JP2001247932A - 高ctod保証低温用鋼 - Google Patents
高ctod保証低温用鋼Info
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Abstract
ため、Ti、Nの化学成分値、TiNの粒径、及びその
粒径の個数を規定することで、溶接熱影響部の破壊靱性
に優れた高CTOD保証低温用鋼を提供することを目的
とする。 【解決手段】 質量%で、C:0.04〜0.15%、
Si:0.050〜0.50%、Mn:0.80〜2.
0%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、A
l:0.001〜0.06%、Ti:0.002〜0.
015%、N:0.003%以下の成分を有し、残部が
鉄及び不回避的不純物からなると共に、Ti/Nが1.
0〜6.0を満足する鋼材で、しかも、溶接前の前記鋼
材中に粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×105
〜5×106 個/mm2 存在し、かつ粒径0.5μm以
上のTiNが10個/cm2 以下とする。
Description
PG運搬船(タンカー)のタンク部、及びLNGタンカ
ーにおいてLNGタンクを支持する部材等の鋼構造物
で、−50℃の低温環境下で使用されることを前提に設
計された大入熱溶接を適用した継手部においても、破壊
靱性値であるCTOD値が高い特徴を有する溶接用構造
用低温用鋼に関するものである。
ようとするニーズが高まっている。脆性破壊を防止する
ためには、鋼材及びその溶接部において高い破壊靱性値
を確保する必要がある。破壊靱性値として、CTOD値
が広く用いられており、海洋構造物や重要建築物には、
溶接継手部のCTOD値を保証させようとする施工主や
設計者の要求があるが、溶接部のCTOD値は特に大き
くばらつくために、CTOD値を保証することは極めて
難しい。一方、従来からシャルピー試験によるVノッチ
シャルピー衝撃試験での吸収エネルギーが靱性の尺度と
して広く用いられてきた。溶接部の靱性を確保するため
には、鋼材側から様々な対策が提案されてきた。そのう
ち最も広く用いられているのは、例えば、特公昭55−
26164号公報などの、鋼中に微細なTi窒化物(以
下TiNと呼ぶ)を分散させることによって、HAZ
(溶接熱影響部:Heat Affected Zon
e)のオーステナイト粒の成長を抑え、靱性を向上させ
る方法である。また、特開平3−264614号公報
の、TiNとMnSとの複合析出物をHAZのフェライ
ト生成核として活用し、HAZ靱性を向上させる方法が
提案されている。HAZの中で、溶接金属との境界部
(以下、溶接ボンド部と呼ぶ)の靱性が最も低いのは周
知であるが、これは、最高到達温度が1400℃を超え
る溶接ボンド部ではオーステナイト粒の粒成長が著し
く、そのために溶接ボンド部の組織が粗くなるためであ
り、TiNの分散によりオーステナイト粒の成長を抑制
し、最終的なボンド組織を微細化することにより靱性を
改善する、というのがTiN活用の基本的な考え方であ
る。
よりシャルピー試験によるHAZ靱性を向上させる技術
はいくつか提案されてきた。しかしながら、シャルピー
試験で高い吸収エネルギーが得られた溶接継手部でも、
CTOD試験を行うと0.05mm以下といった低値が
発生することが多く、CTOD値を保証することは困難
であった。更に、鋼材中に様々な粒径、及び個数を持つ
TiNが分散していると、溶接方法、及び最高到達温度
の違いにより、一部のTiNは鋼材中に固溶することで
HAZ靱性を低下させ、またある一部のものは、鋼材中
で粗大化することでHAZ靱性を低下させる原因とな
り、最終的にHAZ靱性を改善することが困難になると
いう問題があった。本発明はかかる事情に鑑みてなされ
たもので、溶接部で大きくばらつくCTOD試験におい
て、−50℃の低温環境下においても、0.1mm以上
のCTOD値を保証しうる鋼材を提供するため、鋼材中
のN量、Ti/N比、TiNの粒径、及びその粒径の個
数を規定することで、溶接熱影響部靱性に優れた高CT
OD保証低温用鋼を供することを目的とする。設計温度
において必要なCTOD値は、破壊防止設計の考え方に
より0.05mm以上であったり、0.1mm以上であ
ったりと様々であるが、破壊靱性値が0.05mm以下
のCTOD値の場合には、使用される鋼材の板厚程度の
溶接欠陥(例えば20〜30mm)等が存在すれば降伏
点の1/2〜2/3程度の設計応力下でも脆性破壊する
危険性があり、危険物を低温貯蔵するような構造物では
重大な問題をまねく可能性がある。0.1mm以上のC
TOD値が保証でき、非破壊検査により板厚サイズ以上
の欠陥の存在を否定できれば、設計応力下、あるいは設
計応力の1.2倍程度の応力が負荷された場合でも脆性
破壊を生ずることはないと考えられる。
係る高CTOD保証低温用鋼は、質量%で、C:0.0
4〜0.15%、Si:0.050〜0.50%、M
n:0.80〜2.0%、P:0.015%以下、S:
0.01%以下、Al:0.001〜0.06%、T
i:0.002〜0.015%、N:0.003%以下
の成分を有し、残部が鉄及び不回避的不純物からなると
共に、Ti/Nが1.0〜6.0を満足する鋼材で、し
かも、溶接前の前記鋼材中に0.01〜0.1μmの粒
径のTiNを5×105 〜5×106 個/mm2 有して
いる。更に、粒径0.5μm以上のTiNが10個/c
m2 以下とする。これにより、大入溶接下でのTiNに
よるピンニング効果、固溶Ti、固溶N、TiC析出効
果、更にTiNの粗大化効果を配慮しつつ、CTOD試
験においても高いCTOD値を確保するものである。こ
こで、前記鋼材中に、粒径0.01〜0.05μmのT
iNを4×106 個/mm2 以下にすることが好まし
い。これにより、溶接した後、TiNが溶解して消滅す
ることによる、母材中の固溶Ti、固溶Nの量の増大を
抑制し、かつ脆性破壊の発生起点となる粗大TiNの存
在を抑制することにより溶接熱影響部での高CTOD値
を保証しうる溶接用構造用鋼とするものである。
1μmのTiNを5×104 個/mm 2 以上にすること
が好ましい。これにより、大入溶接下においても溶け残
ることが可能で、しかもピンニング効果を発揮できるT
iN量となるため、溶接熱影響部靱性に優れた高CTO
D保証低温用鋼とすることができる。更に、質量%でN
を0.002%以下にすることが好ましい。これによ
り、固溶Nを大幅に低減することができる。
下、Ni:1.5%以下、Nb:0.05%以下、V:
0.1%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以
下、B:0.0002〜0.003%の1種又は2種以
上の成分、或いは、又は、更には、Ca:0.0002
〜0.003%、Mg:0.0002〜0.005%、
REM:0.001〜0.05%の1種又は2種以上の
成分を有することが好ましい。ここで、Cu、Ni、N
b、V、Cr、Mo及びBの添加により、母材強度の向
上や、低温靱性・溶接性を向上させることができる。ま
た、Ca、Mg、REMの添加により、鋼材中の脱酸を
有効に行うことができる。なお、鋼材中に粒径0.01
〜0.1μmのTiNを5×105 〜5×106 個/m
m2 存在するようにするには、鋳造後の鋳片を冷却段階
で900〜1300℃の間で10分間以上保持すればよ
いが、更に、この範囲で、温度、保持時間を調整するこ
とによりTiNの粒径、個数を調整する。
Ti/N比を有する鋼板に、溶接ボンド部の熱影響を再
現する熱サイクルを付与し、組織及び靱性を広範囲に調
査した。特に、従来検討されてきていない母材中のTi
Nの粒径、及び個数について詳細に検討した。
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。本発明の一実施の形態に係る高CT
OD保証低温用鋼を製造するために、以下に示すような
種々の試験を行った。図1は、0.12%C−0.2%
Si−1.3%Mn系をベースとして、Ti、Nを添加
した鋼板を実験室溶製し、更に、それに入熱100kJ
/cm相当の熱サイクルを付与した後と前の、熱サイク
ル付与前後それぞれのTiNの粒径の分布図である。な
お、TiNは、透過電子顕微鏡により観察し、粒径は画
像処理により円相当径として算出した。この場合、溶接
ボンド部の熱影響を再現する熱サイクルとしては、溶接
ボンド部の最高到達温度は1400℃とし、溶接入熱の
影響は、実測データを基に、加熱温度、最高温度での保
持時間、冷却速度を制御することにより達成した。図よ
り、TiNの粒径は、溶接入熱の影響を受けていない母
材で0.04μmをピークとして0.01〜0.1μ
m、溶接ボンド部で0.13μmをピークとして0.0
5〜0.15μmの範囲にそれぞれ分布している。つま
り、母材に存在するTiNの粒径は、0.01〜0.1
μmの範囲に分布していることが分かる。以上のことよ
り、大入溶接下におけるTiNの状態は、TiNの粒径
0.05μmを境として、0.05μmより小さいもの
は母材中に溶解して固溶し、大きいものは逆に粗大化す
ると考えられる。
Z靱性にどのような影響を及ぼすのかを明確にするた
め、本発明者らは溶接ボンド部の熱影響を再現する熱サ
イクル試験を種々の鋼板に付与し、溶接入熱ごとにそれ
に相当する一定の溶接履歴を受けた鋼板の組織及びその
靱性を調査し、鋼板の成分であるTiNの粒径、個数及
びN量と溶接入熱の影響を検討した。
を取り出し、−20℃に冷却した後、Vノッチシャルピ
ー試験を実施した結果を示す。図2は、0.10%C−
0.2%Si−1.3%Mn系をベースとして、Ti、
Nを添加した鋼板を実験室溶製し、それに入熱100k
J/cm相当の熱サイクルを付与したものを試験片とし
て用い、その試験片の衝撃吸収エネルギー値(vE−2
0℃(J))と、熱サイクルを付与する前の試験片中に
存在する粒径0.01〜0.1μmのTiN個数との関
係を調べた結果図である。なお、この試験では、衝撃吸
収エネルギー値が高いほど、靱性が優れていることを示
している。
0.01〜0.1μmのTiNの個数を透過電子顕微鏡
を用いて定量化した結果、TiNの個数が5×105 〜
5×10 6 個/mm2 の範囲では、衝撃吸収エネルギー
値が100〜260Jと高い数値を示した。しかし、T
iNの個数が5×105 個/mm2 未満のときは衝撃吸
収エネルギー値が低下し、また、5×106 個/mm2
より多いときも低下する。即ち、TiNの個数が5×1
05 個/mm2 未満のとき、大入熱溶接の熱サイクル下
では、母材中に存在するTiNが、鋼中にTi、Nとし
て固溶するため、母材の結晶粒成長を抑制するための十
分なTiN量を確保できなくなっている。その結果、T
iNのピン止め効果が発揮できず、母材中の結晶粒が大
きくなり、靱性を低下させている。一方、5×106 個
/mm2 より多いとき、これは、大入熱溶接の熱サイク
ル下では、母材中に存在するTiNが、Ti、Nとして
固溶する量が多くなり過ぎること、また、熱サイクルに
より母材中に粗大化したTiNが増加することが衝撃吸
収エネルギー低下の原因になると考えられる。粗大化し
たTiNは破壊の起点となり、衝撃吸収エネルギー値を
低くすると考えられる。よって、溶接前の鋼材中に存在
する粒径0.01〜0.1μmのTiN個数を5×10
5 〜5×106 個/mm2 にすることで、溶接ボンド部
靱性に優れた高CTOD保証低温用鋼とすることが可能
となる。
Nの粒径分布の比較より得られた0.05μm以下のT
iNに注目してプロットした図を、図3に示す。なお図
3は、図2中の0.01〜0.1μmのTiN個数が5
×105 〜5×106 個/mm 2 である試験片を用い、
その試験片の衝撃吸収エネルギー値と、熱サイクル前の
試験片中に存在する粒径0.01〜0.05μmのTi
N個数との関係を調査した。熱サイクル前の試験片中に
存在する粒径0.01〜0.05μmのTiNの個数を
透過電子顕微鏡を用いて定量化した結果、TiNの個数
が4×106 個/mm2 以下の範囲では、衝撃吸収エネ
ルギー値が150〜260Jと高い数値を示した。しか
し、TiNの個数が4×106 個/mm2 より多いとき
は衝撃吸収エネルギー値は低下する。これは、粒径0.
01〜0.05μmのTiNが、熱サイクルにより、母
材中に、TiとNとして固溶したことが原因になってい
ると考えられる。よって、粒径0.01〜0.05μm
のように小粒径のものは、少ない方が好ましいため、4
×106 個/mm2 以下と規定した。
のTiN個数が4×106 個/mm2以下である試験片
を用い、その試験片の衝撃吸収エネルギー値と、熱サイ
クル前の試験片中に存在する粒径0.07〜0.1μm
のTiN個数との関係を調べた結果である。熱サイクル
前の試験片中に存在する粒径0.07〜0.1μmのT
iNの個数を透過電子顕微鏡を用いて定量化した結果、
TiNの個数が5×10 4 個/mm2 以上の範囲では、
衝撃吸収エネルギー値が235〜255Jと高い数値を
示した。しかし、TiNの個数が5×104 個/mm2
より少ないときは衝撃吸収エネルギー値は低下する。大
入熱溶接の溶接ボンド部で安定に溶け残るTiNの粒径
は、0.07μm以上である。つまり、TiNで、粒径
0.07〜0.1μmのものは、溶接のピーク温度14
00℃以上の大入熱溶接下で溶け残るため、粒径0.0
7〜0.1μmのTiNの個数を5×104 個/mm2
以上にすることで、溶接ボンド部靱性に優れた高CTO
D保証低温用鋼とすることが可能となる。
1.3%Mn系をベースとし、Ti、Nを添加した鋼板
を実験室溶製し、更に入熱150kJ/cm相当の熱サ
イクルを付与したものから採取した試験片の衝撃吸収エ
ネルギー値(vE−20℃)と、熱サイクル前の試験片
中に存在するN量との関係を調べた結果である。図よ
り、衝撃吸収エネルギーは、N量0.002%の所を境
として大きく変化している。つまり、N量を0.002
%以下に限定することでN量を低下させ、その結果、母
材中に固溶するNが低減でき、溶接ボンド部靱性に優れ
た高CTOD保証低温用鋼とすることが可能となる。
用いてCTOD試験を実施した。試験温度は、−50℃
で実施した。各温度において、破面を観察し、脆性破壊
発生起点を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、粗
大なTiNが脆性破壊の発生起点となっていることが判
明した。この起点となっているTiNのサイズを円相当
径で整理した結果、0.6μm程度のTiNが存在する
と、破壊の起点となりうることが分かった。き裂先端に
これらの粗大なTiNが存在していると脆性破壊を発生
するわけであり、CTOD値のバラツキはこの粗大なT
iNがCTOD試験片の疲労き裂先端に存在するか否か
の存在確率に大きく依存することを確認した。疲労き裂
先端近傍の組織を詳細に調査した結果、0.5μm未満
のサイズのTiNが存在していても、脆性破壊の核にな
っていないことを究明し、0.5μm以上の粗大なTi
Nの存在を抑制すれば高いCTOD値の得られることを
知見した。本発明の粗大TiNの許容サイズと存在確率
(個数)を明確にするため、0.5μm以上のサイズの
TiNの個数と、−50℃の限界CTOD値の関係を図
6に示す。粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×1
05 〜5×106 個/mm2存在している場合(本発明
範囲)のデータAあり、この場合、粒径0.5μm以上
のTiNの個数が10個/cm2 以下であれば安定して
0.1mm以上の限界CTOD値が得られている。一
方、粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×105 個
/mm2 未満である場合(本発明範囲外)のデータBに
は、たとえ粒径0.5μm以上のTiNの個数が10個
/cm2 以下であっても、0.1mm以上の限界CTO
D値は得ることができない。したがって、−50℃の使
用温度では、0.5μm以下のTiNの存在確率を低減
することが望ましい。本発明の粗大TiNの許容サイズ
と存在確率(個数)は上記検討結果に基づき決定された
ものである。
D保証低温用鋼の化学成分(質量%)を前記のように限
定した理由について述べる。Cは、強度を向上するのに
最も有効な元素であるが、C量が高いとセメンタイト相
分率が高くなったり、溶接部において島状マルテンサイ
トが生成しやすくなり、脆性破壊を発生させる核(以
降、脆性破壊発生核と称する)となる可能性が増大す
る。したがって0.15%を超える過剰な添加は好まし
くないが、一方、Cが0.04%以下になると構造用鋼
としての強度確保が困難になるので、下限は0.04%
とする。Siは、強度向上元素として有効であり安価な
溶鋼の脱酸元素としても有用であるが、0.50%を超
えると溶接部において島状マルテンサイトの生成を助長
させる。また、0.050%未満では強度の向上効果が
不十分でTiやAl等の高価な脱酸元素を多用する必要
があるために、0.050〜0.50%に限定する。M
nは、Cの含有量を抑制しつつ強度を向上する有用な元
素である。Cを0.15%以下に抑制しているため、強
度確保の観点から、Mnの必要下限を0.80%とす
る。一方、2.0%超のMnの添加は、不必要に強度上
昇を招き、母材靱性・溶接性を阻害するため、0.80
〜2.0%に限定する。
下に限定した。なお、不純物としてのPは、できるだけ
低いほど好ましいが、経済性も考慮する場合は、溶接性
の点から0.005%以下が好ましい。Sは、母材靱性
の観点から0.01%以下に限定した。なお、不純物と
してのSは、できるだけ低いほど好ましいが、経済性も
考慮する場合は溶接性・加工性の点から0.005%以
下が好ましい。Alは、Si同様に脱酸上必要な元素で
あり、下限を0.001%とし、0.06%を超える過
度の添加はHAZ靱性を損なうために、0.001〜
0.06%に限定した。
させるため、0.002%以上、かつTi/N比で1.
0以上、6.0以下の範囲で添加する。ただし、0.0
15%を超えて添加すると、本発明の眼目である極低N
化によるHAZ靱性改善効果を低下させ、更に高いTi
はTiNを粗大化させる駆動力となるので、0.002
〜0.015%とした。Nは、本発明中、最も重要な元
素である。高いN量は、粗大なTiNを生成させる一つ
の原因となり、かつ固溶N量も増大させるので、特に溶
接部において高いCTOD値を確保することは困難とな
る。そこで、Nを0.003%以下に抑えることがHA
Z部での高CTOD特性を向上させる本発明の眼目であ
る。また、HAZ靱性とCTOD特性をより向上させる
ため、添加量は0.002%以下が好ましい。
であるが、母材強度の向上や低温靱性・溶接性の改善を
目的とした低炭素等量化のために、要求される品質特
性、又は鋼材の大きさ・鋼板厚に応じて本発明で規定す
る合金元素(Cu、Ni、Nb、V、Cr、Mo、B)
を強度・低温靱性・溶接性を向上する観点から、1種又
は2種以上を添加しても本発明の効果は何ら損なわれる
ことはない。Cuは、鋼材の強度、靱性を向上させるた
めに有効であるが、1.0%を超えるとHAZ靱性を低
下させることから、1.0%を上限とする。Niは、鋼
材の強度、靱性を向上させるために有効であるが、Ni
量の増加は製造コストを上昇させるので、1.5%を上
限とする。
母材の強度を向上させる有功な元素であるが、過剰な添
加は粗大なNbCN析出物を生成せしめ、脆性破壊の発
生核となることがあるので、0.05%を上限とした。
V、Cr、Moについても同様な効果を有することか
ら、それぞれ0.1%、0.6%、0.6%を上限とし
た。Bは、HAZ靱性に有害な粒界フェライトの粗大
化、フェライトサイドプレートの成長抑制から有効であ
るが、過剰な添加は不必要に焼き入れ性を増大させ、特
にショートアークを行った鋼板表面の硬度を著しく高
め、場合によっては割れを生じさせることもあるので、
0.0002%〜0.003%とした。更に、Alに加
えて、Ca、Mg、REMの脱酸元素を1種又は2種以
上添加しても本発明の効果は何ら損なわれる事はない。
ただし過剰な添加は粗大な酸化物生成の原因となり、粗
大な酸化物や介在物が脆性破壊の発生核となる可能性も
あるので、それぞれ0.0002〜0.003%、0.
0002〜0.005%、0.001〜0.05%とし
た。
を述べる。たとえNを極低化しても、Nがフリーの状態
で鋼中に固溶するのは、HAZ靱性の観点から好ましく
なく、少なくともTi/N重量比で1.0以上必要であ
るが、一方、Ti過剰な状態が過ぎると、フリーのTi
がHAZ靱性に有害であるので、Ti/N比が6.0以
下であることが必要である。
した。A1、B1、C〜Hが本発明鋼であり、A2、B
2、J〜Rが比較鋼である。成分的には、A1とA2及
びJ、B1とB2及びK、CとL、DとM、EとN、F
とP、GとQ、HとRがほぼ一致しており、本発明鋼の
Ti量は、いずれも0.002〜0.005%、N量は
いずれも0.003%以下、特にA1、B1、C〜E及
びHは0.002%以下、またTi/N比は1.0〜
6.0の範囲である。これに対し、比較鋼A2、B2
は、発明鋼A1、B1と全く同じ化学成分、成分量を有
している。また、比較鋼JはTi添加なし、N量は本発
明範囲外、比較鋼K、M、P、QはTi量、N量のいず
れか、又は両方が本発明の範囲外である。比較鋼NはV
が本発明の請求項5の範囲を超えており、比較鋼LはC
aが請求項6の範囲を超えている。また比較鋼L、Qは
Ti/N比が、それぞれ本発明範囲を超えている。
は、本発明鋼A1、B1、C〜Hにおいて、粒径0.0
1〜0.1μm:5×105 〜5×106 個/mm2 、
粒径0.01〜0.05μm:4×106 個/mm2 以
下、粒径0.07〜0.1μm:5×104 個/mm2
以上、粒径0.5μm以上:10個/cm2 以下の範囲
を満足している。これに対し、比較鋼JはTi添加なし
であるためTiNは観察されず、比較鋼A2、B2、
K、M、P、Rは粒径0.01〜0.1μm:5×10
5 〜5×106 個/mm2 の範囲を外れ、比較鋼A2、
K、M、N、Pは粒径0.01〜0.05μm:4×1
06 個/mm2 以下の範囲を超え、比較鋼A2、Rは粒
径0.07〜0.1μm:5×104 個/mm2 以上の
範囲を下回っている。また、比較例B2、M〜Rは粒径
0.5μm以上:10個/cm2 以下の範囲を超えてい
る。なお、比較鋼A2、B2は鋳造後の鋳片の冷却条件
が、A1、B1と異なっている。
件、及びHAZ靱性評価、CTODの結果を示す。本発
明鋼、及び比較鋼は、いずれも転炉溶製し、連続鋳造に
て280mm厚鋳片に鋳造後、加熱圧延にて表4に示す
所定の板厚に仕上げた。試作した鋼板は、それぞれ表4
に示す溶接法にて1パス溶接を行い、溶接ボンド部の靱
性を評価した。すなわち溶接法としては、フラックスバ
ッキング溶接(FB)、エレクトロガス溶接(EG)、
エレクトロスラグ溶接(ES)を用い、それぞれ()内
に示す適切な溶接入熱にて溶接を行った。また、溶接ボ
ンド部靱性はシャルピー試験により評価した。評価温度
は表4に示すとおりで、それぞれの鋼板成分で要求され
る典型的な温度を採用した。シャルピー試験の繰返し数
は3(N=3)である。
較を行う。鋼A1と鋼Jとの結果を比較すると、Ti含
有の差、極低N量の効果は明白であり、溶接入熱の高い
フラックスバッキング溶接において、HAZ靱性の差は
極めて顕著に現れる。鋼B1と鋼Kとを比較すると、フ
ラックスバッキング溶接、エレクトロガス溶接、いずれ
の溶接においても鋼B1のHAZ靱性が優れている。特
に、入熱の高いエレクトロガス溶接を実施したときの、
衝撃吸収エネルギーの最小値の差は大きい。同様の比較
は鋼Dと鋼M、鋼Eと鋼Nでも見られる。また、鋼Cと
鋼Lとの比較では、鋼CのHAZ靱性が非常に良好なの
に対し、鋼Lでは、Ti量が多いのでTi/N比の適正
範囲の逸脱、及び高Ca量によりHAZ靱性が大幅に低
下している。同様に、鋼Gと鋼Qとの比較でも、鋼Qの
過剰Ti量によるTi/N比の適正範囲の逸脱が、HA
Z靱性の低下に大きく影響している。
いて発明鋼と比較鋼との比較を行う。鋼A1と鋼Jとの
結果を比較すると、Ti含有の差、極低Nの効果は明白
である。鋼A1においては、各粒径におけるTiNの個
数が、規定範囲に納まっている。一方、鋼Jは、母材中
にTiNの結晶が存在しない。この結果、HAZ靱性及
びCTOD値の差は極めて顕著に現れている。鋼Eと鋼
Nとを比較すると、鋼Nは、粒径0.01〜0.05μ
m及び0.5μm以上のTiNの個数が規定範囲を逸脱
しているため、HAZ靱性及びCTOD値が低下してい
る。また、鋼M、N、P、Q、Rは、前記のように0.
5μm以上の粒径を有するTiNが所定の個数以上であ
るため、それぞれの試験温度において充分なCTOD値
が得られていない。また、鋼Gと鋼QはTiN粒径0.
5μm以上の個数が大きく異なることからHAZ靱性及
びCTOD値が大幅に異なっている。
造後の鋳片の冷却条件が異なることでTiNの個数が異
なる発明鋼A1、B1と比較鋼A2、B2との比較を行
う。このように、鋳造後の鋳片を冷却段階で900〜1
300℃で10分間以上保持し、この範囲で、温度、保
持時間を調整できなければ、比較鋼A2のように、Ti
Nの個数が、規定範囲を逸脱し、HAZ靱性を大きく低
下させることが分かる。また、1200〜1300℃程
度の高温で60分以上保持すると、TiNの粗大化現象
が生じ、比較鋼B2のように0.5μm以上のTiNの
個数が増加してしまうので、高いCTOD値を得ること
はできなくなる。つまり、本発明においては、各粒径に
おけるTiNの個数を規定範囲に納めることが重要とな
るが、それには、化学成分、成分量及び鋳造後の鋳片適
正な温度、保持時間が重要な要因となる。
あり、母材中のNを、N:0.003%以下と低減し、
Ti/N比を1.0〜6.0に保ちながらTiを添加
し、溶接前の鋼材中に粒径0.01〜0.1μmのTi
Nを5×105 〜5×106 個/mm2 存在させ、かつ
0.5μm以上の粗大TiNの存在を抑制することによ
り、溶接HAZ靱性、とりわけ大入熱の溶接ボンド部靱
性を安定かつ向上させ高CTODを保証することが可能
となった。本発明により、近年の鋼構造物の大型化に伴
う使用鋼材の厚手化、建造コストの削減、建造の高能率
化の点から進められる溶接大入熱化に伴う溶接部靱性確
保が可能となり、産業界が享受可能な経済的利益は多大
なものがあると考えられる。
ことで固溶Nを低減し、Ti/N比を1.0〜6.0に
することで、Ti過剰、及びN過剰を抑制し、更に、T
iNの粒子の粒径、及び個数を規定することで、大入溶
接下でのTiNによるピンニング効果、固溶Ti、固溶
N、TiC析出効果、更に脆性破壊の発生核となる粗大
なTiNの排除を配慮した、溶接熱影響部靱性に優れた
高CTOD保証低温用鋼を製造できる。特に、大入熱溶
接を適用した溶接継手部においてでも、−50℃におけ
る低温環境下で0.1mm以上の限界CTOD値を安定
して確保できるので、脆性破壊の発生を抑制する必要の
ある重要鋼構造物の鋼材として使用できるものである。
のグラフである。
のTiN個数の影響を示したグラフである。
mのTiN個数の影響を示したグラフである。
のTiN個数の影響を示したグラフである。
である。
熱溶接部の限界CTOD値の関係を示したグラフであ
る。
Claims (6)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.04〜0.15%、
Si:0.050〜0.50%、Mn:0.80〜2.
0%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、A
l:0.001〜0.06%、Ti:0.002〜0.
015%、N:0.003%以下の成分を有し、残部が
鉄及び不回避的不純物からなると共に、Ti/Nが1.
0〜6.0を満足する鋼材で、しかも、溶接前の前記鋼
材中に粒径0.01〜0.1μmのTiNが5×105
〜5×106 個/mm2 存在し、かつ粒径0.5μm以
上のTiNが10個/cm2 以下とすることを特徴とす
る高CTOD保証低温用鋼。 - 【請求項2】 請求項1記載の高CTOD保証低温用鋼
において、前記鋼材中に粒径0.01〜0.05μmの
TiNが4×106 個/mm2 以下存在することを特徴
とする高CTOD保証低温用鋼。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の高CTOD保証低
温用鋼において、前記鋼材中に粒径0.07〜0.1μ
mのTiNが5×104 個/mm2 以上存在することを
特徴とする高CTOD保証低温用鋼。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高
CTOD保証低温用鋼において、質量%でN:0.00
2%以下の成分を有することを特徴とする高CTOD保
証低温用鋼。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高
CTOD保証低温用鋼において、前記鋼材には、更に、
質量%でCu:1.0%以下、Ni:1.5%以下、N
b:0.05%以下、V:0.1%以下、Cr:0.6
%以下、Mo:0.6%以下、B:0.0002〜0.
003%の1種又は2種以上の成分を有することを特徴
とする高CTOD保証低温用鋼。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高
CTOD保証低温用鋼において、前記鋼材には、更に、
Ca:0.0002〜0.003%、Mg:0.000
2〜0.005%、REM:0.001〜0.05%の
1種又は2種以上の成分を有することを特徴とする高C
TOD保証低温用鋼。
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WO2015088040A1 (ja) * | 2013-12-12 | 2015-06-18 | Jfeスチール株式会社 | 鋼板およびその製造方法 |
CN109161789A (zh) * | 2018-08-17 | 2019-01-08 | 南京钢铁股份有限公司 | 一种lpg船用低温钢板及其生产方法 |
US10316385B2 (en) | 2014-03-31 | 2019-06-11 | Jfe Steel Corporation | High-tensile-strength steel plate and process for producing same |
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- 2000-03-08 JP JP2000063632A patent/JP4299431B2/ja not_active Expired - Lifetime
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