JP5652025B2 - 複合材の製造方法および成形品 - Google Patents

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本発明は、複合材の製造方法および成形品に関し、詳しくは、弾性率が高く、高温高湿度下での物性低下が少なく、低そり性であり、従来の熱硬化性樹脂に比べて、リサイクル特性、成形性に優れたポリアミド樹脂/繊維複合材の製造方法および当該複合材を成形してなる成形品に関する。
繊維材料とマトリックス樹脂を組み合わせた繊維強化樹脂系複合材は、軽量で剛性が高いことから、それを使用した成形品は、機械部品、電気・電子機器部品、車両用部品・部材、航空・宇宙用機器部品等として広く用いられてきている。繊維材料としてはガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維等が使用される。
一方、マトリックス樹脂は、機械的強度、繊維材料との親和性、成形性等の観点から、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が通常用いられている。しかしながら、熱硬化性樹脂を使用したものは、再溶融して成形することできないという決定的な欠点を有する。
マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を利用した複合材としては、いわゆるスタンピング成形材料も知られている。強化繊維と熱可塑性樹脂を主原料とするスタンパブルシートは、複雑な形状に成形でき、高強度と軽量であるという点から、金属加工品代替として使用されてきている。
熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレートやポリアミド6を用いたものも開示され(特許文献1および2参照)、また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を同時に用いた繊維強化プラスチックとして、メタキシリレンジアミンをジアミン成分とするメタキシリレン系ポリアミドとエポキシ樹脂を用いた成形品が開示されている(特許文献3参照)が、これらの複合材では、耐衝撃性や低そり性、リサイクル特性、生産性が不足していた。
また、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチックの生産性を向上させる成形方法が開示されている(特許文献4および5参照)が、これらの方法では成形品の強度や寸法安定性が十分ではなかった。
さらに、繊維強化プラスチックには、さらなる物性向上が求められており、例えば耐衝撃性、弾性率、低そり性、寸法安定性、耐熱性、軽量化、リサイクル特性、成形性、生産性などの向上も求められている。
メタキシリレン系ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって主鎖に芳香族環を有し、高い機械的強度と弾性率を有し、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやそりが小さいことから、これをマトリック樹脂として使用すると、良好な物性を有する新たな複合材をもたらすことが期待される。
しかしながら、メタキシリレン系ポリアミド樹脂は結晶化速度が遅く、伸び性が悪く、成形性が良くないため、これを用いた複合材の製造は容易ではなく、弾性率の低下やそりの問題を起こすことが多く、メタキシリレン系ポリアミド樹脂と繊維材料とからなる、優れた物理的特性を有する新たな複合材を製造することが求められていた。
特開昭64−81826号公報 特開昭57−120409号公報 特開2005−313607号公報 特許3947560号公報 特開2009−113369号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、弾性率に優れ、高温高湿度下での物性低下が少なく、低そり性であり、熱硬化性樹脂に比べて、リサイクル特性、成形性、生産性にも優れたメタキシリレン系ポリアミド樹脂複合材を容易に製造する方法および得られた複合材を用いた成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、まず、メタキシリレン系ポリアミド樹脂をポリオレフィン樹脂と積層して積層フィルムを得、これからポリオレフィン層を剥離して、メタキシリレン系ポリアミド樹脂の薄いフィルムを得た上で、次に、この樹脂フィルムを繊維材料と積層し、積層物を加熱加圧することにより、上記問題が解決された優れた複合材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分から得られるポリアミド樹脂(A)をポリオレフィン樹脂(B)と積層して、ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)積層フィルムを製造する工程、
上記積層フィルムからポリオレフィン樹脂(B)層を剥離し、ポリアミド樹脂(A)フィルムを製造する工程、
得られたポリアミド樹脂(A)フィルムを繊維材料(C)と積層した積層物を加熱加圧する工程、
を含むことを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)フィルムの厚みが、5〜50μmであることを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)フィルムと繊維材料(C)の積層物を重畳した重畳物に対して、加熱加圧を行うことを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、複合材を熱処理する工程を含むことを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)の積層フィルムの製造を、共押出成形により行うことを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン成分の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸成分の50モル%以上がアジピン酸またはセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であることを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)が、安定剤を含有することを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、ポリアミド樹脂(A)が、カルボジイミド化合物を含有することを特徴とする複合材の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明の製造方法で得られた複合材を用いて成形した成形品が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、成形品が、電気・電子機器部品または自動車用部品・部材であることを特徴とする成形品が提供される。
本発明は、メタキシリレン系ポリアミド樹脂をポリオレフィン樹脂と、好ましくは共押出成形等により、積層し、積層後のポリオレフィン樹脂層を剥離することにより、薄膜フィルムの製造が困難であったメタキシリレン系ポリアミド樹脂の薄いフィルムを製造し、これを繊維材料と積層し、積層物を単独、または好ましくは、これを重畳したものを加熱加圧することにより、メタキシリレン系ポリアミド樹脂が維維材料中に染み出して含浸する形になり、得られる複合材は、弾性率の高い複合材となり、高温高湿度下での物性低下も少なく、低そり性であり、従来の熱硬化性樹脂に比べて、リサイクル特性、成形性、生産性に優れた複合材となる。
また、さらに上記の複合材を熱処理することにより、メタキシリレン系ポリアミド樹脂は結晶化されてさらに耐熱性が向上し、さらに、そりの問題のより少ない複合材とすることができる。
本発明の複合材は、弾性率が高く、高温高湿度下での物性低下が少なく、低そり性であり、従来の熱硬化性樹脂に比べて、リサイクル特性、成形性、生産性に優れたものであり、それを用いて成形した成形品は、薄くても機械的物性に優れるため、製品の軽量化が可能であり、電気・電子機器の部品または筐体、あるいは自動車部材等に利用でき、その工業的価値は非常に高い。
[1.発明の概要]
本発明の複合材の製造方法は、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分から得られるポリアミド樹脂(A)をポリオレフィン樹脂(B)と積層して、ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)積層フィルムを製造する工程、
上記積層フィルムからポリオレフィン樹脂(B)層を剥離し、ポリアミド樹脂(A)フィルムを製造する工程、
得られたポリアミド樹脂(A)フィルムを繊維材料(C)と積層した積層物を加熱加圧する工程、
を含むことを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
[2.ポリアミド樹脂(A)]
本発明で使用するポリアミド樹脂(A)は、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分とから得られるポリアミド樹脂である。メタキシリレンジアミンの量は、ジアミン成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
ポリアミド樹脂(A)としては、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミンと各種ジカルボン酸を重縮合することにより得られ、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。
ポリアミド樹脂(A)の製造に使用できるメタキシリレンジアミン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(A)の製造に使用できるジカルボン酸成分としては、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分が好ましく、例えばアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等を用いると、ポリアミドの比重が小さくなり、成形品が軽量化されるため好ましい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の好ましい使用割合は、50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
また、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類なども使用でき、これらを単独で、または上記脂肪族ジカルボン酸成分と併用することも好ましい。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂組成物を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
このようなポリアミド樹脂(A)の好ましい例として、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂等が例示される。
ジカルボン酸成分としてアジピン酸とセバシン酸との混合物を使用することで、弾性率や吸水率、結晶性を任意にコントロールできる。高弾性率を重視する場合は、混合物中のセバシン酸が50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。低吸水性を重視する場合は、混合物中のセバシン酸が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
また、本発明で好ましく利用できるポリアミド樹脂(A)として、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上、及びイソフタル酸を1〜30モル%含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド樹脂を例示できる。ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を加えることで、成形加工性、耐熱性を向上させることができる。
また、ポリメタキシリレンイソフタラミド、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマーなども好ましいポリアミド樹脂(A)として例示できる。
また、ジアミン成分として、メタキシリレンジアミンにパラキシリレンジアミンを加えることで、ポリアミド樹脂(A)の融点やガラス転移点、耐熱性を向上させることができる。パラキシリレンジアミンは、ジアミン成分の70モル%を超えない範囲であれば、任意の割合で添加して耐熱性、弾性率や成形加工性をコントロールすることができる。好適なポリアミド樹脂(A)としては、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを含み、メタキシリレンジアミンが30モル%以上であるジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドが例示される。
また、上記したポリアミド樹脂(A)は、一種類もしくは複数の樹脂をブレンドして使用することもできる。
ポリアミド樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸からなる塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。固相重合の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
ポリアミド樹脂(A)の吸水率は、23℃にて1週間、水に浸漬した際に、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下である。この範囲であると、得られる成形品の吸水による変形を防止しやすく、また、加熱加圧時等の成形加工時の発泡を抑制し、気泡の少ない成形品を得ることができる。
ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)換算値として、18,000〜70,000が好ましく、より好ましくは、19,000〜50,000である。この範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性が良好となる傾向にある。
ポリアミド樹脂(A)の融点は、150〜300℃が好ましい。この範囲であると、繊維材料と組み合わせて成形した際にポリアミド樹脂(A)の繊維材料中への溶融含浸が容易となり、得られる成形品の剛性、寸法安定性が優れ、生産性、成形加工性が良好となる傾向にある。
また、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点、ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量測定)法により測定できる。試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定される融点、ガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所(株)製DSC−50を用い、サンプル量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から300℃まで加熱し、300℃で2分間保持した後、30℃まで20℃/分の速度で降温する。次いで、10℃/分の速度で300℃まで昇温し、融点、ガラス転移点を求めることができる。融点としては、2度目の昇温時に観測される吸熱ピークのピークトップの温度をいう。ガラス転移点としては、いわゆる中点温度(Tgm)を採用した。なお、Tgmとは広く知られているように、DSC曲線において、ガラス状態ならびに過冷却状態(ゴム状態)のベースラインの接線と転移のスロープの接線との交点の中点温度である。
また、本発明のポリアミド樹脂(A)には、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。
なかでも、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を好ましくブレンドでき、より好ましくは、脂肪族ポリアミド樹脂をブレンドできる。脂肪族ポリアミド樹脂は、成形品の機械物性を改善できることから好ましく用いられる。脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66等を単独又は複数以上、使用することができる。
[3.ポリアミド樹脂(A)フィルムの製造]
[3.1 ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)積層フィルムの製造]
本発明の製造法においては、まず、上記ポリアミド樹脂(A)と後記のポリオレフィン樹脂(B)との積層フィルムを製造する。
積層フィルムを製造する方法については、特に制限はなく、公知の方法を採用できる。好ましい方法を説明すると、ポリアミド樹脂(A)は、好ましくは後記する各種添加剤や必要により他の樹脂を配合して調製し、その樹脂組成物を使用し、更に、後記するポリオレフィン樹脂(B)を使用し、これらを、例えば、Tダイ共押出機、インフレ−ション共押出機等を使用して共押出成形して、ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)積層フィルムを得る。
積層樹脂フィルムは、ポリオレフィン樹脂(B)層/ポリアミド樹脂(A)層の2層構造であっても、ポリオレフィン樹脂(B)層/ポリアミド樹脂(A)層/ポリオレフィン樹脂(B)層の3層構造であってもよい。
Tダイ共押出で製造する場合は、押出機により混練、押し出された各溶融樹脂(A)、(B)は、2種2層あるいは2種3層に積層可能なTダイに導入され、その内部で積層され、溶融フィルムとしてTダイより押し出される。ここで、各層の層比は、種々の層比として設定することができ、押し出された溶融フィルムは、冷却ロールで加圧冷却されて所定膜厚に形成される。
積層フィルムの膜厚としては、ポリアミド樹脂(A)層が、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。50μmを超えると、得られるポリアミド樹脂フィルムの厚みが大きすぎて、後の繊維材料への含浸性が悪くなったり、そり量が多くなったりして、目的とする複合材が得られにくくなり、また下限は生産性の点から5μmであることが好ましい。
また、ポリオレフィン樹脂(B)層の厚みは、5〜50μm位であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。ポリオレフィン樹脂(B)層の厚みが上記範囲であると、積層樹脂フィルムの成形性が良好となる傾向にあり好ましい。また、積層フィルムを剥離する際に層間の剥離性が良好であり、ポリアミド樹脂(A)層の巻取り性が良好であり、巻きシワの無いポリアミド樹脂(A)からなるフィルムロールとしやすい傾向にあり、好ましい。
[3.2 ポリオレフィン樹脂(B)]
積層に使用されるポリオレフィン系樹脂(B)とは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂に代表される樹脂である。
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低結晶性エチレン−1−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリプロピレン、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、特に、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)は、成形加工性の安定性や剥離性の点から有効である。
ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)との剥離性能は十分であるが、必要により、剥離剤を配合してもよい。剥離剤としては、公知のグリセリド系剥離剤等が使用できる。剥離剤を配合する場合の配合量は、ポリオレフィン樹脂(B)100重量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
[3.3 ポリアミド樹脂(A)フィルムの製造]
ポリアミド樹脂(A)のフィルムは、上記ポリオレフィン樹脂(B)層/ポリアミド樹脂(A)層の2層フィルムあるいはポリオレフィン樹脂(B)層/ポリアミド樹脂(A)層/ポリオレフィン樹脂(B)層の3層積層フィルムから、ポリオレフィン樹脂(B)層を剥離することにより製造される。このような工程により、ポリアミド樹脂(A)の薄膜フィルムを得ることができる。ポリオレフィン樹脂(B)層の剥離はいかなる方法で行ってもよいが、工業的には剥離ロール等により剥離し、得られたポリアミド樹脂(A)フィルムは巻き取られる。
得られるポリアミド樹脂(A)フィルムの膜厚は、薄いものが好ましく、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
[3.4 ポリアミド樹脂(A)/繊維材料(C)積層物の製造]
このように製造されたポリアミド樹脂(A)のフィルムは、繊維材料(C)と積層される。
繊維材料(C)としては、植物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、スチール繊維等の金属繊維などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。
これら繊維材料は、例えば単に一方向に並べたもの、編織物等の布帛、不織布あるいはマット等の種々の形態であり得る。これらのうち布帛、不織布あるいはマットの形態が好ましい。さらに、これらを積層し、賦形し、バインダー等を含浸したプリプレグも好ましく用いられる。
また、ポリアミド樹脂(A)との濡れ性、界面密着性を向上させるために、シランカップリング剤、収束剤又は表面処理剤(例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物)で表面処理したものを用いるのも好ましい。
繊維材料(C)の繊維長は、ポリアミド樹脂(A)フィルムと繊維材料(C)を積層する工程が、ポリアミド樹脂(A)フィルム上に繊維材料(C)を振り掛けた後に加圧する工程をとる場合は、3〜100mmのものが好ましく、5〜50mmがより好ましい。また繊維の直径は、補強効果を確保する点で、5〜30μmが好ましく、より好ましくは7〜25μmである。
ポリアミド樹脂(A)フィルムと繊維材料(C)を積層する工程が、ポリアミド樹脂(A)フィルムとボビンに巻かれた繊維材料(C)を開繊しながら加圧する工程をとる場合、あるいはボビンに巻かれたモノフィラメント状の繊維材料(C)を繰出しながら加圧する工程を取る場合は、繊維材料(C)の直径は1〜300μmが好ましく、2〜200μmがより好ましく、3〜100μmがさらに好ましい。この範囲であると、得られる複合材の強度が良好になる傾向にある。
このような繊維材料(C)は、上記したポリアミド樹脂(A)のフィルムと積層されて、積層物とされる。積層は、公知の方法で行うことができ、例えば、ポリアミド樹脂(A)フィルムを、ロール上を搬送させながら、上記繊維材料を供給し、加圧ロールで積層する等により行われる。
得られる積層物の厚みは、繊維材料(C)層が5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜250μm程度であり、ポリアミド樹脂(A)層は5〜50μmが好ましく、より好ましくは7〜30μmであり、特に好ましくは10〜25μmである。
[3.5 ポリアミド樹脂(A)/繊維材料(C)積層物および複合材の製造]
このようにして得られた積層物は、加熱加圧されることにより、ポリアミド樹脂(A)の全量あるいは少なくとも一部は溶融して、繊維材料(C)層に含浸され、かつ圧密(緻密)化する。
加熱加圧は、ポリアミド樹脂(A)フィルム/繊維材料(C)の積層物を、複数枚以上重畳した重畳物に対して、行うのが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂(A)フィルム/繊維材料(C)積層物の少なくとも2枚、好ましくは5枚以上を、その両外側がポリアミド樹脂層になるように重ね合せた重畳物に対して加熱加圧するのが望ましい。
加熱加圧において、繊維材料(C)層へのポリアミド樹脂(A)の含浸、これらの一体化のための温度は、ポリアミド樹脂(A)が軟化溶融する温度以上とする必要があり、ポリアミド樹脂(A)の種類や分子量によっても異なるが、一般にガラス転移点+10℃以上の温度から熱分解温度−20℃の温度範囲が好ましい。また、融点を有するポリアミド樹脂(A)の場合は、融点+10℃以上が好ましく、より好ましくは融点+20℃以上である。このような温度範囲で加熱加圧することで、ポリアミド樹脂(A)の繊維材料(C)への含浸がより良く行われ、成形品の物性が向上する。また、成形のプレス圧力は1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が特に好ましい。加熱加圧は、減圧下、特には真空下で行うのが好ましく、このような条件で行うと、気泡が残存しにくくなり好ましい。
本発明の製造方法ではさらに、得られた複合材を熱処理する工程を含むことが好ましい。複合材を熱処理することによって、成形品の低そり性、寸法安定性をより向上させることができる。熱処理温度は120〜180℃が好ましく、より好ましくは140〜170℃、さらに好ましくは150〜160℃である。この範囲であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化が速やかに進行し、成形品の低そり性、寸法安定性をより向上させることができる。
上記熱処理は、複合材を金型から取り出した後に行うこともできるし、金型内で行うこともできる。金型内で行う際は複合材を成形した金型とは別の金型内で処理しても良いし、同一の金型の温度を熱処理に適した温度に変化させて処理することもできる。
[3.6 複合材からの成形品の製造]
上述の方法で得られた複合材は、そのシート断面形状において、繊維材料(C)層にポリアミド樹脂(A)が含浸しており、その両表面はポリアミド樹脂(A)層で形成される構成となっている。
したがって、本発明の複合材は、熱可塑性樹脂材料からなるので、これをそのまま、あるいは所望の形状・サイズに切断して、これを成形材料として使用し、これを金型に入れて成形し、各種の成形品を得ることが可能である。
[4 ポリアミド樹脂(A)への添加剤]
ポリアミド樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。
[4.1 安定剤]
本発明のポリアミド樹脂(A)には、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤)を配合することが好ましい。安定剤としては、例えば、リン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、シュウ酸アニリド系、有機硫黄系、芳香族第2級アミン系などの有機系安定剤、アミン系酸化防止剤、銅化合物やハロゲン化物などの無機系安定剤が好ましい。リン系安定剤としては、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物が好ましい。
ホスファイト化合物としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−イソプロピルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−t−オクチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられ、特に、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ホスホナイト化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、特に、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中では、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)が好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する周知のヒンダ−ドアミン化合物が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルアセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン)−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジンの重縮合物、1,3−ベンゼンジカルボキサミド−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系安定剤の商品としては、ADEKA社製の商品「アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−63P、LA−68LD、LA−77、LA−82、LA−87」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品「チヌビン622、944、119、770、144」、住友化学社製の商品「スミソーブ577」、サイアミド社製の商品「サイアソープUV−3346、3529、3853」、クラリアント・ジャパン社製の商品「ナイロスタブS−EED」等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤とは、上記のヒンダードアミン系安定剤以外のアミン系化合物をいい、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から各商品名で市販されている、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(イルガノックス5057)、大内新興化学工業(株)から各商品名で市販されている、オクチル化ジフェニルアミン(ノクラックAD−F)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(ノクラックDP)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(ノクラック810−NA)、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(ノクラック6C)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(ノクラックWhite)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン(ノクラックAW)などが利用できる。
シュウ酸アニリド系安定剤としては、好ましくは、4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサニリド、2−エトキシ−5−第三ブチル−2’−エトキサニリド及びその2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−第三ブトキサニリドとの混合物、o−及びp−メトキシ−二置換オキサニリドの混合物、o−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物などが挙げられる。
有機硫黄系安定剤としては、例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)等の有機チオ酸系化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール及び2−メルカプトベンゾイミダゾールの金属塩等のメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジエチルジチオカルバミン酸の金属塩、及びジブチルジチオカルバミン酸の金属塩等のジチオカルバミン酸系化合物、並びに1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、及びトリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、及び有機チオ酸系化合物が好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、及び有機チオ酸系化合物がさらに好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、好適に使用することができる。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)がより好ましく、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールがさらに好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が特に好ましい。
有機硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
芳香族第2級アミン系安定剤としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物及びジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、およびフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。具体的には、p,p’−ジアルキルジフェニルアミン(アルキル基の炭素数は8〜14)、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン及びN−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等のジフェニルアミン骨格を有する化合物、N−フェニル−1−ナフチルアミン及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のフェニルナフチルアミン骨格を有する化合物、及び2,2’−ジナフチルアミン、1,2’−ジナフチルアミン、及び1,1’−ジナフチルアミン等のジナフチルアミン骨格を有する化合物が挙げられる。これらの中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及びN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
上記の有機硫黄系安定剤または芳香族第2級アミン系安定剤を配合する場合は、これらを併用することが好ましい。これらを併用することによって、それぞれ単独で使用した場合よりも、ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性が良好となる傾向にある。
より具体的な有機硫黄系安定剤及び芳香族第2級アミン系安定剤の好適な組み合わせとしては、有機硫黄系安定剤として、ジテトラデシルチオジプロピオネート、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)から選ばれる少なくとも1種と、芳香族第2級アミン系安定剤が、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及びN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。さらに、有機硫黄系安定剤が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、芳香族第2級アミン系安定剤が、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンの組み合わせがより好ましい。
また、上記有機硫黄系安定剤と芳香族第2級アミン系安定剤とを併用する場合は、ポリアミド樹脂組成物中の含有量比(質量比)で、芳香族第2級アミン系安定剤/有機硫黄系安定剤=0.05〜15であることが好ましく、0.1〜5であることがより好ましく、0.2〜2がさらに好ましい。このような含有量比とすることにより、バリア性を維持しつつ、耐熱老化性を効率的に向上させることができる。
無機系安定剤としては、銅化合物及びハロゲン化物が好ましい。
銅化合物は、種々の無機酸または有機酸の銅塩であって、後述のハロゲン化物を除くものである。銅としては、第1銅、第2銅の何れでもよく、銅塩の具体例としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ステアリン酸銅の他、ハイドロタルサイト、スチヒタイト、パイロライト等の天然鉱物が挙げられる。
また、無機系安定剤として使用されるハロゲン化物としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物;ハロゲン化アンモニウム及び有機化合物の第4級アンモニウムのハロゲン化物;ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル等の有機ハロゲン化物が挙げられ、その具体例としては、ヨウ化アンモニウム、ステアリルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイド等が挙げられる。これらの中では、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩が好適である。
銅化合物とハロゲン化物との併用、特に、銅化合物とハロゲン化アルカリ金属塩との併用は、耐熱変色性、耐候性(耐光性)の面で優れた効果を発揮するので好ましい。例えば、銅化合物を単独で使用する場合は、成形品が銅により赤褐色に着色することがあり、この着色は用途によっては好ましくない。この場合、銅化合物とハロゲン化物と併用することにより赤褐色への変色を防止することが出来る。
本発明においては、上記の安定剤のうち、加熱加圧時の加工安定性、耐熱老化性、フィルム外観、着色防止の点から、特には、アミン系酸化防止剤、無機系、有機硫黄系、芳香族第2級アミン系の安定剤が特に好ましい。
前記の安定剤の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.01〜0.8質量部である。含有量を0.01質量部以上とすることにより、熱変色改善、耐候性/耐光性改善効果を十分に発揮することが出来、配合量を1質量部以下とすることにより、機械的物性低下を抑制することが出来る。
[4.2 耐加水分解性改良剤−カルボジイミド化合物]
ポリアミド樹脂(A)には、耐加水分解性改良剤としてのカルボジイミド化合物を配合することが好ましい。カルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造した芳香族、脂肪族又は脂環式のポリカルボジイミド化合物が好ましく挙げられる。これらの中で、押出し時等における溶融混練性の面から、脂肪族又は脂環式ポリカルボジイミド化合物が好ましく、脂環式ポリカルボジイミド化合物がより好ましく用いられる。
これらのカルボジイミド化合物は、有機ポリイソシアネートを脱炭酸縮合反応することで製造することができる。例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、各種有機ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で不活性溶媒中、もしくは溶媒を使用することなく、脱炭酸縮合反応させることによって合成する方法等を挙げることができる。イソシアネート基含有率は好ましくは0.1〜5%、より好ましくは1〜3%である。上記のような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)との反応が容易となり、耐加水分解性が良好となる傾向にある。
カルボジイミド化合物の合成原料である有機ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等の各種有機ジイソシアネートやこれらの混合物を使用することができる。
有機ジイソシアネートとしては、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネート等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロへキシレン)=ジイソシアネートが好ましい。
カルボジイミド化合物の末端を封止してその重合度を制御するためにモノイソシアネート等の末端封止剤を使用することも好ましい。モノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、末端封止剤としては、上記のモノイソシアネートに限定されることはなく、イソシアネートと反応し得る活性水素化合物であればよい。このような活性水素化合物としては、脂肪族、芳香族、脂環式の化合物の中で、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の−OH基を持つ化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等のカルボン酸、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のチオール類やエポキシ基を有する化合物等を例示することができ、2種以上を併用してもよい。
カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド及びこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等、チタン酸テトラブチル等の金属触媒等を使用することができ、これらのなかでは、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。カルボジイミド化触媒は、2種以上併用してもよい。
カルボジイミド化合物の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1〜2質量部であり、より好ましくは、0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは、0.3〜1.5質量部である。0.1質量部未満では樹脂組成物の耐加水分解性が十分ではなく、押出等の溶融混練時の吐出ムラが発生しやすく、溶融混練が不十分となりやすい。一方、2質量部を超えると、溶融混練時の樹脂組成物の粘度が著しく増加し、溶融混練性、成形加工性が悪くなりやすい。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例に使用したポリアミド樹脂の融点、ガラス転移点、数平均分子量、吸水率は以下のようにして測定した。
(1)ポリアミド樹脂の融点、ガラス転移点
島津製作所社製DSC−60を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。測定条件は、約5mgのサンプルを室温から10℃/分の条件で昇温し、300℃で2分間保持した後、30℃まで20℃/分の速度で降温する。次いで、10℃/分の条件で昇温し、融点、ガラス転移点を測定した。
(2)数平均分子量
後記するポリアミド6以外のポリアミド樹脂の数平均分子量は、東ソー社製HLC−8320GPCを用いて、GPC測定によりPMMA換算値を求めた。なお、測定用カラムはTSKgel SuperHM−Hを用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウムを10mmol/l溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、測定温度は40℃にて測定した。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。ポリアミド6の数平均分子量は、メーカー公称値である。
(3)ポリアミド樹脂の吸水率
ポリアミド樹脂を射出成形し作成した成形片を、23℃の条件下で蒸留水に浸漬し、1週間後に水分率をカールフィッシャー法により測定した。測定には平沼産業製微量水分測定装置 AQ−2000を用いた。測定温度は、ポリアミド樹脂の融点−5℃とし、測定時間は30分とした。
ポリアミド樹脂(A)として、以下の製造例1〜6で得られたポリアミド樹脂、および以下の市販のメタキシリレンアジパミド樹脂(MXD6)を使用した。
また、比較のために、下記の市販のポリアミド6も使用した。
・アジピン酸とメタキシリレンジアミンからなるポリアミド樹脂
三菱ガス化学(株)製、商品名「MXナイロン グレードS6007」、
融点:240℃、ガラス転移点:85℃、数平均分子量:45,000、吸水率:0.54%。以下、「MXD6」という。
・ポリアミド6
宇部興産(株)製商品名「UBEナイロン6 グレード1030B」
融点:220℃、ガラス転移点:60℃、数平均分子量:30,000(メーカー公称値)、吸水率:3.11%。以下、「PA6」という。
<製造例1>
(ポリアミド(MXD10)の合成)
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油製TAグレード)を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(MXD10)を得た。
ポリアミド(MXD10)の融点は191℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は30,000、吸水率は0.36%であった。以下、「MXD10」という。
<製造例2>
(ポリアミド(MPXD6)の合成)
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)とメタキシリレンジアミンのモル比が3:7の混合ジアミンを、ジアミンとアジピン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド(MPXD6)を得た。
ポリアミド(MPXD6)の融点は258℃、ガラス転移点は89℃、数平均分子量は25,000、吸水率は0.55%であった。以下、「MPXD6」という。
<製造例3>
(ポリアミド(MPXD10)の合成)
アジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は製造例2と同様にして、ポリアミド(MPXD10)を合成した。
ポリアミド(MPXD10)の融点は215℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は19,000、吸水率は0.4%であった。以下、「MPXD10」という。
<製造例4>
(ポリアミド(MPXD6’)の合成)
パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンのモル比が6:4の混合ジアミンを用いた以外は製造例2と同様にして、ポリアミド(MPXD6’)を合成した。
ポリアミド(MPXD6’)の融点は288℃、ガラス転移点は93℃、数平均分子量は21,000、吸水率は0.56%であった。以下、「MPXD6’」という。
<製造例5>
(ポリアミド(MXD6I)の合成)
アジピン酸とイソフタル酸のモル比が9:1の混合ジカルボン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(MXD6I)を得た。
ポリアミド(MXD6I)の融点は226℃、ガラス転移点は94℃、数平均分子量は48,000、吸水率は0.56%であった。以下、「MXD6I」という。
<製造例6>
(ポリアミド(MXD610)の合成)
セバシン酸の代わりに、セバシン酸とアジピン酸のモル比が4:6の混合ジカルボン酸を用いた以外は製造例1と同様にしてポリアミド(MXD610)を合成した。
ポリアミド(MXD610)の融点は185℃、ガラス転移点は75℃、数平均分子量は35,000、吸水率は0.44%であった。以下、「MXD610」という。
ポリアミド樹脂に配合するための添加剤としては、以下のものを使用した。
(1)カルボジイミド化合物:
脂環式ポリカルボジイミド化合物
日清紡績社製商品名「カルボジライトLA−1」
以下、このカルボジイミド化合物を、「カルボジイミド」と略記する。
(2)アミン系酸化防止剤:
N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
大内新興化学工業社製商品名「ノクラックwhite」
以下、「アミン系酸防剤」と略記する。
(3)塩化銅/ヨウ化カリウム混合物:
塩化銅:ヨウ化カリウム=1:10(質量比)の混合物
以下、「CuCl/KI」と略記する。
<実施例1>
上記したポリアミドMXD6を、30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、また、高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名「ノバテックLF240」)を、30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して共押出成形し、450mm幅のポリエチレン層(30μm厚)/MXD6層(7μm厚)の2層キャストフィルムを得た。
得られた2層フィルムを400mm幅にスリットし、ポリエチレン層とMXD6層の界面を剥離しながら、それぞれロール状に巻き取り、長さ500mm、厚み7μm、幅400mmのロール状MXD6フィルムを得た。
三菱レイヨン(株)製炭素繊維(TR50S、引張弾性率:240GPa)を繊維目付が125g/mになるように一方向に引きそろえたシート状物を220℃に加熱しながら、連続的に上記MXD6フィルムを貼り合わせ、積層物を得た。
次いで、得られた20cm×20cmに切断した積層物10枚を重ね合わせて重畳物とし、さらに前記MXD6単層フィルムを重畳物最表面の炭素繊維層側に重ねて、260℃の金型で圧力1MPaにて熱プレス処理を行い、両表面がMXD6の板状の成形品を得た。得られた成形品の炭素繊維含有率は40容量%であった。得られた成形品に、加熱オーブンにて、130℃×4分の熱処理を施した。
得られた成形品の引張り弾性率、そり量、熱水処理後の弾性率の評価を行った。
結果を以下の表に示す。
なお、成形品の引張り弾性率、そり量、熱水処理後の弾性率の測定・評価方法は以下のとおりである。
(1)引張り弾性率:
成形品を1cm×10cmの形状とし、JIS K7113に準じて引張試験を実施した。
(2)そり量:
試料片(20cm×20cm)の中心より10cmの点でのそり量を測定した。なお、そり量とは、試料片の最大高さより試料片の厚みを引いたものである。そり量が少ないほど寸法安定性が良好であることを意味する。
(3)熱水処理後の弾性率:
成形品を1cm×10cmの形状とし、100℃の沸水中で240時間浸漬後、引っ張り試験を実施した。
(実施例2)
ポリアミド樹脂として、以下の表に記載のものを選び、表に記載の種類の添加剤を、ポリアミド樹脂100質量部に対し、表に記載の量秤量し、ポリアミド樹脂とドライブレンドしたものを使用した。また、ポリアミドフィルムの厚さは表に記載の厚さに変更した。また、加熱加圧時の加熱温度・圧力を表に記載のとおりとした。また、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、TR50S−15K)を、公知の方法(特開2009−113369号公報の実施例1参照)により、開繊して得た炭素繊維シート材を用いた以外は、実施例1と同様にして、成形品を作成した。得られた成形品に、加熱オーブンにて、140℃×2分の熱処理を施した。
評価結果を以下の表に示す。
(実施例3)
ポリアミド樹脂として、以下の表に記載のものを選び、表に記載の種類の添加剤を、ポリアミド樹脂100質量部に対し、表に記載の量秤量し、ポリアミド樹脂とドライブレンドしたものを使用した。また、ポリアミドフィルムの厚さは表に記載の厚さに変更した。また、加熱加圧時の加熱温度・圧力を表に記載のとおりとした。また、炭素繊維織物(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルクロスTR3110)を用いた以外は、実施例1と同様にして、成形品を作成した。得られた成形品に、加熱オーブンにて、160℃×1分の熱処理を施した。
評価結果を以下の表に示す。
(実施例4〜13、比較例1)
ポリアミド樹脂として、以下の表に記載のものを選び、表に記載の種類の添加剤を、ポリアミド樹脂100質量部に対し、表に記載の量秤量し、ポリアミド樹脂とドライブレンドしたものを使用した。また、ポリアミドフィルムの厚さは表に記載の厚さに変更した。また、加熱加圧時の加熱温度・圧力、熱処理の温度・時間を表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、成形品を作成した。なお、実施例13は、熱処理を行わなかった例である。
評価結果を以下の表に示す。
Figure 0005652025
(比較例2)
実施例1において、ポリエチレン樹脂を使用せず、ポリアミドMXD6単独で、厚み7μmのフィルムを溶融押出ししたが、破断してフィルムを得ることができなかった。
以上の実施例で示したように、本発明のメタキシリレン系ポリアミド樹脂(A)と繊維材料(C)の積層物を加熱加圧して得られた複合材は、優れた弾性率、低そり性を有し、高温高湿度下での物性低下が少なく、優れたものであることがわかった。
本発明の方法で得られる複合材は、弾性率に優れ、低そり性であり、高温高湿度下での物性低下が少なく、従来の熱硬化性樹脂に比べて、リサイクル特性、成形性、生産性にも優れており、薄くても機械的強度に優れるため、製品としたときの軽量化が可能である。本発明の方法で得られる複合材は、各種部品等に利用でき、特に、電気・電子機器の部品、自動車部品・部材として好ましく使用でき、産業上の利用性は高いものがある。

Claims (11)

  1. メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分から得られるポリアミド樹脂(A)をポリオレフィン樹脂(B)と積層して、ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)積層フィルムを製造する工程、
    上記積層フィルムからポリオレフィン樹脂(B)層を剥離し、ポリアミド樹脂(A)フィルムを製造する工程、
    得られたポリアミド樹脂(A)フィルムを繊維材料(C)と積層した積層物を加熱加圧する工程、
    を含み、前記ポリアミド樹脂(A)フィルムの厚みが、5〜50μmであることを特徴とする複合材の製造方法。
  2. ポリアミド樹脂(A)フィルムと繊維材料(C)の積層物を重畳した重畳物に対して、加熱加圧を行うことを特徴とする請求項1に記載の複合材の製造方法。
  3. さらに、前記複合材を熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の複合材の製造方法。
  4. ポリアミド樹脂(A)/ポリオレフィン樹脂(B)の積層フィルムの製造を、共押出成形により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  5. ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン成分の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸成分の50モル%以上がアジピン酸またはセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  6. ポリアミド樹脂(A)が、安定剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  7. ポリアミド樹脂(A)が、カルボジイミド化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  8. 前記加熱加圧温度が250℃以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  9. 前記加熱加圧温度がポリアミド樹脂(A)のガラス転移点+10℃以上の温度から熱分解温度−20℃の温度範囲であり、さらに、前記加熱加圧した後に、120〜180℃で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項1、2、4〜8のいずれか1項に記載の複合材の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材の製造方法を含む成形品の製造方法。
  11. 成形品が、電気・電子機器部品または自動車用部品・部材であることを特徴とする請求項10に記載の成形品の製造方法
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