JP2001278854A - 硫酸化中和物の製法 - Google Patents

硫酸化中和物の製法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】安全、かつ簡便に低コストで色相良好な硫酸化
中和物の製法を提供すること。 【解決手段】例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエ
ーテル硫酸エステルの様な硫酸化物を炭酸イオン及び/
又は炭酸水素イオンを存在させてアルカリ剤で中和させ
る硫酸化中和物の製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、色相が良好な硫酸
化中和物の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】脂肪族アルコール硫酸エステル、ポリオ
キシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルキ
ルベンゼンスルホン酸等の中和塩は、食器用洗剤、シャ
ンプー、衣料用洗剤等の主活性剤として広く利用されて
いる。しかし、従来の硫酸化反応・中和技術で得られる
これらの中和物は淡黄色から黄色を呈しており、商品価
値を向上させるために色相の改善が望まれている。
【0003】一般に、色相良好な硫酸化中和物の製造の
際には、中和時又は中和後に漂白処理が行われている。
このような漂白処理に用いられる漂白剤は、塩素系及び
酸素系に大別され、塩素系漂白剤として次亜塩素酸塩
(ナトリウム塩、カリウム塩等)、酸素系漂白剤として
過酸化水素が主に使用されている。
【0004】漂白効果の観点からは次亜塩素酸塩を用い
る方が良いが、次亜塩素酸塩処理したポリオキシアルキ
レンアルキルエーテル硫酸化中和物は、皮膚感作性が指
摘され、工業会の自主規制により次亜塩素酸塩による漂
白は控えられている。
【0005】また、過酸化水素は漂白効果が低く、色相
改善のためには多量の過酸化水素を使用する必要があ
る。しかし、製品中に過酸化水素が残存する可能性があ
り、残存した過酸化水素が多いと硫酸化中和物を配合し
た製品の色素まで退色させ、製品価値を損ねる恐れがあ
る。他に、色相良好な硫酸化中和物の製法として、特公
昭60−51520号公報には、硫酸化中和物水溶液
に、過酸化水素又は過酸化水素発生物質と、無水コハク
酸又は無水安息香酸を作用させる方法が記載されてい
る。しかし、この方法では過酸化物が残存し、漂白処理
後に熱による分解又は亜硫酸塩等で残存する過酸化物を
除去する必要がある。
【0006】また、特開平11−172280号公報に
は、還元性物質(二酸化硫黄、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)
と酸化性物質(過酸化水素)をそれぞれ少量組み合わせ
ることにより、色相良好な硫酸化中和物を製造する方法
が開示されている。しかし、この方法は二種類の還元性
と酸化性物質を別々に用いるため、製造工程が長くなり
煩雑となる欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明はこの
ような問題点に着目してなされたものであり、本発明の
課題は、安全、かつ簡便に低コストで色相良好な硫酸化
中和物の製法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、硫酸化
物を炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを存在させて
アルカリ剤で中和させる硫酸化中和物の製法に関するも
のである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる硫酸化物は、
硫酸エステルとスルホン化物とを含む。硫酸化物の具体
例としては、脂肪族アルコール硫酸エステル、ポリオキ
シアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、アルキル
ベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、α−
スルホ脂肪酸アルキルエステルスルホン酸等が挙げられ
る。好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル
硫酸エステルである。これら硫酸化物は二種以上併用し
ても良い。
【0010】ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫
酸エステルとしては、次式: RO−(AO)n −H (式中、Rは炭素数8〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキ
ル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。
nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す0〜
20の数である。n個のAは同一でも異なっていてもよ
い。)で表わされる化合物を常法で硫酸化したものであ
る。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステ
ルは特に色相の改善効果が顕著なので、有用なものとし
て用いられる。
【0011】アルカリ剤としては、アルカリ金属水酸化
物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸
化リチウム)、アルカリ土類金属酸化物及び水酸化物
(例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化
カルシウム及び水酸化カルシウム)、アルカリ金属の炭
酸塩及び炭酸水素塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素
ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム)、アン
モニア、アルキル鎖の炭素数が2〜4の、モノ−、ジ−
及びトリ−アルカノールアミン(例えばモノ−、ジ−及
びトリエタノールアミン)、並びにアルキル鎖の炭素数
が2〜4の、1級、2級又は3級アルキルアミン等が挙
げられる。コスト及び入手の容易さから、水酸化ナトリ
ウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニ
ア、トリエタノールアミンが好ましい。さらに、溶解性
の観点から水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、二
種類以上の上記アルカリ剤を組み合わせても良い。
【0012】アルカリ剤の濃度は、硫酸化中和物の製品
形態に合わせた濃度であれば良く、何ら制約を受けるも
のではない。また、水溶液や低級アルコールの溶液であ
っても何ら問題ない。アルカリ剤の添加量としては、得
られる硫酸化中和物のpHが5.0〜13になる量が好
ましく、中でも炭酸水素イオンの場合は5〜8、より好
ましくは6〜7であり、炭酸イオンの場合は8〜13、
より好ましくは9〜12である。
【0013】硫酸化物をアルカリ剤で中和させる工程
で、炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを中和反応系
に存在させる具体的な手段としては、例えば、炭酸イオ
ン及び/又は炭酸水素イオンを生じさせる成分を中和反
応系へ供給するという手段が挙げられる。かかる成分の
供給は、アルカリ剤と同時でも良く、アルカリ剤とは別
でも良い。後者の場合はアルカリ剤の後に供給する方が
良い。
【0014】炭酸イオンを生じさせる成分としては、炭
酸ガス及び炭酸塩が挙げられる。炭酸水素イオンを生じ
させる成分としては炭酸ガス及び炭酸水素塩が挙げられ
る。炭酸ガス、炭酸塩及び炭酸水素塩は一種を単独で用
いても良く、二種以上を併用しても良い。炭酸塩、炭酸
水素塩としては、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素
塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸
カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。コスト及
び溶解性の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリ
ウムが好ましい。アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩は
アルカリ剤としても使用できる。アルカリ剤としてアル
カリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩を用いる場合、それ以外
のアルカリ剤を使用しなくても良い。
【0015】炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを生
じさせる成分の濃度は、硫酸化中和物の製品形態に合わ
せた濃度であれば良く、何ら制約を受けるものではな
い。また、水溶液や低級アルコールの溶液であっても何
ら問題ない。炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを生
じさせる成分の量は、アルカリ剤とのバランスもある
が、硫酸化物1当量に対して0.03当量以上が好まし
く、0.1当量以上がより好ましく、0.2当量以上が
特に好ましい。所望の効果を発揮させるために、かかる
成分の量は0.03当量以上が好ましい。また、かかる
成分の量が多すぎても、効果の点からは問題がないもの
の、コストアップを抑制する観点から、炭酸イオン及び
/又は炭酸水素イオンを生じさせる成分の量は硫酸化物
1当量に対して2当量以下が好ましく、1.5当量以下
がより好ましく、1.2当量以下が特に好ましい。
【0016】炭酸塩又は炭酸水素塩が製品に残存して
も、製品の安全性には問題はなく、pH緩衝剤としての
効果も期待できる。また、炭酸塩又は炭酸水素塩が製品
に残存することを回避したい場合は、製品を酸性雰囲気
にすれば良い。これにより炭酸塩又は炭酸水素塩を分解
し、炭酸ガスと無機塩にすることができる。
【0017】炭酸イオンを生じさせる成分として炭酸ガ
スを用いる場合、中和反応系に炭酸ガスを直接供給する
ことになる。炭酸ガスを供給する方法としては、炭酸ガ
スボンベや炭酸ガスホルダー(ガス用タンク)から供給
する方法、或いはドライアイスの昇華による手法、常用
の手段(配管、流量計等)により中和反応系に供給する
方法が挙げられる。
【0018】本発明の方法は、硫酸化物とアルカリ剤と
を接触させ、混合して中和反応を行うことにより硫酸化
中和物を合成する方法に適用される。なお、硫酸化と
は、硫酸エステル化及びスルホン化を総括し、硫酸化中
和物とは、硫酸エステル中和物及びスルホン酸中和物を
示す。
【0019】中和の具体的な方法としては、特に限定さ
れるものではない。例えば、攪拌機の具備した中和反応
槽にアルカリ剤を予め仕込んでおき、そこへ硫酸化物を
仕込んでいく方法や、特開平2−218656号公報に
見られるように、ループ状の中和反応設備内で硫酸化中
和物を循環させながら、中和反応設備内へ硫酸化物とア
ルカリ剤を定量的に供給し、ラインミキサー等で攪拌機
で混合すると共に、定量的に抜き出す方法が取られる。
【0020】本発明の方法では、中和が行われている反
応場、即ち、中和反応系に、炭酸イオン及び/又は炭酸
水素イオンを生じさせる成分を同時に供給する。具体的
には、炭酸ガスを用いる場合、スパージャ等の設備を用
いて、中和反応槽の液内部へ炭酸ガスを吹き込む方法が
ある。これにより、液中に炭酸ガスが溶解し、炭酸イオ
ン及び/又は炭酸水素イオンが形成される。また炭酸塩
及び/又は炭酸水素塩を用いる場合、炭酸塩及び/又は
炭酸水素塩をアルカリ剤に溶解させたものを供給しても
良く、アルカリ剤と別途、供給しても良い。その結果、
溶解している炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンが中
和反応系に存在することとなる。そして、炭酸イオン及
び/又は炭酸水素イオンが中和反応系に存在することに
より、色相の良好な硫酸化中和物を得ることができる。
【0021】硫酸化物をアルカリ剤で中和させる工程
は、加圧下で行うことがより好ましい。中和反応系を加
圧下にすることにより、炭酸イオン濃度、炭酸水素イオ
ン濃度が増加し、効果が増大するためである。具体的な
加圧方法の例を次に示す。
【0022】1)硫酸化物をアルカリ剤で中和させる工
程において、さらにガスを供給して加圧する方法。ガス
としては、アルカリ剤及び硫酸化中和物に対して不活性
であるガスが好ましく、例えば、二酸化炭素、空気、酸
素、窒素等が挙げられ、好ましくは二酸化炭素である。 2)アルカリ剤として、中和時に気体を発生し得る物質
を用いて加圧する方法。かかるアルカリ剤としては、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭
酸水素カリウム等が挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウ
ムである。なお、両者の方法を併用しても何ら差し支え
はない。
【0023】
【実施例】実施例1 ホーロービーカー(容量3L)に、アルカリ剤として
1.78重量%の炭酸ナトリウム水溶液533gを仕込
んだ。ラウリルアルコール(カルコール2098:花王
(株)製)にエチレンオキサイドを付加させた。付加モ
ル数はアルコール1モル当たり2.5モルとした。得ら
れたエチレンオキサイド付加物を、三酸化硫黄ガスを用
いる常法により硫酸化し、硫酸化物を得た。常圧下で炭
酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら、52gの上記硫酸
化物を約30秒間かけてそれに定量的に添加した。さら
に約5分間攪拌を継続して中和反応を完結させて、硫酸
化中和物を合成した。次いで、攪拌を停止して静置し、
泡立ちが消えたのを確認した後、最終生成物について表
1に示す分析を行った。
【0024】実施例2 ホーロービーカー(容量3L)に、アルカリ剤として
1.78重量%の炭酸ナトリウム水溶液533gを仕込
んだ。ただし、ホーロービーカーの外側を氷水で冷却
し、炭酸ナトリウム水溶液の温度を下げた。次いで、実
施例1と同様の方法で硫酸化中和物を合成した。
【0025】比較例1、2 アルカリ剤として1.3重量%の水酸化ナトリウム水溶
液を用いる以外は、実施例1と同様の方法(比較例1)
及び実施例2と同様の方法(比較例2)で硫酸化中和物
を合成した。
【0026】
【表1】
【0027】実施例3 ホーロービーカー(容量3L)に、アルカリ剤として
1.78重量%の炭酸ナトリウム水溶液533gを仕込
んだ。ラウリルアルコール(カルコール2098:花王
(株)製)75重量%とミリスチルアルコール(カルコ
ール4098:花王(株)製)25重量%とからなる混
合アルコールに、常法によりエチレンオキサイドを付加
させた。付加モル数はアルコール1モル当たり2.0モ
ルとした。得られたエチレンオキサイド付加物を、三酸
化硫黄ガスを用いる常法により硫酸化し、硫酸化物を得
た。常圧下で炭酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら、5
2gの上記硫酸化物を約30秒間かけてそれに定量的に
添加した。さらに約5分間攪拌を継続して中和反応を完
結させて、硫酸化中和物を合成した。次いで、攪拌を停
止して静置し、泡立ちが消えたのを確認した後、最終生
成物について表2に示す分析を行った。
【0028】実施例4 ホーロービーカー(容量3L)に、アルカリ剤として
1.69重量%の炭酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウ
ム0.0007重量%を含有する水溶液533gを仕込
んだ。ここで、亜硫酸水素ナトリウムは脱色剤として添
加した。次いで、実施例3と同様の方法で硫酸化中和物
を合成した。
【0029】比較例3、4 アルカリ剤として1.3重量%の水酸化ナトリウム水溶
液を用いる以外は、実施例3と同様の方法(比較例3)
及び実施例4と同様の方法(比較例4)で硫酸化中和物
を合成した。
【0030】
【表2】
【0031】上記のように、中和工程で炭酸イオンを存
在させることにより、Klett No. がより小さな、即ち、
色相のより良好な最終生成物を得ることができた。
【0032】上記の各例において得られた最終生成物の
分析は、次のようにして行った。最終生成物中の硫酸化
中和物はISO 2271に準じた方法で定量した。p
H及び色相の評価は次のようにして行った。最終生成物
にイオン交換水を加え、硫酸化中和物が10重量%とな
る試料を調製した後、pHを測定した。さらに、この液
をリン酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整
し、色相評価用の試料とした。この試料について、10
mm幅のセルを用いて、波長420nmの条件下でその
Klett No.(10%クレット)を測定した。
【0033】
【発明の効果】本発明の製法により、色相の良好な硫酸
化中和物を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田端 修 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内 Fターム(参考) 4H003 AB31 CA16 DA01 DA02 DA17 4H006 AA02 AC60 AC90 BA02 BA32 BB31 BE10 BE11 BE12 BE13 BE14 BE41

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸化物を炭酸イオン及び/又は炭酸水
    素イオンを存在させてアルカリ剤で中和させる硫酸化中
    和物の製法。
  2. 【請求項2】 炭酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを
    生じさせる成分を中和反応系へ供給することにより、炭
    酸イオン及び/又は炭酸水素イオンを存在させる請求項
    1記載の製法。
  3. 【請求項3】 炭酸イオンを生じさせる成分が、炭酸ガ
    ス及び/又は炭酸塩である請求項1又は2記載の製法。
  4. 【請求項4】 炭酸水素イオンを生じさせる成分が、炭
    酸ガス及び/又は炭酸水素塩である請求項1又は2記載
    の製法。
  5. 【請求項5】 硫酸化物がポリオキシアルキレンアルキ
    ルエーテル硫酸エステルである請求項1〜4いずれか記
    載の製法。
  6. 【請求項6】 硫酸化物をアルカリ剤で中和させる工程
    を加圧下で行う請求項1〜5いずれか記載の製法。
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