JP2001276206A - 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤 - Google Patents

医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤

Info

Publication number
JP2001276206A
JP2001276206A JP2000094756A JP2000094756A JP2001276206A JP 2001276206 A JP2001276206 A JP 2001276206A JP 2000094756 A JP2000094756 A JP 2000094756A JP 2000094756 A JP2000094756 A JP 2000094756A JP 2001276206 A JP2001276206 A JP 2001276206A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
kneading
composition
water
acrylic
ceramic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000094756A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3422964B2 (ja
Inventor
Takafumi Mitsuishi
孝文 三石
Misao Iwata
美佐男 岩田
Hideki Nonokawa
秀樹 野々川
Keizo Shibata
敬三 柴田
Midori Takahashi
みどり 高橋
Kiyoko Saka
清子 坂
Tadao Sakakibara
肇男 榊原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Noritake Co Ltd
Original Assignee
Noritake Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Noritake Co Ltd filed Critical Noritake Co Ltd
Priority to JP2000094756A priority Critical patent/JP3422964B2/ja
Publication of JP2001276206A publication Critical patent/JP2001276206A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3422964B2 publication Critical patent/JP3422964B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Dental Preparations (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自然乾燥等の簡易な処理によって物理的強度
(硬化強度)に優れる硬化体となり得る医科用または歯
科用セラミックス成形用組成物を提供すること、およ
び、かかる組成物を調製するための練和剤を提供するこ
と。 【解決手段】 本発明の医科歯科用セラミックス成形用
組成物は、一種または二種以上の水溶性または水分散性
のアクリル系重合体および/またはアクリル系共重合体
を水または親水性溶媒中に含有して成る本発明の練和剤
と、セラミック系材料とが練和されることによって得ら
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医科用または歯科用
セラミックスの製造方法に関する。また、医科用または
歯科用セラミックスを製造する際に使用するセラミック
ス成形用組成物に関する。また、かかる組成物を調製す
る際に使用する練和剤に関する。
【0002】
【従来の技術】審美性、耐久強度その他の観点から、人
工歯や人工関節等の歯科的用途や医科的用途の補綴物そ
の他の治療具としてセラミックスが利用されている。こ
れら歯科用若しくは医科用セラミックスは、種々のセラ
ミック系材料(ポーセレンその他の歯科用若しくは医科
用ガラス系材料やセメント系材料等の無機材料を包含す
る。以下同じ。)を所定の形状に成形し、当該成形物を
セラミック系材料の性状に応じた好適な焼成条件下で焼
成することによって製造されている。歯科用セラミック
ス製造の具体例を以下に述べる。
【0003】例えば、1本の歯の上部(歯冠部)が虫歯
になった場合或いは1本乃至複数本の歯が抜けた場合に
は、それぞれクラウン或いはブリッジと呼ばれる補綴物
に成形された歯科用セラミックスが利用される。このよ
うな歯科用セラミックスは、典型的には次のように製造
される。すなわち、患部(即ち歯科用セラミックス装着
部位)の形状に対応させた印象(陰型)に基づいて得ら
れた作業模型(陽型)を利用して予めメタル若しくはセ
ラミック焼結体から成るコアフレームを作製する。そし
て、当該コアフレームを作業模型に装着した状態にして
おき、次に、ポーセレン等の粉状セラミック系材料を種
々の練和液(水等)で練和した練和物を、典型的には筆
等を使用して当該コアフレーム上に付着させつつ所望す
る形状(歯冠等)に成形する(歯科的分野ではこのこと
を築盛という。)。次いで、気泡等が入らないようにす
るためにコンデンスといわれる吸水処理等を施し、成形
物を構成するセラミック系材料相互の緻密充填化処理を
施す。而して、かかる成形物を適当な方法で凝集させた
後、コアフレームを当該成形物ごと作業模型から取り外
し、焼成炉内に移す。そして、使用したセラミック系材
料の材質に応じた適当な温度条件で焼成することによっ
て、目的とする歯科用セラミックス(クラウンやブリッ
ジ等)が製造される。
【0004】ところで、かかる歯科用セラミックスまた
は医科用セラミックス(以下、医科用または歯科用セラ
ミックスを「医科歯科用セラミックス」と総称する。)
を所望する形状に成形・製造する場合において、従前、
次のような問題点があった。すなわち、水等から成る従
来の練和液と典型的には粉状のセラミック系材料とを練
和して成る練和物(即ち焼成する前の成形用組成物)に
よると、当該組成物を構成するセラミック粒子相互の接
着性(相互接着能力)ないしは凝集性(凝集能力)が弱
く、結果、成形物(築盛物)の物理的強度が脆弱であっ
た。このため、歯科技工士等の作業者は、成形物を作業
模型等から取り外す(典型的にはコアフレームごと取り
外す)とき或いは焼成炉内へ当該成形物を持ち運ぶとき
(典型的にはコアフレームごと持ち運ぶ)に、当該成形
物の取り扱いに多大な慎重さと集中力(細心の注意)を
強いられていた。かかる物理的強度の低い成形物に対し
て不用意に振動や衝撃を与えると容易にその一部が崩落
したり破損したりする恐れがあるからである。
【0005】そこで、かかる成形・凝集後の組成物の一
部崩落や破損を防止する一手段として、従来、光重合性
のモノマーおよび光重合開始剤を含む練和液が医科歯科
用セラミックスの製造分野において利用されている(例
えば特開平5−25015号公報参照)。すなわち、か
かる練和液とセラミック系粉状材料とを練り混ぜて成る
練和物(組成物)に紫外線等の光を照射して当該組成物
に含まれる光重合性単量体を重合・硬化させると、当該
組成物の成形後の物理的強度を高めることが可能とな
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記光
重合性のモノマーを含む練和液を用いる場合には、紫外
線等の光照射処理という工程が付加されてしまう。かか
る工程は、セラミックス製造プロセスを煩雑にするた
め、好ましくない。また、成形物の大きさ(厚み)や形
状によっては、短時間で成形物全体に十分な光照射を行
うことが困難となるため、光重合・硬化不十分となる恐
れがあった。そこで本発明は、歯科用セラミックス或い
は医科用セラミックスを製造する際の上記問題点を解決
するものであり、その目的とするところは、煩雑で不確
実な光照射処理を行うことなく、簡易な硬化処理によっ
て上記成形物の焼成前における物理的(機械的)強度を
向上させ得る医科歯科用セラミックス成形用組成物及び
当該組成物を調製するのに使用する練和剤を提供するこ
とである。併せて、かかる組成物及び練和剤を使用して
医科歯科用セラミックスを製造する方法を提供すること
である。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく提
供される本発明の練和剤は、特に医科歯科用セラミック
ス成形用途に好適に用いられる練和剤であって、一種ま
たは二種以上の水溶性または水分散性のアクリル系重合
体および/またはアクリル系共重合体を水または親水性
溶媒中に含有して成る練和剤である。
【0008】かかる本発明の練和剤は、粉状その他の破
砕された形状のセラミック系材料(典型的には医科用セ
ラミックス或いはまた歯科用セラミックスを成形・製造
するためのシリカ系、アルミナ系、ジルコニア系、マグ
ネシア系、スピネル系等のセラミック系材料)と練和さ
れることによって次のような作用効果を奏し得る。すな
わち、水または親水性溶媒の存在下において上記水溶性
または水分散性のアクリル系重合体および/またはアク
リル系共重合体と上記セラミック系材料とが練和される
結果、当該練和物の構成物質(即ち、個々のセラミック
粒子およびアクリル系重合体またはアクリル系共重合
体)相互の接着強度ないし凝集力を向上させることがで
きる。そして、本発明の練和剤によると、当該練和物
(組成物)を乾燥させた際に、かかる接着強度ないし凝
集力に応じた高い物理的強度を実現させた硬化体が得ら
れる。
【0009】また、本発明の練和剤として好ましいもの
は、粘度(25℃またはその前後の常温条件下における
粘度をいう。以下同じ。)が1〜50,000cP(セ
ンチポアズ)の範囲内にある練和剤である。かかる粘度
範囲の練和剤によると、当該練和剤とセラミック系材料
との良好な練和状態(即ち練和剤とセラミック系材料と
が全体により均等に混合攪拌されていること)を迅速且
つ容易に実現することができる。
【0010】また、本発明の練和剤として特に好ましい
ものは、本練和剤の主成分たる上記アクリル系重合体お
よび/またはアクリル系共重合体が、ポリアクリル酸、
ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリ
ルアミド、アクリル酸若しくはメタクリル酸またはそれ
らの親水性誘導体をモノマー成分として含む重合体若し
くは該成分を含む共重合体、ならびにこれらの塩から成
る群から選択される一または二以上であることを特徴と
する練和剤である。これら特定の重合体または共重合体
を主成分とする練和剤は、特に医科歯科用セラミック材
料として多用されるガラス(シリカ)系材料(ポーセレ
ン等)やヒドロキシアパタイト系材料等から成る練和物
(成形物)の乾燥した硬化体の強度を特に向上させるこ
とができる。
【0011】また、本発明は、上記本発明の練和剤の使
用によって得られる医科歯科用セラミックス成形用組成
物を提供する。すなわち、本発明の医科歯科用セラミッ
クス成形用組成物は、一種または二種以上の水溶性また
は水分散性のアクリル系重合体および/またはアクリル
系共重合体を水または親水性溶媒中に含有して成る練和
剤と、セラミック系材料(典型的には粉状材料)とが練
和されて成る組成物である。かかる本発明の医科歯科用
セラミックス成形用組成物(以下単に「本発明の組成
物」という。)では、上記本発明の練和剤が練和される
結果、成形時及び乾燥・硬化時における当該組成物の構
成物質相互の接着強度ないし凝集力が向上し得、乾燥し
た際には高い物理的強度を維持した硬化体を形成する。
このため、所定の形状に成形した後における不用意な衝
撃による当該成形物(硬化体)の一部崩落や破損を高い
次元で抑止することができる。
【0012】また、本発明の組成物として好適なもの
は、上記練和されるセラミック系材料の重量比率が、上
記セラミック系材料と上記練和剤との合計量の70%〜
90%の範囲内にある組成物である。かかる重量比で得
られる本発明の組成物は、練和剤とセラミック系材料と
の練和バランスがよく、充填度合の高い緻密な構造を有
し得る。このため、当該組成物の構成物質相互の接着強
度ないし凝集力をよりいっそう向上させることができ
る。また、本発明の組成物としてより好ましいものは、
粘度が100〜100,000cPの範囲内にあるもの
である。かかる粘度範囲にある組成物によると、成形時
及び乾燥・硬化時における当該組成物の構成物質相互の
接着強度ないし凝集力をよりいっそう向上させることが
できる。
【0013】また、本発明の組成物としてより好ましい
ものは、上記アクリル系重合体および/またはアクリル
系共重合体が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポ
リビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アクリル酸
若しくはメタクリル酸またはそれらの親水性誘導体をモ
ノマー成分として含む重合体若しくは該成分を含む共重
合体、ならびにこれらの塩から成る群から選択される一
または二以上である組成物である。また、この場合にお
いて、上記セラミック系材料がポーセレンその他のシリ
カ系、ヒドロキシアパタイト系、アルミナ系、ジルコニ
ア系、マグネシア系またはスピネル系であるものがさら
に好ましい。
【0014】また、本発明は、上記本発明の練和剤の使
用に関連して、医科歯科用セラミックスを製造する方法
を提供する。すなわち、本発明の医科歯科用セラミック
ス製造方法は、(a)一種または二種以上の水溶性また
は水分散性のアクリル系重合体および/またはアクリル
系共重合体を水または親水性溶媒中に含有して成る練和
剤とセラミック系材料とを練和する工程、(b)当該練
和することによって得られた組成物を所定の形状に成形
する工程、(c)当該成形された組成物を硬化させる工
程、および、(d)硬化した当該組成物を焼成する工
程、を包含する。かかる本発明の医科歯科用セラミック
ス製造方法(以下単に「本発明の製造方法」という。)
によると、上記(a)工程で得られる本発明のセラミッ
クス成形用組成物の物理的強度によって、歯科セラミッ
クス製造における築盛やその他の成形作業およびその後
の上記組成物の取扱いを、上述のような過度な慎重さお
よび注意力を強いることなく行うことができる。
【0015】本発明の製造方法として好ましいものは、
上記(c)工程が、上記成形された組成物を常温(典型
的には15℃〜35℃)で乾燥させることによって行わ
れる方法である。かかる方法によると、上述した光照射
処理のような煩雑な処理を施すことなく望ましい物理的
強度を有する硬化体(成形物)を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の練和剤、本発明の
組成物および本発明の製造方法の好適な実施形態につい
て説明する。
【0017】本発明の液状練和剤に使用される上記水溶
性または水分散性(典型的には水中油型のエマルション
として存在する)のアクリル系重合体またはアクリル系
共重合体は、セラミック粒子相互の接着性ないしは凝集
性すなわちセラミックス成形用組成物(練和物)の乾燥
・硬化(凝結)後の物理的強度を向上させ得るものであ
る。また、シリカ系材料その他の医科歯科用セラミック
スは比較的低温度および/または低熱量で焼成される
が、かかる焼成条件下においても、得られる焼成体中に
カーボンを顕著に残留させないものが好ましい。顕著な
カーボンの残留は、得られたセラミックスの色調や臭い
に悪影響を及ぼすため、特に審美性が要求される義歯等
の歯科用セラミックス或いは医科用セラミックスの製造
において好ましくないからである。すなわち、ポーセレ
ンその他のシリカ系材料に代表される医科歯科用セラミ
ックス用材料は、典型的には、焼成炉内における焼成温
度が1350℃以下であり、溶融開始温度が概ね400
℃〜900℃である。また、焼成時の昇温条件は概ね2
0℃〜90℃/分である。従って、かかる比較的短時間
で低熱量の条件下で焼成した場合にも、得られた焼成体
にカーボンの残留が無いか或いは無視し得るレベルにま
で低減させ得るものが好ましい。従来の光重合性モノマ
ーを有する練和剤では、かかる比較的短時間で低熱量の
条件下で焼成した際には顕著にカーボンが残留する場合
があった。そのため、一般的な医科歯科用セラミックス
(典型的にはポーセレンその他のシリカ系材料から成る
セラミックス)を製造する場合には、通常よりも高熱量
を付与する条件で焼成せざるを得ない場合があり得た。
また、上記条件での焼成時において燃焼物が焼成炉に付
着して当該焼成炉を汚染することがないものが特に好適
である。また、焼成前の乾燥・硬化が比較的穏やかに進
行するものが好ましく、練和後の常温(例えば15℃〜
35℃)での乾燥環境下において例えば3分〜10分で
硬化するものが特に好ましい。乾燥・硬化があまり迅速
でありすぎると、成形工程が行い難く、特に大まかに成
形した形状の微調整を行う猶予が無くなるおそれがあ
る。反対に、乾燥・硬化があまり遅いと、製造プロセス
全体の遅延を招き、効率化の観点から好ましくない。
【0018】而して、上記の観点から、本発明の液状練
和剤に好ましく使用され得る水溶性または水分散性のア
クリル系重合体またはアクリル系共重合体は、親水性の
官能基を有するとともにアクリロイル基、ビニル基、メ
タアクリロイル基、1-プロペニル基、イソプロペニル
基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基等の重合可
能な不飽和基を有するモノマー若しくはオリゴマーの重
合体または共重合体である。アクリロイル基、ビニル基
またはメタアクリロイル基を有するモノマーの重合体ま
たはそれらを含む共重合体が特に好適である。
【0019】また、ここで親水性の官能基として好まし
いものには、カルボキシル基、水酸基等の酸性基、アミ
ノ基等の塩基性基がある。例えば、セラミック系材料の
粒子表面が正に荷電している場合は、かかる粒子表面へ
の吸着能の観点から、カルボキシル基、水酸基等の酸性
基に富むアニオン性のアクリル系重合体またはアクリル
系共重合体が本発明の練和剤の主成分として好適であ
る。また、かかる水溶性または水分散性アクリル系重合
体またはアクリル系共重合体として特に好ましいものを
列挙すると、(1).ポリアクリル酸、(2).ポリメタクリル
酸、(3).ポリビニルアルコール、(4).ポリアクリルアミ
ド、(5).アクリル酸若しくはメタクリル酸をモノマー成
分として含む重合体若しくは該成分を含む共重合体、
(6).アクリル酸若しくはメタクリル酸の親水性誘導体を
モノマー成分として含む重合体若しくは該成分を含む共
重合体、(7).これら列挙したアクリル系重合体またはア
クリル系共重合体(以下これらを総称して「アクリル系
高分子化合物」という。)の塩がある。これらアクリル
系高分子化合物を用いた練和剤によると、医科歯科用セ
ラミックスを調製するのに好適な乾燥・硬化(凝結)時
間(典型的には練和後に常温(室温)下で放置後3分〜
10分)を実現することができる。
【0020】また、上記親水性誘導体として好ましいも
のとしては、マレイン酸、イタコン酸、ビニルアルコー
ル、アクリルアミド、ならびに種々の親水性基を有する
アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類が挙げ
られる。ところで、使用するアクリル系高分子化合物の
分子量(数平均分子量または重量平均分子量)は、特に
限定されるものではないが、練和剤調製後の粘度(即ち
練和のし易さ等)に対する影響やセラミック系材料と練
和した際に発揮される吸着性や凝集性を考慮すると、使
用するアクリル系高分子化合物の粘性等の性状の相違に
応じて適宜異なり得るが、例えばポリアクリル酸若しく
はポリアクリル酸塩等であれば重量平均分子量が20万
〜2000万の範囲内が好ましく、50万〜1000万
の範囲内がさらに好ましい。
【0021】また、水溶性の向上等の観点から、上記ア
クリル系高分子化合物の塩も本発明の実施に際して利用
することができる。かかる好適な塩としては、ナトリウ
ム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩あるいはアンモニ
ウム塩、アミン塩等が挙げられる。なお、特に限定され
るものではないが、練和物(セラミック成形用組成物)
の物理的強度(凝集力等)向上の観点からは、本発明の
練和剤に含まれるアクリル系高分子化合物のうちの塩と
なっている割合(即ち中和率)は、当該アクリル系高分
子化合物全体の70%以下がより好ましく、40%以下
がさらに好ましい。
【0022】また、これら水溶性または水分散性のアク
リル系高分子化合物を溶解または分散(典型的にはエマ
ルションとして懸濁)させる好適な溶媒としては、水が
挙げられるがこれに限定されず、種々の親水性溶媒が使
用し得る。かかる親水性溶媒としては、メチルアルコー
ル、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソ
プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチ
ルアルコール、エチレングリコールまたはその重合体、
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリ
コールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn
−ブチルエーテル、プロピレングリコールまたはその重
合体、1,3-ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ
る。本発明の実施においてこれら親水性溶媒は、それ単
独または2種類以上の混合溶媒またはこれらと水との混
合溶媒として使用することが可能であり、本発明におけ
る親水性溶媒にはこれらの混合溶媒またはこれらと水と
の混合溶媒も包含される。
【0023】本発明の練和剤には、セラミック系材料と
の練和性および焼成時のカーボン非残留性に影響を及ぼ
さない限りにおいて、上記主成分たる水溶性または水分
散性アクリル系高分子化合物の他に種々の物質を添加す
ることができる。かかる添加物質としては、典型的に
は、種々の用途の界面活性剤(乳化剤、分散剤、可溶化
剤、消泡剤、湿潤浸透剤等)、防腐剤、pH調整剤、無
機若しくは有機顔料等が必要に応じて用いられ得る。ま
た、過剰な酸性基(カルボキシル基等)を有するアクリ
ル系高分子化合物を水その他の親水性溶媒(媒体)中に
効率よく溶解ないし分散させるために、当該アクリル系
高分子化合物中の酸性基の少なくとも一部を塩基性物質
で中和することができる。この目的のために添加される
塩基性物質としては、モノメチルアミン、ジメチルアミ
ン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルア
ミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジ
イソプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチ
レンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノール
アミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノー
ルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルプロパノ
ールアミン、モルホリン、メチルモルホリン、ピペラジ
ン等のアミン、アンモニア、あるいは水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機化合物が
挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無
機化合物が特に好適である。
【0024】本発明の練和剤は、特に限定しないが典型
的には、所定の容器に入れた水または親水性溶媒中に、
上記アクリル系高分子化合物の一種または二種以上を好
ましくは少量ずつ添加し、適当に攪拌混合することによ
って得ることができる。また、上記アクリル系高分子化
合物は、その溶解性に応じて異なり得るが、典型的に
は、粉末形態のもの若しくは少量の適当な有機溶媒に予
め溶解したものあるいは乳化物として水または親水性溶
媒中に添加すればよい。また、上述の各添加物質は、ア
クリル系高分子化合物と同時または別々に添加すればよ
い。
【0025】かかる本発明の練和剤に用いられる上記ア
クリル系高分子化合物の適切な濃度は、使用するアクリ
ル系高分子化合物の平均分子量、粘度等の性状に応じて
適宜異なり得るが、作業・取扱いの容易性および練和の
行い易さ(即ち、セラミック系材料と練和剤とを完全に
混合攪拌することのし易さ)の観点からは、使用するア
クリル系高分子化合物の種類に関わらず、練和剤自体の
粘度が25℃前後の常温下で1〜50,000cP(セ
ンチポアズ)となるように濃度調整を行うのが好まし
い。かかる粘度範囲にある練和剤によると、粉末状(若
しくは微細粒子状)に破砕されたセラミック系材料また
は上記練和剤に使用するのと同じ溶媒で予めペースト状
に調整されたセラミック系材料との練和が行いやすく、
当該練和剤とセラミック系材料との良好な練和状態(即
ち練和剤とセラミック系材料とが全体により均等に混合
攪拌されていること)を迅速且つ容易に実現することが
できる。このため、セラミック粒子相互の接着性ないし
凝集性をより確実に向上させ得る。湿潤浸透剤その他の
練和効率の向上に寄与し得る物質を加えるとより好適で
ある。
【0026】一方、本発明の実施に際して使用するセラ
ミック系材料は、歯科用や医科用の補綴物、充填物とし
て用いられる歯科用セラミックスまたは医科用セラミッ
クスを製造するために一般的に用いられ得るセラミック
系材料であれば特に制限なく使用することができる。か
かるセラミック系材料の好適例としては、例えばポーセ
レンと呼ばれる歯科用のシリカ系材料(典型的な組成比
(重量比)は、SiO2が40〜70%、Al23が1
0〜20%、K2Oが5〜14%、Na2Oが1〜11%
であり、この他にも微量成分としてBaO、CaO、M
gO、B23、TiO2等を含有してもよい。)があ
る。また、リン酸カルシウム系結晶化ガラス材料、マイ
カ系結晶化ガラス材料、その他の医科用または歯科用と
して多用されるキャスタブルガラスセラミックス系材料
等が挙げられる。これらの他にもヒドロキシアパタイト
系材料やシリカ、アルミナ、ジルコニア等の結晶質セラ
ミック材料またはこれらの複合材料(スピネル構造のも
のを含む)が好適に使用され得る。本発明の練和剤との
練和効率の観点からは、平均粒径が100μm以下の粉
状(若しくは微細粒状)のものが好ましく、平均粒径が
5μm〜35μmのものが特に好ましい。
【0027】次に、本発明の練和液とセラミック系材料
とから医科歯科用セラミックスを製造する場合の好適な
実施形態を説明する。本発明の練和剤は常温で液状であ
るため、セラミック系材料よりも少ない添加量で使用す
ることができる。特に限定するものではないが、使用す
るセラミック系材料(典型的には粉末状のもの)の重量
比率が当該セラミック系材料と練和剤との合計量の概ね
60%〜95%であることが好ましく、70%〜90%
の範囲内にあることがより好ましい。かかる重量比率
は、使用する練和剤の粘度が上記好適な範囲にある場合
に特に好適である。而して、乳鉢その他の適当な容器内
で、常温状態若しくは所望する温度まで加温した状態で
典型的には上記重量比のセラミック系材料と本発明の練
和剤とを練和する。このとき、セラミック系材料は乾燥
した粉状(微細粒子状)に破砕したものが好適に使用さ
れるが、予め少量の水その他の上記練和剤に使用するの
と同様の溶媒で湿った状態若しくはペースト状態にした
ものであってもよい。次いで、当該練和によって得られ
た練和物すなわち本発明の組成物(典型的にはペースト
状に練和されたもの)を、所定の形状に成形する。かか
る成形工程は、典型的には、射出成形その他の手段にお
いて使用される種々の成形加工器(型)内に上記調製し
た組成物(練和物)を充填させることによって行われ
る。あるいはまた、歯科用セラミックスとしてクラウン
等の義歯を作製する場合のように、予め調製したメタル
フレームまたはセラミックフレームその他の模型上に練
和物(乾燥前のウェット状態のもの)を付着させて所定
の形状に成形(築盛)することによって行う。なお、歯
科技工士等の作業者によって行われるかかる成形工程の
内容自体は、従来法におけるものと同様でよく、本発明
の実施に当たっては何ら制限はない。
【0028】次いで、成形した組成物に対して必要に応
じて一般的なコンデンスその他の吸水、脱気および/ま
たは充填・緻密化処理を行った後、当該成形物を硬化さ
せる処理を行う。かかる硬化処理工程は、従来のセラミ
ックス製造において行われる種々の手法がとり得るが、
本発明の実施に当たっては上記成形工程後の成形物を常
温(室温:典型的には15℃〜35℃)条件下で自然乾
燥させることによって当該成形物を硬化させるのが好適
である。例えば、歯科用セラミックスとしてクラウン等
の歯科補綴物を製造する場合において、必要に応じてコ
ンデンスを行った後に成形物を常温で適当な乾燥庫内に
配置することによって、かかる硬化を実現することがで
きる。上述した好適なアクリル系高分子化合物を含む成
形物である場合には、典型的には、練和処理後、3分〜
10分でかかる乾燥・硬化を達成することができる。ま
た、特に限定するものではないが、必要に応じて乾燥し
た空気を乾燥庫内に送風して成形物表面に当てたり或い
は常温よりもやや加熱した条件(例えば35℃以上であ
って水の沸点以下の温度:好ましくは35℃〜80℃)
下に成形物をおくことで、より迅速に成形物を乾燥・硬
化することが可能である。
【0029】次に、硬化ないし凝結した成形物を焼成し
て目的の医科用セラミックスまたは歯科用セラミックス
を作製する。本発明によって得られるセラミックス成形
用組成物を焼成する条件は特に限定されるものではな
く、従来行われる種々の方法が用いられ得る。一般に、
焼成温度および/または昇温条件は、使用するセラミッ
ク系材料の材質に応じて適宜決定される。例えば、ポー
セレン等のシリカ系材料を使用する場合、硬化した成形
物を先ず400℃〜900℃好ましくは500℃〜70
0℃に保持した焼成炉の炉口に3〜10分間配置して有
機物を除去する。次いで、1分間に20℃〜65℃程度
の昇温条件下、焼成炉内で3〜50分間焼成する。な
お、このときの焼成温度は1350℃以下とするのが好
ましく、特に限定するものではないがポーセレン等のシ
リカ系材料を使用する場合には900℃〜1050℃程
度の比較的低い焼成温度が適用され得る。また、焼成
は、約101.3kPaまたはそれ以下(即ち1気圧(7
60mmHg)以下)の減圧条件下で行うことができる。
【0030】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0031】<実施例1>精製水(脱イオン水)中にエ
マルジョンタイプのアクリル酸エステル系共重合体(東
亞合成社製:A−104(商標ないし商品名))を懸濁
して、固形分:約40%、粘度:100〜2000cP
/25℃の練和剤を得た。
【0032】<実施例2>実施例1で得た練和剤を精製
水で2倍に希釈した練和剤を得た。
【0033】<実施例3>精製水中にエマルジョンタイ
プのアクリル酸エステル系共重合体(東亞合成社製:H
T−303(商標ないし商品名))を懸濁して、固形
分:約25%、粘度:100〜1000cP/25℃の
練和剤を得た。
【0034】<実施例4>精製水中にエマルジョンタイ
プのアクリル酸エステル系共重合体(中央理化工業社
製:ES−52(商標ないし商品名))を懸濁して、固
形分:約40%、粘度:100〜1000cP/25℃
の練和剤を得た。
【0035】<実施例5>精製水中に水溶性タイプのア
クリル酸エステル系共重合体(東亞合成社製:HD−5
(商標ないし商品名))を懸濁して、固形分:約25
%、粘度:100〜2000cP/25℃の練和剤を得
た。
【0036】<実施例6>実施例5で得た練和剤を精製
水で2倍に希釈した練和剤を得た。
【0037】<実施例7>実施例5で得た練和剤を精製
水で10倍に希釈した練和剤を得た。
【0038】<実施例8>精製水97.5重量部、水酸
化ナトリウム2.0重量部および水溶性カルボキシビニ
ルポリマー(BFGoodrich社製:カーボポール(商標ない
し商品名))0.5重量部を混合して、粘度:100〜
2000cP/25℃の練和剤を得た。
【0039】<実施例9>実施例8で得た練和剤を精製
水で2倍に希釈した練和剤を得た。
【0040】<比較例1>1液性可視光硬化アクリル樹
脂(マルトー社製:アクリル・ワン♯1320(商標な
いし商品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和剤
として調製した。
【0041】<比較例2>ジトリメチロールプロパンテ
トラアクリレート(モノマー)の水溶液(サンノプコ社
製:ノプコマー4410(商標ないし商品名))96重
量部と重合開始剤(サンノプコ社製:イルカギュア18
4(商標ないし商品名))4重量部を遮光下で混合した
ものを練和剤として調製した。
【0042】<比較例3>ジペンタエリスリトールペン
タアクリレート(モノマー)の水溶液(サンノプコ社
製:ノプコマー4510(商標ないし商品名))96重
量部と重合開始剤(サンノプコ社製:イルカギュア18
4(商標ないし商品名))4重量部を遮光下で混合した
ものを練和剤として調製した。
【0043】<比較例4>エポキシ系アクリレート(オ
リゴマー)の水溶液(サンノプコ社製:フォトマー30
16(商標ないし商品名))96重量部と重合開始剤
(サンノプコ社製:イルカギュア184(商標ないし商
品名))4重量部を遮光下で混合したものを練和剤とし
て調製した。
【0044】<比較例5>ポリウレタン系アクリレート
(オリゴマー)の水溶液(サンノプコ社製:フォトマー
6008(商標ないし商品名))96重量部と重合開始
剤(サンノプコ社製:イルカギュア184(商標ないし
商品名))4重量部を遮光下で混合したものを練和剤と
して調製した。
【0045】<比較例6>紫外線(UV)硬化性アクリ
ル樹脂の水溶液(サンノプコ社製:SN−5X8639
(商標ないし商品名))96重量部と重合開始剤(サン
ノプコ社製:イルカギュア184(商標ないし商品
名))4重量部を遮光下で混合したものを練和剤として
調製した。
【0046】<比較例7>紫外線(UV)硬化性アクリ
ル樹脂の水溶液(サンノプコ社製:SN−5X8640
(商標ないし商品名))96重量部と重合開始剤(サン
ノプコ社製:イルカギュア184(商標ないし商品
名))4重量部を遮光下で混合したものを練和剤として
調製した。
【0047】<比較例8>水分散性ポリエステルの懸濁
液(東洋紡績社製:バイロナールMD−1200(商標
ないし商品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和
剤として調製した。
【0048】<比較例9>水分散性ポリエステルの懸濁
液(東洋紡績社製:バイロナールMD−1500(商標
ないし商品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和
剤として調製した。
【0049】<比較例10>線状飽和ポリエステルの懸
濁液(東洋紡績社製:バイロン20SS(商標ないし商
品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和剤として
調製した。
【0050】<比較例11>ポリエステルウレタンの懸
濁液(東洋紡績社製:バイロンUR1400(商標ない
し商品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和剤と
して調製した。
【0051】<比較例12>水分散性ポリエステルの懸
濁液(東洋紡績社製:TAD−1000(商標ないし商
品名))を精製水にて適宜懸濁したものを練和剤として
調製した。
【0052】<比較例13>エチルセルロース(ダウケ
ミカル社製:エトセルSTD−45(商標ないし商品
名))5重量部とエタノール95重量部を混合したもの
を練和剤として調製した。
【0053】<実施例10> −セラミックス成形用組成物の調製および当該組成物の
充填度合の評価− 上記実施例1〜9で得られた本発明に係る練和剤ならび
に比較例1〜13で調製した練和剤をそれぞれ使用して
セラミックス成形用組成物を調製し、各組成物の成形後
の充填度合を調べた。すなわち、上記得られた練和剤と
歯科用セラミックス製造用として市販されている陶材粉
末(ノリタケ社製:スーパーポーセレンAAA(商標な
いし商品名))とを重量比1対3で混合・練和して、上
記練和剤のそれぞれに対応したセラミックス成形用組成
物を調製した。次いで、各組成物を、それぞれ、予めオ
ペーク陶材を焼き付けたメタルフレーム上顎左側中切歯
に歯冠形態に築盛した。そして、各築盛物(成形物)に
対して通常のコンデンス処理を行った。このときのコン
デンス処理の行い易さを指標にして各組成物の充填度合
を評価した。コンデンスが行い易いということは、余剰
な水分や気泡が成形物内部から容易に抜け得ることであ
り、結果、陶材粉末の充填度合(緻密性)が向上するか
らである。かかる充填度合は成形性(ひび割れや部分的
な剥離のない焼成体の得られ易さに関する性質)の良否
を反映する。結果を使用した練和剤(実施例1〜9およ
び比較例1〜13)ごとに表1に示す。なお、表1中の
比較例14とは上記練和剤に代えて単なる精製水を同重
量比で使用して得た組成物に関する結果である(以下の
実施例も同じ)。表1中の充填度合の欄における二重丸
マーク(◎)はコンデンスがたいへん良好に行われたも
のであり比較的高い充填度合が認められたものを示す。
また、一重丸マーク(○)はコンデンスがほぼ十分に行
われたものであり成形性に問題のない程度の充填度合が
認められたものを示す。一方、バツマーク(×)は、処
理後にべと付き感を残す等のコンデンス不良が観察され
たものであり充填度合が不十分と認められたものを示
す。
【0054】
【表1】
【0055】表1から明らかなように、本発明に係る練
和剤を使用して得た組成物では、何れも良好な充填度合
を得られたが、各比較例で調製した練和剤を使用したも
のの中にはコンデンス不良で充填度合が不十分なものが
認められた。
【0056】<実施例11> −成形物の硬化処理および硬化した成形物の付着強度の
評価− 上記実施例10で調製した各成形物を上記メタルフレー
ム上で硬化させ、同時に当該硬化物の上記フレームに対
する付着強度を評価した。すなわち、室温(ここでは2
5℃)条件下で乾燥庫内に放置して乾燥させることによ
って、或いは光重合性のモノマー若しくはオリゴマーを
含む練和剤を使用したものについては紫外線照射機(モ
リタ社製:α−Light(商標ないし商品名))を使
用して紫外線を照射することによって、各成形物を上記
メタルフレーム上で完全に硬化させた。次いで、スパチ
ュラを用いて硬化した成形物を静かに引っ掻き、当該硬
化成形物の剥離の有無を調べた。結果を上記表1に示
す。表1中の付着強度の欄における丸マーク(○)は、
上記フレーム側に硬化成形物が全面付着していたものを
示す。バツマーク(×)は、上記引っ掻き処理によって
フレームから硬化成形物が剥離したものを示す。表1か
ら明らかなように、精製水(比較例14)を除いて何れ
の練和剤を用いた組成物でも、良好な付着強度を示し
た。
【0057】<実施例12> −成形物の所定時間の硬化処理および硬化処理後におけ
る物理的強度の評価− 上記実施例10で調製した各組成物を所定の型内に充填
して5分間の硬化処理を施し、次いで当該処理後の各組
成物(成形物)の物理的強度を調べた。すなわち、上記
実施例10で調製した各組成物を表面処理剤(ノリタケ
社製:ノリタケストンハードナー(商標ないし商品
名))で表面処理した後、予め分離剤を塗布したV字溝
型石こう模型(深さ1.5mm×幅3.5mm×長さ2
6mm)に圧接して型内に供給・充填した。次いで、当
該模型を室温(ここでは25℃)条件下で乾燥庫内に5
分間放置して乾燥させることによって、或いは光重合性
のモノマー若しくはオリゴマーを含む練和剤を使用した
ものについては紫外線照射機(モリタ社製:α−Lig
ht(商標ないし商品名))を使用して5分間紫外線を
照射することによって、硬化処理を行った。その後、ス
パチュラを用いて硬化処理した各組成物を模型から取り
出した。而して、上記溝形状に成形された各成形物に対
し、手指によって切断を試みた。結果を上記表1に示
す。表1中の切断強度の欄における二重丸マーク(◎)
は、ある程度の強度を加えることによってきれいに切断
可能なものを示している。一重丸マーク(○)は、ある
程度の強度を加えた際に切断可能であるがやや変形を生
じさせ得るものを示す。バツマーク(×)は、切断され
る以前に粉砕されてしまうものを示す。表1から明らか
なように、精製水を除いて何れの練和剤を用いた組成物
でも、良好な若しくは十分な強度を示した。
【0058】同時に、上記5分間の硬化処理後の各組成
物(脱型した成形物)の乾燥具合を、その表面を手指で
触ることによって調べた。結果を上記表1に示す。表1
中の乾燥具合の欄における丸マーク(○)は、手指で触
った際にウェットな感触が認められないものを示す。バ
ツマーク(×)は、手指で触った際にウェットな感触が
認められるものを示す。表1から明らかなように、本発
明に係る練和剤を用いた組成物は何れも上記5分間の処
理を施す間に良好な乾燥状態(即ち硬化状態)を達成し
得たが、各比較例で調製した練和剤を使用したものの中
には乾燥が不十分なものが認められた。
【0059】<実施例13> −成形物の焼成処理および焼成後のカーボン残留の評価
− 上記実施例10で調製した各組成物を所定の形状に成形
後、以下の条件で焼成処理を行った。得られた各焼成体
について、カーボン残留の有無を調べた。すなわち、上
記実施例10で調製した各組成物をアクリル樹脂製の型
(直径10mm×厚さ1.0mm)を用いてボタン形状
に成形した。次いで、上記実施例11で実施したのと同
様の硬化処理を施した後、700℃に保持したポーセレ
ンファーネス(JELENKO社製:COMMODORE75(商標ない
し商品名))の炉口に配置し、7分間の有機物除去処理
を行った。次いで、炉内において96kPaの減圧下で
700℃から930℃まで毎分55℃の昇温を行いなが
ら焼成処理を行った。その後、得られた焼成体を目視観
察することによってその色調を焼成前と比較し、当該色
調の差を指標にしてカーボン残留の有無を調べた。結果
を上記表1に示す。表1中のカーボン残留の欄における
二重丸マーク(◎)は、焼成前後で全く色調の差異が認
められなかったものを示す。一重丸マーク(○)は、焼
成前後の色調の差異が僅かしかなかったものを示す。バ
ツマーク(×)は、焼成前後の色調の差異が顕著であっ
たものを示す。表1から明らかなように、本発明に係る
練和剤を用いた組成物を成形・焼成したものについて
は、何れも良好なカーボン非残留性を示した。一方、上
記比較例1〜13で調製した練和剤を用いた組成物を成
形・焼成したものについては、顕著なカーボン残留が認
められた。
【0060】
【発明の効果】本発明によると、自然乾燥等の簡易な処
理によって物理的強度(硬化強度)に優れる硬化体とな
り得る医科用または歯科用セラミックス成形用組成物を
提供することができる。かかる本発明の組成物による
と、歯科技工士その他の医科用または歯科用セラミック
ス製造に係る作業者は、多大な慎重さと集中力を強いら
れることなく、本発明の組成物から成る焼成前の段階の
成形物を取り扱うことができる。而して、かかる効果を
奏する本発明の組成物は、上記本発明の練和剤を用いる
ことによって得ることができる。また、本発明による
と、医科用または歯科用補綴物における審美性等に影響
を及ぼす顕著なカーボン残留のない医科用セラミックス
や歯科用セラミックスを通常の焼成条件下で焼成するこ
とによって製造し得る。
フロントページの続き (72)発明者 岩田 美佐男 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 野々川 秀樹 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 柴田 敬三 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 高橋 みどり 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケデンタルサプライ内 (72)発明者 坂 清子 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケデンタルサプライ内 (72)発明者 榊原 肇男 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケデンタルサプライ内 Fターム(参考) 4C081 AB05 BB08 CA082 CF041 CF111 EA02 EA03 EA04 4C089 AA11 BD04 BE02 CA03 4G030 AA03 AA04 AA07 AA08 AA10 AA16 AA17 AA35 AA36 AA37 AA41 BA32 BA35 GA14 PA21 PA25

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一種または二種以上の水溶性または水分
    散性のアクリル系重合体および/またはアクリル系共重
    合体を水または親水性溶媒中に含有して成る医科歯科用
    セラミックス成形用練和剤。
  2. 【請求項2】 粘度が1〜50,000cPの範囲内に
    ある、請求項1に記載の練和剤。
  3. 【請求項3】 前記アクリル系重合体および/またはア
    クリル系共重合体は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル
    酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アク
    リル酸若しくはメタクリル酸またはそれらの親水性誘導
    体をモノマー成分として含む重合体若しくは該成分を含
    む共重合体、ならびにこれらの塩から成る群から選択さ
    れる一または二以上である、請求項1または2に記載の
    練和剤。
  4. 【請求項4】 一種または二種以上の水溶性または水分
    散性のアクリル系重合体および/またはアクリル系共重
    合体を水または親水性溶媒中に含有して成る練和剤と、
    セラミック系材料とが練和されて成る、医科歯科用セラ
    ミックス成形用組成物。
  5. 【請求項5】 前記セラミック系材料の重量比率が、該
    セラミック系材料と前記練和剤との合計量の70%〜9
    0%の範囲内にある、請求項4に記載の組成物。
  6. 【請求項6】 粘度が100〜100,000cPの範
    囲内にある、請求項4または5に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 前記アクリル系重合体および/またはア
    クリル系共重合体が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル
    酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、アク
    リル酸若しくはメタクリル酸またはそれらの親水性誘導
    体をモノマー成分として含む重合体若しくは該成分を含
    む共重合体、ならびにこれらの塩から成る群から選択さ
    れる一または二以上である、請求項4から6のいずれか
    に記載の組成物。
  8. 【請求項8】 医科歯科用セラミックスを製造する方法
    であって、(a)一種または二種以上の水溶性または水
    分散性のアクリル系重合体および/またはアクリル系共
    重合体を水または親水性溶媒中に含有して成る練和剤
    と、セラミック系材料とを練和する工程、(b)該練和
    することによって得られた組成物を所定の形状に成形す
    る工程、(c)該成形された組成物を硬化させる工程、
    および(d)硬化した該組成物を焼成する工程を包含す
    る、医科歯科用セラミックス製造方法。
  9. 【請求項9】 前記(c)工程が、前記成形された組成
    物を常温で乾燥させることによって行われる、請求項8
    に記載の製造方法。
JP2000094756A 2000-03-30 2000-03-30 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤 Expired - Fee Related JP3422964B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000094756A JP3422964B2 (ja) 2000-03-30 2000-03-30 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000094756A JP3422964B2 (ja) 2000-03-30 2000-03-30 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001276206A true JP2001276206A (ja) 2001-10-09
JP3422964B2 JP3422964B2 (ja) 2003-07-07

Family

ID=18609751

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000094756A Expired - Fee Related JP3422964B2 (ja) 2000-03-30 2000-03-30 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3422964B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015517004A (ja) * 2012-03-30 2015-06-18 ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド 硬化性二液型アクリル組成物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015517004A (ja) * 2012-03-30 2015-06-18 ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド 硬化性二液型アクリル組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP3422964B2 (ja) 2003-07-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Braden et al. Polymeric dental materials
Stawarczyk et al. Tensile bond strength of veneering resins to PEEK: impact of different adhesives
Özcan et al. Effect of surface conditioning methods on the bond strength of luting cement to ceramics
EP2757112B1 (en) Organic-inorganic composite filler, and method for producing same
JP5809974B2 (ja) レドックス硬化型組成物
JP4783151B2 (ja) 1液型の歯科用接着剤組成物
JP2001072523A (ja) 歯科用接着剤組成物
KR102575314B1 (ko) 치과용 경화성 조성물
Kiyan et al. The influence of internal surface treatments on tensile bond strength for two ceramic systems
US6444597B1 (en) Dental paste-like porcelain
EP2405883B1 (en) Composition for attaching a dental facing on a dental support structure, process and use thereof
Sriamporn et al. Effect of different neutralizing agents on feldspathic porcelain etched by hydrofluoric acid
JP5325633B2 (ja) 2液型の歯科用接着剤
KR101873570B1 (ko) 치과용 보철수복재 제조방법
EP2538870B1 (en) Glass and/or glass ceramic particles containing composition for application on a dental article, process and use thereof
Aleisa et al. Retention of zirconium oxide copings using different types of luting agents
JP6781908B2 (ja) 硬化性組成物および歯科用硬化性組成物
Imamura et al. Enhancement of resin bonding to heat-cured composite resin
JP4002996B2 (ja) ガラスイオノマーセメントを使用して暫間義歯装置を合着する方法およびそのためのキット
JP2001048717A (ja) 歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法
JP2001276206A (ja) 医科歯科用セラミックスの製造方法、成形用組成物及び練和剤
JP5271764B2 (ja) 歯科用充填キット
JP2000044421A (ja) 歯科接着性組成物
JP5653554B1 (ja) 二成分混和型イオン徐放性義歯床用関連材料組成物
JP7066150B2 (ja) 歯科切削加工用レジン材料の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees