JP2001262451A - 形状セット性を有するポリエステル繊維シート - Google Patents

形状セット性を有するポリエステル繊維シート

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JP2001262451A
JP2001262451A JP2000070085A JP2000070085A JP2001262451A JP 2001262451 A JP2001262451 A JP 2001262451A JP 2000070085 A JP2000070085 A JP 2000070085A JP 2000070085 A JP2000070085 A JP 2000070085A JP 2001262451 A JP2001262451 A JP 2001262451A
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polyester fiber
fiber sheet
elongation
shape
polyester
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Yukihiro Maeda
行弘 前田
Setsuo Taguchi
節男 田口
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】良好な形状セット性と弾力感を兼ね備え、かつ
優れた柔軟性および厚み感を有する形状セット性を有す
るポリエステル繊維シートを提供する。 【解決手段】下記(1)〜(4)の特性を有するポリエ
ステル繊維を構成素材に含むことを特徴とするポリエス
テル繊維シート。 (1)DSC測定において、結晶化度が25%以下であ
り、(2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線におい
て、切断伸度が60%以上であり、(3)見掛ヤング率
が2000N/mm2 以下であり、(4)沸水収縮率が
40%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた風合いと形
状セット性を有するポリエステル繊維シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ナイロンやポリエステルなど
の合成繊維は、高性能を有することから、衣料用あるい
は産業用分野に広く用いられている。ナイロンやポリエ
ステルからなる繊維シートは、衣服用芯地、ブラジャ
ー、胸や肩のパットなど、立体形状製品として多く用い
られている。
【0003】しかし、ナイロンは水分を吸うと伸び、乾
燥すると収縮するという乾湿時における寸法安定性が著
しく劣り、寸法安定性を重視する分野には使いずらい素
材である。そのため、近年、衣服用繊維としては、ほと
んどがポリエステルに置替わりつつある。
【0004】一方、ポリエステルは乾湿時の寸法安定性
が良好である反面、反発感が弱く、繰り返し屈曲に対し
てヘタリやすい欠点を有している。そのため、一般にポ
リマコストがナイロン6やナイロン66に比し安価にも
かかわらず、歯ブラシや人工芝生、カーペットなどの用
途には殆ど使用されていない。
【0005】また、特開平2−139320号公報では
繊維シートを用いた物品の保護方法、特公昭59−18
11号公報では成形用繊維シートが開示されている。
【0006】しかし、従来のポリエステル繊維を用いた
形状セットシートは良好な形状セット加工性と弾力感や
厚み感などの良好な風合いの両立は難しかった。例え
ば、高配向未延伸糸を用いるような場合は、原糸の収縮
力が大き過ぎて安定した形状セットが難しいのみなら
ず、得られた製品は薄く硬質のものとなってしまい良好
な風合いを得ることは困難であった。また、従来は原糸
の収縮力を押さえる熱処理を行ってしまうと、原糸の変
形追従性も低下してしまい、良好な形状セット性を得る
ことは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のポリエステル繊
維を用いた形状セットシートでは、良好な形状セット性
と弾力感を兼ね備えたもの、あるいはそれに加えて優れ
た柔軟感を有する製品は得難いのが現状である。
【0008】本発明は、上記の欠点を解決し、良好な形
状セット性を持ち、かつ形状セット後には弾力感、柔軟
感といった優れた特徴を与える形状セット性を有するポ
リエステル繊維シートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成する本
発明の形状セット性を有するポリエステル繊維シート
は、次の通りの構成をとるものである。下記(1)〜
(4)の特性を有するポリエステル繊維を構成素材に含
むことを特徴とするポリエステル繊維シート。 (1)DSC測定において、結晶化度が25%以下であ
り、(2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線におい
て、切断伸度が60%以上であり、(3)見掛ヤング率
が2000N/mm2 以下であり、(4)沸水収縮率が
40%以下である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、さらに詳しく本発明につい
て説明をする。
【0011】本発明は次に述べる特性値を有するポリエ
ステル繊維シートによって、優れた形状セット性を有し
ながら、形状セット後に良好な弾力感や柔軟感を兼ね備
える製品を提供できることを見出したものである。
【0012】本発明は、下記(1)〜(4)の特性を有
するポリエステル繊維を構成素材に含むことを特徴とす
るポリエステル繊維シート。 (1)良好な形状固定性を得るためには、DSC測定に
おいて、結晶化度が25%以下であることが好ましく、
より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは1
5%以下である。これは、形状セット時に結晶化が進む
ことによって好ましい形状固定性が得られるためである
と考えられる。 (2)良好な変形追従性を得るためには、引張強伸度を
測定した荷重伸長曲線において、切断伸度が60%以上
であることが好ましく、さらには100%以上であるこ
とがより好ましく、120%以上であることがさらには
好ましい。 これは、形状セット時の変形に対する自
由度が大きなためであると考えられ る。 (3)形状セット品において柔軟でしなやかな風合いを
得るためには、見掛ヤング率が2000N/mm2 以下
であるとは好ましく、100〜1500N/mm2 であ
ることはより好ましく、150〜1000N/mm2
あることはさらに好ましい。これは、素材自身に柔軟感
があることに加え、形状セット時に応力集中がおこり難
いためにしなやかな風合いになると考えられる。 (4)安定した形状セット性を得るためには、沸水収縮
率が40%以下であることが好ましく、より好ましくは
30%以下であり、15%以下であることはさらに好ま
しい。これは、形状セット時に素材が過度な収縮力を有
すると、摩擦などの収縮を規制する力のかかり方の差に
よって歪な収縮が発生し、歪んだ形状になりやすいため
であると考えられる。
【0013】形状セット品において弾力感や柔軟感のあ
る風合いを安定的に得るためには、前記特性を有する部
分のポリエステル繊維がDSC測定における冷結晶化ピ
ークを有し、自由収縮法により観察される冷結晶化ピー
クT1(℃)と定長拘束法により観察される冷結晶化ピ
ークT2(℃)の差の絶対値|T1−T2|が15以下
であることは好ましく、より好ましくは10以下、さら
に好ましくは5以下である。これは、結晶化前後でポリ
エステル繊維の基本的な構造が大きく変化しないためで
あると考えられる。
【0014】形状セット品における柔軟でしなやかな風
合いを得るためには、前記特定の構造を有する部分のポ
リエステル繊維において、広角X線回折測定から得られ
た面指数(105)の結晶配向度が50〜90%である
ことは好ましく、60〜80%であることはさらに好ま
しい。また、広角X線回折測定から得られた結晶サイズ
が、面指数(010)において1.0〜3.5nmであ
ることは好ましく、さらに好ましくは1.5〜3.0n
mであり、面指数(100)において1.0〜3.5n
mであることは好ましく、さらに好ましくは1.5〜
3.0nmであり、面指数(105)において1.0〜
3.5nmであることは好ましく、さらに、好ましくは
2.0〜3.5nmである。そして、広角X線回折測定
から得られた面指数(105)の子午線方向に対する傾
斜配向角度が、10°以上であることは好ましい態様で
あり、15°〜35°であることはより好ましく、20
°〜25°であることはさらに好ましい。
【0015】柔軟な風合いを持ちながら良好な形状セッ
ト性を得るためには、前記特定の特性を有する部分のポ
リエステル繊維において、定長拘束法によるDSC測定
の冷結晶化ピークが100〜130℃であることは好ま
しい態様であり、105〜120℃であることはさらに
好ましい。
【0016】なお、本発明における各種特性の測定方法
および条件は下記のとおりである。 (1)DSC a.結晶化度 装 置:TA Instruments社製DSC2
920 加熱温度;0〜300℃(RCS冷却法) 温度較正;高純度インジウム 昇温速度;10℃/分 試料重量;約5mg 試料容器;アルミニウム製開放型容器(約26mg) ※結晶化度算出 DSC測定より次式から求めた。
【0017】結晶化度(%)=100×{[融解熱量−
冷結晶化熱量]/140} ただし、融解熱量、冷結晶化熱量および140の単位は
Jg-1 b.自由収縮法 昇温時に試料を自由に収縮させて測定した。
【0018】 装 置:Perkin−Elmer社製DSC−7型 雰囲気 ;窒素流(30ml/分) 温度較正;高純度インジウム 昇温速度;10℃/分 試料重量;約10mg 試料容器;アルミニウム製標準容器 c.自由収縮法 試料の両端を固定し、昇温時に定長状態に拘束した状態
で測定した。
【0019】 装 置:島津製作所/メトラー DSC600E型 雰囲気 ;窒素流(50ml/分) 温度較正;高純度インジウム 昇温速度;10℃/分 試料重量;約2mg 試料容器;アルミニウム製標準容器 (2)荷重伸長曲線 ここでいう荷重伸長曲線とは、JIS−L1013
7.5(引張強さ及び伸び率)の試験法に準じて測定し
たものをいう。本発明において、本発明者らが行った条
件は下記の通りである。
【0020】試長(チャック間距離):5cm 初期加重(繊維) :0.0882 cN/dte
x 引張り速度 :100mm/分 チャート速度 :100mm/分 温度 :20℃±2 湿度 :65%RH±5 試験機 :オートグラフ(島津製作所) データ整理 :タテ軸応力、ヨコ軸伸度(第
一象限) *見掛けヤング率 荷重伸長曲線から、JIS−L10 13 7.10
(初期引張引抵抗度)に準じて求めた。 (3)沸水収縮率 繊維に下記所定荷重をかけ、初期長(L0)を測る。9
8±2℃の沸水中に30分間浸せきした後、取り出して
軽く吸水紙又は布で水をきり、風乾後再び所定荷重をか
け、繊維の長さ(L1)を測り、次の式によって沸水収
縮率(%)を算出した。
【0021】 沸水収縮率(%)=[(L0−L1)/L0]×100 ※所定荷重:0.03 cN/dtex (4)広角X線回折 試料調整 ;試料の長さを4cmに切り揃え、20m
gの試料両端をエナメル線で結束して測定試料とした。
【0022】 a.広角X線回析(透過法) X線発生装置;理学電機社(株)製 CN4032A2 X線源 :CuKα線(Niフィルター使用) 出力 :40KV 20mA ゴニオメータ;理学電機社(株)製 Model PMG-A2 CN2155D1 スリット径:2mmφピンホールコリメータ 1°−1° 検出器 :シンチレーションカウンター 計数記録装置;RAD−C、オンライン・データ処理システム 赤道線及び子午線方向; スキャン方式(2θ/θ):ステップ 赤道線方向スキャン範囲:10〜55° 子午線方向スキャン範囲:10〜55° 計数ステップ:0.02° 積算時間 :1秒 繊維試料測定装置; FS-3 CN2411B1 円周方向(β)スキャン; 測定範囲 90〜270°:(010)面、(100)面 0〜180°:(105)面 計数ステップ:0.2° 積算時間 :1秒 b.広角X線回折プレート写真撮影 X線発生装置;理学電機社(株)製 CN4032A2 X線源 :CuKα線(Niフィルター使用) 出力 :40KV 20mA スリット径:1mmφピンホールコリメータ 撮影条件; カメラ半径:約40mm 露出時間 :20分 フイルム :Kodak DEF−5 *結晶配向度算出 PETの場合、赤道線方向にスキャンして2θ=17.
8°付近に観測される(010)、2θ=25.8°付
近に観測される(100)、子午線方向にスキャンして
2θ=43.1°付近に観測される(105)の各面を
円周方向にスキャンして得られた強度分布のピークの半
値幅から下記式により算出した。
【0023】結晶配向度(%)=[(180−H)/1
80]×100 ただし、 H:強度分布の半値幅(°) *結晶サイズ算出 PETの場合、透過法により得られた(010)、(1
00)、(105)の各面のピークの半値幅から下記の
Scherrerの式を用い計算した。
【0024】L(hkl)=Kλ/β0 cosθB ただし、 L(hkl):微結晶の(hkl)面に垂直な方向の平
均の大きさ K :1.0(定数) λ :X線の波長(0.15418nm) β0 :(βE 2−βI 21/2 、 βE :見掛けの半値幅(測定値) βI :装置補正角(1.047×10-2ラジアン) θB :ブラッグ角 本発明の形状セット性を有するポリエステル繊維シート
は、前記特定の構造を有するポリエステル繊維と、前記
特定の構造を有さないポリエステル繊維、ポリアミド繊
維、ポリアクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊
維、獣毛、絹、綿、レーヨン、麻などのうち、少なくと
も1種類以上の素材と混用することは好ましい態様であ
る。良好な形状セット性を得るためには、混合素材中の
前記特定の構造を有するポリエステル繊維の重量パーセ
ントは、20%以上であることが好ましく、40%〜9
0%がより好ましく、60%〜80%がさらに好まし
い。
【0025】本発明の形状セット性を有するポリエステ
ル繊維シートにおいて、前記特定の構造を有さない繊維
の好ましい太さは複合製品の用途によって異なるため、
特に限定されないが、複合製品に柔軟性や柔らかい手触
り感を求める場合は単糸繊度が1dtex以下であるこ
とは好ましい態様であり、より好ましくは0.5dte
x以下であることであり、さらに好ましくは0.1dt
ex以下であることである。一方、複合製品にしっかり
した剛性感を求める場合には単糸繊度が2dtex以上
であることは好ましい態様であり、より好ましくは5d
tex以上であることであり、さらに好ましくは10d
tex以上であることである。もちろん、その組み合わ
せは特に限定されるものではなく、単糸繊度の細い繊維
と太い繊維の双方を用いることはしっかりした剛性感を
持ちながら柔らかい手触りを与えるため好ましい態様の
一つである。
【0026】高強度、高弾性、防縮性を得る観点から
は、ポリエステルの極限粘度(以下IV)をオルソクロ
ロフェノール、30℃で測定し、その値が0.55〜
1.00のポリエステルを含むことは好ましい態様の一
つである。また、染色を容易にする観点からは、ポリエ
チレンテレフタレートにポリアルキレングリコールが共
重合された共重合体であって、90℃〜110℃で分散
染料可染であるポリエステルを含むことは好ましい態様
の一つである。このポリエステルを用いたポリエステル
繊維の場合、天然繊維と混用して染色することもでき
る。さらにまた、濃色、鮮明な染色をする観点からは、
ポリエステルが5−ナトリウムスルホイソフタル酸が共
重合されたカチオン染料可染型ポリエステルを含むこと
は好ましい態様の一つである。
【0027】本発明の形状セット性を有するポリエステ
ル繊維シートに用いられる繊維の断面形状は、用途によ
って異なるため特に限定されるのもではなく、丸断面、
三角断面などの多角形型断面、中空断面、櫛形断面など
やそれらを複合した異形断面であることは好ましい態様
である。また、形状セット性を有するポリエステル繊維
シートに膨らみ感を与えるために、異なる断面形状の繊
維を複数用いることは好ましい態様の一つである。
【0028】また、形状セット性を有するポリエステル
繊維シートを構成する素材が互いに交絡していることは
好ましい態様である。
【0029】本発明の形状セット性を有するポリエステ
ル繊維シートが複合糸からなることは好ましい態様の一
つである。複合糸の形状は特に限定されるものではない
が、撚糸、仮撚糸、ループ加工糸、インターレース糸、
毛羽糸であることは好ましい態様である。
【0030】本発明の繊維形状セット用シートにおい
て、2種類以上の繊維が混在している部分で、繊維間に
糸長差を有することは柔軟な風合いを得る上で好ましい
態様である。最も短い繊維の糸長を100%とした場
合、最も長い繊維との糸長差が3%以上あることは好ま
しく、10〜50%であることはさらに好ましい。
【0031】本発明の形状セット性を有するポリエステ
ル繊維シートは、織物、編物、不織布、繊維材料、ネッ
ト類、リボン、シート状物など種々の態様を含む。ま
た、これらを多層構造の一部に用いる態様、複数の部材
よりなる製品の一部の部材に用いる態様を含む。本発明
の形状セット性を有するポリエステル繊維シートが、多
層構造の編織物であることは、形状セット品に厚み感を
持たせるために好ましい態様のひとつである。丸編みや
ダブルラッセル、トリコットなどの編物であることは、
形状セットでつくる構造の自由度が高くなるため、好ま
しい態様である。
【0032】織物においては、前記特定の構造を有する
ポリエステル繊維またはそれを含む繊維を経糸あるいは
緯糸の一方だけに用いることは、織物の経、緯に著しい
異方性を与えることが出来るため好ましい態様の一つで
ある。さらに好ましくは、緯糸にだけ前記特定の構造を
有するポリエステル繊維またはそれを含む繊維を用いる
ことは、製造過程で受ける応力制御が容易になり、望ま
しい性能を発現しやすいために好ましい態様の一つであ
る。また、前記特定の構造を有するポリエステル繊維を
含む繊維を用いた糸の繊度が、用いていない方の糸より
も大きな方が異方性が大きくなるためより好ましい態様
である。
【0033】編物においては、前記特定の構造を有する
ポリエステル繊維またはそれを含む繊維を挿入糸にだけ
用いることは、編物に著しい異方性を与えることが出来
るため好ましい態様の一つである。
【0034】多層構造の一部に用いる場合、前記特定の
構造を有するポリエステル繊維を中間層に用いること
は、形状セット性を有するポリエステル繊維シートの表
面繊維の強度や風合いが前記特定の構造を有するポリエ
ステル繊維の強度や風合いに左右されないためを好まし
い態様の一つである。
【0035】ポリエステル繊維の場合、前記特定の構造
を有するポリエステル繊維を含むことを要件とするが、
他の成分、例えばナイロンやポリオレフィンなどが複合
された従来公知の複合繊維といわれるもの、たとえば分
割型、菊花型、海島型などの繊維も適用可能であり、用
途に応じてその方が好ましい場合がある。また、フィル
ムには、幅、長さに比べて厚さが小さいスリット状のも
の、リボン状のもの、テープ状のものを含む。
【0036】本発明の形状セット性を有するポリエステ
ル繊維シートは、ファッション用品やインテリア用品な
どとして用いる上では、着色品であることは好ましい態
様である。また、本発明の形状セット性を有するポリエ
ステル繊維シートは可染性の繊維を用いることで染色可
能なため、用途に合わせた多様なカラーを得る上で、染
色品であることは好ましい態様の一つである。
【0037】本発明の特徴を有する形状セット性を有す
るポリエステル繊維シートを得るためには、以下の実施
例に記したように特定の条件下で紡糸された繊維を、過
度な応力緩和や緊張、そして過度な結晶化が生じないよ
うに特定の条件下で熱処理することが必要であった。
【0038】
【実施例】ポリエチレンテレフタレート(IV=0.6
8)を、引取速度3100m/分で溶融紡糸し、89d
tex、36フィラメントの原糸Aを得た。この原糸の
荷重伸長曲線は図3のとおりであり、降伏応力点βを有
しそれを越えると低応力で伸長される定応力伸長領域を
有する曲線を示した。原糸Aの強度は2cN/dtex
であった。
【0039】原糸Aをさらに1.5倍に加熱延伸し原糸
Bを得た。
【0040】ポリエチレンテレフタレート(IV=0.
85)を、引取速度3000m/分で溶融紡糸し、16
7dtex、36フィラメントの原糸Cを得た。
【0041】ポリエチレンテレフタレート(IV=0.
68)を、引取速度2500m/分で溶融紡糸し、16
7dtex、72フィラメントの原糸を得た。この原糸
をさらに2倍に加熱延伸し、78dtex72フィラメ
ントの原糸Dを得た。
【0042】ポリエチレンテレフタレート(IV=0.
68)を、引取速度3000m/分で溶融紡糸し、16
0dtex、10フィラメントの原糸を得た。この原糸
をさらに1.6倍に加熱延伸し、100dtex、10
フィラメントの原糸Eを得た。 *原糸A: (1)DSC測定における結晶化度が4%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が140%であった。 (3)見掛ヤング率が1500N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が56%であった。 (5)DSC測定における冷結晶化ピークを有し、|T
1−T2|=16であった。 (6)広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、面
指数(010)において1.4nm、面指数(100)
において1.4nm、面指数(105)において1.5
nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が67%であった。 *原糸B: (1)DSC測定における結晶化度が25%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が30%であった。 (3)見掛ヤング率が3800N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が10%であった。 (5)DSC測定における冷結晶化ピークを有し、|T
1−T2|=3であった。 (6) 広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、
面指数(010)において2.2nm、面指数(10
0)において2.4nm、面指数(105)において
4.0nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が89%であった。
【0043】
【表1】
【0044】これらの原糸を用いて次の表2の試験糸を
準備した。
【0045】
【表2】
【0046】これらの糸を用い、仕掛機でカールマイヤ
ーHDR6(8)EEW−ST 16Gauge.M.
針釜間隔5m/mに設定し、ダブルラッセル編地を作製
した。これらのダブルラッセル編み地を用いて、次の熱
処理を行い、ポリエステル繊維シートを得た。
【0047】表3記載の各試験糸を用いたダブルラッセ
ル編地に対して、80℃,1分の湿熱収縮処理(熱処理
1)を行い、実施例1〜7および比較例1〜2のポリエ
ステル繊維シートを得た。この熱処理条件は、過度な応
力緩和や緊張、そして過度な結晶化が生じずに本発明の
形状セット性を有するポリエステル繊維シートを得るこ
とが出来る特異的な熱処理条件の一例である。また、比
較例3は実施例2と同じダブルラッセル編地に対して、
ネットコンベア上における160℃,10分の乾熱収縮
処理(熱処理2)を行ってポリエステル繊維シートを得
た。比較例4は実施例2と同じダブルラッセル地を熱処
理せずにそのまま用いた。準備した実施例1〜7および
比較例1〜4の各ポリエステル繊維シートを用い、金型
の上型と下型の隙間を1mm均一に設定して190℃・
1分間のプレス形状セットを行った。
【0048】実施例1〜7および比較例1〜4のポリエ
ステル繊維シートの構成、および、形状セット性、プレ
ス品の弾力感・柔軟感に対する官能テスト結果を表3に
示す。
【0049】
【表3】
【0050】実施例2のプレス形状セット前のポリエス
テル繊維シートの糸を分解すると、フィラメントA’と
フィラメントB’を得た。フィラメントA’とフィラメ
ントB’の糸長差は20%であった。 *フィラメントA’: (1)DSC測定における結晶化度が13%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が180%であった。 (3)見掛ヤング率が450N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が1%であった。 (5)DSC測定における冷結晶化ピークを有し、|T
1−T2|=0.2であった。 (6)広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、面
指数(010)において1.6nm、面指数(100)
において1.9nm、面指数(105)において2.0
nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が76%であった。 *フィラメントB’: (1)DSC測定における結晶化度が27%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が35%であった。 (3)見掛ヤング率が3000N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が1%であった。 (5)DSC測定における冷結晶化ピークを有し、|T
1−T2|=0.3であった。 (6) 広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、
面指数(010)において 2.2nm、面指数(1
00)において2.5nm、面指数(105)にお
いて4.1nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が90%であった。
【0051】比較例3のプレス形状セット前のポリエス
テル繊維シートの糸を分解すると、フィラメントA$と
フィラメントB$を得た。フィラメントA$とフィラメ
ントB$の糸長差は23%であった。 *フィラメントA$: (1)DSC測定における結晶化度が27%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が120%であった。 (3)見掛ヤング率が530N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が0%であった。 (5)DSC測定における明確な冷結晶化ピークを観察
できなかった。 (6)広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、面
指数(010)において3.3nm、面指数(100)
において3.0nm、面指数(105)において2.9
nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が68%であった。 *フィラメントB$: (1)DSC測定における結晶化度が40%であった。 (2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線において、切
断伸度が35%であった。 (3)見掛ヤング率が3200N/mm2 であった。 (4)沸水収縮率が0%であった。 (5)DSC測定における明確な冷結晶化ピークを観察
できなかった。 (6) 広角X線回折測定から得られた結晶サイズが、
面指数(010)において 4.5nm、面指数(1
00)において3.7nm、面指数(105)にお
いて4.7nmであった。 (7)広角X線回折測定から得られた面指数(105)
の結晶配向度が89%であった。
【0052】また、試験糸4,5,9を用いて平織物を
製織し、熱処理1を行って得たポリエステル繊維シート
に対して、160℃の転写ロールを用いてエンボス加工
を行った。
【0053】実施例8〜9および比較例5のポリエステ
ル繊維シートの構成、および、布帛の意匠効果に対する
官能テスト結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
【発明の効果】(1)良好な形状セット性と弾力感を兼
ね備えかつ優れた柔軟性および厚み感を有する形状セッ
ト性を有するポリエステル繊維シートを提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィラメントA’の荷重伸長曲線を示す。
【図2】ポリエステル繊維の荷重伸長曲線の一例を示
す。
【図3】原糸Aの荷重伸張曲線を示す。
【符号の説明】
α:切断伸度 β:降伏応力点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L002 AA07 AB00 AC00 AC01 AC02 CA01 DA01 EA06 FA01 FA03 4L048 AA20 AA42 AA46 AA49 AA50 AA51 AB08 AB16 BA01 CA00 CA04 CA12 DA01 DA05 DA07 EB02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記(1)〜(4)の特性を有するポリエ
    ステル繊維を構成素材とすることを特徴とするポリエス
    テル繊維シート。 (1)DSC測定において、結晶化度が25%以下であ
    り、(2)引張強伸度を測定した荷重伸長曲線におい
    て、切断伸度が60%以上であり、(3)見掛ヤング率
    が2000N/mm2 以下であり、(4)沸水収縮率が
    40%以下である。
  2. 【請求項2】請求項1において、DSC測定における冷
    結晶化ピークを有し、自由収縮法により観察される冷結
    晶化ピークT1(℃)と定長拘束法により観察される冷
    結晶化ピークT2(℃)の差の絶対値|T1−T2|が
    15以下であるポリエステル繊維を構成素材とすること
    を特徴とするポリエステル繊維シート。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、広角X線回折
    測定から得られた結晶サイズが、面指数(010)にお
    いて1.0〜3.5nm、面指数(100)において
    1.0〜3.5nm、面指数(105)において1.0
    〜3.5nmであるポリエステル繊維を構成素材とする
    ことを特徴とするポリエステル繊維シート。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかにおいて、請求項
    記載の特性を有するポリエステル繊維が長繊維であるこ
    とを特徴とするポリエステル繊維シート。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかにおいて、複合糸
    からなることを特徴とするポリエステル繊維シート。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかにおいて、ポリエ
    ステル繊維シートが請求項記載の特性を有するポリエス
    テル繊維と他の繊維とを含むものであり、該シートを構
    成する請求項記載の特性を有するポリエステル繊維と他
    の繊維との間に糸長差を有することを特徴とするポリエ
    ステル繊維シート。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれかにおいて、編物で
    あることを特徴とするポリエステル繊維シート。
  8. 【請求項8】請求項1〜7のいずれかにおいて、着色品
    であることを特徴とするポリエステル繊維シート。
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