JP2001239636A - 多層生分解性フイルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールと、
脂肪族ジアミンとから重合され、脂肪族エステル構造と
脂肪族アミド構造とを含有するポリエステルアミド系樹
脂からなる生分解性樹脂を組み合わせ、柔軟性、透明性
および耐水性に優れた多層フイルムを提供することにあ
る。 【解決の手段】 両表面層は、脂肪族ジカルボン酸と、
脂肪族ジオールと、脂肪族ジアミンとから重合され、脂
肪族エステル構造５０〜９０重量％と脂肪族アミド構造
１０〜５０重量％とを含有するポリエステルアミド系樹
脂を主成分とする生分解性樹脂層で構成され、中間層
は、脂肪族ポリエステル系樹脂を主成分とする生分解性
樹脂層で構成されてなり、かつ、該中間層の厚さがフイ
ルム全体の３０〜９０％の厚さであることを特徴とする
多層生分解性フイルム。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、脂肪族ジカルボ
ン酸と、脂肪族ジオールと、脂肪族ジアミンとから重合
され、脂肪族エステル構造と脂肪族アミド構造とを含有
するポリエステルアミド系樹脂は、透明性、柔軟性、耐
水性に優れており、この樹脂を主成分とした樹脂層を両
表面層とした積層フイルムが、農業用フイルム、マルチ
フイルム、包装用フイルム、マスキングフイルム、河川
敷シートなどの分野に利用されるものである。

【０００２】

【従来の技術】生分解性樹脂として、従来より知られて
いる脂肪族ポリエステル系、デンプン系などは透明性に
劣り、また、ポリ乳酸は透明性は良いが柔軟性に劣ると
いう欠点がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】脂肪族ジカルボン酸
と、脂肪族ジオールと、脂肪族ジアミンとから重合さ
れ、脂肪族エステル構造と脂肪族アミド構造とを含有す
るポリエステルアミド系樹脂からなる生分解性樹脂を組
み合わせ、柔軟性、透明性および耐水性に優れた多層フ
イルムを提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、両表面層は、
脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールと、脂肪族ジア
ミンとから重合され、脂肪族エステル構造５０〜９０重
量％と脂肪族アミド構造１０〜５０重量％とを含有する
ポリエステルアミド系樹脂を主成分とする生分解性樹脂
層で構成され、中間層は、脂肪族ポリエステル系樹脂を
主成分とする生分解性樹脂層で構成されてなり、かつ、
該中間層の厚さがフイルム全体の３０〜９０％の厚さで
あることを特徴とする多層生分解性フイルムに存する。

【０００５】

【発明の実施の形態】本発明に用いられるポリエステル
アミド系樹脂は、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオー
ルと、脂肪族ジアミンを混合し、脱水反応、減圧下で重
合し、脂肪族エステル構造と脂肪族アミド構造とを含有
するポリエステルアミド系樹脂であり、１００００〜３
０００００、好ましくは２００００〜１５００００の平
均分子量を有する。上記ポリエステルアミド系樹脂は、
脂肪族アミノカルボン酸或いは脂肪族ラクタムを少量混
合し、脱水反応、減圧下で重合してもよい。

【０００６】上記の脂肪族ジカルボン酸としては、アジ
ピン酸、コハク酸、シュウ酸等の炭素数２〜１２の線状
脂肪族鎖を有するものを、脂肪族ジオールとしては、炭
素数２〜１０の線状脂肪族鎖を有するジオールが好まし
く、例えばエチレングリコール、１，３−プロパンジオ
ール、１，４−ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオ
ール等を、脂肪族ジアミンとしては、線状脂肪族の炭素
数２〜１０のジアミンが好ましく、例えばヘキサメチレ
ンジアミン、ブチレンジアミンを挙げることができる。
脂肪族アミノカルボン酸或いは脂肪族ラクタムとして
は、アミノカプロン酸、ω−ラウリルラクタム、ε−カ
プロラクタム等の炭素数４〜２０の線状脂肪族鎖や環状
脂肪族鎖を有するものを挙げることができる。また、脂
肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを反応させ、酸末端
エステルオリゴマーとして用いるなど、予め複数成分を
反応させたオリゴマー原料を使用することも可能であ
る。さらに、芳香族成分や脂環状族成分を生分解性を阻
害しない範囲で少量用いることもできる。

【０００７】具体的には、ヘキサメチレンジアミンと、
アジピン酸と、１，４−ブタンジオールとを重合した場
合、〔−ＣＯ−（ＣＨ₂ ）₄ −ＣＯＯ−（ＣＨ₂ ）₄ −
Ｏ−〕単位からなるポリエステル構造と、〔−ＣＯ−
（ＣＨ₂ ）₄ −ＣＯ−ＮＨ−（ＣＨ₂ ）₆ −ＮＨ−〕単
位からなるポリアミド構造を有し、ポリエステル構造の
重量割合は５０〜９０重量％、好ましくは６０〜８５重
量％、ポリアミド構造の重量割合は１０〜５０重量％、
好ましくは１５〜４９重量％である。ポリエステル構造
の重量割合が５０重量％未満であると耐水性が劣るよう
になり、９０重量％を超えると生分解性が劣る。

【０００８】本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系
樹脂としては、生分解性を有するものであれば特に限定
されるものではないが、具体的には、マロン酸、コハク
酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、
マレイン酸、ドデカン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸
等で例示される多価カルボン酸及びこれらの無水物等
と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタ
ンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デ
カンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等
の多価アルコールとの縮重合物、ポリ乳酸やε−カプロ
ラクトン等の環状エステルの開環重合物（ポリカプロラ
クトン）、乳酸やヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸の
ようなヒドロキシ酸の縮重合物が挙げられる。具体的に
は、昭和高分子工業社製「ビオノーレ１００１」、「ビ
オノーレ３００１」、島津製作所社製「ラクティ５００
０」、ダイセル社製「プラクセル」などを挙げることが
できる。

【０００９】本発明に係る、両表面層の主成分を構成す
る脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールと、脂肪族ジ
アミンとから重合され、脂肪族エステル構造と脂肪族ア
ミド構造とを含有するポリエステルアミド系樹脂は、８
０重量％以上の配合割合が好ましい。脂肪族ポリエステ
ル樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、セルロース誘
導体などからなるその他の生分解性樹脂を２０重量％未
満の量を配合することができる。該ポリエステルアミド
系樹脂の配合割合が８０重量％未満であると、透明性、
柔軟性や伸びが低下する傾向となり好ましくない。

【００１０】また、中間層の主成分を構成する脂肪族ポ
リエステル系樹脂の配合割合は、５０重量％以上、好ま
しくは５５〜８５重量％の範囲であり、上記のポリエス
テルアミド系樹脂やその他のポリエステルアミド系樹
脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、セルロース誘導体
などからなるその他の生分解性樹脂を残量配合すること
ができる。該脂肪族ポリエステル系樹脂の配合割合が５
０重量％未満であると、耐候性が劣り好ましくない。

【００１１】また、中間層の厚さは、フイルム全体の３
０〜９０％、好ましくは４０〜８０％の厚さとされる。
この中間層の厚さが３０％未満であると耐候性が劣るこ
ととなり、また、９０％を超えると透明性、柔軟性が劣
る傾向となり好ましくない。

【００１２】本発明の多層生分解性フイルムの各層を構
成する樹脂成分の調整方法は、特に制限はなく、従来か
らプラスチックの組成物の製法で使用されている方法、
例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混
練機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合
機、１軸または２軸押出機等を用いて加熱溶融混練して
行なうことができる。

【００１３】本発明の多層生分解性フイルムの製法は、
共押出積層法が好ましい。具体的には、積層数に見合う
押出機を用いて溶融押出し、Ｔダイ法又はインフレーシ
ョン法等の公知の方法で溶融状態で積層した後、冷却ロ
ール、水冷または空冷で冷却する方法が例示できる。

【００１４】本発明の各層の組成物を上記の方法によっ
て多層フイルム化する場合、その厚みは、通常２０〜２
０００μｍ、好ましくは４０〜５００μｍの範囲であ
る。

【００１５】上記の配合に際し、本発明の効果を阻害し
ない範囲で、他の生分解性高分子材料を添加してもよ
く、また、成形加工性、その他フイルムおよびシートの
物性を調整する目的で、可塑剤、充填剤、滑剤、補強
剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒン
ダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系化
合物、防かび剤、顔料、蛍光剤などの添加剤、改質剤を
添加することも可能である。

【００１６】

【実施例】以下に、実施例を示すが、これらにより本発
明はなんら制限を受けるものではない。なお、実施例中
に示す測定、評価は次に示すような条件で行った。

【００１７】（１）ヘーズ：ＪＩＳ−Ｋ−７１０５に従
って、ヘーズメーター（スガ試験機社製）にてヘーズ値
（単位：％）を測定した。

【００１８】（２）耐候性試験：ＳＵＮ−ＷＯＭ（スガ
試験機社製）に、試料を入れ、試料の耐候劣化による破
壊までの時間を測定した。

【００１９】実施例１ 両表面層として、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
および１，４−ブタンジオールを重合してなる脂肪族エ
ステル構造６０重量％、脂肪族アミド構造４０重量％の
ポリエステルアミド系樹脂１００重量部からなる樹脂成
分を、中間層として、脂肪族ポリエステル系樹脂（昭和
高分子工業社製、「ビオノーレ１００１」）６０重量部
および上記のポリエステルアミド系樹脂４０重量部から
なる樹脂成分を用いた。３層インフレーション成形機
で、表面層／中間層／表面層の構成で、層比が３０／４
０／３０、厚み２０μｍのマルチ栽培用の多層生分解性
フイルムを製造した。このフイルムのヘーズは１６％、
耐候性試験は２３０時間でマルチ栽培用としての必要な
２００時間を超える性能を持ったものである。

【００２０】比較例１ ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸および１，４−ブ
タンジオールを重合してなる脂肪族エステル構造６０重
量％、脂肪族アミド構造重量４０％のポリエステルアミ
ド系樹脂からなる樹脂成分を単層インフレーション成形
機で、厚み２０μｍのマルチ栽培用の多層生分解性フイ
ルムを製造した。このフイルムのベーズは９％、耐候性
試験は１１０時間でマルチ栽培用としての必要な２００
時間に満たないものであった。

【００２１】実施例２ 両表面層として、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
および１，４−ブタンジオールを重合してなる脂肪族エ
ステル構造６０重量％、脂肪族アミド構造４０重量％の
ポリエステルアミド系樹脂１００重量部からなる樹脂成
分を、中間層として、脂肪族ポリエステル系樹脂（昭和
高分子工業社製、「ビオノーレ１００１」）６０重量部
および上記のポリエステルアミド系樹脂４０重量部から
なる樹脂成分を用い、各層の樹脂成分１００重量部に対
して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤（旭電化製、
「ＡＯ−８０」）０．１重量部、亜リン酸エステル化合
物（旭電化製、「２１１２」）０．１重量部、ヒンダー
ドアミン系光安定剤（チバ・スペシャリティケミカル社
製、ＬＳ−９４４）０．２重量部を、また、防曇剤を両
表面層に１．５重量部、中間層に２重量部を配合した。
３層インフレーション成形機で、表面層／中間層／表面
層の構成で、層比が２０／６０／２０、厚み１００μｍ
のトンネル栽培用の多層生分解性フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表１に示す。

【００２２】実施例３ 両表面層として、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
および１，４−ブタンジオールを重合してなる脂肪族エ
ステル構造重量６０％、脂肪族アミド構造４０重量％の
ポリエステルアミド系樹脂１００重量部からなる樹脂成
分を、中間層として、脂肪族ポリエステル系樹脂（昭和
高分子工業社製、「ビオノーレ１００１」）８０重量部
および上記のポリエステルアミド系樹脂２０重量部から
なる樹脂成分を用い、各層の樹脂成分１００重量部に対
して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤（旭電化製、
「ＡＯ−８０」）０．１重量部、亜リン酸エステル化合
物（旭電化製、「２１１２」）０．１重量部、ヒンダー
ドアミン系光安定剤（チバ・スペシャリティケミカル社
製、ＬＳ−９４４）０．２重量部を、また、防曇剤を両
表面層に１．５重量部、中間層に２重量部を配合した。
３層インフレーション成形機で、表面層／中間層／表面
層の構成で、層比が２０／６０／２０、厚み１００μｍ
のトンネル栽培用の多層生分解性フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表１に示す。

【００２３】実施例４ 両表面層として、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
および１，４−ブタンジオールを重合してなる脂肪族エ
ステル構造重量６０％、脂肪族アミド構造４０重量％の
ポリエステルアミド系樹脂９０重量部および脂肪族ポリ
エステル系樹脂（昭和高分子工業社製、「ビオノーレ１
００１」）１０重量部からなる樹脂成分を、中間層とし
て、上記の脂肪族ポリエステル系樹脂８０重量部および
上記のポリエステルアミド系樹脂２０重量部からなる樹
脂成分を用い、各層の樹脂成分１００重量部に対して、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤（旭電化製、「ＡＯ
−８０」）０．１重量部、亜リン酸エステル化合物（旭
電化製、「２１１２」）０．１重量部、ヒンダードアミ
ン系光安定剤（チバ・スペシャリティケミカル社製、Ｌ
Ｓ−９４４）０．２重量部、防曇剤２重量部を配合し
た。３層インフレーション成形機で、表面層／中間層／
表面層の構成で、層比が２０／６０／２０、厚み１００
μｍのトンネル栽培用の多層生分解性フイルムを製造し
た。このフイルムの評価を表１に示す。

【００２４】比較例２ ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸および１，４−ブ
タンジオールを重合してなる脂肪族エステル構造６０重
量％、脂肪族アミド構造重量４０％のポリエステルアミ
ド系樹脂１００重量部に対して、ヒンダードフェノール
系酸化防止剤（旭電化製、「ＡＯ−８０」）０．１重量
部、亜リン酸エステル化合物（旭電化製、「２１１
２」）０．１重量部、ヒンダードアミン系光安定剤（チ
バ・スペシャリティケミカル社製、ＬＳ−９４４）０．
２重量部、防曇剤２重量部を配合した。単層インフレー
ション成形機で、厚み１００μｍのトンネル栽培用の多
層生分解性フイルムを製造した。このフイルムの評価を
表１に示す。

【００２５】

【表１】

【００２６】上記のとおり、実施例２〜４は、耐候性試
験の結果、トンネル栽培用として必要な５００時間を超
え、透明性および柔軟性に優れていることが判る。

【００２７】

【発明の効果】本発明に従い、両表面層は、脂肪族ジカ
ルボン酸と、脂肪族ジオールと、脂肪族ジアミンとから
重合され、脂肪族エステル構造５０〜９０重量％と脂肪
族アミド構造１０〜５０重量％とを含有するポリエステ
ルアミド系樹脂を主成分とする生分解性樹脂層で構成さ
れ、中間層は、脂肪族ポリエステル系樹脂を主成分とす
る生分解性樹脂層で構成されているので、透明性および
柔軟性を保持したまま、耐候性に優れたフイルムとする
ことができるので各種用途に使用できる。また、製品と
して使用した後、生分解性を有するので処理が簡単にで
きるという効果がある。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） (72)発明者 橋本 英明 東京都中央区京橋１丁目18番１号 シーア イ化成株式会社内 (72)発明者 ラルフ・テイマーマン ドイツ連邦共和国47800クレーフエルト・ シヤイブラーシユトラーセ81 (72)発明者 ボルフガング・シユルツ−シユリツテ ドイツ連邦共和国40764ランゲンフエル ト・フオンクニプローデベーク７

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 両表面層は、脂肪族ジカルボン酸と、脂
   肪族ジオールと、脂肪族ジアミンとから重合され、脂肪
   族エステル構造５０〜９０重量％と脂肪族アミド構造１
   ０〜５０重量％とを含有するポリエステルアミド系樹脂
   を主成分とする生分解性樹脂層で構成され、中間層は、
   脂肪族ポリエステル系樹脂を主成分とする生分解性樹脂
   層で構成されてなり、かつ、該中間層の厚さがフイルム
   全体の３０〜９０％の厚さであることを特徴とする多層
   生分解性フイルム。
2. 【請求項２】 両表面層の生分解性樹脂層は、上記のポ
   リエステルアミド系樹脂が８０重量％以上であり、中間
   層の生分解性樹脂層は、脂肪族ポリエステル系樹脂が５
   ０重量％以上である請求項１記載の多層生分解性フイル
   ム。
3. 【請求項３】 中間層を含む少なくとも２層に防曇剤を
   添加したことを特徴とする農業用フイルムに適した請求
   項１記載の多層生分解性フイルム。