JP2001256638A - 磁気テープ - Google Patents

磁気テープ

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JP2001256638A
JP2001256638A JP2000066669A JP2000066669A JP2001256638A JP 2001256638 A JP2001256638 A JP 2001256638A JP 2000066669 A JP2000066669 A JP 2000066669A JP 2000066669 A JP2000066669 A JP 2000066669A JP 2001256638 A JP2001256638 A JP 2001256638A
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秀樹 ▲吉▼田
Hideki Yoshida
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気記録媒体の非磁性基板の磁性層が形成さ
れる側とは反対側の面に、磁気記録媒体の剛性を向上さ
せるために高いヤング率を有する補強層を設ける場合で
も、優れた走行耐久性を呈する磁気テープを提供する。 【解決手段】 非磁性基板(1)の一方の面に磁性層
(2)を、他方の面に補強層(5)を形成し、この補強
層の上に、テープ長手方向のヤング率A(GPa)の厚さ
B(μm)に対する比A/Bが20以下であるクッショ
ン層(6)を形成し、さらに必要に応じて、磁性層
(2)の上に保護層(3)および潤滑剤層(4)を形成
して、磁気テープ(10)を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性基板の一方
の面に磁性層(即ち、記録層)を、他方の面に補強層お
よびバックコート層を有する磁気テープに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録の高密度化が進み、高い
面記録密度が実現可能な磁気記録媒体が開発されてい
る。そして、そのような磁気記録媒体として、金属粒子
を用いて記録層を形成した塗布型メタルテープや、真空
蒸着技術を利用して記録層を形成した金属薄膜型磁気テ
ープが実用化されている。金属薄膜型磁気テープの中で
も特に、コバルト系金属の斜方蒸着膜を磁性層として非
磁性基板(通常、ポリマー基板)に形成し、さらに当該
磁性層の上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)で
保護膜を形成した高性能磁気テープ(以下、MEテープ
とも呼ぶ)は、電磁変換特性や保存性、実用信頼性等に
おいて優れた特性を示すことが知られている。現在、M
Eテープはデジタル映像記録機器であるDV方式のムー
ビー等に使用され、また、8ミリ幅のデータストレージ
用テープとしても用いられている。MEテープは、磁性
層を真空蒸着により形成するため磁性層の厚さを小さく
できるので、従来の塗布型テープよりもテープ全体の厚
さが小さいという特徴を有する。したがって、MEテー
プは、所定寸法のパッケージにより多く装填できるか
ら、大容量記録が必要なデータストレージ機器用の記録
媒体に非常に適している。
【0003】このように、MEテープは塗布型テープよ
りも薄く、大容量記録を可能にしている。しかし、磁気
テープに対する性能向上の要求は厳しく、所定寸法のパ
ッケージにより多くのテープを収容でき、より多くの情
報を記録し得るようにすることがなお望まれている。そ
こで、MEテープの厚さをより薄くすることが試みられ
ている。
【0004】磁気テープの厚さを薄くする最も効果的な
方法は、磁気テープの厚さの多くを占める非磁性基板、
即ちポリマー基板の厚さを薄くすることである。しか
し、非磁性基板の厚さを小さくすると、スティフネス
(曲げ剛性)が低下しやすく、実用上問題が生じる場合
がある。
【0005】この問題を回避する方法の1つとして、曲
げ剛性の大きいポリマー基板を使用することが挙げられ
る。通常、ポリマー基板としてはポリエチレンテレフタ
レートのフィルムを使用する場合が多い。これを、例え
ば、曲げ剛性のより大きいポリエチレンナフタレートま
たはポリアミドのフィルムとすることで、厚さを小さく
することが可能となる。例えば、DVデジタルビデオ用
の磁気テープを製造する場合、ポリエチレンテレフタレ
ートを基板として用いると、テープの全厚は7μm程度
となり、所定寸法のパッケージに60分記録に相当する
長さのテープを収容できる。一方、ポリエチレンナフタ
レートまたはポリアミドを基板として用いると、テープ
の全厚は5.4μm程度となるため、同寸法のパッケー
ジに80分記録に相当する長さのテープを収容できる。
【0006】このように、非磁性基板の素材を適宜選択
することによって、テープをある程度薄くし得るが、更
に薄い磁気テープを提供することを目的として、あるい
は曲げ剛性は小さいがコスト的に有利な汎用素材から成
るポリマー基板を用いて薄い磁気テープを製造すること
を目的として、非磁性基板の磁性層が形成されている面
とは反対側の面に、補強層(バックコート層とも称され
る)を形成して剛性を確保することが予てより提案され
ている。最近では、特開平11−283234号公報や
特開平11−73643号公報等において特定の材料を
使用して補強層を形成することが提案されている。
【0007】補強層を設けた磁気テープを図面を参照し
て説明する。図1に示す磁気テープ(10)において、非
磁性基板(1)は一般にポリマー基板であり、一方の面
に磁性層(2)として金属薄膜を有し、他方の面に補強
層(5)を有して成る。一般に、金属薄膜の上にはカー
ボン系膜である保護層(3)、および潤滑剤層(4)が
形成される。磁性層(2)および補強層(5)は一般
に、ヤング率の高い金属薄膜または金属酸化物の薄膜で
ある。そして、ヤング率の高い2つの層が非磁性基板
(1)を挟むサンドイッチ構造によって、磁気テープ全
体の剛性(スティフネス)が高まる。
【0008】金属薄膜型磁気テープにおいて、磁性層は
一般に真空蒸着により形成されるので極めて良好な表面
性を有し、したがって、テープの磁性層側表面(図示し
た態様では潤滑剤層の露出表面)は極めて平滑である。
テープの磁性層側表面が平坦であると、高速摺動する際
にテープとヘッドとが密着状態で接触するので、これら
の間で大きな摩擦力が生じ、テープの摩耗が促進され
る。テープの摩耗はテープの走行耐久性を低下させると
いう不都合をもたらす。
【0009】かかる不都合を回避するべく、テープの磁
性層側表面を微細な突起を有する構造とし、それにより
当該表面の摩擦係数を小さくすることが一般になされて
いる。具体的には、磁性層が形成される表面に微細な突
起を有する非磁性基板を用い、当該突起に沿って磁性層
ならびに必要に応じて保護層および/または潤滑剤層を
形成することによって、最終的に得られる磁気テープの
磁性層側表面に突起を存在させている。表面に突起を有
する非磁性基板は、例えば、無機または有機材料から成
る微粒子を適当なバインダーを用いて非磁性基板の表面
に固着させることによって、あるいはそのような微粒子
を含む高分子材料でフィルムを製造することによって得
られる。
【0010】また、磁気テープの補強層側表面の走行性
を確保するため、補強層の表面に更にバックコート層が
設けられる場合がある。補強層の表面に形成するバック
コート層は、例えば、ポリウレタン樹脂やポリエステル
樹脂等の結合材、導電性のカーボンブラック、および炭
酸カルシウムやアルミナ等の粒子から成り、その厚さは
一般に0.5μm程度である。その場合にも、磁気テー
プの剛性を向上させるために、バックコート層中に硬質
粒子を混合してバックコート層のヤング率を大きくする
ことがなされている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】一般に、テープ状の磁
気記録媒体は製造過程において巻き取られることがあ
り、また、巻き取られた状態で所定のパッケージに収容
され、販売される。テープが巻き取られると、補強層の
表面と突起を有する磁性層の表面とが接触することとな
る。磁性層の上に保護層および/または潤滑剤層が形成
されている場合には、補強層および磁性層はそれらを介
して接触する。一般に補強層および磁性層は、ともにヤ
ング率が高く硬いので、接触によって両層間に生じる圧
力を緩和しない。そのため、磁性層側表面の突起部が補
強層に当ると、硬い突起部が硬い補強層に押し付けられ
た状態となって、補強層にクラックが生じやすくなる。
また、2つの層の間にダストが存在すると、ダストと磁
性層(保護層および/または潤滑剤層が形成されている
場合には保護層または潤滑剤層)の表面との間で、また
ダストと補強層の表面との間で、局所的な大きな圧力が
生じ、その結果、磁性層(保護層および/または潤滑剤
層が形成されている場合にはそれらの層および磁性層)
ならびに補強層にクラックが生じやすくなる。クラック
が生じた部分では局所的に強度が低下するため、クラッ
クの発生は磁気テープのスティフネスの局所的な低下を
招き、その結果、局所的に記録再生エラーが発生するこ
ととなる。
【0012】このように、実際の販売・使用形態を考慮
すれば、テープ状の磁気記録媒体は、巻き取られた後も
その剛性が低下しないように構成する必要がある。しか
し、従来の磁気テープは、そのような必要性を考慮した
ものであるとはいえない。
【0013】本発明は、かかる実情に鑑みてなされたも
のであり、補強層によって剛性を向上させた磁気テープ
であって、巻き取られた状態でその磁性層側表面と補強
層側表面とが接触した場合でもクラックが生じにくく剛
性が低下しない磁気テープを提供することを課題とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、非磁性基板の一方の面に磁性層を有し、
他方の面に補強層、および補強層の上に形成されたクッ
ション層を有して成る磁気テープであって、クッション
層のテープ長手方向のヤング率A(GPa)とクッション
層の厚さをB(μm)との比であるA/Bが20以下で
あることを特徴とする磁気テープを提供する。
【0015】本発明の磁気テープにおいて、補強層の上
に形成されるクッション層は、磁気テープが巻き取られ
て、磁性層と補強層とが接触する場合(保護層および/
または潤滑剤層を介して接触する場合を含む)、両層の
間に介在して緩衝層として作用し、例えば、磁性層側表
面に形成された突起が補強層に突き当たることを防止
し、また、両層の間にダストが存在する場合には、ダス
トと補強層側表面および磁性層側表面との間に生じる圧
力を緩和する。したがって、本発明によれば、テープ状
の磁気記録媒体が巻き取られた状態にあっても、磁気記
録媒体の補強層等に局所的なクラックが発生することが
防止されるので、磁気記録媒体の剛性が低下せず、記録
再生エラーの発生率が極めて低くなる。
【0016】なお、本明細書において、磁気テープの構
成に関して、磁気テープを構成する各層の「表面」また
は「上」というときは、いずれも、各層が形成されたと
きに露出している面、即ち、各層の非磁性基板から遠い
側の面を意味するものとして使用する。また、磁気テー
プの「磁性層側表面」とは、磁気テープの磁性層が形成
された側の露出表面をいい、磁性層の上に保護層または
潤滑剤層が形成されている場合には、保護層または潤滑
剤層の露出表面が「磁性層側表面」に相当し、磁性層の
上に保護層および潤滑剤層が形成されている場合には、
潤滑剤層の露出表面が「磁性層側表面」に相当する。磁
気テープの「補強層側表面」とは、磁気テープの補強層
が形成された側の露出表面をいい、本発明の磁気テープ
のように補強層の上にクッション層が設けられている場
合は、クッション層の露出表面が「補強層側表面」に相
当する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。本発明の磁気テープは、補強層の上に、テープ長
手方向のヤング率A(GPa)の厚さB(μm)に対する
比A/Bが20以下であるクッション層が形成されてい
ることを特徴とする。A/Bが20以下であることによ
り、良好なクッション効果を得ることができ、磁性層お
よび補強層でクラックが生じるのを有効に防止できる。
A/Bは、クッション層のテープ長手方向のヤング率が
大きいほど、あるいはクッション層の厚さが小さいほど
大きくなる。したがって、A/Bが20を超えるクッシ
ョン層は硬い或いは薄いために、良好な緩衝効果を発揮
し得ない場合がある。
【0018】クッション層のテープ長手方向のヤング率
は、具体的には2〜10GPaであることが好ましい。ク
ッション層のテープ長手方向のヤング率が磁気テープ全
体のヤング率に比べて相当小さくなる(例えば磁気テー
プ全体のヤング率の10分の1程度になる)と、ヤング
率差に起因する伸び量の差からクッション層の剥離が生
じ易くなる。一方、クッション層のヤング率が大きいと
硬くなるためクッション効果を発揮できない。クッショ
ン層の厚さは、クッション効果と耐久性を考慮すれば、
0.3μm以上であることが好ましい。但し、クッショ
ン層が厚いと磁気テープ全体が厚くなるため、クッショ
ン層の厚さは2μm以下とすることが好ましい。
【0019】クッション層のテープ長手方向のヤング率
Emは、クッション層を有する磁気記録媒体およびクッ
ション層を有しない磁気記録媒体(即ち、前記クッショ
ン層を有する磁気記録媒体からクッション層だけを取り
除いたもの)のテープ長手方向のヤング率をそれぞれ測
定することによって求められる。クッション層を有する
磁気記録媒体のテープ長手方向のヤング率および厚さを
Exおよびtx、クッション層を有しない磁気記録媒体
のテープ長手方向のヤング率および厚さをEyおよびt
y、クッション層のテープ長手方向のヤング率および厚
さをEzおよびtzとすれば、Ex、EyおよびEzな
らびにtx、tyおよびtzは次の関係: Ex=Ey・[ty/tx]+Ez・[tz/tx] を満たす。したがって、ExおよびEyならびにtx、
tyおよびtzを測定により求めれば、上式よりクッシ
ョン層のヤング率Ezを算出することができる。
【0020】テープ長手方向のヤング率は、試料をテー
プ長手方向に所定の標線間距離(引張長さ)で引っ張っ
たときに試料の断面に作用する荷重(応力)および試料
の伸び、ならびに試料のテープ長手方向の断面積から算
出することができる。具体的には、式E=(W・L)/
(A・△l)(式中、Eはヤング率(Pa)、Wは弾性限
内の荷重(N)、Lは引張試験前の標線間距離(m)、
Aは試料の引張試験前の断面積(m2)、△lは荷重W
における標線間伸び(m)を示す)に基づいて算出でき
る。
【0021】クッション層を有しない磁気記録媒体は、
磁気記録媒体のクッション層を酸または有機溶媒を用い
てエッチングすることにより得られる。そして、エッチ
ング前後の磁気記録媒体のヤング率および厚さを測定す
ればクッション層のヤング率を求めることができる。あ
るいは、磁気記録媒体の製造過程において、クッション
層を形成する前の非磁性基板(磁性層等が形成された非
磁性基板を含む)のヤング率および厚さと、クッション
層を形成した後のクッション層を含む非磁性基板のヤン
グ率および厚さを測定することによっても、クッション
層のヤング率を求めることが可能である。
【0022】試料に作用する荷重と試料の伸びは、引張
試験装置(例えばオリエンテック社製のRTM−25)
を用い、引張長さ(標線間距離)を200mm、引張速度
を10mm/分に設定した引張試験を実施して測定する。
具体的には、試料が0.5%伸びた(変形した)ときの
荷重を測定するとよい。また、試料の幅方向の断面積
は、試料の幅と厚さから求めることができる。磁気テー
プのような薄い試料の厚さは、試料を10枚重ねた状態
にてマイクロメータを用いて測定することにより求める
ことができる。
【0023】クッション層の厚さは、クッション層を有
する磁気記録媒体の厚さとクッション層を有しない磁気
記録媒体の厚さの差から求めることができる。
【0024】クッション層は、クッション層に強度を付
与する材料、クッション層のヤング率を調節する材料、
およびそれらを結合する材料(結合材)の混合物から成
ることが好ましい。ヤング率を調節する材料は、それを
加えなくても所望のヤング率のクッション層が得られる
場合には加えなくてよい。
【0025】強度を付与する材料としては、カーボン粒
子、金属粒子、金属酸化物の粒子、および金属窒化物粒
子の等がある。これらの粒子の寸法は、10〜1000
nmであることが好ましい。ヤング率を調節する材料とし
ては、バリウムフェライト、炭酸カルシウム、アルミナ
およびα−Fe23等がある。ヤング率を調節する材料
の形状は扁平形状またはラグビー・ボール状であること
が好ましく、その寸法は最も長い差渡しが100〜50
00nmであるような寸法であることが好ましい。結合材
としては、ポリウレタン、ニトロセルロースおよび塩化
ビニル共重合体等がある。
【0026】各材料の混合割合は、用いる材料の種類お
よびクッション層の所望のヤング率に応じて、適宜選択
する。具体的には、例えば、50〜200重量部のカー
ボン粒子、50〜200重量部のポリウレタン、および
0〜200重量部のバリウムフェライトの混合物でクッ
ション層を形成できる。これ以外にも、例えば、塩化ビ
ニル共重合体、ポリウレタン、カーボングラック、およ
びアルミナの混合物、ポリウレタン、カーボンブラッ
ク、炭酸カルシウム、およびα−Fe23の混合物、ま
たはポリウレタン、ニトロセルロース、カーボンブラッ
ク、および炭酸カルシウムの混合物でクッション層を形
成できる。
【0027】クッション層は、例えば、クッション層の
構成材料を適当な溶媒に溶解または分散させた塗布液を
補強層の上に塗布し、塗布後、乾燥して溶媒を蒸発させ
る方法(湿式塗布法)により形成することができる。例
えば、上述のカーボン粒子、ポリウレタンおよびバリウ
ムフェライトの混合物でクッション層を形成する場合に
は、この混合物をトルエンとメチルエチルケトンの混合
溶媒に溶解および分散させたものを補強層に塗布すると
よい。
【0028】本発明の磁気テープにおいては、クッショ
ン層以外の構成は特に限定されない。よって、非磁性基
板、磁性層、保護層および補強層は常套の材料および方
法で構成することができる。
【0029】非磁性基板は、通常用いられているものを
任意に使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリアミド、またはポリエチレンナフタレート等か
ら成るフィルムであるポリマー基板を使用してよい。後
述するように、本発明においてはクッション層を形成す
ることと相俟って比較的大きなヤング率を有する補強層
を非磁性基板に形成できるから、比較的薄く、曲げ剛性
の小さい非磁性基板を用いても、実用的な曲げ剛性を有
する磁気テープが得られる。したがって、例えば、ポリ
エチレンテレフタレートから成る、3〜7μmのフィル
ムを非磁性基板として使用できる。高い曲げ剛性を有す
るフィルム(例えばポリエチレンナフタレートまたはポ
リアミドのフィルム)を使用する場合には、その厚さを
2.5〜5μmとすることができる。
【0030】本発明の磁気テープもまた、良好な走行性
を確保するために、その磁性層側表面に突起を有する構
造であることが好ましい。突起の高さは15nm以上であ
ることが好ましく、20nm以上であることがより好まし
い。通常、突起の高さは分布を有するため、平均の高さ
が15nm以上の突起を有する磁性層側表面には高さが3
0nmを超える突起が存在する場合もある。一般に、磁性
層側表面にこのように高い突起が存在すると、磁気テー
プが巻き取られて重なり合ったときに補強層に突き当た
ってクラックや欠損を生じさせる。しかし、本発明の磁
気テープにおいては、クッション層が突起と補強層との
間に介在して、突起の「当り」を緩和するから、比較的
高い突起が形成されていてもクラックや欠損が生じにく
い。必要に応じて磁気テープの補強層側表面も突起を有
する構造としてよい。なお、本明細書において、突起の
高さとは、磁気テープの表面に存在する突起の平均的な
高さをいうものとする。具体的には、例えば、磁気テー
プの磁性層側表面の3μm角の領域を1箇所、原子間力
顕微鏡でコンタクトモードにて観察して、その領域内に
ある全ての突起の高さを測定し、測定した高さのなかで
20番目に高いものを平均的な高さとし、これを磁気テ
ープが表面に有する突起の高さとして規定することがで
きる。
【0031】突起を有する表面構造は、非磁性基板の磁
性層が形成される側の表面および必要に応じて補強層が
形成される側の表面に突起を有する非磁性基板を使用
し、その突起に沿って磁性層ならびに必要に応じて保護
層および/または潤滑剤層を形成することにより得られ
る。表面に突起を有する非磁性基板を得る方法について
は、先に従来の技術の欄で説明したとおりであるから、
ここではその詳細な説明を省略する。
【0032】本発明の磁気テープを構成する補強層は、
非磁性基板の磁性層が形成される面とは反対側の面に形
成される。補強層のテープ長手方向のヤング率は30G
Pa以上であることが好ましく、50GPa以上であること
がより好ましい。但し、補強層のヤング率が高すぎる
と、補強層にクラックが生じやすくなるので、補強層の
ヤング率は100GPa以下とすることが好ましい。
【0033】通常、補強層のテープ長手方向のヤング率
をこのように高くして磁気テープの剛性を高めると、上
述したように磁性層側表面の突起と接触することによっ
て補強層にクラックや欠損が生じ、また、例えば補強層
側表面と磁性層側表面との間にダストが巻き込まれた場
合、ダストと硬い補強層側表面との間で局所的に高い圧
力が生じて、補強層にクラックや欠損が生じやすい。し
かし、本発明の磁気テープにおいては、補強層を覆うク
ッション層が、突起の「当り」やダストに起因して生じ
る局所的な圧力を緩和するから、補強層のテープ長手方
向のヤング率が大きくてもクラックや欠損が生じにく
い。即ち、クッション層を設けることによって、より大
きいヤング率を有する補強層を採用することができるか
ら、磁気テープの曲げ剛性をより向上させ得、したがっ
て、磁気テープの非磁性基板をより薄くすることができ
る。なお、補強層のヤング率はクッション層のヤング率
と同様にして測定でき、磁気テープを製造した後、クッ
ション層をエッチング等により除去して補強層を有する
状態で測定したヤング率および厚さと、更に補強層をエ
ッチング等により除去した状態で測定したヤング率およ
び厚さとから求めることができる。また、磁気テープの
製造過程において、補強層を形成する前後の非磁性基板
(磁性層が形成された非磁性基板を含む)のヤング率お
よび厚さを測定することによっても補強層のヤング率を
求めることができる。
【0034】補強層は、例えば、アルミニウム、ステン
レス、コバルト、ニッケル、銅、および亜鉛から選択さ
れる1または複数の材料から成ることが好ましい。補強
層は、これらの材料を用いて、真空蒸着法、反応性蒸着
法、イオンプレーティング、スパッタ法、メッキ法また
はCVD法等により、非磁性基板の表面に形成できる。
また、上記の金属を酸素雰囲気中で真空蒸着させ、蒸着
中に非磁性基板へ供給する酸素の流量を制御して補強層
の酸化度(即ち、金属酸化物の含まれる割合)を制御す
れば、補強層のヤング率を調節することができる。一般
に、酸化度が高いと、ヤング率は大きくなる傾向にあ
る。但し、酸素の供給流量が大きすぎると補強層がポー
ラスな膜となってヤング率が低下するおそれがある。一
般に、補強層の厚さは、100〜500nmとすることが
好ましい。
【0035】本発明の磁気テープは、金属薄膜型磁気テ
ープに好ましく適用できる。金属薄膜型磁気テープの磁
性層は、ニッケル、鉄およびコバルト等の強磁性金属、
ならびにこれらの強磁性金属のうち1つまたは複数が主
成分として好ましくは50原子%以上含まれる合金、例
えば、CoNi、CoFe、CoCr、CoCu、Co
Pt、CoPd、CoSn、CoPtCr、CoFeC
rおよびCoNiCr等から選択される材料で形成され
た金属薄膜である。金属薄膜は、真空蒸着法、反応性蒸
着法、イオンプレーティング、スパッタ法、メッキ法ま
たはCVD法等で形成できる。磁性層の構造は単層構造
であってよく、あるいは多層構造であってもよい。ま
た、磁性層は、記録に関与しない下地層を有していてよ
い。金属薄膜型磁気テープにおいて、磁性層の厚さは、
通常、30〜200nmである。
【0036】磁性層は上述の金属または合金の酸化物も
しくは窒化物を含んでいてよい。金属酸化物および金属
窒化物は、磁性層の磁気特性を向上させるとともに、磁
性層の硬度を向上させる。従来の磁気テープにおいて、
磁性層の硬度を向上させると、先に述べた補強層のクラ
ックまたは欠損がより生じやすくなる。また、ダストと
磁性層側表面との間に生じる局所的な圧力に起因して、
磁性層(保護層および/または潤滑剤層を形成する場合
にはこれらの層と磁性層)にもクラックまたは欠損が生
じやすくなる。しかし、本発明の磁気テープにおいて
は、補強層の上にクッション層が存在するため、磁性層
の硬度の高低にかかわらず、クラック等の発生が有効に
抑制される。即ち、本発明は、金属酸化物および/また
は金属窒化物を含む磁性層を有して成る磁気テープに好
ましく適用される。
【0037】本発明の磁気テープは、好ましくは、磁性
層の上にカーボン系膜から成る保護層を有して成る。こ
こで、「カーボン系膜」とは、炭素が主成分として好ま
しくは50重量%以上含まれる膜をいう。したがって、
カーボン系膜は、酸素、フッ素、および/または窒素等
を含むものであってよい。
【0038】カーボン系膜は硬度が高く、保護層とし
て、磁性層の摩耗および損傷を有効に防止し、磁気テー
プの信頼性を向上させる。カーボン系膜は一般に磁性層
よりも硬く、したがって、従来の磁気テープがカーボン
系膜を有する場合には、金属酸化物および/または金属
窒化物を含む磁性層を形成した場合と同様に、補強層、
磁性層およびカーボン系膜において、クラックまたは欠
損がより生じやすくなる。しかし、本発明の磁気テープ
は補強層の上にクッション層を有しているため、カーボ
ン系膜の有無にかかわらず、クラック等の発生が有効に
抑制される。即ち、本発明は、カーボン系膜を保護層と
して有する磁気テープに好ましく適用される。
【0039】カーボン系膜は、スパッタリングまたはプ
ラズマCVD法等の方法で形成できる。また、カーボン
系膜は、アモルファス状、グラファイト状もしくはダイ
ヤモンド状の炭素から成るものであってよく、あるい
は、それらの炭素を混合および/または積層して形成し
たものであってよい。カーボン系膜の厚さは、通常3〜
15nmである。
【0040】なお、保護層は必ずしも必要ではない。ま
た、カーボン系膜に代えて、例えば、金属酸化物および
/または金属窒化物から成る薄膜を、保護層として磁性
層の上に設けてもよい。
【0041】本発明の磁気テープにおいて、磁性層は5
0GPa以上のテープ長手方向のヤング率を有することが
好ましく、磁性層の上にカーボン系膜が形成されている
場合には磁性層およびカーボン系膜が一体的に50GPa
以上のテープ長手方向のヤング率を有することが好まし
い。このように高いヤング率を有する磁性層は、先に述
べたように、補強層および磁性層等においてクラックお
よび欠陥を生じさせやすい。しかし、本発明によれば、
補強層の上のクッション層によってクラック等の発生が
有効に抑制されるため、磁性層のヤング率をそのように
高くすることが可能である。即ち、ここで規定する磁性
層のテープ長手方向のヤング率は、クッション層が無け
れば、採用することが困難なテープ長手方向のヤング率
の範囲に相当する。
【0042】なお、磁性層の上にカーボン系膜が形成さ
れている場合に、磁性層およびカーボン系膜の一体的な
テープ長手方向のヤング率の好ましい範囲を規定してい
るのは、カーボン系膜が薄いために、それのみの正確な
ヤング率を測定することが困難であることによる。ま
た、カーボン系膜に代えて別の保護層が形成されている
場合には、磁性層とその保護層の一体的なテープ長手方
向のヤング率が上記の範囲内にあることが好ましい。
【0043】磁性層のヤング率、ならびに磁性層および
カーボン系膜の一体的なヤング率は、クッション層と同
様にして測定できる。具体的には、磁気テープを製造し
た後、潤滑剤層が形成されている場合には潤滑剤層をエ
ッチング等により除去して磁性層(または磁性層および
カーボン系膜)を有する状態で測定したヤング率および
厚さと、更に磁性層(または磁性層およびカーボン系
膜)をエッチング等により除去した状態で測定したヤン
グ率と厚さから求めることができる。また、磁気テープ
の製造過程において、磁性層(または磁性層およびカー
ボン系膜)を形成する前後の非磁性基板のヤング率およ
び厚さを測定することによっても磁性層(または磁性層
およびカーボン系膜)のヤング率を求めることができ
る。
【0044】本発明の磁気テープは、走行性を更に向上
させるため、磁性層(カーボン系膜が形成されている場
合にはカーボン系膜)の上に潤滑剤層を有していてよ
い。潤滑剤層を形成する潤滑剤は、磁気記録媒体用の潤
滑剤として汎用されているものから任意に選択できる。
潤滑剤は、例えば、炭化水素系化合物の水素がフッ素で
置換されたフッ素系潤滑剤であることが好ましく、炭素
系潤滑剤(例えばステアリン酸およびミリスチン酸)で
あってもよい。潤滑剤層は、潤滑剤以外の成分として、
例えば極圧剤、防錆剤等を含んでよい。潤滑剤層は、例
えば、潤滑剤を適当な溶媒に溶解または分散させた塗布
液を磁性層(またはカーボン系膜)の上に塗布した後、
溶媒を蒸発させることによって形成できる。潤滑剤層の
厚さは、通常、2〜8nmである。
【0045】本発明の磁気テープの一例を図2に示す。
図2に示す磁気テープ(10)は、非磁性基板(1)の一
方の面に磁性層(2)を、他方の面に補強層(5)を有
して成り、補強層(5)の表面にクッション層(6)が
形成されている。また、磁性層(2)の上に保護層
(3)が形成され、保護層(3)の上に潤滑剤層(4)
が形成されている。したがって、この磁気テープは巻き
取られたときに、潤滑剤層(4)の表面とクッション層
(6)の表面とが接触することとなる。
【0046】
【実施例】以下、本発明を3つの実験例により具体的に
説明する。なお、実験例1〜3において、各試料のクッ
ション層のヤング率A(GPa)、補強層のヤング率、お
よび磁性層のヤング率はいずれも、磁気テープを作製し
た後、ヤング率を測定しようとする層をエッチングし、
エッチング前後の試料のヤング率および厚さから求め
た。ヤング率の測定に使用した引張試験装置はオリエン
テック社製のRTM−25(商品名)であり、引張長さ
は200mm、引張速度は10mm/分とした。また、各試
料の厚さは、試料を10枚重ねた状態でマイクロメータ
ー(三豊社製)により測定した厚さから算出した。クッ
ション層の厚さB(μm)は、クッション層を有する試
料の厚さとクッション層を取り除いた試料の厚さから算
出した。
【0047】(実験例1:試料1〜9)実験例1では、
クッション層のテープ長手方向のヤング率および厚さを
変化させた試料を作成して評価した。厚さ4.2μm、
テープ幅方向のヤング率6.5GPa、テープ長手方向の
ヤング率4.7GPa、幅250mmのポリエチレンテレフ
タレート・フィルムであって、一方の表面に突起を有す
るフィルムを、非磁性基板として用意した。この非磁性
基板の突起を有する側の面に、コバルトから成る厚さ1
60nmの磁性層を真空蒸着法により形成した。磁性層
は、電子ビームで蒸発させたコバルトを僅かに酸素を導
入した酸素雰囲気中にて斜方蒸着させることにより形成
した。続いて、磁性層の上に保護層としてカーボン系膜
を形成した。カーボン系膜は、メタンガスを原料とする
プラズマCVD法により形成し、その厚さは10nmとし
た。
【0048】磁性層とカーボン系膜は一体的に、テープ
の長手方向および幅方向においてほぼ同じヤング率(約
80GPa)を有していた。
【0049】次に、非磁性基板の磁性層が形成された面
とは反対側の面に、厚さ100nmの補強層を真空蒸着法
により形成した。補強層は、具体的には、ライン速度を
30m/分に設定し、酸素を0.8L(リットル)/分
の流量で非磁性基板に向けて供給した酸素雰囲気中に
て、電子ビームでアルミニウムを蒸発させることにより
形成した。得られた補強層のテープ長手方向のヤング率
は43GPaであった。
【0050】なお、補強層中に含まれる酸素の量とヤン
グ率との関係を調べるために、蒸着中の酸素の供給流量
を変えて複数の試料を作製したところ、酸素の供給流量
を増やすと補強層に酸化アルミニウムが多く含まれてヤ
ング率が上昇し、さらに流量を増やした場合には補強層
がポーラスな膜となってヤング率が低下することが確認
された。
【0051】続いて、補強層の上にクッション層を湿式
塗布法により形成した。クッション層は、バリウムフェ
ライト(クッション層のヤング率調節成分に相当)の混
合割合を表1に示すように変化させ、その他の成分の混
合割合を下記のとおりとした混合物から成る塗布液を、
補強層の上に塗布して形成した。塗布は、溶媒が蒸発し
た後に表1に示す所定の厚さの層が形成されるように、
塗布厚を適宜変化させて実施した。 [塗布液の組成] トルエンおよびメチルエチルケトン(溶媒):各50
0重量部 カーボン粒子:20重量部 ポリウレタン:100重量部 バリウムフェライト:表1に示す割合
【0052】クッション層を形成した後に、フッ素系潤
滑剤をカーボン系膜の表面に塗布した。そして、テープ
幅8ミリメートルに裁断して磁気テープ試料を製作し
た。磁気テープを巻き取ることにより、磁気テープ試料
の磁性層側表面の潤滑剤の一部が補強層側表面に移動
し、その結果、補強層側表面にも潤滑性が付与され、よ
り良好な走行性を得ることができた。
【0053】得られた9種類のテープ試料の磁性層側表
面の3μm角の領域を1箇所、原子間力顕微鏡のコンタ
クトモードにて観察した。そして、磁性層側表面に存在
するすべての突起の高さを測定し、その中で20番目に
高い突起の高さを、各試料の表面の突起の平均的な高
さ、即ち突起の高さとした。このようにして、各試料の
表面の突起の高さを測定したところ、いずれの試料も2
2〜25nmの高さの突起を有していた。
【0054】各テープ試料の性能を評価するために、エ
クサバイト社のマンモスデッキで長さ2メートルのテー
プ試料を10000パスの走行テストに付し、走行中の
異常エラーの発生回数を測定した。測定は、デッキ中に
組み込まれたシンボルエラーレート測定用の専用回路を
使用して実施し、1パス(20MB)中、1シンボルあ
たりのエラーレートがマイナス2乗以上になった場合に
異常エラーが発生したとして、10000パスの走行中
に発生した異常エラーの数を測定した。この異常エラー
は、再現する場合も多いが必ずしも再現しないものであ
り、例えば、先のパスで異常エラーが発生しても、次の
パスでは異常エラーが発生しないこともある。なお、磁
気テープの初期のシンボルエラーレートは、一般に1シ
ンボルあたりマイナス4乗以下である。
【0055】各試料の製作条件(クッション層を形成す
る際に用いる塗布液中のバリウムフェライトの混合割
合)、クッション層のテープ長手方向のヤング率A(G
Pa)および厚さB(μm)、A/B、ならびに1000
0パス中の異常エラー発生回数を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】表中、クッション層のA/Bが20以下で
ある本発明品に相当する試料は、異常エラーの発生回数
が少なく、良好な走行耐久性を示すものであった。異常
が多発した試料2と試料3では補強層や磁性層で局所的
なクラックの発生が確認され、異常エラーは局所的なス
ティフネス不足が原因と推定された。
【0058】実験例1の結果から判るように、クッショ
ン層のA/Bを20以下とすることにより、異常エラー
の発生を大幅に抑制することが可能である。また、クッ
ション層の厚さを大体0.3μm以上とすれば、クッシ
ョン層による改善効果が顕著に認められることが確認さ
れた。なお、表1の各試料はクッション層のヤング率が
異なっていたために初期スティフネスに差を有するもの
であったが、本評価はテープが磁気ヘッドと馴染んだ状
態で(即ち、磁気テープと磁気ヘッドとが適切に接触し
た状態で)実施したので、初期スティフネスの差が異常
エラーの発生回数に大きな影響を及ぼすようなことはな
かったと考えられる。
【0059】(実験例2:試料10〜19)次に、補強
層のテープ長手方向のヤング率を変化させた試料を作成
して評価した。実験例1と同じ材料を使用し、同じ方法
によって、非磁性基板の上に、磁性層、保護層としての
カーボン系膜を形成した。次いで、非磁性基板の磁性層
が形成されている側とは反対側の面に補強層を形成し
た。補強層は、実験例1と同様に、僅かに酸素を導入し
た真空下でアルミニウムを斜方蒸着して形成した。この
とき、酸素の供給流量を表2に示すように変化させて、
補強層のテープ長手方向のヤング率が異なる試料を得
た。いずれの試料においても補強層の厚さは120nmと
した。各試料の補強層のテープ長手方向のヤング率は表
2に示すとおりである。
【0060】続いて、試料10〜14において、補強層
の上にクッション層を形成した。クッション層は、塗布
液中のバリウムフェライトの混合割合を50重量部とし
て、実験例1と同様にして形成した。クッション層は、
テープ長手方向のヤング率Aが6.2GPa、厚さBが
0.5μm、A/Bが12.4であった。試料15〜1
9にはクッション層を形成しなかった。
【0061】次に、各試料のカーボン系膜の上に実験例
1と同様にして潤滑剤層を形成した。そして、テープ幅
8ミリメートルに裁断して磁気テープ試料を製作した。
磁気テープを巻き取ることにより、磁気テープ試料の磁
性層側表面の潤滑剤の一部が補強層側表面に移動し、そ
の結果、補強層側表面にも潤滑性が付与され、より良好
な走行性を得ることができた。
【0062】実験例1と同様、得られた各磁気テープ試
料の磁性層とカーボン系膜は一体的に長手方向および幅
方向において約80GPaのヤング率を有していた。ま
た、各磁気テープ試料は、実験例1と同様、22〜25
nmの突起を表面に有していた。
【0063】各試料の補強層形成時の酸素の供給流量、
補強層のテープ長手方向のヤング率、クッション層の有
無、および10000パス中の異常エラー発生回数を表
2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】表2に示すように、本発明品に相当する試
料10〜14はいずれも優れた走行耐久性を示した。ク
ッション層を形成しなかった場合、補強層のヤング率が
30GPaよりも小さい試料15および16では、異常エ
ラーの発生は認められなかったが、補強層のヤング率が
30GPaを超える試料17〜19は、同じヤング率の補
強層を有する試料12〜14と比較して走行耐久性の点
で劣っていた。また、異常エラーはクッション層が無い
場合には補強層のヤング率が高いほど多発したが、クッ
ション層を形成した試料では補強層のヤング率を高くし
ても異常エラーは発生しなかった。したがって、実験例
2の結果より、本発明は、補強層のヤング率が30GPa
を超える場合に特に優れた効果をもたらし、その効果は
補強層のヤング率が50GPaを超えてもなお、発揮され
ることが確認された。
【0066】なお、試料15および16は、繰り返し走
行させた場合でも補強層にクラックが発生せず、走行耐
久性に関しては問題の無いものである。しかし、補強層
のヤング率が低いことに起因して磁気テープ全体のステ
ィフネスが不足しているために、エンベロープ不良やエ
ッジダメージを発生する傾向にあり、実用的なものでは
ない。
【0067】(実験例3:試料20〜27)磁性層とカ
ーボン系膜との一体的なヤング率、および磁気テープの
磁性層側表面に存在する突起の高さを変化させた試料を
作成して性能を評価した。厚さ3.8μm、テープ幅方
向のヤング率12.0GPa、テープ長手方向のヤング率
16.5GPa、幅250mmのポリアミド・フィルムであ
って、その表面に突起を有するフィルムを、非磁性基板
として用意した。ポリアミド・フィルムは、最終的に得
られる各試料が異なる高さの突起を表面に有するよう
に、表面の突起の高さが異なるものを複数種用意した。
【0068】この非磁性基板の突起を有する側の面に、
コバルトから成る厚さ160nmの磁性層を形成した。磁
性層は、電子ビームにより蒸発させたコバルトを僅かに
酸素を導入した真空下で斜方蒸着させることにより形成
した。このとき、酸素の非磁性基板への供給流量を表3
に示すように変化させて、磁性層中の酸化コバルトの含
有量を変え、それにより磁性層のヤング率を制御して、
磁性層のヤング率が異なる試料を得た。続いて、磁性層
の上に保護層としてカーボン系膜を形成した。カーボン
系膜は、メタンガスを原料とするプラズマCVD法によ
り形成し、その厚さは5nmとした。
【0069】次に、非磁性基板の磁性層が形成された面
とは反対側の面に、厚さ150nmの補強層を真空蒸着法
により形成した。補強層は、具体的には、ライン速度を
50m/分に設定し、酸素を0.2L(リットル)/分
の流量で非磁性基板に向けて供給した酸素雰囲気中に
て、電子ビームでステンレスを蒸発させることにより形
成した。得られた補強層のテープ長手方向のヤング率は
40GPaであった。
【0070】続いて、試料27においてのみ、補強層の
上にクッション層を湿式塗布法により形成した。クッシ
ョン層は、塗布液中のバリウムフェライトの混合割合を
50重量部として、実験例1と同様にして形成した。ク
ッション層は、テープ長手方向のヤング率が6.2GP
a、厚さが0.4μm、A/Bが15.5であった。試
料20〜26にはクッション層を形成しなかった。
【0071】次に、各試料に実験例1と同様にして、カ
ーボン系膜の上にフッ素系潤滑剤を用いて潤滑剤層を形
成した。そして、テープ幅8ミリメートルに裁断して磁
気テープ試料を製作した。磁気テープを巻き取ることに
より、磁気テープ試料の磁性層側表面の潤滑剤の一部が
補強層側表面に移動し、その結果、補強層側表面にも潤
滑性が付与され、より良好な走行性を得ることができ
た。
【0072】得られた各磁気テープ試料の磁性層とカー
ボン系膜は一体的に長手方向および幅方向において、同
じ大きさのヤング率を有していた。各試料の磁性層とカ
ーボンの一体的なヤング率は表3に示すとおりである。
また、各磁気テープ試料は、それぞれ表3に示す高さの
突起を有していた。
【0073】各試料の磁性層形成時の酸素の供給流量、
磁性層とカーボン系膜との一体的なテープ長手方向のヤ
ング率、クッション層の有無、表面の突起の高さ、およ
び10000パス中の異常エラー発生回数を表3に示
す。
【0074】
【表3】
【0075】試料20〜24の異常エラーの発生回数を
比較すると、異常エラーの発生回数は、磁性層とカーボ
ン系膜の一体的なテープ長手方向のヤング率が50GPa
を超えると多くなる傾向にあることが判る。また、試料
24〜26の異常エラー発生数を比較すると、異常エラ
ーは、磁性層とカーボン系膜の一体的なヤング率が同じ
場合には表面の突起の高さが20nmを超えると多発する
傾向にあることが判る。一方、本発明品に相当する試料
27は、磁性層およびカーボン系膜の一体的なヤング率
が高く、また表面の突起が高いにもかかわらず、優れた
走行耐久性を示している。これは、クッション層がクラ
ックの発生を有効に抑制しているためであると考えられ
る。本実験例のこの結果から、本発明は、磁性層とカー
ボン系膜の一体的なテープ長手方向のヤング率が50G
Paを超え、表面の突起が20nmを超える磁気テープに都
合良く適用できることが判る。なお、本実験例では、磁
性層の上にカーボン系膜を形成した試料の性能を示した
が、カーボン系膜が形成されていない磁気テープについ
ても同様の効果が確認された。
【0076】
【発明の効果】本発明の磁気テープは、非磁性基板の磁
性層が形成されている側の表面とは反対側の表面に補強
層を有し、補強層の上に、テープ長手方向のヤング率A
(GPa)の厚さB(μm)に対する比A/Bが所定値以
下であるクッション層を更に有することを特徴とする。
かかる特徴によれば、磁気テープが巻き取られた場合に
局所的な力が補強層等に加わり得る場合でも、その力を
クッション層が緩和するため、補強層等にクラックが生
じない。それにより、局所的なスティフネスの低下が防
止されて磁気テープに走行耐久性が付与されることとな
る。したがって、本発明によれば、剛性確保のために高
いヤング率の補強層および/または磁性層を採用し、ま
た、走行性確保のために磁性層側表面に高い突起を存在
させた場合でも、それらが奏する効果を損なうことな
く、繰り返しの走行に耐え得る実用信頼性の高い磁気テ
ープを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の磁気テープの一態様の模式的断面図で
ある。
【図2】 本発明の磁気テープの一態様の模式的断面図
である。
【符号の説明】
1...非磁性基板、2...磁性層、3...保護層、4...潤
滑剤層、5...補強層、6...クッション層、10...磁
気テープ。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板の一方の面に磁性層を有し、
    他方の面に補強層および補強層の上に形成されたクッシ
    ョン層を有して成る磁気テープであって、クッション層
    のテープ長手方向のヤング率A(GPa)とクッション層
    の厚さをB(μm)との比であるA/Bが20以下であ
    ることを特徴とする磁気テープ。
  2. 【請求項2】 クッション層の厚さが0.3μm以上で
    あることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープ。
  3. 【請求項3】 補強層が30GPa以上のテープ長手方向
    のヤング率を有することを特徴とする請求項1または請
    求項2に記載の磁気テープ。
  4. 【請求項4】 磁気テープの磁性層が形成されている側
    の表面に高さ20nm以上の突起を有することを特徴とす
    る請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  5. 【請求項5】 磁性層の上に保護層としてカーボン系膜
    を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項
    に記載の磁気テープ。
  6. 【請求項6】 磁性層が50GPa以上のテープ長手方向
    のヤング率を有することを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載の磁気テープ。
  7. 【請求項7】 磁性層およびカーボン系膜が一体的に、
    50GPa以上のテープ長手方向のヤング率を有すること
    を特徴とする請求項5に記載の磁気テープ。
  8. 【請求項8】 磁性層が金属酸化物または金属窒化物を
    含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記
    載の磁気テープ。
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