JP2001266829A - アルカリ電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

アルカリ電池用セパレータ及びその製造方法

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JP2001266829A
JP2001266829A JP2000080063A JP2000080063A JP2001266829A JP 2001266829 A JP2001266829 A JP 2001266829A JP 2000080063 A JP2000080063 A JP 2000080063A JP 2000080063 A JP2000080063 A JP 2000080063A JP 2001266829 A JP2001266829 A JP 2001266829A
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graft polymerization
separator
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graft
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Koichi Kato
宏一 加藤
Yasuhiro Ito
康博 伊藤
Kazuya Sato
和哉 佐藤
Masanao Tanaka
政尚 田中
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Japan Vilene Co Ltd
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Japan Vilene Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 自己放電抑制作用の優れるアルカリ電池用セ
パレータの製造方法を提供する。 【解決手段】 不飽和カルボン酸、とその誘導体、及び
無水物の中から選ばれる一種類以上とエチレンとからな
り、かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポリマー
に、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノ
マーに由来するオリゴマー、とポリマーの中から選ばれ
る、少なくとも1種類の化合物がグラフト重合された親
水性樹脂を含み、多孔性シートを含むアルカリ電池用セ
パレータ。製造方法は、上記ポリマーの中から選ばれる
少なくとも1種類の化合物を含有するグラフト重合用液
を、不飽和カルボン酸、とその誘導体、及び無水物の中
から選ばれる一種類以上とエチレンとからなり、かつ結
晶化度が15%以上のエチレンコポリマーを含む多孔性
シートに付着させた後、このグラフト重合用液が付着し
た多孔性シートをグラフト重合処理する、上記セパレー
タの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルカリ電池用セパ
レータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、アルカリ電池の正極と負極と
を分離して短絡を防止すると共に、起電反応を円滑に行
うことができるように、これら電極間には電解液を保持
できるセパレータが配置されている。このセパレータは
水酸化カリウムなどの電解液によって侵されないことが
必要であるため、耐アルカリ性に優れるポリオレフィン
系繊維を含むセパレータを好適に使用できる。しかしな
がら、ポリオレフィン系繊維は電解液との親和性が低い
ため、電解液の保持性が悪いという欠点があった。その
ため、このようなポリオレフィン系繊維を含むセパレー
タに対して、電解液との親和性を付与するために、様々
な手段が講じられていた。この電解液との親和性を付与
する手段の1つとして、ポリオレフィン系繊維を含むセ
パレータにビニルモノマーをグラフト重合する方法があ
る。このビニルモノマーをグラフト重合する方法とし
て、例えば、特表平6−509208号公報には、ポリ
オレフィン系繊維からなる布帛にビニルモノマーをグラ
フト重合させたセパレータが開示されており、更にポリ
オレフィン系繊維からなる布帛にビニルモノマーの溶液
を含浸する工程と、酸素にさらさない条件下で布帛に紫
外線を照射する工程とからなるセパレータの製造方法が
開示されている。しかしながら、このセパレータをニッ
ケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池などに使用
すると、自己放電抑制作用が低く、電池寿命の短いもの
であった。また、ビニルモノマーを溶解させる溶媒とし
て水を使用しているため、ポリオレフィン系繊維からな
る布帛をビニルモノマーの溶液に含浸しても、ポリオレ
フィン系繊維からなる布帛とビニルモノマーの溶液とが
馴染まないため、効率良く、しかも温和な条件下でグラ
フト重合することが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
前記の欠点を解消し、自己放電抑制作用の優れるアルカ
リ電池用セパレータを提供すること、及び効率良く、温
和な条件下でグラフト重合することのできるアルカリ電
池用セパレータの製造方法を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のアルカリ電池用
セパレータ(以下、単に「セパレータ」と称することが
ある)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導
体、不飽和カルボン酸無水物の中から選ばれる一種類以
上とエチレンとからなり、かつ結晶化度が15%以上の
エチレンコポリマーに、ビニル基を有するモノマー、ビ
ニル基を有するモノマーに由来するオリゴマー、ビニル
基を有するモノマーに由来するポリマーの中から選ばれ
る、少なくとも1種類の化合物がグラフト重合された親
水性樹脂を含む、多孔性シートを含むものである。この
ように特定のエチレンコポリマーに対して、特定の化合
物がグラフト重合された親水性樹脂を含む多孔性シート
は、自己放電抑制効果に優れることを見い出したのであ
る。
【0005】本発明のアルカリ電池用セパレータの製造方法
は、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノ
マーに由来するオリゴマー、ビニル基を有するモノマー
に由来するポリマーの中から選ばれる少なくとも1種類
の化合物を含有するグラフト重合用液を、不飽和カルボ
ン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カルボン酸無水
物の中から選ばれる一種類以上とエチレンとからなり、
かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポリマーを含む
多孔性シートに付着させた後、このグラフト重合用液が
付着した多孔性シートを酸素存在下でグラフト重合処理
を実施する方法である。このような特定のエチレンコポ
リマーはグラフト重合用液と馴染みやすいため、効率良
く、温和な条件下でグラフト重合することができること
を見い出したのである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のアルカリ電池用セパレー
タを構成する多孔性シートは、例えば、繊維シート(例
えば、不織布、織物、編物、又はこれらの複合体な
ど)、多孔性フィルムであることができる。
【0007】多孔性シートが繊維シートからなる場合、この
繊維シートを構成する繊維として、不飽和カルボン酸、
不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カルボン酸無水物の中
から選ばれる一種類以上とエチレンとからなり、かつ結
晶化度が15%以上のエチレンコポリマーに、ビニル基
を有するモノマー、ビニル基を有するモノマーに由来す
るオリゴマー、ビニル基を有するモノマーに由来するポ
リマーの中から選ばれる、少なくとも1種類の化合物が
グラフト重合された親水性樹脂を少なくとも表面に有す
る繊維を含んでいることができる。
【0008】別の多孔性シートとしては、多孔性シートが粉
体を含む繊維シートからなり、この粉体として、不飽和
カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カルボン
酸無水物の中から選ばれる一種類以上とエチレンとから
なり、かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポリマー
に、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノ
マーに由来するオリゴマー、ビニル基を有するモノマー
に由来するポリマーの中から選ばれる、少なくとも1種
類の化合物がグラフト重合された親水性樹脂を少なくと
も表面に有する粉体を含んだものであることができる。
なお、この多孔性シートを構成する繊維シートは、上述
のような親水性樹脂を少なくとも表面に有する繊維を含
んでいるのが好ましい。
【0009】更に別の多孔性シートは多孔性フィルムからな
り、この多孔性フィルム表面の一部又は全部が、不飽和
カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カルボン
酸無水物の中から選ばれる一種類以上とエチレンとから
なり、かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポリマー
に、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノ
マーに由来するオリゴマー、ビニル基を有するモノマー
に由来するポリマーの中から選ばれる、少なくとも1種
類の化合物がグラフト重合された親水性樹脂からなるこ
とができる。
【0010】本発明の一態様では、アルカリ電池用セパレー
タは、例えば、前述のような親水性樹脂を含む繊維シー
トからなる単層であり、別の一態様では、前述のような
親水性樹脂を含む繊維シートの2種類以上が組み合せら
れた複合多孔性シートからなる。更に別の一態様では、
多孔性フィルムと繊維シートが組み合せられており、多
孔性フィルムと繊維シートの少なくとも一方が前述のよ
うな親水性樹脂を含んでいる複合多孔性シートからな
る。
【0011】以下、本発明について、多孔性シートが繊維シ
ートからなり、この繊維シートを構成する繊維として、
不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カ
ルボン酸無水物の中から選ばれる一種類以上とエチレン
とからなり、かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポ
リマーに、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有す
るモノマーに由来するオリゴマー、ビニル基を有するモ
ノマーに由来するポリマーの中から選ばれる、少なくと
も1種類の化合物がグラフト重合された親水性樹脂を少
なくとも表面に有する繊維(以下、親水性繊維というこ
とがある)を含んでいる場合を例に説明する。
【0012】このエチレンコポリマーを構成する共重合成分
としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸などの不
飽和カルボン酸を用いることができる。また、別の共重
合成分として、例えば、アルコール(好ましくは脂肪族
飽和アルコール、例えば、炭素数1〜8の脂肪族飽和ア
ルコール)との不飽和カルボン酸エステル、又は不飽和
カルボン酸塩などの不飽和カルボン酸誘導体を用いるこ
とができる。前記不飽和カルボン酸エステルとしては、
例えば、不飽和カルボン酸メチル、不飽和カルボン酸エ
チル、不飽和カルボン酸ブチル、又は不飽和カルボン酸
2−エチルヘキシルを用いることができる。また、前記
の不飽和カルボン酸の塩としては、例えば、カリウム
塩、ナトリウム塩、又はリチウム塩などのアルカリ金属
塩を用いることができる。更に、別の共重合成分とし
て、例えば、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの不
飽和カルボン酸無水物を用いることができる。
【0013】本発明のエチレンコポリマーは前述のような共
重合成分を少なくとも1種類以上とエチレンとからなる
が、本発明のエチレンコポリマーはエチレンと前述のよ
うな共重合成分とが交互に入ったもの(すなわち、交互
共重合体)であることもできるし、ランダムに入ったも
の(すなわち、ランダム共重合体)であることもできる
し、ブロックに入ったもの(すなわち、ブロック共重合
体)であることもできるし、或いはそれらの混合物であ
ることもできる。
【0014】前述のような共重合成分とエチレンとの比率
は、エチレンコポリマーの結晶化度が15%以上である
限り、特に限定されるものではない。また、エチレンコ
ポリマーの結晶化度が15%以上である限り、前述のよ
うな共重合成分及び/又はエチレンと共重合可能な別の
共重合成分(すなわち、第3成分)を含有することもで
きる。
【0015】本発明のエチレンコポリマーの結晶化度は自己
放電抑制作用に優れるように、15%以上である必要が
あり、好ましくは20%以上である。他方、結晶化度が
28%を越えると、グラフト重合の効率が悪くなる傾向
があるため、28%以下であるのが好ましい。なお、本
明細書における「結晶化度」とは、エチレンコポリマー
の融解熱量(単位=J/g)の、完全結晶のポリエチレ
ンの融解熱量(290.4J/g)に対する百分率を意
味する。また、エチレンコポリマーの融解熱量は、示差
走査熱量計(DSC)により、窒素ガス雰囲気下におい
て、室温から200℃程度まで、10℃/分の速度で昇
温させて得られる値を意味する。なお、この「結晶化
度」はグラフト重合処理前における融解熱量測定値に基
づく値をいう。
【0016】本発明の親水性樹脂は上述のようなエチレンコ
ポリマーに、ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有
するモノマーに由来するオリゴマー、ビニル基を有する
モノマーに由来するポリマーの中から選ばれる、少なく
とも1種類の化合物がグラフト重合されたものである。
このビニル基を有するモノマーとしては、例えば、不飽
和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、α−エチルア
クリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、
メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、アリル酢
酸、α−エチルクロトン酸、ケイ皮酸、10−ウンデセ
ン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブランジ
ン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸、エレオ
ステアリン酸、リノレン酸、アラキドン酸、アセチレン
カルボン酸、テトロル酸、ステアロル酸、ベヘノル酸、
又はキシメニン酸)若しくは前記不飽和モノカルボン酸
の誘導体(例えば、エステル化物)、不飽和ジカルボン
酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン
酸、メチルフマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、アリ
ルマロン酸、テラコン酸、ムコン酸、又はブチン二酸)
若しくは前記不飽和ジカルボン酸の誘導体(例えば、エ
ステル化物)、不飽和トリカルボン酸(例えば、アコニ
ット酸)若しくは前記不飽和トリカルボン酸の誘導体
(例えば、エステル化物)、複素環式ビニルモノマー
(例えば、ビニルピリジン又はビニルピロリドン)、又
は芳香族ビニルモノマー(例えば、スチレン)を挙げる
ことができる。なお、スチレンを用いる場合には更にス
ルホン化するのが好ましい。これらビニル基を有するモ
ノマーの中でも、グラフト重合しやすい点で、二重結合
を有する炭素にカルボキシル基が直接結合した不飽和モ
ノカルボン酸又は不飽和ジカルボン酸が好ましい。更に
は、重合を抑制しやすく、また、グラフト重合により良
好な親水性を生じる点で、アクリル酸又はメタクリル酸
がより好ましい。また、ビニル基を有するモノマーに由
来するオリゴマー又はビニル基を有するモノマーに由来
するポリマーとしては、例えば、先に例示したビニル基
を有するモノマーの重合体を使用することができ、反応
性の点から、ポリアクリル酸、アクリル酸のオリゴマ
ー、ポリメタクリル酸、又はメタクリル酸のオリゴマー
を使用するのが好ましい。このグラフト重合された化合
物は1種類である必要はなく、2種類以上の化合物がグ
ラフト重合されていても良い。
【0017】本発明の多孔性シートの一態様としては、前述
のような親水性樹脂を少なくとも表面に有する親水性繊
維を含むものであり、親水性樹脂は親水性繊維表面の一
部又は全部を占めている。このような親水性繊維は自己
放電抑制作用、耐アルカリ性、耐酸化性、及び融着性な
どに優れるものである。なお、親水性樹脂の占める割合
が高ければ高いほど、前記効果が優れているため、親水
性樹脂は親水性繊維表面の全てを占めているのが好まし
い。
【0018】この親水性繊維は親水性樹脂のみから構成する
こともできるし、親水性樹脂以外の樹脂を含んで構成す
ることもできる。後者のように親水性樹脂以外の樹脂を
含んでいる場合、エチレンコポリマーの融点よりも高い
融点(好ましくは10℃以上高い、より好ましくは20
℃以上高い)を有する樹脂(高融点樹脂ということがあ
る)を含んでいるのが好ましい。このような高融点樹脂
を含んでいる場合、後述のように多孔性シート(繊維シ
ート)を形成する際にエチレンコポリマーを融着させた
としても、前記高融点樹脂によって親水性繊維の繊維形
状を維持することができる。
【0019】このように高融点樹脂を含む場合の親水性繊維
の断面形状は、親水性樹脂が繊維表面の少なくとも一部
を構成している限り特に限定されるものではないが、例
えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、オレンジ
型、多重バイメタル型、又は海島型を挙げることができ
る。この高融点樹脂を含む親水性繊維は、例えば、機械
的処理(例えば、水流などの流体流による処理、又はカ
レンダー処理)又は化学的処理(例えば、樹脂の除去処
理、又は樹脂を膨潤させる処理)により、分割可能であ
っても良い。この高融点樹脂は耐アルカリ性及び耐酸化
性に優れるように、ポリオレフィン系樹脂からなること
が好ましい。例えば、ポリエチレン(例えば、低密度ポ
リエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエ
チレン、又は超高分子量ポリエチレンなど)、ポリプロ
ピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレンコ
ポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンコポリマーな
どを使用することができ、ポリプロピレン、高密度ポリ
エチレン、ポリメチルペンテン、又はエチレン−プロピ
レンコポリマーを好適に使用できる。本明細書における
「融点」とは、示差走査熱量計を用い、昇温温度10℃
/分で、室温から昇温して得られる融解吸収曲線の極値
を与える温度を意味する。
【0020】本発明のアルカリ電池用セパレータにおける多
孔性シートは、例えば、不織布、織物、編物又はこれら
の複合体などの繊維シートからなることができる。これ
らの中でも、繊維が三次元的に配置することができ、電
解液の保持性に優れている点で不織布を含んでいるのが
好ましい。なお、繊維シートに含まれる全構成繊維の全
表面積に対する、繊維シート中の親水性繊維の表面を構
成している親水性樹脂の占める百分率は、自己放電抑制
作用、電解液との親和性、耐アルカリ性、耐酸化性、及
び融着性に優れるように、10%以上であることが好ま
しく、20%以上であることがより好ましい。
【0021】本発明のアルカリ電池用セパレータにおける繊
維シートは、前記親水性繊維以外の繊維、例えば、極細
繊維、高強度繊維、融着繊維などを含むことができる。
前記極細繊維としては、繊度が0.55dtex以下
(好ましくは、7.8×10-7〜0.33dtex)の
極細繊維を挙げることができる。このような極細繊維を
含んでいることによって、電解液の保持性が向上し、ま
たデンドライド防止性にも優れている。後述のように繊
維シートを製造する際に、前述のような親水性繊維を構
成するエチレンコポリマーを融着させる場合、極細繊維
の繊維形状を維持することができるように、前記極細繊
維はエチレンコポリマーの融点よりも10℃以上高い融
点を有することが好ましく、20℃以上高い融点を有す
ることがより好ましく、30℃以上高い融点を有するこ
とが最も好ましい。この極細繊維は耐アルカリ性に優れ
るように、ポリオレフィン系のポリマー〔例えば、ポリ
エチレン(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度
ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエ
チレンなど)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、
エチレン−プロピレンコポリマー、又はエチレン−ブテ
ン−プロピレンコポリマーなど〕からなることが好まし
く、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度
ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレ
ン、又はポリメチルペンテンなどからなることがより好
ましい。このような極細繊維は、例えば、機械的処理
(例えば、水流などの流体による処理、又はカレンダー
処理)又は化学的処理(例えば、樹脂の除去処理、又は
樹脂を膨潤させる処理)により分割可能な分割性繊維を
分割したり、メルトブロー法により形成することができ
る。前記方法の中でも、繊維強度の優れる分割性繊維を
分割して形成することが好ましい。この好適である分割
性繊維の断面形状としては、例えば、海島形状、オレン
ジ形状、又は多重バイメタル形状などを挙げることがで
きる。このような分割性繊維は常法の複合紡糸法又は混
合紡糸法により紡糸することができる。
【0022】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する
繊維シートは、電池を製造する際に、極板のバリがセパ
レータを突き抜けたり、極板のエッジにより切断されて
ショートするのを防止することができるように、引張強
さが4.5cN/dtex以上の高強度繊維を含んでい
るのが好ましい。前記高強度繊維は、引張強さが6.2
cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/d
tex以上であることがより好ましく、10.7cN/
dtex以上であることが最も好ましい。本明細書にお
ける「引張強さ」はJIS L 1015(化学繊維ス
テープル試験法)に規定された方法により測定した値を
意味する。前記高強度繊維も耐アルカリ性に優れるよう
に、ポリオレフィン系ポリマー、例えば、ポリエチレン
(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチ
レン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンな
ど)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン
−プロピレンコポリマー、又はエチレン−ブテン−プロ
ピレンコポリマーなどであることが好ましい。これらの
中でも、ポリプロピレン又は超高分子量ポリエチレン
(平均分子量が100万〜500万程度)からなること
が好ましい。
【0023】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する
繊維シートは、更に融着繊維を含むことができる。繊維
シートが融着繊維を含んでいると、セパレータの引張り
強さや剛軟度を向上させることができるため、歩留り良
く電池を製造することができる。前記融着繊維として
は、融着繊維以外の構成繊維の繊維強度を低下させない
ように、融着繊維以外の構成繊維の融点よりも低い融点
を有する樹脂成分(低融点成分ということがある)を、
少なくとも繊維表面に有するのが好ましい。この低融点
成分は、融着繊維以外の繊維のいずれの構成繊維の融点
よりも10℃以上低いことが好ましく、15℃以上低い
ことがより好ましい。なお、前述の親水性樹脂のもとと
なったエチレンコポリマーを融着させる場合には、融着
繊維の低融点成分の融点はエチレンコポリマーの融点よ
りも低い必要はない。この融着繊維も耐アルカリ性に優
れるように、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、例え
ば、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖
状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子
量ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリメチルペ
ンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、又はエチレ
ン−ブテン−プロピレンコポリマーなど、1種類以上か
ら構成することができる。なお、繊維シートが超高分子
量ポリエチレン繊維を高強度繊維として含んでいる場合
には、超高分子量ポリエチレン繊維の強度を低下させな
いように、超高分子量ポリエチレン繊維の軟化温度(例
えば、125℃)未満の温度で、融着繊維を融着するこ
とが好ましい。従って、この場合の融着繊維は低融点成
分として低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。前
記融着繊維は、単一樹脂成分から構成されていることも
できるし、2種類以上の樹脂成分から構成されているこ
ともできる。後者の融着繊維は、セパレータの引張強さ
を向上させることができる点で好ましい。融着繊維が2
種類以上の樹脂成分からなる場合には、融着繊維の断面
形状は、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、偏芯
型、海島型、多重バイメタル型、又はオレンジ型である
ことができる。
【0024】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する
繊維シートに含まれる、親水性繊維、極細繊維、高強度
繊維、及び融着繊維の比率は、特に限定されるものでは
ないが、親水性繊維5〜100mass%と、極細繊維
0〜70mass%と、高強度繊維0〜70mass%
と、融着繊維0〜95mass%とを含むことができ
る。
【0025】また、本発明のアルカリ電池用セパレータを構
成する繊維シートは、親水性繊維、極細繊維、高強度繊
維、或いは融着繊維以外にも、繊度が0.55dtex
を超えるポリオレフィン系繊維を、親水性繊維、極細繊
維、高強度繊維、又は融着繊維としてではなく含むこと
ができる。このようなポリオレフィン系繊維を含んでい
ることによって適度な空隙を形成して、ガス透過性(例
えば、酸素透過性)に優れるセパレータとすることがで
きる。
【0026】本発明のセパレータは前述のような構成からな
るが、セパレータのグラフト率は5〜20%であるのが
好ましく、6〜16%であるのがより好ましく、7〜1
5%であるのが更に好ましい。グラフト率が5%未満で
あると、濡れ性が悪くなる傾向があり、グラフト率が2
0%を超えると、自己放電抑制作用が低下したり、内圧
が高くなったり、電極が液枯れ(ドライアウト)した
り、或いはカリウムイオン濃度が低下する傾向があるた
めである。なお、本明細書における「グラフト率」と
は、次の式から導き出される値をいう。 〔グラフト率(%)〕={A/(A+B)}×100 (式中、Aはグラフト重合処理により導入されたポリマ
ー質量であり、Bはグラフト重合処理を実施する前の繊
維全体(例えば、エチレンコポリマーを含有する繊維、
極細繊維、高強度繊維、融着繊維など)の乾燥重量であ
る)また、本発明のセパレータのアンモニア捕捉量は
0.4mmol/g以上であるのが好ましく、より好ま
しくは0.45mmol/g以上であり、更に好ましく
は0.5mmol/g以上である。アンモニア捕捉量が
0.4mmol/g未満であると、自己放電抑制作用が
低いことがある。本明細書における「アンモニア捕捉
量」とは、以下の工程(A)〜(D)からなる測定法に
より測定した値をいう。 (A)試験片の前処理 (1)試料より試験片約2gを採取し、採取した試験片
の質量(W;単位=g)を測定する(0.001gまで
の精度で測定)。 (2)8mol/l−KOH水溶液120mlをメスシ
リンダーで量り,250ml三角フラスコ(ガラス栓付
き)に注ぎ入れる。 (3)試験片を純水で充分に湿らせた後、充分に絞り、
約1cm2の小片に切断し、前記(2)の三角フラスコ
に入れる。 (4)更に、前記三角フラスコ中に、0.3mol/l
−NH3含有8mol/l−KOH水溶液(8mol/
l−KOH水溶液に、NH3濃度が0.3mol/lと
なるように塩化アンモニウムを添加して調製したもの)
5mlをピペットで正確に添加した後、素早くガラス栓
で密封し、試験片が充分に浸漬するように振り混ぜる。 (5)試験片を入れた三角フラスコを、40℃の恒温槽
中に3日間静置する。 (6)ブランクとして、前記(2)とは別の三角フラス
コを2個用意し、試験片を三角フラスコに入れないこと
以外は、前記(2)〜(5)の操作を繰り返す。 (B)残留アンモニアの蒸留〔パルナス・ワグナー蒸留
装置(図1参照)を用いるミクロケルダール法による蒸
留〕 (1)恒温槽から三角フラスコを取り出し、水道水につ
けて冷却しておく。 (2)一方、図1に示すパルナス・ワグナー蒸留装置1
の注液管21から、水蒸気発生用の丸底フラスコ11内
に純水を入れ、沸騰させる。なお、管21を使用せず
に、例えば、丸底フラスコ11に純水を入れてから蒸留
装置にセットすることもできる。 (3)アンモニア捕捉用フラスコとして、前記(1)の
三角フラスコとは別の新しい500ml三角フラスコ
に、純水200mlを入れ、続いて、ビュレットを用い
て0.1mol/l塩酸2.5mlを注入し、更に10
滴程度のメチルレッドを入れた後、この500ml三角
フラスコを、アンモニア捕捉用フラスコ16として、パ
ルナス・ワグナー蒸留装置1にセットする。この際、蒸
留装置の冷却器15から伸びる誘導管26の下端が、前
記500ml三角フラスコ16の液中に位置するように
セットする。 (4)前記(1)の三角フラスコの中から、アンモニア
含有溶液25mlをピペットで取り出し、パルス・ワグ
ナー蒸留装置1の液注入口13から注入する。注入され
たアンモニア含有溶液は、誘導管24を通って、真空ビ
ン14中に誘導される。前記液注入口13を純水で洗い
流した後、液注入口13をクリップ17で止める。 (5)前記(2)の丸底フラスコ11内の純水を沸騰さ
せて水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、誘導管2
2、排水器12、誘導管23、及び誘導管24をこの順
に通過し、前記真空ビン14に導びかれる。この水蒸気
により、真空ビン中のアンモニア含有溶液に含まれるア
ンモニアが蒸発し、蒸発したアンモニア蒸気は、真空ビ
ン14の上部に取り付けられている誘導管25を通っ
て、冷却器15に送られ、凝縮される。凝縮されたアン
モニアは、冷却器15から伸びる誘導管26を通り、ア
ンモニア捕捉用の500ml三角フラスコ16に回収さ
れる。真空ビン14中のアンモニア含有溶液中に含まれ
るアンモニアが、完全にアンモニア捕捉用500ml三
角フラスコ16に回収されるまで、このアンモニア蒸留
を行う。 (6)前記アンモニア蒸留終了後、パルナス・ワグナー
蒸留装置1から、アンモニア捕捉用の500ml三角フ
ラスコ16を取り外す。冷却器15から伸びる誘導管2
6の外部を蒸留水で洗浄し、この洗浄液も前記500m
l三角フラスコにいれる。 (C)滴定 (1)前記(B)(6)の500ml三角フラスコ内の
溶液の色がピンク色である場合(すなわち、塩酸が残留
している場合)には、このフラスコ内に、0.1mol
/l水酸化カリウム水溶液を、黄変するまで、ビュレッ
トから滴下することにより滴定する(滴下した0.1m
ol/l水酸化カリウム水溶液量をV1とする)。前記
(B)(6)の500ml三角フラスコ内の溶液の色が
黄色である場合(すなわち、塩酸が残留していない場
合)には、このフラスコ内に、0.1mol/l塩酸
を、赤変するまで、ビュレットから滴下することにより
滴定する(滴下した0.1mol/l塩酸量V2とす
る)。 (2)ブランクとして用意した500ml三角フラスコ
では、この三角フラスコ内の酸が全部消費され、黄変し
ているので、0.1mol/l塩酸を、赤変するまで、
ビュレットから滴下することにより滴定する(滴下した
0.1mol/l塩酸量をV0とする)。 (D)アンモニア捕捉量の決定 (1)アンモニア捕捉量(Cp:単位=mmolNH3
g)は、次の計算式から算出する。 Cp=(n0−np)/W 〔式中、n0は、下記式(1)で算出される、ブランク
試験で残存したアンモニア量(mmolNH3)であ
り、npは、下記式(2)で算出される、試験片で捕捉
されなかったアンモニア量n1(mmolNH3)である
か、下記式(3)で算出される、試験片で捕捉されなか
ったアンモニア量n2(mmolNH3)である。なお、
0は、2つのブランクの平均値である〕 n0=(125/25)×(2.5+V0)×0.1 ・・(1) n1=(125/25)×(2.5−V1)×0.1 ・・(2) n2=(125/25)×(2.5+V2)×0.1 ・・(3)
【0027】本発明のアルカリ電池用セパレータは単位質量
当たりのカリウムイオン交換容量が0.3〜2meq/
gであるのが好ましく、より好ましくは0.4〜1.7
meq/gであり、最も好ましくは0.5〜1.5me
q/gである。カリウムイオン交換容量が0.3meq
/g未満であると、電解液の濡れ性が悪くなる傾向があ
り、カリウムイオン交換容量が2meq/gを超える
と、電解液中のカリウムイオンを捕捉し、カリウムイオ
ン濃度が低下して電池寿命が短くなる傾向がある。本明
細書における「カリウムイオン交換容量」は、以下の工
程(A)〜(E)からなる測定方法により算出した値を
意味する。 (A)試験片の調製 (1)試験片として、試料の巾方向より、50mm×2
00mmの試験片を3枚採取する。 (2)採取した各試験片の質量(W;単位=g)を測定
する(0.001gまで精度で測定)。 (B)試験片の前処理 (1)フタ付きプラスチック容器に1mol/l塩酸水
溶液を入れる。なお、塩酸水溶液の量は、次の工程
(2)において、フタ付きポリ容器に入れた試験片が充
分に沈む量とする。 (2)試験片を純水で充分に湿らせた後、試験片をフタ
付きプラスチック容器の中に入れ、密閉する。 (3)60℃の恒温槽中に、前記フタ付きプラスチック
容器を1時間入れる。 (4)1時間後、フタ付きプラスチック容器から試験片
を取り出し、純水で充分すすぐ。 (C)アルカリ添加 (1)新しいフタ付きプラスチック容器(100ml)
に、前記(B)の前処理を実施した試験片を1枚ずつ丸
めて入れ、純水90mlを加える。その中に0.1mo
l/l水酸化カリウム標準液10mlを正確にピペット
で入れ、フタをして軽く振る。 (2)ブランクとして、前記(1)とは別のフタ付きプ
ラスチック容器(100ml)2個に、それぞれ、純水
を90ml注ぎ、その中に0.1mol/l水酸化カリ
ウム標準液10mlを正確にピペットで入れ、フタをし
て軽くふる。 (3)前記(1)及び(2)の全てのフタ付きプラスチ
ック容器を60℃の恒温槽の中に2時間入れる。 (4)2時間後、プラスチック容器を取り出し、水につ
け常温に戻す(20分間位)。 (D)滴定 (1)試験片を含むフタ付きプラスチック容器から、中
の液のみをビーカーに移す(試験片は、含浸状態のまま
で容器中に残す)。 (2)フタ付きプラスチック容器内及び試験片を純水で
充分に洗浄し、洗浄液も前記(1)のビーカーに加え
る。 (3)ビーカー中の液を撹拌しながら、滴定指示薬フェ
ノールフタレン液を数滴(約2滴)加える(液は赤色に
なる)。 (4)0.1mol/l塩酸標準液をビュレットから滴
下し、滴定を行う。 (5)液の色が赤色から透明になったときの数値〔試験
片の塩酸滴定量:b(ml)〕を読む。 (6)ブランクとして用意したフタ付きプラスチック容
器2個においても、前記(1)〜(5)の操作を繰り返
し、滴定する〔ブランクの塩酸滴定量:c(ml)〕。 (E)カリウムイオン交換容量の決定 (1)カリウムイオン交換容量(X:単位=meq/
g)は、以下の計算式から算出し、3枚の試験片の測定
計算値の平均(小数点以下1ケタまで)で表す。 〔X(meq/g)〕={(c−b)×0.1}/W 〔式中、Xは「単位重量当たりのイオン交換量」であ
り、bは「試験片の塩酸滴定量」であり、cは「ブラン
クの塩酸滴定量」であり、Wは「試験片重量W(g)」
である〕
【0028】本発明のセパレータの面密度は30〜100g
/m2であることが好ましく、40〜80g/m2である
ことがより好ましい。面密度が30g/m2未満である
と、引張強さが不足する場合があり、100g/m2
超えると、厚くなり過ぎて電池の高容量化が困難になる
傾向があるためである。
【0029】本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する
多孔性シートは、常法により製造することができる。本
発明のアルカリ電池用セパレータを構成する多孔性シー
トとして好適である不織布は、例えば、次のようにして
製造することができる。前述のような親水性繊維を用意
してセパレータを製造しても良いが、前述のようなエチ
レンコポリマーを少なくとも繊維表面に有する繊維を用
いて不織布を形成した後に、この不織布に対してグラフ
ト重合を実施してセパレータを製造すると、グラフト重
合された樹脂を損傷せず、製造上好適であり、更にはエ
チレンコポリマーを少なくとも繊維表面に有する繊維以
外の繊維にもグラフト重合することができるため好適で
ある。以下、不織布を形成した後に、この不織布に対し
てグラフト重合を実施してセパレータを製造する方法に
関して説明するが、エチレンコポリマーを少なくとも繊
維表面に有する繊維に対してグラフト重合した後に不織
布(セパレータ)を製造する場合も、全く同様にグラフ
ト重合することができ、また、全く同様にして不織布
(セパレータ)を製造することができる。
【0030】まず、エチレンコポリマーを少なくとも繊維表
面に有する繊維、すなわち、不飽和カルボン酸、不飽和
カルボン酸誘導体、不飽和カルボン酸無水物の中から選
ばれる一種類以上とエチレンとからなり、結晶化度が1
5%以上のエチレンコポリマーを少なくとも繊維表面に
有する繊維、所望により、極細繊維を発生させることの
できる分割性繊維、高強度繊維、或いは融着繊維を用意
する。なお、前述のようなエチレンコポリマーを少なく
とも繊維表面に有する繊維の代わりに、或いは加えて、
前述のようなエチレンコポリマーを少なくとも繊維表面
に有する極細繊維を発生可能な分割性繊維を用いること
もできる。
【0031】次いで、これら繊維を使用して、乾式法(例え
ば、カード法又はエアレイ法など)又は湿式法により繊
維ウエブを形成する。なお、スパンボンド法又はメルト
ブロー法により、繊維ウエブを直接形成することもでき
る。この繊維ウエブは1種類である必要はなく、乾式法
により形成した繊維ウエブと湿式法により形成した繊維
ウエブとを積層するなど、2種類以上の繊維ウエブを積
層することができる。このように、乾式法により形成し
た繊維ウエブと湿式法により形成した繊維ウエブとを積
層した場合、乾式法により形成した繊維ウエブによる引
張強さと、湿式法で形成した繊維ウエブの均一性とを兼
ね備えた不織布を製造することができる。
【0032】繊維シートを構成する各繊維の繊維長は、繊維
ウエブの形成方法により異なり、乾式法により形成する
場合には、例えば、25〜160mm長程度であるのが
適当であり、湿式法により形成する場合には、例えば、
1〜25mm長程度であるのが適当である。なお、平均
繊度は電解液の保持性に優れるように、あるいは、不織
布を製造しやすいように、0.55〜6.6dtex程
度(分割性繊維を含んでいる場合には分割前の繊度)が
適当である。この「平均繊度」とは、繊維シートから無
作為に選んだ繊維100本の繊度の平均値をいう。
【0033】続いて、前記繊維ウエブを結合して不織布を形
成する。この結合方法としては、例えば、水流などの流
体流やニードルによる絡合方法、エチレンコポリマーを
表面の少なくとも一部に含有する繊維を部分的又は全面
的に融着する方法、あるいは、融着繊維を含んでいる場
合には融着繊維を部分的又は全面的に融着する方法など
を単独で、あるいは、併用する方法を挙げることができ
る。なお、繊維ウエブ中に、機械的処理により分割可能
な分割性繊維が含まれている場合には、水流などの流体
流を作用させると、分割性繊維を分割(極細繊維の発
生)することができる。この流体流による絡合条件(場
合により分割条件)としては、例えば、ノズル径0.0
5〜0.3mm及びピッチ0.2〜3mmで、一列又は
二列以上にノズルを配置したノズルプレートから、圧力
1MPa〜30MPaの流体流(特には水流)を繊維ウ
エブに対して噴出すれば良い。このような流体流は1回
以上、繊維ウエブの片面又は両面に対して噴出する。な
お、流体流で処理する際に、繊維ウエブを支持する支持
体が大きな開孔部を有すると、得られる不織布も大きな
孔を有するものとなり、短絡が生じやすくなるので、支
持体が開孔部を有する場合には、開孔部と開孔部との距
離は0.25mm以下であることが好ましい。また、エ
チレンコポリマーを少なくとも繊維表面に有する繊維及
び/又は融着繊維を融着する場合には、エチレンコポリ
マー成分及び/又は融着繊維の低融点成分のみを融着で
きるような条件下で実施することが好ましい。より具体
的には、加熱と加圧とを同時に実施する場合の加熱温度
は、エチレンコポリマー成分又は融着繊維の低融点成分
の軟化温度から融点までの範囲内の温度であることが好
ましい。また、加熱後に加圧を行なう場合の加熱温度
は、エチレンコポリマー成分又は低融点成分の軟化温度
から融点よりも20℃以上高い温度までの範囲内の温度
で実施することが好ましい。なお、エチレンコポリマー
成分及び低融点成分の両方を融着させる場合には、前記
軟化温度はエチレンコポリマー成分及び融着繊維の低融
点成分の内、より低い方の温度を意味し、前記融点はエ
チレンコポリマー成分及び融着繊維の低融点成分の内、
より高い方の温度を意味する。なお、加圧条件はいずれ
の場合も線圧力5〜30N/cm程度で実施することが
好ましい。また、高強度繊維として、超高分子量ポリエ
チレン繊維を含んでいる場合には、超高分子量ポリエチ
レン繊維の軟化温度(例えば125℃)未満の温度で実
施するのが好ましい。このような絡合処理(場合により
分割処理)や融着処理は単独で実施することもできる
し、適宜組み合わせて実施することもできる。適宜組み
合わせる場合、その順序は特に限定されるものではな
く、絡合処理を先に実施してから融着処理を実施するこ
ともできるし、融着処理を先に実施してから絡合処理を
実施することもできる。繊維ウエブ中に、自由度の高い
分割性繊維を含んでいる場合(特に、ポリオレフィン系
ポリマーのみからなる繊維長1〜20mm程度の分割性
繊維を含んでいる場合)、この分割性繊維は分割しにく
いため、分割性繊維を構成する樹脂成分、エチレンコポ
リマー成分、或いは融着繊維の低融点成分の少なくとも
一成分を融着させて、分割性繊維の自由度を低下させた
後に、流体流などを作用させることが好ましい。なお、
このように融着後に流体流を作用させて分割性繊維を分
割すると、分割前の融着が破壊される傾向にあるため、
分割性繊維を分割した後に、再度、分割性繊維を構成す
るポリマー成分、エチレンコポリマー成分、或いは融着
繊維の低融点成分の少なくとも一成分を融着させて、引
張り強さや剛性を高めることが好ましい。また、このよ
うに融着後に流体流を作用させると、分割性繊維は絡合
よりも分割が主体に進行する。
【0034】このようにして形成した不織布に、ビニル基を
有するモノマー、ビニル基を有するモノマーに由来する
オリゴマー、ビニル基を有するモノマーに由来するポリ
マーの中から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有
するグラフト重合用液を付着させた後、このグラフト重
合用液が付着した不織布を酸素存在下でグラフト重合処
理を実施して、本発明のセパレータを得ることができ
る。本発明の不織布はエチレンコポリマーを少なくとも
繊維表面に有する繊維を含んでいるため、グラフト重合
用液の保持性に優れている。したがって、効率よく、し
かも温和な条件下でグラフト重合を実施することができ
る。このグラフト重合用液に含まれているビニル基を有
するモノマー、ビニル基を有するモノマーに由来するオ
リゴマー、ビニル基を有するモノマーに由来するポリマ
ーは、前述と同様のものを使用することができる。ま
た、これら化合物は少なくとも1種類含まれていれば良
く、2種類以上含まれていても良い。このグラフト重合
用液に含有されているビニル基を有するモノマー、ビニ
ル基を有するモノマーに由来するオリゴマー、ビニル基
を有するモノマーに由来するポリマーの濃度は特に限定
されるものではないが、10〜40mass%であるこ
とが好ましく、15〜35mass%であることがより
好ましく、20〜35mass%であることが更に好ま
しい。ビニル基を有するモノマー、ビニル基を有するモ
ノマーに由来するオリゴマー、ビニル基を有するモノマ
ーに由来するポリマーの濃度が10mass%未満であ
ると、グラフト率が5%以上のセパレータを製造するこ
とが困難になる傾向があり、ビニル基を有するモノマ
ー、ビニル基を有するモノマーに由来するオリゴマー、
ビニル基を有するモノマーに由来するポリマーの濃度が
40mass%を超えると、グラフト率が20%以下の
セパレータを製造することが困難になる傾向がある。
【0035】このグラフト重合用液はビニル基を有するモノ
マー、ビニル基を有するモノマーに由来するオリゴマ
ー、ビニル基を有するモノマーに由来するポリマー以外
に、界面活性剤を含んでいることができる。界面活性剤
を含んでいることによって、グラフト重合用液と不織布
との馴染みを更に良くし、均一なグラフト重合反応を行
うことができ、また、得られるセパレータのアルカリ溶
液への濡れ性を向上させることができる。この界面活性
剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤(例えば、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエ
チレンアルキルフェノールエーテル、高級アルコール、
又はアルキルエトキシレート)、又はアニオン系界面活
性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキル
スルホン酸塩、又はスルホコハク酸エステル塩)を挙げ
ることができる。濡れ性の付与及び電池性能の点で、ノ
ニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、高級アル
コール又はアルキルエトキシレートを用いることが特に
好ましい。このように界面活性剤を混合する場合、界面
活性剤の濃度は好ましくは0.01〜3mass%であ
り、より好ましくは0.02〜3mass%であり、更
に好ましくは0.05〜1mass%である。界面活性
剤の濃度が0.01%未満であると、均一なグラフト重
合反応を行うことができなくなる傾向がある。また、界
面活性剤の濃度が3mass%を超えると、自己放電抑
制作用に優れるセパレータを製造することが困難にある
傾向があり、また、粘着性が生じやすく、製造上、不都
合が生じることがあるためである。
【0036】本発明の製造方法においては、グラフト重合用
液に更に連鎖移動剤を含有させることができる。このよ
うな連鎖移動剤を含有していると、グラフト鎖を短くす
ることができると考えられ、未反応のホモポリマーなど
の洗浄除去性に優れているため、製造上好ましい。ま
た、連鎖移動剤を含有するグラフト重合用液を用いて、
酸素存在下でグラフト重合処理を実施すると、自己放電
抑制作用により優れるセパレータを製造できる傾向があ
るため好ましい。このように自己放電抑制作用に優れて
いると、グラフト率を低くすることができ、その結果、
耐酸化性が向上するという二次的な効果も奏する。この
連鎖移動剤としては、例えば、低級アルコ−ル(例え
ば、イソプロピルアルコール)、多官能アルコール類
(例えば、ポリエチレングリコール)、又はジカルボン
酸類(例えば、マレイン酸)を使用することができ、電
池性能への影響の点で、ポリエチレングリコールを用い
ることが好ましい。特には、重合度が6000以下のポ
リエチレングリコールを用いるのが好ましい。使用する
ポリエチレングリコールの重合度が6000を超える
と、グラフト重合用液の粘性が高くなりすぎて、製造
上、不都合が生じることがあるためである。本発明の製
造方法において用いるグラフト重合用液に含有すること
のできる連鎖移動剤(特にはポリエチレングリコール)
の濃度は、これに限定されるものではないが、3〜50
mass%であることが好ましく、5〜30mass%
であることがより好ましく、5〜25mass%である
ことが更に好ましい。連鎖移動剤濃度が3mass%未
満であると、自己放電抑制作用が低下する傾向があり、
又粘着性が生じやすいため、製造上、不都合が生じるこ
とがある。連鎖移動剤が50mass%を超えるとグラ
フト率が低下し、しかも自己放電抑制作用が低下する傾
向があるためである。
【0037】本発明の製造方法において用いるグラフト重合
用液には、更に反応開始剤を含んでいることができる。
この反応開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、過
酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、又はアゾ化合物
を使用することができ、電池性能への影響の点で、ベン
ゾフェノンを用いることが好ましい。本発明の製造方法
において用いるグラフト重合用液に含有することのでき
る反応開始剤(特にはベンゾフェノン)の濃度は、これ
に限定されるものではないが、0.05〜1mass%
であることが好ましく、0.05〜0.5mass%で
あることがより好ましく、0.05〜0.3mass%
であることが更に好ましい。反応開始剤濃度が0.05
mass%未満であると、グラフト重合が充分に進行し
ない傾向があり、反応開始剤濃度が1mass%を超え
ると、自己放電抑制作用に優れるセパレータを製造しに
くくなる傾向があるためである。
【0038】本発明の製造方法において用いるグラフト重合
用液の溶媒(分散媒)としては、特に限定されるもので
はないが、例えば、水、アルコール、又はアセトンを用
いることができる。
【0039】前述のような不織布に対して、上述のようなグ
ラフト重合用液を付着させる方法としては、例えば、
(1)グラフト重合用液を不織布に対して塗布又は散布
する方法、(2)グラフト重合用液中に不織布を浸漬す
る方法、などを挙げることができる。なお、不織布に余
分なグラフト重合用液が含まれていると、重力によって
グラフト重合用液が偏在し、結果として偏在した状態で
グラフト重合することになるため、余分なグラフト重合
用液を除去するのが好ましい。すなわち、グラフト重合
用液の量が不織布の面密度の0.4〜2.5倍量となる
ように、例えば、一対のロール間を通したり、平板プレ
ス間を通すことにより、余剰のグラフト重合用液を除去
するのが好ましい。また、グラフト重合用液を不織布に
付着させる前に、グラフト重合用液と不織布との馴染み
を更に良くするために、例えば、紫外線照射、コロナ放
電、或いはプラズマ放電などにより不織布の表面処理を
実施しても良い。
【0040】次いで、グラフト重合用液が付着した多孔性シ
ートを酸素存在下でグラフト重合処理を実施して、本発
明のセパレータを得ることができる。このように酸素存
在下でグラフト重合処理を実施すると、アンモニア捕捉
量が多く、自己放電抑制作用の優れるセパレータを得る
ことができることを見い出したのである。この酸素存在
下でのグラフト重合処理は1段階で実施することもでき
るし、2段階以上のステップをふんで実施することもで
きる。以下、好適である2段階のステップをふんでグラ
フト重合処理を実施する方法について説明する。
【0041】まず、グラフト重合用液を付着させた不織布
を、酸素存在下で、第1のグラフト重合処理(以下、第
1のグラフト重合処理工程と称する)を行い、次いで、
第1のグラフト重合処理工程を実施した不織布(以下、
第1グラフト重合処理化不織布と称する)の上面及び下
面の全領域を非通気性フィルムで覆い、酸素量を減らし
た状態で、更に、第2のグラフト重合処理(以下、第2
のグラフト処理工程と称する)を行うことを含む方法に
よって調製するのが好ましい。この第1のグラフト重合
処理工程では、グラフト重合用液の付着した不織布を酸
素存在下で、第1のグラフト重合を行う。この酸素存在
下での第1のグラフト重合処理工程の際には、酸素が存
在していれば構わないので、例えば、空気中で実施する
こともできるし、酸素を供給しながら実施することもで
きる。第1のグラフト重合処理工程におけるグラフト重
合方法としては、例えば、紫外線照射、遠赤外線照射、
放射線照射(X線、α線、β線、又はγ線)、或いは熱
重合などを挙げることができる。これらの方法の中で
も、繊維表面のみでグラフト重合させることができ、し
かも反応開始剤のラジカル発生時間が短く、短時間でグ
ラフト重合可能である点で、紫外線照射が好ましい。第
1のグラフト重合処理工程では、グラフト重合用液が完
全に蒸散しない程度まで実施することができる。第1の
グラフト重合処理工程におけるグラフト重合処理時間
は、例えば、グラフト重合方法の種類、グラフト重合の
実施条件(例えば、照射強度)、或いはグラフト率など
に応じて適宜決定することができる。
【0042】続く第2のグラフト重合処理工程では、酸素量
を減らすために、第1グラフト重合処理化不織布の上面
及び下面の全領域を非通気性フィルムで覆った状態で実
施する。第1グラフト重合処理化不織布の上面及び下面
の全領域を非通気性フィルムで覆うことにより、第1グ
ラフト重合処理化不織布から蒸発したビニル基を有する
モノマー、ビニル基を有するモノマーに由来するオリゴ
マー、ビニル基を有するモノマーに由来するポリマーが
拡散しない状態で第2のグラフト重合処理工程を実施す
ることができるという効果も奏する。
【0043】前記非通気性フィルムは、気体(酸素やグラフ
ト重合用液の蒸気など)を通さないフィルムである限り
特に限定されるものではないが、反応開始剤の吸収波長
における光透過度が高い(例えば、80%以上)非通気
性フィルムを使用するのが好ましく、例えば、ポリオレ
フィン系フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム又は
ポリプロピレンフィルム)を用いることが好ましい。反
応開始剤の吸収波長における光透過度が低いと、グラフ
ト重合反応の進行を妨げるからである。非通気性フィル
ムで第1グラフト重合処理化不織布の上面及び下面の全
領域を覆う場合には、第1グラフト重合処理化不織布の
内部空間及び外側表面近傍の空間とに、酸素の存在を許
すように、両側から第1グラフト重合処理化不織布に対
して圧力を加えないように、非通気性フィルムで挟む。
すなわち、第2のグラフト重合処理工程も酸素の存在下
で実施する。また、第2のグラフト重合処理工程におけ
る、第1グラフト重合処理化不織布の端部及びその周辺
については、非通気性フィルムで覆う(例えば、第1グ
ラフト重合処理化不織布の上面を覆う非通気性フィルム
と、第1グラフト重合処理化不織布の下面を覆う非通気
性フィルムとが連続している)こともできるし、非通気
性フィルムで覆わないでおく(例えば、第1グラフト重
合処理化不織布の上面を覆う非通気性フィルムと、第1
グラフト重合処理化不織布の下面を覆う非通気性フィル
ムとが分離している)こともできる。第2のグラフト重
合処理工程におけるグラフト重合方法としては、例え
ば、紫外線照射、遠赤外線照射、放射線照射(X線、α
線、β線、又はγ線)、又は熱重合などを挙げることが
できる。なお、第1のグラフト重合処理工程における第
1のグラフト重合と、第2のグラフト重合処理工程にお
ける第2のグラフト重合とは、第1グラフト重合処理化
不織布を覆う非通気性フィルムの有無以外の重合条件
が、同じであっても異なっていても構わない。第2のグ
ラフト重合処理工程では、セパレータが所望のグラフト
率、或いはアンモニア捕捉量となるまで実施する。好ま
しくは、グラフト率が5〜20%(好ましくは6〜16
%、より好ましくは7〜15%)となるまで実施する。
或いはアンモニア捕捉量が0.4mmol/g以上(好
ましくは0.45mmol/g以上、より好ましくは
0.5mmol/g以上)となるまで実施する。第2の
グラフト重合処理工程におけるグラフト重合処理時間
は、例えば、用いるグラフト重合方法の種類、グラフト
重合の実施条件(例えば、照射強度)、グラフト率など
に応じて適宜決定することができる。
【0044】第1グラフト重合処理工程の処理時間(A)
と、第2グラフト重合処理工程の処理時間(B)との比
は特に限定するものではないが、全グラフト重合処理時
間(A+B)に占める第1グラフト重合処理工程の処理
時間(A)の比{すなわち、A/(A+B)}は、1/
10〜9/10であることが好ましく、4/10〜9/
10であることがより好ましく、7/10〜9/10で
あることが更に好ましい。全グラフト重合処理時間に占
める第1グラフト重合の処理時間の比が1/10よりも
小さくなると、自己放電抑制作用や耐酸化性が低くなる
傾向がある。全グラフト重合処理時間に占める第1グラ
フト重合の処理時間の比が9/10を超えると、充分な
親水性が得られず、電解液の濡れ性が悪くなる傾向があ
る。
【0045】このように第1及び第2のグラフト重合処理工
程を実施した不織布は、例えば、水、温水、湯、又はア
ルコールなどによって充分に洗浄することが好ましい。
第1及び第2のグラフト重合処理工程を実施した不織布
は、多少の未反応物(例えば、ビニル基を有するモノマ
ー、ビニル基を有するモノマーに由来するオリゴマー、
ビニル基を有するモノマーに由来するポリマーなど)を
含んだ状態にあるからである。
【0046】このようにしてグラフト重合処理を実施した不
織布に対して、更に公知の親水化処理、例えば、(1)
界面活性剤付与処理、(2)窒素ガスなどの不活性ガス
で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、
又は二酸化硫黄ガスなどの中から選んだ少なくとも1種
類のガスとの混合ガスによる処理、(3)放電処理、な
どの各種親水化処理により更に親水化して、電解液の注
液速度を速くし、電池の生産性を向上させることができ
る。これらの中でも(1)界面活性剤付与処理が好まし
く、この場合、セパレータの質量に対して界面活性剤を
0.1〜3mass%の量で付着させることが好まし
く、0.2〜1.5mass%の量で付着させることが
より好ましく、0.3〜1.2mass%の量で付着さ
せることが更に好ましい。
【0047】本発明のセパレータは自己放電抑制作用に優れ
ているだけでなく、濡れ性及び電解液との親和性におい
て優れた特性を有する。従って、本発明のセパレータ
は、ニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池な
どのアルカリ電池に好適に使用することができる。もち
ろん、その他のアルカリ電池、たとえば、アルカリ一次
電池(例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化
銀電池、又は空気電池)又はアルカリ二次電池(例え
ば、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜
鉛電池、又は充電式アルカリマンガン電池)のセパレー
タとしても好適に使用することができる。
【0048】以下、実施例によって本発明を具体的に説明す
るが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
【実施例】(実施例1)常法の複合紡糸装置により温度
260℃で紡糸し、3倍延伸して、メタクリル酸−エチ
レンコポリマー(融点:105℃、結晶化度:28%)
からなる鞘成分と、ポリプロピレン(融点:160℃)
からなる芯成分とからなる、芯鞘型エチレン系繊維(繊
度:2.2dtex、繊維長:10mm、芯鞘比=1:
1)を製造した。次いで、この芯鞘型エチレン系繊維1
00%からなるスラリーを、常法の湿式抄造法により繊
維ウエブを形成した。次いで、この繊維ウエブを温度1
15℃に設定されたドライヤー(無圧下)により熱処理
した後、線圧力10N/cmのカレンダーにより押圧し
て、芯鞘型エチレン系繊維の鞘成分を融着させて不織布
を製造した。
【0050】他方、次の配合成分(1)〜(6)からなるグ
ラフト重合用液を調製した。 (1)アクリル酸モノマー 30 mass% (2)ベンゾフェノン 0.1mass% (3)硫酸鉄 0.4mass% (4)ノニオン系界面活性剤 0.1mass% (5)ポリエチレングリコール(重合度:400) 10 mass% (6)水 59.4mass% 次いで、前記不織布に前記グラフト重合用液を含浸した
後(不織布の面密度に対して、0.8の割合でグラフト
重合用液を含有)、不織布の両側に1個ずつ配置したメ
タルハライド水銀灯から180mW/cm2の照度で、
365nm中心の紫外線を空気中で20秒間照射して、
第1のグラフト重合を実施した。次いで、この第1グラ
フト重合処理化不織布の内部空間及び外側表面近傍の空
間に空気を排除しないように、2枚の非通気性ポリプロ
ピレンフィルムでサンドイッチ状に覆い、この第1グラ
フト重合処理化不織布の両側に1個ずつ配置したメタル
ハライド水銀灯から180mW/cm2の照度で、36
5nm中心の紫外線を10秒間照射して、第2のグラフ
ト重合を実施した。次いで、グラフト重合した不織布を
充分に水洗いし、乾燥した後、線圧10N/cmでカレ
ンダー処理して、本発明のセパレータ(面密度=59.
7g/m2、厚さ=0.15mm、グラフト率=9.6
%)を製造した。このセパレータは、メタクリル酸−エ
チレンコポリマー(結晶化度:28%)にアクリル酸が
グラフト重合された親水性樹脂を表面に有する親水性繊
維のみから構成されていた。
【0051】(実施例2)常法の複合紡糸装置により温度2
60℃で紡糸し、3倍延伸して、メタクリル酸−エチレ
ンコポリマー(融点:101℃、結晶化度:23%)か
らなる鞘成分と、ポリプロピレン(融点:160℃)か
らなる芯成分とからなる、芯鞘型エチレン系繊維(繊度
2.2dtex、繊維長10mm、芯鞘比=1:1)を
製造した。次いで、前記実施例1と同様にして、不織布
を製造した。次いで、第2のグラフト重合処理における
紫外線照射時間を8秒間としたこと以外は、実施例1と
全く同様にして、本発明のセパレータ(面密度=59.
9g/m2、厚さ=0.15mm、グラフト率=9.8
%)を製造した。このセパレータは、メタクリル酸−エ
チレンコポリマー(結晶化度:23%)にアクリル酸が
グラフト重合された親水性樹脂を表面に有する親水性繊
維のみから構成されていた。
【0052】(実施例3)常法の複合紡糸装置により温度2
60℃で紡糸し、3倍延伸して、メタクリル酸−エチレ
ンコポリマー(融点:95℃、結晶化度:16%)から
なる鞘成分と、ポリプロピレン(融点:160℃)から
なる芯成分とからなる、芯鞘型エチレン系繊維(繊度
2.2dtex、繊維長10mm、芯鞘比=1:1)を
製造した。次いで、前記実施例1と同様にして、不織布
を製造した。次いで、第2のグラフト重合処理における
紫外線照射時間を5秒間としたこと以外は、実施例1と
全く同様にして、本発明のセパレータ(面密度=60.
0g/m2、厚さ=0.15mm、グラフト率=9.9
%)を製造した。このセパレータは、メタクリル酸−エ
チレンコポリマー(結晶化度:16%)にアクリル酸が
グラフト重合された親水性樹脂を表面に有する親水性繊
維のみから構成されていた。
【0053】(実施例4)前記実施例2と同じ芯鞘型エチレ
ン系繊維(以下、「芯鞘型エチレン系第1繊維」とい
う)と、高密度ポリエチレン(融点=130℃、結晶化
度=60%)からなる鞘成分と、ポリプロピレン(融点
=160℃)からなる芯成分とからなる、芯鞘型エチレ
ン系第2繊維(繊度=2.2dtex、繊維長=10m
m、芯鞘比=1:1)とを準備した。次いで、前記芯鞘
型エチレン系第1繊維30mass%と、前記芯鞘型エ
チレン系第2繊維70mass%とからなるスラリー
を、常法の湿式抄造法により繊維ウエブを形成した。次
いで、この繊維ウエブを温度115℃に設定されたドラ
イヤー(無圧下)により熱処理した後、線圧力10N/
cmのカレンダーにより押圧して、芯鞘型エチレン系第
1繊維の鞘成分のみを融着させて不織布を製造した。次
いで、実施例1と全く同様にしてグラフト重合処理を実
施して、本発明のセパレータ(面密度=59.9g/m
2、厚さ=0.15mm、グラフト率=9.8%)を製
造した。このセパレータは、メタクリル酸−エチレンコ
ポリマー(結晶化度:23%)にアクリル酸がグラフト
重合された親水性樹脂を表面に有する親水性繊維を30
mass%含んでいた。
【0054】(比較例1)常法の複合紡糸装置により温度2
60℃で紡糸し、3倍延伸して、メタクリル酸−エチレ
ンコポリマー(融点:91℃、結晶化度:14%)から
なる鞘成分と、ポリプロピレン(融点:160℃)から
なる芯成分とからなる、芯鞘型エチレン系繊維(繊度
2.2dtex、繊維長10mm、芯鞘比=1:1)を
製造した。次いで、前記実施例1と同様にして、不織布
を製造した。次いで、第2のグラフト重合処理における
紫外線照射時間を3秒間としたこと以外は、実施例1と
全く同様にして、比較用セパレータ(面密度=60.1
g/m2、厚さ=0.15mm、グラフト率=10.0
%)を製造した。
【0055】(比較例2)前記実施例4と同じ芯鞘型エチレ
ン系第2繊維100mass%からなるスラリーを、常
法の湿式抄造法により繊維ウエブを形成した。次いで、
この繊維ウエブを温度136℃に設定されたドライヤー
(無圧下)により熱処理した後、線圧力10N/cmの
カレンダーにより押圧して、芯鞘型エチレン系第2繊維
の鞘成分のみを融着させて不織布を製造した。
【0056】他方、次の配合成分(1)〜(5)からなるグ
ラフト重合用液を調製した。 (1)アクリル酸モノマー 30 mass% (2)ベンゾフェノン 0.1mass% (3)硫酸鉄 0.4mass% (4)ノニオン系界面活性剤 0.1mass% (5)水 69.4mass% 次いで、前記不織布に前記グラフト重合用液を含浸した
後(不織布の面密度に対して、0.8の割合でグラフト
重合用液を含有)、この不織布の内部空間及び外側表面
近傍の空間から空気を排除するように、2枚の非通気性
ポリプロピレンフィルムで挟んだ状態で、この不織布の
両側に1個ずつ配置したメタルハライド水銀灯から18
0mW/cm2の照度で、365nm中心の紫外線を2
0秒間照射して、アクリル酸をグラフト重合させた。次
いで、グラフト重合した不織布を充分に水洗いし、乾燥
した後、線圧10N/cmでカレンダー処理して、比較
用セパレータ(面密度=59.5g/m2、厚さ=0.
15mm、グラフト率=9.5%)を製造した。
【0057】(1)アンモニア捕捉量の測定 前記実施例1〜4で製造した本発明のセパレータ及び前
記比較例1〜2で製造した比較用セパレータのアンモニ
ア捕捉量を、前述の方法により測定した。結果を表1に
示す。
【0058】(2)カリウムイオン交換容量の測定 前記実施例1〜4で製造した本発明のセパレータ及び前
記比較例1〜2で製造した比較用セパレータのカリウム
イオン交換容量を、前述の方法により測定した。結果を
表1に示す。
【0059】(3)電池容量試験 電極の集電体として、発泡ニッケル基材を用いたペース
ト式ニッケル正極(33mm、182mm長)と、ペー
スト式水素吸蔵合金負極(メッシュメタル系合金、33
mm、247mm長)とを作成した。次いで、前記実施
例1〜4及び前記比較例1〜2で調製した各セパレータ
を35mm幅及び410mm長に裁断した後、それぞれ
正極と負極との間に挟み、渦巻き状に巻回して、SC型
対応の電極群を作成した。次いで、この電極群を外装缶
に収納した後、電解液として5mol/l水酸化カリウ
ム及び1mol/l水酸化リチウムを外装缶に注液し、
封缶して円筒型ニッケル−水素電池を作成した。次い
で、それぞれの円筒型ニッケル−水素電池を、0.1C
で容量に対して150%充電した後、0.1Cで放電
し、終止電圧が1.0Vでの初期容量(A)を測定し
た。次いで、0.1Cで容量に対して150%充電した
後、温度65℃の恒温室内に5日間放置した。その後、
再度、0.1Cで放電し、終止電圧が1.0Vでの容量
(B)を測定した。これらの結果から、次式により容量
維持率(C)を算出した。この結果を表1に示す。 C(%)=(B/A)×100
【0060】
【表1】
【0061】この表1から明らかなように、結晶化度が15
%以上のエチレンコポリマーにビニル基を有するモノマ
ーがグラフト重合された親水性樹脂を繊維表面に有する
親水性繊維を含む本発明のセパレータは、自己放電抑制
作用に優れているため容量維持率の高いものである。
【0062】
【発明の効果】本発明のアルカリ電池用セパレータは自
己放電抑制効果に優れるものである。
【0063】本発明のアルカリ電池用セパレータの製造方法
は、効率良く、温和な条件下でグラフト重合することの
できる方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アンモニア捕捉量の測定に用いる装置を模式
的に示す説明図
【符号の説明】
1・・・パルナス・ワグナー蒸留装置 11・・・丸底フラスコ;12・・・排水器;13・・
・液注入口;14・・・真空ビン;15・・・冷却器 16・・・アンモニア捕捉用フラスコ;17・・・クリ
ップ;21・・・注液管;22,23,24,25,2
6・・・誘導管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 政尚 茨城県猿島郡総和町大字北利根7番地 日 本バイリーン株式会社内 Fターム(参考) 5H021 BB00 BB07 CC01 CC03 EE05 EE15 EE16 EE34 HH00 HH07 HH10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘
    導体、不飽和カルボン酸無水物の中から選ばれる一種類
    以上とエチレンとからなり、かつ結晶化度が15%以上
    のエチレンコポリマーに、ビニル基を有するモノマー、
    ビニル基を有するモノマーに由来するオリゴマー、ビニ
    ル基を有するモノマーに由来するポリマーの中から選ば
    れる、少なくとも1種類の化合物がグラフト重合された
    親水性樹脂を含む、多孔性シートを含んでいることを特
    徴とするアルカリ電池用セパレータ。
  2. 【請求項2】 前記多孔性シートが繊維シートからな
    り、この繊維シートを構成する繊維として、前記親水性
    樹脂を少なくとも表面に有する繊維を含んでいることを
    特徴とする、請求項1に記載のアルカリ電池用セパレー
    タ。
  3. 【請求項3】 前記多孔性シートが粉体を含む繊維シー
    トからなり、この粉体として、前記親水性樹脂を少なく
    とも表面に有する粉体を含んでいることを特徴とする、
    請求項1に記載のアルカリ電池用セパレータ。
  4. 【請求項4】 前記多孔性シートが多孔性フィルムから
    なり、この多孔性フィルム表面の一部又は全部が前記親
    水性樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載の
    アルカリ電池用セパレータ。
  5. 【請求項5】 請求項2〜請求項4に記載のいずれかの
    多孔性シートの2種類以上が組み合わせられた複合多孔
    性シートからなることを特徴とする、アルカリ電池用セ
    パレータ。
  6. 【請求項6】 アルカリ電池用セパレータのグラフト率
    が5〜20%であることを特徴とする、請求項1〜5の
    いずれかに記載のアルカリ電池用セパレータ。
  7. 【請求項7】 アルカリ電池用セパレータのアンモニア
    捕捉量が0.4mmol/g以上であることを特徴とす
    る、請求項1〜6のいずれかに記載のアルカリ電池用セ
    パレータ。
  8. 【請求項8】 ビニル基を有するモノマー、ビニル基を
    有するモノマーに由来するオリゴマー、ビニル基を有す
    るモノマーに由来するポリマーの中から選ばれる少なく
    とも1種類の化合物を含有するグラフト重合用液を、不
    飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和カル
    ボン酸無水物の中から選ばれる一種類以上とエチレンと
    からなり、かつ結晶化度が15%以上のエチレンコポリ
    マーを含む多孔性シートに付着させた後、このグラフト
    重合用液が付着した多孔性シートを酸素存在下でグラフ
    ト重合処理を実施することを特徴とする、アルカリ電池
    用セパレータの製造方法。
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