、高温硬さ、焼き戻し
軟化抵抗性を向上させる。この際、ＭｏはＷの二倍の効
果があるため、成分範囲はＭｏ含有量の二倍とＷ含有量
との和（２Ｍｏ＋Ｗ）によって規定する。２Ｍｏ＋Ｗが
１．５％未満ではかかる作用が不足し、一方４５％を越
えると炭化物量が過多となり、靱性が低下する。
【００１１】Ｎｉ：３．０％以下 Ｎｉはオーステナイト相安定化元素であり、残留オース
テナイト量の増加による靱性の向上に資する。しかし、
３．０％を越えると、残留オーステナイト量が過多とな
り、耐摩耗性に悪影響を及ぼす。 Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：総計で０．５〜
１２．０％ これらの元素はＣと結合してＭＣ型の炭化物を形成す
る。また、焼き入れ後の焼き戻し処理により、炭化物と
なって析出し、顕著な二次硬化をもたらす。総量で０．
５％未満ではその作用が過少であり、一方１２．０％を
越えると炭化物の過剰析出により靱性が低下し、また加
工性が悪化する。
テナイト量の増加による靱性の向上に資する。しかし、
３．０％を越えると、残留オーステナイト量が過多とな
り、耐摩耗性に悪影響を及ぼす。 Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：総計で０．５〜
１２．０％ これらの元素はＣと結合してＭＣ型の炭化物を形成す
る。また、焼き入れ後の焼き戻し処理により、炭化物と
なって析出し、顕著な二次硬化をもたらす。総量で０．
５％未満ではその作用が過少であり、一方１２．０％を
越えると炭化物の過剰析出により靱性が低下し、また加
工性が悪化する。
【００１２】Ｎ ：０．０５〜０．５％、 Ｎは窒化物形成元素であり、耐摩耗性の向上及び特に摺
動性の発現に寄与するため、本発明では積極的に含有さ
せる。含有量が少ないと前記作用が不足するため０．０
５％以上、好ましくは０．０９％以上含有させる。一
方、０．５％を越えると、ガス化したＮにより靱性の低
下を招来する。
動性の発現に寄与するため、本発明では積極的に含有さ
せる。含有量が少ないと前記作用が不足するため０．０
５％以上、好ましくは０．０９％以上含有させる。一
方、０．５％を越えると、ガス化したＮにより靱性の低
下を招来する。
【００１３】本発明の粉末合金は、以上の成分の他、残
部実質的にＦｅで形成されるが、材質をより向上させる
ための、Ｆｅの一部に代えてＣｏを７．０〜２０％含有
することができる。尚、不純物であるＰ、Ｓは材質を劣
化させるので少ない方がよく、０．１％以下に止めるこ
とが好ましい。 Ｃｏ：７．０〜２０％ Ｃｏは基地中に固溶して基地を強化し、高温における硬
さと耐力を著しく向上させる。このため、熱間工具や高
温鍛造部材のように、高温に曝される部材の材料として
はＣｏを含有させることが望ましい。含有量が少ないと
前記作用が不足するため７．０％以上、好ましくは８．
０％以上含有させる。一方、２０％を越えると、靱性が
低下する。Ｃｏは高価な元素であり、多量の含有は経済
性を悪化させるため、１２％以下に止めることが好まし
い。
部実質的にＦｅで形成されるが、材質をより向上させる
ための、Ｆｅの一部に代えてＣｏを７．０〜２０％含有
することができる。尚、不純物であるＰ、Ｓは材質を劣
化させるので少ない方がよく、０．１％以下に止めるこ
とが好ましい。 Ｃｏ：７．０〜２０％ Ｃｏは基地中に固溶して基地を強化し、高温における硬
さと耐力を著しく向上させる。このため、熱間工具や高
温鍛造部材のように、高温に曝される部材の材料として
はＣｏを含有させることが望ましい。含有量が少ないと
前記作用が不足するため７．０％以上、好ましくは８．
０％以上含有させる。一方、２０％を越えると、靱性が
低下する。Ｃｏは高価な元素であり、多量の含有は経済
性を悪化させるため、１２％以下に止めることが好まし
い。
【００１４】本発明の粉末合金は、前記組成の合金粉末
を原料として、固液共存温度域で加圧成形したり、固相
温度域においてＨＩＰ、あるいは熱間押出や熱間鍛造等
の熱間塑性加工を施すことにより、原料粉末を接合一体
化することにより得られる。
を原料として、固液共存温度域で加圧成形したり、固相
温度域においてＨＩＰ、あるいは熱間押出や熱間鍛造等
の熱間塑性加工を施すことにより、原料粉末を接合一体
化することにより得られる。
【００１５】
【実施例】本発明の高速度鋼系粉末合金は、耐摩耗性、
耐肌荒性及び摺動性が要求される各種用途に使用され
る。工具のような小形部材に対しては本発明合金単体に
より形成すればよい。大形部材については、例えば鋼板
圧延用ロールの場合、ロール軸心部として機械構造用炭
素鋼（ＳＣ材）や機械構造用低合金鋼（ＳＣＭ材、ＳＮ
ＣＭ材等）等の強靱材で形成された、円筒状あるいは中
実円柱状の基材に本発明合金からなる外層を被覆形成す
ればよい。条鋼圧延用ロールの場合では、カリバー（孔
型）の成形面を含む表層を本発明合金で被覆形成すれば
よい。金型など、その他の塑性加工用部材や機械構造用
部材については、小形のものでは本発明合金単体で形成
すればよく、大型のものでは耐摩耗性等の使用特性が要
求されない部材本体（基材）を前記強靱材で形成し、使
用特性が要求される表層を本発明合金で被覆形成すれば
よい。
耐肌荒性及び摺動性が要求される各種用途に使用され
る。工具のような小形部材に対しては本発明合金単体に
より形成すればよい。大形部材については、例えば鋼板
圧延用ロールの場合、ロール軸心部として機械構造用炭
素鋼（ＳＣ材）や機械構造用低合金鋼（ＳＣＭ材、ＳＮ
ＣＭ材等）等の強靱材で形成された、円筒状あるいは中
実円柱状の基材に本発明合金からなる外層を被覆形成す
ればよい。条鋼圧延用ロールの場合では、カリバー（孔
型）の成形面を含む表層を本発明合金で被覆形成すれば
よい。金型など、その他の塑性加工用部材や機械構造用
部材については、小形のものでは本発明合金単体で形成
すればよく、大型のものでは耐摩耗性等の使用特性が要
求されない部材本体（基材）を前記強靱材で形成し、使
用特性が要求される表層を本発明合金で被覆形成すれば
よい。
【００１６】ここで、前記複合ロールのように、基材に
本発明の高速度鋼系粉末合金を一体的に接合形成した複
合部材の製造例について説明する。まず、強靱材からな
る基材の、本発明の粉末合金層で被覆したい表面部分の
外周を、例えば炭素鋼板等の軟質高融点金属薄板（カプ
セル材）で包囲し、ＨＩＰ用カプセルを製作する。そし
て、該カプセル内に本発明にかかる合金組成を有する高
速度鋼系合金粉末を充填し、カプセル内（粉末充填部）
を脱気し、密封する。前記粉末は本発明の合金組成を有
する溶湯を溶製し、これをガスアトマイズ法や水アトマ
イズ法等の適宜の粉末製造法により粉化することによ
り、製造される。粉末粒度は特に規定されないが、通
常、平均粒径５００μｍ以下のものが使用される。尚、
粉末の表面に酸化膜が多量に付着している場合、カプセ
ル内に水素ガス等の還元性ガスを導入し、加熱して酸化
膜を還元除去した後、脱気密封することが好ましい。
本発明の高速度鋼系粉末合金を一体的に接合形成した複
合部材の製造例について説明する。まず、強靱材からな
る基材の、本発明の粉末合金層で被覆したい表面部分の
外周を、例えば炭素鋼板等の軟質高融点金属薄板（カプ
セル材）で包囲し、ＨＩＰ用カプセルを製作する。そし
て、該カプセル内に本発明にかかる合金組成を有する高
速度鋼系合金粉末を充填し、カプセル内（粉末充填部）
を脱気し、密封する。前記粉末は本発明の合金組成を有
する溶湯を溶製し、これをガスアトマイズ法や水アトマ
イズ法等の適宜の粉末製造法により粉化することによ
り、製造される。粉末粒度は特に規定されないが、通
常、平均粒径５００μｍ以下のものが使用される。尚、
粉末の表面に酸化膜が多量に付着している場合、カプセ
ル内に水素ガス等の還元性ガスを導入し、加熱して酸化
膜を還元除去した後、脱気密封することが好ましい。
【００１７】次に、脱気密封されたカプセルをＨＩＰ処
理し、合金粉末を焼結一体化すると共に、焼結一体化し
た粉末合金層を基材表面に拡散接合させる。ＨＩＰ処理
条件は、処理温度９００〜１２００℃、処理圧力５００
〜１５００kgf/cm2 、処理時間２〜４ｈｒ程度でよい。
ＨＩＰ処理後、機械加工によりカプセル材を除去し、必
要に応じて形状修正を行う。
理し、合金粉末を焼結一体化すると共に、焼結一体化し
た粉末合金層を基材表面に拡散接合させる。ＨＩＰ処理
条件は、処理温度９００〜１２００℃、処理圧力５００
〜１５００kgf/cm2 、処理時間２〜４ｈｒ程度でよい。
ＨＩＰ処理後、機械加工によりカプセル材を除去し、必
要に応じて形状修正を行う。
【００１８】このようにして、基材の所要表面に本発明
粉末合金層を被覆形成し後、粉末合金層に焼き入れ、焼
き戻し熱処理（調質熱処理）を施す。焼き入れ温度（オ
ーステナイト化温度）は約１０５０〜１２５０℃、好ま
しくは１１００〜１２００℃であり、同温度からの冷却
は油浴、塩浴等を使用することも可能であるが、熱応力
に起因する粉末合金層の亀裂、割れの発生を確実に防止
するには、窒素ガス等の不活性ガスを冷媒とし、常圧あ
るいは例えば３〜７kgf/cm2 程度の加圧雰囲気中で冷却
速度を５〜２０℃／分に制御して冷却するとよい。一
方、焼き戻し処理は、約５００〜６００℃に加熱保持し
た後、冷却する操作を、１回乃至数回実施すればよい。
かかる熱処理により、マトリックスがマルテンサイトも
しくはベイナイト又はこれらの相を主相とし、これに少
量の残留オーステナイトが混在する組織となり、該マト
リックス中に微細な炭化物、窒化物が分散析出した金属
組織となる。析出物は、面積率で約２０〜４５％を占
め、一般の溶製材における炭化物量が約１０〜１５％で
あるのに比して豊富であり、かつ均一に分布している。
粉末合金層を被覆形成し後、粉末合金層に焼き入れ、焼
き戻し熱処理（調質熱処理）を施す。焼き入れ温度（オ
ーステナイト化温度）は約１０５０〜１２５０℃、好ま
しくは１１００〜１２００℃であり、同温度からの冷却
は油浴、塩浴等を使用することも可能であるが、熱応力
に起因する粉末合金層の亀裂、割れの発生を確実に防止
するには、窒素ガス等の不活性ガスを冷媒とし、常圧あ
るいは例えば３〜７kgf/cm2 程度の加圧雰囲気中で冷却
速度を５〜２０℃／分に制御して冷却するとよい。一
方、焼き戻し処理は、約５００〜６００℃に加熱保持し
た後、冷却する操作を、１回乃至数回実施すればよい。
かかる熱処理により、マトリックスがマルテンサイトも
しくはベイナイト又はこれらの相を主相とし、これに少
量の残留オーステナイトが混在する組織となり、該マト
リックス中に微細な炭化物、窒化物が分散析出した金属
組織となる。析出物は、面積率で約２０〜４５％を占
め、一般の溶製材における炭化物量が約１０〜１５％で
あるのに比して豊富であり、かつ均一に分布している。
【００１９】尚、高速度鋼系合金粉末の接合一体化につ
いては、前記ＨＩＰ処理に限らず、熱間一軸加圧焼結、
固液共存温度域での加圧成形、その他、熱間押出や熱間
鍛造等の熱間塑性加工を適用することができる。ＨＩＰ
処理の場合、合金粉末の焼結と焼結した粉末合金の基材
への接合が一工程で行われる利点がある。勿論、合金粉
末のみを適宜の熱間加工により接合一体化した後、この
粉末合金を基材にＨＩＰ等により接合し、複合一体化す
ることもできる。
いては、前記ＨＩＰ処理に限らず、熱間一軸加圧焼結、
固液共存温度域での加圧成形、その他、熱間押出や熱間
鍛造等の熱間塑性加工を適用することができる。ＨＩＰ
処理の場合、合金粉末の焼結と焼結した粉末合金の基材
への接合が一工程で行われる利点がある。勿論、合金粉
末のみを適宜の熱間加工により接合一体化した後、この
粉末合金を基材にＨＩＰ等により接合し、複合一体化す
ることもできる。
【００２０】本発明の高速度鋼系粉末合金は、耐摩耗
性、耐肌荒性のみならず優れた摺動性を有するため、従
来の高速度鋼を使用していた各種部材、例えば圧延用ロ
ールや金型に使用することにより、長寿命化が図られ、
また被加工物の品質改善に大きな効果が得られる。ま
た、加工部材のほか、軸受やシリンダー等の構造部材や
その表面ライニング材としても有用である。
性、耐肌荒性のみならず優れた摺動性を有するため、従
来の高速度鋼を使用していた各種部材、例えば圧延用ロ
ールや金型に使用することにより、長寿命化が図られ、
また被加工物の品質改善に大きな効果が得られる。ま
た、加工部材のほか、軸受やシリンダー等の構造部材や
その表面ライニング材としても有用である。
【００２１】次に本発明の具体的実施例を掲げる。表１
に示した化学組成（wt％）の高速度鋼系合金粉末（平均
粒径２００μm ）を原料粉末として、ＨＩＰ処理により
該粉末を焼結して粉末合金を得た。次いで、該粉末合金
に焼き入れ、焼き戻し熱処理を施して試料（供試材）を
製作した。ＨＩＰ処理条件は、温度：１１５０℃、加圧
力：１０００kgf/cm2 、保持時間：３ｈｒとした。ま
た、焼き入れ処理は、真空焼き入れ炉内で１２００℃に
１ｈｒ保持後、Ｎ2 ガス（常温、常圧）を導入し、ガス
冷却することにより実施した。一方、焼き戻し処理は、
５４０℃に５ｈｒ保持して放冷するヒートパタンを３回
繰り返した。
に示した化学組成（wt％）の高速度鋼系合金粉末（平均
粒径２００μm ）を原料粉末として、ＨＩＰ処理により
該粉末を焼結して粉末合金を得た。次いで、該粉末合金
に焼き入れ、焼き戻し熱処理を施して試料（供試材）を
製作した。ＨＩＰ処理条件は、温度：１１５０℃、加圧
力：１０００kgf/cm2 、保持時間：３ｈｒとした。ま
た、焼き入れ処理は、真空焼き入れ炉内で１２００℃に
１ｈｒ保持後、Ｎ2 ガス（常温、常圧）を導入し、ガス
冷却することにより実施した。一方、焼き戻し処理は、
５４０℃に５ｈｒ保持して放冷するヒートパタンを３回
繰り返した。
【００２２】
【表１】
【００２３】このようにして製作された試料合金を用い
て、硬度（ＨR Ｃ）を測定すると共に、下記の要領によ
り摩耗試験、曲げ試験、摺動試験及び靱性値を簡便に知
るための切り欠き曲げ試験を行った。その結果を表２に
示す。 (1) 摩耗試験 大越式摩耗試験により比摩耗量ＷS （mm2/kgf ）を測定
した。試験条件は、回転輪材質：ＳＵＪ２（ＨR Ｃ６
０）、摩耗速度：３．４ｍ／ｓ、摩耗距離：２００ｍ、
最終荷重：１８．６ｋｇｆとした。 (2) 曲げ試験 三点曲げ法により曲げ強さ（kgf/cm2 ）を測定した。試
験片サイズは３×４×５０mmで、スパン（支持間距離）
は３０mmとした。 (3) 摺動試験 横型ピンオンディスク摩耗方式の高圧摩耗試験機によ
り、段階的に荷重を変化させ、焼き付き発生時の面圧を
求めた。面圧の測定は、相手材をＳＳ４００として、接
触部に油温８０℃のモーターオイルNo. ３０を４００ｍ
ｌ／分で供給して行った。試験条件は、滑り速度：１．
７ｍ／ｓ、接触荷重：初期面圧５kgf/cm2で５kgf/cm2
毎増加、摩擦時間：各荷重につき３分とした。 (4) 切り欠き曲げ試験 疲労予亀裂を発生させず、機械的に入れた予亀裂のみで
三点曲げ試験を行い、便宜的に靱性値を求めた。試験片
サイズは１０×２０×１００mmで、機械的に入れた溝深
さは１０mmであり、スパンは８０mmとした。
て、硬度（ＨR Ｃ）を測定すると共に、下記の要領によ
り摩耗試験、曲げ試験、摺動試験及び靱性値を簡便に知
るための切り欠き曲げ試験を行った。その結果を表２に
示す。 (1) 摩耗試験 大越式摩耗試験により比摩耗量ＷS （mm2/kgf ）を測定
した。試験条件は、回転輪材質：ＳＵＪ２（ＨR Ｃ６
０）、摩耗速度：３．４ｍ／ｓ、摩耗距離：２００ｍ、
最終荷重：１８．６ｋｇｆとした。 (2) 曲げ試験 三点曲げ法により曲げ強さ（kgf/cm2 ）を測定した。試
験片サイズは３×４×５０mmで、スパン（支持間距離）
は３０mmとした。 (3) 摺動試験 横型ピンオンディスク摩耗方式の高圧摩耗試験機によ
り、段階的に荷重を変化させ、焼き付き発生時の面圧を
求めた。面圧の測定は、相手材をＳＳ４００として、接
触部に油温８０℃のモーターオイルNo. ３０を４００ｍ
ｌ／分で供給して行った。試験条件は、滑り速度：１．
７ｍ／ｓ、接触荷重：初期面圧５kgf/cm2で５kgf/cm2
毎増加、摩擦時間：各荷重につき３分とした。 (4) 切り欠き曲げ試験 疲労予亀裂を発生させず、機械的に入れた予亀裂のみで
三点曲げ試験を行い、便宜的に靱性値を求めた。試験片
サイズは１０×２０×１００mmで、機械的に入れた溝深
さは１０mmであり、スパンは８０mmとした。
【００２４】
【表２】
【００２５】表２より、Ｎ、Ｎｉを除いて同成分系のも
のにつき、実施例と従来例（No. １と１０１、No. ６と
１０２、No. １０と１０４、No. １１と１０５）を比較
すると、実施例は従来例に比して、耐摩耗性が良好で、
しかも摺動性に著しく優れることが分かる。また曲げ強
さについても、Ｃ含有量が３％以下では実施例は従来例
を概ね上回っており、靱性値についてはＣ含有量の全範
囲に亘って、従来例と略同等であることが分かる。一
方、実施例のNo. ８と比較例のNo. １０３とを比較した
場合、比較例ではＮの含有量が過剰であるため、曲げ強
さの低下のみならず、靱性値の低下が特に著しい。
のにつき、実施例と従来例（No. １と１０１、No. ６と
１０２、No. １０と１０４、No. １１と１０５）を比較
すると、実施例は従来例に比して、耐摩耗性が良好で、
しかも摺動性に著しく優れることが分かる。また曲げ強
さについても、Ｃ含有量が３％以下では実施例は従来例
を概ね上回っており、靱性値についてはＣ含有量の全範
囲に亘って、従来例と略同等であることが分かる。一
方、実施例のNo. ８と比較例のNo. １０３とを比較した
場合、比較例ではＮの含有量が過剰であるため、曲げ強
さの低下のみならず、靱性値の低下が特に著しい。
【００２６】
【発明の効果】本発明の高速度鋼系粉末合金は、硬質基
地や高硬度炭化物の生成により良好な耐摩耗性及び耐肌
荒性を確保すると共に、Ｎが０．０５〜０．５％含有し
ているので、これによって基地中に窒化物を分散生成さ
せることができ、耐摩耗性の向上を図ると共に優れた摺
動性を具備させることができた。
地や高硬度炭化物の生成により良好な耐摩耗性及び耐肌
荒性を確保すると共に、Ｎが０．０５〜０．５％含有し
ているので、これによって基地中に窒化物を分散生成さ
せることができ、耐摩耗性の向上を図ると共に優れた摺
動性を具備させることができた。
Claims (2)
- 【請求項１】 化学組成が重量％で、 Ｃ ：１．５〜３．５％、 Ｓｉ：０．６％以下、 Ｍｎ：０．６％以下、 Ｃｒ：０．５〜２５
％、 ２Ｍｏ＋Ｗ：１．５〜４５％、 Ｎｉ：３．０％以下、 Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：総計で０．５〜
１２．０％、 Ｎ ：０．０５〜０．５％、及び残部実質的にＦｅから
なる高速度鋼系粉末合金。 - 【請求項２】 化学組成が重量％で、 Ｃ ：１．５〜３．５％、 Ｓｉ：０．６％以下、 Ｍｎ：０．６％以下、 Ｃｒ：０．５〜２５
％、 ２Ｍｏ＋Ｗ：１．５〜４５％、 Ｎｉ：３．０％以下、 Ｖ，Ｔｉ，Ｎｂ，Ｔａの内の１種以上：総計で０．５〜
１２．０％、 Ｎ ：０．０５〜０．５％、 Ｃｏ：７．０〜２０
％、及び残部実質的にＦｅからなる高速度鋼系粉末合
金。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP31223193A JPH07166300A (ja) | 1993-12-13 | 1993-12-13 | 高速度鋼系粉末合金 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP31223193A JPH07166300A (ja) | 1993-12-13 | 1993-12-13 | 高速度鋼系粉末合金 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07166300A true JPH07166300A (ja) | 1995-06-27 |
Family
ID=18026761
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP31223193A Pending JPH07166300A (ja) | 1993-12-13 | 1993-12-13 | 高速度鋼系粉末合金 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH07166300A (ja) |
Cited By (7)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US6358298B1 (en) | 1999-07-30 | 2002-03-19 | Quebec Metal Powders Limited | Iron-graphite composite powders and sintered articles produced therefrom |
| WO2006117186A2 (de) * | 2005-04-29 | 2006-11-09 | Köppern Entwicklungs Gmbh | Pulvermetallurgisch hergestellter, verschleissbeständiger werkstoff |
| JP2010504433A (ja) * | 2006-09-22 | 2010-02-12 | ホガナス アクチボラゲット | 冶金粉末組成物及び生成方法 |
| US20120107170A1 (en) * | 2010-11-03 | 2012-05-03 | Kuen-Shyang Hwang | Alloy steel powder and their sintered body |
| CN104651746A (zh) * | 2013-11-18 | 2015-05-27 | 铜陵市大明玛钢有限责任公司 | 一种合金铸钢轧辊 |
| WO2016184008A1 (zh) * | 2015-05-15 | 2016-11-24 | 安泰科技股份有限公司 | 粉末冶金耐磨损耐腐蚀合金 |
| CN116837271A (zh) * | 2021-11-29 | 2023-10-03 | 河冶科技股份有限公司 | 喷射成形耐磨双强化相沉淀硬化高速钢 |
-
1993
- 1993-12-13 JP JP31223193A patent/JPH07166300A/ja active Pending
Cited By (11)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US6358298B1 (en) | 1999-07-30 | 2002-03-19 | Quebec Metal Powders Limited | Iron-graphite composite powders and sintered articles produced therefrom |
| WO2006117186A2 (de) * | 2005-04-29 | 2006-11-09 | Köppern Entwicklungs Gmbh | Pulvermetallurgisch hergestellter, verschleissbeständiger werkstoff |
| WO2006117030A1 (de) * | 2005-04-29 | 2006-11-09 | Koeppern Entwicklungs Gmbh | Pulvermetallurgisch hergestellter, verschleissbeständiger werkstoff |
| WO2006117186A3 (de) * | 2005-04-29 | 2007-02-01 | Koeppern Entwicklungs Gmbh & C | Pulvermetallurgisch hergestellter, verschleissbeständiger werkstoff |
| US9410230B2 (en) | 2005-04-29 | 2016-08-09 | Koppern Entwicklungs Gmbh & Co. Kg | Powder-metallurgically produced, wear-resistant material |
| JP2010504433A (ja) * | 2006-09-22 | 2010-02-12 | ホガナス アクチボラゲット | 冶金粉末組成物及び生成方法 |
| US20120107170A1 (en) * | 2010-11-03 | 2012-05-03 | Kuen-Shyang Hwang | Alloy steel powder and their sintered body |
| CN104651746A (zh) * | 2013-11-18 | 2015-05-27 | 铜陵市大明玛钢有限责任公司 | 一种合金铸钢轧辊 |
| WO2016184008A1 (zh) * | 2015-05-15 | 2016-11-24 | 安泰科技股份有限公司 | 粉末冶金耐磨损耐腐蚀合金 |
| CN116837271A (zh) * | 2021-11-29 | 2023-10-03 | 河冶科技股份有限公司 | 喷射成形耐磨双强化相沉淀硬化高速钢 |
| CN116837271B (zh) * | 2021-11-29 | 2024-07-12 | 河冶科技股份有限公司 | 喷射成形耐磨双强化相沉淀硬化高速钢 |
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