JP2001294488A - C/c材からなる成形体の製造方法 - Google Patents

C/c材からなる成形体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 C/C材からなる円筒形状やルツボ形状など
の成形体を簡便な方法により作製する製造方法を提供す
る。 【解決手段】 下記の操作を順次に行うC/C材からな
る成形体の製造方法。 (1)炭素繊維クロスに熱硬化性樹脂を含浸、半硬化した
プリプレグシートを所望形状の成形型の表面に貼着して
所定の厚さに積層し、(2)プリプレグシート積層体を樹
脂吸収シートを介して弾性体で被包した後、減圧脱気し
て温間静水圧装置にセットし、(3)温間静水圧装置によ
り30〜600MPaの圧力で等方的に加圧しながら、
40〜70℃の温度に加熱し、含浸した熱硬化性樹脂を
軟化してプリプレグシート積層体内に浸透させ、(4)次
いで、90〜150℃の温度に加熱してプリプレグシー
ト積層体を予備硬化した後、除圧して予備硬化成形体を
成形型から取り外し、(5)予備硬化成形体を常法により
加熱硬化したのち、非酸化性雰囲気下で800〜280
0℃の温度に加熱して焼成炭化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、C/C材(炭素繊
維強化炭素複合材)からなる円筒形状やルツボ形状など
の成形体、例えばCZ法(チョクラルスキー法)による
半導体製造時に用いられる炭素ルツボ、金属の溶解や熱
処理時に用いられる炭素容器などのC/C材からなる成
形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】C/C材は、高い比強度、比弾性率を有
する炭素繊維の複合化により優れた強度特性を備え、ま
た耐熱性や化学的安定性なども優れているところから、
CZ法による単結晶引き上げ用のルツボ、ヒータなどの
半導体製造用の各種部材をはじめ航空・宇宙機用の構造
部材や高温用部材など高温苛酷な条件下で使用される広
い用途分野で有用されている。
【0003】このC/C材を製造する代表的な技術とし
ては、(1) マトリックスとなる熱硬化性樹脂液を含浸し
た炭素繊維の織布を積層し、プレスなどで所定形状に圧
縮成形したのちプリプレグ成形体を非酸化性雰囲気下で
焼成炭化する方法、(2) 熱硬化性樹脂液を含浸した炭素
繊維のトウをフィラメントワインディング法で所定形状
に成形し、このプリプレグ成形体を同様に焼成炭化する
方法、などが知られている。
【0004】これらの方法により中空円筒形状やルツボ
形状などの容器状成形体を作製することは必ずしも容易
ではないが、例えば特開平2−307816号公報には
炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸または塗布して形成した
プリプレグを成形型内に引張りながら積層して貼りつ
け、1〜30kg/cm2に加圧した状態で50〜100℃の
温度に加熱硬化して容器状に成形し、成形型から離型後
さらに150〜300℃の範囲で硬化処理したのち非酸
化性雰囲気中で焼成することを特徴とする炭素容器の製
造方法が開示されている。
【0005】また、特開平9−263482号公報には
C/C材のシリコン単結晶引き上げ用ルツボであって、
ルツボ内側を炭素繊維クロス積層体または炭素繊維フェ
ルト積層体を用いたC/C材とし、ルツボ外側をフィラ
メントワインディング法により成形したC/C材で構成
した二層よりなるシリコン単結晶引き上げ用炭素繊維強
化炭素ルツボが開示されている。
【0006】更に、特開平10−130067号公報に
は炭素繊維強化炭素複合材料を全部または一部に含んで
形成される単結晶引き上げ用ルツボの製造方法であっ
て、短炭素繊維を樹脂を含んでなる溶液中に分散させ前
記短炭素繊維を含む混合液を得る工程と、前記混合液を
ルツボの形状からなる型に被せて液体成分を除去するこ
とにより前記短炭素繊維からなるルツボの形状体を得る
工程と、前記ルツボの形状体を熱圧処理することによ
り、炭素繊維強化複合材料のルツボの成形体を得る工程
と、前記ルツボの成形体を炭化および緻密化する工程と
を含んでなる単結晶引き上げ用ルツボの製造方法が開示
されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法によりC/C材からなるルツボなどの容器状成形
体を作製する場合、C/C材の高密度化や高強度化を図
るためには硬化成形時に圧力を充分に付加してプリフォ
ームの嵩密度を高くする必要があるため成形体組織に方
向性が生じ易い欠点がある。また加圧下に焼成炭化、黒
鉛化する場合にはホットプレスなどの高価な装置が必要
となる難点もある。
【0008】そこで発明者は、上記の問題点を解消する
ために鋭意研究を行った結果、硬化成形を等方的に加圧
しながら行うことにより嵩密度が高い成形体を得ること
ができ、最終的に緻密化工程を省略化し、もしくは緻密
化回数を少なくすることが可能となることを見出した。
すなわち、本発明はこの知見に基づいて完成したもの
で、その目的はルツボや容器などの形状を有するC/C
材からなる成形体を簡便な方法により製造する方法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明のC/C材からなる成形体の製造方法は、下記
の操作を順次に行うことを構成上の特徴とする。 (1)炭素繊維クロスに熱硬化性樹脂を含浸、半硬化した
プリプレグシートを所望形状の成形型の表面に貼着して
所定の厚さに積層し、(2)プリプレグシート積層体を樹
脂吸収シートを介して弾性体で被包した後、減圧脱気し
て温間静水圧装置にセットし、(3)温間静水圧装置によ
り30〜600MPaの圧力で等方的に加圧しながら、
40〜70℃の温度に加熱し、含浸した熱硬化性樹脂を
軟化してプリプレグシート積層体内に浸透させ、(4)次
いで、90〜150℃の温度に加熱してプリプレグシー
ト積層体を予備硬化した後、除圧して予備硬化成形体を
成形型から取り外し、(5)予備硬化成形体を常法により
加熱硬化したのち、非酸化性雰囲気下で800〜280
0℃の温度に加熱して焼成炭化する。
【0010】
【発明の実施の形態】炭素繊維としてはポリアクリロニ
トリル系、レーヨン系、ピッチ系などの各種原料から製
造されたものが用いられ、これらの炭素繊維を平織り、
綾織り、朱子織りなどの織物としたクロスが使用され
る。熱硬化性樹脂にはフェノール系やフラン系など常用
の液状樹脂が用いられ、C/C材の強度を高位に保持さ
せるために残炭率50%以上のものが好ましく用いられ
る。
【0011】炭素繊維クロスに熱硬化性樹脂を含浸する
方法は、熱硬化性樹脂初期縮合物を炭素繊維クロスに塗
布する、あるいは熱硬化性樹脂初期縮合物中に炭素繊維
クロスを浸漬する、など公知の方法により行われ、次い
で50〜80℃の温度に加熱して、含浸した熱硬化性樹
脂を半硬化してプリプレグシートが作製される。
【0012】以下、本発明の製造方法を、等方加圧成形
によりプリプレグシート積層体を予備硬化する方法を例
示した図1に基づいて説明する。図1において、1はプ
リプレグシート積層体、2は成形型、3は離型材、4は
樹脂吸収シート、5はシール用の弾性体である。
【0013】プリプレグシート積層体1は、例えばルツ
ボなどの容器形状に合わせて作製した成形型2の表面に
プリプレグシートを貼着し、所定の厚さに積層すること
により作製される。この場合、プリプレグシートは成形
型2の表面に貼着するのに適した形状に裁断することが
好ましく、例えば容器直胴部1Aには長方形状に、容器
底部1Bにはマイラー形状に裁断したプリプレグシート
を貼着、積層することが好ましい。なお、成形型2には
加圧成形時に変形しない剛性ならびに耐熱性を有する
鉄、ステンレスなどの金属材や黒鉛材などが好適に用い
られる。
【0014】また、プリプレグシート積層体1の両面に
は、予備硬化後の離型時に容易に離型、型抜きができる
ように離型材3を介在させることが好ましい。離型材3
には離型紙、離型フィルムなどが用いられ、プリプレグ
シート積層体1の両面に離型材を張着することにより介
在させることができる。なお、プリプレグシート積層体
1の予備硬化時に滲出する樹脂分は、適宜な不織布から
なる樹脂吸収シート4により吸収され、系外への流出が
防止される。
【0015】このようにして、プリプレグシート1を成
形型2の表面に貼着した後、全体をシールするために弾
性体5で被包する。弾性体5には、耐熱性および耐蝕性
を有し、圧力を伝達し得る各種のゴム、例えばブチルゴ
ムやシリコンゴムなどが好適に用いられ、例えばこれら
のゴム製の袋内に入れることにより被包される。次い
で、ゴム製の袋内に空気が残存すると加圧時にプリプレ
グシート積層体に充分な圧力が伝搬しないため、減圧脱
気を行う。減圧度は1.3KPa以下、好ましくは13
0Pa以下に設定する。
【0016】次いで、ゴム製の袋内に被包されたプリプ
レグシート積層体1を圧力媒体として油を用いて、温間
静水圧装置により30〜600MPaの圧力で等方的に
加圧しながら、40〜70℃の温度に加熱することによ
り、含浸した熱硬化性樹脂を軟化させてプリプレグシー
ト積層体中に充分浸透させるとともに、余剰の樹脂を樹
脂吸収シート4により吸収させる。プリプレグシート積
層体への熱硬化性樹脂の浸透が不充分であるとプリプレ
グシート間の密着性が弱く、結果的にC/C材の強度が
低下することとなる。
【0017】その後、30〜600MPaの加圧状態を
維持しながら90〜150℃の温度に加熱し、この熱圧
条件でプリプレグシート積層体1を予備硬化する。圧力
が30MPa未満では成形圧力が低いために予備硬化し
た成形体の緻密性が低く、更に積層体層間の密着性も低
くなる。一方、600MPaを越えるとプリプレグ積層
体に保持される樹脂量が減少し、炭素繊維の体積含有率
(Vf)が高くなり、以後の焼成炭化時に剥離が発生す
る原因となる。なお、加熱温度は通常の熱硬化性樹脂が
予備硬化する温度範囲である90〜150℃の範囲に設
定する。
【0018】このようにしてプリプレグシート積層体
は、温間静水圧装置により等方的に高圧下に加圧成形さ
れるので、その予備硬化成形体には内在する気孔が極め
て少なく、緻密で均質な組織構造が付与される。
【0019】得られた予備硬化成形体は、除圧したの
ち、温間静水圧装置より取り出し、成形型から取り外し
て離型する。その後、常法に従い150〜300℃の温
度に加熱して完全に硬化し、次いで窒素ガス、アルゴン
ガスなどの非酸化性雰囲気下で800〜2800℃の温
度に加熱して樹脂成分を焼成炭化することにより、ルツ
ボや容器などの形状を有するC/C材からなる成形体を
簡便な方法により製造することが可能となる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。
【0021】実施例1〜3、比較例1〜4 ポリアクリロニトリル系高強度タイプの炭素繊維クロス
〔東邦レーヨン(株)製、W6101〕にフェノール樹
脂初期縮合物〔大日本インキ化学(株)製、プライオー
フェン5900〕を充分に塗布し、80℃で1時間乾燥
してプリプレグシートを作製した。図1の成形型2に示
した形状の黒鉛製成形型(外径300mm、高さ200m
m)を用い、成形型2の表面に多数の細孔を有する離型
紙3を張着して、その上にプリプレグシートを貼着して
16層積層して、プリプレグシート積層体1を形成し
た。なお、プリプレグシートは成形型2の直胴部は長方
形、底部はマイラー形状に裁断して貼着した。プリプレ
グシート積層体1の表面に多数の細孔を有する離型紙3
を張着し、その上に樹脂吸収用の不織布を介在させて、
全体をシリコンゴム製のゴム袋に入れて被包した。
【0022】このプリプレグシート積層体を被包したゴ
ム袋内部を0.65KPaの減圧下に脱気した後、温間
静水圧装置にセットし、異なる圧力、温度条件下に熱硬
化性樹脂を軟化させてプリプレグシート積層体内に浸透
させた後、加熱してプリプレグシート積層体1を予備硬
化した。予備硬化成形体を離型後、250℃に加熱して
完全に硬化し、次いで窒素雰囲気に保持した焼成炉に入
れて10℃/hrの昇温速度で1000℃に加熱し、5時
間保持して焼成炭化した。更に、20℃/hrの昇温速度
で2000℃に加熱して焼成炭化した。このようにして
内径300mm、高さ204mm、厚さ4mmのルツボ状の炭
素容器を製造した。これらの熱圧処理条件を表1に示し
た。
【0023】
【表1】
【0024】このようにして製造したC/C材からなる
炭素容器の内面ならびに外面を観察し、またサンプルを
切り出して炭素繊維の体積含有率(Vf)、嵩比重、曲
げ強度(JIS K7074) 、層間剪断強度(JIS K7078) を測定
し、得られた結果を表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】表1、2より本発明の製造方法により製造
したC/C材からなる成形体は、炭素繊維の体積含有率
(Vf)を60〜73 Vol%に制御することが可能とな
り、以後の焼成炭化工程で剥離などを生じることがな
い。また、得られた成形体の嵩比重も比較的に高く、再
緻密化処理を実施しなくとも、高い強度を有することが
判る。
【0027】
【発明の効果】以上のとおり、本発明のC/C材からな
る成形体の製造方法によれば、簡便な方法により円筒形
状やルツボ形状などの容器形状を有し、組織が緻密で機
械的強度にも優れたC/C材からなる成形体を製造する
ことが可能である。したがって例えば、CZ法に用いら
れる炭素ルツボや金属溶解用などの熱処理容器に用いら
れるC/C材からなる成形体の製造方法として有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】等方加圧成形によりプリプレグシート積層体を
予備硬化する方法を例示した模式図である。
【符号の説明】 1 プリプレグシート積層体 2 成形型 3 離型材 4 樹脂吸収シート 5 弾性体

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の操作を順次に行うことを特徴とす
    るC/C材からなる成形体の製造方法。 (1)炭素繊維クロスに熱硬化性樹脂を含浸、半硬化した
    プリプレグシートを所望形状の成形型の表面に貼着して
    所定の厚さに積層し、(2)プリプレグシート積層体を樹
    脂吸収シートを介して弾性体で被包した後、減圧脱気し
    て温間静水圧装置にセットし、(3)温間静水圧装置によ
    り30〜600MPaの圧力で等方的に加圧しながら、
    40〜70℃の温度に加熱し、含浸した熱硬化性樹脂を
    軟化してプリプレグシート積層体内に浸透させ、(4)次
    いで、90〜150℃の温度に加熱してプリプレグシー
    ト積層体を予備硬化した後、除圧して予備硬化成形体を
    成形型から取り外し、(5)予備硬化成形体を常法により
    加熱硬化したのち、非酸化性雰囲気下で800〜280
    0℃の温度に加熱して焼成炭化する。
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