JP2001254739A - 焼結含油軸受およびその製造方法 - Google Patents

焼結含油軸受およびその製造方法

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JP2001254739A
JP2001254739A JP2000070162A JP2000070162A JP2001254739A JP 2001254739 A JP2001254739 A JP 2001254739A JP 2000070162 A JP2000070162 A JP 2000070162A JP 2000070162 A JP2000070162 A JP 2000070162A JP 2001254739 A JP2001254739 A JP 2001254739A
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coining
inner diameter
bearing
diameter surface
sintered oil
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JP2000070162A
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Motohiro Miyasaka
元博 宮坂
Toshiichi Takehana
敏一 竹花
Ryoji Sato
良治 佐藤
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Resonac Corp
Original Assignee
Hitachi Powdered Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 任意の形状および深さの溝、あるいはそのよ
うな溝と同等の機能を、軸受の内径面に容易かつ効率的
に設ける。 【解決手段】 外径面11aに、周方向に沿った溝、周
方向に対して傾斜した溝、周方向の一方側に収束するV
字状の溝、点状の穴のいずれかからなるコイニング部1
2を、複数、かつ1種または2種以上形成する。内径面
11bのコイニング部12に対応する箇所に、コイニン
グ部12と同形状で径方向内側に突出し、その内径面1
1bが回転軸の軸支面となる内径小部13を形成し、内
径小部13の間に溝状の内径大部14を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば精密機器に
内蔵されるスピンドルモータの駆動軸等、比較的高速で
回転する軸を高剛性かつ高精度で支持する場合に用いて
好適な、焼結含油軸受およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】焼結含油軸受は、金属粉末原料を圧縮成
形して得た圧粉体(主に円筒状が多い)を焼結し、その
焼結体を再圧縮(サイジングやコイニング等を含む)し
て製造される。このような軸受は、軸孔の内周面すなわ
ち内径面の全体が回転軸を支持する軸支面になっている
単純な円筒状の他に、内径面の軸方向中央部に回転軸が
接触しない中逃げ部が形成され、回転軸を両端部の軸支
面で支持する2点支持構造としたものも提供されてい
る。これら軸受では、回転軸の高速回転に対応し得るよ
うな剛性を確保したり摩擦低減を図ったりする目的で、
軸支面に動圧溝を設けたものが多い。
【0003】軸受の内径面に動圧溝を設けるには、従
来、軸受が比較的大型の場合には、バイトで研削する方
法や、外径面に凸条を有するローラで内径面を転造する
方法が採られていた。一方、比較的小型の軸受の場合に
は、サイジング用のコアロッドの外径面に凸条を形成し
ておき、ダイ内で焼結体をサイジングした際に凸条を焼
結体の内径面に転写させて溝を形成し、ダイから焼結体
を抜き出した後にスプリングバックによって内径の拡大
を得て溝を確保する方法や、外径面に凸条を有する円筒
状の治具を焼結体の軸孔に挿入した後に、治具を機械的
に、あるいは流体圧によって拡径して凸条を焼結体の内
径面に転写させて溝を形成する治具法などが用いられて
いた。
【0004】また、特に上記中逃げ部を有する2点支持
構造の軸受の場合には、サイジング用コアロッドに形成
した凹条を、サイジングの際に焼結体の両端部に転写さ
せることによって凸条を形成し、ダイから焼結体を抜き
出した後にスプリングバックによって凸条の内径の拡大
を得て凸条間を溝として得る方法がある。この場合、凹
条が転写された軸方向両端部の凸条の内径面が軸支面と
なり、これらの間の中央部の内径面は凸条よりも大径で
中逃げ部とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記動圧溝の形成方法
のうち、比較的大型の軸受の場合に適用している上記方
法は、所望の深さの動圧溝を概ね容易に形成することが
できる点で有効である。一方、比較的小型の軸受に適用
している上記方法は、次の課題を有している。すなわ
ち、サイジング時にコアロッドによって動圧溝を形成し
た後にダイから焼結体を抜き出し、最終的にスプリング
バックを利用して動圧溝を得る方法では、スプリングバ
ック量を超える深さの動圧溝を形成することができず、
比較的深い動圧溝の形成が困難であった。また、上記治
具法では、より小型の軸受に適用するには治具の製作が
困難であるばかりか、動圧溝を転写させるための圧力を
十分に得ることができず、量産には適さない。
【0006】したがって本発明は、次の事項を満足する
焼結含油軸受およびその製造方法を提供することを目的
としている。 (1)任意の形状および深さの溝を、容易かつ効率的に
内径面に形成することを可能とする。 (2)任意の形状および深さの溝を形成する代わりに、
溝と同等の機能を付加することができる。 (3)溝または溝と同等の機能を有する軸受の量産性を
向上させる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するためになされたものであり、各発明ごとの手段の
特徴点は、以下の通りである。A.焼結含油軸受 A−1.内径面に溝を有する焼結含油軸受 回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受であって、外径
面に複数のコイニング部が形成されている一方、内径面
のコイニング部に対応する箇所に、該コイニング部と同
形状で径方向内側に突出し、その内径面が回転軸の軸支
面となる内径小部が形成されている。本発明の軸受にあ
っては、コイニング部に応じて形成された内径小部の内
径面が回転軸を支持する軸支面となる。また、内径小部
の間が、該内径小部よりも内径が大きい溝状の内径大部
であり、この内径大部が動圧溝のような溝として機能す
る。
【0008】本発明に係るコイニング部は、外径面に対
しコイニングによって穿たれる溝や穴であるが、具体的
な形状としては、周方向に沿った溝、周方向に対して傾
斜した溝、周方向の一方側に収束するV字状の溝、点状
の穴のうちのいずれか1種または2種以上であることを
好ましい形態としている。また、コイニング部の深さに
関しては、一定である他に、深さが周方向に異なり、こ
れに応じて、内径小部の密度分布が周方向に傾斜してい
ることを含む。
【0009】コイニング部および内径小部が形成される
領域としては、軸受の全長、軸方向の両端部、軸方向の
一端部、両端部の間の中間部等が挙げられるが、特に本
発明では、軸方向両端部を好ましい形成領域としてい
る。その場合には、両端部の内径小部で回転軸を支持
し、軸方向中間部が回転軸と接触しない中逃げ部となる
2点支持構造となる。
【0010】A−2.内径面に溝を有さない焼結含油軸
回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受であって、外径
面に複数のコイニング部が形成されている一方、回転軸
の軸支面である内径面のコイニング部に対応する箇所
に、他の箇所よりも密度が高い内径緻密部が形成されて
いる。本発明の軸受にあっては、内径面全体が回転軸を
支持する軸支面となるが、その軸支面には、コイニング
部に対応する箇所に内径緻密部が形成され、内径緻密部
の間には内径緻密部よりも密度が低い内径多孔部が形成
される。
【0011】本発明の軸受に係るコイニング部も、上記
A−1と同様に、周方向に沿った溝、周方向に対して傾
斜した溝、周方向の一方側に収束するV字状の溝、点状
の穴のうちのいずれか1種または2種以上であることを
好ましい形態としている。また、コイニング部の深さに
関しては、一定である他に、深さが周方向に異なり、こ
れに応じて、内径緻密部の密度分布が周方向に傾斜して
いることを含む。
【0012】また、コイニング部および内径緻密部が形
成される領域も、上記A−1と同様で、軸受の全長、軸
方向の両端部、軸方向の一端部、両端部の間の中間部等
が挙げられ、とりわけ軸方向両端部を好ましい形成領域
としている。その場合には、両端部の内径緻密部が主に
回転軸を支持し、軸方向中間部の内径多孔部が上記中逃
げ部と同等に機能する2点支持構造となる。
【0013】B.焼結含油軸受の製造方法 回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受を製造する方法
であって、円筒状の軸受素材をコアロッドに嵌め込み、
次いで、外径面の一部に、径方向内側に押圧するコイニ
ングを施して複数のコイニング部を形成する。
【0014】B−1.内径面に溝を有する焼結含油軸受
の製造方法 上記Bの製造方法において、素材の内径面とコアロッド
の外径面との間に隙間を設けた状態でコイニングを施
す。コイニングにより、素材の内径面とコアロッドの外
径面の隙間の部分に、コイニング部に応じた形状の肉が
塑性流動して素材の内径面から突出し、先端がコアロッ
ドに圧接する。コイニングによる内径面の突出部が、上
記A−1の軸受における内径小部となり、コアロッドへ
圧接するその先端が軸支面として形成される。また、素
材の元の内径面が溝状の内径大部となる。すなわち、上
記A−1の軸受が製造される。
【0015】この製造方法によって製造された軸受(A
−1)によれば、素材の内径面とコアロッドの外径面と
の間を任意に設定することにより、溝状の内径大部の深
さを任意とすることができる。また、コイニング部の形
状を任意とすることにより、内径大部の形状も任意とす
ることができる。また、内径大部はコイニングによる加
工を受けないので密度が比較的低く、このため、潤滑油
が浸み出しやすく、かつ保油されやすい。よって、内径
大部から内径小部の内径面である軸支面への潤滑油の供
給と、軸支面を通過した潤滑油の内径大部への受け入れ
といった潤滑油の循環作用が効率よく行われる。また、
軸支面はコアロッドに圧接されて形成されることからそ
の密度が比較的高くなり、このため、軸支面と回転軸と
の間の油圧が高くなって回転軸を支持する剛性が向上
し、優れた軸受特性が発揮される。さらに、本発明の軸
受をハウジングに嵌め込んで使用した場合には、外径面
のコイニング部によって空間部が形成され、その空間部
には、潤滑油が豊富に保油されるので、軸受としての寿
命の長期化が図られる。
【0016】B−2.内径面に溝を有さない焼結含油軸
受の製造方法 上記Bの製造方法において、素材の内径面とコアロッド
の外径面とを密接させた状態でコイニングを施す。コイ
ニングにより、素材の内径面すなわち軸支面のコイニン
グ部に対応した箇所がコアロッドに圧接されて他の箇所
よりも密度が高くなり、上記A−2の軸受における内径
緻密部が形成され、内径緻密部の間が内径多孔部とな
る。すなわち、上記A−2の軸受が製造される。
【0017】この製造方法によって製造された軸受(A
−2)によれば、比較的密度の低い内径多孔部では潤滑
油が浸み出しやすく、かつ保油されやすい。よって、内
径多孔部から内径緻密部の内径面である軸支面への潤滑
油の供給と、軸支面を通過した潤滑油の内径多孔部への
受け入れといった潤滑油の循環作用が効率よく行われ
る。また、内径緻密部においては回転軸との間の油圧が
高くなって回転軸を支持する剛性が向上し、優れた軸受
特性が発揮される。つまり、本発明では、内径多孔部が
上記軸受A−1の内径大部と同等の機能を果たす。ま
た、ハウジングに嵌め込んで使用した場合におけるコイ
ニング部の保油作用は、軸受A−1と同様であり、軸受
としての寿命の長期化が図られる。
【0018】B−3.コイニング部の形状およびコイニ
ングの方法 a)上記B,B−1またはB−2の製造方法において、
コイニングによって外径面に穿つコイニング部を、周方
向に沿った溝、周方向に対して傾斜した溝、周方向の一
方側に収束するV字状の溝、点状の穴のいずれか1種ま
たは2種以上とする。 b)上記B,B−1またはB−2の製造方法において、
コイニングを、コアロッドの軸心を中心に放射状に配置
され、素材の外径面に対して進退するコイニングパンチ
により行う。 c)上記B,B−1またはB−2の製造方法において、
コイニングを、素材の外径面に圧接しながら転動する転
造ロールで行う。 d)上記B,B−1またはB−2の製造方法において、
コイニング部の圧縮量を周方向に傾斜させる。
【0019】B−4.サイジングの追加 上記B,B−1,B−2またはB−3の製造方法によっ
て軸受素材の外径面にコイニングを施した後に、さらに
その軸受素材にサイジングを施す。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る焼結含油軸受の実施形態を説明する。A.焼結含油軸受 (1)第1実施形態:内径面に溝を有し、かつ中逃げ部
を有さない軸受 図1(a)〜(d)を参照して、内径面に溝を有し、か
つ中逃げ部を有さない焼結含油軸受である第1実施形態
を説明する。これら図は、外径面に形成されるコイニン
グ部の形状が異なる円筒状の軸受の縦断面図をそれぞれ
示している。
【0021】図1(a)の軸受1Aの外径面11aに
は、周方向に収束する複数のV字状の溝からなるコイニ
ング部12が全長にわたって形成されている。一方、内
径面11bのコイニング部12に対応する箇所には、コ
イニング部12と同形状で径方向内側に突出する内径小
部13が形成され、内径小部13の間には、内径小部1
3よりも内径の大きな内径大部14が形成されている。
軸受1AのV字状の内径小部13はヘリングボーン状に
配列され、内径面11bの内径小部13が、図示せぬ回
転軸を支持する軸支面として機能する。
【0022】図1(b)の軸受1Bの外径面11aに
は、周方向に収束する複数の細かなV字状の溝からなる
コイニング部12が、周方向に等間隔をおいて、かつ軸
方向に複数列(図示例では3列)形成されており、内径
面11bには、コイニング部12に対応した内径小部1
3が形成されているとともに、内径小部13の間に内径
大部14が形成されている。
【0023】図1(c)の軸受1Cの外径面11aに
は、周方向に対して斜めに延びる溝状の複数のコイニン
グ部12が、全長にわたり等間隔をおいて斜歯状に形成
されている。そして、内径面11bには、コイニング部
12に対応した内径小部13が形成されているととも
に、内径小部13の間に内径大部14が形成されてい
る。
【0024】図1(d)の軸受1Dの外径面11aに
は、細かな円状の穴からなる複数のコイニング部12が
全長にわたり点在して形成されており、内径面11bに
は、コイニング部12に対応した内径小部13が形成さ
れているとともに、内径小部13の間に内径大部14が
形成されている。
【0025】(2)第2実施形態:内径面に溝を有し、
かつ中逃げ部を有する軸受 次に、図2(a),(b)を参照して、内径面に溝を有
し、かつ中逃げ部を有する焼結含油軸受である第2実施
形態を説明する。
【0026】図2(a)の縦断面図で示す軸受1Eの軸
方向両端部の外径面11aには、図1(c)で示した上
記軸受1Cと同様のコイニング部12が斜歯状に形成さ
れている。この場合のコイニング部12の延びる方向
は、両端部で互いに反対向きとされている。一方、軸方
向両端部の内径面11bであってコイニング部12に対
応する箇所には、コイニング部12と同形状で径方向内
側に突出し、その内径面11bに軸支面となる内径小部
13が形成されている。また、内径小部13の間には、
内径小部13よりも内径の大きな内径大部14が形成さ
れている。そして、内径面11bにおける内径小部13
が形成された両端部の間の中央部には、内径大部14と
同等の内径を有する中逃げ部15が形成されている。
【0027】図2(b)の縦断面図で示す軸受1Fの軸
方向両端部の外径面11aには、周方向に収束する複数
のV字状のコイニング部12がヘリングボーン状に形成
されており、内径面11bには、コイニング部12に対
応した内径小部13が形成されているとともに、内径小
部13の間に内径大部14が形成されている。そしてこ
の場合も、内径面11bにおける内径小部13が形成さ
れた両端部の間の中央部に、内径大部14と同等の内径
を有する中逃げ部15が形成されている。
【0028】(3)第3実施形態:内径面の全長にわた
って内径緻密部を有する軸受 図3の縦断面図で示す軸受1Gにおける軸方向両端部の
外径面11aには、図1(a)で示した上記軸受1Aと
同様のコイニング部12が、全長にわたってヘリングボ
ーン状に形成されている。一方、内径面11bのコイニ
ング部12に対応する箇所には、他の箇所よりも密度が
高い内径緻密部13aが形成され、内径緻密部13aの
間には、内径緻密部13aよりも密度が低い内径多孔部
14aが形成されている。この軸受1Gにあっては、内
径面11b全体が回転軸を支持する軸支面となってい
る。なお、内径緻密部13aと内径多孔部14aの内径
は同一か、または内径多孔部14aが僅かに大きい。
【0029】(4)第4実施形態:両端部の内径面に内
径緻密部を有する軸受 図4の縦断面図で示す軸受1Hにおける軸方向両端部の
外径面11aには、図2(b)で示した上記軸受1Fと
同様の複数のV字状のコイニング部12がヘリングボー
ン状に形成されている。一方、軸方向両端部の内径面1
1bであって内径面11bのコイニング部12に対応す
る箇所には、他の箇所よりも密度が高い内径緻密部13
aが形成され、内径緻密部13aの間には、内径緻密部
13aよりも密度が低い内径多孔部14aが形成されて
いる。この軸受1Hも、上記軸受1Gと同様に内径面1
1b全体が回転軸を支持する軸支面となっている。ま
た、内径緻密部13aと内径多孔部14aの内径が同一
か、または内径多孔部14aが僅かに大きい点も、軸受
1Gと同様である。
【0030】B.焼結含油軸受の製造方法 次に、上記各実施形態の軸受を好適に製造する方法の実
施形態を説明する。(1)第1実施形態:コイニングパンチによるコイニン
グ部の形成 図5は、コイニングパンチ3によって上記コイニング部
12を形成するコイニング装置の概念を示している。図
中符合1は焼結体からなる円筒状の軸受素材、2は素材
1が嵌め込まれるコアロッドである。素材1の周囲に
は、コアロッド2の軸心を中心に複数のコイニングパン
チ3が放射状に配置されている。これらコイニングパン
チ3は、コアロッド2に対し、径方向に沿って前進/後
退するように構成されている。
【0031】コイニングパンチ3の先端面には、図6に
示すように、素材1にコイニング部12を形成する凸部
31が形成されている。図6の凸部31は、図1(a)
で示した軸受1Aのコイニング部12を形成するもので
あり、凸部31は、形成すべきコイニング部12に応じ
て種々形成される。コイニングパンチ3は、前進時のス
トロークエンドにおいて、凸部31が素材1の外径面1
1aを押圧し、これによってコイニング部12が刻設さ
れる。なお、コイニングパンチ3の先端部は、コイニン
グパンチ3どうしの干渉を回避すべく先細りの形状とな
っている。
【0032】上記コイニング装置によれば、素材1にコ
アロッド2を嵌め込み、次いで、図5(a)に示すよう
に、素材1から後退した待機位置にある各コイニングパ
ンチ3を、図5(b)に示すように前進させ、凸部31
を素材1の外径面11aに押圧する。この後、各コイニ
ングパンチ3を待機位置に戻す。これにより、素材1の
外径面11aに、凸部31に応じた形状のコイニング部
12が刻設される。
【0033】図7は、図1および図2で示した軸受1A
〜1Fのコイニング部12を形成する際の原理を示す横
断面図である。コアロッド2の直径は素材1の内径より
も細く、素材1をコアロッド2に対して同軸的に嵌め込
んでいる。これにより、素材1の内径面11bとコアロ
ッド2の外径面11aとの間に隙間9が設けられる。コ
イニングパンチ3によって素材1の外径面11aを押圧
するコイニングが施されると、隙間9に、コイニング部
12に応じた形状の肉が塑性流動して内径面11bから
突出し、先端がコアロッド2に圧接する。その突出部が
内径小部13として形成され、コアロッド2への圧接面
が回転軸の軸支面となる。また、内径小部13の間の加
工されない内径面11bが内径大部14となる。
【0034】コイニングによって押圧される部分は密度
が上昇するが、その密度上昇部16の気孔率がきわめて
小さくなるまで押圧されたとしても、コイニングパンチ
3で剪断されたコイニング部12の内側面12aの気孔
の大部分は開口している。したがって、コイニング部1
2から軸受内部への潤滑油の供給、あるいはこの逆で軸
受内部からコイニング部12への潤滑油の供給は十分に
なされる。内径大部14はコイニングによる加工をほと
んど受けないので、内径小部13よりも密度が比較的低
い。コイニングパンチ3の幅は内径小部13に応じた寸
法に設定され、さらに凸部31を含む先端面は、コアロ
ッド2の外径面11aに沿った曲面に形成されている。
【0035】図8は、コイニングパンチ3の変形例を示
している。この場合、コイニングパンチ3の凸部31の
幅方向中央部から片側には、外側に逃げる傾斜部32が
形成されている。このコイニングパンチ3によりコイニ
ングを施すと、コイニング部12の深さが傾斜部32に
応じて幅方向中央部から周方向に漸次浅くなり、これに
伴って内径小部13の密度分布が周方向に傾斜し、密度
傾斜部16aが生じる。すなわち、コイニングパンチ3
の傾斜部32による押圧量が比較的少ないことから、素
材1の塑性流動部においては傾斜部32に倣って密度上
昇が少なくなり、かつ、密度上昇部16の幅が狭くな
る。そして、内径面11bの内径小部13(軸支面)
も、傾斜部32に倣って周方向に傾斜した面に形成され
る。このように内径小部13の軸支面が周方向に傾斜し
ていると、回転軸との間にくさび状の隙間が形成され、
その隙間が狭まる方向に回転軸を回転させることによ
り、より優れた動圧効果を得ることができる。
【0036】図9は、図3および図4で示した軸受1
G,1Hのコイニング部12を形成する際の原理を示す
横断面図である。この場合、コアロッド2の直径は、そ
の外径面11aが素材1の内径面11bに密接する寸法
に設定されており、図7および図8のように両者の間に
隙間はない。このように、素材1の内径面11bをコア
ロッド2の外径面11aに密接させるには、コアロッド
2に対して素材1を中間嵌めまたは締まり嵌めの状態に
嵌め込むことによりなされる。コイニングパンチ3によ
って素材1の外径面11aを押圧するコイニングが施さ
れると、その外径面11aには凸部31に応じたコイニ
ング部12が形成されるとともに密度上昇部16が生
じ、一方、内径面11bのコイニング部12に対応した
箇所は、密度が高まり内径緻密部13aに形成される。
また、内径緻密部13aの間の加工されない部分は、内
径緻密部13aよりも密度が低い内径多孔部14aとな
る。
【0037】コイニングによって形成されたコイニング
部12においては、上記軸受1A〜1Fと同様に内側面
12aの気孔の大部分は開口している。素材1の内径面
11bはコアロッド2によって拘束されるので、内径は
ほぼ均一のままであるが、コイニング部12に対応した
内径緻密部13aの内径面11bはコアロッド2に圧接
されて密度が高まる。すなわち、内径面11bは、内径
緻密部13aと内径多孔部14aとが交互に配された縞
状を呈する。
【0038】このようにして内径緻密部13aおよび内
径多孔部14aを形成する際、図8で示した凸部31に
傾斜部32が形成されたコイニングパンチ3を用いるこ
とができる。このようなコイニングパンチ3を用いてコ
イニング部12を形成すると、傾斜部32に応じて内径
緻密部13aの密度分布が周方向に傾斜する。このよう
な内径緻密部13aによれば、密度が高くなる方向に回
転軸を回転させることにより、前述したくさび状の隙間
と同様の動圧効果が発揮される。
【0039】(2)第2実施形態:転造ロールによるコ
イニング部の形成 図10は、転造ロールによって上記コイニング部12を
形成するコイニング装置を示している。図中符合1は焼
結体からなる円筒状の軸受の素材、2は素材1が嵌め込
まれるコアロッド2である。図示例では、コアロッド2
の直径は素材1の内径よりも細く、素材1をコアロッド
2に対して同軸的に嵌め込んでいる。コアロッド2は、
コアロッド支持部21に対し軸回りに回転自在に支持さ
れ、素材1の肉厚より薄い円筒状の下パンチ7にガイド
される。コアロッド2の上方には、下パンチ7と対に構
成される円筒状の上パンチ6が、上パンチ支持部22に
対し軸回りに回転自在に支持されている。各支持部2
1,22は、それぞれ図示されない昇降手段によって昇
降駆動される。
【0040】コアロッド2の側方には、素材1の外径面
11aに対し径方向に沿って前進/後退する転造ロール
4が配置されている。この転造ロール4は、図11に示
すように、素材1にコイニング部12を形成する凸部4
1が外径面に形成されたもので、素材1に向かって前進
/後退するよう構成されたアーム43の先端部に、コア
ロッド2と平行な軸42を中心として回転自在に取り付
けられている。そして、転造ロール4は図示せぬ駆動手
段により回転駆動される。図11で示した凸部41は、
図1(a)で示した軸受1Aのコイニング部12を形成
するものであり、凸部41は、形成すべきコイニング部
12に応じて種々形成される。
【0041】一方、コアロッド2を挟んだ転造ロール4
とは反対側の側方には、並列された一対(図10では片
方しか図示されていない)の支持ロール5が配置されて
いる。これら支持ロール5は、素材1に向かって前進/
後退するよう構成されたアーム53の先端部に、コアロ
ッド2と平行な軸52を中心として回転自在に取り付け
られている。
【0042】上記転造ロール4を具備したコイニング装
置によれば、図10(a)に示すように、素材1にコア
ロッド2を嵌め込み、転造ロール4、支持ロール5およ
び上パンチ6が素材1から後退した待機位置にある状態
から、まず、上パンチ6を下降させ、素材1が回転可能
な程度に素材1を上下のパンチ6,7で挟み込む。次
に、図10(b)に示すように、アーム53を前進させ
て一対の支持ロール5により素材1を側方から支持する
とともに、アーム43を前進させて転造ロール4の凸部
41を素材1の外径面11aに当接させる。この状態
で、素材1をコアロッド2と同軸に保持する。
【0043】次に、転造ロール4および支持ロール5を
素材1の外径面11aに押圧させ、その押圧力を増加さ
せながら転造ロール4を回転させる。転造ロール4の回
転に伴い、素材1は回転しながらその外径面11aに転
造ロール4の凸部41が刻印され、コイニング部12が
形成される。支持ロール5は素材1に追従して回転しな
がら素材1を側方から支持する。素材1が1周したら、
転造ロール4の回転を停止させ、転造ロール4、支持ロ
ール5および上パンチ6を待機位置に戻す。
【0044】以上の操作により、素材1の外径面11a
には転造ロール4の凸部41に応じた形状のコイニング
部12が刻設される。この場合、コアロッド2の直径は
素材1の内径よりも細く、素材1の内径面11bとコア
ロッド2の外径面11aとの間に隙間が設けられている
ので、内径面11bに内径小部13と内径大部14とを
有する上記軸受1Aが製造される。また、上記軸受1
G,1Hのように、内径面11bに内径緻密部13aと
内径多孔部14aとを有する軸受を製造する場合には、
コアロッド2の直径を、その外径面が素材1の内径面に
密接する寸法に設定すればよい。なお、上記コイニング
装置は、転造ロール4および支持ロール5がコアロッド
2を中心として公転する構成であってもよい。その場
合、転造ロール4および支持ロール5が公転することに
よってコイニング部12が形成される。
【0045】C.実施形態の作用効果 上記のようにしてコイニング部12が形成された軸受1
A〜1Hによれば、ハウジングに嵌め込んで使用した場
合、外径面11aのコイニング部12によって空間部が
形成され、その空間部には潤滑油が豊富に保油されるの
で、軸受としての寿命の長期化が図られる。
【0046】また、コイニングによって内径小部13が
形成され、これにより内径面11bに溝状の内径大部1
4が形成された軸受1A〜1Fによれば、内径大部14
はコイニングによる加工を受けないので密度が比較的低
く、このため、潤滑油が浸み出しやすく、かつ保油され
やすい。よって、内径大部14から内径小部13の内径
面11bである軸支面への潤滑油の供給と、軸支面を通
過した潤滑油の内径大部14への受け入れといった潤滑
油の循環作用が効率よく行われる。また、軸支面はコア
ロッド2に圧接されて形成されることからその密度が比
較的高くなり、このため、軸支面と回転軸との間の油圧
が高くなって回転軸を支持する剛性が向上し、優れた軸
受特性が発揮される。
【0047】特に、軸受1Cにおいては、内径小部13
および内径大部14の延びる方向が反対向きのものを一
組としてハウジングの両端部に装着し、2点支持構造の
軸受を構成すると、回転軸の回転によって溝状の内径大
部14を流れる潤滑油をハウジングの軸方向中央部に集
合させることができる。これによって潤滑油が漏れにく
く、かつ摺動特性に優れた軸受を得ることができる。ま
た、軸受1Dによれば、内径小部13の軸支面すなわち
回転軸の摺動面積を比較的小さくすることができるの
で、低負荷用の回転軸に好適である。
【0048】また、コイニングによって内径緻密部13
aと内径多孔部14aが形成された軸受1G,1Hによ
れば、比較的密度の低い内径多孔部14aでは潤滑油が
浸み出しやすく、かつ保油されやすくなっている。よっ
て、内径多孔部14aから内径緻密部13aの内径面1
1bである軸支面への潤滑油の供給と、軸支面を通過し
た潤滑油の内径多孔部14aへの受け入れといった潤滑
油の循環作用が効率よく行われる。また、内径緻密部1
3aにおいては回転軸との間の油圧が高くなって回転軸
を支持する剛性が向上し、優れた軸受特性が発揮され
る。つまり、内径多孔部14aが、上記軸受A−1〜1
Fの内径大部14と同等の機能を果たす。
【0049】また、上記製造方法によれば、コイニング
パンチ3や転造ロール4で素材1の外径面11aにコイ
ニング部12を形成し、このコイニング部12を内径面
11bに転写させて内径大部14(溝)や内径緻密部1
3aを形成するので、素材1の内径面11bを直接加工
する場合と比べると、作業空間が広く、かつ工具(コイ
ニングパンチ3や転造ロール4)の製作する上での自由
度が高い。その結果、加工が容易かつ効率的であり、量
産に適している。なお、上記製造方法においては、素材
1にコイニングを施した後に、サイジングを施してもよ
い。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
外径面にコイニング部を形成することにより、内径面に
おける動圧効果あるいは軸受全体の潤滑油の効率的な供
給が実現され、軸受性能の向上が図られる。また、外径
面にコイニング部を形成することにより、軸受の内径面
に任意の形状および深さの溝を形成することができる。
さらに、内径面を直接加工せず、外径面にコイニング部
を形成して内径面を間接的に加工するので、その加工が
容易かつ効率的であり、量産に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(d)は本発明の焼結含油軸受の第
1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】 (a),(b)は本発明の焼結含油軸受の第
2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】 本発明の焼結含油軸受の第3実施形態を示す
縦断面図である。
【図4】 本発明の焼結含油軸受の第4実施形態を示す
縦断面図である。
【図5】 本発明の焼結含油軸受の製造方法を実施する
コイニング装置の第1実施形態を概念的に示す横断面図
であって、(a)は動作前、(b)は動作中を示してい
る。
【図6】 図5のコイニング装置を構成するコイニング
パンチの先端部を示す斜視図である。
【図7】 図5のコイニング装置によって、軸受素材の
内径面に内径小部および内径大部が形成される原理を説
明するための横断面図である。
【図8】 コイニングパンチの変形例、ならびにこのコ
イニングパンチによって軸受素材の内径面に内径小部が
形成される原理を説明するための横断面図である。
【図9】 図5のコイニング装置によって、軸受素材の
内径面に内径緻密部および内径多孔部が形成される原理
を説明するための横断面図である。
【図10】本発明の焼結含油軸受の製造方法を実施する
コイニング装置の第2実施形態を示す縦断面図であっ
て、(a)は動作前、(b)は動作中を示している。
【図11】図5のコイニング装置を構成する転造ロール
の斜視図である。
【符号の説明】
1…軸受素材、1A〜1H…焼結含油軸受、2…コアロ
ッド、3…コイニングパンチ、4…転造ロール、9…隙
間、11a…外径面、11b…内径面、12…コイニン
グ部、13…内径小部、13a…内径緻密部。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受
    であって、 外径面に複数のコイニング部が形成されている一方、内
    径面の前記コイニング部に対応する箇所に、該コイニン
    グ部と同形状で径方向内側に突出し、その内径面が前記
    回転軸の軸支面となる内径小部が形成されていることを
    特徴とする焼結含油軸受。
  2. 【請求項2】 前記コイニング部の深さが周方向に異な
    り、これに応じて前記内径小部の密度分布が周方向に傾
    斜していることを特徴とする請求項1に記載の焼結含油
    軸受。
  3. 【請求項3】 回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受
    であって、 外径面に複数のコイニング部が形成されている一方、前
    記回転軸の軸支面である内径面の前記コイニング部に対
    応する箇所に、他の箇所よりも密度が高い内径緻密部が
    形成されていることを特徴とする焼結含油軸受。
  4. 【請求項4】 前記コイニング部の深さが周方向に異な
    り、これに応じて前記内径緻密部の密度分布が周方向に
    傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の焼結含
    油軸受。
  5. 【請求項5】 前記コイニング部は、周方向に沿った
    溝、周方向に対して傾斜した溝、周方向の一方側に収束
    するV字状の溝、点状の穴のうちのいずれか1種または
    2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    かに記載の焼結含油軸受。
  6. 【請求項6】 前記コイニング部が形成される領域が、
    軸方向両端部であることを特徴とする請求項1〜5のい
    ずれかに記載の焼結含油軸受。
  7. 【請求項7】 回転軸を支持する円筒状の焼結含油軸受
    を製造する方法であって、 円筒状の軸受素材をコアロッドに嵌め込み、次いで、該
    素材の外径面の一部に、径方向内側に押圧するコイニン
    グを施して複数のコイニング部を形成することを特徴と
    する焼結含油軸受の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記コイニング部は、周方向に沿った
    溝、周方向に対して傾斜した溝、周方向の一方側に収束
    するV字状の溝、点状の穴のいずれか1種または2種以
    上であることを特徴とする請求項7に記載の焼結含油軸
    受の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記素材の内径面と前記コアロッドの外
    径面との間に隙間を設けた状態で前記コイニングを施す
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の焼結含油軸
    受の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記素材の内径面と前記コアロッドの
    外径面とを密接させた状態で前記コイニングを施すこと
    を特徴とする請求項7または8に記載の焼結含油軸受の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 前記コイニングを、前記コアロッドの
    軸心を中心に放射状に配置され、前記素材の外径面に対
    して進退するコイニングパンチにより行うことを特徴と
    する請求項7〜10のいずれかに記載の焼結含油軸受の
    製造方法。
  12. 【請求項12】 前記コイニングを、前記素材の外径面
    に圧接しながら転動する転造ロールで行うことを特徴と
    する請求項7〜10のいずれかに記載の焼結含油軸受の
    製造方法。
  13. 【請求項13】 前記コイニングによる前記コイニング
    部の圧縮量が、周方向に傾斜していることを特徴とする
    請求項7〜12のいずれかに記載の焼結含油軸受の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 請求項7〜13のいずれかに記載の方
    法で前記軸受素材にコイニングを施した後に、さらにそ
    の軸受素材にサイジングを施すことを特徴とする焼結含
    油軸受の製造方法。
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